説明

制御された多孔性を有するジオポリマーの調製方法、得られたジオポリマーおよびその種々の用途

【課題】再現可能かつ制御された様式で、制御された多孔性を有する材料を得ることができる、ジオポリマーの調製方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、制御された多孔性を有するジオポリマーの調製方法であって、任意にシリケート成分を含み得る活性化溶液中におけるアルミノシリケート源の脱溶液/重縮合工程を含み、以下の連続的な工程を含む:a.調製されるジオポリマーの多孔度に関する少なくとも1つの特徴を規定すること;b.水の総量、シリカの総量、補償カチオン、およびシリケート任意成分の粒子サイズ分布から選択される少なくとも1つのパラメーターについて、工程(a)で規定された特徴を得ることができる値または要素を決定すること;および、c.工程(b)で予め決定された値または要素を選択すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジオポリマーの分野に関し、より詳細には、制御された多孔性を有するジオポリマーの分野に関する。
【0002】
本発明は、主要な処方パラメーターによりジオポリマーのトータルの多孔度と多孔性のモード(すなわち、ミクロ多孔性、マクロ多孔性およびメソ多孔性)とを同時に制御することができる調製方法を提供することを目的とする。したがって、本発明は、これらの材料の多孔度を設計する道を開くものである。
【0003】
本発明はまた、当該方法により調製され得るジオポリマー、特に触媒およびろ過分野におけるその種々の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
約30年以上にわたって、選択された実験条件下でアルミノシリケート材料を高pH溶液に接触させると、合成ゼオライトが得られ得ることが知られている(非特許文献1)。合成ゼオライトの結晶の性質および結晶化度は、特に、用いられる初期材料の性質および溶液/固体重量比に依存する。
【0005】
この合成に用いられ得るアルミノシリケート源は大きく変動し、天然鉱物(例えば、イライト、スティルバイト、カオリナイト:非特許文献2〜3)、か焼鉱物(メタカオリンなど:非特許文献4〜6)または代替材料であり、多くの場合、工業的採鉱の副産物または残留物をか焼したもの(フライアッシュ:非特許文献7〜12)である。初期反応性材料がアルミノシリケート源由来のシリカおよびアルミニウムを主成分として含む場合、強アルカリ性溶液により活性化されると、および、固体/溶液重量比が低いと、得られる材料は「ジオポリマー」として知られる非晶性アルミノシリケート無機ポリマーである(非特許文献13〜15)。
【0006】
ジオポリマーは、高pH溶液から出発するアルミノシリケート源の活性化により調製される。この調製は、種々の成分を混合し、次いで、得られた材料を、最終のジオポリマーが得られるまで温度、圧力および相対湿度が規定された条件下に貯蔵することを含む。
【0007】
ジオ重合(geopolymerization)としても知られる、ジオポリマーを形成する詳細な反応は複雑であり、いまだ十分に理解されていない。しかし、1つの単純化された反応機構が一般的に許容されている(非特許文献16)。この反応機構は、主に脱溶液/重縮合機構からなり、その種々の工程は同時に起こる。
【0008】
最初に、アルミノシリケート源の固体微粒子が水性相中で懸濁される。高いpHでは、脱溶液は迅速であり、活性化溶液中に化学種(アルミネート、シリケート、アルミノシリケートなど)が現れる。この相は、さらにシリケート種を含み得る。このプロセスは水を消費する。
【0009】
溶液の過飽和により、水性相中のオリゴマーの重縮合に関連してゲルが現れる。形成されるオリゴマーのサイズは、補償カチオン(compensating cation)のサイズに依存する(非特許文献17)。
【0010】
重縮合が継続する一方で、内部の再組織化および再配列が起こり、三次元のアルミノシリケート網目を形成する。
【0011】
ジオポリマーが高い多孔度を発現し、特に絶縁体用途において有利であることは、すでに知られている。ジオポリマーはまた、構造材料、コンクリートまたはモルタル、および耐火性材料の処方物におけるバインダーとしても用いられる(特許文献1〜12)。建築現場またはプレハブにおけるジオポリマーの使用を可能とする、いくつかの製造方法が知られている(特許文献13〜16)。さらに、標準的なカルシウム−ケイ素ポルトランドセメントのように、ジオポリマーは、毒性廃棄物を被覆するための、または毒性廃棄物を不活性化するためのマトリクスとして使用され得る(特許文献17〜19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】スロバキア国特許第332004号(Skvara, F. and F. Kastanek, Geopolymer binder based on fly ash,SK332004, Editor. 2004)
【特許文献2】チェコ国特許第20003781号(Skvara, F. and A. Allahverdi, Binding geopolmeric mixture.,CZ20003781, Editor. 2002)
【特許文献3】特開平8−301639号公報
【特許文献4】特開平8−301638号公報
【特許文献5】米国公開第2005−160946号
【特許文献6】フランス国特許第2712882号(Davidovits, J., Producing geopolymer cement free from Portlandcement., FR2712882, Editor. 1995)
【特許文献7】オーストラリア国特許第3031392号(Laney, B., Geopolymer-modified, gypsum-based construction material,AU3031392, Editor. 1994)
【特許文献8】欧州特許第1689691号(Johnson, G.B., Geopolymer concrete and method of preparation andcasting, EP1689691, Editor. 2006)
【特許文献9】フランス国特許第2831905号(Davidovits, J. and F. Waendendries, Geopolymer stone forconstruction and decoration comprises rock residues and a poly(sialate),poly(sialate-siloxo) and/or poly(sialate-disoloxo) geopolymer binder.,FR2831905, Editor. 2003)
【特許文献10】中国特許第1762884号(Yan, S., Geopolymer dry powder regenerated polystyrene heatpreservation and heat insulating mortar., CN1762884, Editor. 2006)
【特許文献11】WO2004/026698国際公開パンフレット
【特許文献12】ドイツ国特許第10220310号(Kuenzel, E. and B. Leydolph, Heat-insulating composite materialmolded part production comprises mixing a high porous granulate based on grainand/or leguminous plant with a geopolymer, molding the mixture into moldedbody, and hardening., DE10220310, Editor. 2003)
【特許文献13】WO2005/019130国際公開パンフレット
【特許文献14】WO2003/087008国際公開パンフレット
【特許文献15】ドイツ国特許第4410437号(Vahlbrauk, K., Prefabricated chimney, DE4410437, Editor. 1995)
【特許文献16】ドイツ国特許第1953590号(Vahlbrauk,K., Wall, Ceiling or floor building member., DE1953590, Editor. 1996)
【特許文献17】WO2006/097696国際公開パンフレット
【特許文献18】WO92/04298国際公開パンフレット
【特許文献19】WO89/02766国際公開パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Breck, D.W., Zeolite Molecular Sieves : Stucture, Chemistry and Use.1974, New York:Wiley Interscience. 415-418
【非特許文献2】Xu, H. and J.S.J. Van Deventer. The Geopolymerisation of NaturalAlumino-Silicates. in Geopolymer ’99 Proceedings. 1999: p. 43-63
【非特許文献3】Barbosa, V.F.F., K.J.D. MacKenzie, and C. Thaumaturgo, Synthesis andcharacterisation of materials based on inorganic polymers of alumina andsilica: sodium polysialate polymers. International Journal of InorganicMaterials, 2000. 2(4): p. 309-317
【非特許文献4】Xu, H. and J.S.J. Van Deventer, Geopolymerisation of multipleminerals. Minerals Engineering, 2002. 15: p. 1131-1139
【非特許文献5】Davidovits, J., Recent Progresses in Concretes for Nuclear Waste andUranium Waste Containment. Concrete International, 1994. 16(2): p. 53-58
【非特許文献6】Palomo, A., M.T. Blanco-Varela, M.L. Granizo, F. Puertas, T.Vazquez, and M.W. Grutzeck, Chemical stability of cementitious materials basedon metakaolin. Cement and Concrete Research, 1999. 29(7): p. 997-1004
【非特許文献7】Palomo, A., M.W. Grutzeck, and M.T. Blanco, Alkali-activated flyashes: A cement for the future. Cement and Concrete Research, 1999. 29(8): p.1323-1329
【非特許文献8】Lee, W.K.W. and J.S.J. Van Deventer, The effects of inorganic saltcontamination on the strength and durability of geopolymers. Colloids andSurfaces A : Physicochemical and Engineering Aspects, 2002. 211: p. 115-126
【非特許文献9】Swanepoel, J.C. and C.A. Strydom, Utilisation of fly ash in ageopolymeric material. Applied Geochemistry, 2002. 17: p. 1143-1148
【非特許文献10】Hardjito, D., S.E. Wallah, D.M.J. Sumajouw, and B.V. Rangan.Properties of Geopolymer Concrete with Fly Ash as Source Material : Effect ofMixture Composition. In 7th CANMET/ACI International Conference on RecentAdvances in Concrete Technology. 2004. May 26-29, Las Vegas, USA
【非特許文献11】Bankowski, P., L. Zou, and R. HODGES, Using inorganic polymer toreduce leach rates of metals from brown coal fly ash. Minerals Engineering,2004. 17: p. 159-166
【非特許文献12】Bakharev, T., Geopolymeric Materials prepared using Class F fly ashand elevated temperature curing. Cement and Concrete Research, 2005. 35: p.1224-1232
【非特許文献13】Xu, H. and J.S.J. van Deventer,The geopolymerisation of alumino-silicate minerals. International Journal ofMineral Processing, 2000. 59: p. 247-266
【非特許文献14】Barbosa, V.F.F., K.J.D. MacKenzie, and C. Thaumaturgo. Synthesis andCharacterization of Sodium Polysialate Inorganic Polymer Based on Alumina andSilica. in Geopolymer ’99 Proceedings. 1999: p. 65 77
【非特許文献15】Davidovits, J. Chemistry of Geopolymeric Systems, Terminology. inGeopolymer ’99 Proceedings. 1999: p. 9-39
【非特許文献16】Duxson, P., A. Fernandez-Jimenez, J.L. Provis, G.C. Lukey, A.Palomo, and J.S.J. Van Deventer, Geopolymer technology: the current state ofthe art. Journal of Materials Science 2007. (in press)
【非特許文献17】McCormick, A.V. and A.T. Bell, The Solution Chemistry of ZeolitePrecursors. Catalunya Revue of Science and Engineering, 1989. 31(1-2): p. 97127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上で説明したとおり、ジオポリマーの多孔性という性質が、ジオポリマーを特に触媒作用またはろ過のような種々の用途についての有利な担体とすることができる。したがって、再現可能かつ制御された様式で、制御された多孔性を有する材料(すなわち、当該材料の多孔度が、当該材料の処方物の調製から決定および予め選択され得る材料)を得ることを目的とした、ジオポリマーの調製方法が真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の必要性に対する解決策を提供することができる。本発明は、多孔度がその処方で制御され得る、モノリシック材料としてのジオポリマーを得ることができる方法からなる。
【0016】
実際、本発明者らによって得られた結果により、メソ多孔性ゾーンと同様にマクロ多孔性ゾーンにおいても材料の多孔度が良好に制御される方法を開発することができた。当該制御は、材料のトータルの多孔度と材料の孔分布とに同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】制御された孔モードのジオポリマーについて、水銀圧入法により決定される接触可能な径(accessibilty diameter)の関数としての孔分布を示す。
【図2】異なる孔選択性のジオポリマーについて、水銀圧入法により決定される接触可能な径の関数としての孔の体積分布を示す。
【図3】制御された孔モードのジオポリマーについて、水銀圧入法により決定される接触可能な径の分布に対するシリカ、より詳細にはその粒子サイズ分布の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語「ジオポリマー」は、本発明の文脈においては、非晶性アルミノシリケート無機ポリマーを意味するものとして理解される。当該ポリマーは、必須成分としてシリカおよびアルミニウムを含み、強アルカリ性溶液で活性化され、処方物中の固体/溶液重量比が低い(特に0.6より小さく、有利なことには0.5より小さい)反応性材料から得られる。ジオポリマーの構造は、その頂点で酸素原子を共有して結合したシリケート(SiO)四面体とアルミネート(AlO)四面体とから形成されたSi−O−Al網目で構成される。この網目内には、1つ(またはそれ以上)の電荷補償カチオン(補償カチオンとしても知られている)が存在する。これらのカチオン(以後、文字「M」で表される)は、AlO複合体の負電荷を補償することができる。本発明の方法により調製されたジオポリマーは、ミクロ多孔性、マクロ多孔性またはメソ多孔性であり得る。有利なことには、ジオポリマーは、マクロ多孔性またはメソ多孔性ジオポリマーである。
【0019】
国際純正応用化学連合(IUPAC)によれば、以下の用語が記載されていることに留意されたい(Rouquerol, J., D. Avnir, C.W. Fairbridge, D.H. Everett, J.H. Haynes,
N. Pernicone, J.D.F. Ramsay, K.S.W. Sing, and K.K. Unger, Recommendations for
the characterization of porous solids Pure Appl. Chem., 1994. 66 p. 1739-1758):
− ミクロ多孔性:孔の直径(dp)が2nmより小さい材料;
− メソ多孔性 :2<dp<50nmであるような材料;および
− マクロ多孔性:孔の直径が50nmより大きい材料。
【0020】
本発明は、処方によりジオポリマーの多孔度(より詳細には、マクロ多孔性領域およびメソ多孔性領域における多孔度)を規定する可能性を開くものである。さらに、本発明の主題である方法は、最終材料について同一の多孔度が複数の異なる初期処方から得られ得るので、注目に値する。
【0021】
ジオポリマーを処方するということは、つまるところ以下を選択することになる(非特許文献5、10、および、Barbosa, V.F.F. and K.J.D. MacKenzie, Thermal behaviour of inorganic
geopolymers and composites derived from sodium polysialate. Materials Research
Bulletin, 2003. 38: p. 319-331):
(1)アルミノシリケート源;
(2)1つまたはそれ以上の補償カチオン;
(3)高pHの活性化溶液、この活性化溶液は、特に、水の量および含まれ得る溶解性シリケートの量により特徴付けられる。
【0022】
材料の孔の特性は、調製のために選択される種の具体的な選択に影響される。したがって、すべての処方およびプロセスパラメーターの思慮的な(judicious)選択により、ジオポリマーの多孔度に関連したアプリオリな(a
priori)複数の特性を制御することができる。
【0023】
したがって、本発明者らの研究により、多孔性材料の以下の3つの基本的な特性が、調製の際にそれらを適切に選択することによりあらかじめ規定され得ることを示すことができた:
(a´)トータルの多孔度;
(b´)多孔度のクラス(マクロ多孔性、メソ多孔性またはミクロ多孔性);および
(c´)孔分布、および特に所定のクラスにおける孔サイズ分布。
【0024】
したがって、本発明の文脈においては、「制御された多孔性」という表現は、トータルの多孔度、多孔度のクラス、および/または孔分布の制御を意味するものとして理解される。
【0025】
したがって、本発明は、調製されるジオポリマーの孔特性をあらかじめ規定した後、当該ジオポリマーの処方から特定のパラメーターを積極的に選択することにより特徴付けられる。
【0026】
したがって、本発明は、制御された多孔性を有するジオポリマーの調製方法であって、任意にシリケート成分を含み得る活性化溶液中におけるアルミノシリケート源の脱溶液/重縮合工程を含み、以下の連続的な工程を含む、方法に関する:
a.調製されるジオポリマーの多孔度に関する少なくとも1つの特徴を規定すること;
b.水の総量、シリカの総量、補償カチオン、およびシリケート任意成分の粒子サイズ分布から選択される少なくとも1つのパラメーターについて、工程(a)で規定された特徴を得ることができる値または要素(element)を決定すること;および
c.工程(b)で予め決定された値または要素を選択すること。
【0027】
本発明の製造方法の工程(a)は、トータルの多孔度、多孔度のクラス、および孔分布(例えば、所定のクラスにおける孔サイズ分布)により構成される群から選択される少なくとも1つの特徴を規定することを含む。有利なことには、これらの特徴の少なくとも2つ、より詳細には、上記3つの特徴が工程(a)において規定される。
【0028】
本発明の方法の工程(b)は、種々の様式で行われ得る。
【0029】
有利なことには、この工程は、上で一覧されたパラメーターの中から選択される少なくとも1つのパラメーターについて種々の値(または種々の要素)を試験すること、および、工程(a)で規定された少なくとも1つの特徴を得ることができる値(または要素)を決定することを含む。
【0030】
変形例として、本発明の方法の工程(b)は、以前に得られたデータ、特に当業者が入手容易な科学文献または特許出願に記載のデータに基づいて、工程(a)で規定された少なくとも1つの特徴を得ることができる値(または要素)を同定することを含み得る。
【0031】
特に、規定された孔の特性の各々について、工程(b)を複数回繰り返すことが必要とされる場合がある。
【0032】
より詳細には、本発明は、制御された多孔性を有するジオポリマーの調製方法であって、任意にシリケート成分を含み得る活性化溶液中におけるアルミノシリケート源の脱溶液/重縮合工程を含む、方法に関する。当該方法は、以下を選択することを含む工程を含む:
− 水と接触可能な多孔度(water-accessible porosity)が約15%と約65%との間であるジオポリマーを得るための、水の総量および/または任意のシリケート成分の粒子サイズ分布について予め決定された値。有利なことには、水と接触可能な多孔度は、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%または約65%である;
− 単一モードのミクロ多孔性、メソ多孔性またはマクロ多孔性を有するジオポリマーを得るための、シリカの総量について予め決定された値;および/または
− 孔分布が広い範囲または狭い範囲にわたる(more or less extensive)ジオポリマーを得るための、1つの特定の補償カチオンに対応する予め決定された要素(すなわち元素)。
【0033】
「約X%」という表現は、X%±2%を意味するものとして理解される。
【0034】
実際、本発明者らの研究により、ジオポリマーのトータルの多孔度がそれらの材料の処方パラメーター(特に、水の含有量)を改変することにより制御され得ることを示すことができた。したがって、理論には何ら限定されることなく、おそらく以下を調整することにより、水の量がジオポリマーのトータルの多孔度に影響を与える:
− アルミノシリケート源の固体粒子を最初に分離する空間;
− 重縮合中の水の生成に関連したゲル内部の多孔度;
− 溶液中のアルミネートおよびシリケートの濃度、したがって、ゲルのモルホロジー。
【0035】
特に、水の量は、HO/MOモル比を介して設定され得る。ここで、HOは、活性化溶液中に存在する水の量(モル)および場合によってはアルミノシリケート源に結合した水の量(モル)の合計に対応し、MOは、活性化溶液中の補償カチオン酸化物のモル量に対応する。当業者は、使用されるすべての反応物の標準的な化学分析(例えば、重量測定または蛍光X線分析)を用いることにより、発明的な努力を行うことなく、これらの値を得るおよび/または計算することができる。したがって、HO/MOモル比を増大させることにより、得られるジオポリマーのトータルの多孔度を増大させることができる。非限定的な例示によれば、HO/MOモル比が10より大きい、有利なことには11より大きければ、水と接触可能な多孔度が50%より大きいジオポリマーを得ることができることが、本発明者らにより示された。
【0036】
さらに、本発明者らにより、活性化溶液中に存在し得るシリケート成分の粒子サイズ分布、特に当該粒子サイズ分布のメジアン径または範囲が、得られるジオポリマーのトータルの多孔度に影響を与えることが示された。したがって、シリケート任意成分の粒子サイズ分布について予め決定された値は、有利なことには、シリケート任意成分の粒子サイズ分布のメジアン径について予め決定された値、または当該シリケート任意成分の粒子サイズ分布の範囲について予め決定された値から選択される。一方では、使用されるシリケート成分のメジアン径が低いほど、得られるポリマーは、水と接触可能な多孔度がより低くなる。他方では、シリケート成分の粒子サイズ分布の範囲が低いほど、得られるジオポリマーの孔分布が低い値近辺により集中し、結果として、ジオポリマーのトータルの多孔度がより低くなる。
【0037】
したがって、当業者は、適切な量の水あるいは粒子サイズ分布のメジアン径および/または範囲について適切な粒子サイズ分布を有するシリケート成分のいずれか、あるいは、適切な量の水ならびに粒子サイズ分布のメジアン径および/または範囲について適切な粒子サイズ分布を有するシリケート成分の両方を選択することにより、トータルの多孔度が制御されたジオポリマーを得ることができる。
【0038】
さらに、本発明者らの研究を通じて、シリカの適切な総濃度を選択することにより、多孔度のクラス(マクロ多孔性、メソ多孔性またはミクロ多孔性)がプロセス(processing)から選択され得ることが示された。
【0039】
したがって、水の設定量から出発すると、多孔性モードは、ゲルの特徴的な多孔度に依存する。これは、つまるところ、例えば反応物を活性化溶液に添加して所定量のシリケートモノマーをドープすることにより、重縮合の挙動を改変することになる。さらに、未反応のシリカはまた、水性の孔空間の残りに立体障害をもたらすようであり、したがって、材料の多孔性モードの減少をもたらすようである。上で説明したとおり、用いられるシリカの粒子サイズ分布は、障害の方法、したがって材料の多孔度に影響を有することが留意されるべきである。
【0040】
「シリカの量」という表現は、アルミノシリケート源により供給されるシリカおよび活性化溶液中に任意に存在し得るシリカの合計を意味するものとして理解される。SiO/MOモル比により、アルミノシリケート源および活性化溶液中に任意に存在し得るシリカにより供給されるシリコン酸化物のモル量に対応するシリカSiOの総量を評価することができる。上で説明したように、当業者は、使用されるすべての反応物の標準的な化学分析(例えば、重量測定または蛍光X線分析)を用いることにより、発明的な努力を行うことなく、これらの値を得るおよび/または計算することができる。したがって、SiO/MOモル比を1より大きく(特に、1.1より大きく)することにより、単一モードのメソ多孔性を有するジオポリマーを得ることができる。一方、SiO/MOモル比を1より小さく、特に0.9より小さく、さらには0.8より小さく、とりわけ0.7より小さくすることにより、単一モードのマクロ多孔性を有するジオポリマーを得ることができる。
【0041】
最後に、孔分布、および、特に1つの孔範囲における孔サイズもまた、適切な処方により予め決定され得る。孔の体積の分布が広い範囲または狭い範囲にわたる単一モードの多孔性、特に単一モードのマクロ多孔性またはメソ多孔性を有するジオポリマーは、1つ以上の適切な補償カチオンを選択することにより合成され得る。材料中の水およびシリカ量の設定においては、形成されるオリゴマーのサイズおよび配列は、使用される補償カチオンのサイズに依存する。したがって、このように制御された多孔度の分布は、当初のオリゴマー性構造に固有の多孔度のようである。
【0042】
補償カチオンは、特に、アルカリ材料、アルカリ土類材料およびそれらの混合物から選択される。用語「混合物」は、2つ以上のアルカリ金属の混合物、2つ以上のアルカリ土類金属の混合物、ならびに、1つ以上のアルカリ金属と1つ以上のアルカリ土類金属との混合物を意味するものとして理解される。アルカリ金属の中では、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)が特に好ましい。アルカリ土類金属の中では、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)が特に好ましい。
【0043】
本発明の方法の文脈において使用され得る補償カチオンの量は、Alのモル量に対して、特に0.1と10との間、さらには0.5と5との間、とりわけ0.8と2との間である。有利なことには、本発明の文脈において使用され得る種々の処方物においては、補償カチオンの量は、MO/Alのモル比が1に等しくなるようにして選択される。
【0044】
したがって、アルカリ金属補償カチオンの文脈において例示すれば、選択工程は、補償カチオンとしてナトリウムを含むジオポリマーの孔分布の範囲(これ自体は、補償カチオンとしてセシウムを含むジオポリマーの孔分布の範囲よりも小さい)よりも小さい、補償カチオンとしてカリウムを含むジオポリマーの孔分布の範囲を得るために、カリウム、ナトリウムおよびセシウムから補償カチオンを選択することを含む。後述の実施例セクションにおける実施例IVに基づけば、当業者は、格別の発明的な努力を示すことなく、用いられる補償カチオンまたは補償カチオン混合物の関数として、多孔度の分布に対する影響を、どのようにして決定するかを知ることができる。
【0045】
当業者に公知の任意のアルミノシリケート源が、本発明の方法の文脈において使用され得る。有利なことには、このアルミノシリケート源は、非晶性アルミノシリケートを含む固体源である。特に、このような非晶性アルミノシリケートは、イライト、スティルバイト、カオリナイト、ピロフィライト、アンダルサイト、ベントナイト、カイヤナイト、ミラナイト(milanite)、グロブナイト(grovenite)、アメス石(amesite)、コージライト、長石、アロフェン等のような天然アルミノシリケート鉱物;メタカオリンのようなか焼天然アルミノシリケート鉱物;純粋なアルミノシリケートによる合成ガラス;アルミナセメント;軽石;フライアッシュおよびガラス高炉スラグ(これらはそれぞれ、石炭の燃焼から、および、高炉中の溶融鉄鉱石の転化の間に得られる)のような工業的採鉱の副産物または残留物をか焼したもの;およびそれらの混合物から選択される。
【0046】
本発明の文脈において用いられるアルミノシリケート源は、固体形態であり、有利なことには、粉末または粒子混合物の形態である。これらの粒子は、特に0.1と40μmとの間、さらには0.5と20μmとの間、とりわけ1と10μmとの間のメジアン径(d50)を有する。一例を挙げると、アルミノシリケート源としてメタカオリンを用いる場合には、それは粒子形態であり、レーザー粒子サイズ分析により決定されるそのメジアン径(d50)は約6μmである。注意すべきこととして、平均直径(d50)が6μmである粒子とは、粒子の半分が6μmより小さい直径を有することを意味する。
【0047】
当業者は、処方の際に、発明的な努力を行うことなく、用いられるアルミノシリケート源の組成および所望の目的(すなわち、ジオポリマーに所望される特性)の関数として、アルミノシリケート源の使用量を計算する方法を知ることができる。実際、当業者は、所望の特性の関数として、この目的を達成するために最も適した値を選択することができ、したがって、HO/MOおよび/またはSiO/MOモル比の設定方法を知ることができる。
【0048】
「活性化溶液」という表現は、本発明の文脈においては、任意にシリケート成分を含み得る強アルカリ性水溶液を意味するものとして理解される。「強アルカリ性」という表現は、pHが9より、さらには10より、特に11より、とりわけ12より大きい溶液を意味するものとして理解される。
【0049】
上記活性化溶液は、イオン性溶液または塩の形態で補償カチオンまたは補償カチオン混合物を含む。したがって、活性化溶液は、特に、ナトリウムシリケート(NaSiO)、カリウムシリケート(KSiO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化セシウム(CsOH)、ならびに、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩などのそれらの誘導体の水溶液から選択される。
【0050】
市販の組成物を希釈するか、処方して調製することによる、上記のような活性化溶液を調製する種々の方法が、当業者に公知である。必要に応じてpHを所望の値に調整する種々の方法も、当業者に公知である。
【0051】
活性化溶液中に存在するシリケート成分は、活性化溶液中に存在する補償カチオンのシリケートにより提供されるシリケートのみならず、活性化溶液に添加される他のシリケートでもあり得る。したがって、活性化溶液中に存在するシリケート成分は、補償カチオンのシリケートの形態で導入されたシリケートのみであるか、添加されたシリケートであって、シリカ、コロイダルシリカおよびガラス状シリカから選択されるシリケートのみであるか、これら2つのシリケート源の混合物であることが明らかである。活性化溶液は、上で説明した種々の構成元素を混合することにより調製される。当該混合物は、上記元素の性質に応じた強いまたは弱い攪拌下で製造され得る。
【0052】
例えば、アルミノシリケート源としてメタカオリン(その化学組成は後述の表1に示される)を用いることにより、固体/溶液重量比は、本発明の文脈においては低く、特に0.6より小さく、有利なことには0.5より小さい。当該重量比は、溶液(すなわち、活性化溶液)の質量に対する固体(すなわち、アルミノシリケート源+補償カチオン+シリケート成分)の重量に対応する。
【0053】
本発明の主題である制御された多孔性を有するジオポリマーを調製する方法、より詳細には脱溶液/重縮合工程は、最初に、アルミノシリケート源および活性化溶液に含まれる元素の性質に応じた強いまたは弱い攪拌下で、アルミノシリケート源を活性化溶液と混合すること、次いで、得られた材料を、最終のジオポリマーが得られるまで温度、圧力および相対湿度が規定された条件下に貯蔵することを含む。
【0054】
これらの種々の工程は、20と120℃との間、特に20と100℃との間の温度で行われる。制御された多孔性を有するジオポリマーが得られるまでの反応時間は、上記温度範囲から選択される温度に依存する。具体的には、温度が室温に近くなるほど、反応時間が長くなる。反応時間はまた、用いられる補償カチオンの関数であることにも留意されるべきである。例えば、反応時間は、5分と48時間との間、特に1と42時間との間、有利なことには5と36時間との間、とりわけ10時間と24時間との間であり得る。
【0055】
これらの工程において用いられる最適な圧力および相対湿度条件は、用いられる種々の反応物(すなわち、アルミノシリケート源および活性化溶液中に存在する元素)の関数として当業者に公知である。非限定的な例示によれば、反応は、密封状態および大気圧に対応する圧力下で行われる。
【0056】
本発明はまた、本発明の方法によって調製され得るジオポリマーであって、単一モードのメソ多孔性を有し、孔の50%は、水銀圧入法により決定される接触可能な径が、5nmより小さい範囲におよぶか(高精度孔分布)、5nmと10nmとの間の範囲におよぶか(ブロードな孔分布)、10nmを超える範囲におよぶ(拡張した孔分布)、ジオポリマーに関する。
【0057】
本発明はまた、上で規定したジオポリマーを含む、触媒担体および/または化学種を分離するための担体、ならびに、当該ジオポリマーの使用に関する。当業者に公知のすべてのジオポリマーを用いる使用、特に上記先行技術文献に記載の使用は、本発明の範囲内であると想定される。より詳細には、本発明は、上で規定したジオポリマーの触媒作用またはろ過における使用に関する。
【0058】
以下の図面および実施例を読めば、本発明をより理解できるであろう。当該図面および実施例の目的は、用途において本発明を限定するものではなく、当業界におけるこの新規な発展により提供される可能性を示すためのみのものである。
【実施例】
【0059】
I:用いられる材料、処方および方法の選択
I.1.アルミノシリケート源
以下の実施例のすべてにおいて、用いたアルミナシリケート源はメタカオリンである。なぜなら、このアルミノシリケート源は、より「純粋な」、かつ、その特性が全体としてより均一なジオポリマーを得ることができるからである(Phair, J.W., J.D. Smith, and J.S.J. Van Deventer, Characteristics of
aluminosilicate hydrogels related to commercial <Geopolymers> Materials Letters, 2003. 57: p. 4356-4367、および、Zhang, Y.S., W. Sun, and Z.J. Li, Hydration process of potassium
polysialate (K-PSDS) geopolymer cement. Advances in Cement Research, 2005.
17(1): p. 23-28)。
【0060】
用いたメタカオリンはPieri Premix MK(Grace Construction Products社製)であり、蛍光X線分析により決定されたその組成を表1に示す。Brunauer-Emmett-Teller法により測定されたこの材料の比表面積は19.9m/gに等しく、レーザー粒子サイズ分析により決定された粒子のメジアン径(d50)は5.9μmに等しい。
【0061】
【表1】

【0062】
I.2.補償カチオン
以下の実施例のすべてにおいて、用いた補償カチオンはアルカリ金属である。具体的には、これらのケースが最も頻繁に文献に示されているので、主題のより良い説明となる(例えば、Zhang, Y.S., W. Sun, and Z.J. Li, Hydration process of potassium
polysialate (K-PSDS) geopolymer cement. Advances in Cement Research, 2005.
17(1): p. 23-28、Palomo, A., S. Alonso, A. Fernandez
Jiminez, I. Sobrados, and J. Sanz, Alkaline activation of fly ashes. A NMR
study of the reaction products. Journal of American Ceramic Society, 2004.
87(6): p. 1141-1145、および、Fernandez-Jimenez, A., A.
Palomo, and M. Criado, Microstructure development of alkali-activated fly ash
cement: a descriptive model. Cement and Concrete Research, 2005. 35(6): p.
1204-1209)。
【0063】
さらに、ジオ重合反応を最大にし、および、材料の電気的中性を保証するために、混合物に導入されるアルカリ金属の量を、MO/Alの全体比率が1に等しくなるよう設定した。用いたアルカリ金属水酸化物溶液は、NaOH、KOH(Prolabo、Rectapur、98%)およびCsOH(Alfa Aesar、99.9%)の細粒を超純水に溶解することにより調製した。
【0064】
I.3.シリカ
系に任意に添加されるシリカは非晶性シリカ(BDH)であり、その平均径は128.81μmに等しい。
【0065】
I.4.合成方法
構成成分の混合は2段階で行った。
第1段階においては、アルカリ金属シリケートを含む活性化溶液を調製した。適切な製品を超純水中に溶解することにより、アルカリ金属水酸化物溶液を得た。次いで、系に任意に添加される非晶性シリカをこれらの溶液に導入し、30分間混合した。したがって、これらの活性化溶液の組成は、その全体が以下により表される:
処方物に用いられたアルカリ金属の性質およびそれらの任意のモル比;
O/MOモル比(eで表される);
SiO/MOモル比(sで表される)。
【0066】
第2段階においては、標準化された実験室ミキサー(European Standard EN 196-1)中、低速で1分間、および高速で2分間、メタカオリンと上記活性化溶液とを混合することにより、ジオポリマーを調製した。次いで、材料を、4×4×16cmの寸法のTeflon(登録商標)製型に配置し、数分間振動させ、次いで、20℃および大気圧の密封条件で24時間置いた。この期間の経過後、ジオポリマーを型からはずし、次いで、密封袋に入れ、室温および大気圧で使用まで貯蔵した。
【0067】
I.5.実験方法
ジオポリマーの多孔度を以下により特徴づけた:
− Association Francaise
pour la Construction (AFPC)〔フランス建設協会〕およびAssociation
Francaise de Recherches et d’Essais sur les Materiaux et les Constructions(AFREM)〔材料および建築に対する研究および試験のフランス協会〕の推奨による水と接触可能なポロシメトリー、多孔度を測定するこの方法は、構造材料のトータルの多孔度を測定する最も代表的なものの1つである(AFPC-AFREM, Concrete durability. Recommended methods for measuring
quantities associated with durability, Compte-rendu des journees techniques.
1997, Toulouse.
283);
− 水銀圧入ポロシメトリー。
これらの測定は、試験圧力を0.2〜61000psiで変更しながら、Micromeritics Autopore IV 9510装置で行った。
【0068】
II:水の量によるトータルの多孔度の制御
ジオポリマー材料の処方パラメーター(特に、水の量)を変化させることにより、ジオポリマーのトータルの多孔度を制御することができる。
【0069】
表2は、異なる組成のジオポリマーについて行われた水多孔度測定(water porosity measurement)を要約する。水含有量の小さな変動が、測定されたトータルの多孔度に大きな影響を与えている。
【0070】
【表2】

【0071】
III:シリカ量による孔のモードの制御
ここでの目的は、制御された、かつ異なる孔モードを有する2つの材料を処方することである:第1の材料は、単一モードのマクロ多孔性(約100nmを中心とする)を有し、第2のジオポリマーは、単一モードのメソ多孔性(約10nmを中心とする)を有する。
【0072】
これらの2つのジオポリマーを、以下の処方にしたがって製造した:
補償カチオン:ナトリウムのみ、s=1.2、e=12;
補償カチオン:ナトリウムのみ、s=0.6、e=12。
これらの材料についての水銀圧入ポロシメトリーによる分析は、仕様が満たされていること、および、孔の接触可能な径(pore access diameter)が初期の制約に対応することを明確に示している(図1)。
【0073】
IV:補償カチオンの性質による孔分布の制御
ここでの目的は、単一モードのメソ多孔性を有し、その孔の体積分布が広い範囲または狭い範囲にわたる、3つの材料を処方することである。
【0074】
これらのジオポリマーを、以下の処方にしたがって製造した:
補償カチオン:ナトリウムのみ、s=1.2、e=12;
補償カチオン:カリウムのみ、s=1.2、e=12;
補償カチオン:セシウムのみ、s=1.2、e=12。
これらの材料についての水銀圧入ポロシメトリーによる分析は、仕様が満たされていることを明確に示している(図2):
カリウムジオポリマーは単一モードの多孔性を有し、その分布は高度に緻密化されている。すなわち、孔のうち50%を超えるものが、4.7と6.1nmとの間の接触可能な径を有している;
セシウムジオポリマーもまた単一の孔モードを有するが、その孔分布はカリウムジオポリマーよりも広い:すなわち、孔の50%は、4.1と8.8nmとの間の接触可能な径を有している;
ナトリウムジオポリマーの多孔度は、いまだ単一モードの範疇で、かつ選択的であるが、その分布はより広がっている:すなわち、孔の範囲はより大きなサイズであり、孔の50%は、9.9と16.5nmとの間の接触可能な径を有している。
【0075】
V:任意シリケート成分の性質の影響
ここでの目的は、活性化溶液が含有し得るシリケート成分の影響を調べることであり、より詳細には、活性化溶液に導入されたシリカの性質の影響を調べることである。
【0076】
したがって、異なる3つのタイプのシリカを活性化溶液に導入した:
− 沈降シリカ(BDH)、粒子サイズ:d10=75.29μm、d50=128.81μm、d90=216.18μm;
− Tixosil 331(Rhodia Silicesから入手可能な沈降シリカ)、粒子サイズ:d10=3.59μm、d50=9.19μm、d90=25.02μm;
− Tixosil 38(Rhodia Silicesから入手可能な沈降シリカ)、粒子サイズ:d10=1.40μm、d50=3.66μm、d90=8.79μm。
粒子サイズは、レーザー粒子サイズ分析により決定した。
【0077】
V.1.水と接触可能な多孔度についての結果
下記表3は、Tixosil 331および38シリカを用いて合成したジオポリマーのトータルの多孔度の値を、BDH沈降シリカを用いて合成したジオポリマーの多孔度と比較する。
【0078】
メジアン径および粒子サイズ分布の範囲が、水と接触可能な多孔度に顕著な影響を与えている:メジアン径が小さいほど、トータルの多孔度も小さい。
【0079】
【表3】

【0080】
V.2.孔サイズ分布についての結果
表4は、調べたジオポリマーの処方を要約する。
【0081】
【表4】

【0082】
水銀圧入ポロシメトリーにより得られた孔の接触可能な径のサイズ分布を図3に示す。
【0083】
Tixosil 38シリカにより、孔の分散がTixosil 331よりも小さい値に中心を有するジオポリマーを得ることができる。Tixosil 38は、Tixosil 331よりもわずかに小さい粒子サイズを有しているが、分散はずっと小さい。
【0084】
得られた多孔度はいつもメソ多孔性であり(シリカ含有量)、かつ緻密化されている(カリウム補償カチオン)こと:したがって、シリカの粒子サイズは、主に、材料の水と接触可能な多孔度および孔モードの中心となる特徴的な寸法の径に影響を与えることが強調されるべきである。
【0085】
結論
ジオポリマーの思慮的な処方により、これらの材料のマクロ多孔性および/またはメソ多孔性を制御することができ、これらの材料、すなわち非晶性アルミノシリケート無機ポリマーの多孔度を設計する道を開くものである
【産業上の利用可能性】
【0086】
このタイプの材料は、加工容易であり、安価であり、かつ、その熱特性および耐火特性を今さら示す必要がないので、その用途は、触媒担体および/または化学種を分離するための担体を用いる異なる産業部門において多様であり得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された多孔性を有するジオポリマーの調製方法であって、任意にシリケート成分を含み得る活性化溶液中におけるアルミノシリケート源の脱溶液/重縮合工程を含み、以下の連続的な工程を含む、方法:
a.調製されるジオポリマーの多孔度に関する少なくとも1つの特徴を規定すること;
b.水の総量、シリカの総量、補償カチオン、およびシリケート任意成分の粒子サイズ分布から選択される少なくとも1つのパラメーターについて、工程(a)で規定された特徴を得ることができる値または要素を決定すること;および
c.工程(b)で予め決定された値または要素を選択すること。
【請求項2】
前記工程(c)が、水と接触可能な多孔度が約15%と約65%との間であるジオポリマーを得るために、水の総量および/または前記シリケート成分の粒子サイズ分布について予め決定された値を選択することを含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記シリケート成分の粒子サイズ分布についての前記予め決定された値が、該シリケート成分の粒子サイズ分布のメジアン径について予め決定された値、または該シリケート成分の粒子サイズ分布の範囲について予め決定された値から選択される、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記選択工程が、単一モードのミクロ多孔性、メソ多孔性またはマクロ多孔性を有するジオポリマーを得るために、シリカの総量について予め決定された値を選択することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の調製方法。
【請求項5】
SiO/MOモル比が1を超えるシリカの総量を選択することにより、単一モードのメソ多孔性を有するジオポリマーを得ることを可能とする、請求項1から4のいずれかに記載の調製方法:
ここで、MOは、活性化溶液中の補償カチオン酸化物のモル量を表す。
【請求項6】
SiO/MOモル比が1より小さいシリカの総量を選択することにより、単一モードのマクロ多孔性を有するジオポリマーを得ることを可能とする、請求項1から4のいずれかに記載の調製方法:
ここで、MOは、活性化溶液中の補償カチオン酸化物のモル量を表す。
【請求項7】
前記選択工程が、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびその混合物から前記補償カチオンを選択することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の調製方法。
【請求項8】
補償カチオンとしてナトリウムを含むジオポリマーの孔分布(これ自体は、補償カチオンとしてセシウムを含むジオポリマーの孔分布よりも小さい)よりも小さい、補償カチオンとしてカリウムを含むジオポリマーの孔分布を得るために、前記選択工程が、カリウム、ナトリウムおよびセシウムから補償カチオンを選択することを含む、請求項1から7のいずれかに記載の調製方法。
【請求項9】
前記アルミノシリケート源が、非晶性アルミノシリケートを含む固体源である、請求項1から8のいずれかに記載の調製方法。
【請求項10】
前記非晶性アルミノシリケートが、天然アルミノシリケート鉱物、か焼天然アルミノシリケート鉱物、純粋なアルミノシリケートによる合成ガラス、アルミナセメント、軽石、工業的採鉱の副産物または残留物をか焼したもの、およびそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
前記活性化溶液が、任意にシリケート成分を含み得る強アルカリ水性溶液である、請求項1から10のいずれかに記載の調製方法。
【請求項12】
前記シリケート成分が、
− 補償カチオンシリケートの形態で導入されたシリケート;
− シリカ、コロイダルシリカおよびガラス状シリカから選択される、添加されたシリケート;
− これら2つのシリケート源の混合物
である、請求項1から11のいずれかに記載の調製方法。
【請求項13】
前記活性化溶液が9を超えるpHを有する、請求項1から12のいずれかに記載の調製方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の方法によって調製され得るジオポリマーであって、
単一モードのメソ多孔性を有し、
孔の50%は、水銀圧入法により決定される接触可能な径が、5nmより小さい範囲におよぶか(高精度孔分布)、5nmと10nmとの間の範囲におよぶ(ブロードな孔分布)、
ジオポリマー。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかに記載の方法によって調製され得るジオポリマーであって、
単一モードのマクロ多孔性を有し、
孔の50%は、水銀圧入法により決定される接触可能な径が、10nmより小さい範囲におよぶか(高精度孔分布)、10nmと50nmとの間の範囲におよぶ(ブロードな孔分布)、
ジオポリマー。
【請求項16】
請求項14または15に記載のジオポリマーを含む、触媒担体および/または化学種を分離するための担体。
【請求項17】
触媒作用における請求項14または15に記載のジオポリマーの使用。
【請求項18】
ろ過における請求項14または15に記載のジオポリマーの使用。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−500494(P2011−500494A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529367(P2010−529367)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063865
【国際公開番号】WO2009/050196
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510097644)コミッサリア ア ロンネルジー アトミック エ オ ゾンネルジー ザルテルナティーフ (33)
【Fターム(参考)】