説明

制御パターン生成方法、動作補助装置、および、制御パターン生成プログラム

【課題】患者に合わせたリハビリ用歩行のための動作補助装置の制御パターンを容易に生成する制御パターン生成方法等を提供する。
【解決手段】被補助者の脚の膝関節部に装着されており、歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する動作補助装置(S)の補助手段(10)が装着されている脚の踵が、歩行面65から離れたことを検出するための踵データSh、膝関節部の屈曲角度(θk)、および、脚の股関節部の屈曲角度(θH)を検出し(S3)、検出された踵データに基づき、踵が歩行面から離れている遊脚期(T2)を特定し(S5)、膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングtbを特定し(S6)、極値タイミングにおける股関節部の屈曲角度の値を、股関節部の屈曲角度における閾値角度θH1に設定し(S7、S8)、閾値角度に基づき、遊脚期において補助手段による屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被補助者の動作を補助する動作補助装置の制御パターンを生成する制御パターン生成方法、動作補助装置、および、制御パターン生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
膝疾患の患者が行う回復訓練等(いわゆるリハビリテーション)において、従来は、例えば理学療法士等の補助を受けつつ、その患者が自力で必要な回復訓練等を行っていた。一方近年では、モータ等の駆動源を使用する他動的な回復訓練等(外力を用いて行う回復訓練等)が行われ始めている。このような他動的な回復訓練等には、その患者の身体に装着されて歩行における膝関節部の動きを補助する、いわゆる装着型の歩行アシストロボットが用いられる。この歩行アシストロボットは、患者の膝関節部を含む上腿部及び下腿部にハーネス等を用いて装着され、膝関節部の動きを補助する(換言すれば強制的に動かす)ように動作する。即ち、適切な歩行パターンにおける膝関節部としての動きが実現されるように歩行アシストロボットが動作して、当該膝関節部を動かす。これにより患者は、歩行アシストロボットによる動きに追随するように自立歩行することで、必要な回復訓練等を行える。
なお上記回復訓練等に用いることが可能な人の歩行の補助のための装置としては、例えば下記特許文献1に記載されている歩行補助装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−135543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した歩行補助装置を用いた回復訓練等においては、患者にとって適切なリハビリを行うために適切な歩行パターンを設定し、さらに、歩行パターンに合わせて、歩行補助装置の歩行パターン制御を設定する必要があった。この歩行パターンや歩行パターン制御の設定には、予め多数の症例を集めたり、歩行パターンを複数準備したり、患者の歩行を撮影等により測定したりと、歩行パターン等の設定のために時間を要していた。また、歩行パターンを患者の状態に応じて設定する際、歩行補助装置等を患者に装着してもらい測定して解析を行うために時間を要し患者の負担となっていた。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、患者に合わせたリハビリ用歩行のための動作補助装置の制御パターンを容易に生成する制御パターン生成方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置が制御パターンを生成する制御パターン生成方法において、前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出ステップと、前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出ステップと、前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出ステップと、前記踵データ検出ステップで検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定ステップと、前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定ステップと、前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定ステップと、前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成ステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制御パターン生成方法において、前記股関節角度検出ステップ、および、前記股関節角度検出ステップの前に、前記補助手段から脚への駆動力の伝達を遮断する駆動力遮断ステップを更に有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の制御パターン生成方法において、前記制御パターン生成ステップは、前記踵が前記歩行面から離れたタイミングから前記屈曲動作の補助を開始するように、前記補助手段を制御する制御パターンを生成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、前記設定された閾値角度を変更する閾値角度変更ステップを更に有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、前記制御パターン生成ステップは、前記補助手段をパルス幅変調方式により変調された駆動信号により駆動する制御パターンであって、デューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する前記駆動信号により前記補助手段を制御する制御パターンを生成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、前記制御パターン生成ステップは、前記踵が前記歩行面から離れたことが予め設定された時間内に検出されないとき、前記補助手段を初期化する制御パターンを生成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、前記制御パターン生成ステップは、前記被補助者の右脚に装着されている前記補助手段と、前記被補助者の左脚に装着されている前記補助手段と、を別個独立に制御する制御パターンを生成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、前記脚の股関節部の屈曲角度に基づき、前記股関節部の屈曲角度を補正する補正値を算出する補正値設定ステップを更に有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置の制御パターンを生成する動作補助装置において、前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出手段と、前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出手段と、前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出手段と、前記踵データ検出手段で検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定手段と、前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定手段と、前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定手段と、前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成手段と、を備える。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置が制御パターンを生成するための制御パターン生成プログラムにおいて、コンピュータに、前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出ステップと、前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出ステップと、前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出ステップと、前記踵データ検出ステップで検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定ステップと、前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定ステップと、前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定ステップと、前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、膝関節部の屈曲動作を補助する動作補助装置を、被補助者の脚に装着させた状態で、動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出し、膝関節部の屈曲角度および股関節部の屈曲角度を検出し、膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングにおける股関節部の屈曲角度の値を、股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定し、閾値角度に基づき、遊脚期において補助手段による屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成することにより、リハビリ効果を高めるための屈曲動作から伸展動作の補助に切り替えるタイミングおよび伸展動作のためのトリガを容易に求めて設定できるので、被補助者である患者に合わせたリハビリ用歩行のための動作補助装置の制御パターンを容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る歩行補助装置を患者に装着した際の状態図である。
【図2】実施形態に係る駆動ユニットを患者の両脚に装着した際の状態図である。
【図3】実施形態に係る歩行補助装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る歩行補助装置における制御パターンを生成する動作例を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る歩行補助装置における膝関節部および股関節部の屈曲角度の一例を示す模式図である。
【図6】実施形態に係る歩行補助装置におけるセンサのデータと制御パターンの一例を示す模式図である。
【図7】実施形態に係る歩行補助装置における他の制御パターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図1乃至図7を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、例えば膝疾患を持つ患者(被補助者の一例)の回復訓練等としての歩行における膝関節の動作を補助する歩行補助装置に対して本発明を適用した場合の実施形態である。また図1は実施形態に係る歩行補助装置を患者に装着した際の状態図であり、図2は実施形態に係る駆動ユニットを患者の両脚に装着した際の状態図である。また図3は当該歩行補助装置の構成を示すブロック図である。図4は歩行補助装置における制御パターンを生成する動作例を示すフローチャートである。更に図5は、当該歩行補助装置における膝関節部および股関節部の屈曲角度の一例を示す模式図である。図6は、当該歩行補助装置におけるセンサのデータと制御パターンの一例を示す模式図である。図7は当該歩行補助装置における他の制御パターンの一例を示す模式図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、実施形態に係る歩行補助装置S(動作補助装置の一例)は、患者の下肢部(両脚)に着脱自在のテープ状固定具やバンド等の固定具6によって夫々取り付けられる補助手段の一例としての一対の駆動ユニット10を備えている。なお以下の説明では、左脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット11とし、右脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット12として説明する。また駆動ユニット11及び駆動ユニット12に共通する説明を行う場合は、一般に駆動ユニット10として説明する。
【0021】
一つの(即ち、右脚又は左脚いずれか一方用の)駆動ユニット10には、図1に示すように、患者の膝部5の関節部分に取り付けられ、膝関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部3と、患者の股部9の関節部分に取り付けられ、股関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部8と、が取り付けられている。
【0022】
先ずリンク機構部3は、図1に示すように、例えば患者の大腿部に巻きつけられる上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク3aと、患者の下腿部に巻きつけられる下部脚当て7の側面に取り付けられる第二リンク3bと、駆動ユニット10から動力を得て第一リンク3aに対して第二リンク3bを歩行の前後方向に揺動させる第三リンク3cと、を含んで構成される。第一リンク3aは、患者の腰部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク3bは患者の膝部5側から脚の先端(地面)側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク3aと第二リンク3bとは、患者の膝部5近傍で回動可能に連結されている。
【0023】
この連結部には、第一リンク3aと第二リンク3bとの成す角度を示す膝関節角度データを出力する膝関節角度センサ(膝関節角度検出手段の一例)が内蔵されている。この膝関節角度センサは、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。また、第三リンク3cの端部が、第二リンク3bの中央近傍に連結されている。上部脚当て4及び下部脚当て7は、夫々が図示しない一対の脚当て部材を含んで構成されており、当該脚当て部材は患者の大腿部及び下腿部の周囲を覆うように配置され、固定具6によって着脱可能に取り付けられる。また、上部脚当て4及び下部脚当て7は、例えばポリプロピレン樹脂等を成形して形成されており、ユーザの大腿部と接する部分には、伸縮自在の図示しないスポンジ部材等が取り付けられている。
【0024】
一方リンク機構部8は、図1に示すように、上記した上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク8aと、患者の腰部に巻きつけられるベルト23の側部に取り付けられる第二リンク8bと、を含んで構成される。第一リンク8aは、患者の臀部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク8bは患者の腰部側から臀部側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク8aと第二リンク8bとは、患者の股部9近傍で回動可能に連結されている。この連結部にも、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す角度を示す股関節角度データを出力する股関節角度センサ(股関節角度検出手段の一例)が内蔵されている。この股関節角度センサも、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。
【0025】
更に図2に示すように、両脚に夫々取り付けられる駆動ユニット11及び駆動ユニット12には、当該駆動ユニット11及び駆動ユニット12間でデータ通信するための通信ユニット20が着脱可能に取り付けられる。この通信ユニット20は、ケーブル21と、そのケーブル21の途中に配置される通信用基板及び制御用基板並びに電池等が収容された中継ボックス22と、を備え、上記ベルト23によって患者の腰部に取り付けられる。また通信ユニット20は、ケーブル21の両端に非接触でデータを通信可能な通信端子を備えた通信ヘッド25を備えている。一方、駆動ユニット10の筐体10aには、当該通信ヘッド25を挿入可能な孔部10bを有しており、孔部10bに対して当該通信ヘッド25が着脱可能になっている。なお、上記中継ボックス22内の制御用基板には、実施形態に係る歩行補助装置Sとしての動作を制御する後述のCPU等が装着されている。更に駆動ユニット10は、電力を受電又は所定のデータを通信可能な図示しない通信ヘッドを筐体10aの内部に備えている。そして、駆動ユニット10の筐体10aに有する孔部10bには、通信ヘッド25が挿入されて、非接触で上記図示しない通信ヘッドに電気的に接続され、データ通信可能となっている。
【0026】
次に、実施形態の歩行補助装置Sの構成について、より具体的に図3を用いて説明する。
【0027】
実施形態の歩行補助装置Sは、図3に示すように、右足駆動系Rと、左足駆動系Lと、中継ボックス22内の上記制御用基板に備えられた制御手段の一例としてのCPU(Central Processing Unit)42と、患者又は理学療法士等が操作可能な位置に備えられ且つCPU42に対する指令操作を行うための操作ボタン等を備える操作部41と、CPU42に接続され且つ患者又は理学療法士等が視認可能な位置に備えられた液晶ディスプレイ等からなる告知手段の一例としての表示部40と、を備えている。なお、CPU42は、オペレーティングシステムや歩行補助装置Sを制御する制御プログラムや、制御パターンを生成するための制御パターン生成プログラム等のソフトウェアや、検出したデータや、生成した制御パターン等のデータを記憶する記憶部(図示せず)を有している。この記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクまたはシリコンディスク等により構成されている。
【0028】
また各脚の駆動系(右足駆動系R及び左足駆動系L)には、夫々、上記駆動ユニット10と、上記固定具6並びに上部脚当て4及び下部脚当て7と、膝関節角度センサ16(膝関節角度検出手段の一例)を含むリンク機構部3と、股関節角度センサ15(股関節角度検出手段の一例)を含むリンク機構部8と、足裏センサ17(踵データ検出手段の一例)と、が含まれている。駆動ユニット10には、駆動手段の一例としてのDCモータ50と、各リンクに接続されているギア部52と、DCモータ50からの駆動力を、ギア部52を介して各リンクに伝達する駆動手段の一例としてのクラッチ部51(駆動力遮断手段の一例)と、が含まれている。
【0029】
以上の構成において、DCモータ50の回転方向及び回転速度の制御及びクラッチ部51における開放/接続の制御は、夫々CPU42により行われる。更に足裏センサ17は、図1に例示するように右足及び左足の足裏に夫々装着されており、各脚が床又は地面から離れたこと及びそれらに接地したことを夫々示す信号をCPU42に出力する。また膝関節角度センサ16は上記膝関節角度データを生成してCPU42に出力し、更に股関節角度センサ15は上記股関節角度データを生成してCPU42に出力する。
【0030】
次に、図1乃至図3を用いて説明した構成を備える歩行補助装置Sにおける制御パターン生成について、具体的に図4乃至図6を用いて説明する。
【0031】
まず、歩行補助装置Sが患者に装着され、制御パターン生成の処理が行われる。
【0032】
図4に示すように、歩行補助装置Sは、クラッチ部51を開放する(ステップS1)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、クラッチ部51を開放し、DCモータ50からリンク機構部3への駆動力の伝達を遮断する。これにより、リンク機構部3が、DCモータ50の永久磁石等による抵抗力の影響を受けずにフリーに動き、患者が脚を動かし易くなる。このように歩行補助装置SのCPU42、または、クラッチ部51は、補助手段から脚への駆動力の伝達を遮断する駆動力遮断手段の一例として機能する。
【0033】
次に、歩行補助装置Sは、股関節角度センサ15のデータを取得し、股関節角度の補正値を決定する(ステップS2)。歩行補助装置Sを装着した患者が立ち止まった状態のとき、歩行補助装置SのCPU42は、股関節角度センサ15から、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す角度θH(股関節部8の屈曲角度の一例)を示す股関節角度データを取得し、角度θHの補正値とする。なお、歩行補助装置SのCPU42は、取得した股関節角度データをCPU42の記憶部に記憶する。また、患者に動きがあり、データに変動がある場合、歩行補助装置SのCPU42は、股関節角度データの平均値を算出し、この平均値を角度θHの補正値とする。
【0034】
ここで、図5(A)に示すように、患者の膝部5の関節部分における角度θkは、患者60の大腿部(第一リンク3aに対応)を基準に測定される。患者の股部9の関節部分における角度θHは、患者60の体幹部(第二リンク8bに対応)を基準に測定され、基準より患者60の大腿部が歩行方向の後方にある場合がプラスであり、歩行方向の前方にある場合がマイナスである。歩行面65は、床又は地面等である。
【0035】
また、図5(A)は、歩行補助装置Sの装着位置のずれがなく、患者60が直立して歩く場合である。一方、図5(B)に示すように、患者60が前屈みで歩く等の癖がある場合や、歩行補助装置Sの装着位置のずれがある場合があるので、歩行補助装置SのCPU42は、角度θHの補正値(角度α)として、補正された角度φ=θH−αとして、股関節角度データをステップS2で取得する。
【0036】
次に、歩行補助装置Sを装着した患者60が3、4歩程歩く状態で、歩行補助装置Sは、股関節角度センサ15、膝関節角度センサ16、および、足裏センサ17のデータを取得する(ステップS3)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データを取得し、膝関節角度センサ16から、第一リンク3aと第二リンク3bとの成す角度θk(膝関節部の屈曲角度の一例)を示す膝関節角度データを取得する。足裏センサ17に関しては、歩行補助装置SのCPU42は、足裏センサ17から、脚が床又は地面等の歩行面65から離れたこと及びそれらに接地したことを示す信号(踵データの一例)を取得する。
【0037】
図6に示すように、歩行補助装置SのCPU42は、膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データを取得し、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データを取得し、足裏センサ17から足裏センサのデータShを取得する。なお、歩行補助装置SのCPU42は、取得した股関節角度データ、膝関節角度データ、および、足裏センサ17のデータを、CPU42の記憶部に記憶する。
【0038】
このように歩行補助装置SのCPU42または足裏センサ17は、被補助者の脚の膝関節部に装着されており、歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する動作補助装置(歩行補助装置S)の補助手段が装着されている脚の踵が、歩行面65から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出手段の一例として機能する。また、歩行補助装置SのCPU42、または、股関節角度センサ15や膝関節角度センサ16は、膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出手段、脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出手段の一例として機能する。
【0039】
次に、歩行補助装置Sは、取得した足裏センサのデータShに基づき足裏センサのデータShの閾値を決定する(ステップS4)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、図6に示すように、足裏センサのデータShがLOWからHIGHになったとする閾値(足裏センサON閾値)や、足裏センサのデータShがHIGHからLOWになるとする閾値(足裏センサOFF閾値)を取得した足裏センサのデータShから設定する。なお、チャタリング防止のため、足裏センサON閾値と足裏センサOFF閾値とは異なってもよい。
【0040】
次に、歩行補助装置Sは、足裏センサ17のデータに基づき、歩行周期、遊脚期、および、立脚期を特定する(ステップS5)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、図6に示すように、足裏センサのデータShがHIGH(脚が床又は地面から離れた状態)になった時点taから、足裏センサのデータShがLOW(脚が床又は地面に接地した状態)になった時点tdを経て、再びデータShがHIGHになった時点teまでの期間T3(踵の離床時(ta)から、次の踵の離床時(te))を歩行周期として特定する。そして、歩行補助装置SのCPU42は、図6に示すように、足裏センサのデータShがHIGHになった時点taから、足裏センサのデータShがLOWになった時点tdを遊脚期の期間T2(踵の離床時(ta)から踵の着床時までの時間(td))として特定し、足裏センサのデータShがLOWになった時点tdから、再びデータShがHIGHになった時点teまでを立脚期(T3−T2)として特定する。
【0041】
なお図6において、「立脚期」とは、歩行において左右いずれか一方の脚に患者の体重がかかっている期間を示す。また「遊脚期」とは、歩行において当該いずれか一方の脚に患者の体重がかかっていない期間(換言すれば、次の立脚期に移行するためにその脚を床又は地面から離して(浮かせて)前に移動させている期間)を示す。
【0042】
このように歩行補助装置SのCPU42、検出された踵データに基づき、踵が歩行面65から離れている遊脚期(T2)を特定する遊脚期特定手段の一例として機能する。
【0043】
次に、歩行補助装置Sは、膝関節角度のデータのピーク箇所を特定する(ステップS6)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、取得した膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データが、遊脚期において最大となるピーク箇所θkp、すなわち、膝関節部の屈曲角度が最大値になる極値タイミングtbを特定する。この膝関節部の屈曲角度が最大値は、図5(A)に示すように、患者60の大腿部を基準とした値であり、膝は最も屈曲した状態である。
【0044】
このように歩行補助装置SのCPU42、膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングtbを特定する極値タイミング特定手段の一例として機能する。
【0045】
次に、歩行補助装置Sは、股関節に関する閾値角度を設定する(ステップS7)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、極値タイミングtbにおける股関節角度データである角度θH1を求め、股関節に関する閾値角度θH1とする。なお、閾値角度θH1は、図6に示すように、屈曲動作補助期間T1(踵の離床時taから膝関節のピークθkpの極値タイミングtb)を設定するために利用される。
【0046】
このように歩行補助装置SのCPU42は、極値タイミングtbにおける股関節部の屈曲角度の値を、股関節部の屈曲角度における閾値角度θH1に設定する閾値角度設定手段の一例として機能する。
【0047】
次に、歩行補助装置Sは、屈曲動作トリガおよび伸展動作トリガを設定する(ステップS8)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における補助の制御(特に屈曲動作の補助制御)を開始する補助開始トリガ(屈曲動作トリガ)を、足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上のとき(踵の離床時ta)と設定する。また歩行補助装置SのCPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における補助の制御(特に伸展動作の補助制御)を終了する補助終了トリガを、足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下のとき(踵の着床時td)と設定する。そして、歩行補助装置SのCPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替えるための伸展動作トリガを、股関節角度センサ15のから角度θHを示す股関節角度データが、閾値角度θH1以下になったとき(極値タイミングtb)と設定する。
【0048】
このように歩行補助装置SのCPU42は、踵が歩行面65から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始するように、補助手段(駆動ユニット10)を制御する制御パターンを生成する制御パターン生成手段の一例として機能する。また歩行補助装置SのCPU42は、閾値角度θH1に基づき、遊脚期(T2)において補助手段(駆動ユニット10)による屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成手段の一例として機能する。
【0049】
次に、歩行補助装置Sは、膝関節制御用の駆動信号のパターンを生成する(ステップS9)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、PWM(Pulse Width Modulation)のデューティー比が、図6に示すように、時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号D(制御パターンの一例)を生成する。図6に示すように、歩行補助装置Sにおいて補助動作の制御をt1からt7の時間に割り当て、脚の踵が床又は地面から離れた状態になった時点taを歩行の起点(補助の起点)とし、屈曲動作における駆動信号Cの立上り時間を時間t1とし、PWMのデューティー比が100%の持続時間をt2とし、立下り時間をt3とし、正の台形波形とする。なお、時間t1において、起動を早くするため、デューティー比が0%からではなく、歩行補助装置SのCPU42は、例えば35%位からスタートさせる。また、伸展動作の立下り時間をt4とし、PWMのデューティー比が−100%の持続時間をt5とし、立上り時間をt6とし、負の台形波形とする。また、歩行補助装置SのCPU42は、生成された制御パターンをCPU42の記憶部に記憶する。
【0050】
このように歩行補助装置SのCPU42は、補助手段をパルス幅変調方式により変調された駆動信号により駆動する制御パターンであって、デューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号Dにより補助手段を制御する制御パターンを生成する制御パターン生成手段の一例として機能する。
【0051】
なお、駆動信号Cに関して、立上り、立下り時間は、例えば、t1、t3、t4、t6=0.1秒とする。そして、持続時間t2は、屈曲動作補助期間T1から、t2=T1−t1−t3のように算出される。持続時間t5は、屈曲動作補助期間T1と遊脚期の期間T2から、t5=T2−T1−t4−t6のように算出される。
【0052】
立脚期における時間t7は、脚の屈曲、伸展動作が終了しても、歩行補助装置Sにおける機械の原点出しをするための屈曲延長時間である。時間t7は、歩行周期の期間T3と、遊脚期の期間T2とから、t7=a×(T3−T2)のように算出される。ここで、係数aは0〜1の値である。a=1の場合は、立脚期の間中、少しずつ伸展動作の力が、脚に加えられることになる。
【0053】
次に、歩行補助装置Sにおける制御時の動作について説明する。
【0054】
歩行補助装置Sは、生成された駆動信号Dの制御パターンを記憶部から読み出し、制御パターンに従い、歩行補助装置Sを装着した患者60の動作を補助する。例えば、患者が片方の脚(例えば、右脚)を上げ、歩行補助装置SのCPU42が、右足駆動系Rの足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上になったときに(補助開始トリガが感知されたとき)、駆動信号Dの制御パターンに従い、右足駆動系RのDCモータ50を駆動させ始める。そして、ギア部52およびクラッチ部51を介して、リンク機構部3に駆動力が伝達し、患者の右脚の膝が屈曲され始める。
【0055】
次に、駆動開始から時間t1経過したら、歩行補助装置SのCPU42は、PWMのデューティー比を100%にする。
【0056】
次に、駆動開始から時間(t1+t2)経過したら、歩行補助装置SのCPU42は、PWMのデューティー比を減少し始める。そして、患者の右脚の膝にかかる駆動力が減少し始める。
【0057】
次に、駆動開始から時間(t1+t2+t3)経過、または、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データが閾値角度θH1以上になったとき(伸展動作トリガが感知されたとき)、歩行補助装置SのCPU42は、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替える。PWMのデューティー比がプラスからマイナスへと反転する。ここで、図6に示すように、膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データが極値タイミングtbは、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データが極値になるタイミングtc(股関節部が前方に出始めるタイミング)より前にあるので、歩行補助装置Sは、タイミングtcよりも早めに伸展動作の補助を行う。
【0058】
次に、歩行補助装置SのCPU42は、伸展動作開始から時間t4経過したら、PWMのデューティー比を−100%にし、伸展動作開始から時間(t4+t5)経過したら、PWMのデューティー比を増加し始める。
【0059】
次に、伸展動作開始から時間(t4+t5+t6)(遊脚期の期間T2)経過したら、または、右足駆動系Rの足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下になったときに(補助終了トリガが感知されたとき)、歩行補助装置SのCPU42は、補助を終了する。
【0060】
但し、歩行補助装置Sにおける機械の原点出しをするため、歩行補助装置SのCPU42は、遊脚期が終了してから時間t7の間、PWMのデューティー比を0%にせずに、−30%程で、屈曲動作の延長を行う。
【0061】
なお、左足駆動系Lが装着されている場合には、歩行補助装置Sは、左足駆動系Lに関しても同様の制御を行う。
【0062】
以上、本実施形態によれば、被補助者(患者60)の脚の膝関節部に装着されており、歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する歩行補助装置S(動作補助装置の一例)の補助手段(駆動ユニット10、11、12)が装着されている脚の踵が、歩行面65から離れたことを検出するための踵データ(Sh)を足裏センサ17から検出し、膝関節角度センサ16から膝関節部の屈曲角度(θk)を検出し、脚の股関節部の屈曲角度(θH)を検出し、検出された踵データ(Sh)に基づき、踵が歩行面65から離れている遊脚期(T2)を特定し、膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングtbを特定し、極値タイミングtbにおける股関節部の屈曲角度の値を、股関節部の屈曲角度における閾値角度θH1に設定し、閾値角度θH1に基づき、遊脚期において補助手段による屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成することにより、リハビリ効果を高めるための屈曲動作から伸展動作の補助に切り替えるタイミング(tb)および伸展動作のためのトリガを容易に求めて設定できるので、被補助者である患者に合わせたリハビリ用歩行のための動作補助装置の制御パターンを容易に生成することができる。
【0063】
また、歩行補助装置Sは、膝関節部及び股関節部それぞれの屈曲角度(θk、θH)を検出し、膝関節部の屈曲角度の極値に応じて設定された閾値角度θH1に股関節部の屈曲角度が達した極値タイミングtbから伸展動作の補助を開始するので、自然な歩行態様に近い制御により、被補助者の患者に負担をかけることなく安全にその動作を補助することができる。歩行補助装置Sは、角度θHを示す股関節角度データが極小になる時点tc(大腿部が前方に最も突出する位置)よりも、早い段階のタイミング(tb)で、屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えている。
【0064】
また、歩行補助装置一台で、動作を補助する装置および制御パターン生成する装置として機能できるため、コスト削減や、患者への負担を軽減できる。
【0065】
また、歩行補助装置Sは、制御パターンを決定する段階において、脚の股関節部の屈曲角度(θH)、および、股関節部の屈曲角度(θH)を検出する前に、補助手段(駆動ユニット10、11、12)から脚への駆動力の伝達を遮断する場合、DCモータ50や、ギア部52の抵抗を遮断して、患者は脚を動かし、測定できるので、患者にとって負担が少なく、患者に合った正確な踵データ(Sh)、膝関節部の屈曲角度(θk)、および、股関節部の屈曲角度(θH)を検出できる。
【0066】
また、歩行補助装置Sは、踵が歩行面65から離れたタイミング(ta)から屈曲動作の補助を開始するように、補助手段(駆動ユニット10、11、12)を制御する制御パターンを生成する場合、踵が歩行面65から離れたことを検出し、踵が歩行面65から離れたタイミング(ta)から膝関節部の屈曲動作の補助を開始するように補助手段を制御するので、被補助者である患者の意思により踵が歩行面65から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始することで、被補助者の意思に沿って安全にその動作を補助することができる。
【0067】
また、歩行補助装置Sは、補助手段(駆動ユニット10、11、12)をパルス幅変調方式により変調された駆動信号により駆動する制御パターンであって、デューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号により補助手段を制御する制御パターンを生成する場合、補助手段が、パルス幅変調方式により変調された駆動信号であって、そのデューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号により制御されるので、急激な動作を抑制して被補助者に負担なくその動作を安全に補助することができる。
【0068】
また、歩行補助装置Sは、被補助者(患者60)の右脚に装着されている補助手段(駆動ユニット10、12)と、被補助者の左脚に装着されている補助手段(駆動ユニット10、11)と、を別個独立に制御する制御パターンを生成する場合、補助手段の制御が右脚と左脚とで別個独立に行われるので、制御手段としての処理を簡素化できる。さらに、一方の脚において、一連の動作終了後に、他方の脚の動作が発生するように、歩行補助装置Sが、左右の脚の制御パターンを生成する場合、歩行時に同時に両足に補助動作を行わず、補助動作を安定させることができる。なお、座位から立位になる場合は、歩行補助装置Sが、両脚を同時に補助動作する。
【0069】
また、歩行補助装置Sは、ステップS2のように、脚の股関節部の屈曲角度に基づき、股関節部の屈曲角度を補正する補正値αを算出する場合、歩行補助装置Sの装着のずれや、患者が前屈み等で歩く患者の癖がある場合でも、補正値αにより、股関節角度センサ15のから角度θHを示す股関節角度データを補正でき、伸展動作トリガが正確に働くようにできる。
【0070】
次に、図7を用いて、歩行補助装置Sにおける他の制御パターンの一例について説明する。
図7は、実施形態に係る歩行補助装置Sにおける他の制御パターンの一例を示す模式図である。
【0071】
図7に示すように、設定された閾値角度を、例えば図7に示すようにθH1からθH2に変更すると、駆動信号D2の制御パターンにおいて、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替えるタイミングtfが時間(tb)よりも早くなる。すなわち、患者の脚に対して、早めに伸展動作の補助動作が開始され負荷として働き、リハビリ効果を高めることができる。閾値角度θH2の値は、患者の状態、リハビリのスケジュール等に応じて決定される。ここで、PWMのデューティー比が100%の持続時間t8が、駆動信号Dの制御パターンにおける持続時間t2よりも短くなり、PWMのデューティー比が−100%の持続時間をt9が、駆動信号Dの制御パターンにおける持続時間t5より長くなる。
【0072】
このように、歩行補助装置Sは、設定された閾値角度を、例えば図7に示すようにθH1からθH2に変更する場合、伸展動作の開始制御に用いられる閾値を変更することができるので、被補助者の状態に応じた動作補助ができる。なお、リハビリ効果が上がる可能性がある場合は、遊脚期(T2)や、歩行周期の期間T3から、負荷項として、歩行補助装置Sは、所定の時間を引いた形の制御パターンを生成してもよい。
【0073】
また、歩行補助装置Sは、踵が歩行面65から離れたことが予め設定された時間内に検出されないとき、補助手段(駆動ユニット10、11、12)を初期化する制御パターンを生成してもよい。例えば、患者立ったままの状態で、歩こうとせず、患者に歩行の意思がないとみなし、行補助装置Sは、駆動ユニット10、11、12の状態をリセットさせ、一連の歩行の制御パターンの発生を停止させる。この場合、一定時間内に踵が歩行面65から離れたことが検出されないとき、補助手段(駆動ユニット10、11、12)が初期化されるので、患者に歩行の意思がない状態で脚を上げても、補助動作が行われないため、患者の意思に反するような形で補助をすることを防止でき、また、クラッチ部51が開放され患者が脚をフリーに動かせるので、歩行補助装置Sによる被補助者の動作補助上の利便性を向上させることができる。
【0074】
さらになお、歩行補助装置Sは、T1−t3(または、時間(tb−t3))における股関節角度データを、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替えるタイミングを開始するt3前(デューティー比を100%から減少させ始め、tbで0%にする)のための閾値角度としてもよい。
【0075】
また、時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号Dの代わりに、歩行補助装置Sは、制御パターンとして、膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データを微分した波形を用いてもよい。この制御パターンも、閾値角度θH1を変更に応じて、伸展動作を開始する制御パターンに変形させる。
【0076】
また、患者の体重や歩行の仕方等に応じて、足裏センサON閾値、足裏センサOFF閾値、および、閾値角度θH1を変えてもよい。
【0077】
また、歩行補助装置SのCPU42は、補助手段のモータが特に誘導モータの場合、クラッチ部51を開放する代わりに、モータへの電力の供給を遮断してもよい。
【0078】
なお、上述した実施形態では、膝疾患を有する患者の回復訓練等としての歩行を補助する歩行補助装置Sに対して本発明を適用した場合について説明したが、これ以外に、回復訓練等との一環としての駆け足等の移動を補助する移動補助装置に対して本発明を適用することもできる。
【0079】
更に、図4に示すフローチャートに対応するプログラムをフレキシブルディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、又はインターネット等のネットワークを介して取得して記憶しておき、それを汎用のマイクロコンピュータで読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータを実施形態に係るCPU42として動作させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上夫々説明したように、本発明は動作補助装置の分野に利用することが可能であり、特に患者の歩行又は駆け足等の回復訓練等を補助する動作補助装置の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0081】
3、8 リンク機構部
3a、8a 第一リンク
3b、8b 第二リンク
3c 第三リンク
5 膝部
9 股部
10、11、12 駆動ユニット
15 股関節角度センサ(股関節角度検出手段)
16 膝関節角度センサ(膝関節角度検出手段)
17 足裏センサ(踵データ検出手段)
42 CPU
50 DCモータ
52 ギア部
51 クラッチ部(駆動力遮断手段)
65 歩行面
S 歩行補助装置(動作補助装置)
R 右足駆動系
L 左足駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置が制御パターンを生成する制御パターン生成方法において、
前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出ステップと、
前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出ステップと、
前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出ステップと、
前記踵データ検出ステップで検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定ステップと、
前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定ステップと、
前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定ステップと、
前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成ステップと、
を有することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御パターン生成方法において、
前記股関節角度検出ステップ、および、前記股関節角度検出ステップの前に、前記補助手段から脚への駆動力の伝達を遮断する駆動力遮断ステップを更に有することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御パターン生成方法において、
前記制御パターン生成ステップは、
前記踵が前記歩行面から離れたタイミングから前記屈曲動作の補助を開始するように、前記補助手段を制御する制御パターンを生成することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、
前記設定された閾値角度を変更する閾値角度変更ステップを更に有することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、
前記制御パターン生成ステップは、前記補助手段をパルス幅変調方式により変調された駆動信号により駆動する制御パターンであって、デューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する前記駆動信号により前記補助手段を制御する制御パターンを生成することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、
前記制御パターン生成ステップは、前記踵が前記歩行面から離れたことが予め設定された時間内に検出されないとき、前記補助手段を初期化する制御パターンを生成することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、
前記制御パターン生成ステップは、前記被補助者の右脚に装着されている前記補助手段と、前記被補助者の左脚に装着されている前記補助手段と、を別個独立に制御する制御パターンを生成することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御パターン生成方法において、
前記脚の股関節部の屈曲角度に基づき、前記股関節部の屈曲角度を補正する補正値を算出する補正値設定ステップを更に有することを特徴とする制御パターン生成方法。
【請求項9】
歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置の制御パターンを生成する動作補助装置において、
前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出手段と、
前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出手段と、
前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出手段と、
前記踵データ検出手段で検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定手段と、
前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定手段と、
前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定手段と、
前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成手段と、
を備えたことを特徴とする動作補助装置。
【請求項10】
歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置が制御パターンを生成するための制御パターン生成プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作を補助する前記動作補助装置の補助手段が装着されている脚の踵が、前記歩行面から離れたことを検出するための踵データを検出する踵データ検出ステップと、
前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度検出ステップと、
前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度検出ステップと、
前記踵データ検出ステップで検出された踵データに基づき、前記踵が前記歩行面から離れている遊脚期を特定する遊脚期特定ステップと、
前記膝関節部の屈曲角度が極値になる極値タイミングを特定する極値タイミング特定ステップと、
前記極値タイミングにおける前記股関節部の屈曲角度の値を、前記股関節部の屈曲角度における閾値角度に設定する閾値角度設定ステップと、
前記閾値角度に基づき、前記遊脚期において前記補助手段による前記屈曲動作の補助から伸展動作の補助に切り替えるための制御パターンを生成する制御パターン生成ステップと、
を実行させることを特徴とする制御パターン生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165792(P2012−165792A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26814(P2011−26814)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)