説明

制御棒取扱装置

【課題】上部格子板の交差部の直下における制御棒の取り扱いを簡単な構成で行うことができ、取り扱いの途中で故障が発生しても制御棒の取り外しを可能とする。
【解決手段】本体フレーム21のアーム22のハンドル23に設けられ、空気圧により制御棒50を把持し、かつ空気源喪失時には解除ロッドにより退避する位置に揺動可能とされたフック24と、ワイヤーロープ接続用の中心スタッド21aと、ワイヤーロープ接続用の偏芯スタッド21bと、を備え、本体フレーム21は、中心スタッド21aに接続されたワイヤーロープにより上部格子板60を通じて昇降可能であり、上部格子板60の下方において、偏芯スタッド21bに接続されたワイヤーロープにより本体フレーム21の中心から偏芯した位置で、フック24が制御棒50を把持した状態で昇降可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば新型沸騰水型原子炉(以下、ABWRIIという)において、水中操作で制御棒の取り出し、取り付け、昇降、移動等の操作を行うために使用する制御棒取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のABWRIIにおける制御棒50と上部格子板60との配置関係を図7により説明する。制御棒50は十字形状に形成され、中性子吸収材はB4Cまたはハフニウムである。制御棒50と制御棒駆動機構(不図示)の結合はカップリングスタッド構造である。制御棒案内管51は、相互干渉を避けるために十字型を呈しており、制御棒50をガイドする。
燃料集合体70(図8参照)は、一つの燃料支持金具(不図示)に二体支持されており、制御棒案内管51でその燃料支持金具の重量を受けている。ABWRIIでは、燃料格子幅を従来の1.5倍とし、燃料集合体70の二つのコーナーに制御棒50を配置した構成となっている。このような構成とすることによって、出力増加や高燃焼度化、さらには、炉心高度化を図り、加えて燃料体数や制御棒、制御棒駆動機構の員数削減を図っている。
【0003】
ABWRIIでは、上部格子板60の交差部の直下にも制御棒50が配置されている。この位置に配置される制御棒50の交換時には、上部格子板60の格子61aで囲まれる開放部Sを通じて制御棒取扱装置の本体フレームを挿入した後、上部格子板60の交差部61bの下側に移動させることにより行っていた。このため、制御棒50の取扱作業は、複雑な手順を要するだけでなく、時間を要する作業でもあった。
【0004】
特許文献1には、上部格子板60の交差部61bの直下に位置する制御棒50の取り付けおよび取り外しを、遠隔で行うことができる制御棒取扱装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−243889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の制御棒取扱装置では、上部格子板60の交差部61bの直下に位置する制御棒50を交差部61bの直下から格子61aで囲まれる開放部Sへ移動するために、昇降用駆動モータ、ケーブルベア、移動台など、複雑なメカニズムを必要としている。
特に、交差部61bの直下に位置する制御棒50の昇降を、制御棒取扱装置に内蔵したモータおよびローラねじで行っているため、交差部61bの直下で制御棒50を把持した状態で、モータまたはロータねじが故障してしまうと、制御棒50の取り外しが中断してしまう。
【0007】
この場合、水中での故障復帰、または制御棒50の取り外しが継続できないと、制御棒50の取扱作業が継続できないため、工程に重大な影響を与えてしまう。したがって、制御棒取扱装置には高い信頼性と保守性が必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、上部格子板の交差部の直下における制御棒の取り扱いを簡単な構成で行うことができ、取り扱いの途中で故障が発生しても制御棒の取り外しを可能とし、高い信頼性および保守性を期待できる制御棒取扱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体フレームと、前記本体フレームに設けられ、空気圧により回転するアームと、前記アームに空気圧を付与する第1のシリンダと、前記アームに設けられ、重力により旋回するハンドルと、前記ハンドルに設けられ、空気圧により制御棒を把持する位置または把持する位置から退避する位置に揺動可能に、かつ空気源喪失時には解除ロッドにより前記退避する位置に揺動可能とされたフックと、前記フックに空気圧を付与する第2のシリンダと、前記本体フレームの直下で前記フックにより把持した制御棒の昇降を行うための、ワイヤーロープ接続用の中心スタッドと、前記本体フレームの直下から偏芯した位置で前記フックにより把持した制御棒の昇降を行うための、ワイヤーロープ接続用の偏芯スタッドと、を備え、前記本体フレームは、前記中心スタッドに接続されたワイヤーロープにより上部格子板を通じて昇降可能であり、前記上部格子板の下方において、前記偏芯スタッドに接続されたワイヤーロープにより前記本体フレームの中心から偏芯した位置で、前記フックが制御棒を把持した状態で昇降可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、上部格子板の交差部の直下に位置する制御棒を、中心スタッドに接続されたワイヤーロープと偏芯スタッドに接続されたワイヤーロープとを吊り代えながら、アームを旋回することで、上部格子板の交差部の直下から交差していない開放部に移動することができる。
空気源からの空気圧により制御棒の把持および移動が可能であり、また、気中から吊り下げたワイヤーロープを用いているので、構成や構造が簡単である。したがって、信頼性を向上することができる。また、上部格子板の直下で制御棒を吊り上げた状態で、仮に、空気系統に異常(空気源喪失)が発生したとしても、ワイヤーロープを下降して制御棒を制御棒案内管に戻し、解除ロッドによりフックを退避する位置に揺動させることで制御棒の把持を容易に解除し、本体フレームを気中へ回収して修理または交換が可能である。したがって、定期点検を中断させることがない。
これにより、特許文献1に示されるものに懸念されるような、上部格子板の交差部の直下で制御棒を水中遠隔操作で把持している場合に、故障が発生しても制御棒を取り外せなくなる懸念がなく、定期点検を長期中断させる心配がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上部格子板の交差部の直下における制御棒の取り扱いを簡単な構成で行うことができ、取り扱いの途中で故障が発生しても制御棒の取り外しを可能とし、高い信頼性および保守性を期待できる制御棒取扱装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御棒取扱装置を示す構成図である。
【図2】要部の拡大図である。
【図3】退避手段を示す構成図である。
【図4】制御棒の取り外し手順を示す図であり、(a)は上部格子板に対する位置関係を示した模式上面図、(b)〜(e)は模式正面図である。
【図5】制御棒の取り外し手順を示す図であり、(a)〜(d)は模式正面図である。
【図6】(a)はハンドルの変形例を示す模式正面図、(b)は模式側面図である。
【図7】上部格子板の交差部の直下における制御棒の位置関係を示す斜視図である。
【図8】原子炉内配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の制御棒取扱装置を適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、「上」「下」は、図1に示す方向を基準とする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態での制御棒取扱装置は、取扱装置20と、燃料取替機30とを有している。取扱装置20は、長尺の本体フレーム21と、本体フレーム21に設けられたアーム22と、アーム22に支持されたハンドル23と、ハンドル23に設けられたフック24とを主として有している。
【0015】
本体フレーム21の上部には、天板27が設けられている。天板27の上部中央には、中心スタッド21aが設けられ、また、天板27の端部寄りとなる位置には偏芯スタッド21bが設けられている。中心スタッド21aには、ワイヤーロープ31aの一端が接続されており、偏芯スタッド21bには、ワイヤーロープ31bの一端が接続されている。また、ワイヤーロープ31aの他端は、燃料取替機30の中央ホイスト32に接続され、ワイヤーロープ31bの他端は、燃料取替機30の偏芯ホイスト33に接続されている。これにより、取扱装置20は、ワイヤーロープ31a,31bの巻き取り、送り出しにより昇降可能に設けられている。
天板27には、偏芯スタッド21bを取り付けるための図示しない取付部が複数箇所設けられている。各取付部は、中心スタッド21aから異なる距離に配置されており、後記するように、交差部61b(図4(e)、図7参照)の直下にある制御棒50を吊り上げた状態で、重心線上に位置する取付部が選択されて、ワイヤーロープ31bが接続されている。
【0016】
中央ホイスト32は、ワイヤーロープ31aを介して取扱装置20(本体フレーム21)を昇降する装置である。中央ホイスト32は、ハンドル23が制御棒50に着座したことを検出する図示しない荷重検出器(荷重計)を有している。
偏芯ホイスト33は、ワイヤーロープ31bを介して取扱装置20(本体フレーム21)を昇降する装置である。偏芯ホイスト33は、制御棒50の吊り上げを検出する図示しない吊り上げ検出器(荷重検出器、荷重計)を有している。また、偏芯ホイスト33は、ワイヤーロープ31bの巻き取り量を検出して、制御棒50の吊り上げ高さを検知する図示しない昇降位置検出器を有している。
【0017】
アーム22は、本体フレーム21の下部に支持部22aを中心として回転可能に設けられている。アーム22には、本体フレーム21に取り付けられたアーム回転シリンダ25(第1のシリンダ)、アーム回転機構25aが接続されており、アーム22は、これらによって回転駆動されるようになっている。アーム回転シリンダ25は、図示しない空気源から供給される空気圧によって駆動されるようになっている。アーム回転機構25aは、アーム回転シリンダ25の直線運動を図示しない歯車によって回転運動に変換して、これをアーム22に伝達する。なお、アーム回転シリンダ25には、図示しないスプリングが介設されている。このスプリングは、フック24に把持された制御棒50が取扱装置20の直下にゆっくり移動するように作用する。
【0018】
アーム22はその回転により、長手方向が水平方向に向けられた姿勢と、長手方向が鉛直方向に向けられた姿勢とにそれぞれ保持されるようになっている。
本体フレーム21には、図2に示すように、リミットスイッチなどからなる2つの回転位置検出器21c,21dが設けられている。回転位置検出器21cは、アーム22が水平方向の姿勢とされたことをアーム22の当接により検出するものである。また、回転位置検出器21dは、アーム22が鉛直方向の姿勢とされたことをアーム22の当接により検出するものである。なお、図2ではアーム回転シリンダ25などを省略している。
【0019】
ハンドル23は、アーム22の一端に回転軸23aを介して重力により回転自由に支持されている。つまり、フック24が配置される下部側を常に下方向に向けて支持されている。したがって、アーム22が水平方向の姿勢とされると、ハンドル23は、本体フレーム21の側方に突出した位置で下部側を下方向へ向けて支持される。また、アーム22が鉛直方向の姿勢とされると、ハンドル23は、本体フレーム21の中央(中心部、支持部22a)の直下において、下部側を下方向へ向けて支持される。
【0020】
フック24は、図1に示すように、ハンドル23の下部の自由端に支持部24aを中心として揺動可能(回動可能)に設けられている。フック24には、本体フレーム21に取り付けられたフック開閉シリンダ26(第2のシリンダ)、フック開閉機構26aが接続されており、フック24は、これらによって回転駆動され、制御棒50を把持する位置と把持を解除する位置(退避位置)とに回動するようになっている(図1,2では退避位置を図示)。フック開閉シリンダ26は、図示しない空気源から供給される空気圧によって駆動されるようになっている。フック開閉機構26aは、フック開閉シリンダ26の直線運動を図示しない歯車によって回転運動に変換して、これをフック24に伝達する。
図2に示すように、フック24の先端部24bは、制御棒50の制御棒ハンドル50aに係止される鈎形状とされている。
【0021】
ハンドル23には、図2に示すように、リミットスイッチなどからなる検出器としての2つのフック位置検出器23c,23dが設けられている。フック位置検出器23cは、フック24が制御棒50を把持する位置に回動されたことをフック24の上端の当接により検出するものである。また、フック位置検出器23dは、フック24が退避位置に回動されたことをフック24の上端の当接により検出するものである。
【0022】
また、ハンドル23の下端部には、図2に示すように、リミットスイッチなどからなる着座検出器23eが設けられている。この着座検出器23eは、制御棒50の制御棒ハンドル50aの上端に当接可能であり、当接によって取扱装置20のフック24が制御棒50を把持可能な着座位置まで下降したことを検出するようになっている。
また、ハンドル23の上端部には、リミットスイッチなどからなる上昇位置検出器23fが設けられている。この上昇位置検出器23fは、上部格子板60(図7参照)の下面に当接可能であり、当接によって取扱装置20が上昇可能な位置まで上昇したことを検出するようになっている。上昇位置検出器23fは、緩衝用スプリング23gを介してハンドル23に支持されている。
【0023】
図3に示すように、フック24には、空気源喪失時にフック24を退避位置に回動させるための退避手段が設けられている。退避手段は、本体フレーム21の天板27に上方から挿入される解除ロッド28と、解除ロッド28の下端部が挿入される挿入管28aと、本体フレーム21内に配置され(図3では透視した状態を図示、アーム回転シリンダ25等は不図示)、上端が挿入管28aに接続された連結ロッド29と、連結ロッド29の下端部に接続された操作ワイヤー29aと、を含んで構成されている。操作ワイヤー29aの先端部は、フック24に接続されている。
【0024】
このような退避手段は、解除ロッド28を下方へ押し込み操作すると、挿入管28aを介して連結ロッド29が下方へ押し込まれ、連結ロッド29の押し込みに連動して操作ワイヤー29aが本体フレーム21側に引っ張られる。そうすると、複数のプーリ29bを介して操作ワイヤー29aがフック24を引き上げ、フック24が支持部24aを中心として退避位置に回動するように作用する。
【0025】
次に、図4、図5を参照して制御棒50の取出手順を説明する。
なお、水張りされた原子炉内における制御棒50の位置関係は、図7、8に示したものと同様となっている。すなわち、取り扱う制御棒50は、制御棒案内管51に設置されており、また上部格子板60の交差部61bの直下にも制御棒50が位置している。交差部61bの直下に位置する制御棒50の取出手順は、制御棒ハンドル50aを掴んでこれを制御棒案内管51から引き抜く移動工程と、交差部61bの直下から上部格子板60の格子61aで囲われる開放部Sに移動させる移動工程と、開放部Sを通じて上に引き上げる移動工程となる。また、制御棒50を制御棒案内管51に収納する(設置する)場合の手順は、前記と逆の手順となる。
【0026】
まず、図4(a)に示すように、取扱装置20を上部格子板60の格子61a内に形成された開放部Sの上方に移動する。そして、燃料取替機30(図1参照)の中央ホイスト32を駆動してワイヤーロープ31aを送り出し、図4(b)に示すように、上部格子板60の格子61a内を通過させる。アーム22は、上部格子板60の格子61a内を通過することができるように初期回転位置(回転角度0度、直下に垂下された状態)に設定されている。
【0027】
次に、アーム回転シリンダ25に空気を供給し、図4(c)に示すように、空気圧によりアーム22を左回りに90度回転させる。そうすると、アーム22に支持されたハンドル23が自重によりフック24を下方へ向けた状態で、制御棒50の制御棒ハンドル50aの上方に位置する。なお、上部格子板60をハンドル23が通過したか否かは、中央ホイスト32に設けた図示しない高さ検出器の検出値で判断することができる。なお、アーム22は、回転方向に図示しないダンパーを有し、着座時の衝撃を緩和している。
【0028】
その後、図4(d)に示すように、取扱装置20を下降し、制御棒50の制御棒ハンドル50aにハンドル23を着座させる。着座したことは、ハンドル23の着座検出器23e(図2参照)で検出し、取扱装置20の下降を停止する。
また、着座検出器23eで着座を検出した状態で、燃料取替機30の中央ホイスト32の図示しない荷重検出器の指示値により荷重が減少したことを確認する。
【0029】
その後、着座検出器23eが着座を検出している状態で、中央ホイスト32の荷重検出器の検出値が元の荷重値に戻る高さまでワイヤーロープ31aを巻き取り、取扱装置20を上昇させる。このとき、図4(e)に示すように、フック24を把持する位置に回動させ、制御棒50の制御棒ハンドル50aをフック24で把持する。制御棒ハンドル50aをフック24が把持していることは、着座検出器23e(図2参照)が着座を検出している状態が継続していることで確認することができる。
【0030】
次に、中央ホイスト32によりワイヤーロープ31aをゆっくり巻き取り、着座検出器23eが離座を検出するまで取扱装置20を上昇させ、さらに中央ホイスト32の荷重検出器(図示せず)の指示値が増加した時点、すなわち、取扱装置20が制御棒50を吊り上げた状態を検出したらワイヤーロープ31aの巻き取りを停止する。
そして、図5(a)に示すように、中央ホイスト32から偏芯ホイスト33へ駆動を切り替え、ワイヤーロープ31bにて取扱装置20をゆっくり上昇させる。中央ホイスト32から偏芯ホイスト33への切り替えは、荷重がワイヤーロープ31aからワイヤーロープ31bへ移行することを検出することで確認でき、中央ホイスト32の荷重検出器の検出値(図示せず)と偏芯ホイスト33の吊り上げ検出器の検出値とから容易に確認することができる。
【0031】
中央ホイスト32から偏芯ホイスト33への切り替えが終了したら、図5(a)に示すように、偏芯ホイスト33によりワイヤーロープ31bを巻き上げて取扱装置20をゆっくり上昇させる。このとき、また、制御棒50の吊り上げ高さが偏芯ホイスト33の昇降位置検出器により検出される。規定の高さまで取扱装置20が上昇されると、図5(b)に示すように、ハンドル23の上昇位置検出器23f(図2参照)が上部格子板60の下面に当接し、取扱装置20の上昇が停止される。
【0032】
この状態でアーム回転シリンダ25への供給空気を排気し、図5(c)に示すように、アーム22を初期位置(回転角度0度)まで回転させ、制御棒50を取扱装置20の直下に位置させる。ここで、アーム回転シリンダ25の供給空気の排気は徐々に行われ、また、アーム回転シリンダ25に設けたスプリング(図示せず)の付勢力により、フック24に把持された制御棒50が取扱装置20の直下にゆっくり移動する。これにより、取扱装置20の初期位置で停止する。
アーム22が初期位置となったことは、本体フレーム21の回転位置検出器21d(図2参照)で確認することができる。
なお、アーム22を回転させる前に、ワイヤーロープ31aに少し吊り上げ荷重が加わる程度、取扱装置20を上昇させておく。取扱装置20の直下に制御棒50が位置していることは、偏芯ホイスト33の荷重検出器(図示せず)の検出値が減少し、中央ホイスト32の荷重検出器の検出値が増加することで確認することができる。
【0033】
その後、偏芯ホイスト33から中央ホイスト32へ駆動を切り替え、ワイヤーロープ31aにて取扱装置20を上昇させる。偏芯ホイスト33から中央ホイスト32への切り替えは、荷重がワイヤーロープ31bからワイヤーロープ31aへ移行することを検出することで確認でき、中央ホイスト32の荷重検出器の検出値と偏芯ホイスト33の吊り上げ検出器の検出値とから容易に確認することができる。
そして、制御棒50を所定の移動先へ移動する。
【0034】
なお、制御棒50の取付手順は前記した取出手順と逆の手順、すなわち、図5(d)から図5(a)の順番、さらに図4(e)から図4(b)の順番で行うことができる。
【0035】
ここで、図5(a)のように、上部格子板60の交差部61bの直下で制御棒50を上昇している途中で、万一、取扱装置20へ供給される空気圧の空気源が喪失する事態が生じると、フック24の回動はできなくなるが、制御棒50の把持は維持される。また、アーム回転シリンダ25は、空気源喪失により制御棒50を支えることができなくなるが、スプリング(図示せず)によってゆっくり初期位置方向へアーム22が回転し、制御棒50と制御棒案内管51との接触抵抗が吊り合った位置で停止する。
空気源喪失は、空気供給元の圧力計、または、水中での気泡有無で確認できるため、空気源喪失を確認したらワイヤーロープ31bによる上昇を停止し、水中テレビカメラにて制御棒50の状態を確認してワイヤーロープ31bを下降し、制御棒50を制御棒案内管51の収納位置である図4(e)の状態に戻す。
【0036】
そして、このように戻された状態で、図3に示した退避手段の解除ロッド28を操作し、フック24を退避位置に回動させる。これにより、フック24が制御棒50の制御棒ハンドル50aから外され、取扱装置20から制御棒50を切り離すことができる。
そして、中央ホイスト32を駆動させてワイヤーロープ31aを巻き取り、取扱装置20を上昇させて回収する。その後、故障箇所の修理や交換を行い、制御棒50の取り扱い作業を再開する。
【0037】
以上説明した本実施形態の制御棒取扱装置によれば、上部格子板60の交差部61bの直下に位置する制御棒50を、中心スタッド21aに接続されたワイヤーロープ31aと偏芯スタッド21bに接続されたワイヤーロープ31bとを吊り代えながら、アーム22を旋回することで、上部格子板60の交差部61bの直下から交差していない開放部Sに移動することができる。したがって、上部格子板60の交差部61bの直下における制御棒50の取り扱いを簡単な構成で行うことができる。
【0038】
また、空気源からの空気圧により制御棒50の把持および移動が可能であり、吊り上げには、気中から吊り下げたワイヤーロープ31a,31bを用いているので、構成や構造が簡単である。したがって、信頼性を向上することができる。また、上部格子板60の直下で制御棒50を吊り上げた状態で、仮に、空気系統に異常(空気源喪失)が発生したとしても、ワイヤーロープ31bを下降して制御棒50を制御棒案内管51に戻し、解除ロッド28によりフック24を退避位置に揺動させることで制御棒50の把持を容易に解除することができ、本体フレーム21を気中へ回収して修理または交換が可能である。したがって、定期点検を長期的に中断させる心配がなく、高い信頼性および保守性を期待できる。
【0039】
本体フレーム21は、偏芯スタッド21bの取付位置を調整可能な天板27を有しているので、取扱装置20の製作精度によるバランスへの影響を緩和し、制御棒50の取り扱い性に優れる。
【0040】
中央ホイスト32は、ハンドル23が制御棒50に着座したことを検出する荷重検出器(図示せず)を有しているので、荷重を確認することで、制御棒50の把持操作を行うためのワイヤーロープ31aの送り出しによる降下操作や停止操作が容易である。
【0041】
ハンドル23は、フック24が制御棒50を把持したことを検出するフック位置検出器23d、および把持を解除したことを検出するフック位置検出器23cを有しているので、制御棒50の把持や把持の解除を容易に確認することができ、信頼性の高い制御棒50の取り扱いを実現することができる。
【0042】
偏芯ホイスト33は、制御棒50の吊り上げを検出する吊り上げ検出器(図示せず)を有しているので、荷重を確認することで、制御棒50の吊り上げを確認することができ、信頼性の高い制御棒50の取り扱いを実現することができる。
【0043】
また、偏芯ホイスト33は、ワイヤーロープ31bの巻き取り量を検出して、制御棒50の吊り上げ高さを検知する昇降位置検出器(図示せず)を有しているので、制御棒50の吊り上げ高さを検出することができ、取扱装置20の上昇位置を所定の位置で停止することができる。
【0044】
ハンドル23には上昇位置検出器23fが設けられているので、上昇位置検出器23fの検出を確認することで、取扱装置20を所定の上昇位置で停止することができる。
【0045】
以上本実施形態について説明したが、本発明の制御棒取扱装置は前記実施形態に示したものに限られることはなく、適宜、変更して実施可能である。
例えば、図6(a)(b)に示すように、ハンドル23の下端部において、制御棒50の制御棒ハンドル50aに対向する部位に、テーパ状の凹部23hを設けてもよい(図においてフック24は省略している)。
このような凹部23hを設けることによって、ハンドル23の下端部が制御棒50の制御棒ハンドル50aにスムーズに着座するようになり、制御棒50の把持が確実となる。
【0046】
また、アーム22には、バランス部材(図示せず)を設けてもよい。バランス部材は、回転軸23aを基準としてハンドル23が設けられる側と反対側に設けられる。このようなバランス部材を設けることにより、制御棒50の把持を行う場合に、アーム22を水平に維持することが容易となり、制御棒50の把持が行い易くなる。
【符号の説明】
【0047】
20 取扱装置
21 本体フレーム
21a 中心スタッド
21b 偏芯スタッド
22 アーム
23 ハンドル
23c,23d フック位置検出器
23f 上昇位置検出器
23h 凹部
23e 着座検出器
24 フック
25 アーム回転シリンダ(第1のシリンダ)
26 フック開閉シリンダ(第2のシリンダ)
27 天板
28 解除ロッド
30 燃料取替機
31a,31b ワイヤーロープ
32 中央ホイスト
33 偏芯ホイスト
50 制御棒
60 上部格子板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、前記本体フレームに設けられ、空気圧により回転するアームと、前記アームに空気圧を付与する第1のシリンダと、前記アームに設けられ、重力により旋回するハンドルと、前記ハンドルに設けられ、空気圧により制御棒を把持する位置または把持する位置から退避する位置に揺動可能に、かつ空気源喪失時には解除ロッドにより前記退避する位置に揺動可能とされたフックと、前記フックに空気圧を付与する第2のシリンダと、前記本体フレームの直下で前記フックにより把持した制御棒の昇降を行うための、ワイヤーロープ接続用の中心スタッドと、前記本体フレームの直下から偏芯した位置で前記フックにより把持した制御棒の昇降を行うための、ワイヤーロープ接続用の偏芯スタッドと、を備え、
前記本体フレームは、前記中心スタッドに接続されたワイヤーロープにより上部格子板を通じて昇降可能であり、前記上部格子板の下方において、前記偏芯スタッドに接続されたワイヤーロープにより前記本体フレームの中心から偏芯した位置で、前記フックが制御棒を把持した状態で昇降可能に構成されていることを特徴とする制御棒取扱装置。
【請求項2】
前記本体フレームは、前記偏芯スタッドの取付位置を調整可能な天板を有することを特徴とする請求項1に記載の制御棒取扱装置。
【請求項3】
前記アームには、回動支点を基準として前記ハンドルが設けられる側と反対側にバランス部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御棒取扱装置。
【請求項4】
前記ハンドルには、制御棒に対向する部位にテーパ状の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項5】
前記中心スタッドに接続されたワイヤーロープを介して前記本体フレームを昇降する中央ホイストを備え、
前記中央ホイストは、前記ハンドルが制御棒に着座したことを検出する荷重検出器を有すること特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項6】
前記ハンドルは、当該ハンドルが制御棒に着座したことを検出する着座検出器を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項7】
前記ハンドルは、前記フックが制御棒を把持したこと、および把持を解除したことを検出するフック位置検出器を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項8】
前記偏芯スタッドに接続されたワイヤーロープを介して前記本体フレームを昇降する偏芯ホイストを備え、
前記偏芯ホイストは、制御棒の吊り上げを検出する吊り上げ検出器を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項9】
前記本体フレームの吊り上げ高さを検出する昇降位置検出器を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。
【請求項10】
前記本体フレームが前記上部格子板に接触したことを検出する上昇位置検出器を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の制御棒取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−233759(P2012−233759A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101701(P2011−101701)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)