説明

制御装置、空気調和機及び冷凍装置

【課題】湿り状態の検出を確実に行い、湿り運転を回避する。
【解決手段】2段圧縮機(31)と、凝縮器(32)と、エコノマイザー熱交換器(33)と、蒸発器(35)と、中間インジェクション回路(4)と、が接続された冷媒回路(3)のコントローラ(20)は、高圧圧力センサ(21)が測定した前記圧縮機(31)から吐出される高圧吐出ガスの圧力と、中間圧圧力センサ(22)が測定した前記エコノマイザー熱交換器(33)から中間インジェクション回路(4)へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力と、中間インジェクション部温度センサ(23)が検出した前記中間インジェクション部の温度と、を用いて算出する前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として第2膨張弁(41)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路の構成要素を制御する制御装置、並びに該制御装置を用いた空気調和機及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒回路を構成する圧縮機の吐出ガス温度が過上昇すると、保護回路が作動して該圧縮機の運転が不安定になることがある。このような事態を防止するために、前記吐出ガス温度を抑制する手段として、リキッドインジェクション方式が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。リキッドインジェクション方式においては、冷媒回路の液側配管からリキッドインジェクション回路が分岐され、液冷媒の一部が圧縮機に戻されて蒸発することにより、該圧縮機が冷却され前記吐出ガス温度が抑制されている。
【0003】
リキッドインジェクション方式においては、冷媒の一部が蒸発器を通過することなく圧縮機に戻されるので冷凍能力が低下する。これを改善するため、液側配管から液冷媒の一部を分流して分流冷媒とし、エコノマイザー熱交換器で液冷媒と熱交換をさせた後、該分流冷媒を圧縮機にインジェクションする方式も知られている。
【0004】
この方式では、冷媒回路において凝縮器と蒸発器との間にエコノマイザー熱交換器が設けられ、該エコノマイザー熱交換器を通過した液冷媒の一部が分流される。分流された分流冷媒は、膨張弁で減圧され、温度が低下した状態で前記エコノマイザー熱交換器に導かれる。前記エコノマイザー熱交換器において、前記分流冷媒が前記液冷媒と熱交換することにより、該液冷媒が冷却されて、その過冷却度が大きくなる。
【0005】
そのため、蒸発器に流れる冷媒の比エンタルピが減少することにより冷凍能力が向上するため、冷媒の減少分による冷凍能力の低下を補うことができる。したがって、冷凍能力の低下を抑えて、しかも圧縮機の吐出ガス温度を抑制することができる。
【0006】
いずれにせよ、インジェクション回路を設けて圧縮機を冷却する場合は、該圧縮機が、内部に液冷媒が入った湿り状態で運転される湿り運転となるおそれがある。湿り運転が発生した場合、特に湿り状態と過熱状態とが繰り返されると、圧縮機がダメージを受けやすい。したがって、前記インジェクション量を制御することで湿り運転を回避する、いわゆる湿り制御を行う必要がある。
【0007】
従来の冷媒回路の制御装置においては、圧縮機から吐出される高圧の吐出冷媒ガスの温度を測定し、その温度を用いて過熱度を算出することで湿り状態を検出し、湿り制御を行っている。すなわち、実際の吐出ガス温度と吐出ガスが飽和状態であるときの温度との差が過熱度であるから、吐出ガス過熱度が負となるときを湿り状態として、該過熱度が正となるように冷媒回路を運転制御することによって、湿り制御を行っている。そして、吐出ガス温度の測定は、該吐出ガスが通過する吐出管の温度を測定し、該吐出管温度を吐出ガス温度とすることで行っている。
【特許文献1】特開平7−127925号公報
【特許文献2】特開平8−200847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際の吐出ガス温度に対して、吐出管の温度の測定値の応答性は悪い。したがって、従来の制御装置においては、実際の過熱度が負となっているにもかかわらず、吐出管の温度を測定することで得られた吐出ガス温度を用いて算出する過熱度は正であるために、湿り状態の検出が遅れることがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、冷媒回路を構成する圧縮機の湿り状態の検出を確実に行い、該圧縮機の湿り運転を回避する制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に係る制御装置は、低圧側と高圧側との2段の圧縮機構を備えた圧縮機と、凝縮器と、エコノマイザー熱交換器と、蒸発器と、前記エコノマイザー熱交換器から吐出された冷媒の一部を前記圧縮機の低圧側と高圧側の中間である中間インジェクション部に戻す中間インジェクション回路と、が接続された冷媒回路の制御装置であって、前記圧縮機から吐出される高圧吐出ガスの圧力を測定する高圧圧力センサと、前記エコノマイザー熱交換器から中間インジェクション回路へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する中間圧圧力センサと、前記中間インジェクション部の温度を検出する中間インジェクション部温度センサと、前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、該中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として前記中間インジェクション回路を制御する制御手段と、を備える(請求項1)。
【0011】
中間飽和時高圧吐出ガス過熱度は、前記中間インジェクション部の冷媒が乾き飽和蒸気線の外側すなわち過熱状態にあるときには、高圧吐出ガスの温度から算出される過熱度よりも小さくなる。すなわち、従来の制御装置よりも、湿り制御に用いる過熱度の検出点を吐出ガスが飽和状態であるときの温度に近づけることができる。
【0012】
しかも、中間飽和時高圧吐出ガス過熱度は、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度であり、このときの中間インジェクション部の温度は等温ライン上にあるから、温度測定の応答性が悪く誤差の大きい高圧吐出部の吐出管温度を測定する場合と比較して、温度測定の誤差が少ない。
【0013】
したがって、高圧吐出部の吐出管温度を用いて高圧吐出ガスの過熱度を算出し、高圧吐出ガスの過熱度の下限とする場合と比較して、圧縮機の湿り状態の検出がより確実に行われ、前記圧縮機の湿り制御がより確実になされる。
【0014】
上記構成において、前記制御手段は、
前記高圧吐出ガス圧力:HP
前記中間圧吐出ガス圧力:MP
前記中間インジェクション部温度:Tms
圧縮過程をポリトロープ変化としたときのポリトロープ指数:n
前記高圧吐出ガスが飽和ガスとなるときの温度:Ths
としたときに、
Tpms=Tms×((HP)/(MP))^((n−1)/n)
SHps=Tpms―Ths
の式を用いて前記中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出することができる(請求項2)。
【0015】
この構成によれば、容易に算出可能な中間飽和時高圧吐出ガス温度を算出し、算出中間飽和時高圧吐出ガス過熱度の算出に用いる。したがって、中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を容易に算出することができる。
【0016】
本発明の他の局面に係る空気調和機又は冷凍装置は、低圧側と高圧側との2段の圧縮機構を備えた圧縮機と、凝縮器と、エコノマイザー熱交換器と、蒸発器と、前記エコノマイザー熱交換器から吐出された冷媒の一部を前記圧縮機の低圧側と高圧側の中間である中間インジェクション部に戻す中間インジェクション回路と、が接続された冷媒回路と、前記圧縮機から吐出される高圧吐出ガスの圧力を測定する高圧圧力センサと、前記エコノマイザー熱交換器から中間インジェクション回路へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する中間圧圧力センサと、前記中間インジェクション部の温度を検出する中間インジェクション部温度センサと、を備え、前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、該中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として前記中間インジェクション回路を制御する(請求項3及び4)。
【0017】
この構成によれば、湿り運転によって、空気調和機又は冷凍装置の冷媒回路を構成する圧縮機がダメージを受けることが回避される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の制御装置によれば、従来の制御装置よりも、圧縮機の湿り状態の検出が確実に行われ、前記圧縮機の湿り制御がより確実になされる。したがって、圧縮機の湿り運転が確実に回避され圧縮機の故障要因の一つを予防できるので、該圧縮機を備えた冷媒回路の、メンテナンス費用の低減と、長寿命化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置2を備えた冷凍装置1の模式図であり、図2は、冷凍装置1おける冷凍サイクルを示すモリエル線図(圧力−比エンタルピー線図、p−h線図)である。
【0021】
冷凍装置1は、冷媒回路3を制御装置2が制御することで冷凍サイクルを実行する。冷媒回路3は、圧縮機31、凝縮器32、エコノマイザー熱交換器33、第1膨張弁34、蒸発器35、及び中間インジェクション回路4を備えている。
【0022】
圧縮機31は、例えばスクロール型の圧縮機構を備え、圧縮効率を高めるために低圧側圧縮機構31aと高圧側圧縮機構31bとの2段の圧縮機構を備えた2段圧縮機である。圧縮機31は、蒸発器35から送られてきた低温・低圧の冷媒蒸気を圧縮して、高温・高圧の冷媒蒸気とする(図2の点Aから点D)。
【0023】
凝縮器32は、例えば、冷媒が流れる冷却管の外側にフィンを取付けたクロスフィン型の空冷式熱交換器であり、室外空気と冷媒とを熱交換させることによって、圧縮機31から吐出された高温・高圧の冷媒を冷却し、過冷却状態の高圧液冷媒とする(図2の点Dから点E)。
【0024】
凝縮器32において液化された高圧液冷媒は、エコノマイザー熱交換器33を通過する。エコノマイザー熱交換器33を通過した高圧液冷媒の一部は、中間インジェクション配管4に分流される。
【0025】
中間インジェクション配管4は、エコノマイザー熱交換機33と第1膨張弁34との間で冷媒回路3から分岐して、この分岐点を始点としてエコノマイザー熱交換器33を経由して圧縮機31の低圧側圧縮機構31aと高圧側圧縮機構31bとの中間である中間インジェクション部へと接続されている。中間インジェクション回路の分岐部とエコノマイザー熱交換器33との間には、第2膨張弁41が設けられている。
【0026】
第2膨張弁41は、例えばパルスモータ駆動方式の電子膨張弁であり、自在に開度が調整できる。中間インジェクション回路に分流された分流冷媒は、エコノマイザー熱交換器33に入る前に第2膨張弁41によって減圧され温度が低下する(図2の点Fから点G)。
【0027】
エコノマイザー熱交換器33は、例えばプレート式の熱交換器であり、前記分流冷媒と前記高圧液冷媒との間で、熱交換を行わせる。その結果、前記分流冷媒が前記高圧液冷媒と熱交換して該高圧液冷媒から吸熱することによって(図2の点Gから点C)、該高圧液冷媒の過冷却度が大きくなり(図2の点Eから点F)、該高圧液冷媒の比エンタルピが減少する。したがって、冷凍装置1の冷凍能力が向上する。
【0028】
第1膨張弁34は、例えば電子膨張弁であり、自在に開度が調整できる。第1膨張弁34での絞り膨張によって、前記高圧液冷媒は低温・低圧の冷媒となり(図2の点Fから点H)、蒸発器35に送られる。第1膨張弁34は、蒸発器35の冷凍負荷に応じて蒸発器35に送る冷媒流量の調節も行う。
【0029】
蒸発器35は、例えばクロスフィン型の空冷式熱交換器であり、室内空気と冷媒とを熱交換させる。その結果、冷媒は室内空気から熱を奪って蒸発し、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、飽和温度からわずかに過熱状態にある過熱蒸気となって(図2の点Hから点A)圧縮機31へと向かう。
【0030】
図3は、制御装置2の機能的な構成を示すブロック図である。制御装置2は、高圧圧力センサ21、中間圧圧力センサ22、中間インジェクション部温度センサ23、及びコントローラ20(制御手段)を備えている。
【0031】
高圧圧力センサ21は、圧縮機31の高圧側圧縮機構31bの冷媒吐出部に設けられ、吐出された冷媒ガスの圧力である高圧吐出ガス圧力を測定する。
【0032】
中間圧圧力センサ22は、中間インジェクション部に設けられ、エコノマイザー熱交換器33から中間インジェクション回路4を経て該中間インジェクション部へと吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する。
【0033】
中間インジェクション部温度センサ23は、中間インジェクション部に設けられ、該中間インジェクション部の温度を検出する。
【0034】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)等からなるマイコンを備え、システム制御部201、演算部202を具備するように機能する。
【0035】
システム制御部201は、冷凍装置1の全体的な制御を行う。さらに、システム制御部201は、演算部202が算出した中間飽和時高圧吐出ガス過熱度が、高圧吐出ガスの過熱度の下限となるように、第2膨張弁41を制御してインジェクション量を調節する。中間飽和時高圧吐出ガス過熱度とは、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度のことである。
【0036】
演算部202は、前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出する。
【0037】
演算部202における中間飽和時高圧吐出ガス過熱度の算出方法を、図2に基づいて説明する。
【0038】
従来の制御装置においては、圧縮機31から吐出される高圧の吐出冷媒ガスが通過する吐出管の温度を測定し、該吐出管温度を吐出ガス温度として過熱度を算出することで湿り状態を検出し、湿り制御を行っていた。
【0039】
過熱度とは、実際の吐出ガス温度(Thh)と吐出ガスが飽和状態であるときの温度(Ths)との差であるから、過熱度(SHp)は、次の式で定義される。
SHp=Thh―Ths
【0040】
すなわち、SHp>0℃となるように冷媒回路を制御すれば、湿り制御を行うことができる。従来の制御装置においては、前記吐出管温度がThhとして用いられることになる。しかしながら、実際の吐出ガス温度に対して、吐出管の温度の測定値の応答性は悪い。したがって、従来の制御装置においては、実際はThh≦Thsであるにもかかわらず、吐出管の温度を測定することで得られたThh>Thsとなって、見かけ上はSHp>0℃となり、湿り状態の検出が遅れることがある。
【0041】
ところで、湿り制御を行うために中間インジェクション部の過熱度を算出しようとしても、中間インジェクション部が飽和状態、つまり湿り状態にあるときは、中間インジェクション部の過熱度を正確に算出することができない。
【0042】
すなわち、中間インジェクション部が飽和状態にあるとき(図2の点Gから点Iの間)は、中間インジェクション部は等温かつ等圧の状態にあるから、中間インジェクション部の圧力と温度を測定したとしても、中間インジェクション部の過熱度を正確に算出することができない。よって、湿り制御を正確に行うことも困難となる。
【0043】
上記の問題点を解決するために、本実施形態に係る制御装置2においては、中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、中間飽和時高圧吐出ガス過熱度が高圧吐出ガスの過熱度の下限となるように第2膨張弁41を制御することで、湿り制御を行う。
【0044】
中間飽和時高圧吐出ガス過熱度(SHps)は、次の式で定義される。
SHps=Tpms―Ths
【0045】
ここで、Tpmsは、中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガス温度(中間飽和時高圧吐出ガス温度)であり(図2の点Kにおける温度)、Thsは、高圧吐出ガスが飽和ガスとなるときの高圧吐出ガス温度である(図2の点Jにおける温度)。
【0046】
圧縮機31における圧縮過程を、ポリトロープ変化と見なした場合のTpmsは、次の式から算出できる。
Tpms=Tms×((HP)/(MP))^((n−1)/n)
【0047】
ここで、Tmsは中間インジェクション部の温度(図2の点Iにおける温度)、HPは高圧吐出ガスの圧力、MPは中間インジェクション部の圧力、nは圧縮過程でのポリトロープ指数である。なお、上記に説明したとおり、中間インジェクション部が飽和状態にあるとき(図2の点Gから点Iの間)は、中間インジェクション部は等温かつ等圧の状態にあるから、Tmsは一定であり、測定誤差は少なくなる。しかもTpmsは、I点から圧縮過程がスタートしたものとして算出される。
【0048】
Thsは、圧力に対して一意に定まる値であるから、Tpmsを算出することによって、SHpsを算出することができる。
【0049】
高圧吐出ガスの過熱度が、SHpsとなる場合の圧縮過程は、ポリトロープ変化と見なした場合、図2の点Iから点Kの間の破線で示す過程であるが、実際の圧縮過程は、ポリトロープ変化とはならないので、図2の点Cから点Dの間の実線で示す過程となる。点Dにおける高圧吐出ガス温度は、Thhであり、Thh>Tpmsであるから、中間インジェクション部の冷媒が過熱状態であるときの高圧吐出ガス過熱度(SHp)は必ずSHpsよりも過熱側になる。したがって、このSHpsを高圧吐出ガスの過熱度の下限とすれば、湿り運転を防止できる。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態に係る冷凍装置1における湿り制御を説明するためのフローチャートである。
【0051】
冷凍装置1が起動されると、演算部202は、SHpsを算出する(ステップS1)。SHps>0℃であれば吐出ガスは過熱状態であり、SHps≦0であれば吐出ガスは飽和状態、すなわち圧縮機31は湿り運転ということになる。
【0052】
SHps>0℃であれば(ステップS2でYES)、ステップS4に進む。SHps≦0℃であれば(ステップS2でNO)、圧縮機31は湿り運転であるから、システム制御部201によって第2膨張弁41の開度が減じられ、インジェクション量が減じられる(ステップS3)。
【0053】
ステップS4では、SHpsが所定の過熱度、例えば20℃に収まっているか否かが、演算部202によって判定される。
【0054】
SHps≦20℃であれば(ステップS4でNO)、圧縮機の吐出ガス温度は適切であるから、システム制御部201によって第2膨張弁41の開度が維持され、インジェクション量が維持される(ステップS5)。
【0055】
SHps>20℃であれば(ステップS4でYES)、圧縮機の吐出ガス温度は過上昇しているので、システム制御部201によって第2膨張弁41の開度が大にされ、インジェクション量が増やされる(ステップS6)。
【0056】
演算部202がSHpsを算出した(ステップS1)結果、ステップS3、ステップS5、ステップS6のいずれかに進むことになる。いずれの場合にも、再びステップS1に戻ってステップS1〜S6が繰り返され、インジェクション量の調節が随時なされることになる。
【0057】
以上説明した本実施形態に係る制御装置2を備えた冷凍装置1によれば、演算部202がSHpsを算出し、SHpsに基づいてシステム制御部201は第2膨張弁41の開度調節を行い、インジェクション量を調節する。従来の制御装置よりも、湿り制御に用いる過熱度の検出点を吐出ガスが飽和状態であるときの温度に近づけることができ、しかも、温度測定の応答性が悪く誤差の大きい高圧吐出部の吐出管温度を測定する場合と比較して、温度測定の誤差が少ないTmsを過熱度の算出に用いるので、圧縮機31の湿り状態の検出が確実に行われ、圧縮機31の湿り制御がより確実になされる。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る冷凍装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることもできる。
【0059】
(1)上記実施形態では、SHps>0℃であることを湿り制御の条件としたが、吐出管温度センサをさらに追加して高圧ガス吐出温度を測定し、SHp>SHpsであることを湿り制御の条件としても良い。
【0060】
中間インジェクション部が飽和状態にあるとき(図2の点Gから点Iの間)は、Thh≦Ths、すなわちSHp≦0℃の湿り運転となる可能性がある。従来の制御装置について説明したとおり、吐出管温度をThhとして用いる場合、湿り状態の検出が遅れることがある。しかしながら、従来の吐出管温度に加えて、上記実施形態にて測定するTms、HP、MPを用いる場合、図2に示すように、理論上はTpms>Thsであるから、SHp>SHpsであることを湿り制御の条件とすれば、より安全側で湿り状態を検出することができる。したがって、実際の吐出ガス温度に対して、測定値の応答性が悪い吐出管温度を用いたとしても、より過熱側で湿り制御の条件をとることができるから、SHp>SHpsを湿り制御の条件とすることができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、制御装置2を冷凍装置1に適用したが、制御装置2は冷凍装置を含む空気調和機全般に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた冷凍装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る冷凍装置における冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る冷凍装置における湿り制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 冷凍装置
2 制御装置
20 コントローラ(制御手段)
201 システム制御部
202 演算部
3 冷媒回路
31 圧縮機
31a 低圧側圧縮機構
31b 高圧側圧縮機構
32 凝縮器
33 エコノマイザー熱交換器
35 蒸発器
4 中間インジェクション回路
41 第2膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側と高圧側との2段の圧縮機構を備えた圧縮機(31)と、凝縮器(32)と、エコノマイザー熱交換器(33)と、蒸発器(35)と、前記エコノマイザー熱交換器(33)から吐出された冷媒の一部を前記圧縮機(31)の低圧側と高圧側の中間である中間インジェクション部に戻す中間インジェクション回路(4)と、が接続された冷媒回路(3)の制御装置であって、
前記圧縮機(31)から吐出される高圧吐出ガスの圧力を測定する高圧圧力センサ(21)と、
前記エコノマイザー熱交換器(33)から中間インジェクション回路(4)へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する中間圧圧力センサ(22)と、
前記中間インジェクション部の温度を検出する中間インジェクション部温度センサ(23)と、
前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、該中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として前記中間インジェクション回路(4)を制御する制御手段(20)と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記高圧吐出ガス圧力:HP
前記中間圧吐出ガス圧力:MP
前記中間インジェクション部温度:Tms
圧縮過程をポリトロープ変化としたときのポリトロープ指数:n
前記高圧吐出ガスが飽和ガスとなるときの温度:Ths
としたときに、
前記制御手段は、
Tpms=Tms×((HP)/(MP))^((n−1)/n)
SHps=Tpms―Ths
の式を用いて前記中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
低圧側と高圧側との2段の圧縮機構を備えた圧縮機(31)と、凝縮器(32)と、エコノマイザー熱交換器(33)と、蒸発器(35)と、前記エコノマイザー熱交換器(33)から吐出された冷媒の一部を前記圧縮機(31)の低圧側と高圧側の中間である中間インジェクション部に戻す中間インジェクション回路(4)と、が接続された冷媒回路(3)と、
前記圧縮機(31)から吐出される高圧吐出ガスの圧力を測定する高圧圧力センサ(21)と、
前記エコノマイザー熱交換器(33)から中間インジェクション回路(4)へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する中間圧圧力センサ(22)と、
前記中間インジェクション部の温度を検出する中間インジェクション部温度センサ(23)と、を備え、
前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、該中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として前記中間インジェクション回路(4)を制御する空気調和機。
【請求項4】
低圧側と高圧側との2段の圧縮機構を備えた圧縮機(31)と、凝縮器(32)と、エコノマイザー熱交換器(33)と、蒸発器(35)と、前記エコノマイザー熱交換器(33)から吐出された冷媒の一部を前記圧縮機(31)の低圧側と高圧側の中間である中間インジェクション部に戻す中間インジェクション回路(4)と、が接続された冷媒回路(3)と、
前記圧縮機(31)から吐出される高圧吐出ガスの圧力を測定する高圧圧力センサ(21)と、
前記エコノマイザー熱交換器(33)から中間インジェクション回路(4)へ吐出される中間圧吐出ガスの圧力を測定する中間圧圧力センサ(22)と、
前記中間インジェクション部の温度を検出する中間インジェクション部温度センサ(23)と、を備え、
前記高圧吐出ガス圧力と、前記中間圧吐出ガス圧力と、前記中間インジェクション部温度とを用いて、前記中間インジェクション部の冷媒が飽和ガスとなるときの高圧吐出ガスの過熱度である中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を算出し、該中間飽和時高圧吐出ガス過熱度を、高圧吐出ガスの過熱度の下限として前記中間インジェクション回路(4)を制御する冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−60179(P2010−60179A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224982(P2008−224982)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)