説明

制御装置

【課題】最小保持時間が他の負荷およびバッテリ電圧の状態に依存しないホールド回路を提供する。
【解決手段】給電電圧端子と共通のスイッチングポイントとのあいだにこれらを分離可能なスイッチング素子が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両エレクトロニクスのKL15_ON端子のステータスによって車両へのアクセスを制御する制御装置であって、電圧源と、給電電圧の印加される少なくとも1つの給電電圧端子と、ホールド回路とを有し、このホールド回路は、電圧源での電圧が設定値を下回らないかぎり、電圧源と給電電圧端子とを共通のスイッチングポイントにおいて接続してKL15_ON端子のオンステータスを保持する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の状況においては、バッテリ電圧が欠落しても、KL15_ON端子のハードウェアステータスすなわち点火ステータスを一定時間にわたって保持しなければならない。これは例えば短時間だけバッテリ電圧が欠落しても車両の内燃機関が停止しないように制御するケースである。
【0003】
車両の制御装置は例えばバッテリ電圧が5.5Vを下回るとバッテリ電圧の欠落を判別する。しかし電圧の欠落が確認された後も、KL15_ON端子のハードウェアステータスは最小保持時間th_minにわたって保持されなければならない。バッテリ電圧Ubが5.5V未満になると、制御装置およびマイクロコントローラはハードウェアリセットステータスに入る。リセットは給電電圧0から最小給電電圧VCC_minまでの範囲にあるとき行われる。
【0004】
図1には、上述の制御装置において用いられる、個別の素子によって実現されたホールド回路の回路図が示されている。KL15_ON端子のオンによって生じた電流はバッファコンデンサC1に引き取られる。バッファコンデンサC1は第1のダイオードD1を介して例えば0V〜28Vのバッテリ電圧源に相応するKL30L端子に接続されている。この線路を介してバッファコンデンサC1にバッテリ電圧Ubが供給されるのである。この線路に並列にバッファコンデンサC1はダイオードD2を介してマイクロコントローラ、論理回路および付加回路のための電圧源に相応するVCC端子に接続されている。VCC端子を介してバッファコンデンサC1には論理給電電圧5Vが供給される。こうしてバッファコンデンサC1は冗長給電電圧を受け取る。
【0005】
バッファコンデンサC1からKL15_ON端子へ流れる電流はPNPトランジスタT1を介して制御される。このためにバッファコンデンサC1および第1のダイオードD1および第2のダイオードD2のカソードはPNPトランジスタT1のエミッタに接続されており、KL15_ON端子はPNPトランジスタT1のコレクタに接続されている。
【0006】
ホールド回路は外部からのSET命令またはCLR命令によって駆動される。このためにPNPトランジスタT1のベースは第1の抵抗R1を介してPNPトランジスタT1のエミッタに接続されている。さらにPNPトランジスタT1のベースは第2の抵抗R2を介してNPNトランジスタT2のコレクタに接続されている。NPNトランジスタT2のエミッタはアースに置かれている。第3の抵抗R3および第4の抵抗R4から成る分圧器はNPNトランジスタT2のベースに対するKE入力端子の電圧を分圧する。KE入力端子にはマイクロコントローラからパルスの形態のSET命令およびCLR命令が印加される。電位を伝達するために、KL15_ON端子は第5の抵抗R5を介してKE入力端子に接続されている。
【0007】
KL15_ON端子のハードウェアステータスを保持するために、正のパルスの形態のSET命令がKE入力端子に印加され、そこでの電位が短時間だけハイレベルへ上昇される。これに応じてNPNトランジスタT2およびPNPトランジスタT1が開放される。KL15_ON端子はバッファコンデンサC1の高電位まで引き上げられ、NPNトランジスタT2は開放されたままとどまる。第5の抵抗R5を介したフィードバックにより回路の自己保持が行われる。電流はバッファコンデンサC1からPNPトランジスタT1を通ってKL15_ON端子へ流れる。
【0008】
アースへのローレベルの短時間のパルスの形態のCLR命令により、NPNトランジスタT2およびPNPトランジスタT1は遮断される。これによりバッファコンデンサC1からの電流の流れは遮断される。
【0009】
バッテリ電圧の欠落とは、CLR命令による自己保持が能動的に阻止されないときに、バッファコンデンサC1での電圧ひいてはNPNトランジスタT2のベース‐コレクタ電圧Ubeが設定されたレベルを下回って低下することに相応する。これによりNPNトランジスタT2およびPNPトランジスタT1が遮断される。
【0010】
給電電圧VCCは定格駆動においては5Vである。給電電圧VCCが4.8Vを下回り、かつ、KL30L端子でのバッテリ電圧Ubが5.5Vを下回ると、制御装置のリセットが行われる。
【0011】
図1のホールド回路の欠点は、最小保持時間th_minがバッファコンデンサC1からの電流に依存するため、VCC電源網の他の負荷の影響を直接に受けてしまうということである。しかもバッファコンデンサC1の電圧耐性も電源網によって制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、最小保持時間が他の負荷およびバッテリ電圧の状態に依存しないホールド回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明の制御装置において、給電電圧端子と共通のスイッチングポイントとのあいだにこれらを分離可能なスイッチング素子が配置されている構成により解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
有利には、最小保持時間がVCC電源網に依存しなくなる。また、装置の通常モードでの給電電圧はVCC電源網によって供給され、ホールド回路はバッテリ電圧から独立に動作可能となる。
【0015】
有利には、電圧源はVCC電源網から給電されるバッファコンデンサである。
【0016】
特に有利には、装置の給電電圧がバッファコンデンサの定格電圧に相応する場合、この定格電圧は4V〜6V、特には5Vである。これにより高価な35V電源網用のコンデンサは必要なくなるので、コストの点で有利である。
【0017】
電圧源VCC,VCC_2は蓄電池または他の相応のデバイスにより実現することができる。ただし一般にこれらは単純なバッファコンデンサより高価である。
【0018】
本発明の装置において給電電圧端子と共通の回路点とのあいだに配置されるスイッチング素子は、外部で形成されたRESET信号によって駆動されるMOSFETである。RESET信号はホールド回路のトリガ信号であり、これにより保持時間の開始時点が明確に定義される。
【0019】
本発明の装置のホールド回路はD型フリップフロップにより実現することができる。この種のD型フリップフロップは規格に準拠した標準素子であって容易に入手可能である。
【0020】
これに代えて、本発明の装置のホールド回路を個別の素子、特に2つのバイポーラトランジスタおよび複数の抵抗から形成することもできる。図1に示されているようなこうした回路は個別にコンフィグレーションすることができる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明を図示の実施例に則して詳細に説明する。実施例は説明のための例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0022】
KL15_ON端子のハードウェアステータスすなわち点火ステータスは最小保持時間th_minにわたって保持されるが、このときマイクロコントローラは必ずしもアクティブであるとはかぎらず、RESETレベルすなわちローレベルとなっていることもある。こうした状態は例えば給電電圧VCCが設定しきい値を下回って低下する場合に生じる。
【0023】
本発明によれば、車両へのアクセスを制御するための制御装置に図2の回路図に示されているような回路が設けられ、新たな給電電圧VCC_2が形成される。当該の新たな給電電圧VCC_2はホールド回路のバッファコンデンサC2の電圧に相応する。
【0024】
バッファコンデンサC2および給電電圧VCC_2の取り出し点PはpチャネルMOSFETM1のドレイン‐ソース区間を介してVCC端子へ接続されている。当該のドレイン‐ソース区間に対して並列に第1のダイオードD1がVCC端子側をアノードとして接続されている。pチャネルMOSFETM1のゲートはnチャネルMOSFETM2のドレイン‐ソース区間を介してアースへ置かれている。当該のドレイン‐ソース区間に対して並列に第2のダイオードD2がアース側をアノードとして接続されている。nチャネルMOSFETM2のゲートは第6の抵抗R6を介してRESET端子に結合されている。
【0025】
論理回路およびマイクロコントローラに対する給電電圧VCC(典型的には5V)から、図3に示されているKL15_ON端子用のフリップフロップに対して新たな給電電圧VCC_2が形成される。
【0026】
図3の実施例によれば、D型フリップフロップDFにより端子信号KL15_ONが形成される。このD型フリップフロップDFはアースに接続されたGND供給入力側、VCC_2給電端子とバッファコンデンサC3とに接続されアースに対して保護されたVCCE供給入力側、および、第7の抵抗R7を介して同様にVCC_2給電電圧に接続されたPRE入力側を有する。またPRE入力側はK1端子にも接続されており、ここからSET命令が入力される。
【0027】
D型フリップフロップのD入力側およびCLK入力側はアースに置かれている。D型フリップフロップのCLEAR入力側はK2端子に接続されており、ここからローレベルのCLEAR命令が入力される。D型フリップフロップの正の出力側QPOSはKL15_ON端子に接続されている。この回路では、SET命令が印加されると、出力側のKL15_ON端子がハイレベルへセットされる(SET=1のときKL15_ON=1となる)。これに対してパルスの形態のCLR命令がD型フリップフロップのCLEAR入力側へ印加されると、KL15_ON端子はローレベルへセットされる(CLR=1のときKL15_ON=0となる)。
【0028】
充分な電圧が印加されて点火がオンとなる通常の駆動状態ではKL15_ON端子はハイレベルすなわちKL15_ON=1となっている。K1端子およびK2端子の入力レベルはSET=CLR=1である。その場合、図2の回路のRESET端子も同様にハイレベルすなわちRESET=1となる。このとき新たな電圧はVCC_2〜VCC−0.1Vとなる。
【0029】
電圧が所定の限界値を下回ると、電圧監視回路がRESET信号を出力する。この場合、KL15_ON端子のステータスKL15_ON=1を最小保持時間th_minにわたって保持しなければならない。このステータスはバッファコンデンサC2の充電状態により所定の時間にわたって保持される。なぜならバッファコンデンサC2はD型フリップフロップDFおよび信号KL15_ONに必要なエネルギを得ているからである。
【0030】
図2によれば、ホールド回路はRESET命令RESET=0により作動される。当該の作動信号はKL15_ON端子のステータスの保持を開始した時点を一義的に定義するトリガ信号としても用いられる。
【0031】
MOSFETM1によりホールド回路はVCC端子から分離される。この分離は、特に、給電電圧が充分に高くRESET命令の印加されない通常動作から、RESETステータスへの移行時およびRESETステータスの最中に重要である。こうして保持時間は給電電圧VCCの印加される他の負荷には依存しなくなる。バッファコンデンサC2のみがホールド回路に関連する。このため、バッファコンデンサC3の容量が小さくても、従来技術の手段と同様の保持時間が得られる。他の負荷を通るVCC電流は保持時間および新たな電圧VCC_2には影響しない。
【0032】
バッファコンデンサC2の冗長給電はバッテリ電圧Ubを用いないので、ホールド回路の保持時間は自動的にバッテリステータスUbに依存しなくなる。これにより、バッファコンデンサC3は電源網電圧Ub=35Vなどの高電圧に対応する必要はなく、定格電圧VCC=5Vに対して構成すればよい。また最小保持時間th_minを保証するために、図1に示されているような従来のホールド回路で必須であったVCC>VCC_minの保持およびきわめて小さいVCC電流の保持も必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術によるKL15_ON端子用のフリップフロップホールド回路の回路図である。
【図2】専用給電電圧を形成する回路の回路図である。
【図3】図2の専用給電電圧を用いてKL15_ON端子のステータスを保持する本発明のD型フリップフロップの回路図である。
【符号の説明】
【0034】
C1〜C3 コンデンサ、 CLEAR,D,PRE,TLK 入力側、 CLR,SET 命令、 D1,D2 ダイオード、 DF D型フリップフロップ、 GND,VCCE 給電入力側、 K1,K2,KL15_ON,KL30L,VCC,VCC_2 端子、 KE 入力端子、 M1,M2 MOSFET、 QPOS 正の出力側、 R1〜R7 抵抗、 RESET リセット信号、 T1,T2 バイポーラトランジスタ、 Ube_OFF ベース‐コレクタ電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両エレクトロニクスのKL15_ON端子のステータスによって車両へのアクセスを制御する制御装置であって、
電圧源(C2)と、給電電圧の印加される少なくとも1つの給電電圧端子(VCC)と、ホールド回路(DF)とを有し、
該ホールド回路は、前記電圧源(C2)での電圧が設定値を下回らないかぎり、前記電圧源(C2)と前記給電電圧端子(VCC)とを共通のスイッチングポイント(P)において接続してKL15_ON端子のオンステータスを保持する
制御装置において、
前記給電電圧端子(VCC)と前記共通のスイッチングポイント(P)とのあいだに該給電電圧端子(VCC)と該共通のスイッチングポイント(P)とを分離可能なスイッチング素子(M1)が配置されている
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電圧源はバッファコンデンサ(C2)である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記バッファコンデンサは定格電圧4V〜6V,例えば定格電圧5Vに対して構成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記電圧源は蓄電池である、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子(M1)は外部からのリセット信号によって駆動制御されるMOSFETである、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ホールド回路はD型フリップフロップ(DF)である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記ホールド回路は専ら2つのバイポーラトランジスタ(T1,T2)および複数の抵抗(R1〜R5)によって形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−81114(P2008−81114A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254009(P2007−254009)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507229032)ジーメンス ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (46)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany