説明

刷版を交換する方法および装置

【課題】刷版交換時間を短縮する、刷版を交換する方法および装置を提供する
【解決手段】刷版を交換する方法であって、先ず刷版の後縁用のクランプ装置を開放し、刷版を、版胴の後向き回動により搬出シャフトに移動させ、その際、刷版を、被駆動の搬送ローラを通過したあとで把持するものにおいて、先ず、版胴11が後向き回動する間に、刷版27の後縁用のクランプ装置28を開放し、そのあとで搬送ローラ31,32により刷版27を把持するまえに、刷版27の前縁用のクランプ装置38を開放し、刷版を、搬送ローラ31,32により、版胴11を停止させることなく、後向き回動する版胴11から搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴から刷版を搬出して新たな刷版を版胴に供給する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008051581号明細書において、版胴から刷版を引き出す装置が公知であり、そこでは、クランプ装置から解放された刷版後縁が、版胴の後向き回動により搬送ロール対に供給される。
【0003】
欧州特許出願公開第0435413号明細書において、刷版交換法が公知であり、そこでは、隣り合う印刷ユニットの刷版が、相互に位相をずらして配置された版胴により、ほぼ同期的に交換される。交換に際して、版胴の刷版緊締位置に達すると、全ての版胴が停止され、刷版緊締位置にある刷版の前縁用の刷版クランプ装置が開かれる。
【0004】
たとえば4つの印刷ユニットを備えた印刷機では、歯車列により相互に結合された、相互に位相をずらして配置された版胴が、全ての刷版を取り外すために、少なくとも4回停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008051581号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0435413号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、刷版交換時間を短縮する、刷版を交換する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するための本発明によれば、刷版を交換する方法、特に印刷機の版胴から刷版を搬出するための方法であって、先ず刷版の後縁用のクランプ装置を開放し、刷版を、版胴の後向き回動により搬出シャフトに移動させ、その際、刷版を、被駆動の搬送ローラを通過したあとで把持するものにおいて、先ず、版胴が後向き回動する間に、刷版の後縁用のクランプ装置を開放し、そのあとで搬送ローラにより刷版を把持するまえに、刷版の前縁用のクランプ装置を開放し、刷版を、搬送ローラにより、版胴を停止させることなく、後向き回動する版胴から搬出する。
【0008】
好適には、搬送ローラを、後向き回動時に、版胴の周速よりも高い周速で駆動する。
【0009】
好適には、新たな刷版を供給するために、版胴を、供給位置で停止させる。
【0010】
好適には、版胴を、新たな刷版を供給する間、前向き回動させ、その際、新たな刷版のために設けられた搬送ローラを、刷版供給中の版胴の周速よりも高い周速で駆動する。
【0011】
隣り合う印刷ユニットの刷版を、位相をずらして逐次交換する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の格別な利点によれば、本発明による方法により、印刷機の装着時間が短縮される。
【0013】
この方法は、特に、刷版の前縁用のクランプ装置が、版胴が刷版の緊締位置に未だ到達していない角度範囲で既に開放されることにより、実現される。追加的に、刷版は、版胴の外側に配置された定位置の搬送ローラにより、後向き回動する版胴の速度よりも高い速度で搬出される。
【0014】
このような構成手段により、刷版は、既に、版胴が依然として運動している間に版胴から取り外される。刷版の所定のガイド装置には、刷版交換を監視するためのセンサが配置されている。このような構成手段により、機能エラーが生じる際に、機械を適宜停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】枚葉輪転印刷機の概略断面図である。
【図2】枚葉輪転印刷機の印刷ユニットを刷版の搬出状態で示す概略断面図である。
【図3】枚葉輪転印刷機の印刷ユニットを新たな刷版の供給状態で示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、図示の態様に基づいて詳説する。
【0017】
シート7を処理する機械、たとえば印刷機1は、フィーダ2と少なくとも1つの印刷ユニット3,4とデリバリ6とを備えている。シート7は、シートスタック(パイル)8から取り出されて、個別化されるかまたは刺身状にずれ重なった状態でフィーダボード9を介して印刷ユニット3,4に供給される。印刷ユニット3,4は、公知のように、それぞれ版胴11,12と、版胴11,12と協働するブランケット胴15,20とを備えている。版胴11,12は、それぞれフレキシブルな刷版を取り付けるためのクランプ・緊締装置13,14を備えている。さらに各版胴11,12に、半自動または全自動式の刷版交換のための装置16,17が対応して配置されている。
【0018】
シートスタック8は、昇降制御可能な紙積台10に載設されている。シート7の取出しは、シートスタック8の上面から、いわゆるサッカヘッド18によって行われ、サッカヘッド18は、とりわけシート7を個別化するための幾つかの持上げサッカ19および送りサッカ21を備えている。さらに上位のシート層をほぐすための吹込装置22およびスタック後方ガイドのための接触エレメント23が設けられている。シートスタック8、特にシートスタック8の上位のシート7を揃える、つまり位置合わせするために、側方および後方の幾つかのストッパ24が設けられている。
【0019】
フレキシブルな刷版27を取り付けるための装置(刷版交換装置)16,17は、それぞれ同一の構成を有しているので、刷版交換装置16についてのみ説明する。
【0020】
刷版交換装置16は、印刷ユニット3に対する保護装置として可動に配置されている。版胴11上に堅固に緊締された刷版27は、クランプ装置28(たとえば刷版後縁用のクランプストリップ)が開いたあとで、版胴11の後向き回動により、版胴11から展開される。刷版27は、旋回可能に配置されたガイド要素29により、搬送ローラ31,32に供給される。定位置に配置された搬送ローラ32は、回動可能に支承されていて、駆動装置30により駆動可能に刷版交換装置16のハウジングに配置されていて、フリーホイール33を備えている。
【0021】
可動の搬送ローラ31は、レバー34の端部に回動可能に支承されていて、刷版交換装置16の支承箇所36を中心に旋回可能に配置されている。フリーホイール35は、搬送ローラ31の回動運動を一方向に、つまり版胴から離間する方向にしか許容せず、したがって刷版27は、搬送ローラ31,32を離間することなく、作業員により取り外すことができる。
【0022】
印刷ユニット3の刷版27を交換する方法では、版胴11が、先ず、後縁クランプ装置28が刷版緊締位置Aに達するまで後向き回動する。刷版緊締位置Aは、大体において刷版27を搬出する機能を有するガイド装置29に対向している。後縁クランプ装置28は、版胴の回転を停止することなく開かれ、刷版端部は、刷版27の内部応力によりクランプ装置28から跳ね出す。その際、刷版端部は、ガイド装置のローラ37に当接する。版胴11の、回動方向とは逆向きの後向き回動により、刷版27は、刷版端部が搬送ローラ31,32を通過するまで、刷版交換装置16の搬出シャフト39内に摺動される。
【0023】
ガイド装置29に配置された(第1の)センサ44は、特に後縁クランプ装置28が開いたあとでガイド装置29上の刷版27、特に刷版後縁の存在を監視する。
【0024】
後縁クランプ装置28からの刷版後縁の規定通りではない離間が検出されると、版胴11が停止される。
【0025】
刷版端部が搬送ローラ31,32に達すると、刷版前縁用のクランプ装置38も、図2に示すように版胴11とゴムブランケット胴15との間の胴ニップBに達する。そこで、前縁用のクランプ装置38は、印刷機1の制御計算機45により、機械角度に応じて制御して開放される。これとほぼ同時に、第1の搬送ローラ32は、補助モータ30により駆動され、第2の搬送ローラ31は、第1の搬送ローラ32に当接されるので、刷版27が把持され、版胴11から離れる方向に搬送される。その際、搬送ローラ31,32の周速V1は、後向き回動する版胴11の周速V2よりも高く、したがって刷版27は、版胴11が停止することなく確実に前縁クランプ装置38および版胴11から引き出される。上側のガイド装置48に配置された第2のセンサ49は、刷版始端の存在を監視し、第2のセンサ49は、版胴11からの刷版27の離間の実行を信号化する。
【0026】
このような、印刷ユニット3の版胴11に基づいて行われる緊締解除(展開)過程は、残りの印刷ユニット4などの版胴の位相のずれに応じて逐次行われる。
【0027】
版胴11,12を装着するためには、印刷機もしくは駆動に関して印刷機と連結された版胴11,12は、その回動方向を変更し、新たな刷版47のための供給位置Cで停止する。供給位置Cでは、前縁クランプ装置38は、旋回可能なガイド装置41に対向するように位置決めされている。ガイド装置41は、ガイド装置41上に予め位置決めされた新たな刷版47と共に、版胴11に向かって旋回し、搬送ローラ42,43は、刷版47を、前縁クランプ装置38に搬送する。前縁クランプ装置38において刷版の存在をセンサにより検出すると、クランプ装置38が閉じられ、半径方向可動の下側のクランプストリップ51が、上側のクランプストリップ52に向かって移動される。
【0028】
次いで、残りの印刷ユニットの1つにおいて次の版胴12が相応の供給位置Cに達するまで、印刷機1ひいては版胴11は、再び前向き方向に回動する。版胴11から刷版27を搬出する際の刷版27の前縁用のクランプストリップ38の開放は、好適には所定の一定の機械速度で、クランプ装置38が位置Bと位置Aとの間に存在する領域で行われる。
【0029】
その際、追加的に、後向き回動時の機械速度が上昇している場合、領域(B−A)の範囲内でのクランプ装置38の開放時点は、位置Bに向かって前方に変位され、比較的低い機械速度の場合には、Aの方向に遅れるように変位される。
【0030】
さらに、刷版供給時に、前縁クランプ装置38が刷版供給位置Cに達する際の版胴11の回動停止が回避され、新たな刷版47は、搬送ローラ42,43により、刷版供給時における版胴11の周速V4よりも高い速度V3で駆動される。もちろん新たな刷版47を供給するために、版胴11は、前縁クランプ装置38が刷版供給位置Cに達する状態で停止させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 印刷機
2 フィーダ
3 印刷ユニット
4 印刷ユニット
6 デリバリ
7 シート
8 シートスタック
9 フィーダボード
10 紙積台
12 版胴
11 版胴
13 刷版取付け装置(クランプ・緊締装置)
14 刷版取付け装置(クランプ・緊締装置)
15 ブランケット胴
16 刷版交換装置
17 刷版交換装置
18 サッカヘッド
19 持上げサッカ
20 ブランケット胴
21 送りサッカ
22 吹込装置
23 接触エレメント
24 ストッパ
27 刷版
28 クランプ装置(後縁)
29 ガイド装置
30 駆動装置
31 搬送ローラ(旋回可能)
32 搬送ローラ(定位置)
33 フリーホイール(32)
35 フリーホイール(31)
36 支承箇所
37 ローラ
38 クランプ装置(前縁)
39 搬出シャフト
41 ガイド装置(新たな刷版)
42 搬送ローラ
43 搬送ローラ
44 センサ(29)
45 制御計算機
47 新たな刷版
48 ガイド装置
49 センサ(48)
51 下側のクランプストリップ(38)
52 上側のクランプストリップ(38)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷版を交換する方法、特に印刷機の版胴から刷版を搬出するための方法であって、先ず刷版の後縁用のクランプ装置を開放し、刷版を、版胴の後向き回動により搬出シャフトに移動させ、その際、刷版を、被駆動の搬送ローラを通過したあとで把持するものにおいて、
先ず、版胴(11)が後向き回動する間に、刷版(27)の後縁用のクランプ装置(28)を開放し、そのあとで搬送ローラ(31,32)により刷版(27)を把持するまえに、刷版(27)の前縁用のクランプ装置(38)を開放し、刷版を、搬送ローラ(31,32)により、版胴(11)を停止させることなく、後向き回動する版胴(11)から搬出することを特徴とする、刷版を交換する方法。
【請求項2】
搬送ローラ(31,32)を、後向き回動時に、版胴(11)の周速(V2)よりも高い周速(V1)で駆動する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
新たな刷版(47)を供給するために、版胴(11)を、供給位置(C)で停止させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
版胴(11)を、新たな刷版(47)を供給する間、前向き回動させ、その際、所定の搬送ローラ(42,43)が、新たな刷版(47)を、刷版供給中の版胴(11)の周速(V4)よりも高い速度(V3)で駆動する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
隣り合う印刷ユニット(3,4)の刷版(27)を、位相をずらして逐次交換する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43449(P2013−43449A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185240(P2012−185240)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, D−69115 Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】