説明

剃刀ヘッド

【課題】複数の刃体の間にスペーサを備え、該スペーサが作り出す間隙を髭かす排出路として利用する際に、最下段の髭かす排出路の上流側に通ずる刃台の凹部の形状を後方に開放することによって髭かすを流通しやすく、髭かす詰まりを防止することができる剃刀ヘッドを提供する。
【解決手段】
刃台20の梁部22間には刃台20の後端部から切込形成されるとともに嵌合孔よりも刃台20前側に位置する切込終端部24aを有する凹部24を備える。最下段の第1剃刀刃30には凹部24に連通する凹部連通孔32が形成され、最下段の髭かす排出路Aから、凹部連通孔32及び該凹部24を介して髭かすを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の刃体の間にスペーサを備え、該スペーサが作り出す間隙を髭かす排出路として利用する剃刀ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の刃体を備えた剃刀ヘッドにおいて、商業的に販売されている剃刀ヘッドの構造には、大きく分けて2種類ある。1種類は特許文献1で示されているように、ハウジングと呼ばれる矩形の枠内に複数の刃体がそれぞれ担持されているものであり、刃体間にスペーサがない。このタイプの物は、刃体間にスペーサがないため、刃体と刃体とを髭かす詰まりの虞がない。
【0003】
一方、他の1種類は、刃台とキャップ部材との間に配置した複数の刃体間にスペーサを挟着状に介在させたり(特許文献2、特許文献4〜6)、或いは、スペーサを介在させてはいないものの、刃台とキャップ部材との間に2枚以上の刃体を互いに離間して配置するものである(特許文献3)。
【0004】
特許文献2では、刃台の幅方向(すなわち、前後方向)略全体(刃台の前端から後端まで)に凹溝が設けられて、該凹溝にかみそり刃の孔を介して流入させた髭かすを前記凹溝へ流通させて刃台の前方から後方へ排出させるようにしている。
【0005】
特許文献3では、台部材(刃台に相当)とキャップ部材にそれぞれ一対の刃体が支持され、両刃体間にはスペーサが省略された構成とされ、刃体間の間隙を刃台の前端から後端まで形成して該間隙を髭かす排出路としているものである。
【0006】
特許文献4では、刃体に髭かすを流通させる開口が形成されるとともに該開口に対応して該刃体を支持するベース部材(刃台に相当)に細孔が設けられ、該開口及び細孔を介して髭かすを流通させる構成とされている。
【0007】
特許文献5では、櫛歯状のスペーサにおいて櫛歯部を連結する連結部(基部)が下方に折曲げされた構成とされ、該スペーサの基部と刃台の後端面間に溜まった髭かすを洗い流しやすくするように刃台の後端面が傾斜面とされている。そして、特許文献5では、櫛歯部間の間隙が刃台の前端から後端まで延出されて髭かす排出路が形成されている。
【0008】
特許文献6では、3枚刃のそれぞれの刃体間に複数のスペーサが介在配置されて、各スペーサが形成する間隙により上下2段の髭かす排出路が設けられ、上段の髭かす排出路と下段の髭かす排出路とを連通する連通口が刃台の後端部側において設けられている。
【0009】
なお、特許文献7には、スペーサが設けられるとともに髭かす排除板を備えた剃刀ヘッドが開示されている。
【特許文献1】特開昭51−63766号公報、第10図
【特許文献2】特開昭53−51053号公報
【特許文献3】特開昭56−27290号公報、第4図
【特許文献4】特開昭56−120157号公報、第4図
【特許文献5】特開2001−314671号公報
【特許文献6】特開2005−169025号公報
【特許文献7】実公昭53−32788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、髭そりは皮膚の角質もそり落とすが、角質には、皮脂が含まれて粘り気がある。このため、特許文献2や、特許文献3の場合のように刃台の前端から後端までの距離があると、前記粘り気により途中で髭かすの流通が止まってしまう問題があり、その後の髭かすの排出が困難になる問題がある。
【0011】
又、特許文献4では、前記細孔はキャップ部材をベース部材に止着するピンに規制されて前後幅が広くとることができない。すなわち、特許文献4において、符号44で示される前方壁部分と符号40で示されるピンの間は構造上狭くならざるを得ず、その結果、刃台に設けられた細孔も狭くなってしまい、粘り気がある皮脂を含む髭かすが早期に閉塞され髭かすの流通がスムーズに行われない問題がある。
【0012】
特許文献5や特許文献6においても、特許文献2や及び特許文献3と同様に刃台の前端から後端まで髭かす排出路が延びて距離があるため、途中で髭かすの流通が止まってしまう問題があり、その後の髭かすの排出が困難になる問題がある。
【0013】
本発明の目的は、複数の刃体の間にスペーサを備え、該スペーサが作り出す間隙を髭かす排出路として利用する際に、最下段の髭かす排出路の上流側に通ずる刃台の凹部の形状を後方に開放することによって髭かすを流通しやすく、髭かす詰まりを防止することができる剃刀ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、キャップ部材と刃台が複数のピンにより連結され、該キャップ部材と刃台の間に複数の刃体が配置され、隣接する刃体間にスペーサが介在され前記スペーサが形成する刃体間の間隙を利用した髭かす排出路が設けられた剃刀ヘッドにおいて、前記刃台には前記ピンにてそれぞれ連結される複数のピン連結部を有する梁部が形成され、前記梁部間には刃台後端部から切込形成されるとともに前記ピン連結部よりも刃台前側に位置する切込終端部を有する凹部を備え、前記刃体のうち最下段の刃体には、前記ピン連結部の後部間を結ぶ仮想線と前記切込終端部の間において開口するとともに前記凹部に連通する凹部連通路が形成され、最下段の髭かす排出路から、該凹部連通路及び該凹部を介して髭かすを排出することを特徴とする剃刀ヘッドを要旨とするものである。
【0015】
請求項1の発明によれば、凹部の形成場所はキャップ部材と刃台とを連結するピンによって規制を受けず、凹部を後方に向かって開放できる。そして、凹部に対応して最下段の刃体に設けられる凹部連通路は最下段の髭かす排出路において、上流側に配置することができる。又、凹部は後方に開口されていることから、凹部連通路を介して流れ込んだ髭かす(すなわち、皮脂を含む粘り気のある髭かす)は凹部内を塞ぐことができず、流れやすい。
【0016】
請求項2の発明は、キャップ部材と刃台が複数のピンにより連結され、該キャップ部材と刃台の間に3枚以上の刃体が配置され、隣接する刃体間にそれぞれスペーサが介在されて各スペーサが形成する刃体間の間隙を利用した複数の髭かす排出路が設けられた剃刀ヘッドにおいて、前記刃台には前記ピンにてそれぞれ連結される複数のピン連結部を有する梁部が形成され、該梁部間には刃台後端部から切込形成されるとともに、前記ピン連結部よりも刃台前側に位置する切込終端部を有する凹部を備え、前記髭かす排出路間を区切る刃体には、排出路間連通路が設けられ、前記刃体のうち最下段の刃体には、前記ピン連結部の後部間を結ぶ仮想線と前記切込終端部の間において開口するとともに前記凹部に連通する凹部連通路が形成され、最下段の髭かす排出路から、該凹部連通路及び該凹部を介して髭かすを排出することを特徴とする剃刀ヘッドを要旨とするものである。
【0017】
請求項2においても、請求項1と同様の理由により、凹部は後方に開口されていることから、凹部連通路を介して流れ込んだ髭かす(すなわち、皮脂を含む粘り気のある髭かす)は凹部内を塞ぐことができず、流れやすい。
【0018】
さらに、請求項2では、髭かす排出路間を区切る刃体に排出路間連通路が設けられているため、上方に位置する髭かす排出路から該排出路間連通路を介して下方に位置する髭かす排出路へ、髭かすを排出する。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記梁部間において、前記凹部の下部には補強用リブが連結されていることを特徴とする。請求項3の発明では、補強用リブによって刃台の剛性の低下を防止する。
【0020】
請求項4の発明は、請求項3において、前記補強用リブは、後方へ向かうに従い傾斜する傾斜面を有することを特徴とする。
請求項4の発明では、前記補強用リブが傾斜面を有することにより、傾斜面を伝って髭かすを排出できるため、髭かすの流通が妨げられることがない。
【発明の効果】
【0021】
請求項1及び請求項4の発明によれば、複数の刃体の間にスペーサを備え、該スペーサが作り出す間隙を髭かす排出路として利用する際に、最下段の髭かす排出路の上流側に通ずる刃台の凹部の形状を後方に開放することによって髭かすを流通しやすく、髭かす詰まりを防止することができる。
【0022】
請求項2の発明は、さらに、髭かす排出路間を区切る刃体に排出路間連通路が設けられているため、上方に位置する髭かす排出路から該排出路間連通路を介して下方に位置する髭かす排出路へ、髭かすを排出することができる。
【0023】
請求項3の発明は、凹部を各梁部間に設けると、刃台の剛性が低下する虞があるが、補強用リブによって刃台の剛性の低下が防止できる効果を奏する。
請求項4の発明によれば、傾斜面を有することにより、傾斜面を伝って髭かすを排出できるため、髭かすの流通が妨げられることがない効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の剃刀ヘッドを3枚刃の替刃カートリッジに具体化した一実施形態を図1〜6を参照して説明する。なお、本明細書において、前とは替刃カートリッジ10において、剃刀刃刃先が向く方向をいい、後はその180度反対方向をいう。又、左右は、替刃カートリッジ10の前部に人が向かったときを基準にして左右という。
【0025】
まず、替刃カートリッジ10の概略を説明する。図1及び図2に示すように、替刃カートリッジ10は刃台20と3枚の剃刀刃(第1剃刀刃30、第2剃刀刃40及び第3剃刀刃50)と一対の第1スペーサ60,及び第2スペーサ70、安全ガード80とキャップ部材90を主要な部材として構成されている。
【0026】
刃台20の上方には下から順にそれぞれ刃体として剃刀刃を構成する第1剃刀刃30、第2剃刀刃40、及び第3剃刀刃50が配設されるとともに、該第1、第2剃刀刃30、40間には第1スペーサ60が、第2剃刀刃40、第3剃刀刃50間には第2スペーサ70が設けられている。又、第3剃刀刃50の上方には単一の安全ガード80が設けられており、同安全ガード80の一部は刃先の前方に配置されている。そして、安全ガード80の上方にはキャップ部材90が設けられており、同キャップ部材90と刃台20は、キャップ部材90が刃台20に取着されることにより、第1剃刀刃30、第2剃刀刃40、第3剃刀刃50、第1スペーサ60、第2スペーサ70及び安全ガード80がまとめて挟持されている。
【0027】
以下、詳細に説明する。図4に示すように刃台20は合成樹脂からなり、替刃カートリッジ10の長手方向に延びる前側内壁21から後方に向かって図1、図3に示すように梁部22が互いに離間して複数突出されている。本実施形態では梁部22の数は4個とされているが、4個に限定されるものではなく、他の数であってもよい。又、互いに隣接する梁部22の距離は、本実施形態では左右の一対の梁部22間は等距離とされ、中央部側に位置する梁部22同士の間の距離は左右の一対の梁部22間の距離よりも長くされているが、限定されるものではなく、例えば、梁部22間の距離を互いに等間隔にしてもよい。
【0028】
前側内壁21及び梁部22の上面は互いに面一となった平滑な載置面23とされている。梁部22の載置面23には、図2に示すようにピン連結部としての嵌合孔22aが上下方向に延びて透設されている。本実施形態では、各嵌合孔22aは、図3に示すように一直線上に配置されているが、直線状に配置する必要はなく、円弧曲線上に配置してもよい。
【0029】
各梁部22の間は、刃台20後端部から切込形成された凹部24とされ、該凹部24の切込終端部24aは図3に示すように梁部22よりも刃台20前側に位置する切込終端部24aを有する。そして、図3に示すように、凹部24は刃台20の後方に向かって開放されている。
【0030】
又、図3に示すように梁部22間には補強用リブ25がそれぞれ架設されている。刃台20の左右両側部にそれぞれ位置する補強用リブ25は図3に示すように切込終端部24aから梁部22の前後方向の略中央部まで延出されている。又、刃台20の左右方向の中央部に位置する補強用リブ25は図3に示すように切込終端部24aから梁部22の前後方向の略中央部まで延出され、さらに、左右方向の中央部はさらに後方へ延出されている。又、補強用リブ25の上面の後端は、後方へ行くほど下方へ下がるように傾斜面25aが形成されている。
【0031】
図2に示すように、載置面23上には、第1剃刀刃30が載置されている。第1剃刀刃30は薄いステンレス板からなり、その前側縁部に形成された刃先31は前側内壁21の載置面23の前側から突出するように配置されている。
【0032】
又、第1剃刀刃30において、前後方向の中央部よりも前部側には、凹部24に相対するように凹部連通路としての凹部連通孔32が複数個透設されている。凹部連通孔32は本実施形態では左右方向に延出されて長孔状に形成されている。この凹部連通路としての凹部連通孔32は、図3に示すように各嵌合孔22aの後部間を連結する仮想線Lと切込終端部24aの間において開口するように配置されている。このように、凹部連通孔32を設けることにより、凹部連通孔32を後述する髭かす排出路Aの上流側に配置することができる。そして、図5及び図7に示すように凹部連通孔32の前縁部は凹部連通孔32の切込終端部24aの上縁と一致するように配置されるとともに、その凹部連通孔32の左右幅は凹部24の左右幅と略同じとされている。又、第1剃刀刃30の後縁部には、複数の切欠凹部34がそれぞれ凹設されるとともに各凹部連通孔32に対して架橋部35を挟んで隣り合うように配置されている。又、第1剃刀刃30において嵌合孔22aに相対するように貫通孔36が形成されている。
【0033】
第1剃刀刃30上面に載置された第1スペーサ60はステンレスやアルミニウム等の金属、或いは合成樹脂等からなるとともに平板状に形成され、間隔保持部61と連結部62を備える。連結部62は第1剃刀刃30の長手方向(すなわち左右方向)に延びるとともに複数の間隔保持部61が互いに連結されている。間隔保持部61は梁部22の数と同数となるように設けられるとともに、第1剃刀刃30の長手方向とほぼ直交する前方向に延び、第1剃刀刃30上面において凹部連通孔32が形成されていない面(例えば、凹部連通孔32間の領域や、左右両端の面)に接するように所定間隔に配置されている。図1に示すように、間隔保持部61の前端面は三角形状に突出されるとともに左右一対のテーパー状をなすガイド面64,65が形成されている。このガイド面64,65により、髭そり時に、後述するた髭かす排出路Aにガイドする。
【0034】
又、各間隔保持部61において、貫通孔36と対応する部位には貫通孔63がそれぞれ透設されている。さらに、連結部62の前面下縁には、図5、及び図7に示すように下向きのテーパー面62aが形成されている。テーパー面62aにより、髭そり時の髭かすの流れを下方にガイドする。
【0035】
そして、第1スペーサ60の上面には、第2剃刀刃40が載置されている。前記間隔保持部61により、第1剃刀刃30と第2剃刀刃40の間隔が保持される。又、互いに隣り合う間隔保持部61同士間及び第1剃刀刃30,第2剃刀刃40で区切られる空間域が髭かす排出路Aとなる。この髭かす排出路Aは、図5及び図7に示すように第1剃刀刃30の凹部連通孔32及び切欠凹部34を介して、下方に位置する凹部24に連通されている。
【0036】
第2剃刀刃40は第1剃刀刃30と同様の薄いステンレス板からなり、その前側縁部には刃先41が形成されるとともに第1スペーサ60の間隔保持部61の前端から突出するように配置されている。第2剃刀刃40の短手方向(すなわち前後方向)の長さは第1剃刀刃30の短手方向の長さよりも短く設定されている。又、第2剃刀刃40において、前後方向の中央部よりも前部側には、前記排出路Aに相対するように排出路間連通路としての排出路間連通孔42が複数個透設されている。排出路間連通孔42は本実施形態では左右方向に延出されて長孔状に形成されている。そして、図5及び図7に示すように排出路間連通孔42の排出路間連通孔42の左右幅は排出路Aの左右幅と略同じとされている。
【0037】
又、第2剃刀刃40の後縁部には、複数の切欠凹部44がそれぞれ凹設されるとともに各排出路間連通孔42に対して架橋部45を挟んで隣り合うように配置されている。又、第2剃刀刃40において嵌合孔22aに相対するように貫通孔46が形成されている。
【0038】
第2剃刀刃40上面に載置された第2スペーサ70は、ステンレスやアルミニウム等の金属、或いは合成樹脂等からなるとともに平板状に形成され、間隔保持部71と連結部72を備える。連結部72は第2剃刀刃40の長手方向(すなわち左右方向)に延びるとともに複数の間隔保持部71が互いに連結されている。間隔保持部71は梁部22の数と同数となるように設けられるとともに、第2剃刀刃40の長手方向とほぼ直交する前方向に延び、第2剃刀刃40上面において排出路間連通孔42が形成されていない面(例えば、排出路間連通孔42間の領域や、左右両端の面)に接するように所定間隔に配置されている。図1に示すように、間隔保持部71の前端面は三角形状に突出されるとともに左右一対のテーパー状をなすガイド面74,75が形成されている。このガイド面74,75により、髭そり時に、後述する髭かす排出路Bにガイドする。
【0039】
又、各間隔保持部71において、貫通孔46と対応する部位には貫通孔73がそれぞれ透設されている。さらに、連結部72の前面下縁には、図5、及び図7に示すように下向きのテーパー面72aが形成されている。テーパー面72aにより、髭そり時の髭かすの流れを下方にガイドする。
【0040】
そして、第2スペーサ70の上面には、第3剃刀刃50が載置されている。前記間隔保持部71により、第2剃刀刃40と第3剃刀刃50の間隔が保持される。又、互いに隣り合う間隔保持部71同士間及び第2剃刀刃40,第3剃刀刃50で区切られる空間域が髭かす排出路Bとなる。この髭かす排出路Bは、図5及び図7に示すように第2剃刀刃40の排出路間連通孔42及び切欠凹部44を介して、下方に位置する髭かす排出路Aに連通されている。
【0041】
第3剃刀刃50は第1剃刀刃30と同様の薄いステンレス板からなり、その前側縁部には刃先51が形成されるとともに第2スペーサ70の間隔保持部71の前端から突出するように配置されている。第2剃刀刃40の短手方向(すなわち前後方向)の長さは第2剃刀刃40の短手方向の長さよりも短く設定されている。又、第3剃刀刃50において嵌合孔22aに相対するように貫通孔56が形成されている。
【0042】
キャップ部材90は合成樹脂からなり、その中央部には第1剃刀刃30、第2剃刀刃40、第3剃刀刃50及び後記する安全ガード80のリブ84を露出させるための開口部91がキャップ部材90の長手方向に沿って形成されて、全体が枠状に形成されている。キャップ部材90において開口部91よりも後部下面から、複数(本実施形態では4本)のピン92が互いに離間して下方に向かって突設されている。各ピン92は各部材の貫通孔56,73,46,63,36を貫通して刃台20の各嵌合に嵌合して貫通され、その先端部がそれぞれ溶融されてカシメされている。このようにして、キャップ部材90が刃台20に対して固定されることにより、キャップ部材90と刃台20間に位置する各部材が位置決めされた状態で固定され、一体化されている。
【0043】
又、図4に示すように、刃台20の前側内壁21には前側外壁26がアーム26aを介して連結されている。前側外壁26の前面には複数(本実施形態では3つ)の係合凹部27が左右方向において互いに離間した位置にて凹設されている。そして、図6に示すようにキャップ部材90の左右方向に延びる前部側壁93の後面に設けられた係合突起94が係合凹部27に係合されている。
【0044】
又、前記前側外壁26前面において係合凹部27よりも左右方向においてそれぞれ外側の位置には一対のガイド溝28が凹設されている。そして、前側外壁26の前面において、前記ガイド溝28に対応する下方の部位には係合凹部29(図5において、一方の係合凹部29のみ図示)が形成されている。
【0045】
さらに、前記前側内壁21の下部から前方に向けて断面L字状の嵌合突片26bが突設され、該嵌合突片26bと前側外壁26とが形成する間隙にキャップ部材90の前部側壁93が嵌合されている。そして、図5及び図6に示すようにキャップ部材90の前部側壁93の後面に設けられた係合突起95が嵌合時にガイド溝28にガイドされて係合凹部29に係合されている。
【0046】
又、図5に示すようにキャップ部材90の上面において開口部91よりも前側の位置である前部側壁93の上端には、髭を開口部91側に案内するガイド部材96が固着されている。
【0047】
又、前部側壁93の前方に位置するようにキャップ部材90の左右両側部にはローラ100が回転自在に支持されている。又、キャップ部材90の後部上面には左右方向に延びるようにスムーサ101が装着されている。
【0048】
安全ガード80は、第3剃刀刃50の後端部から刃台20の前側外壁26の下側寄りの位置迄を覆うように配置されている。安全ガード80はステンレス製の薄材からなり、前部81と後部82間は前後方向に延びる複数のリブ84により連結されるとともにリブ84、前部81及び後部82とにより複数の矩形孔が形成されている。安全ガード80の後部82は図2に示すようにキャップ部材90と第3剃刀刃50間に挟着保持されるとともに該後部82に形成された複数の貫通孔83にキャップ部材90のピン92が挿通されている。
【0049】
安全ガード80の前部81は図5に示すように前部側壁93と前側外壁26間に挟着されるとともに、係合突起94が挿通された矩形孔85において該係合突起94下面に係止されている。このように、安全ガード80が取着されていることにより、リブ84が緊張状態で保持されるとともに図2及び図5に示すように各刃先31,41,51に当接されている。
【0050】
次に上記のように構成した替刃カートリッジ10の作用について説明する。
替刃カートリッジ10を図示しないホルダに装着して髭を剃る場合、まず、第1剃刀刃30の刃先31によって髭は切断され、続く、第2剃刀刃40の刃先41、及び第3剃刀刃50の刃先51によっても髭が切断される。
【0051】
ここで、刃先31にて切断された皮脂を含む髭かすは図5及び図7に示すように前側内壁21と前側外壁26間の間隙を介して、下方へ流される。
又、刃先41にて切断された皮脂を含む髭かすは図5及び図7に示すように髭かす排出路Aを流れる。髭かす排出路Aに流れた皮脂を含む髭かすは凹部連通孔32を介して下方に位置する凹部24へ移動される。この場合、凹部24が刃台20の後方に向かって開放されているため、皮脂を含む粘り気のある髭かすは凹部24を閉塞しにくい。このため、髭かすが流通しやすく、凹部24において、髭かす詰まりを防止することができる。又、凹部24の補強用リブ25の上面は傾斜面25aを有するため、髭かすを流し易くすることができる。
【0052】
又、刃先51にて切断された髭かすや皮脂は図5及び図7に示すように髭かす排出路Bを流れる。髭かす排出路Bに流れた皮脂を含む髭かすは排出路間連通孔42や切欠凹部44を介して下方に位置する髭かす排出路Aへ移動される。そして、この場合、髭かす排出路Aに流れた髭かすは、切欠凹部34を介して凹部24に流れ出る。凹部24に流れ出た髭かすは、図5、図7に示すように刃台20の補強用リブ25上面の傾斜面25aを介して、或いは直接凹部24の下方又は後方を流れ出る。
【0053】
上記実施形態は下記の効果を奏する。
(1) 本実施形態では、刃台20にはピン92にてそれぞれ連結される複数の嵌合孔22a(ピン連結部)を有する梁部22が形成され、該梁部22間には刃台20の後端部から切込形成されるとともに嵌合孔22a(ピン連結部)よりも刃台20前側に位置する切込終端部24aを有する凹部24を備える。そして、最下段の第1剃刀刃30には、嵌合孔22aの後部間を結ぶ仮想線Lと切込終端部24aの間において開口するとともに凹部24に連通する凹部連通孔32(凹部連通路)が形成され、最下段の髭かす排出路Aから、凹部連通孔32及び該凹部24を介して髭かすを排出するようにした。
【0054】
この結果、本実施形態では、凹部24の形成場所はキャップ部材90と刃台20とを連結するピン92によって規制を受けず、凹部24を後方に向かって開放できる。そして、凹部24に対応して最下段の第1剃刀刃30(刃体)に設けられる凹部連通孔32は最下段の髭かす排出路Aにおいて、上流側に配置することができる。又、凹部24は後方に開口されていることから、凹部連通孔32を介して流れ込んだ皮脂を含む粘り気のある髭かすは凹部24内を塞ぐことができず、流れやすい。
【0055】
この結果、複数の剃刀刃(刃体)の間に第1スペーサ60及び第2スペーサ70を備え、両スペーサが作り出す間隙を髭かす排出路A,Bとして利用する際に、最下段の髭かす排出路Aの上流側に通ずる刃台20の凹部24の形状を後方に開放することによって髭かすを流通しやすく、髭かす詰まりを防止することができる。
【0056】
(2) 本実施形態では、髭かす排出路A,B間を区切る第2剃刀刃40には、排出路間連通路としての排出路間連通孔42が設けられているため、上方に位置する髭かす排出路Bから該排出路間連通孔42を介して下方に位置する髭かす排出路へ、髭かすを排出することができる。
【0057】
(3) 本実施形態では、梁部22間において、凹部24の下部には補強用リブ25が連結されていることにより、補強用リブ25によって刃台20の剛性の低下を防止することができる。このため、髭そり時において、刃台20の剛性低下に起因する髭そり効果の低下を防止できる。
【0058】
(4) 本実施形態では、補強用リブ25には、後方へ向かうに従い傾斜する傾斜面を有するようにしたことにより、補強用リブ25が傾斜面25aを有することにより、傾斜面25aを伝って髭かすを排出できるため、髭かすの流通が妨げられることがない。
【0059】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、下記のように具体化してもよい。
○ 前記実施形態では、3枚刃の剃刀ヘッドに具体化したが、例えば、前記実施形態の構成中、第2剃刀刃40や第2スペーサ70を省略することにより、2枚刃の剃刀ヘッドに具体化してもよい。この場合、第2剃刀刃40が省略されるため、髭かす排出路B及び排出路間連通孔42は省略された構成となる。
【0060】
○ 前記実施形態では、3枚刃の剃刀ヘッドに具体化したが、剃刀刃の枚数を増やして、4枚刃、5枚刃としてもよい。この場合においても各剃刀刃の間にはスペーサが介在位置されて、剃刀刃間に髭かす排出路が形成され、上方に位置する髭かす排出路と下方に位置する髭かす排出路とは、排出路間連通孔を形成するものとする。
【0061】
○ 前記各実施形態では、第1スペーサ60,第2スペーサ70を前後方向に移動不能に固定的に設けたが、スペーサとして刃台に対して前後方向に移動可能に配置される髭かす排除板として構成してもよい。
【0062】
○ 前記実施形態では、凹部連通路として凹部連通孔32を形成したが、凹部連通路は孔に限定されるものではなく、第1剃刀刃30の後部より切込形成した溝としてもよい。
○ 前記実施形態では、補強用リブ25を形成したが、補強用リブ25を省略してもよい。
【0063】
○ 前記実施形態では、補強用リブ25を前側内壁21と一体に連結形成したが、補強用リブ25と前側内壁21とを離間して形成するようにしてもよい。
○ 前記実施形態では、剃刀ヘッドを替刃カートリッジに具体化したが、ホルダが一体に形成された剃刀のヘッドとして構成してもよい。
【0064】
○ 前記実施形態では、第1スペーサ60及び第2スペーサ70は刃台20に対してそれぞれ分離独立した構成としたが、スペーサを刃台20に対して分離独立せず、一体にした構成としてもよい。
【0065】
例えば、図示はしないが3枚刃構成の剃刀ヘッドの場合、刃台20の各梁部22の上面に、第1スペーサ60の間隔保持部61に相当する形状の第1スペーサを一体に突出させ、さらに第1スペーサの上面に対して第1スペーサよりも縮形した形状の第2スペーサを一体に設けても良い。そして、第1剃刀刃には第1スペーサを貫通する貫通孔(或いは貫通溝)を設け、第1スペーサを該貫通孔(或いは貫通溝)に貫通させて刃台20の載置面23上に載置する。さらに、第2剃刀刃には第2スペーサを貫通する貫通孔(或いは貫通溝)を設け、第2スペーサを該貫通孔(或いは貫通溝)に貫通させて第1スペーサ上面に載置する。そして、第2スペーサの上面に第3剃刀刃を載置させた状態で、刃台20に対してキャップ部材を前記実施形態と同様に取着する構成とする。このように構成した場合、第1剃刀刃・第2剃刀刃間と、第2剃刀刃・第3剃刀刃間には第1スペーサと第2スペーサによるスペースが形成されて、それぞれのスペースを髭かす排出路とすることができる。このような構成の3枚刃の剃刀ヘッドに対しても、本発明を具体化できる。
【0066】
或いは、2枚刃の剃刀ヘッドの場合、上記3枚刃の剃刀ヘッドの構成から、第2スペーサと、第2剃刀刃を省略すればよいから、この2枚刃の剃刀ヘッドの場合においても、本発明を容易に具体化できる。なお、4枚刃以上の剃刀ヘッドの場合も、刃の枚数に応じて、前記3枚刃の剃刀ヘッドの構成に加えて、さらにスペーサを一体に突出するだけの構成であるから、これらの構成においても、本発明を容易に具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の替刃カートリッジの分解斜視図。
【図2】同じく替刃カートリッジの要部断面図。
【図3】同じく刃台の平面図。
【図4】同じく、キャップ部材と刃台の分解拡大斜視図
【図5】同じく替刃カートリッジの要部断面図。
【図6】同じくキャップ部材の底面側から見た斜視図。
【図7】同じく作用を示す替刃カートリッジの要部断面斜視図。
【符号の説明】
【0068】
A,B…髭かす排出路、L…仮想線、20…刃台、22…梁部、
22a…嵌合孔(ピン連結部)、24…凹部、24a…切込終端部、
25…補強用リブ、25a…傾斜面、30…第1剃刀刃(刃体)
32…凹部連通孔(凹部連通路)、40…第2剃刀刃(刃体)、
42…排出路間連通孔(排出路間連通路)、50…第3剃刀刃(刃体)、
90…キャップ部材、92…ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ部材と刃台が複数のピンにより連結され、該キャップ部材と刃台の間に複数の刃体が配置され、隣接する刃体間にスペーサが介在され前記スペーサが形成する刃体間の間隙を利用した髭かす排出路が設けられた剃刀ヘッドにおいて、
前記刃台には前記ピンにてそれぞれ連結される複数のピン連結部を有する梁部が形成され、
該梁部間には刃台後端部から切込形成されるとともに前記ピン連結部よりも刃台前側に位置する切込終端部を有する凹部を備え、
前記刃体のうち最下段の刃体には、前記ピン連結部の後部間を結ぶ仮想線と前記切込終端部の間において開口するとともに前記凹部に連通する凹部連通路が形成され、
最下段の髭かす排出路から、該凹部連通路及び該凹部を介して髭かすを排出することを特徴とする剃刀ヘッド。
【請求項2】
キャップ部材と刃台が複数のピンにより連結され、該キャップ部材と刃台の間に3枚以上の刃体が配置され、隣接する刃体間にそれぞれスペーサが介在されて各スペーサが形成する刃体間の間隙を利用した複数の髭かす排出路が設けられた剃刀ヘッドにおいて、
前記刃台には前記ピンにてそれぞれ連結される複数のピン連結部を有する梁部が形成され、
該梁部間には刃台後端部から切込形成されるとともに、前記ピン連結部よりも刃台前側に位置する切込終端部を有する凹部を備え、
前記髭かす排出路間を区切る刃体には、排出路間連通路が設けられ、
前記刃体のうち最下段の刃体には、前記ピン連結部の後部間を結ぶ仮想線と前記切込終端部の間において開口するとともに前記凹部に連通する凹部連通路が形成され、
最下段の髭かす排出路から、該凹部連通路及び該凹部を介して髭かすを排出することを特徴とする剃刀ヘッド。
【請求項3】
前記梁部間において、前記凹部の下部には補強用リブが連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の剃刀ヘッド。
【請求項4】
前記補強用リブは、後方へ向かうに従い傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項3に記載の剃刀ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−325827(P2007−325827A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160845(P2006−160845)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000112473)フェザー安全剃刀株式会社 (17)