削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法
【課題】 掘削工事を中断することなく地山強度比を算出する。
【解決手段】本発明に係る切羽前方予測方法はまず、地山を削孔しつつ削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測する。次に、フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、該差分ΔF3をΔF―ΔV相関曲線に適用することによって、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、この変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。次に、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。次に、正規化削孔速度比VNを、VN―σc相関曲線、VN―Vpc相関曲線及びVN―γ相関曲線という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。次に、求められた地山パラメータから地山強度比を算出する。
【解決手段】本発明に係る切羽前方予測方法はまず、地山を削孔しつつ削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測する。次に、フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、該差分ΔF3をΔF―ΔV相関曲線に適用することによって、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、この変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。次に、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。次に、正規化削孔速度比VNを、VN―σc相関曲線、VN―Vpc相関曲線及びVN―γ相関曲線という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。次に、求められた地山パラメータから地山強度比を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として山岳トンネルの地山を掘削する際に採用される削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工及び補助工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で非常に重要であり、かかるトンネル切羽前方探査を行う技術として、ノンコア削孔による穿孔探査が広く知られている。
【0003】
穿孔探査は、トンネル切羽前方を削孔する際、穿孔データとして穿孔速度、打撃圧、回転圧、フィード圧、ダンピング圧等を取得し、かかる穿孔データから穿孔エネルギーを、下記の式、すなわち、
穿孔エネルギー={打撃エネルギー×打撃回数/(穿孔速度×孔断面積)}
×損失係数
で算出し、該穿孔エネルギーの大小で地山性状(岩盤等級)を評価する方法である。
【0004】
かかる方法において、穿孔速度は、フィード圧、すなわち削岩機のロッドを地山に押し付ける圧力に左右されるため、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価するためには、フィード圧を一定にする必要がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3380795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地山によっては、フィード圧を一定に維持することが困難であって、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価することができないという問題を生じていた。
【0007】
かかる問題を解決すべく、フィード圧の変動によって穿孔エネルギーに与える影響をフィード圧補正という形で除去し、その上で地山を評価する手法も提案されているものの、未だ研究の域を出ない。
【0008】
いずれにしろ、ノンコア削孔による前方探査技術は、削岩機からの物理データを用いるものではあるが、データ処理で得られる結果については精度の面で信頼性に乏しく、経験的な判断を行う上での材料にとどまっているのが現状である。
【0009】
また、山岳トンネル工事における切羽の安定性を判断する指標として、地山強度比が知られており、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
σc; 地山の一軸圧縮強度
Vp; 地山の弾性波速度
Vpc; コア試料の弾性波速度
γ ; 地山の単位体積重量
H ; 土被り高さ
から求めることができる(以下、Vp、Vpc、γ及びHを地山パラメータと呼ぶ)。
【0010】
かかる地山強度比は、切羽の安定性を判断する指標として、中硬岩から軟岩あるいは土砂の範囲で適用されているが、山岳トンネルの前方予測として地山強度比を求めるのであれば、コア試料の採取箇所を切羽近傍ではなく切羽より前方の地山としなければならず、水平ボーリングが不可欠となって掘削工事の中断を余儀なくされるという問題を生じていた。
【0011】
加えて、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γについては、現場では測定が困難であって室内試験が必要となるため、水平ボーリングにおける問題とも相俟って、掘削効率がますます低下するという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、掘削工事を中断することなく地山強度比を算出することが可能な削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法は請求項1に記載したように、第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析してフィード圧―削孔速度相関関係を求め、
第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
該修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記第2の掘削現場において削孔位置近傍の地山からコア試料を採取し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求め、
前記正規化削孔速度比VNと前記地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記コア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求めるものである。
【0014】
また、本発明に係る切羽前方予測方法は請求項2に記載したように、第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
前記差分ΔF3を請求項1記載の前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することによって、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VNを、請求項1記載の前記速度比―圧縮強度相関関係、請求項1記載の前記速度比―弾性波速度相関関係、及び請求項1記載の前記速度比―単位体積重量相関関係に適用することによって、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γをそれぞれ算出し、
算出された地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γから地山強度比、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
を算出するものである。
【0015】
ノンコア削孔で得られる物理データを用いて前方探査を行うにあたり、本出願人は、フィード圧Fの変動量ΔFと削孔速度Vの変動量ΔVとの間には相関関係があり、かつ、この相関関係は、フィード圧Fや削孔速度Vの大きさに依存しないというあらたな知見を得るとともに、この相関関係に基づいて新たな前方探査手法を確立できないだろうかという点に着目し研究開発を行ったところ、フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析することで両者の相関関係(フィード圧―削孔速度相関関係)を求め、該相関関係にフィード圧の変動量ΔFを適用して削孔速度Vの変動量ΔVを算出することにより、フィード圧の変動を考慮した形で削孔速度を修正することに成功したものである。
【0016】
一方、地山強度比を使った地山の安定性評価を行うには、掘削工事を中断して水平ボーリングを行い、コア試料を採取する必要があるため、工期等の関係上、トンネルの掘削工事に用いることは難しいという現状を受け、本出願人は、掘削工事を中断することなく地山強度比をトンネル掘削時の前方予測に生かす手だてはないものかという点に着眼して研究開発を重ねた結果、修正削孔速度VRを正規化した正規化削孔速度比VNと地山パラメータとの間に相関関係があることをあらたな知見として得るとともに、掘削中に得られる正規化削孔速度比VNをこの相関関係に適用することにより、掘削工事を何ら中断することなく、切羽前方の地山パラメータを求めて地山強度比を算出し、かかる地山強度比から切羽前方における地山の安定性を評価することができるという産業上きわめて有益な知見をあらたに見出したものである。
【0017】
すなわち、請求項1に係る相関関係算出方法においては、まず、第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する。
【0018】
削孔手段は、例えば油圧ジャンボの名称で広く使用されている削岩機を用いることが可能であり、かかる場合においては、油圧ジャンボに搭載されているドリフターの計測システムを利用して計測すればよい。
【0019】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する。
【0020】
フィード圧F1の変動量ΔF1は例えば、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔFi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0021】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔVi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0022】
次に、ΔFi(i=1,2,3・・・n)及びΔVi(i=1,2,3・・・n)に対して回帰分析を行い、フィード圧―削孔速度相関関係((ΔF―ΔV))を求める。
【0023】
なお、設定フィード圧とは、削孔手段を駆動する際のフィード圧の目安として設定するものであって、実際に計測されるフィード圧とは異なるものである。
【0024】
本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。
【0025】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0026】
このように、第1の削孔現場においてフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求めたならば、次に、この相関関係を第2の削孔現場での掘削に適用することで、修正削孔速度VRを算出するとともに、それを正規化した正規化削孔速度比VNを算出する。
【0027】
すなわち、第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測する。
【0028】
次に、フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2をフィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する。
【0029】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、次いで、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0030】
一方、第2の掘削現場において、削孔位置近傍の地山からからコア試料を取り出し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。
【0031】
次に、正規化削孔速度比VNと地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、正規化削孔速度比VNとコア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、正規化削孔速度比VNと地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求める。
【0032】
第1の削孔現場とは、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を得るための任意の削孔現場、第2の削孔現場とは、第1の削孔現場で得られたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を用いて正規化削孔速度比VNを求めるとともに、採取されたコア試料から地山パラメータを求め、かかる正規化削孔速度比VN及び地山パラメータから、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)の3つの相関関係を求めるための任意の削孔現場である。
【0033】
そして、第1の削孔現場及び第2の削孔現場で得られた計4つの相関関係は、切羽前方の予測を行う対象となる他の任意の削孔現場(本発明ではこれを第3の削孔現場とよぶ)に適用して切羽前方の地山性状を予測することができるものであり、第3の現場においては、4つの相関関係を再度求める必要はない。
【0034】
第1の削孔現場と第2の削孔現場は、第1の削孔現場で得られたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を用いて、第2の削孔現場で速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)の3つの相関関係を得るという役割を明確にするために便宜上、第1,第2と概念を分けたものであり、第2の削孔現場と第1の削孔現場とが同一の施工現場であるかどうかは不問である。
【0035】
加えて、第2の削孔現場におけるコア試料の採取は、正規化削孔速度比VNと対応した位置で採取される限り、その採取方法は任意である。すなわち、例えば所定の基準点に対する削岩機の位置を0m、切羽位置を+5m、削孔先端位置を+35mとした場合、正規化削孔速度比VNの取得断面位置は削孔先端位置である+35mであるため、基準点から+35mの地山を水平ボーリングで採取するようにしてもよいし、掘削が進行して+35mの地山断面が切羽となって露出したとき、該切羽から岩塊を切削し、これをコア試料としてもよい。
【0036】
以上の手順を行うことにより、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係が求まるので、かかる相関関係を任意の削孔現場(第3の削孔現場)に適用することにより、該削孔現場でコア試料を採取することなく、切羽前方の地山性状を予測することが可能となる。
【0037】
すなわち、第3の削孔現場においては、まず、削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測する。
【0038】
次に、フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、該差分ΔF3をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することによって、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、この変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。次いで、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0039】
次に、正規化削孔速度比VNを、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。
【0040】
次に、求められた地山パラメータを以下の式、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
に代入することで、地山強度比を算出する。ここで、Vp及びHは、設計時の与条件として設計図書に記載されているので、これを用いればよい。
【0041】
得られた地山強度比は、削孔位置における地山強度比であって、例えば該削孔位置が切羽前方20mの断面位置であれば、その断面位置での地山性状を地山強度比から評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
(第1実施形態)
【0044】
図1は、第1実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法を示したフローチャートである。本実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法においては、まず、第1の削孔現場において、削孔手段、例えば油圧ジャンボで地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する(ステップ101)。
【0045】
ここで、第1の削孔現場は、例えば実際のトンネル掘削現場を利用することができるが、第1の削孔現場における目的は、フィード圧の変動量と削孔速度の変動量とを回帰分析して両者の相関関係を求めるためであって、地山の前方予測は、後述する第3の削孔現場で可能となる。
【0046】
削孔の際には、例えば油圧ジャンボに搭載されたドリフターの設定フィード圧がその都度異なる値となるように、設定フィード圧を調整する。例えば、4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaに設定することが考えられる。
【0047】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する(ステップ102)。
【0048】
フィード圧F1の変動量ΔF1は、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔF1,i(i=1,2,3・・・n)とする。
【0049】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔV1,i(i=1,2,3・・・n)とする。なお、以下、ΔF1の数値群をΔF1,i(i=1,2,3・・・n)と表し、ΔV1の数値群をΔV1,i(i=1,2,3・・・n)と表す。
【0050】
図2は、ある削孔現場において、平均フィード圧が4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaである場合の削孔速度とその平均値を描いたグラフであり、同図から、4.90MPaに対応する削孔速度が230cm/min、3.92MPaに対応する削孔速度が180cm/min、2.94MPaに対応する削孔速度が130cm/minであることがわかる。
【0051】
これらのうち、4.90MPaと3.92MPaとの差分をとって、
ΔF1,1=0.98MPa
3.92MPaと2.94MPaとの差を
ΔF1,2=0.98MPa
とする。このとき、対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,1=50cm/min
ΔV1,2=50cm/min
となる。
【0052】
図3〜図5は、別の削孔現場におけるフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併せて記載してある。
【0053】
これらのうち、距離程が900m〜930mの区間におけるフィード圧の変動量は、
ΔF1,3=0.245MPa
となる。また。これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,3=15cm/min
となる。
【0054】
同様に、距離程が1300m〜1320mの区間におけるフィード圧の変動量と、これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,4=0.49MPa
ΔV1,4=40cm/min
となり、距離程が1340m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,5=1.715MPa
ΔV1,5=80cm/min
となり、距離程が2020m〜2030mの区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,6=0.49MPa
ΔV1,6=30cm/min
となり、距離程が2040m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,7=0.49MPa
ΔV1,7=50cm/min
となる。
【0055】
次に、原点、すなわち、
ΔF1,0≒0
ΔV1,0≒0
も含めた計8組のΔF1,i(i=0,1,2,3・・・7)及びΔV1,i(i=0,1,2,3・・・7)を回帰分析し、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求める(ステップ103)。ここで、ΔF1,0及びΔV1,0は、回帰分析の都合上、それぞれ0.1としてある。
【0056】
上述した8組の値は、以下の3次多項式、すなわち、
ΔV=c1×(ΔF)3
+c2×(ΔF)2
+c3×(ΔF)1
で近似することが可能であり、この3次多項式を、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を表す相関曲線として図6に示す。
【0057】
図2及び図6でもわかるように、ΔV1、ΔV2は、フィード圧の大きさが異なるものの、ΔF1、ΔF2は、いずれも50cm/minである。
【0058】
これ以外でも、本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、同様な性状を示す例は数多く見られ、このことから、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。なお、フィード圧の差分が0.49MPaのとき、削孔速度の差分として、30cm/min、40cm/min、50cm/minの3ケースを載せたが、これは、削孔データを回帰分析する際にばらつきが生じることを示したものである。
【0059】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0060】
すなわち、図6に示した相関曲線は、回帰分析に用いるプロット数が適切であれば、あらゆる地盤に適用し得る汎用性の高いものであると言える。
【0061】
このように、第1の削孔現場においてフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求めたならば、次に、この相関関係を第2の削孔現場での掘削に適用することで、修正削孔速度VRを算出するとともに、それを正規化した正規化削孔速度比VNを算出する。
【0062】
図7は、正規化削孔速度比VNを算出する手順を示したフローチャートである。同図に示すように、正規化削孔速度比VNを算出するには、まず、第2の削孔現場で地山を掘削する際、削孔時のフィード圧F2及び削孔速度V2を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F2の差分ΔF2を算出する(ステップ111)。すなわち、
ΔF2=F2−F0
【0063】
次に、差分ΔF2(絶対値)をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する(ステップ112)。
【0064】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する(ステップ113)。
【0065】
ここで、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも大きい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では減少すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2−ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0066】
一方、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも小さい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では増加すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2+ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0067】
図8は、上述した計測値に対する修正削孔速度VRを示したものである。
【0068】
次に、修正削孔速度VRから最大値及び最小値を抽出し、これらの値を参考に上限閾値および下限閾値を設定する(ステップ114)。
【0069】
次に、設定した閾値の範囲内に収まっている修正削孔速度VRを対象とし、以下に定義される正規化削孔速度比VNを求める(ステップ115)。
VN=(修正削孔速度VR―下限閾値)/(上限閾値―下限閾値)
【0070】
例えば、上限閾値を2,000cm/min、下限閾値を−1,000cm/minとすれば、
VN=(修正削孔速度VR+1000)/3000
となる。
【0071】
ちなみに、上述した手順で正規化を行えば、正規化削孔速度比VNは、各値が0から1の範囲に入ることとなる。
【0072】
図9は、上述した削孔データに対して算出された正規化削孔速度比VNである。
【0073】
一方、第2の掘削現場において、削孔位置近傍の地山からからコア試料を取り出し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc(kN/m2)、コア試料の弾性波速度Vpc(km/s)及び地山の単位体積重量γ(kN/m3)を地山パラメータとして求める(ステップ116)。
【0074】
次に、正規化削孔速度比VNと地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、正規化削孔速度比VNとコア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、正規化削孔速度比VNと地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求める(ステップ117)。
【0075】
第2の削孔現場におけるコア試料の採取は、例えば所定の基準点に対する削岩機の位置を0m、切羽位置を+5m、削孔先端位置を+35mとした場合、正規化削孔速度比VNの取得断面位置は削孔先端位置である+35mであるため、掘削が進行して+35mの地山断面が切羽となって露出したとき、該切羽から岩塊を切削し、これをコア試料とすればよい。
【0076】
図10及び図11は、速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)及び速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及びを示したグラフである。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法によれば、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係が求まるので、かかる相関関係を任意の削孔現場(第3の削孔現場)に適用することにより、該削孔現場でコア試料を採取することなく、切羽前方の地山性状を予測することが可能となる。
【0078】
(第2実施形態)
【0079】
続いて、第1実施形態で求めたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係を用いて切羽前方の地山性状を予測する手順を説明する。
【0080】
図12は、第2実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態に係る切羽前方予測方法においては、まず、第3の削孔現場で地山を掘削する際、削孔時のフィード圧F3及び削孔速度V3を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F3の差分ΔF3を算出する(ステップ121)。すなわち、
ΔF3=F3−F0
【0081】
次に、差分ΔF3(絶対値)をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することにより、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出する(ステップ122)。
【0082】
次に、ステップ113と同様にして、変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する(ステップ123)。
【0083】
次に、ステップ114〜115と同様にして、修正削孔速度VRから正規化削孔速度比VNを求める(ステップ124)。
【0084】
求められた正規化削孔速度比VNを図13に示す。
【0085】
次に、正規化削孔速度比VNを、図10及び図11に示した速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める(ステップ125)。
【0086】
次に、求められた地山パラメータを以下の式、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度(km/s)
H ; 土被り高さ(m)
に代入することで、地山強度比を算出する(ステップ126)。ここで、Vp及びHは、設計時の与条件として設計図書に記載されているので、これを用いればよい。
【0087】
図14は、算出された地山強度比を距離程(トンネル坑口からの距離)を横軸にして対数表示したグラフである。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る切羽前方予測方法によれば、切羽前方の地山性状を予測したい削孔現場(第3の削孔現場)においては、削孔時のフィード圧F3及び削孔速度V3を計測しながら、これを1つめの相関曲線(ΔF―ΔV)に適用することで正規化削孔速度比VNを算出するとともに、該正規化削孔速度比VNを速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関曲線に適用することで、地山の一軸圧縮強度σc(kN/m2)、コア試料の弾性波速度Vpc(km/s)及び地山の単位体積重量γ(kN/m3)という地山パラメータを算出するとともに、算出された地山パラメータから地山強度比を求めることが可能となる。
【0089】
したがって、削孔現場(第3の削孔現場)では、コア試料を採取したりそれを室内試験で計測したりすることなく、削孔作業を継続しながら切羽前方の地山性状をリアルタイムに予測することが可能となり、水平ボーリングによってコア試料を採取していた従前の方法に比べ、掘削効率を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法の手順を示したフローチャート。
【図2】相関曲線を作成する際に用いた平均フィード圧に対する削孔速度を示すグラフ。
【図3】フィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併記したもの。
【図4】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図5】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図6】フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量との相関関係を示したグラフ。
【図7】正規化削孔速度比VNを算出する手順を示したフローチャート。
【図8】修正削孔速度VRを示したグラフ。
【図9】正規化削孔速度比VNを示したグラフ。
【図10】速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)を示したグラフ。
【図11】速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及びを示したグラフ。
【図12】第2実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャート。
【図13】正規化削孔速度比VNを示したグラフ。
【図14】算出された地山強度比を距離程を横軸にして対数表示したグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として山岳トンネルの地山を掘削する際に採用される削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工及び補助工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で非常に重要であり、かかるトンネル切羽前方探査を行う技術として、ノンコア削孔による穿孔探査が広く知られている。
【0003】
穿孔探査は、トンネル切羽前方を削孔する際、穿孔データとして穿孔速度、打撃圧、回転圧、フィード圧、ダンピング圧等を取得し、かかる穿孔データから穿孔エネルギーを、下記の式、すなわち、
穿孔エネルギー={打撃エネルギー×打撃回数/(穿孔速度×孔断面積)}
×損失係数
で算出し、該穿孔エネルギーの大小で地山性状(岩盤等級)を評価する方法である。
【0004】
かかる方法において、穿孔速度は、フィード圧、すなわち削岩機のロッドを地山に押し付ける圧力に左右されるため、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価するためには、フィード圧を一定にする必要がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3380795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地山によっては、フィード圧を一定に維持することが困難であって、穿孔エネルギーから地山を客観的に評価することができないという問題を生じていた。
【0007】
かかる問題を解決すべく、フィード圧の変動によって穿孔エネルギーに与える影響をフィード圧補正という形で除去し、その上で地山を評価する手法も提案されているものの、未だ研究の域を出ない。
【0008】
いずれにしろ、ノンコア削孔による前方探査技術は、削岩機からの物理データを用いるものではあるが、データ処理で得られる結果については精度の面で信頼性に乏しく、経験的な判断を行う上での材料にとどまっているのが現状である。
【0009】
また、山岳トンネル工事における切羽の安定性を判断する指標として、地山強度比が知られており、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
σc; 地山の一軸圧縮強度
Vp; 地山の弾性波速度
Vpc; コア試料の弾性波速度
γ ; 地山の単位体積重量
H ; 土被り高さ
から求めることができる(以下、Vp、Vpc、γ及びHを地山パラメータと呼ぶ)。
【0010】
かかる地山強度比は、切羽の安定性を判断する指標として、中硬岩から軟岩あるいは土砂の範囲で適用されているが、山岳トンネルの前方予測として地山強度比を求めるのであれば、コア試料の採取箇所を切羽近傍ではなく切羽より前方の地山としなければならず、水平ボーリングが不可欠となって掘削工事の中断を余儀なくされるという問題を生じていた。
【0011】
加えて、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γについては、現場では測定が困難であって室内試験が必要となるため、水平ボーリングにおける問題とも相俟って、掘削効率がますます低下するという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、掘削工事を中断することなく地山強度比を算出することが可能な削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法は請求項1に記載したように、第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析してフィード圧―削孔速度相関関係を求め、
第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
該修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記第2の掘削現場において削孔位置近傍の地山からコア試料を採取し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求め、
前記正規化削孔速度比VNと前記地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記コア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求めるものである。
【0014】
また、本発明に係る切羽前方予測方法は請求項2に記載したように、第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
前記差分ΔF3を請求項1記載の前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することによって、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VNを、請求項1記載の前記速度比―圧縮強度相関関係、請求項1記載の前記速度比―弾性波速度相関関係、及び請求項1記載の前記速度比―単位体積重量相関関係に適用することによって、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γをそれぞれ算出し、
算出された地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γから地山強度比、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
を算出するものである。
【0015】
ノンコア削孔で得られる物理データを用いて前方探査を行うにあたり、本出願人は、フィード圧Fの変動量ΔFと削孔速度Vの変動量ΔVとの間には相関関係があり、かつ、この相関関係は、フィード圧Fや削孔速度Vの大きさに依存しないというあらたな知見を得るとともに、この相関関係に基づいて新たな前方探査手法を確立できないだろうかという点に着目し研究開発を行ったところ、フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析することで両者の相関関係(フィード圧―削孔速度相関関係)を求め、該相関関係にフィード圧の変動量ΔFを適用して削孔速度Vの変動量ΔVを算出することにより、フィード圧の変動を考慮した形で削孔速度を修正することに成功したものである。
【0016】
一方、地山強度比を使った地山の安定性評価を行うには、掘削工事を中断して水平ボーリングを行い、コア試料を採取する必要があるため、工期等の関係上、トンネルの掘削工事に用いることは難しいという現状を受け、本出願人は、掘削工事を中断することなく地山強度比をトンネル掘削時の前方予測に生かす手だてはないものかという点に着眼して研究開発を重ねた結果、修正削孔速度VRを正規化した正規化削孔速度比VNと地山パラメータとの間に相関関係があることをあらたな知見として得るとともに、掘削中に得られる正規化削孔速度比VNをこの相関関係に適用することにより、掘削工事を何ら中断することなく、切羽前方の地山パラメータを求めて地山強度比を算出し、かかる地山強度比から切羽前方における地山の安定性を評価することができるという産業上きわめて有益な知見をあらたに見出したものである。
【0017】
すなわち、請求項1に係る相関関係算出方法においては、まず、第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する。
【0018】
削孔手段は、例えば油圧ジャンボの名称で広く使用されている削岩機を用いることが可能であり、かかる場合においては、油圧ジャンボに搭載されているドリフターの計測システムを利用して計測すればよい。
【0019】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する。
【0020】
フィード圧F1の変動量ΔF1は例えば、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔFi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0021】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔVi(i=1,2,3・・・n)とすればよい。
【0022】
次に、ΔFi(i=1,2,3・・・n)及びΔVi(i=1,2,3・・・n)に対して回帰分析を行い、フィード圧―削孔速度相関関係((ΔF―ΔV))を求める。
【0023】
なお、設定フィード圧とは、削孔手段を駆動する際のフィード圧の目安として設定するものであって、実際に計測されるフィード圧とは異なるものである。
【0024】
本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。
【0025】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0026】
このように、第1の削孔現場においてフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求めたならば、次に、この相関関係を第2の削孔現場での掘削に適用することで、修正削孔速度VRを算出するとともに、それを正規化した正規化削孔速度比VNを算出する。
【0027】
すなわち、第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測する。
【0028】
次に、フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2をフィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する。
【0029】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、次いで、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0030】
一方、第2の掘削現場において、削孔位置近傍の地山からからコア試料を取り出し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。
【0031】
次に、正規化削孔速度比VNと地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、正規化削孔速度比VNとコア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、正規化削孔速度比VNと地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求める。
【0032】
第1の削孔現場とは、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を得るための任意の削孔現場、第2の削孔現場とは、第1の削孔現場で得られたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を用いて正規化削孔速度比VNを求めるとともに、採取されたコア試料から地山パラメータを求め、かかる正規化削孔速度比VN及び地山パラメータから、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)の3つの相関関係を求めるための任意の削孔現場である。
【0033】
そして、第1の削孔現場及び第2の削孔現場で得られた計4つの相関関係は、切羽前方の予測を行う対象となる他の任意の削孔現場(本発明ではこれを第3の削孔現場とよぶ)に適用して切羽前方の地山性状を予測することができるものであり、第3の現場においては、4つの相関関係を再度求める必要はない。
【0034】
第1の削孔現場と第2の削孔現場は、第1の削孔現場で得られたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を用いて、第2の削孔現場で速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)の3つの相関関係を得るという役割を明確にするために便宜上、第1,第2と概念を分けたものであり、第2の削孔現場と第1の削孔現場とが同一の施工現場であるかどうかは不問である。
【0035】
加えて、第2の削孔現場におけるコア試料の採取は、正規化削孔速度比VNと対応した位置で採取される限り、その採取方法は任意である。すなわち、例えば所定の基準点に対する削岩機の位置を0m、切羽位置を+5m、削孔先端位置を+35mとした場合、正規化削孔速度比VNの取得断面位置は削孔先端位置である+35mであるため、基準点から+35mの地山を水平ボーリングで採取するようにしてもよいし、掘削が進行して+35mの地山断面が切羽となって露出したとき、該切羽から岩塊を切削し、これをコア試料としてもよい。
【0036】
以上の手順を行うことにより、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係が求まるので、かかる相関関係を任意の削孔現場(第3の削孔現場)に適用することにより、該削孔現場でコア試料を採取することなく、切羽前方の地山性状を予測することが可能となる。
【0037】
すなわち、第3の削孔現場においては、まず、削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測する。
【0038】
次に、フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、該差分ΔF3をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することによって、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、この変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する。次いで、修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出する。
【0039】
次に、正規化削孔速度比VNを、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める。
【0040】
次に、求められた地山パラメータを以下の式、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
に代入することで、地山強度比を算出する。ここで、Vp及びHは、設計時の与条件として設計図書に記載されているので、これを用いればよい。
【0041】
得られた地山強度比は、削孔位置における地山強度比であって、例えば該削孔位置が切羽前方20mの断面位置であれば、その断面位置での地山性状を地山強度比から評価することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法及びそれを用いた切羽前方予測方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
(第1実施形態)
【0044】
図1は、第1実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法を示したフローチャートである。本実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法においては、まず、第1の削孔現場において、削孔手段、例えば油圧ジャンボで地山を削孔するとともに、削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測する(ステップ101)。
【0045】
ここで、第1の削孔現場は、例えば実際のトンネル掘削現場を利用することができるが、第1の削孔現場における目的は、フィード圧の変動量と削孔速度の変動量とを回帰分析して両者の相関関係を求めるためであって、地山の前方予測は、後述する第3の削孔現場で可能となる。
【0046】
削孔の際には、例えば油圧ジャンボに搭載されたドリフターの設定フィード圧がその都度異なる値となるように、設定フィード圧を調整する。例えば、4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaに設定することが考えられる。
【0047】
次に、計測されたデータを用いてフィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する削孔速度V1の変動量ΔV1とを算出する(ステップ102)。
【0048】
フィード圧F1の変動量ΔF1は、互いに異なる2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均フィード圧を求め、それらの差分をとってΔF1,i(i=1,2,3・・・n)とする。
【0049】
一方、削孔速度V1の変動量ΔV1は、上述した2つの設定フィード圧で同一区間i(i=1,2,3・・・n)を削孔した場合におけるそれぞれの平均削孔速度を求め、それらの差分をとってΔV1,i(i=1,2,3・・・n)とする。なお、以下、ΔF1の数値群をΔF1,i(i=1,2,3・・・n)と表し、ΔV1の数値群をΔV1,i(i=1,2,3・・・n)と表す。
【0050】
図2は、ある削孔現場において、平均フィード圧が4.90MPa、3.92MPa、2.94MPaである場合の削孔速度とその平均値を描いたグラフであり、同図から、4.90MPaに対応する削孔速度が230cm/min、3.92MPaに対応する削孔速度が180cm/min、2.94MPaに対応する削孔速度が130cm/minであることがわかる。
【0051】
これらのうち、4.90MPaと3.92MPaとの差分をとって、
ΔF1,1=0.98MPa
3.92MPaと2.94MPaとの差を
ΔF1,2=0.98MPa
とする。このとき、対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,1=50cm/min
ΔV1,2=50cm/min
となる。
【0052】
図3〜図5は、別の削孔現場におけるフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併せて記載してある。
【0053】
これらのうち、距離程が900m〜930mの区間におけるフィード圧の変動量は、
ΔF1,3=0.245MPa
となる。また。これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔV1,3=15cm/min
となる。
【0054】
同様に、距離程が1300m〜1320mの区間におけるフィード圧の変動量と、これに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,4=0.49MPa
ΔV1,4=40cm/min
となり、距離程が1340m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,5=1.715MPa
ΔV1,5=80cm/min
となり、距離程が2020m〜2030mの区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,6=0.49MPa
ΔV1,6=30cm/min
となり、距離程が2040m前後の区間におけるフィード圧の変動量とこれに対応する削孔速度の変動量は、
ΔF1,7=0.49MPa
ΔV1,7=50cm/min
となる。
【0055】
次に、原点、すなわち、
ΔF1,0≒0
ΔV1,0≒0
も含めた計8組のΔF1,i(i=0,1,2,3・・・7)及びΔV1,i(i=0,1,2,3・・・7)を回帰分析し、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求める(ステップ103)。ここで、ΔF1,0及びΔV1,0は、回帰分析の都合上、それぞれ0.1としてある。
【0056】
上述した8組の値は、以下の3次多項式、すなわち、
ΔV=c1×(ΔF)3
+c2×(ΔF)2
+c3×(ΔF)1
で近似することが可能であり、この3次多項式を、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を表す相関曲線として図6に示す。
【0057】
図2及び図6でもわかるように、ΔV1、ΔV2は、フィード圧の大きさが異なるものの、ΔF1、ΔF2は、いずれも50cm/minである。
【0058】
これ以外でも、本出願人が膨大のデータ検証を行った結果、同様な性状を示す例は数多く見られ、このことから、フィード圧の大きさが異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになるというあらたな知見を得た。なお、フィード圧の差分が0.49MPaのとき、削孔速度の差分として、30cm/min、40cm/min、50cm/minの3ケースを載せたが、これは、削孔データを回帰分析する際にばらつきが生じることを示したものである。
【0059】
加えて、フィード圧の変動は主として地山の岩盤性状の違いに起因するため、上述した知見は、削孔する地山が異なっても、フィード圧の差分が同じであれば、それに対応する削孔速度の差分も同じになると言い換えることができる。
【0060】
すなわち、図6に示した相関曲線は、回帰分析に用いるプロット数が適切であれば、あらゆる地盤に適用し得る汎用性の高いものであると言える。
【0061】
このように、第1の削孔現場においてフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)を求めたならば、次に、この相関関係を第2の削孔現場での掘削に適用することで、修正削孔速度VRを算出するとともに、それを正規化した正規化削孔速度比VNを算出する。
【0062】
図7は、正規化削孔速度比VNを算出する手順を示したフローチャートである。同図に示すように、正規化削孔速度比VNを算出するには、まず、第2の削孔現場で地山を掘削する際、削孔時のフィード圧F2及び削孔速度V2を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F2の差分ΔF2を算出する(ステップ111)。すなわち、
ΔF2=F2−F0
【0063】
次に、差分ΔF2(絶対値)をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することにより、削孔速度V2の変動量ΔV2を算出する(ステップ112)。
【0064】
次に、変動量ΔV2を削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する(ステップ113)。
【0065】
ここで、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも大きい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では減少すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2−ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0066】
一方、計測されたフィード圧F2が基準フィード圧F0よりも小さい場合、削孔速度V2は、基準フィード圧F0の下では増加すると考え、下記の式、すなわち、
修正削孔速度VR=削孔速度V2+ΔV2
を演算することで修正削孔速度VRを求める。
【0067】
図8は、上述した計測値に対する修正削孔速度VRを示したものである。
【0068】
次に、修正削孔速度VRから最大値及び最小値を抽出し、これらの値を参考に上限閾値および下限閾値を設定する(ステップ114)。
【0069】
次に、設定した閾値の範囲内に収まっている修正削孔速度VRを対象とし、以下に定義される正規化削孔速度比VNを求める(ステップ115)。
VN=(修正削孔速度VR―下限閾値)/(上限閾値―下限閾値)
【0070】
例えば、上限閾値を2,000cm/min、下限閾値を−1,000cm/minとすれば、
VN=(修正削孔速度VR+1000)/3000
となる。
【0071】
ちなみに、上述した手順で正規化を行えば、正規化削孔速度比VNは、各値が0から1の範囲に入ることとなる。
【0072】
図9は、上述した削孔データに対して算出された正規化削孔速度比VNである。
【0073】
一方、第2の掘削現場において、削孔位置近傍の地山からからコア試料を取り出し、該コア試料から、 地山の一軸圧縮強度σc(kN/m2)、コア試料の弾性波速度Vpc(km/s)及び地山の単位体積重量γ(kN/m3)を地山パラメータとして求める(ステップ116)。
【0074】
次に、正規化削孔速度比VNと地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、正規化削孔速度比VNとコア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、正規化削孔速度比VNと地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求める(ステップ117)。
【0075】
第2の削孔現場におけるコア試料の採取は、例えば所定の基準点に対する削岩機の位置を0m、切羽位置を+5m、削孔先端位置を+35mとした場合、正規化削孔速度比VNの取得断面位置は削孔先端位置である+35mであるため、掘削が進行して+35mの地山断面が切羽となって露出したとき、該切羽から岩塊を切削し、これをコア試料とすればよい。
【0076】
図10及び図11は、速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)及び速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及びを示したグラフである。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法によれば、フィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係が求まるので、かかる相関関係を任意の削孔現場(第3の削孔現場)に適用することにより、該削孔現場でコア試料を採取することなく、切羽前方の地山性状を予測することが可能となる。
【0078】
(第2実施形態)
【0079】
続いて、第1実施形態で求めたフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という4つの相関関係を用いて切羽前方の地山性状を予測する手順を説明する。
【0080】
図12は、第2実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態に係る切羽前方予測方法においては、まず、第3の削孔現場で地山を掘削する際、削孔時のフィード圧F3及び削孔速度V3を計測しながら、予め設定された基準フィード圧F0、例えば4.9MPaからのフィード圧F3の差分ΔF3を算出する(ステップ121)。すなわち、
ΔF3=F3−F0
【0081】
次に、差分ΔF3(絶対値)をフィード圧―削孔速度相関関係(ΔF―ΔV)に適用することにより、削孔速度V3の変動量ΔV3を算出する(ステップ122)。
【0082】
次に、ステップ113と同様にして、変動量ΔV3を削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出する(ステップ123)。
【0083】
次に、ステップ114〜115と同様にして、修正削孔速度VRから正規化削孔速度比VNを求める(ステップ124)。
【0084】
求められた正規化削孔速度比VNを図13に示す。
【0085】
次に、正規化削孔速度比VNを、図10及び図11に示した速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関関係に適用することにより、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求める(ステップ125)。
【0086】
次に、求められた地山パラメータを以下の式、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度(km/s)
H ; 土被り高さ(m)
に代入することで、地山強度比を算出する(ステップ126)。ここで、Vp及びHは、設計時の与条件として設計図書に記載されているので、これを用いればよい。
【0087】
図14は、算出された地山強度比を距離程(トンネル坑口からの距離)を横軸にして対数表示したグラフである。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る切羽前方予測方法によれば、切羽前方の地山性状を予測したい削孔現場(第3の削孔現場)においては、削孔時のフィード圧F3及び削孔速度V3を計測しながら、これを1つめの相関曲線(ΔF―ΔV)に適用することで正規化削孔速度比VNを算出するとともに、該正規化削孔速度比VNを速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)、速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及び速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)という3つの相関曲線に適用することで、地山の一軸圧縮強度σc(kN/m2)、コア試料の弾性波速度Vpc(km/s)及び地山の単位体積重量γ(kN/m3)という地山パラメータを算出するとともに、算出された地山パラメータから地山強度比を求めることが可能となる。
【0089】
したがって、削孔現場(第3の削孔現場)では、コア試料を採取したりそれを室内試験で計測したりすることなく、削孔作業を継続しながら切羽前方の地山性状をリアルタイムに予測することが可能となり、水平ボーリングによってコア試料を採取していた従前の方法に比べ、掘削効率を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1実施形態に係る削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法の手順を示したフローチャート。
【図2】相関曲線を作成する際に用いた平均フィード圧に対する削孔速度を示すグラフ。
【図3】フィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフであり、フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量を併記したもの。
【図4】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図5】同じくフィード圧と削孔速度との関係を横軸に距離程をとって示したグラフ。
【図6】フィード圧の変動量とそれらに対応する削孔速度の変動量との相関関係を示したグラフ。
【図7】正規化削孔速度比VNを算出する手順を示したフローチャート。
【図8】修正削孔速度VRを示したグラフ。
【図9】正規化削孔速度比VNを示したグラフ。
【図10】速度比―単位体積重量相関関係(VN―γ)、速度比―圧縮強度相関関係(VN―σc)を示したグラフ。
【図11】速度比―弾性波速度相関関係(VN―Vpc)及びを示したグラフ。
【図12】第2実施形態に係る切羽前方予測方法の手順を示したフローチャート。
【図13】正規化削孔速度比VNを示したグラフ。
【図14】算出された地山強度比を距離程を横軸にして対数表示したグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析してフィード圧―削孔速度相関関係を求め、
第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
該修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記第2の掘削現場において削孔位置近傍の地山からコア試料を採取し、該コア試料から、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求め、
前記正規化削孔速度比VNと前記地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記コア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求めることを特徴とする削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法。
【請求項2】
第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
前記差分ΔF3を請求項1記載の前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することによって、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VNを、請求項1記載の前記速度比―圧縮強度相関関係、請求項1記載の前記速度比―弾性波速度相関関係、及び請求項1記載の前記速度比―単位体積重量相関関係に適用することによって、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γをそれぞれ算出し、
算出された地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γから地山強度比、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
を算出することを特徴とする切羽前方予測方法。
【請求項1】
第1の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F1と削孔速度V1とを計測し、前記フィード圧F1の変動量ΔF1と該変動量に対応する前記削孔速度V1の変動量ΔV1とを回帰分析してフィード圧―削孔速度相関関係を求め、
第2の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F2と削孔速度V2とを計測し、
前記フィード圧F2の基準フィード圧からの差分ΔF2を算出して該差分ΔF2を前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することにより、前記削孔速度V2の変動量ΔV2を算出し、
前記変動量ΔV2を前記削孔速度V2に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
該修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記第2の掘削現場において削孔位置近傍の地山からコア試料を採取し、該コア試料から、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γを地山パラメータとして求め、
前記正規化削孔速度比VNと前記地山の一軸圧縮強度σcとから速度比―圧縮強度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記コア試料の弾性波速度Vpcとから速度比―弾性波速度相関関係を、前記正規化削孔速度比VNと前記地山の単位体積重量γとから速度比―単位体積重量相関関係をそれぞれ求めることを特徴とする削孔速度比及び地山パラメータの相関関係算出方法。
【請求項2】
第3の削孔現場において削岩機等の削孔手段で地山を削孔するとともに削孔時のフィード圧F3と削孔速度V3とを計測し、
前記フィード圧F3の基準フィード圧からの差分ΔF3を算出し、
前記差分ΔF3を請求項1記載の前記フィード圧―削孔速度相関関係に適用することによって、前記削孔速度V3の変動量ΔV3を算出し、
前記変動量ΔV3を前記削孔速度V3に加算又は減算して修正削孔速度VRを算出し、
前記修正削孔速度VRを、それらの値が0から1となるように正規化して正規化削孔速度比VNを算出し、
前記正規化削孔速度比VNを、請求項1記載の前記速度比―圧縮強度相関関係、請求項1記載の前記速度比―弾性波速度相関関係、及び請求項1記載の前記速度比―単位体積重量相関関係に適用することによって、地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γをそれぞれ算出し、
算出された地山の一軸圧縮強度σc、コア試料の弾性波速度Vpc及び地山の単位体積重量γから地山強度比、
σc・(Vp/Vpc)2/(γ・H)
Vp; 地山の弾性波速度
H ; 土被り高さ
を算出することを特徴とする切羽前方予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−161964(P2009−161964A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341434(P2007−341434)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
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