説明

剥離フィルムを有する包装袋

【課題】本発明は、包装材料フィルムをチリ、埃等の汚染から保護している剥離フィルムを包装材料フィルムから容易に剥がすことができるようにした剥離フィルムを有する包装袋を提供すること。
【解決手段】剥離フィルム11と包装材料フィルム12を重ね合わせた二重フィルム10を、包装材料フィルムのシーラント層14を互いに対向させて周縁部2−1をシールしてなる包装袋であって、剥離フィルム11と包装材料フィルム12とは周縁部2−2では剥離可能な状態で密着しており、周縁部2−3では剥離フィルムと包装材料フィルムが密着しておらず、周縁部2−4では剥離フィルム同士が密着しており、周縁部以外の内容物収納部3では互いに密着していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、特に塵や埃を嫌う半導体製品、磁気ディスク、シリコンウェハ等の包装に好適な包装袋に関するものであり、特に真空密封による包装に適した構造を有する、塵埃等の汚染から内容物を防止するための包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や精密機器と言った製品は、ゴミ、埃、チリといった塵埃を極端に嫌うため、その製造は清浄度の高いクリーンルーム内で行われ、さらに清浄度の高い冶具を用い、製造作業員の衣服、手袋といったものも高い清浄度のものが用いられる。このような環境にクリーンルーム外から物品を持ち込む際には、プラスチックフィルム製の袋に包装して行う場合が多い。
【0003】
この包装袋としては、特許文献1に開示されているように、包装用フィルムで作られた袋の表面に包装後に外面となる保護フィルム層を設け、輸送等により保護フィルム層が汚染された後、再度クリーンルームに搬入する際には汚染された保護フィルム層を剥離して、最外層を再びクリーンな状態に戻せるようにしたフィルムや袋がある。
【0004】
しかしこの包装袋は、保護フィルム層(以後保護フィルム層=剥離フィルムとし、剥離フィルムと呼ぶ)と包装用フィルム(「基材層」)が密着していることによって使用後の剥離フィルムの除去時に剥き難さの問題が有る。
【0005】
剥離フィルムは内容物を密封した後に剥離するものであるが、立体的な形状の内容物を収容して密封した後の袋は形状に凹凸がついて機械で自動的に剥離フィルムを剥くことは難しい。さらに、通常行われる真空梱包の場合には内容物の形状に従って形状の凹凸はより激しくなるのでこの問題は深刻である。
【0006】
このために、機械での剥離フィルムの除去が困難な場合には、手作業による剥離が行われる。この場合に、剥離フィルムと「基材層」が全面にわたり密着していると、剥離抵抗が強く容易に剥くことができないという問題が残る。
【0007】
これは、剥離フィルムを剥く場合、剥離開始時は剥離部の幅が狭く剥離強度が弱くても次第に袋の幅方向、もしくは縦方向の全体を剥く必要があるため剥離フィルムの剥き幅が大きくなるのに従い剥離させるのに必要な力が大きくなる為である。
【0008】
例えば、剥離フィルムと「基材層」の間の強度が20g/15mm幅(90°剥離)であっても製袋幅が200mmならば226g以上の力が一定の間剥き終わるまでに必要になる。さらに実際の作業に近い180°剥離の場合、おおよそ倍の力が必要になることや、内容物が密封され形状が複雑である場合はさらに力が必要になる。
【0009】
そのため剥離フィルムが剥がし辛く作業者に負担がかかる。また、剥離フィルムに何らかの傷等が有る場合、剥き作業時に剥離フィルムが裂けて全く剥くことができず、外気に汚染された剥離フィルムが袋に残ってしまい、表面汚染の除去という機能を果たせなくなる。これらの問題点は剥離フィルムと「基材層」の全面が密着していることが原因となっている。
【0010】
逆に剥離作業を簡単にするため、剥離フィルムと「基材層」の貼り合わせ強度を弱くすることが考えられる。その場合、剥離フィルムが使用中に「基材層」から剥がれてしまう
問題が発生するため一定以上剥離強度を弱くすることはできない。
【0011】
剥離フィルムと「基材層」が完全に密着している場合、剥離フィルムが内容物包装後の輸送等の使用中に「基材層」から剥がれないために必要な密着強度は15〜20g/15mm幅(90°剥離)が最低限度値であるが、この程度では上述の剥離フィルムが剥がし辛く、作業者に負担がかかると言う問題は解決できない。
【0012】
上記問題を解決するため、周縁部のみ剥離フィルムと包装材料フィルムとは剥離可能に密着しており、周縁部以外の内容物収納部では互いに密着していない事を特徴とする剥離フィルムを有する包装袋を考えた。
【0013】
しかし上記包装袋でも剥離キッカケの有る辺と対向する辺は、剥離フィルムを包装材料フィルムから剥く作業終了時に袋の幅方向、もしくは縦方向の全体を剥く事になり、剥離フィルムの剥き幅が大きくなるために剥離に必要な力が大きくなることが判った。
【0014】
そこで剥離フィルムと、包装材料フィルムを重ね合わせた二重フィルム周縁部をシールし、剥離フィルムと包装材料フィルムとは一辺を除いて周縁部で剥離可能に密着しており、残り一辺は剥離フィルム同士が密着した状態で、周縁部以外の収納部では包装材料フィルムと剥離フィルムは重なっているだけで互いに密着しておらず、剥離フィルムを容易に剥がすことができる包装体を考えたが、包装材料フィルム内部に内容物を真空封入すると内容物の形状に沿って包装材料フィルムに凹部ができ、剥離フィルムが凹部に挟まれ剥き難くなることが判った。
【特許文献1】特開平7−330020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、剥離フィルムと包装材料フィルムを重ね合わせた二重フィルムを、包装材料フィルムのシーラント層を互いに対向させて周縁部をシールしてなる剥離フィルムを有する包装袋に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、包装材料フィルムをチリ、埃等の汚染から保護している剥離フィルムを包装材料フィルムから容易に剥がすことができるようにした剥離フィルムを有する包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1の発明は、剥離フィルムと、包装材料フィルムを重ね合せた二重フィルムを、包装材料フィルムのシーラント層を互いに対向させて周縁部をシールしてなる包装袋であって、前記剥離フィルムと包装材料フィルムとは、周縁部では剥離可能に密着しており、周縁部以外の内容物収納部では密着しておらず、かつ、包装袋周縁部の二辺は剥離フィルムと包装材料フィルムが密着しておらず、その内一辺に限り剥離フィルムが包装材料フィルムより長く延設され、その周縁部では剥離フィルム同士が密着している事を特徴とする剥離フィルムを有する包装袋である。
【0017】
このように請求項1の発明によれば、剥離フィルムと、包装材料フィルムを重ね合わせた二重フィルムを、包装材料フィルムのシーラント層を互いに対向させて周縁部をシールしてなる包装袋であって、前記剥離フィルムと包装材料フィルムとは二辺を除いて周縁部で剥離可能に密着しており、一辺は剥離フィルム同士が密着した状態で、もう一辺は剥離フィルムと包装材料フィルムは密着しておらず、周縁部以外の収納部も包装材料フィルムと剥離フィルムは重なっているだけで互いに密着していない。
【0018】
この為包装材料フィルム内面に内容物を入れ真空密封すると同時に、剥離フィルムと包
装材料フィルムの間に空気を入れ膨らませて密封すれば、包装材料フィルム内部に内容物を真空封入すると内容物の形状に沿って包装材料フィルムに出来る凹部に、剥離フィルムが挟まれず、剥離フィルムを包装材料フィルムから容易に剥がすことができる。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の発明における前記包装材料フィルムが、二軸延伸プラスチックフィルムからなる基材層と、ポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層からなり、前記剥離フィルムは、外層と内層の熱融着性樹脂層からなることを特徴とする剥離フィルムを有する包装袋である。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の剥離フィルムを有する包装袋は、剥離フィルムと包装材料フィルムを重ね合わせた二重フィルムを製袋してなり、二重フィルムの外側に位置する剥離フィルムは簡単に剥ぐことができ、剥離フィルムを剥いた後はクリーンな包装袋を容易、かつ、確実に得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
<図1>は、本発明の剥離フィルムを有する包装袋の一実施例を示す、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A‘線断面説明図である。
<図2>は、本発明の剥離フィルムを有する包装袋の層構成の一実施例を示す部分拡大断面説明図である。
【0022】
本発明の剥離フィルムを有する包装袋は、例えば<図1>、<図2>に示すように、剥離フィルム11と、包装材料フィルム12を重ね合わせた二重フィルム10を、包装材料フィルムのシーラント層14を互いに対向させて周縁部2−1をシールしてなる包装袋である。
【0023】
そして、剥離フィルム11と包装材料フィルム12とは対向する二辺の周縁部2−2では剥離可能に密着しており、他の二辺2−3では剥離フィルムと包装材料フィルムは密着してなく、その内一辺2−4では剥離フィルム同士が密着し、周縁部以外の収納部3では剥離フィルムと包装材料フィルムのすべてが互いに密着していないことを特徴としている。
【0024】
また、前記包装材料フィルム12は、ニ軸延伸プラスチックフィルムからなる基材層13と、ポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層14からなり、前記剥離フィルム11は、外層15と内層16の熱融着性樹脂層からなる。
【0025】
剥離フィルム11の外層15としては、二軸延伸ポリプロプレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔等が使用でき、剥離フィルム11の内層16としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0026】
剥離フィルムの内側に配置される包装材料フィルム12の基材層13としては、ナイロン等の二軸延伸プラスチックフィルムが好ましく使用でき、包装材料フィルムのシーラント層14としては、剥離フィルムの内層と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0027】
なお、図示してないが必要に応じて、包装材料フィルム12の基材層13とシーラント層14の間に二軸延伸ポリプロプレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔等からなる中間層を設けることもできる。
【0028】
剥離フィルム11の外層15と内層16、また、包装材料フィルム12の基材層13とシーラント層14とは、例えば、ポリエステル樹脂系の二液反応型接着剤を用いたドライラミネート法、あるいは溶融ポリエチレンを介した押し出しラミネート法等の一般的に公知のラミネート法により貼り合わせることができる。
包装袋の形態は、三方シール袋、合掌貼り袋、ガゼット袋などに適用できる。
【0029】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0030】
剥離フィルム11として、外層15となる厚さ12μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムと内層16となる厚さ40μmのポリエチレンフィルム(メルトフローレート:2g/10min、融点:110℃)とを溶融ポリエチレンを介して積層し、二軸延伸ポリプロプレンフィルム(厚さ12μm)/ポリエチレン(厚さ15μm)/ポリエチレンフィルム(厚さ40μm)からなる層構成の剥離フィルム11を準備した。なお、内層のポリエチレンの外側にはコロナ放電処理を施した。
なお、メルトフローレート(MFR)はJIS K7210により、融点はJIS K7121により測定した。
【0031】
別に厚さ15μmのチューブラー法により作成した二軸延伸ナイロンフィルムと厚さ7μmのアルミニウム箔を二液反応型のポリエステル樹脂系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせ複合フィルムとし、この複合フィルムのアルミニウム箔面に厚さ15μmのチューブラー法により作製した二軸延伸ナイロンフィルムを二液反応型のポリエステル樹脂系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせ、二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)/接着剤/アルミニウム箔(厚さ7μm)/接着剤/二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)からなる層構成の包装材料フィルム12用の基材層13を作製した。
【0032】
なお、この構成において、最初の二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)が剥離フィルム11と接する基材層にあたり、あとのアルミニウム箔(厚さ7μm)/接着剤/二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)がシーラント層14と接する中間層にあたる。また、剥離フィルム11と接する側の二軸延伸ナイロンフィルム表面は、コロナ放電等の表面処理を施さない未処理面である。
【0033】
この基材層13の剥離フィルム11と接しない方の二軸延伸ナイロンフィルム面に、シーラント層14となる厚さ80μmの低密度ポリエチレンフィルムを二液反応型のポリエステル樹脂系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせ、二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)/接着剤/アルミニウム箔(厚さ7μm)/接着剤/二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤/低密度ポリエチレンフィルム(厚さ80μm)の層構成からなる包装材料フィルム12を作製した。
【0034】
このようにして作製した剥離フィルム11のポリエチレン面(コロナ放電処理面)と包装材料フィルム12の未処理延伸ナイロンフィルム面を対向させて重ね合わせて二重フィルム10とし、この二重フィルムを2本作製した。
【0035】
この二重フィルム2本を、包装材料フィルム12のシーラント層14である低密度ポリエチレンフィルム(厚さ80μm)面同士を互いに対向させて、縦360mm、横260mm、シール幅10mmの三方シール袋を下記ヒートシール条件で作製し、実施例1の剥離フィルムを有する包装袋とした。ヒートシール条件は温度200℃、時間0.5秒、圧力0.2Mpa、加圧回数3回である。
【0036】
この包装袋に電子基板を真空封入し、同時に剥離フィルムからなる外側の袋と包装材料フィルムからなる内側の袋の間にエアーを注入して包装材料フィルム及び剥離フィルムからなる開口部4を封止した。その後に外側の剥離フィルムを手で剥がしてみた。従来の、特許文献1で開示されている方法即ち剥離フィルムが全面で包装材料フィルムと密着しているタイプ及び周縁部の剥離フィルムと包装材料フィルムの三方ををすべてシールしたタイプの三方シール袋を使用した場合に比べて、剥離フィルムの除去が著しく容易であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の剥離フィルムを有する包装袋の一実施例を示す。(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A‘線断面説明図である。
【図2】本発明の剥離フィルムを有する包装袋の層構成の一実施例を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ……包装袋
2−1 ……周縁部(包装材料フィルム同士が密着している部分)
2−2 ……周縁部(剥離フィルムと包装材料フィルムが剥離可能な状態で密着してい
る部分)
2−3 ……周縁部(剥離フィルムと包装材料フィルムが内容物収容時には密着していない辺)
2−4 ……周縁部(剥離フィルム同士が密着している辺)
3 ……内容物収納部
4 ……開口部
10 ……二重フィルム
11 ……剥離フィルム
12 ……包装材料フィルム
13 ……基材層
14 ……シーラント層
15 ……外層
16 ……内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムと、包装材料フィルムを重ね合せた二重フィルムを、包装材料フィルムのシーラント層を互いに対向させて周縁部をシールしてなる包装袋であって、前記剥離フィルムと包装材料フィルムとは、周縁部では剥離可能に密着しており、周縁部以外の内容物収納部では密着しておらず、かつ、包装袋周縁部の二辺は剥離フィルムと包装材料フィルムが密着しておらず、その内一辺に限り剥離フィルムが包装材料フィルムより長く延設され、その周縁部では剥離フィルム同士が密着している事を特徴とする剥離フィルムを有する包装袋。
【請求項2】
前記包装材料フィルムは、二軸延伸プラスチックフィルムからなる基材層と、ポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層からなり、前記剥離フィルムは、外層と内層が熱融着性樹脂層からなることを特徴とする請求項1に記載の剥離フィルムを有する包装袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−126546(P2009−126546A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302746(P2007−302746)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】