説明

割りピン抜き取り工具

【課題】軸等に装着された割りピンを容易に抜き取ることができる割りピン抜き取り工具を提供する。
【解決手段】互いに枢着された操作部3及び4の各一端部に、係合部1及び2を設ける。また、係合部1の対向面5に溝部7と窪み部8を、係合部2の対向面6に溝部9と窪み部10を形成する。そして、軸12等に固定された割りピン11を抜き取る場合は、割りピン11の一方の足部13aを上記窪み部8に、他方の足部13bを窪み部10に係止させた状態で係合部1及び2を閉じていき、両足部13a及び13bが溝部7及び9内に収まるように係止部1及び2を完全に閉じて、曲がった両足部13a及び13bを真っ直ぐに伸ばす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸等に装着された割りピンを抜き取るための割りピン抜き取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、割りピンを軸等に装着するための工具が提案されている。
割りピンを軸等に装着するためには、直線状に形成されている割りピンの2本の足部を所定の孔に通した後、両足部を開くように曲げて塑性変形させれば良い。なお、割りピンの装着時は、割りピンとして新品のものが使用されるため、上記装着作業は比較的容易に行うことができ、特に問題が生じることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−155750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、軸等に既に装着されている割りピンを取り外す場合は、割りピンの両足部を、取り付けられている孔に沿うように直線状に加工し、その孔から抜き取らなければならない。
【0005】
図8は抜き取り作業時の割りピンの状態を示す図である。従来では、図8(a)に示すように軸12に装着されている割りピン11を取り外す場合、通常のペンチやラジオペンチ等を用いて両足部13a、13bの加工を行っていた。しかし、軸12への装着が長期に渡ると、割りピン11に錆や劣化、摩耗等が発生し、足部13a、13bを真っ直ぐに整えることが困難になるといった問題があった(図8(b)参照)。
【0006】
また、図9はエレベーター改修作業時の昇降路ピット内の状態を示す図である。図9において、15はエレベーター昇降路内を昇降するつり合いおもり、16はつり合いおもり15の昇降を案内するガイドレール、17はつり合いおもり15を昇降路内で懸架する主ロープ、18は主ロープ17をつり合いおもり15に連結するための連結ロッドである。
【0007】
割りピンは、上記連結ロッド18にも用いられている。このため、エレベーターの改修時に主ロープ17の交換作業を行う場合、作業者は、梯子19の上に登って不安定な姿勢で割りピンの抜き取り作業を行わなければならない。このため、割りピンに錆等が発生している場合は、上記加工に多大な時間と手間とが必要になり、その作業効率が大幅に低下するといった問題があった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、軸等に装着された割りピンを容易に抜き取ることができる割りピン抜き取り工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る割りピン抜き取り工具は、軸等に装着された割りピンを抜き取るための割りピン抜き取り工具であって、互いに対向する対向面を有し、割りピンの抜き取り時に割りピンの足部に係合する第1係合部及び第2係合部と、一端部に第1係合部が設けられた第1操作部と、一端部に第2係合部が設けられるとともに、第1操作部に枢着されることにより、第1操作部との枢着軸を中心に第1係合部及び第2係合部を開閉させる第2操作部と、第1係合部の対向面に直線状に形成され、一端が第1係合部の先端に開口する第1溝部と、第2係合部の対向面に直線状に形成され、一端が第2係合部の先端に開口するとともに、第1係合部及び第2係合部が閉じられた際に、その長手に渡って第1溝部に対向する第2溝部と、第1溝部に形成された、割りピンの一方の足部の先端を係止するための第1窪み部と、第2溝部に形成された、割りピンの他方の足部の先端を係止するための第2窪み部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る割りピン抜き取り工具であれば、軸等に装着された割りピンを容易に抜き取ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1における割りピン抜き取り工具を示す全体図である。
【図2】図1に示す割りピン抜き取り工具の要部正面図である。
【図3】図1に示す割りピン抜き取り工具の要部側面図である。
【図4】図2のA−A矢視を示す図である。
【図5】図1に示す割りピン抜き取り工具の使用方法を説明するための図である。
【図6】図1に示す割りピン抜き取り工具の使用方法を説明するための図である。
【図7】図1に示す割りピン抜き取り工具の使用方法を説明するための図である。
【図8】抜き取り作業時の割りピンの状態を示す図である。
【図9】エレベーター改修作業時の昇降路ピット内の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における割りピン抜き取り工具を示す全体図である。本割りピン抜き取り工具は、軸等に装着された割りピンを抜き取るためのものであり、係合部1及び2と操作部3及び4とにより、その要部が構成されている。
【0014】
図2は図1に示す割りピン抜き取り工具の要部正面図、図3は図1に示す割りピン抜き取り工具の要部側面図、図4は図2のA−A矢視を示す図である。
以下に、図2乃至図4も参照し、本割りピン抜き取り工具の構成について具体的に説明する。
【0015】
係合部1及び2は、割りピンの抜き取り時に割りピンの足部に係合する部分である。係合部1には、係合部2側に向いた対向面5が、係合部2には係合部1側に向いた対向面6が設けられている。
【0016】
操作部3及び4は、割りピンの抜き取り作業を行う作業者が把持して係合部1及び2を操作する部分を構成する。具体的に、上記係合部1が操作部3の一端部に、係合部2が操作部4の一端部に設けられており、操作部3及び4が交差して全体としてX字状に配置されている。
【0017】
また、操作部4は、その中間部が操作部3の中間部に枢着されており、係合部1及び2が、上記枢着軸を中心に開閉するように構成されている。即ち、操作部3及び4の間隔が広げられることによって係合部1及び2は開き、操作部3及び4の間隔が狭められることによって係合部1及び2は閉じる。そして、操作部3及び4の上記操作によって係合部1及び2の間隔が狭められると、対向面5及び6のなす角度が小さくなって対向面5及び6が互いに対向し合い、最終的に対向面5及び6が接触するように構成されている。
【0018】
また、係合部1の対向面5には、溝部7と窪み部8とが形成されている。
溝部7は、横断面半円状を呈し、上記対向面5に、係合部1の長手に沿って直線状に形成されている。また、溝部7は、その一端が、係合部1の先端を形成する端面1aに開口するように形成されている。窪み部8は、溝部7の表面から一段低くなるように形成された溝部7内の窪みからなり、溝部7の長手方向に所定の間隔で複数形成されている。なお、この窪み部8は、割りピンの一方の足部の先端(或いは、先端の一部)を収容して割りピンを係止するためのものである。
【0019】
一方、係合部2の対向面6には、上記溝部7及び窪み部8と同様の構成を有する溝部9と窪み部10とが形成されている。即ち、溝部9は、横断面半円状を呈し、係合部2の長手に沿って対向面6に直線状に形成されており、その一端が、係合部2の先端を形成する端面2aに開口する。また、窪み部10は、溝部9の表面から一段低くなるように形成された溝部9内の窪みからなり、溝部9の長手方向に所定の間隔で複数形成されている。なお、この窪み部10は、割りピンの他方の足部の先端(或いは、先端の一部)を収容して割りピンを係止するためのものである。
【0020】
そして、上記溝部7及び9は、係合部1及び2が完全に閉じられた状態になると、互いに長手に渡って対向し、係合部1及び2に円柱状の空間を形成する。
なお、割りピンの足部は、長さが異なるものが多い。このため、係合部1及び2が完全に閉じられた際に上記窪み部8及び10が互いに対向しないように、窪み部8及び10を配置しても良い。
【0021】
次に、図5乃至図7も参照し、上記構成を有する割りピン抜き取り工具の使用方法について具体的に説明する。なお、図5乃至図7は、図1に示す割りピン抜き取り工具の使用方法を説明するための図である。
【0022】
割りピン11は、軸12等への装着時、両足部13a及び13bが左右に広げられて軸12から抜けないように固定されている。かかる状態の割りピン11を本割りピン抜き取り工具を用いて軸12から取り外す場合には、先ず、本割りピン抜き取り工具の操作部3及び4を操作して係合部1及び2を大きく開いた状態に保持し、割りピン11の一方の足部13aの先端を係合部1の何れかの窪み部8に、他方の足部13bの先端を係合部2の何れかの窪み部10に引っ掛けて、両足部13a及び13bがずれないようにする。
【0023】
両足部13a及び13bを窪み部8及び10に係止させた状態で割りピン11を挟んだ後、作業者は、その状態のまま工具を後方に引きながら操作部3及び4を握り締め、両足部13a及び13bを伸ばしながら係止部1及び2を閉じていく。なお、割りピン11の両足部13a及び13bの各先端は、互いに外側を向いているため、上記操作時に両足部13a及び13bの各先端が窪み部8及び10から外れることはない。そして、作業者は、係止部1及び2を完全に閉じた際に割りピン11の両足部13a及び13bが溝部7及び9内に収まるように係止部1及び2を閉じ、曲がった両足部13a及び13bを真っ直ぐに伸ばす(図7参照)。
【0024】
なお、上記操作によって割りピン11の両足部13a及び13bを直線状に伸ばした後、作業者は、割りピン11の環状の頭部14を係止部1及び2で挟んで軸12の孔から抜き取り、割りピン11を軸12から取り外す。
【0025】
この発明の実施の形態1によれば、軸12等に装着された割りピン11を容易な操作によって抜き取ることができ、高所や不安定な場所においても、簡単に且つ短時間でその作業を終えることができる。また、従来のペンチ等と同様の操作性を有しているため、誰でも使いこなすことが可能であり、エレベーターの改修作業等、種々の作業環境化において用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1、2 係合部
1a、2a 端面
3、4 操作部
5、6 対向面
7、9 溝部
8、10 窪み部
11 割りピン
12 軸
13a、13b 足部
14 頭部
15 つり合いおもり
16 ガイドレール
17 主ロープ
18 連結ロッド
19 梯子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸等に装着された割りピンを抜き取るための割りピン抜き取り工具であって、
互いに対向する対向面を有し、前記割りピンの抜き取り時に前記割りピンの足部に係合する第1係合部及び第2係合部と、
一端部に前記第1係合部が設けられた第1操作部と、
一端部に前記第2係合部が設けられるとともに、前記第1操作部に枢着されることにより、前記第1操作部との枢着軸を中心に前記第1係合部及び前記第2係合部を開閉させる第2操作部と、
前記第1係合部の前記対向面に直線状に形成され、一端が前記第1係合部の先端に開口する第1溝部と、
前記第2係合部の前記対向面に直線状に形成され、一端が前記第2係合部の先端に開口するとともに、前記第1係合部及び前記第2係合部が閉じられた際に、その長手に渡って前記第1溝部に対向する第2溝部と、
前記第1溝部に形成された、前記割りピンの一方の足部の先端を係止するための第1窪み部と、
前記第2溝部に形成された、前記割りピンの他方の足部の先端を係止するための第2窪み部と、
を備えたことを特徴とする割りピン抜き取り工具。
【請求項2】
前記第1窪み部と前記第2窪み部とは、前記第1係合部及び前記第2係合部が閉じられた際に互いに対向しないように、前記第1溝部及び前記第2溝部に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の割りピン抜き取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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