説明

割れやすい素材を使用したボタン及びその製法

【課題】ボタン本体の割れを防止しつつ、外周を金属で装飾することにより高級感を得る。
【解決手段】(a)割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体(2)と、(b)断面がC字状の曲線部を有するリング(31)と、このリングの下方に突出する脚部(32)からなる第1支持部品(3)と、(c)環状底部(42)と、この環状底部(42)の外周部に立ち上がる起立部(43)からなる第2支持部品(4)とを有する。前記ボタン本体(2)の周縁上面は、前記環状底部(42)の上側先端部により押し付けられ、前記ボタン本体(2)の側部(24)は、リング(31)の曲線部により押し付けられることにより一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割れやすい素材(例えば、貝類等の動植物起源の割れやすい素材や宝石又は模造宝石等)を表面装飾体として使用したボタン及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記割れやすい素材、宝石又は模造宝石等の装飾体をはめ込んだボタンは、婦人服、袋物、履物等に使用すると華やかさや高級感を醸し出すことができるので好まれている。
【0003】
従来、装飾体をボタンに取り付ける構造としては、下記特許文献1に開示されるように、リング状に形成され下部に複数の脚を有する固定体に円板状の装飾体を脚側から嵌め込み、固定体の脚を被装飾体に貫通させて屈曲させ固定しているものがあった。
【0004】
下記特許文献2や3に開示されるものは、底面が平坦に形成された装飾体の外周縁を保持し固定する皿状の保持体よりなり、この保持体の下部に穿設されている貫通孔に糸が通され、糸付けによって被装飾体に固定されるものである。
【0005】
下記特許文献4に開示されるように、貫通孔が穿設されたビーズ状の装飾体を、中央に糸通し孔が穿設された糸付けボタンに取り付けたものがあった。この装飾体の貫通孔には糸が通されており、糸付けボタンの糸通し孔を介して被装飾体に糸付けで固定するものである。
【0006】
下記特許文献5に開示されるように、下部が錐形に形成された装飾体を、表面に凹部が形成されたボタンに、その下部が埋没するように嵌め込み接着固定し、このボタンを糸付けによって被装飾体に固定しているものがあった。
【0007】
本出願人も特許文献6において、錐形のパビリオン部を有する装飾体と、装飾体が保持される保持部を有する固定部とで構成され、被装飾体に取付け固定される装飾具を開示している。固定部は、保持部から装飾体のキューレットを囲み延出する筒状の挿通部が設けられている雄部と、挿通部が挿通される挿通孔を有する雌部とで構成され、挿通部を被装飾体に穿設される貫通孔に貫通させ、雄部と雌部とをかしめて被装飾体に固定している。
【特許文献1】実開平3−31307号公報
【特許文献2】実開平4−208号公報
【特許文献3】実開平4−74008号公報
【特許文献4】実用新案登録第3086588号公報
【特許文献5】実開平2−50205号公報
【特許文献6】特開2004−337354公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献6では、その従来技術の欄において、先行する特許文献1−5の欠点を分析して指摘している(同公報[0010]−[0017]参照)。その中では先行技術の欠点とされておらず、特許文献6自身も免れていない欠点がある。それは、装飾体を表面部材に埋め込む工程及び装飾体を埋め込んだ表面部材をボタン本体に取り付ける工程において、力をかけたときに装飾体が欠けたり、割れたりしやすいということである。装飾体は、貝類や宝石のようにカットしたガラス加工品であることが多いが、これが金属の爪や縁部で強く押圧されるからである。そのため、製造がかなりの程度職人技となり、装飾ボタンの大量生産や衣服等へのボタン取付の自動化が困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解消するために、装飾体を表面部材に埋め込む工程及び装飾体を埋め込んだ表面部材をボタン本体に取り付ける工程において、装飾体が欠けたり、割れたりしないような装飾体の取付方法、及びそれに使用するボタン表面部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の割れやすい素材を使用したボタンは、第1の観点(請求項1)では、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体と、
断面C字状のリングと、このリングの下方に突出する脚部からなる第1支持部品と、
環状底部と、この環状底部の外周部に立ち上がる起立部からなる第2支持部品と
を有し、
前記ボタン本体の周縁上面は、前記環状底部の上側先端部により押し付けられ、前記ボタン本体の側部は、リングの曲線部により押し付けられることにより一体化されていることを特徴とする。
【0011】
第2の観点(請求項3)では、本発明の割れやすい素材を使用したボタンは、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体と、
環状底部と、この環状底部の外周部に立ち上がる起立部からなる支持部品と
を有し、
前記起立部がボタン周縁上面に押し付けられて一体化されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の割れやすい素材を使用したボタンの製法は、第1の観点(請求項4)では、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体と、
断面C字状のリングと、このリングの下方に突出する脚部からなる第1支持部品と、
環状底部と、この環状底部の外周部に立ち上がる起立部からなる第2支持部品
のそれぞれを用意する第1工程と、
前記ボタン本体を前記リングに乗せ、前記リングを前記環状底部に乗せる第2工程と、
前記環状底部と前記起立部とを上下からかしめて、間に前記リングを挟み込む第3工程
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の割れやすい素材を使用したボタンの製法は、第2の観点(請求項6)では、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体と、
環状底部と、この環状底部の外周部に立ち上がる起立部からなる支持部品
を用意する第1工程と、
ボタン本体を第2支持部品の環状底部上に置き、起立部をボタン周縁上面にくるめるようにして押し倒す第2工程
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1及び第3の観点(請求項1及び4)による発明では、ボタン本体と第1,第2部品を結合させるときには、本来ボタン本体にかかるはずの力が第1部品と第2部品との係合圧力に転化させられる。さらに、雌部材とかしめるときには、本来ボタン本体にかかるはずの力が、第1,2部材の脚部と雌部材の脚部との係合圧力に転化させられる。したがって、ボタン本体には大きな力が加わらず、ボタン本体は割れにくくなる。
【0015】
同時に、ボタン本体の周囲が金属で装飾されるので、高級感が得られる。
【0016】
第2及び第4の観点(請求項3及び6)による発明では、ボタン本体2Aと第1支持部品4Aを一体化させるのは単に周辺部をくるめるだけであるから、大きな力は加わらない。
【0017】
したがって、本来ならボタン本体にかかるはずの力が緩和され、ボタン本体が割れにくくなる。同時に、ボタン本体の周囲及び糸通し孔周囲が金属で装飾されるので、高級感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ボタン本体を構成する割れやすい素材は、貝類や動物の角・牙・骨など動植物起源の天然素材、宝石又は模造宝石である。貝類としては、例えばアコヤ貝を使用することができ、模造宝石は、クリスタルガラス加工品であることが多い。例えば、業界では、製造会社名に由来する「スワロフスキー」(商標)という名で知られているクリスタルガラス加工品を使用することができる。
【0019】
第1及び第3の観点(請求項1及び4)による発明では、使用に当たっては、生地を挟んで雄部材又は雌部材とかしめる第4工程が付加される。
【0020】
第1部品ないし第4部品は曲げや圧延に強い金属であればよく、例えばステンレス鋼や真鍮を使用することができる。
【0021】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(a)は、本発明の第1実施例に係る脚部付きボタン1の正面図、(b)は断面図である。
【0023】
ボタン本体2は、割れやすい素材(貝類等の天然素材、宝石又は模造宝石)を使用している。これは、中央に糸通し孔22が4つ、それらをつなぐ線状窪み23を有する円板21である。円板21の外周には斜めに切り込まれた側部24が設けられている。このボタン本体2は、定法により、前記割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られる。線状窪み23は、糸で生地に取付けるとき(後記第2実施例参照)は糸の通り道となり、本実施例のようにスナップボタンとして使用するときは、予めフェイク(装飾目的)の糸を設定する場所として使用できる。
【0024】
図1に示すように、ボタン本体2の周囲は金属で縁取られている。金属部分は2部品からなる。第1支持部品3と第2支持部品4は、図1(b)に示すように、絡み合ってボタン本体を支持している。
【0025】
第1支持部品3は、図2(b)に示すように、横断面がC字状の曲線部を有するリング31で、下方に尖った先端を有する脚部32が複数設けられている。
【0026】
第2支持部品4は、図2(c)に示すように、中央に大きくくり抜かれた開口部41を有する皿状であり、環状底部42と外周の起立部43からなる。
【0027】
次に図1(b)により、このボタンの製造方法を説明する。
【0028】
まず、第1支持部品3のリング31を第2支持部品4の環状底部42に乗せる。次いで、ボタン本体2をリング31に乗せて、図1(b)に矢印で示すように、環状底部42と起立部43とを上下からかしめて、間にリング31を挟み込む。
【0029】
このとき、ボタン本体2の周縁上面は、環状底部42の上側先端部により押し付けられ、ボタン本体2の切り込まれた側部24は、リング31の曲線部により押し付けられる。このようにして、三者は一体化する。
【0030】
その後、図3(a)に示すように、第1支持部品3付きのボタン本体2を、打ち付け機械(M1,M2)により、生地5を挟んで、雄雌部材(この例では雌部材6)と一体化させる。この作業により、雌部材6と脚部32が強固にかしめられる(図3(b)参照)。したがって、このボタンにおいては、糸通し孔22は糸を通す本来の目的には使用することができない。これは、単なる装飾であって、いわゆるフェイクである。
【0031】
この実施例では、図1(b)に示すように、ボタン本体と第1,第2部品を結合させるときには、本来ボタン本体にかかるはずの力が第1部品と第2部品との係合圧力に転化させられる。さらに、図3(b)に示すように、雌部材とかしめるときには、本来ボタン本体にかかるはずの力が、第1,2部材の脚部32と雌部材の脚部との係合圧力に転化させられる。したがって、ボタン本体には大きな力が加わらず、ボタン本体は割れにくくなる。同時に、ボタン本体の周囲が金属で装飾されるので、高級感が得られる。
【0032】
なお、上記説明では、各部品の結合に時間差を設けるように記述しているが、すべてを同時に行うこともでき、できればその方が能率的である。
【実施例2】
【0033】
図4は、脚部のないボタン1Aであって、本発明の第2実施例の正面図と断面図である。第1実施例と異なるのは、第1支持部品を使用しないことである。図5(a)(b)は、このボタンの展開斜視図、(a)’(b)’は、各断面図である。
【0034】
第2支持部品4Aは、中央に大きくくり抜かれた開口部41Aを有する皿状であり、環状底部42Aと外周部に起立部43Aからなる。
【0035】
ボタン本体2Aと第2支持部品4Aを一体化するには、ボタン本体2Aを第2支持部品4Aの環状底部42A上に置き、起立部43Aをボタン周縁上面にくるめるようにして押し倒す。起立部43Aの先端はボタン本体2Aの周縁上部に押し付けられる。
【0036】
この実施例では、第1実施例と異なり、糸通し孔22Aは、糸で生地に取り付けるという本来の目的に使用することができる。
【0037】
この実施例では、加工の際、本来ボタン本体にかかるはずの力が分散される。すなわち、ボタン本体2Aと第1支持部品4Aを一体化させるのは単に周辺部をくるめるだけであるから、大きな力は加わらない。
【0038】
したがって、本来ならボタン本体にかかるはずの力が緩和され、ボタン本体が割れにくくなる。同時に、ボタン本体の周囲及び糸通し孔周囲が金属で装飾されるので、高級感が得られる。
【0039】
第1実施例と第2実施例は、外部正面から見たときよく似た外観を有する。衣服に取り付けたとき、第1実施例では、糸通し孔に、着色剤で糸を描いたり、フェイクの糸を通したりすることにより、第2実施例とほぼ同一の外観にすることができる。第1実施例と第2実施例を適宜組み合わせることにより、意表をつくようなデザインの衣服を開発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は、本発明の第1実施例にかかる脚部付きボタンの正面図、(b)は断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第1実施例にかかる脚部付きボタンの展開斜視図、(a)’〜(c)’は、各断面図である。
【図3】第1実施例のボタンと雌部材とを結合させる状態を示す断面図である。(a)は結合前、(b)は結合後である。
【図4】本発明の第2実施例の正面図(a)と断面図(b)である。
【図5】(a)(b)は、第2実施例のボタンの展開斜視図、(a)’(b)’は、各断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,1A ボタン
2,2A ボタン本体
21,21A 円板
22,22A 糸通し孔
24 ボタン本体側部
3 第1支持部品
31 リング
32 脚部
4,4A 第2支持部品
41,41A 開口部
42,42A 環状底部
43,43A 起立部
5 生地
6 雌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
割れやすい素材を使用したボタン(1)であって、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体(2)と、
断面C字状曲線部を有するリング(31)と、このリングの下方に突出する脚部(32)からなる第1支持部品(3)と、
環状底部(42)と、この環状底部(42)の外周部に立ち上がる起立部(43)からなる第2支持部品(4)と
を有し、
前記ボタン本体(2)の周縁上面は、前記環状底部(42)の上側先端部により押し付けられ、前記ボタン本体(2)の側部(24)は、前記リング(31)の前記曲線部により押し付けられることにより一体化されていることを特徴とする割れやすい素材を使用したボタン(1)。
【請求項2】
生地(5)を挟んで雄部材又は雌部材(6)がかしめられた請求項1記載のボタン。
【請求項3】
割れやすい素材を使用したボタン(1A)であって、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体(2A)と、
環状底部(42A)と、この環状底部(42A)の外周部に立ち上がる起立部(43A)からなる支持部品(4A)と
を有し、
前記起立部(43A)先端がボタン周縁上面に押し付けられて一体化されていることを特徴とする割れやすい素材を使用したボタン(1A)。
【請求項4】
割れやすい素材を使用したボタン(1)の製法であって、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体(2)と、
断面C字状のリング(31)と、このリングの下方に突出する脚部(32)からなる第1支持部品(3)と、
環状底部(42)と、この環状底部(42)の外周部に立ち上がる起立部(43)からなる第2支持部品(4)
のそれぞれを用意する第1工程と、
前記ボタン本体(2)を前記リング(31)に乗せ、前記リング(31)を前記環状底部(42)に乗せる第2工程と、
前記環状底部(42)と前記起立部(43)とを上下からかしめて、間にリング(31)を挟み込む第3工程
を有することを特徴とする割れやすい素材を使用したボタンの製法。
【請求項5】
生地(5)を挟んで雄部材又は雌部材(6)とかしめる第4工程をさらに有する請求項4記載の製法。
【請求項6】
割れやすい素材を使用したボタン(1A)の製法であって、
割れやすい素材を切削、穿孔、研磨加工して得られるボタン本体(2A)と、
環状底部(42A)と、この環状底部(42A)の外周部に立ち上がる起立部(43A)からなる支持部品(4A)
を用意する第1工程と、
ボタン本体(2A)を第2支持部品(4A)の環状底部(42A)上に置き、起立部(43A)をボタン周縁上面にくるめるようにして押し倒す第2工程
を有することを特徴とする割れやすい素材を使用したボタンの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−73145(P2008−73145A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254148(P2006−254148)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】