説明

力センサ及び力センシングシステム

【課題】 フォトリフレクタ等の安価な力検出手段を用いながらも、測定感度調整を簡単に行うことができ、想定される外力の大きさに応じた交換を不要にすること。
【解決手段】 力センサ11は、相対配置された第1及び第2の棒状体14,15と、棒状体14,15の一端側が自由端側で他端側が固定端側となるように棒状体14,15を支持する支持体17と、第1の棒状体14,15に取り付けられて外力が作用する力入力部19と、第1の棒状体14に取り付けられるとともに、第2の棒状体15に向かって光を発し、当該第2の棒状体15で反射した光の大きさに対応する電気信号を発生する力検出手段21とを備えている。力入力部19及び力検出手段21は、棒状体14,15の延出方向に沿って取り付け位置を調整可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサ及び力センシングシステムに係り、更に詳しくは、フォトリフレクタや超音波センサ等の反射型距離センサを用いた力センサ及び力センシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、医師や救急救命士等により行われる気管挿管手技を評価する気管挿管訓練装置を既に提案している(特許文献1)。当該気管挿管訓練装置には、図8に示される力センサ50が用いられている。この力センサ50は、ベース51と、このベース51上に固定され、発光素子53及び受光素子54を有するフォトリフレクタ55と、このフォトリフレクタ55の周囲を覆うスポンジ等の弾性部材57と、この弾性部材57の上面に固定された遮光性の反射板59と、前記ベース51、弾性部材57及び反射板59で囲まれて発光素子53から照射された光が伝播する光空間60とを備えている。以上の力センサ50は、次の原理で外力の大きさが検出される。すなわち、発光素子53から光空間60に照射された光は、反射板59の内面で反射されて受光素子54で検出されるが、反射板59の上面である接触面59Aに外力が加わると、その外力の大きさに応じて弾性部材57が変形し、光空間60の形状(体積)が変化して反射板59からフォトリフレクタ55までの反射距離が変わり、受光素子54で検出される光量が変わる。従って、接触面59Aへの外力の付加による弾性部材57の変形により、受光素子54からの電流が変化することになり、当該電流の変化による電圧変化を測定することで、接触面59Aに加わった外力を検出可能となる。ここで、一般的に、フォトリフレクタ55は、図9に示される出力特性を有しており、当該出力特性によれば、フォトリフレクタ55と反射板59の離間距離となる光の反射距離に対する電圧値の関係は、全体的に非線形になる。ところが、図9中における反射距離D〜Dの範囲のように、前記反射距離と電圧値との関係を線形に近似できる反射距離の範囲が存在する。このため、例えば、反射板59に外力が作用していない初期状態の前記反射距離をDとしたときに、反射板59に図8中上方への引張力が作用した場合、反射距離Dまでは、作用した引張力の大きさに応じて増大する反射距離と電圧値とがほぼ比例関係になる。従って、反射距離D〜Dの間では、測定される電圧値と作用した外力の大きさとがほぼ比例関係になり、当該比例係数を図示しない測定機器に記憶しておくことで、測定した電圧値から力センサ50に作用した外力の大きさを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記力センサ50にあっては、フォトリフレクタ55の特性上、反射距離がDを超えると、外力の大きさを正確に測定できなくなってしまう。すなわち、反射距離がDを超えると、線形近似できなくなることから、前述した電圧値と外力の大きさとの比例関係を使えず、測定した電圧値から外力の大きさを簡単に求められなくなる。更に、測定される電圧値自体が小さくなるばかりか、反射距離の変化割合に対する電圧変化割合が次第に小さくなってしまい、電圧測定誤差等を考えると、外力の大きさの正確な測定が不能になってしまう。従って、図9の出力特性を有するフォトリフレクタ55を使った力センサ50では、反射距離D〜Dの線形近似範囲内における反射板59の変位でしか使うことができず、反射距離Dを超える外力が作用すると想定される場合には、反射距離D〜Dの範囲が異なる他のフォトリフレクタ55を備えた力センサ50に交換しなければならない。また、反射距離D〜Dの範囲内で反射板59が変位するような外力が作用しても、当該範囲内で反射板59が微小範囲で変位するような場合には、電圧変化の割合も微小になるため、この場合も、電圧測定誤差等を考えると、外力の大きさを正確に測定できない虞がある。従って、このような場合には、反射距離D〜Dの範囲の幅の狭い高感度のフォトリフレクタ55を備えた力センサ50に交換しなければならない。以上により、前記力センサ50の構造では、出力特性上、反射距離と電圧値との関係を一部範囲でしか利用できないフォトリフレクタ55を用いているため、外力の大きさを広範囲で測定することができない。このため、フォトリフレクタ55の感度が相互に異なる多種の力センサ50の中から、測定対象の外力の大きさに応じて、適切な力センサ50を選択する必要があり、その都度、外力測定対象部位に一旦取り付けた力センサ50を交換しなければならず、手間がかかるという問題がある。なお、この問題は、広範囲且つ高精度に外力の大きさを測定できる高性能の力センサを使えば解決するが、当該力センサは、安価なフォトリフレクタ55を用いた前述の力センサ50よりも遥かに高価になり、取り付けられる前記気管挿管訓練装置の製造コストの高騰化を招来することになる。
【0005】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、フォトリフレクタ等の安価な力検出手段を用いながらも、測定感度調整を簡単に行うことができ、想定される外力の大きさに応じた交換を不要にすることができる力センサ及び力センシングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、作用した外力の大きさに応じて電気信号を発生する力センサにおいて、
相対配置された一対の棒状体と、当該各棒状体の一端側が自由端側で他端側が固定端側となるように当該各棒状体を支持する支持体と、前記各棒状体の少なくとも一方に取り付けられて前記外力が作用する力入力部と、前記何れか一方の棒状体に取り付けられるとともに、前記何れか他方の棒状体に向かって光若しくは超音波を発し、当該他方の棒状体で反射した前記光若しくは超音波の大きさに対応する電気信号を発生する力検出手段とを備え、
前記力入力部及び/又は前記力検出手段は、前記棒状体の延出方向に沿って取り付け位置を調整可能に設けられる、という構成を採っている。
【0007】
また、前記支持体から前記力入力部までの第1の離間距離に応じて電気信号を発生する第1の距離測定手段と、前記支持体から前記力検出手段までの第2の離間距離に応じて電気信号を発生する第2の距離測定手段とを更に備える、という構成も併せて採用することができる。
【0008】
更に、本発明は、請求項1に記載された力センサと、当該力センサからの電気信号により前記外力の大きさを求める外力演算装置とを備えた力センシングシステムであって、
前記外力演算装置は、前記支持体から前記力入力部までの第1の離間距離と前記支持体から前記力検出手段までの第2の離間距離とが入力される距離入力部と、当該距離入力部で入力された前記第1及び第2の離間距離と前記力検出手段からの電気信号の大きさとを予め記憶された演算式に代入することで、前記外力の大きさを算出する力演算部とを備える、という構成を採っている。
【0009】
また、本発明は、請求項2に記載された力センサと、当該力センサからの電気信号により前記外力の大きさを求める外力演算装置とを備えた力センシングシステムであって、
前記外力演算装置は、前記第1及び第2の距離測定手段からの電気信号に基づき前記第1及び第2の離間距離を求める距離演算部と、当該距離演算部で求めた前記第1及び第2の離間距離と前記力検出手段からの電気信号の大きさとを予め記憶された演算式に代入することで、前記外力の大きさを算出する力演算部とを備える、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、力入力部及び/又は力検出手段の取り付け位置が、一端側が自由端側で他端側が固定端側となる棒状体の延出方向に沿って調整可能となっているため、当該位置調整により、作用する外力の大きさが同一であっても、力検出手段の変位量が変わることになる。従って、予め想定される外力の大きさに応じて、力入力部及び/又は力検出手段の前記位置調整をすることにより、外力の大きさに拘らず、力検出手段及び棒状体の離間距離である反射距離と電気信号との関係における線形近似範囲を使うことができる。また、例えば、微小な外力が力入力部に作用するような場合でも、前記位置調整により、前記反射距離を大きくすることにより、力作用前後で発生する電気信号の差を増幅できる。従って、本発明によれば、反射距離と出力値との関係が全体的に非線形になるものの一部領域で線形近似可能となるフォトリフレクタ等の安価な反射型距離センサを用いても、あらゆる大きさの外力の測定に対応できるとともに、当該測定に際する感度調整を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る力センシングシステムの概略構成を表すブロック図。
【図2】第1実施形態に係る力センシングシステムに適用される力センサの概略斜視図。
【図3】図2のA−A線に沿う概略断面図。
【図4】第2実施形態に係る力センシングシステムの概略構成を表すブロック図。
【図5】第2実施形態に係る力センシングシステムに適用される力センサの概略斜視図。
【図6】図5のA−A線に沿う概略断面図。
【図7】変形例に係るトルクセンサの概略側面図。
【図8】従来例における力センサの概略断面図。
【図9】フォトリフレクタの一般的な特性を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係る力センシングシステムの構成を表すブロック図が示されている。この図において、前記力センシングシステム10は、作用した外力の大きさに応じて電気信号を発生する力センサ11と、力センサ11からの電気信号により、当該力センサ11に作用した外力の大きさを求める外力演算装置12とを備えて構成されている。なお、本実施形態に係る力センシングシステム10は、特に限定されるものではないが、医師や救急救命士等により行われる気管挿管手技を評価する気管挿管訓練装置(図示省略)に適用される。
【0013】
前記力センサ11は、図2及び図3に示されるように、当該各図中上下に相対配置された角材からなる一対の第1及び第2の棒状体14,15と、当該各棒状体14,15の一端側が自由端側で他端側が固定端側となるように当該各棒状体14,15を支持する支持体17と、第1及び第2の棒状体14,15に取り付けられて外力が作用する力入力部19と、図2中上側に位置する第1の棒状体14に取り付けられ、力入力部19に作用した外力による棒状体14,15の変位に応じて電気信号を発生する力検出手段21とを備えて構成されている。
【0014】
前記第1の棒状体14は、その延出方向に沿って複数箇所に形成されたねじ穴23を有する固定端側領域25と、先端側が開放して上下両側に貫通するスリット27が形成された二股状の自由端側領域28とからなる。
【0015】
前記第2の棒状体15は、第1の棒状体14の各ねじ穴23にそれぞれ対向する位置に形成されたねじ穴30を有する固定端側領域31と、前記スリット27に対向する上面部分に反射材32が設けられた自由端側領域33とからなる。この反射材32は、後述するように、力検出手段21から照射される光を当該力検出手段21に向かって反射可能な材材質や色彩により形成されている。なお、自由端側領域33の上面部分が光を反射可能な材質や色彩により形成されていれば、反射材32を設けなくても良い。
【0016】
前記支持体17は、力入力部19に外力が作用しても変位しないように、図示省略した前記気管挿管訓練装置の一部分に固定されている。この支持体17は、第1の棒状体14が連なる部位よりも図2中上側に位置する上側部分35と、第2の棒状体15が連なる部位よりも図2中下側に位置する下側部分36と、上側部分35と下側部分36の間に位置する中間部分37とからなる。
【0017】
前記力入力部19は、第1及び第2の棒状体14,15に形成されたねじ穴23,30にそれぞれねじ込んで取り付け可能な連結部材38からなる。当該連結部材38には、前記気管挿管訓練装置(図示省略)中で張力が作用するワイヤWが固定されており、これにより、力入力部38に作用する外力はワイヤWの張力となり、力センサ11は引張力測定センサとして機能する。また、第1及び第2の棒状体14,15に対する連結部材38の取り付け位置は、当該連結部材38が挿入されるねじ穴23,30を適宜変更することにより、各棒状体14,15の延出方向に沿って調整可能となる。この際、第1及び第2の棒状体14,15に取り付けられる各連結部材38,38は、支持体17からの離間距離が相互に同一になるように、相対する位置のねじ穴23,30に取り付けられる。
【0018】
前記力検出手段21は、スリット27内に配置されて外力演算装置12(図1参照)に繋がるフォトリフレクタ39と、フォトリフレクタ39を上方から支持するスライド部材40とを備えている。
【0019】
前記フォトリフレクタ39は、図示省略しているが、赤外線光を照射する発光素子と、赤外線光を受光する受光素子とからなり、受光素子で検出した光量に応じて電流を発生させるものであり、当該電流は外力演算装置12で検出される。つまり、フォトリフレクタ39から第2の棒状体15の反射材32に向かって照射された光が、当該反射材32で反射されてフォトリフレクタ39で検出される。ここで、力入力部19に外力が作用すると、各棒状体14,15の各自由端側領域28,33が上下方向に撓み変形し、作用した外力の大きさに応じて、反射材32とフォトリフレクタ39との離間距離である反射距離が変化し、当該変化に応じてフォトリフレクタ39での受光量が変化することになる。よって、当該受光量に対応した電流変化に基づく電圧変化を測定することで、外力の大きさを求めることが可能になる。また、特に限定されるものではないが、フォトリフレクタ39は、図3に示されるように、発光及び受光する下面部分が、第1の棒状体14の厚みの約半分程度となる高さに配置される。
【0020】
なお、フォトリフレクタ39の代わりに、超音波を発して第2の棒状体15で反射した超音波を受けて電気信号に変換する超音波センサを用いることもできる。要するに、ここでは、第2の棒状体15に向かって光若しくは超音波を発し、当該第2の棒状体15で反射した光若しくは超音波の大きさに対応する電気信号を発生する反射型距離センサであれば何でも良い。
【0021】
前記スライド部材40は、スリット27を跨いで自由端側領域28の上面に載せられ、当該スリット27に沿って移動可能となっている。従って、スライド部材40に支持されるフォトリフレクタ39の位置を第1の棒状体14の延出方向に沿って変えることができ、これに伴って、当該延出方向に沿ってフォトリフレクタ39の発光及び受光位置を調整可能となる。なお、このような位置調整がなされた後、スライド部材40は、図示省略したねじ等の固定手段で第1の棒状体14に移動不能に固定される。
【0022】
前記外力演算装置12は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成されており、図1に示されるように、所定の距離情報が入力される距離入力部41と、距離入力部41で入力された距離情報とフォトリフレクタ39からの電流状態に基づいて、力入力部19に作用した外力の大きさを求める力演算部42とを備えて構成されている。
【0023】
前記距離入力部41には、支持体17から連結部材38までの第1の離間距離と、支持体17からフォトリフレクタ39までの第2の離間距離とが入力される。ここで、距離入力部41へは、例えば、連結部材38を挿入したねじ穴23,30の位置、例えば、支持体17側から何番目のねじ穴23,30に挿入したか等が入力される。すると、図示しないメモリに記憶されたねじ穴23,30の位置と第1の離間距離との関係から、このときの第1の離間距離が求められる。また、第2の離間距離も、同様に、スライド部材40を固定する前記固定手段(図示省略)の位置の入力により求められる。なお、第1の棒状体14の側面にスケール等を設け、当該スケールを使って使用者が実測した値を第1及び第2の離間距離として距離入力部41に入力しても良い。
【0024】
前記力演算部42は、フォトリフレクタ39からの電流に係る電圧値を測定する機能と、当該電圧値と第1及び第2の離間距離とをパラメータとして、力入力部19に作用した外力を求める演算式を記憶する機能と、測定された電圧値と距離入力部41からの第1及び第2の離間距離とを前記演算式に代入することで、力入力部19に作用した外力すなわちワイヤWの張力を求める機能とを備えている。
【0025】
前記演算式は、フォトリフレクタ19の特性と片持ち梁の材料力学演算とから得られた次式で表される。
【0026】
F=(AV+B)/(−L+2L+3L−6L
【0027】
ここで、「F」は、求める外力の大きさであり、「L」は、距離入力部41から送られた第1の離間距離であり、「L」は、距離入力部41から送られた第2の離間距離である。また、「V」は、フォトリフレクタ39からの発生電流に基づき測定された電圧値である。更に、「A」、「B」は、フォトリフレクタ39の特性と各棒状体14,15の材質等に応じて定まる定数である。具体的に、定数Aは、フォトリフレクタ39の出力特性線図(例えば、図9参照)において線形近似可能な有効領域の近似直線の傾きと、棒状体14,15の縦弾性係数及び断面二次モーメントとから決まる。また、定数Bは、前記近似曲線の直線式と、前記縦弾性係数及び断面二次モーメントと、外力が作用していない初期状態のときの第1及び第2の棒状体14,15の上下方向の離間幅とから定まる。なお、この離間幅は、フォトリフレクタ39の有効領域となる図9の反射距離D〜Dの最小値Dになるように設定される。
【0028】
以上の力センシングシステム10では、次のようにして、力入力部19若しくは力検出手段21の位置決めが行われ、ワイヤWから力入力部19を通じて第1及び第2の棒状体14,15を上下方向に離間させる引張力が測定される。
【0029】
先ず、力入力部19に作用する引張力の想定値から、反射材32とフォトリフレクタ39との離間距離(反射距離)が、フォトリフレクタ39の有効領域となる図9の反射距離D〜Dの範囲よりも大きくなると思われる場合には、力入力部19若しくは力検出手段21を現在の取り付け位置よりも支持体17寄りに変更する。この結果、当該変更前後で力入力部19に作用した引張力が同一であっても、片持ち梁の性質から、反射材32とフォトリフレクタ39との離間距離が変更前より減少して前記反射距離D〜Dの範囲内に収めることが可能になり、従来、同一のフォトリフレクタ39で測定不能であった引張力の測定が可能になる。なお、フォトリフレクタ39からの電流に伴う電圧値が所定値以下と測定された場合には、前記反射距離が前記Dを超えていると判断し、警告や表示等により、力入力部19若しくは力検出手段21の取り付け位置を変更するように促す機能を前記力演算部42に設けることも可能である。
【0030】
また、例えば、想定される引張力が小さく、当該引張力の作用前後での前記反射距離の変化が微小となり、それに伴う電圧値の変化量が測定誤差に相当する微小値となるような場合には、力入力部19若しくは力検出手段21を現在の取り付け位置よりも先端寄りに変更する。その結果、当該変更前後で力入力部19に作用した引張力が同一であっても、反射材32とフォトリフレクタ39との離間距離が変更前より増大し、引張力の作用前後での電圧値の差を実質的に増幅することができ、力センサ11の感度が上がることになる。
【0031】
従って、このような第1実施形態によれば、想定される外力の大きさに応じて、力入力部19と力検出手段21の位置を調整することで、片持ち梁の力学的性質から、外力の大きさに拘らず、フォトリフレクタ39の出力特性線図において線形近似可能な有効領域を常に利用可能になるとともに、力センサ11の感度調整を簡単に行うことができる。この結果、一度、前記気管挿管訓練装置に取り付けた力センサ11を、想定される外力の大きさに応じて出力特性の異なる他の力センサ11に交換する手間が不要になるという効果を得る。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0033】
(第2実施形態)
本実施形態は、支持体17から力入力部19までの第1の離間距離と、支持体17から力検出手段21までの第2の離間距離とを自動的に測定し、当該測定結果を用いて前記外力の大きさを求める点が特徴となっている。すなわち、本実施形態では、図4〜図6に示されるように、力センサ11は、前記第1実施形態に対し、前記第1の離間距離に応じて電気信号を発生する第1の距離測定手段43と、前記第2の離間距離に応じて電気信号を発生する第2の距離測定手段44とを更に備えている。また、外力演算装置12は、第1実施形態の距離入力部41の代わりに、第1及び第2の距離測定手段43,44からの電気信号に基づいて前記第1及び第2の離間距離を求める距離演算部45を新たに備えている。それ以外の構成は、前記第1実施形態と実質的に同一となっている。
【0034】
前記第1の距離測定手段43は、図5及び図6に示されるように、支持体17の上側部分35に固定されて力入力部19に向かって発光可能なフォトリフレクタ46と、第1の棒状体14に取り付けられる連結部材38の上端側に連なり、フォトリフレクタ46からの光を反射可能に設けられた第1の反射板47とからなる。この構成によれば、フォトリフレクタ46の図示しない発光素子からの光が第1の反射板47で反射し、フォトリフレクタ46の図示しない受光素子で受光することになり、当該受光量は、フォトリフレクタ46と第1の反射板47との間の第1の離間距離に応じて変化することになる。そして、フォトリフレクタ46で発生した電流は、外力演算装置12の距離演算部45に送られる。
【0035】
前記第2の距離測定手段44は、支持体17の中間部分37に固定されて第1及び第2の棒状体14,15の間の撓み空間Sに向かって発光可能なフォトリフレクタ48と、スライド部材40の下面からスリット27を通って撓み空間Sに延びるとともに、フォトリフレクタ48からの光を反射可能に設けられた第2の反射板49とからなる。従って、第1の距離測定手段43のフォトリフレクタ46と同様の原理で、フォトリフレクタ48の受光量は、フォトリフレクタ48と第2の反射板49との間の第2の離間距離に応じて変化することになり、ここでの電流も外力演算装置12の距離演算部45に送られる。
【0036】
前記距離演算部45では、フォトリフレクタ46,48からの発生電流に基づく電圧値を測定し、予め記憶されたフォトリフレクタ46,48の出力特性に基づき、測定した電圧値に対応する離間距離を求めるようになっている。なお、第1の離間距離を測定するフォトリフレクタ46としては、その出力特性線図における前記有効領域に第1の離間距離の範囲が収まる特性のものが採用され、同様に、第2の離間距離を測定するフォトリフレクタ48としては、前記有効領域に第2の離間距離の範囲が収まる特性のものが採用される。
【0037】
前記力演算部42では、力検出手段21のフォトリフレクタ39で発生した電流に伴う電圧値と距離演算部45からの第1及び第2の離間距離とが、第1の実施形態と同一の演算式に代入されることで、力入力部19に作用した外力が求められる。
【0038】
従って、前記第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる他、力入力部19と力検出手段21の取り付け位置を変えたときに、第1及び第2の離間距離を測定して入力する手間を省くことができる。
【0039】
なお、力入力部19は、必ずしも第1及び第2の棒状体14,15の双方に設ける必要はなく、外力の入力状況に応じ、第1及び第2の棒状体14,15の少なくとも一方に設けることもできる。
【0040】
また、第1及び第2の棒状体14,15における自由端側領域28,33の構成を前記各実施形態と逆にしても良い。すなわち、第1の棒状体14に反射材32を設け、第2の棒状体15に力検出手段21やスリット27を設けても良い。
【0041】
更に、前記各実施形態では、力入力部19と力検出手段21とが、共に、第1の棒状体14の延出方向に沿って取り付け位置を調整可能になっているが、当該取り付け位置の調整は、力入力部19及び力検出手段21の少なくとも一方で可能になっていれば良い。
【0042】
また、力センサ11の形状は、前記各実施形態の形状に限定されず、支持体17の上側部分35と下側部分36を省略し、中間部分37のみを残した側面視ほぼコ字状のものや、当該中間部分37を各棒状体14,15の反対側に張り出すように湾曲させた側面視ほぼ横U字状のものを採用することも可能である。
【0043】
更に、本発明の力センサ11は、前述と同様の原理により、圧縮力測定センサ、トルクセンサ、曲げモーメントセンサとして利用することもできる。トルクセンサとしては、図7に示されるように、第1及び第2の棒状体14,15に取り付けられる各連結部材38,38に、第1及び第2のアームA1,A2をそれぞれ固定した構造のものを例示できる。第1及び第2のアームA1,A2は、その一端側が軸部材Cで相互に連結され、当該軸部材Cにトルクが作用すると、軸部材Cを回転支点として相互に回転する。当該回転が発生すると、前記トルクの大きさに応じて第1及び第2の棒状体14,15が離間接近することになり、前記各実施形態と同様の手順でトルクの大きさを求めることができる。
【0044】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 力センシングシステム
11 力センサ
12 外力演算装置
14 第1の棒状体
15 第2の棒状体
17 支持体
19 力入力部
21 力検出手段
41 距離入力部
42 力演算部
43 第1の距離測定手段
44 第1の距離測定手段
45 距離演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用した外力の大きさに応じて電気信号を発生する力センサにおいて、
相対配置された一対の棒状体と、当該各棒状体の一端側が自由端側で他端側が固定端側となるように当該各棒状体を支持する支持体と、前記各棒状体の少なくとも一方に取り付けられて前記外力が作用する力入力部と、前記何れか一方の棒状体に取り付けられるとともに、前記何れか他方の棒状体に向かって光若しくは超音波を発し、当該他方の棒状体で反射した前記光若しくは超音波の大きさに対応する電気信号を発生する力検出手段とを備え、
前記力入力部及び/又は前記力検出手段は、前記棒状体の延出方向に沿って取り付け位置を調整可能に設けられていることを特徴とする力センサ。
【請求項2】
前記支持体から前記力入力部までの第1の離間距離に応じて電気信号を発生する第1の距離測定手段と、前記支持体から前記力検出手段までの第2の離間距離に応じて電気信号を発生する第2の距離測定手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の力センサ。
【請求項3】
請求項1に記載された力センサと、当該力センサからの電気信号により前記外力の大きさを求める外力演算装置とを備えた力センシングシステムであって、
前記外力演算装置は、前記支持体から前記力入力部までの第1の離間距離と前記支持体から前記力検出手段までの第2の離間距離とが入力される距離入力部と、当該距離入力部で入力された前記第1及び第2の離間距離と前記力検出手段からの電気信号の大きさとを予め記憶された演算式に代入することで、前記外力の大きさを算出する力演算部とを備えたことを特徴とする力センシングシステム。
【請求項4】
請求項2に記載された力センサと、当該力センサからの電気信号により前記外力の大きさを求める外力演算装置とを備えた力センシングシステムであって、
前記外力演算装置は、前記第1及び第2の距離測定手段からの電気信号に基づき前記第1及び第2の離間距離を求める距離演算部と、当該距離演算部で求めた前記第1及び第2の離間距離と前記力検出手段からの電気信号の大きさとを予め記憶された演算式に代入することで、前記外力の大きさを算出する力演算部とを備えたことを特徴とする力センシングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210294(P2010−210294A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54311(P2009−54311)
【出願日】平成21年3月7日(2009.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年9月9日 社団法人 日本ロボット学会発行の「第26回日本ロボット学会学術講演会 予稿集CD−ROM」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18〜20年度、文部科学省 地域科学技術振興事業費補助金に係る委託研究(知的クラスター創成事業「岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター」)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)