説明

加圧式簡易液体濾過装置

【課題】シリンジを用いて少量且つ多数の試料の濾過を行う際、真空装置やモーター式分注装置を用いず、安価で軽量であって多数の試料でも片手で容易に濾過作業を可能とする。
【解決手段】4隅の支柱8と支柱間を結合する複数段の支柱連結枠9〜11とからなる下フレーム1と、同様の構成をなす上フレーム2とを連結可能とする。引掛部19を備え、線材等で内部を複数に仕切って開口17を形成した複数の保持棚と、2列の線材等によりフィルタ支持部20を形成したフィルタ支持棚5を支柱連結枠に掛けて固定する。容器30を下フレームの保持棚の開口で保持し、シリンジに装着したフィルタを上フレームのフィルタ支持部で支持し、シリンジを上フレームの保持棚の開口で保持する。支柱連結枠に係合する係止部32を突出した係止アーム33を枠体34に備え、枠体に螺合するねじ35を備えた手動操作ねじ機構により、シリンジから試液を押し出し、フィルタで濾過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は理科系分野の研究における、化学分析の前処理や、微生物実験におけるフィルター滅菌等のために、多数のシリンジとフィルタを用いて大量の液体の濾過を行う加圧式簡易液体濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より微生物実験におけるフィルター滅菌を初めとする各種化学分析の前処理として、試液等の液体中に混入している異物を除去するため、フィルタを通した後にそれらの液体を用いることが行われる。その際には、この試液を用いてその後多数の分析を行うために、多数の試験管等の容器に分配して収容しておく必要があるが、このとき1個の大きなフィルタに多量の濾過前試液を供給して濾過を行い、その後これを多数の試験管等の容器に分配することも行われるが、その際には試液に圧力をかけ、または減圧し、フィルタに供給する設備が必要となり、装置が大型化して高価になると共に、メンテナンスが面倒となる。
【0003】
また、それほど大量に試液の濾過を必要とせず、少量の試液の濾過を必要とするようなときには、この設備は過剰設備となって不経済である。また、多種類の試液をほぼ定量ずつ、全体としては大量の試液を濾過するときには、前記のような大型の濾過装置を用いることは適切ではない。
【0004】
上記のようにある程度大量の試液を必要とし、その試液の濾過が必要なとき、或いは少量で多数の、全体として多量の試液を濾過するときには、従来より少量の試液の濾過に用いている、シリンジに試液を吸入し、シリンジの先端に市販のフィルタを取り付け、シリンジ内に挿入されるプランジャにより内部の試液を押し出し、試液をフィルタで濾過して試験管等の容器に滴下し収容することが行われる。
【0005】
このようなシリンジとそれに装着するフィルタとを用いた濾過の手法は、経済性、及びメンテナンス等の面で適切な場合が多く、広く採用されている。この時シリンジ内の試液は、研究者或いは作業者が各シリンジにフィルタを取り付け、1つずつプランジャを手で押し出して、フィルタで濾過した試液を試験管等の容器に滴下し収容するという、1度に1サンプルづつの作業を繰り返していた。
【0006】
そのため、この作業を行う者は多数のシリンジに対して前記のような作業を行うことになり、手数を要すると共に多くの力を必要とする肉体労働とならざるを得ない。また、試料が多い場合は目詰まりが多発して円滑な作業を行うことができず、また濾過速度が遅い場合には多大な労力と時間の浪費につながる、という問題もある。さらに、この作業中の加圧によりフィルターが外れる場合もあり、その際には試液のロスにつながるとともに、この作業は両手で行う必要があるため、この作業中は両手が塞がっていて他に一切何も行うことができない、という種々の問題があった。
【0007】
その対策として、試液を充填したシリンジを支持装置に固定し、一方では真空ポンプを駆動してその真空圧力をシリンジの先端に作用させ、フィルタを介してシリンジ内部の試液を吸引することにより、試液をフィルタで濾過することも行われている。
【0008】
このような真空ポンプを用いるシリンジ内試液の濾過装置は大型であり、且つ高価である。そのため、常に大量の試液を濾過する大企業の実験室や大きな研究所ではこの真空式濾過装置を購入することができても、適宜必要なときにこの種の実験を行う大学等の教育施設、この種の実験を行うことが少ない企業や研究所では、上記のような高価な真空式濾過装置を用いることができない。
【0009】
また、前記のような多数のシリンジ内の試液の取り扱いに際しては、例えば特開2004−198166号公用に示されるようなモータ駆動式のシリンジ利用分注装置が提案されている。これは濾過を目的として考案されたものではないが、先端にフィルターを装着することで濾過にも適用可能と考えられる。この分注装置によれば、試液を充填した複数のシリンジを支持装置で支持し、これらのシリンジに挿入されるプランジャを全て一体的にモータで上下動して、所定量ずつカートリッジ容器内に注出する分注装置が提案されている。
【特許文献1】特開2004−198166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、少量且つ多数の、全体としてある程度大量の試液を濾過するため、シリンジに市販のフィルタを取り付けて濾過を行う際には、これを手作業で行うと前記のような多大な労力を必要としフィルタが外れる等の種々の問題があり、真空式濾過装置では高価であり気軽に購入することができないという問題がある。
【0011】
更に、多数のシリンジをモータで駆動する際には、その駆動装置が高価であり、全体重量も重くなる、という問題もある。またその駆動装置を安定して作動させるための制御機構を必要とし、その点でも高価とならざるを得ない。しかも上記真空式濾過装置並びにモーター式分注装置などの電動装置によると電力を必要とするため、例えば廃液検査や水質検査等で液体を採取して直ちに検査を行うときのように、屋外で作業を行わなうときには用いることができない、という問題もある。また、前記特許文献に記載されている技術は分注だけを行うものであり、濾過も効率よく行うことは考慮していない。
【0012】
したがって本発明は、シリンジを用いて多くの試料の濾過を行う際、真空装置やモーター式分注装置を用いることが無く、安価であり軽量であって、大量の試液であっても片手によって容易に、且つ多くの力を要することなく濾過作業を行うことができる、加圧式簡易液体濾過装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る加圧式簡易液体濾過装置は前記課題を解決するため、4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、上フレームとの連結部を備えた下フレームと、4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、下フレームとの連結部を備えた上フレームと、前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、線材或いはロッドにより内部を複数に仕切って開口を形成した複数の保持棚と、前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、2列の線材或いはロッドによりフィルタ支持部を形成したフィルタ支持棚と、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する係止アームを枠体に備え、該枠体と下方の押圧部間に配置し該枠体に対して押圧部を下方に押圧する手動操作ねじ機構を備えたシリンジ押出部材と、前記下フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、濾過後の試液を収容する容器を挿入して保持し、前記上フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、下端部にフィルタを装着したシリンジを挿入して保持し、前記上フレームまたは下フレームに掛けるフィルタ支持棚のフィルタ支持部には、前記シリンジに装着したフィルタの出口ノズルを2列の線材或いはロッド間に挿入して支持し、前記容器を保持する下フレームと、前記フィルタを装着したシリンジを支持する上フレームとを前記各連結部で連結した後、前記押圧部材の係止部を支柱連結枠に係合し、前記シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によって押圧部によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧して、シリンジ内に予め所定量吸入した試液を前記フィルタに押し出して濾過し、前記フィルタの下方に位置する前記容器に濾過後の試液を収容することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る他の加圧式簡易液体濾過装置は、前記加圧式簡易液体濾過装置において、前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する1対の係止アームを枠体の両端に備え、前記枠体に前記ねじ機構のねじを螺合し、該ねじの上端部に手動操作部を有すると共に下端部に押圧部を有するものであり、前記シリンジ押出部材の係止部を支柱連結枠に係合した後、当板を介して前記シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る他の加圧式簡易液体濾過装置は、前記加圧式簡易液体濾過装置において、前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する係止アームを枠体に備え、前記枠体に前記ねじ機構のねじを螺合し、該ねじの上端部に手動操作部を有すると共に下端部に押圧部を有するものであり、前記シリンジ押出部材を複数用い、前記各シリンジ押出部材の係止部を支柱連結枠に係合した後、当板を介して前記各シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る他の加圧式簡易液体濾過装置は、前記加圧式簡易液体濾過装置において、前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する1対の係止アームを枠体の両端に備え、前記枠体とその下部に配置した押圧部としての当板との間にリンクを組み合わせた押圧機構を1対設け、該1対の押圧機構における対向するリンクの回動結合部間を連結するロッドを1対設け、該ロッド間を離接作動する手動ねじを設けたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成したので、シリンジを用いて大量の試料の濾過を行う際、真空装置やモーター式分注装置を用いることが無く、安価であり軽量であって、大量の試液であっても片手によって容易に、且つ多くの力を要することなく濾過作業を行うことができる。
【0018】
即ち、従来の手を用いる方法では、一度に1サンプルしか処理できず、またその間両手がふさがれるため他の作業を行うことが一切できないが、本発明により、一度に複数のサンプルを処理でき、且つ濾過の待ち時間を有効に利用することが可能となる。更に従来の市販の大量濾過装置と比べ安価であり、且つ電力を必要とせず、野外でも使用可能になる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明はシリンジを用いて大量の試料の濾過を行う際、真空装置やモーター式分注装置を用いることが無く、安価であり軽量であって、大量の試液であっても片手によって容易に、且つ多くの力を要することなく濾過作業を行うという課題を、4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、上フレームとの連結部を備えた下フレームと、4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、下フレームとの連結部を備えた上フレームと、前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、線材或いはロッドにより内部を複数に仕切って開口を形成した複数の保持棚と、前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、2列の線材或いはロッドによりフィルタ支持部を形成したフィルタ支持棚と、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する係止アームを枠体に備え、該枠体と下方の押圧部間に配置し該枠体に対して押圧部を下方に押圧する手動操作ねじ機構を備えたシリンジ押出部材と、前記下フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、濾過後の試液を収容する容器を挿入して保持し、前記上フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、下端部にフィルタを装着したシリンジを挿入して保持し、前記上フレームまたは下フレームに掛けるフィルタ支持棚のフィルタ支持部には、前記シリンジに装着したフィルタの出口ノズルを2列の線材或いはロッド間に挿入して支持し、前記容器を保持する下フレームと、前記フィルタを装着したシリンジを保持する上フレームとを前記各連結部で連結した後、前記押圧部材の係止部を支柱連結枠に係合し、前記シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によって押圧部によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧して、シリンジ内に予め所定量吸入した試液を前記フィルタに押し出して濾過し、前記フィルタの下方に位置する前記容器に濾過後の試液を収容することにより解決した。
【実施例1】
【0020】
本発明による加圧式簡易液体濾過装置は各種の実施態様により実施することができるものであるが、その1実施例を図面に基づいて説明する。図1は同実施例におけるフレーム構成を示しており、下フレーム1と上フレーム2、及びこれらのフレームの支柱連結枠に懸架される図中4個示されている保持棚3、4、6、7と、1個のフィルタ支持棚5からなる。
【0021】
下フレーム1は4隅の垂直な支柱8と、これらの支柱を連結する支柱連結枠からなり、図示実施例における支柱連結枠は下フレーム上段支柱連結枠9と、下フレーム中段支柱連結枠10と、下フレーム下段支柱連結枠11の3段形成されている。また、下フレームの4隅の下フレーム支柱8の各上端部には、後述する上フレーム2の4隅の上フレーム支柱13における嵌合穴18に嵌合する小径の結合ロッド12を備えている。
【0022】
上フレーム2も前記下フレーム1とほぼ同様の構成をなし、4隅の垂直な支柱13と、これらの支柱を連結する支柱連結枠からなり、図示実施例における支柱連結枠は上フレーム上段支柱連結枠14と、上フレーム中段支柱連結枠15と、上フレーム下段支柱連結枠16の3段形成されている。また、上フレーム2の4隅の上フレーム支柱13における少なくとも下端には、前記下フレーム支柱8の上端部に形成した小径の結合ロッド12が嵌合する嵌合穴18を備え、それにより少なくともこの下端部は中空パイプ状をなしている。なお、上フレーム支柱13は全て中空パイプによって形成することもできる。また、上フレームと下フレームとは上記以外の各種の結合手段によって連結することが出来る。
【0023】
保持棚3、4、6、7はステンレス等のワイヤ、或いは細棒等から形成しており、図示実施例では矩形の外枠内を各々3本によって縦横4等分し、全体として16個の保持開口17を形成しており、保持棚の4隅にはワイヤや細棒を下方に折り曲げて形成した引掛部19を備えている。また、フィルタ支持棚5は前記保持棚と異なり、後述するフィルタ下部の出口ノズルを両側から挟む2列のワイヤ或いは細棒からなるフィルタ支持部材20を図中4列備えている。これらのフィルタ支持部材20はそれぞれ、前記保持棚3、4、6、7の4列の保持開口の中間に位置するように設定している。また、フィルタ支持棚5についても前記各保持棚と同様に、支持枠の4隅に引掛部19を備えている。これらの保持棚及びフィルタ支持棚は、頻繁に用いられる2.5ml〜50ml程度のシリンジ濾過を可能にするため、保持開口の大きさ、或いはフィルタ支持部材の間隔等の寸法の異なるものを用意し、適宜交換して使用する。その際には前記シリンジの大きさに対応して後述する容器の大きさも適宜変更して用いることが好ましい。
【0024】
前記保持棚及びフィルタ支持棚は下フレーム1と上フレーム2の側方或いは上方から挿入或いは装着可能とし、各保持棚及びフィルタ支持棚の4隅に形成した引掛部19が各保持棚及びフィルタ支持棚の互いに対向する支柱連結枠に掛けられる。図1の例において、各棚は図中矢印で示す各支柱連結枠に引っ掛けて支持することができるようになっている。
【0025】
一方、図2(a)に示すように、濾過すべき液体を別途所定量吸入したシリンジ21の先端に設けた射出ノズル22には、断面を図2(b)に示すような市販のフィルタ23の上部に設けた嵌合部24の挿入穴25を挿入して、図2(c)のように結合し一体化する。このようにして一体化したフィルタ付シリンジ26は、例えば図2(d)に示すように、前記のように上フレーム2の支柱連結枠に引っ掛けている保持棚3の保持開口17から、保持棚4の保持開口17を順に通し、フィルタ23の下部に設けた出口ノズル27を、フィルタ支持棚5の2列のワイヤ等の間に挿入し、フィルタ23の大径の本体部28の下面をこの2本のワイヤ等からなるフィルタ支持部材20で支持する。それにより、フィルタ付シリンジ26はフィルタ支持部材20によって支持され、シリンジ部分が保持棚3と保持棚4によってほぼ垂直状態にその側面が保持される。このようにして保持棚の適宜の位置の保持開口17、或いは全ての保持開口17にそれぞれフィルタ付シリンジ26を挿入し保持させる。このような保持状態を、図3に示している。
【0026】
同様にして、シリンジに吸入されている液体を後述するようにして押し出し、フィルタ23を通過することによって濾過した試液を収容する図中試験管状に示している容器30は、例えば図2(d)に示すように、下フレーム1の保持棚6における保持開口17の上方から挿入し、保持棚7の保持開口17を通して机上面等に載置する。このようにして下フレーム1の保持棚において、上フレーム2の保持棚で保持されるシリンジの保持開口に対向する保持開口に、それぞれ容器30を挿入し支持させる。このような保持状態を図4に示している。上記のようにフィルタ付シリンジ26を多数支持した上フレーム2を、図5に示すように容器30を多数支持した下フレーム1の上方に位置させ、下フレーム1における支柱8の結合ロッド12が、上フレーム2における支柱13の嵌合穴18に挿入されるように下降させ、両者を結合することにより、図6(c)に示すように全てを一体化する。
【0027】
上記のようにして一体化したフレームに対して、例えば図6(a)に示すようなシリンジ押出部材31を結合する。図6(a)に示すシリンジ押出部材31においては、下端にそれぞれ内方に突出する係止部32を備えた係止アーム33を、平板状の枠体34の両端から下方に延びるように設けており、枠体34の中心部に形成したねじ穴にねじ35を螺合し、下端に押圧部36を備え、上端にはねじ回転操作部37を備えている。なお、必要に応じて、ねじ35の下端にスラストベアリングを設ける等により、ねじの回転によっては押圧部が回転しないようにして摩擦力を軽減し、ねじの回転を容易にできるように構成しても良い。
【0028】
このシリンジ押出部材31を上フレーム2に取り付ける際には、各々所定量の液体を吸い込んでいる多数のシリンジ21上部のプランジャ上端部29に図6(b)に示すような当板38を載置した状体で、その上方から充分に押圧部36を上昇させた状態のシリンジ押出部材31を被せ、両係止アーム33をその弾性によって広げ、下端の係止部32を上フレーム中段支柱連結枠15の下方に位置させて係止アーム33を元に戻すことによって、係止部32を上フレーム中段支柱連結枠15の下部に位置させることができる。
【0029】
この状態でねじ回転操作部37をねじ締め付け方向に回動操作して、ねじ35下端の押圧部36を当板38の上面に当接させる。この時前記係止部32は上フレーム中段支柱連結枠15の下部と、ねじ35の締め付け力に応じた力で係止される。この状態を図7に示しており、更にねじ回転操作部37をねじ込み方向に回転することにより、押圧部36、当板38を介して全てのプランジャ上端部29をほぼ均一な力で押圧する。なお、押圧力の状態を知るために、押圧部等に歪みゲージ等からなる圧力検出部を設けて、その検出値を出力するようにしても良い。また、フレームに設ける複数段の支柱連結枠9、10、11、14、15、16のうち、前記係止部32が係止される支柱連結枠を充分強固にしておくことが好ましい。
【0030】
上記ねじ35の手動回転によりプランジャは降下し、シリンジ内部に吸入している試液をフィルタ23に押しだし、試液をフィルタ23で濾過し、その下方に位置している試験管状の容器30内に滴下させ、貯留する。このようにしてねじ35のねじ込みを継続することにより、シリンジ内の液体は全て排出され、フィルタ23によって濾過されて容器30内に貯留される。その後、ねじを逆方向に回動することによって緩め、先と逆の手順により係止部32を外すことによってシリンジ押出部材31を取り外し、更に前記のような濾過作業を継続することができる。
【実施例2】
【0031】
多数のシリンジのプランジャを押圧するシリンジ押出部材は更に種々の態様のものを用いることができ、例えば図8に示すような複数のねじを設けたシリンジ押出部材を用いても良い。即ち図8に示すシリンジ押出部材40においては、プランジャ上端部に当接する当板41を四隅でそれぞれ押下するシリンジ押出部材40を設けた例を示している。各シリンジ押出部材40は同様の構成をなし、下端部に係止部41を設けた脚42を備えている枠体43を用い、枠体43に形成したねじ穴にねじ44を螺合し、ねじ44の上端部に設けたねじ回転操作部46を回転してねじ44をねじ込むことにより、ねじ44下端に設けたねじの回転にかかわらず回転しないようにした押圧部45によって当板41を押圧する。押圧部45が当板41に当接する当板の上面部分には、押圧部45が嵌合する凹部47を形成することが好ましい。これらのねじ44を順にそれぞれほぼ均等にねじ込むことにより、当板46によって多数のプランジャをほぼ均等に押下させることができる。なお、上記の例においてはシリンジ押し出し部材を四隅に個々に設けた例を示したが、全ての枠体43を1枚の板としても良い。
【実施例3】
【0032】
その他、例えば図9に示すようなジャッキ状のシリンジ押出部材50を用いることができる。即ち図9に示すシリンジ押出部材50においては、下端に前記と同様の係止部51を備えた係止アーム52を両端に備えた枠体としての上板53と、その下方に配置した押圧部としての当板に相当する下板54との間に、リンク状の押圧機構55を備えている。押圧機構55は左右に同様のリンク機構56を備えるとともに、上下のリンクを回動自在に結合する左右の押圧機構の結合部63を2本のロッド57によって連結する。1本のロッド57の中心にねじ螺合部58を設け、このねじ螺合部58にねじ59を螺合し、ねじ59の先端に回動操作部60を設け、他端を他の対向するロッド57に回転自在に結合する。
【0033】
それにより、回動操作部60を回転することにより両ロッドは離接作動して左右のリンクが開閉し、それに伴って係止部51で係止された上板53に対して下板54を下方に移動させることができる。この下板54の下面を前記当板38、41と同様にプランジャ上端部29に当接させることによって、回動操作部60の回動によって従来のジャッキと同様の原理により多数のプランジャをほぼ均等に押下させることができる。なお、各リンクが上板53及び下板54に当接する部分には適宜スライダ61を設け、スライダ61を上板53及び下板54に形成した係合溝62に係合させることにより、安定した押圧作動を行わせることができる。
【0034】
本発明は上記のような実施例以外にも、例えばフィルタ支持棚5を下フレームの上段支持枠に掛け、フィルタの下方に容器を配置する等、更に各種のフレーム構造及び各種の手動押圧部材を用いて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
液体試料の濾過は、ほとんどの理科系研究者が遭遇する作業であり、同時に苦痛に感じる作業であるが、高価な装置を購入するくらいならばとその苦痛に耐えているのが現状である。簡易大量濾過が可能な安価な装置があれば、各研究室1台程度の一般的な実験機器となり広く普及する可能性が高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例におけるフレーム構成部材を示す斜視図である。
【図2】同実施例におけるシリンジ及びフィルタ、並びに容器の構造及び配置、並びにそれらの支持構成を示す斜視図である。
【図3】同実施例における上フレームの全体構成とシリンジの支持態様を示す斜視図である。
【図4】同実施例における下フレームの全体構成と容器の支持態様を示す斜視図である。
【図5】同実施例におけるシリンジを支持した上フレームと容器を支持した下フレームとを結合する前の状態を示す図である。
【図6】同実施例におけるシリンジを支持した上フレームと容器を支持した下フレームとを結合した後、当板とシリンジ押出部材を組み合わせる状態を示す図である。
【図7】同実施例におけるシリンジ押出部材によりシリンジ内の試液を押し出し、フィルタで濾過して容器に収容する状態を示す図である。
【図8】本発明における他のシリンジ押出部材を用いる第2実施例を示す図である
【図9】本発明における更に他のシリンジ押出部材を用いる第3実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 下フレーム
2 上フレーム
3 保持棚
4 保持棚
5 フィルタ支持棚
6 保持棚
7 保持棚
8 下フレーム支柱
9 下フレーム上段支柱連結枠
10 下フレーム中段支柱連結枠
11 下フレーム下段支柱連結枠
12 結合ロッド
13 上フレーム支柱
14 上フレーム上段支柱連結枠
15 上フレーム中段支柱連結枠
16 上フレーム下段支柱連結枠
17 保持開口
18 嵌合穴
19 引掛部
20 フィルタ支持部材
21 シリンジ
22 射出ノズル
23 フィルタ
24 嵌合部
25 挿入穴
26 フィルタ付シリンジ
27 出口ノズル
28 本体部
29 プランジャ上端部
30 容器
31 シリンジ押出部材
32 係止部
33 係止アーム
34 枠体
35 ねじ
36 押圧部
37 ねじ回転操作部
38 当板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、上フレームとの連結部を備えた下フレームと、
4隅の支柱、及び該支柱間を結合する複数段の支柱連結枠からなり、下フレームとの連結部を備えた上フレームと、
前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、線材或いはロッドにより内部を複数に仕切って開口を形成した複数の保持棚と、
前記上フレーム及び下フレームの支柱連結枠に掛ける引掛部を備え、2列の線材或いはロッドによりフィルタ支持部を形成したフィルタ支持棚と、
前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する係止アームを枠体に備え、該枠体と下方の押圧部間に配置し該枠体に対して押圧部を下方に押圧する手動操作ねじ機構を備えたシリンジ押出部材と、
前記下フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、濾過後の試液を収容する容器を挿入して保持し、
前記上フレームの支柱連結枠に掛ける保持棚の開口には、下端部にフィルタを装着したシリンジを挿入して保持し、
前記上フレームまたは下フレームに掛けるフィルタ支持棚のフィルタ支持部には、前記シリンジに装着したフィルタの出口ノズルを2列の線材或いはロッド間に挿入して支持し、
前記容器を保持する下フレームと、前記フィルタを装着したシリンジを保持する上フレームとを前記各連結部で連結した後、前記押圧部材の係止部を支柱連結枠に係合し、前記シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によって押圧部によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧して、シリンジ内に予め所定量吸入した試液を前記フィルタに押し出して濾過し、前記フィルタの下方に位置する前記容器に濾過後の試液を収容することを特徴とする加圧式簡易液体濾過装置。
【請求項2】
前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する1対の係止アームを枠体の両端に備え、前記枠体に前記ねじ機構のねじを螺合し、該ねじの上端部に手動操作部を有すると共に下端部に押圧部を有するものであり、
前記シリンジ押出部材の係止部を支柱連結枠に係合した後、当板を介して前記シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧することを特徴とする請求項1記載の加圧式簡易液体濾過装置。
【請求項3】
前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する係止アームを枠体に備え、前記枠体に前記ねじ機構のねじを螺合し、該ねじの上端部に手動操作部を有すると共に下端部に押圧部を有するものであり、
前記シリンジ押出部材を複数用い、
前記各シリンジ押出部材の係止部を支柱連結枠に係合した後、当板を介して前記各シリンジ押出部材の手動操作ねじ機構の操作によりシリンジ上部のプランジャ上端部を押圧することを特徴とする請求項1記載の加圧式簡易液体濾過装置。
【請求項4】
前記シリンジ押出部材は、前記支柱連結枠の一つと係合する係止部を突出する1対の係止アームを枠体の両端に備え、前記枠体とその下部に配置した押圧部としての当板との間にリンクを組み合わせた押圧機構を1対設け、該1対の押圧機構における対向するリンクの回動結合部間を連結するロッドを1対設け、該ロッド間を離接作動する手動ねじを設けたものであることを特徴とする請求項1記載の加圧式簡易液体濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−160203(P2007−160203A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359272(P2005−359272)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)