説明

加圧装置

【課題】針なしステープラ等に代表される加圧装置の小形化を図り、耐久性を向上させる。
【解決手段】ベース11上に斜めに突出する固定ブラケット12と該固定ブラケット12の先端部に上下に揺動可能に連結する操作レバー13と前記固定ブラケット12の基端部に上下に揺動可能に連結する作動レバー14とを設け、前記操作レバー13、作動レバー14を連結するリンク15、15によってトグル機構を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トグル機構を利用する加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の紙やプラスチックのシートを綴じるために、針なしステープラを用いることがある。針なしステープラは、針を使用せず、複数のシートを上下一対の金型で加圧し、局部的に凹凸のエンボス模様を成形する。複数のシートは、エンボス模様の加圧接触により発生する摩擦力を介して綴じることができる。
【0003】
従来の針なしステープラは、ベース1、操作レバー7、作動レバー8の他、ベース1の上面の下金型9a、作動レバー8の下面の上金型9bを備えている(図7、非特許文献1)。操作レバー7、作動レバー8は、それぞれ支点ピン7a、8aのまわりに揺動可能であり、作動レバー8の一端の下向きの係合片8bは、操作レバー7に付設する押板7bに係合している。また、作動レバー8は、引張りスプリング8cを介し、下金型9a、上金型9bを開く方向に付勢されている。
【0004】
下金型9a、上金型9bの間に複数のシートAa を挿入し、操作レバー7の先端部に下向きの操作力Fa を加えると(図8)、操作レバー7は、支点ピン7aのまわりに揺動し、押板7bを介して作動レバー8の係合片8bを押し上げる。そこで、作動レバー8は、上金型9bを下金型9aに押し当てるように揺動する。このとき、作動レバー8を駆動する伝達力Pa は、操作レバー7のてこ機構により操作力Fa より大きくなり、下金型9a、上金型9bの加圧力Pb は、作動レバー8のてこ機構により伝達力Pa より大きくなる。また、操作力Fa を除去すると、引張りスプリング8cにより作動レバー8が元の姿勢に揺動し、上金型9b、下金型9aが開く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.lihit-lab.co.jp/syodb/shousai.pl
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術によるときは、操作レバー7、作動レバー8による2組のてこ機構を用いるため、下金型9a、上金型9bに十分大きな加圧力Pb を発生させようとすると、全体サイズが過大になりがちであるという問題があった。また、作動レバー8の係合片8bは、操作レバー7の押板7b上を直線的に相対移動しながら伝達力Pa を伝達するため、係合片8b、押板7bに摩耗を生じ、耐久性に乏しいという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、リンクによるトグル機構を利用することによって、小形化を図り、耐久性を向上させることができる加圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、ベースと、ベース上に斜めに突出する固定ブラケットと、固定ブラケットの先端部に上下に揺動可能に連結する操作レバーと、固定ブラケットの基端部に上下に揺動可能に連結する作動レバーと、操作レバー、作動レバーを連結するリンクとを備えてなり、ベースの上面、作動レバーの下面には、加工用の下部品、上部品をそれぞれ付設し、リンクは、操作レバーに加える操作力より大きな伝達力を作動レバーに伝達するトグル機構を形成することをその要旨とする。
【0009】
なお、リンクは、固定ブラケットの両側に左右一対を設けることができる。
【0010】
また、固定ブラケットには、下部品、上部品を開く方向に操作レバーを付勢するスプリングを組み込んでもよい。
【0011】
さらに、下部品、上部品は目的に応じた下金型、上金型とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
かかる発明の構成によるときは、リンクは、操作レバーに加える操作力より大きな伝達力を作動レバーに伝達するトグル機構を形成し、加工用の下部品、上部品に十分な力を発生させても、全体サイズを小形化することができる。また、操作レバーと作動レバーは、リンクを介して連結されるため、過大な摩耗を生じる直線的な相対移動部分がなく、必要な耐久性を容易に実現することができる。
【0013】
リンクは、固定ブラケットの両側に左右一対を設けることにより、必要な強度を容易に確保することができ、操作レバーや作動レバーに有害なねじれを生じるおそれがない。また、固定ブラケットに組み込むスプリングは、加工用の下部品、上部品を開く方向に付勢し、操作性を向上させる。
【0014】
下部品、上部品を用途に応じた下金型、上金型とすることにより、大きな加圧力を有する加工機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】全体構成分解斜視図
【図2】全体構成縦断面模式図
【図3】全体構成正面図
【図4】動作説明図(1)
【図5】動作説明図(2)
【図6】動作原理説明図
【図7】従来例を示す動作原理図(1)
【図8】従来例を示す動作原理図(2)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
加圧装置は、ベース11、固定ブラケット12、操作レバー13、作動レバー14、リンク15、15を備えてなる(図1、図2)。ただし、ベース11の上面、作動レバー14の下面には、それぞれ加工用の下部品16a、上部品16bが付設されている。
【0018】
ベース11は、板材により前後に長い長方形の下向き箱形に形成されている。ベース11の上面の前後両端部は、滑らかな円弧状に形成されている。ただし、ベース11の前後方向は、図1、図2に図示する方向とする。
【0019】
固定ブラケット12は、板材を溝形に折曲げ加工することにより、座面12aの左右に斜め上向きの側面12b、12bが立設されている。固定ブラケット12は、前向きの側面12b、12bをベース11の長辺方向に合わせるようにして、ベース11の上面に固定されている。
【0020】
操作レバー13は、板材を下向き溝形に折曲げ加工することにより、上面13aの左右に側面13b、13bが形成されている。操作レバー13は、連結ピン18を介し、固定ブラケット12の先端部に上下に揺動可能に連結されている。なお、連結ピン18は、操作レバー13の側面13b、13bの前端部上側、固定ブラケット12の側面12b、12bの先端部上側を左右に貫通し、止め輪18aを介して抜け止めされている(図1、図3)。
【0021】
作動レバー14は、連結ピン21を介し、固定ブラケット12の基端部に上下に揺動可能に連結されている(図1、図2)。連結ピン21は、固定ブラケット12の側面12b、12bの基端部、作動レバー14の後端部を左右に貫通し、止め輪21aを介して抜け止めされている。
【0022】
リンク15、15は、固定ブラケット12の両側に左右一対が設けられている。リンク15、15は、上下両端部の連結ピン19、20を介し、操作レバー13、作動レバー14を連結している。連結ピン19は、操作レバー13の側面13b、13bの前端部下側、リンク15、15の上端部、固定ブラケット12の側面12b、12bの先端部下側のガイド孔12c、12cを左右に貫通し、止め輪19aを介して抜け止めされている(図1、図3)。なお、各ガイド孔12cは、連結ピン18用の貫通孔を中心とする円弧状に形成されている。連結ピン20は、リンク15、15の下端部、作動レバー14の前端部を左右に貫通し、止め輪20aを介して抜け止めされている。
【0023】
下部品16aは、ベース11の上面の位置決め用の溝11aに嵌め込むようにして付設されている(図1、図2)。なお、ベース11内には、下部品16aを下から支持する2枚の支持板11b、11bが固定されている(図2、図3)。上部品16bは、作動レバー14の下面の位置決め用の溝14aに嵌め込むようにして付設されている(図1)。下部品16a、上部品16bは、たとえば互いに組み合わせる孔明け用の金型である。
【0024】
固定ブラケット12には、板ばねのスプリング17が組み込まれている(図1、図2)。スプリング17の一端は、作動レバー14の上面に係合し、他端は、連結ピン18に係合している。また、スプリング17の中間部は、連結ピン19に対して下側から係合され、連結ピン19を介して操作レバー13を上方に付勢するとともにリンク15、15を後方に傾け、下部品16a、上部品16bを開く方向に付勢している。
【0025】
複数のシートAに孔を明けるには、作動レバー14の前端側から、複数のシートAの孔明け部分を下部品16a、上部品16bの間に挿入し(図4)、操作レバー13を押し下げる。すなわち、操作レバー13の先端部に操作力Fを加えることによって、複数のシートAは、下部品16aと上部品16bとの間に挟まれ、加圧力P4 で孔明けされる(図5)。
【0026】
次に、図6を使用して、操作レバー13に加える操作力Fを加圧力P4 に増加させる動作を説明する。ただし、図6(A)は、装置全体における力の伝達経路図であり、図6(B)は、同図(A)の要部詳細図である。
【0027】
操作レバー13を操作力Fで押し下げるとき、操作レバー13の実効長さbとすると、操作レバー13には、連結ピン18を中心とする回転モーメントM1 =b×Fが発生する。そこで、連結ピン19に生じる伝達力Pは、連結ピン18、19間の距離a<bとして、P=(b/a)F>Fとなる。
【0028】
伝達力Pは、連結ピン19から連結ピン18に向かう操作レバー13内の圧縮力P1 と、連結ピン19から連結ピン20に向かうリンク15、15内の伝達力P2 として分解され、連結ピン19を頂点とする連結ピン18、20のなす角度αとすると、伝達力P2 =P/cos (α−90°)>P>Fとなる。すなわち、リンク15、15は、操作力Fより大きな伝達力P2 を作動レバー14に伝達するトグル機構を形成している。
【0029】
伝達力P2 は、リンク15、15を介して作動レバー14上の連結ピン20に伝わるが、連結ピン19、20を結ぶ線と、作動レバー14に対する垂線との角度βとすると、伝達力P2の分力である伝達力P3 は、作動レバー14に対し、連結ピン21を中心とする回転モーメントM2 を発生させる。ただし、P3 =P2 ・cos β、M2 =(c+d)P3 であり、c、dは、上部品16bによる作動レバー14の実効分割長さである。そこで、下部品16a、上部品16bに生じる加圧力P4 は、P4 =((c+d)/d)P3 >P3 となる。
【0030】
すなわち、加圧力P4 =b(c+d)F・cos β/(ad・cos (α−90°))となり、操作力Fに対する加圧力P4 の増加比率G=P4 /F=b(c+d)cos β/(ad・cos (α−90°))となる。よって、リンク15、15によるトグル機構は、角度αを適切に設定することにより、必要な増加比率Gを容易に実現することができる。
【0031】
以上の説明において、加工用の下部品16a、上部品16bは、開孔用の雌金型と雄金型とすることにより開孔装置を構成することができ、切断用の刃物受けと刃物とすることにより切断装置を構成することができる。また、加工用の下部品16a、上部品16bは、一対の把持部材や、一対のかしめ工具とすることにより、把持装置や、かしめ装置を構成することができる。
【0032】
なお、操作レバー13は、手動で操作力Fを加えるに代えて、空圧シリンダ、油圧シリンダや、ソレノイド、モータなどの駆動源を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、開孔装置の他、切断装置、把持装置、かしめ装置などの用途に対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
F…操作力
P2 、P3 …伝達力
11…ベース
12…固定ブラケット
13…操作レバー
14…作動レバー
15…リンク
16a…下部品
16b…上部品
17…スプリング

特許出願人 株式会社 小松電業所
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベース上に斜めに突出する固定ブラケットと、該固定ブラケットの先端部に上下に揺動可能に連結する操作レバーと、前記固定ブラケットの基端部に上下に揺動可能に連結する作動レバーと、前記操作レバー、作動レバーを連結するリンクとを備えてなり、前記ベースの上面、前記作動レバーの下面には、加工用の下部品、上部品をそれぞれ付設し、前記リンクは、前記操作レバーに加える操作力より大きな伝達力を前記作動レバーに伝達するトグル機構を形成することを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
前記リンクは、前記固定ブラケットの両側に左右一対を設けることを特徴とする請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記固定ブラケットには、前記下部品、上部品を開く方向に前記操作レバーを付勢するスプリングを組み込むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−206782(P2011−206782A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74432(P2010−74432)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(591139677)株式会社小松電業所 (1)
【Fターム(参考)】