説明

加工ツール付ロボット及び加工方法

【課題】 パイプ端面の切断,鞍形切断、パイプ側面への穴開け加工、さらには、単一平面ではないワーク等の3次元形状のワーク加工面に対する加工を精度よく、簡単にできる加工ツール付ロボット及び加工方法を提供する。
【解決手段】 ロボット可動アームの最終軸1に加工ツール11を取り付ける。該加工ツール11は、垂直に伸縮する第1の付加可動軸と、水平方向に伸縮する第2の付加可動軸を備える。最終軸1の回転によって、加工ツール先端の切断ツール(レーザの加工ノズル)を回動してパイプ状ワークWを切断加工する。最終軸1の回転と同期し、第1,第2の付加可動軸を駆動することによって、鞍形切断、穴明け加工を行なう。ロボットの可動アームは最終軸の回転のみであるから、加工精度が向上する。また、簡単にパイプ状ワークを切断、鞍形切断、穴明け加工ができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロボット可動アーム先端に取り付けられた加工ツールによってワークに加工を行なう加工ツール付ロボット及び加工方法に関する。特に、パイプ端面の鞍形切断、パイプ部品の側面への穴開け加工等に適した加工ツール付ロボット及び該ロボットによる加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の足回り部品にパイプを使用する場合が多くなっている。この自動車足回り部品のパイプ化に伴い、図11に示すようにパイプ間を接続するために、パイプ(W)の端面を鞍形切断する加工や、パイプ部品のパイプ側面に穴開けを行なう加工が増加している。これら鞍形切断やパイプ側面への穴開け加工は、加工ツールを3次元空間で精度よく動作させる必要があり、ロボットでこの加工を行なう場合にも、通常のレベルより、高い軌跡制御能力が求められる。
【0003】パイプ状のワーク、断面が楕円のワーク、角柱、角錐等の単一平面ではないワークに対してこれらの加工をロボットでおこなう場合、従来は、ロボット可動アーム先端部に任意の角度で切断ツールを取り付け、図13に示すように、ロボット可動アームの複数の軸を全体的に動作させて加工を行なっている。図13の場合、パイプ状のワークWに対して、ロボット可動アーム1先端に取り付けたレーザノズル等の切断ツール2を対向させ、ロボットの複数の可動アームを駆動してロボット可動アームの最終軸1をワークWに対して矢印Aにのように旋回させてワークWを切断、穴開け加工を行なっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、ロボット可動アームの複数の可動アームを全体的に動作させて加工を行なうため、ロボットの振動等によって加工面の精度が悪くなっていた。また、従来のロボットによるパイブ状のワークに対する加工では、図12(a)に示すようにパイプであるワークWの切断面(イ)はワークWの側面に対して垂直にしか切断できなく、ワークWの切断面(ロ)に角度をつけて図12(b)に示すように加工することができない。図11に示すような突き合わせ接合して溶接するような場合、図12(a)に示すように切断面(イ)がパイプの周面と垂直の場合では、強固な溶接が難しく、従来のロボットによるパイプ鞍形切断加工は適していなかった。
【0005】そこで、本発明の目的は、パイプ端面の鞍形切断や、パイプ側面への穴開け加工、さらには、単一平面ではないワーク等の3次元形状のワーク加工面に対する加工を精度よく、簡単にできる加工ツール付ロボット及び該ロボットを使用した加工方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、関節で結合された複数のリンクからなる可動アームを有し、該可動アームはソフトウエア処理能力を有するロボット制御装置によって制御されるロボットであり、該ロボットの前記可動アームの先端部に加工ツールが装着され、該加工ツールの加工部先端にはロボット可動アームの最終軸の回転中心軸に対し偏位し、かつ加工ツールの先端が前記最終軸の回転中心軸に向いて配置されている。さらには、この加工ツールは該加工ツールの先端を直動又は/及び回動させる可動軸を備えている。
【0007】このロボットを用いてパイプ状のワークを加工する際には、該パイプ状のワークの中心軸をロボット可動アームの最終軸の回転中心軸と同軸上に配置して、ロボット可動アームの最終軸を回転させることによって加工ツールによりワークを加工するようにした。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態として加工ツールの先端部に設ける加工部としての切断ツールにレーザノズルを用いレーザによってワークを切断又は穴明け加工するレーザ加工ロボットの例で以下説明する。
【0009】図1は本発明を実施するロボット制御装置のハードウェア構成の要部をブロック図で示したものであり、従来のロボット制御装置と同一の構成である。符号107で示されるバスに、メインCPU(以下、単にCPUと言う。)101、RAM、ROM、不揮発性メモリ(EEPROMなど)からなるメモリ102、教示操作盤用インターフェイス103、外部装置用の入出力インターフェイス106及びサーボ制御部105が接続されている。
【0010】教示操作盤用インターフェイス103に接続される教示操作盤104は通常のLCD等のディスプレイ機能付のもので、オペレータは、この教示操作盤104のマニュアル操作を通して、ロボットの動作プログラムの教示、修正、登録、あるいは各種パラメータの設定の他、教示された動作プログラムの再生運転、ジョグ送り等を実行する。また、ディスプレイはオペレータへの指示、入力データの表示やシミュレーション結果の表示に使用される。
【0011】ロボット及びロボット制御装置の基本機能を支えるシステムプログラムは、メモリ102のROMに格納される。また、アプリケーションに応じて教示されるロボットの動作プログラム並びに関連設定データは、メモリ102の不揮発性メモリに格納される。そして、メモリ102のRAMは、CPU101が行なう各種演算処理におけるデータの一時記憶の記憶領域に使用される。
【0012】サーボ制御部105はサーボ制御器#1〜#n(n:ロボットの総軸数に加工ツールの可動軸数を加算した数)を備えており、ロボット制御のための演算処理(軌道計画作成とそれに基づく補間、逆変換など)を経て作成された移動指令を受け、ロボット各軸機構部のアクチュエータを構成するサーボモータを各サーボアンプを介して制御する。
【0013】また、入出力インターフェイス106の外部入出力回路には、ロボットに設けられたセンサや周辺機器のアクチュエータやセンサが接続され、本発明に関係して、特に、レーザ発振器108が接続されている。ロボット可動アーム先端部にはレーザノズルを備えた加工ツールがと取り付けられており、レーザ発振器108から出力されたレーザビームを加工ノズルからワークに照射しワークを切断加工するようにしている。
【0014】上述したロボット制御装置の構成は、従来のロボット制御装置と何等変わりはなく、本発明においては、ロボット可動アームの先端部に加工ツールが取り付けられている点と、該加工ツールが可動部を有している場合には、このロボット制御装置によってサーボ制御部の付加軸でこの加工ツールの可動部もサーボ制御部105で制御する点において相違するのみである。
【0015】図2は本発明の第1の実施形態における要部説明図である。
【0016】ロボット可動アームの最終軸1の先端のロボット手首1aには、加工ツール10の回転中心とロボット手首の回転中心が一致するように加工ツール10が取りつれられている。加工ツール10はロボット手首1aに該加工ツール10を取り付ける取り付け部10aと、該取り付け部10aからロボット可動アームの最終軸1の回転中心軸に対して垂直に伸び、その先端で屈曲してロボット可動アームの最終軸1の回転中心軸と平行でロボット可動アームの最終軸1とは逆方向に伸びた「L」字型のリンク10bと、該リンク10bの先端に取り付けられ、レーザ照射方向がロボット可動アームの最終軸1の中心軸に対して垂直になるように取り付けられた加工ノズル2で構成されている。
【0017】この様な加工ツール10を備えたロボットにより、パイプ状ワークWの端面を切断する加工を行なう場合には、パイプ状ワークWの中心軸とロボット可動アームの最終軸1の中心軸(ロボット手首1aの回転中心)を一致させ、ワークWの切断位置に加工ノズル3対応させた位置にロボットを位置決めし、ロボット可動アームの最終軸1を回転させながら、加工ノズル2よりレーザビームをワークWに照射することによってワークWを切断する。
【0018】このパイプ状のワークWの切断加工においては、加工中はロボット可動アームの最終軸1のみが駆動され回転するのみであるから、加工精度がよく、また簡単に切断加工をすることができる。
【0019】ワークWの軸方向における(図2において左右方向)切断位置は、ロボット手首1aの位置を図2において左右方向に移動させてある程度選択できる。しかし、この加工ツール10を用いてロボット可動アームの最終軸1の回転のみでワークを切断できるワークWの径は制限される。加工ツール10の回転中心軸(ロボット可動アームの最終軸の回転中心軸)と加工ノズル3の先端間の距離、すなわち加工ノズルの偏位量より大きな半径のパイプに対しては、上述したロボット可動アームの最終軸1の回転のみでワークを切断はできない。この場合には、ロボットの複数軸を全体的に駆動して加工を行なわねばならない。
【0020】また、円筒形状ではない単一平面の集まりで構成された角柱、楕円状のパイプ等のワークWに対しても、また、円筒形状のパイプに対する鞍形切断も、この加工ツール10を備えるロボットでは、ロボット可動アームの最終軸1の回転のみでは、ワークを切断することはできない。この様な加工は、ロボットの可動軸を複数駆動しなければならない。
【0021】そこで、加工ツールに1軸以上の可動軸を設けることによって、様々な形状のワークに対しても加工ができ、かつ鞍形切断、パイプ状ワークの表面に対する穴開け加工をも可能にする加工ツールを備えた第2の実施形態について図3と共に説明する。
【0022】図3においては、加工ツール11を簡略的に記載しているが、この加工ツール11は、ロボット可動アームの最終軸1の先端のロボット手首1aに該加工ツールを取りつける取り付け部11aと該取り付け部10aからロボット可動アームの最終軸1の中心軸に対して垂直に伸縮移動する第1の付加可動軸10bと該付加可動軸10bの先端に直角に接続され、ロボット可動アームの最終軸1の中心軸の方向に進出する第2の付加可動軸10cと、該第2の付加可動軸11cの先端に取り付けられ、レーザ照射方向がロボット可動アームの最終軸1の中心軸に対して垂直になるように取り付けられた加工ノズル2で構成されている。
【0023】上述した第1、第2の付加可動軸は、モータとボールネジ等を用いた直線機構や、モータの回転運動をレバー部材等で直線運動に変換する、回転運動/直線運動変換機構等で構成される。また、エアシリンダや、リニアガイド等をサーボモータ等で駆動する機構を使用してもよい。
【0024】上述した第1、第2の付加可動軸11b,11cを駆動するモータは、ロボット制御装置のサーボ制御部105の付加軸制御用のサーボ制御器によってそれぞれサーボ制御されるものである。
【0025】この第2の実施形態では、第1の付加可動軸11bが設けられることによって、種々の径のワークWを切断することが可能となる。すなわち、第1の付加可動軸を駆動することによって、加工ノズル2の先端と、該加工ツール11の回転中心軸でありロボット可動アームの最終軸1の中心軸間の距離(偏位距離)を切断加工しようとするパイプ状のワークWの半径に合わせるように調整すればよく、切断加工する際には、上述した第1の実施形態と同様に、ワークWの中心軸とロボット手首の中心(ロボット可動アームの最終軸1の中心軸でありかつ加工ツール11の回転中心軸)を一致させるように、かつ、第2の付加可動軸11cを駆動して加工ノズルの先端が切断しようとするワークWの位置(図3における左右方向位置)に位置決めして、ロボット可動アームの最終軸1を回転させながら加工ノズル2よりレーザビームをワークWに照射すれば、ワークWを切断することができる。
【0026】さらに、ロボット可動アームの最終軸1の回転と、第2の付加可動軸11cの駆動を同期して行なえば、図3に破線で示すような鞍形切断や、ワークWの表面に穴開け加工を行なうことができる。すなわち、ロボット可動アームの最終軸1が1回転する間に、同期して第2の付加可動軸11cが所定ストロークを2往復するようにすれば、鞍形切断ができる。また、ロボット可動アームの最終軸1が所定角度1方向に回転する間に第2の付加可動軸11cが所定ストロークだけ往復し、ロボット可動アームの最終軸1が逆方向に所定角度移動する間に第2の付加可動軸11cが逆方向に所定ストロークだけ往復すれば、パイプ状ワークWの表面に穴を加工することができる。
【0027】また、ロボット可動アームの最終軸1の回転と、第1の付加可動軸の移動を同期させて駆動させることによって、図4(a)、(b)に示すように、断面楕円菅状のパイプのワークWや断面方形菅状のパイプのワークWを切断加工をすることができる。
【0028】すなわち、加工ツール11に第1の付加可動軸11bを設けることによって、ロボットはロボット可動アームの最終軸1の回転だけで、径の異なるの円筒パイプ状のワークWの切断加工、断面楕円菅状や方形菅状のパイプの切断加工ができる。また、加工ツール11に第2の付加可動軸11cを設けることによって、ロボットはロボット可動アームの最終軸1の回転だけで、加工ツール11の付加可動軸11cの駆動によってパイプ表面への穴開け加工、パイプ端面の鞍形切断加工ができる。さらに、加工ツール11に第1,第2のの付加可動軸11b,11cを設けることによって、ロボットはロボット可動アームの最終軸1の回転だけで、径の異なるの円筒パイプ状のワークWの切断加工、鞍形切断加工、断面楕円や方形のパイプの切断加工、パイプ表面への穴開け加工が可能となる。
【0029】この第2の実施形態の加工ツール11を備えたロボットを用いて、図5に示すように、ロボット可動アームの最終軸1の中心軸(加工ツール11の回転軸)とパイプ状ワークWの中心軸を所定角度に保持して、ロボット可動アームの最終軸1を回転させながら、この回転に同期して第1,第2の付加可動軸11b,11cを駆動制御してパイプ状ワークWを切断加工すれば、図6(a)に正面図、図6(b)に斜視図に示すような、端部切断したワークWを接続する他のパイプPに対して斜めに組み付けることができる。すなわち、図6に示すようなパイプPに対してワークWを組み付けるときには、図5に示す加工を行ないワークWの端部を切断加工する。
【0030】図7は、本発明の第3の実施形態の要部を示す図である。この第3の実施形態は、複数の小パイプ加工や、ユニット化されている部品の一部を切断する場合に使用するものである。この第3の実施形態における加工ツール12は、ロボット手首1aに該加工ツール12を取り付ける取り付け部12a、該取り付け部12aからロボット手首1aの取り付け面と平行(ロボット可動アームの最終軸1の中心軸に対して垂直)に伸びかつ先端で直角に屈曲したL字型の軸12b、該軸12bの先端に回動可能に取り付けられた付加回転軸12c、該付加回転軸12cに連結されロボット手首1aの取り付け面と平行の方向に伸縮する第1の付加可動軸12d、該第1の付加可動軸12dの先端に連結され、該第1の付加可動軸12dに対して直角方向に伸縮する第2の付加可動軸12e、該第2の付加可動軸12eの先端に取り付けられレーザビームの照射方向が付加回転軸12cの回転中心軸(ロボット可動アームの最終軸1の中心軸)に対して直交する方向に向けられた加工ノズル2で構成されている。
【0031】小パイプ等のワークWの端部を切断する際には、切断しようとするワークWの中心軸と付加回転軸12cの回転中心軸を一致させると共に、切断しようとするワークWの端面と付加回転軸12cの端面を対向させるようにロボットを位置決めする。そして、第1,第2の付加可動軸12d、12eを駆動して、加工ノズル2をワークWの切断しようとする位置に位置決めし、その後、加工ノズル2からレーザビームを照射しながら付加回転軸12cを回転させれば、ワークWの端面は切断されることになる。
【0032】なお、鞍形切断やワークWの周面に穴開け加工を行なう場合には、付加回転軸12cの回転と同期して、第2の付加可動軸12eを第2の実施形態で説明したように駆動すればよい。さらに、この小パイプ等のワークWが、断面楕円菅形状や、方形菅形状等である場合には、付加回転軸12cの回転と第1の付加可動軸12dの駆動を同期して行ない切断することは、第2の実施形態と同様である。
【0033】この第3の実施形態においては、ワークWを切断加工する際には、ロボットの可動軸は駆動されることなくロボット自体は停止状態であり、所定の位置、姿勢を保持している。ロボットの可動軸が駆動されないので、加工精度は向上する。
【0034】上述した各実施形態では、図5で示す加工方法を実施したとき以外は、加工ノズル2のレーザビーム照射方向は、ワークWの周面に対して垂直方向であり、切断面はワークWの周面に対して垂直である。パイプ状ワークWの中心軸線に対して垂直の断面しか得られない。図11に示すように、パイプを鞍形切断し、この鞍形切断した切断面を他方のパイプの周面に当接して鞍形溶接を行なうような場合、パイプ周面に対して垂直な切断面しか得られない場合には、図12(a)に示すような接合状態となり、溶接が困難で強固な強度を有する溶接が得られない。しかし、切断面がパイプ表面に対して任意の角度を有するように切断できれば、図12(b)に示すように、切断面と他方のパイプの周面が密着し、この接合位置の溶接も容易で強固なものとなる。
【0035】そこで、切断面がパイプ周面と任意の角度を有するように切断できる第4の実施形態を図8と共に説明する。
【0036】加工ツール13はロボット手首1aに該加工ツール13を取り付ける取り付け部13aと、該取り付け部13aからロボット可動アームの最終軸1に対して垂直に伸びる軸13bと該軸13bに対して第1の付加可動軸13dを回動させる付加回動軸13cを備え、前記第1の付加可動軸13dは、モータ,ボールネジ等の回転運動を直線運動に変換する機構を介してその先端を直線移動できる構造になっている。
【0037】さらに、第1の付加可動軸13dの先端に直角に接続され、第1の付加可動軸13dと同様に回転運動を直線運動に変換する機構によってその先端を直線移動させる第2の付加可動軸13eと、該第2の付加可動軸13eの先端に取り付けられた加工ノズル2を備えている。
【0038】パイプ状のワークWに対して鞍形切断等の加工を行なう場合には、パイプ状のワークWの中心軸線とロボット可動アームの最終軸1の回転軸とを一致させると共に、ロボット手首1aとワークWの端面が対向するようにロボットを位置決めし、切断開始時の切断面の角度が得られるような回転角に回転軸13cを位置決めし、かつ、第1,第2の可動軸13d,13eを駆動して切断開始位置に加工ノズル2を位置決めする。そして、教示プログラムに従って、ロボット可動アームの最終軸1を回転させながら、この回転に同期して、回転軸13c、第1,第2の付加可動軸13d,13eを駆動制御することによって、ワークWを鞍形切断等の任意の切断形状を得る切断加工、または穴開け加工を行なう。なお、この第4の実施形態でも、断面円筒状のパイプや断面楕円菅状のパイプ、断面方形菅状のパイプ等の単一平面ではないワークの切断加工ができるものである。
【0039】上述した第4の実施形態では、加工しようとするワークWの大きさ(径)に制限を受ける、この制限を緩和したものが、図9に示す第5の実施形態である。この第5の実施形態において用いられるは加工ツール14は、第4の実施形態における軸13bを可動軸としたものである。この第5の実施形態は、ロボット手首1aに該加工ツール14を取り付ける取り付け部14aと、該取り付け部14aからロボット可動アームの最終軸1に対して垂直に伸び、先端が直線移動する第1の付加可動軸14bと該第1の付加可動軸14bに対して第2の付加可動軸14dを回動させる回動軸14cを備え、さらに、第2の付加可動軸14dの先端に直角に接続され、その先端を直線移動させる第3の付加可動軸14eと、該第3の付加可動軸14eの先端に取り付けられた加工ノズル2を備えている。上述した第1、第2、第3の付加可動軸14b、14d,14eはモータ,ボールネジ等の回転運動を直線運動に変換する機構を介してその先端を直線移動できる構造になっている。
【0040】この第5の実施形態と、第4の実施形態を比較し相違する点は、上述したようにロボット手首1aへの取り付け部14a(13a)からロボット可動アームの最終軸1に対して垂直に伸びる軸14b(13b)が直線移動するか否かの差異である。図8と図9を比較しても明らかのように、ワーク径の変化に対しても、また切断面の傾きに対しても、ワーク端面から切断する位置までの距離の自由度からも、可動軸を1つ増加した第5の実施形態の方が加工に対する対応が容易になっている。
【0041】図10は、本発明の第6の実施形態である。この第6の実施形態は、加工ツールに対して(ロボット手首に対して)加工対象のパイプを位置決め保持が容易な加工ツールを提供するものである。この第6の実施形態では、該加工ツール15をロボット手首1aへの取り付け部15aに、該加工ツール15の回転中心軸(結局、ロボット可動アームの最終軸1の回転中心軸)と一致する中心軸をもった円錐台状のボス15zを取り付け部15aとは逆向き取り付け、パイプ等のワークWに対向するように設ける。しかも、このボス15zは加工ツール15の本体に対して回転自在に設けられている。ワークWのパイプの中心軸とロボット可動アームの最終軸1の回転軸(ロボット手首1aの中心軸、加工ツール15の回転中心軸)と一致するようにロボットを位置決めして、この軸に沿ってロボット手首を平行移動させて上記ボス15zをワークのパイプWに押付け嵌合させ、パイプWの中心軸と加工ツール15の回転軸にずれが生じないようにする。そして、ロボット可動アームの最終軸1aを回転させ加工ツール15を回転させながら加工ノズル2でワークを切断、穴開け加工等を行なう。加工ツール15は回転しても、ボス15zは加工ツール本体に対しては相対回転するがワークWのパイプに対しては回転しないから、加工ツール本体15の回転の障害とはならず、加工ツール15の回転中心軸がパイプの回転中心軸と一致するように保持しながらパイプWの切断、穴開け加工が行われるから、精度の高い加工を行なうことができる。
【0042】この図10に示した実施形態の例では、図3R>3に示す第2の実施形態にボス15zを付設した例を示したが、このボス15zは上述した第1〜第5の実施形態の加工ツールに対しても適用できるものである。
【0043】次に上述したような加工ツールが装着されたロボットによるワークへの加工について説明する。
【0044】まず、予めロボット制御装置のメモリ102の不揮発性メモリ部にワーク種類とその加工形状に対する加工ツール先端経路の計算式を格納しておく。例えば、一例としてワークWが円菅状のパイプであり、該ワークWを図11に示すように他のパイプPに突き合わせ接続するために鞍形切断を行なうような場合、加工ツール先端経路の計算式は以下のようにして求められる。
【0045】図16、図17はパイプPにワーク(パイプ)Wを突き合わせて接続するためにワークWを鞍形切断するときの加工ツール先端経路の計算式の求め方の説明図である。図16,図17に示すように、パイプ(突き合わせの相手側)Pの中心軸をX軸、ワークWの中心軸をY軸、該X軸,Y軸と直交する軸をZ軸とする。そして、この直交座標系の原点をパイプPとワークWの当接する最上部位置とし、Y軸の+向きは、切断面から遠ざかる方向、Z軸の+向きは下方向とする。
【0046】図16に示すように、パイプPの外径の半径をR、ワークWの外径の半径をrとし、パイプPにワークWが当接する最上部位置(原点位置)とパイプPの中心軸間の距離(Y軸方向距離)をA、パイプPの最上端位置と原点位置間の距離(Z軸方向の距離)をBとする。
【0047】ワークWの切断面における任意の位置のY軸、Z軸の位置(y,z)とし、この位置パイプPの最上部位置からの回転量を図16に示すようにθとすると、y=Rsinθ−Az=R−B−Rcosθ=R(1−cosθ)−Bよって、sinθ=(y+A)/Rcosθ=1−{(z+B)/R}
また、sin2 θ+cos2 θ=1であるから、[(y+A)/R]2 +[1−{(z+B)/R}]2 =1よって、 R2 =(y+A)2 +{R−(z+B)}2 …(1)
また、図17に示すように、ワークWにおいて上記任意の点(y,z)の原点からの回転角をαとすると、 z=r−rcosα=r(1−cosα) …(2)
上記1式に上記2式を代入して回転角αとY軸の値yの関係を求めると、 y=[R2 −[R−{r(1−cosα)+B}]2 1/2 −A =±[[2R−{r(1−cosα)+B}][r(1−cosα)+B]]1/2 −Aよって y=|[[2R−{r(1−cosα)+B}][r(1−cosα)+B]]1/2 −A| …(3)
上記3式において、回転角αは加工ツールの回転角であり、ロボット可動アームの最終軸1aの回転角を意味し、この回転速度は設定された所定速度に制御されるものである。また、Y軸の値yはワークWの軸線方向の加工ツールの移動位置を意味しており、第2の実施形態、第3の実施形態における第2の付加可動軸(ロボット可動アームの最終軸1aの中心軸と平行に移動する軸)の移動量を意味しており、上記3式は、加工ツールの回転(ロボット可動アームの最終軸1aの回転)に伴う加工ツール先端経路の計算式を示している。
【0048】そして、この3式によって加工ツール先端経路の計算式が確定するには、パイプの半径R、ワークの半径r、パイプPにワークWが当接する最上部位置とパイプPの中心軸間の距離A、パイプPの最上部位置とワークWの最上部位置間の距離Bわかればよい。そこで、これらのデータをR,r,A,Bをこの鞍形加工におけるパラメータの一部として設定するようにする。
【0049】なお、図16に示すように、パイプPの中心軸とワークWの中心軸が交わるように、パイプPに対してワークWを突き合わせ接続する場合(パイプPの中央点にワークWの中心線が来るように突き合わせる場合)、B=R−rであり、A=(R2 −r2 1/2 であるから、この場合には、上述した式3は、次の4式となる。
【0050】
y=|[(R+rcosα)(R−rcosα)]1/2 −(R2 −r2 1/2 | …(4)
この場合には、パラメータA,Bを設定せずに半径R,rのみを設定し、上記4式を用いて加工ツール先端経路の計算式を用いればよい。
【0051】また、加工予定の複数のワークに対してワーク番号を与え、各ワーク番号毎に、ワークWの種類(断面円のパイプ、断面楕円のパイプ、断面方形のパイプ、等)とその形状を特定するデータをメモリ102の不揮発性メモリ部に格納しておくと共に、ワーク番号と加工形状(平面切断加工、鞍形加工、穴明け加工等)に応じて、上述したような加工ツール先端経路の計算式を求めてロボット制御装置のメモリ102の不揮発性メモリ部に格納ておく。さらには、ワークWの種類に対応する番号、切断加工、鞍形加工、穴明け加工等加工形状名、及びワーク番号(ワークの種類)に対するそのワークを加工できる(もしくはできない)加工形状をメモリ102の不揮発性メモリ部に記憶しておく。
【0052】そこで、加工を教示するときには、教示操作盤104よりロボット制御装置に加工教示指令を入力すると、ロボット制御装置のCPU101は、図14に示す教示処理を開始する。まず、教示操作盤104のディスプレイ表示画面にワークの種類とそれに対応する番号を表示し、これに応じてオペレータが番号を入力することによってワークの種類を選択すると(ステップS1)、CPU101は加工形状の種類を表示し選択を促す(ステップS2)。オペレータが加工形状を選択すると、入力されているワーク番号に対応するワーク形状に対してこの選択形状が加工できるか、設定記憶内容に基づいて判断し(ステップS3)、加工できない場合にはアラーム警告を出力し(ステップS7)、再度加工形状の選択を促す。
【0053】また、選択加工形状が妥当であれば、その加工形状を加工するのに必要なパラメータ名を表示して各パラメータの入力を待つ(ステップS4)。上述した鞍形切断の場合では、切断ワークWのが突き合わせられる相手側のパイプ等の円柱体の半径R、切断ワークの半径r、パラメータA,B及びレーザ出力を決めるためにワークWの肉厚を設定入力することになる。選択加工形状に関する全てのパラメータ及びワークWの肉厚を設定し、設定完了信号が入力されると、CPU101は、入力されたワーク番号、加工形状及びパラメータをメモリ102の不揮発性メモリ部に加工データとして記憶し、加工動作の教示は終了する。
【0054】一方、実際に加工を行なう場合には、教示プログラム等により、ロボット手首に取り付けられた加工ツールをワークに対して位置決めされた後、すなわち、上述したワークWの中心軸とロボット可動アームの最終軸の回転中心軸が一致し、加工ツールの加工ノズル2をワークWの加工開始位置に位置決めされた後、教示プログラムからワーク番号と加工指令が読込まれると、図15の加工処理をCPUは開始する。
【0055】まず、読込まれたワーク番号に対応する加工データ(加工形状及びパラメータ)をメモリ102の不揮発性メモリ部からRAMに読込み(ステップT1)、ワーク番号と選択加工形状から加工ツール先端経路の計算式を選択し、設定されたパラメータの値を用いて通常の移動指令と同様の経路計画を行ない加工ツール先端の経路及び速度を算出する。また、設定されてるワークWの肉厚よりレーザ出力を求めレーザ発振器108へ出力する(ステップT2)。
【0056】次に、算出された経路がロボットの動作範囲内か判断し、範囲外であるとアラーム警報を出力し(ステップT6)、この加工処理は終了する。一方範囲内であると、ステップT2の経路計画によって求められた経路及び速度に基づいて補間周期毎の各軸移動量を算出して出力し各軸サーボモータを駆動する(ステップT4)。すなわち、上述した鞍形切断の場合には、ロボット可動アームの最終軸1aが設定所定速度で回転し、かつ加工ノズル2をこの最終軸1aの回転中心軸と平行に移動する付加可動軸(第2の実施形態における第2の付加可動軸11c、第3の実施形態における第2の付加可動軸12e等)に対して補間周期毎の移動指令量を算出し出力する。そして、目標位置に達したか判断し(ステップT5)達するまでこの補間処理を行ない目標位置に達するとこの加工処理を終了する。
【0057】
【発明の効果】本発明は、ロボット可動アームの最終軸の回転駆動のみで他のロボット可動アームを駆動せずにパイプ状ワークの切断加工が可能となったので、加工制度の高い加工ができる。また、加工ツールに直動軸や回動軸を設けることによって、パイプ状ワークの穴明け加工や鞍形切断加工、さらには、パイプ状のワークの切断面をパイプ表面に対して任意の傾斜をもって加工することをも可能としている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロボツト制御装置の一実施形態の要部ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における断面楕円菅,方形菅の切断加工説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における傾斜切断加工の説明図である。
【図6】傾斜切断加工によって切断されたワークとパイプとの突き合わせ接合の説明ずである。
【図7】本発明の第3の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図8】本発明の第4の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図9】本発明の第5の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図10】本発明の第6の実施形態における加工ツールの説明図である。
【図11】パイプの付き合わせ接合の説明図である。
【図12】パイプ状ワークの切断面とパイプとの接合との関係を説明する説明図である。
【図13】ロボットを用いてパイプ状ワークを切断するときの従来の加工方法の説明図である。
【図14】本発明による加工教示処理のフローチャートである。
【図15】本発明による加工動作処理のフローチャートである。
【図16】鞍形加工における加工ツール先端経路の計算式の求め方の説明図である。
【図17】同加工ツール先端経路の計算式の求め方の説明図である。
【符号の説明】
101 メインCPU
102 メモリ
104 教示操作盤
105 サーボ制御部
108 レーザ発振器
W ワーク
P パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 関節で結合された複数のリンクからなる可動アームを有し、該可動アームはソフトウエア処理能力を有するロボット制御装置によって制御され、前記可動アームの先端部に加工ツールが装着され、該加工ツールの加工部先端はロボット可動アームの最終軸の回転中心軸に対し偏位し、かつ前記最終軸の回転中心軸に向いて配置されている加工ツール付ロボット。
【請求項2】 関節で結合された複数のリンクからなる可動アームを有し、該可動アームはソフトウエア処理能力を有するロボット制御装置によって制御され、前記可動アームの先端部に加工ツールが装着され、該加工ツールには該加工ツールの加工部先端をロボット可動アームの最終軸の回転中心軸に対し位置若しくは方向を可変にする可動軸を備えている加工ツール付ロボット。
【請求項3】 上記可動軸は直動軸である請求項2記載の加工ツール付ロボット。
【請求項4】 上記可動軸は回動軸である請求項2記載の加工ツール付ロボット。
【請求項5】 上記直動軸は、ロボット可動アームの最終軸の回転中心軸に対して垂直方向若しくは平行方向に移動する直動軸であり、少なくともどちらか1方を備える請求項3記載の加工ツール付ロボット。
【請求項6】 上記可動軸として、直動軸と回動軸を備える請求項2記載の加工ツール付ロボット。
【請求項7】 関節で結合された複数のリンクからなる可動アームを有し、該可動アームはソフトウエア処理能力を有するロボット制御装置によって制御され、前記可動アームの先端部に加工ツールが装着され、該加工ツールはロボット可動アームの最終軸の回転中心軸とは異なる回転軸回りに回転する回動軸を備え、該回動軸に対して加工ツールの加工部先端は偏位し、かつ前記回動軸の回転中心軸に向いて配置されている加工ツール付ロボット。
【請求項8】 請求項1乃至6の内1項記載の加工ツール付ロボットを用い、パイプ状のワークの中心軸を前記可動アームの最終軸の回転中心軸と同軸上に配置し上記最終軸を回転させることによって、上記ワークに対して加工を行なうことを特徴とする加工ツール付ロボットによる加工方法。
【請求項9】 請求項3記載の加工ツール付ロボットを用い、パイプ状のワークの中心軸を前記可動アームの最終軸の回転中心軸と同軸上に配置し上記最終軸を回転させると共に、該最終軸の回転と同期して上記直動軸を駆動して、ワークを鞍形切断又は穴明け加工をすることを特徴とする加工ツール付ロボットによる加工方法。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図15】
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【公開番号】特開平11−254173
【公開日】平成11年(1999)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−78277
【出願日】平成10年(1998)3月10日
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)