説明

加振装置

【課題】 所定の加振機能を発揮しながら大型化を回避し得るようにする。
【解決手段】 供試体を載置させる加振台1と、この加振台1を上下方向に加振する加振器2と、この加振器2を保持するフレーム体3とを有してなる加振装置において、フレーム体3の下方に支持部4が設けられると共に、この支持部4とフレーム体3との間に弾性体5が配設される一方で、加振器2の重心位置がフレーム体3の重心位置より下方とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加振装置に関し、特に、供試体に対する耐久試験などに向く流体圧利用の加振装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
供試体に対する耐久試験などに向く流体圧利用の加振装置としては、従来から種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、加振装置における安定が保障される。
【0003】
すなわち、この特許文献1に開示の加振装置にあっては、床面などに起立するフレーム体が水平部を有すると共に、この水平部に加振器を有し、この加振器が上端で治具の配設下に供試体を担持する。
【0004】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案にあっては、加振装置の利用時に加振器の駆動に起因してフレーム体の水平部が振動しても、フレーム体が床面などに起立するから、加振装置の安定が保障される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭55‐39768号公報(第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、加振装置の安定が保障される点で、基本的に問題がある訳ではないが、実施に際して、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0007】
すなわち、周知のように、凡そこの種の加振装置にあっては、フレーム体の質量が加振器における加振力の10倍以上となるときに、加振器の駆動に起因する振動の影響を受けずして、加振装置の安定を保障し易くする。
【0008】
このことからすると、上記した特許文献1に開示の提案にあっても、フレーム体は、大きな質量を具有するように、いわゆる大型に形成され、その結果、加振装置の設置に際して広い設置面積を占有したり、全体の質量が大きくなるがゆえに加振装置の搬送性を悪くしたりする不具合の発生が危惧される。
【0009】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所定の加振機能を発揮するのはもちろんのこと、その大型化を回避し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となる加振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、この発明による加振装置の構成を、基本的には、供試体を載置させる加振台と、この加振台を上下方向に加振する加振器と、この加振器を保持するフレーム体とを有してなる加振装置において、フレーム体の下方に支持部が設けられると共に、この支持部とフレーム体との間に弾性体が配設される一方で、加振器の重心位置がフレーム体の重心位置より下方とされてなるとする。
【発明の効果】
【0011】
それゆえ、この発明にあっては、フレーム体の下方に支持部が設けられるから、この支持部を有する分フレーム体の重心位置が高くなる。
【0012】
その一方で、この発明にあっては、加振器の駆動に起因してフレーム体が振動する事態になっても、加振器の重心位置がフレーム体の重心位置より下方とされるから、加振器の重心位置がフレーム体の重心位置より上方とされる場合に比較して、フレーム体が振動し難くなる。
【0013】
そして、この発明にあっては、フレーム体と支持部との間に弾性体が配設されるから、フレーム体の振動を支持部に伝えないことが可能になり、したがって、フレーム体の質量が加振器における加振力の10倍以上とされなくても、加振器の駆動に起因する振動の影響を受けずして、加振装置の安定を保障し易くする。
【0014】
その結果、この発明によれば、フレーム体が大きな質量を有するように大型化されず、加振装置の設置に際して広い設置面積を占有する危惧がなく、また、全体重量を大きくせずして加振装置の搬送性を良くし得る。
【0015】
ちなみに、この発明にあって、加振器が油圧式とされることで、加振器が電磁式とされる場合に比較して、静的荷重を掛けることが可能になり、また、電磁ノイズの影響を危惧させずして、加振装置を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態による加振装置を示す立面図である。
【図2】他の実施形態による加振装置を図1と同様に示す図である。
【図3】さらに他の実施形態による加振装置を図1と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による加振装置は、図1に示すように、任意の供試体(図示せず)を載置させる加振台1と、この加振台1を上下方向に加振する加振器2と、この加振器2を保持するフレーム体3とを有し、さらには、支持部4と弾性体5とを有してなる。
【0018】
加振台1は、供試体を分離可能にしながら固定状態に載置させるもので、たとえば、円板状とされて、供試体を載置させるのに十分な面積と、供試体を固定状態に載置させると共に後述する加振器2からの振動に耐え得る機械的強度を有するように形成される。
【0019】
そして、この加振台1は、図示するところでは、後述する加振器2と別部品に形成されて加振器2に連結されるが、これがあらかじめ加振器2に一体に形成されて加振器2の一部とされても良い。
【0020】
ただ、加振台1が加振器2の一部とされる場合には、この加振台1を挿通させるために後述するフレーム体3に形成される透孔3aが言わば大径に形成されることになり、フレーム体3の機械的強度を低下させ易くなる上からは、好ましいと言い得ないであろう。
【0021】
また、供試体が大小様々となる、特に、いわゆる大型と称されるものとなる場合には、加振台1が相応の面積を有することが好ましく、そのため、いわゆる交換を要することがある場合を鑑みると、加振器2とは別部品に形成されるのが良い。
【0022】
ちなみに、加振台1は、その上面に任意の供試体を固定状態に載置させるのについて、図示しないが、適宜の治具の固定的な連結を許容するネジ孔や透孔を多数有して、このネジ孔への固定用ボルトの螺合や透孔への固定用ボルトの挿通を許容するのが好ましい。
【0023】
そして、加振台1への多数のネジ孔や透孔の形成は、加振台1における質量の可能な限りの軽量化を実現し、特に、この発明にあっては、後述するように、言わばフレーム体3側の重心位置より加振器2の重心位置を低くするとの観点からすれば有利になろう。
【0024】
加振器2は、この発明にあっては、流体圧アクチュエータ、特に、流体圧シリンダからなり、この流体圧シリンダは、図示するところでは、シリンダ体21と、このシリンダ体21に出没可能に設けられるロッド体22とを有してなる。
【0025】
そして、この流体圧シリンダにあっては、軸線方向が、すなわち、ロッド体22の出没方向が上下方向とされ、シリンダ体21が下端側部材とされると共にロッド体22が上端側部材とされる。
【0026】
そしてまた、この流体圧シリンダにあっては、シリンダ体21に図示しない流体圧給排源が連結され、この流体圧給排源からの流体圧がシリンダ体21内の図示しない圧力室に対して給排されることでロッド体22がシリンダ体21に対して出没する。
【0027】
ところで、この加振器2たる流体圧シリンダは、ロッド体22に比較すれば重量が大きくなるシリンダ体21を下端側部材にすると共に、このシリンダ体21におけるヘッド部(符示せず)をブラケット23の利用下にフレーム体3の下面に言わば吊持される態勢に連結される。
【0028】
それゆえ、この加振器2にあっては、ロッド体22に比較して重量が大きくなるシリンダ体21を下端側部材にするから、この加振器1における重心位置を上下方向の下方に位置決めることが可能になる。
【0029】
そして、これによって、詳しくは後述するが、加振器2における重心位置を少なくともフレーム体3の重心位置より低くすることが可能になる。
【0030】
一方、この発明にあって、加振器2を油圧式とすることについてだが、加振機能からすれば、電磁式加振器であっても良いと言い得る。
【0031】
しかし、電磁式加振器の場合には、供試体に静的荷重を掛けられず、また、疲労試験として荷重フィードバック制御を実施する場合に、歪ゲージのリード線がアンテナとなって電磁式加振器が発生する強い電磁ノイズの飛込みを阻止できない不具合が危惧される。
【0032】
それに対して、加振器2が油圧式とされる場合には、静的荷重を掛けることも可能になり、また、電磁ノイズの影響を排除しながら、加振装置を利用できる点で有利となる。
【0033】
フレーム体3は、図示するところにあって、上記した加振器2を下面に保持する水平部31と、この水平部31に起立する門型フレーム32と有してなる。
【0034】
そして、このフレーム体3にあって、水平部31は、この加振装置におけるいわゆる台部を構成するもので、そのため、たとえば、前記した加振台1に相似する円板状に、あるいは、その他の任意形状に形成されて、任意の広さとなる上面を有し、特に、加振台1上に載置される供試体が台部の上面の領域から外に突出しないように配慮している。
【0035】
そしてまた、図示しないが、この水平部31にあっても、前記した加振台1と同様に、適宜の治具の固定的な連結を許容するネジ孔や透孔を多数有して、このネジ孔への固定用ボルトの螺合や透孔への固定用ボルトの挿通を許容するのが好ましい。
【0036】
ちなみに、水平部31への多数のネジ孔や透孔の形成は、フレーム体3における質量の可能な限りの軽量化を実現し、特に、この発明にあっては、フレーム体3側の重心位置より加振器2の重心位置を低くするとの観点から有利になる。
【0037】
門型フレーム32は、この加振装置が供試体の振動試験をするいわゆる加振機として利用される場合には、不要とされるが、この加振装置を疲労試験機として利用する場合には、加振器2との間に供試体を固定的に保持する反力要素として必須になり、この門型フレーム32が設けられることで、加振器2によって、供試体に繰り返し荷重を作用することが可能になる。
【0038】
なお、この門型フレーム32は、この加振装置が疲労試験機として利用される場合に、供試体に保持などされるロードセルなどを支持するが、この加振装置が加振機としてのみ利用される場合には、図2に示すように、水平部31から撤去されても良いことはもちろんである。
【0039】
以上のように、この発明による加振装置にあっては、加振台1はともかく、加振器2とフレーム体3とを有することで、加振器2およびフレーム体3の各重心位置が決まるが、前記したように、加振器2がフレーム体3の下面側に設けられて、加振器2の重心位置がフレーム体3の重心位置より下方に位置決められる。
【0040】
このことから、加振器2を駆動して加振台1を上下方向に加振するとき、仮にフレーム体3が振動するとしても、重心が加振器2の重心より上方にあるフレーム体3は、重心が加振器2の重心より下方にある場合に比較して、簡単には振動し得ない状況になる。
【0041】
ところで、この発明による加振装置もそうであるが、凡そこの種の加振装置が利用される実際を鑑みると、その利用の際には、どこかに支持されるのは当然で、そのため、この発明による加振装置は、支持部4を有し、このとき、この支持部4と上記したフレーム体3との間に弾性体5を有してなる。
【0042】
先ず、支持部4は、上記した加振台1,加振器2およびフレーム体3を有してなる加振装置を、たとえば、床面Fなどに設置する際の脚部であったり台部であったりする。
【0043】
つまり、図1に示すところでは、支持部4は支柱からなり、この支柱は、図2に示すように、直接床面Fに起立されても良いが、図1に示すところでは、この加振装置の搬送性を向上させるために、基板たる支持板Bに起立されてなる。
【0044】
ちなみに、この支持板Bは、この加振装置が利用される際には、適宜の手段で床面Fに固定的に連結される。
【0045】
一方、弾性体5であるが、この発明にあっては、上記したように、フレーム体3と支持部4との間、つまり、図示するところでは、フレーム体3における水平部31の下面と支持体4の上端との間に設けられる。
【0046】
このとき、この弾性体5としては、基本的に任意の構成を選択でき、たとえば、エアバネからなるとしても良く、また、皿バネやコイルバネなどの金属バネからなるとしても良い。
【0047】
ちなみに、弾性体5が皿バネからなる場合には、弾性体5がコイルバネからなる場合に比較して、高さ寸法を小さくしながら強いバネ力の発揮を期待できる点で有利となる。
【0048】
以上のように支持部4とフレーム体3との間に弾性体5を有し、加振器2の重心位置が弾性体5よりも下方に設定されているため振動の増幅が抑えられ、加振器2の駆動に起因してフレーム体3が振動しても、この振動を支持部4に伝播されず、したっがて、支持部4が起立などする床面Fに伝播されない。
【0049】
そして、このことからすると、この弾性体5は、図1および図2に示すように、フレーム体3と支持部4との間に配設されることに代えて、図3に示すように、支持部4たる台部を床面Fとし、この床面Fとフレーム体3との間に配設されるとしても良いと言い得る。
【0050】
ただ、この図3に示すところにあっては、フレーム体3が床面Fのいわゆる直ぐ上に位置決められるから、このフレーム体3の下面に連結される加振器2は、床面Fに掘り下げるようにして形成されるピット部Pに収容されるのが良い。
【0051】
以上がこの発明における加振装置における構成であるが、たとえば、前記した特許文献1に開示の提案にあっても、外観上、加振器(1)がフレーム(3)下方側にあり、したがって、加振器(1)の重心位置がフレーム(3)の重心位置より低くなり、それゆえ、フレーム(3)が加振器(1)の駆動に起因して簡単には振動し得ない状況にあるとも言い得る。
【0052】
しかしながら、この特許文献1に開示の提案にあっては、フレーム(3)がこの発明における支持部4とも言い得る脚部に相当する下端側を介して床面などに直接起立されているので、仮にフレーム(3)が振動するときには、その振動が直に床面などに伝播される不具合がある。
【0053】
それに対して、この発明の加振装置にあっては、支持部4を有すると共に、この支持部4とフレーム体3との間に弾性体5を有してなるから、フレーム体3が加振器1の駆動に起因して仮に振動することがあっても、この振動を床面F側に伝播させないで済み、この加振装置を設置する周辺環境を悪化させずして現状のままに保守することが可能になる。
【0054】
すなわち、この発明の加振装置にあっては、フレーム体3の下方に支持部4が設けられるから、この支持部4を有する分フレーム体3の重心位置が高くなる。
【0055】
その一方で、この発明の加振装置にあっては、加振器2の駆動に起因してフレーム体3が振動する事態になっても、加振器2の重心位置がフレーム体3の重心位置より下方とされるから、加振器2の重心位置がフレーム体3の重心位置より上方とされる場合に比較して、フレーム体3が振動し難くなる。
【0056】
そして、この発明の加振装置にあっては、フレーム体3と支持部4との間に弾性体5が配設されるから、フレーム体3の振動を支持部4に伝えないことが可能になり、したがって、フレーム体3の質量が加振器における加振力の10倍以上とされなくても、加振器の駆動に起因する振動の影響を受けずして、この加振装置の安定を保障し易くする。
【0057】
その結果、この発明の加振装置によれば、加振器2が油圧式とされることで、加振器2が電磁式とされる場合に比較して、静的荷重を掛けることが可能になり、また、電磁ノイズの影響を危惧させずして、加振装置を利用できる点で有利となる。
【0058】
そして、この発明の加振装置によれば、フレーム体3が大きな質量を有するように大型化されず、加振装置の設置に際して広い設置面積を占有させず、また、全体重量を大きくせずして加振装置の搬送性を良くし得る点で有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
供試体に対する耐久試験や疲労試験などの利用に向く。
【符号の説明】
【0060】
1 加振台
2 加振器
3 フレーム体
3a 透孔
4 支持部
5 弾性体
21 シリンダ体
22 ロッド体
23 ブラケット
31 水平部
32 門型フレーム
B 支持板
F 床面
P ピット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体を載置させる加振台と、この加振台を上下方向に加振する加振器と、この加振器を保持するフレーム体とを有してなる加振装置において、フレーム体の下方に支持部が設けられると共に、この支持部とフレーム体との間に弾性体が配設される一方で、加振器の重心位置がフレーム体の重心位置より下方とされてなることを特徴とする加振装置。
【請求項2】
加振器の重心位置が弾性体よりも下方とされてなる請求項1に記載の加振装置。
【請求項3】
加振器がシリンダ体に対してロッド体を出没可能にする流体圧シリンダからなり、シリンダ体が軸線方向を上下方向にしながらフレーム体の下面側に保持されると共に、ロッド体が上端に加振台を連結させてなる請求項2に記載の加振装置。
【請求項4】
フレーム体が下面に加振器を保持する平板状に形成の水平部を有すると共に、この水平部に門型フレームを分離可能に連結させてなる請求項2に記載の加振装置。
【請求項5】
支持部が弾性体の下方の床面とされ、あるいは、弾性体の下方の床面に起立する支柱とされ、もしくは、弾性体の下方の床面に設置される支持板に起立する支柱とされてなる請求項2に記載の加振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−21792(P2012−21792A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157645(P2010−157645)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)