説明

加湿器

【課題】給水タンクを加熱槽に装着したまま上部から給水可能であり、加熱槽の貯留水の水位をある程度の幅で一定に調整できる加湿器を提供する。
【解決手段】下部に給水口21を有する給水タンク2と、該給水口21に取り付けられる給水口開閉弁3と、この給水口開閉弁3の開放により給水路を介して給水される加熱槽1と、この加熱槽1に供給された水を蒸発させる加熱手段Hとを有する加湿器において、上記加熱槽1に支点部材10を設けるとともに、この支点部材10にシーソー動作する連動桿4の略中央部を軸支し、連動桿4の一端に付設された押圧動作部5を給水口開閉弁3の下方に位置させ、連動桿4の他端にフロート6を連設し、上記給水口21は給水口開閉弁3を付勢して通常閉止とされるとともに、フロート6の上下移動に連動して上下動する押圧動作部5によって、給水口開閉弁3を給水タンク1内方へ開閉自在とした加湿器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は加湿器に関するものであり、詳しくは、水を加熱して蒸気を放出する加熱式加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭や会社などにおいて、応接室内や会議室内、ロビー等、室内の空気の乾燥を防ぐために加熱式加湿器や超音波式加湿器等が使用される場合が多くなっている。上記加熱式加湿器においては、通常、水を加熱する電熱ヒーター等の加熱手段と、給水路を介して水が供給され、上記加熱手段によって加熱された水を蒸気として放出する加熱槽と、放出によって失われた水を補給するための給水タンクを主要な構成要素として含んでいる。
【0003】
従来、上記加熱槽に水を補給する給水タンクは、給水口を有する給水タンクを加熱槽に向けて逆さまに装着し、蒸気として放出されて失われた加熱槽の水を、小鳥用の給水器にほぼ等しい原理によって補給する方式が知られている。
【0004】
本願図5(a)、(b)は、給水タンクの給水口を加熱槽に向けて逆さまに装着し、加熱槽に水を補給する上記従来方式による加湿器Bの構成を模式的に示す概略説明図である。図5(a)は、蒸発によって貯留水が減少した加熱槽8に給水タンク9から水を補給する状態を示す概略説明図である。
【0005】
図5(a)に示すように、水の減少によって貯留水の水位が低下し、例えば、水位81になると水封状態が解かれ、給水タンク9の給水口91から空気が進入して給水タンク9内の水と置き換わり、給水口91を経て水が加熱槽8へ供給される。そして、上記した給水により加熱槽8の水位が上昇し、給水タンク9内の圧力が大気圧とバランスすると再び水封状態となる。
【0006】
図5(b)は給水タンク9から給水口91を経て給水され、水位が上昇した状態を示す概略説明図である。図5(b)に示すように、給水によって図5(a)に示す水位81が水位82まで上昇し、給水タンク9内の圧力が大気圧とバランスすると給水口91は再び水封されて給水は停止する。
【0007】
ここで加湿器の使用を継続し、加熱槽8を加熱し続けると蒸気の放出で水位が下がって水封状態が解かれ、再び、図5(a)に示す給水状態に戻る。このように、給水タンク9からの給水、給水停止を繰り返して加熱槽8には略一定量の水が貯留される。
【0008】
しかしながら、上記従来方式の加湿器Bでは、給水タンク9の給水口91を加熱槽8に向けて逆さまに装着し、加熱槽8に水を補給する構造であるため、給水タンク9内の水を使い切ったとき、給水タンク9を加熱槽8から抜き出して給水口91を上にして水を補給し、再び給水口91を加熱槽8に向けて逆さまに装着しなければならず、水補給時の操作性が悪いという問題がある。
【0009】
上記問題点を解決するため、特開2000−283507号公報には、給水タンクに水を補給する際、給水タンクを加熱槽から抜き出すことなく、給水タンクを加熱槽に装着したまま、上部から水を供給できるタンクおよび加湿器が提案されている。
【0010】
すなわち、上記特開2000−283507号公報には、同公報の図23に示されるように、上部に開口部を有するタンク本体部、その開口部を開閉するキャップと、このキャップの閉蓋に伴って開弁される上弁体およびその上弁体の下流側で外部からの押圧によって開弁される下弁体を有してタンク本体部の下方に設けられた弁機構とを備え、この弁機構はキャップの閉蓋時にそのキャップに当接して押圧される被押圧部と、この被押圧部が受けた押圧力によって上弁体に開方向への力を作用する押圧力伝達部材と、この押圧力伝達部材に連結され上弁体を上下動する弁体操作部と、を有し、当該上弁体自体の自重によって常に閉方向に付勢されるように構成されたタンクおよび加湿器が開示されている。
【0011】
そして、上記公報に記載のタンクおよび加湿器は、従来の課題を解決したものであって、上部注水型のタンク構造とすることによって、タンクの蓋体を開いてもそのタンク下部から液体が流出しないようにできるとともに、そのタンクを装着した状態で、タンク上部から水を継ぎ足しできると、その効果が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−283507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記公報に記載のタンクおよび加湿器は、給水タンクを加熱槽に装着したまま、上部から水を供給できるという効果はあるものの構造が複雑で必ずしも経済的に有利に製造できるものとはいえない。
【0014】
本願発明は上記した状況に鑑みてなされたものであり、給水タンクを加熱槽に装着したまま、上部から水を供給できるとともに、加熱槽内の貯留水の水位をある程度の幅で一定に調整することのできる加湿器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る加湿器は、下部に給水口を有する給水タンクと、該給水口に取り付けられる給水口開閉弁と、この給水口開閉弁の開放により給水路を介して給水される加熱槽と、この加熱槽に供給された水を蒸発させる加熱手段とを有する加湿器において、上記加熱槽に支点部材を設けるとともに、この支点部材にシーソー動作する連動桿の略中央部を軸支し、連動桿の一端に付設された押圧動作部を給水口開閉弁の下方に位置させ、連動桿の他端にフロートを連設し、上記給水口は給水口開閉弁を付勢して通常閉止とされるとともに、フロートの上下移動に連動して上下動する押圧動作部によって、給水口開閉弁を給水タンク内方へ開閉自在としてなることを特徴とする。
【0016】
本願請求項2に記載の発明に係る加湿器は、本願請求項1に記載の発明に係る加湿器において、上記フロートに重錘体を着脱自在に付設してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1記載の発明に係る加湿器においては、従来技術におけるように、給水タンクを加熱槽から取り外して給水し、再び逆さまにして加熱槽に装着するという手間を省けることができる。また、加湿器使用中でも給水タンクの上部から水の補給が可能であり、加湿を途切らせることなく、加湿器を運転することができる。
【0018】
また、本願図5(a)、(b)に示した加湿器ではその使用中に万一給水タンクにクラックが発生する等した場合、その水封が解かれ大気圧によって水が加熱槽に一挙に供給され、溢れる等の事態が生じるが、本願に係る加湿器は通常閉止とされている給水口開閉弁の作用によってそのような事態の発生を防ぐことができる。
【0019】
本願請求項2記載の発明に係る加湿器においては、上記フロートに重錘体が着脱自在に付設されているため、給水タンクから加熱槽への水の給水回数(給水頻度)を、重さの異なる重錘体と取り換えることによって調整できる。従って、加熱槽の水位の上下方向の変化範囲を希望する値に調整でき、又、給水1回分の水蒸発量を調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明に係る加湿器の加熱槽と給水タンクとを別個に、一部を破断して示す断面斜視図。
【図2】本願第1実施形態に係る加湿器の動作を模式的に示す概略断面説明図。
【図3】本願第2実施形態に係る加湿器の動作を模式的に示す概略断面説明図。
【図4】本願第2実施形態に係る加湿器の一部を破断して示す断面斜視図。
【図5】(a)は従来方式に係る加湿器において貯留水が減少した加熱槽に給水タンクから水を補給する状態を示す概略説明図、(b)は従来方式に係る加湿器において給水タンクから給水口を経て給水され、水位が上昇した状態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明に係る加湿器の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、上記加湿器の加熱槽1と給水タンク2とを、その一部を破断して示す断面説明図である。加熱槽1には給水タンク2が着脱自在に取り付けられ、この給水タンク2の下部には給水口21が設けられている。
【0022】
上記給水口21は給水口開閉弁3によって開閉自在とされ、この給水口開閉弁3は、上弁体31と下弁体33とを備えるとともに、通常、給水口開閉弁3をバネ32で付勢することにより、上弁体31と下弁体33とが給水口21を閉止するように組み付けられている。
【0023】
上記加熱槽1には、支点部材10が設けられ、この支点部材10は、給水連動桿41とフロート連動桿42とを連接してなる連動桿4の略中央部を軸支し、上記給水連動桿41とフロート連動桿42とはシーソー動作をする。さらに、上記給水連動桿41の端部には押圧動作部5が設けられるとともに、フロート連動桿42の端部には加熱槽1内の水位によって上下するフロート6が連設されている。
【0024】
上記押圧動作部5は、給水タンク2を加熱槽1に取り付けたとき、上記給水口開閉弁3の下弁体33の下方に位置するように配設されている。そして、上記給水連動桿41とフロート連動桿42とのシーソー動作によって上記フロート6が上方に移動するとその動作に連動して押圧動作部5は下方に移動し、フロート6が下方に移動するとその動作に連動して押圧動作部5は上方に移動する。即ち、フロート6の上下動方向と押圧動作部5の上下動方向とは逆方向になる。
【0025】
図2は、本願第1実施形態に係る加湿器の動作を模式的に示す説明図である。図2に示すように、上記第1実施形態においては、加熱槽1内の水Wの水位によって上下するフロート6には後記する重錘体7は付設されていない。
【0026】
図2に示す状態においては、加熱槽1には十分な水Wが貯留されているため、フロート6は水位L1からやや上方に突出した位置にあり、給水連動桿41の端部に設けられた押圧動作部5は給水口開閉弁3の下方で下弁体33と接触しない位置にある。ここで、バネ32で付勢された給水口開閉弁3は、その上弁体31が給水口21の給水部211を閉止し、下弁体33と協働して加熱槽1への給水を停止状態に保つ。なお、図2において、符号Hは加熱槽1を加熱するための電熱ヒーター等の過熱手段を示す。この加熱手段Hが過熱槽1内の水を加熱し水蒸気を発生させ加湿器が設置された室内を加湿する。
【0027】
図3は、本願第2実施形態に係る加湿器の動作を模式的に示す説明図である。図3に示すように、上記第2実施形態においては、加熱槽1内の水Wの水位によって上下するフロート6には重錘体7が着脱自在に付設され、重錘体7が設けられたフロート6の上下動によって給水連動桿41の端部に設けられた押圧動作部5は動作する。
【0028】
ここで、加熱手段Hに所定の電圧を供給すると所定の熱エネルギーが加熱槽に与えられ、水Wから水蒸気が放出される。所定の電圧で加湿器の使用を継続すると水Wからの水蒸気の放出によって上記図2に示した水位L1は下がり、水位の低下と共にフロート6と重錘体7の位置は下降する。図3に、上記水位がL2に下降したときの給水連動桿41とフロート連動桿42との位置関係を示す。
【0029】
図3に示すように、フロート6が重錘体7と共に水位L2の位置に下降すると給水連動桿41はシーソー動作で上がり、その端部に設けられた押圧動作部5は上方に移動して給水口開閉弁3の下弁体33を押し上げる。ここでバネ32の付勢よりも大きな押圧力が上記押圧動作部5に働くと、下弁体33は上がり、上弁体31も持ち上げられて給水部211は開放され、給水口21を経由して給水タンク2から加熱槽1に給水される。
【0030】
図3に示した状態は、加熱槽1内の水Wの水位が当初設計された所定の水位、言い換えれば、給水口開閉弁3が閉じられた状態で予め決められた所定の量の水Wが加熱槽1に給水され且つ水Wが蒸発する前の所定の水位(例えば図2における水位L1)、の状態(以下この状態を初期状態という)から一定量の水Wが蒸発してその水位L2が下った状態を示している。
【0031】
一方、加熱槽1内の水Wの水位からフロート6が上方にどの程度突出するかは、フロート6の重さと体積によって決定される。フロート6には重錘体7が付設されているから、フロート6の水Wからの上方向の突出量は重錘体7の重量を変えることによって調節できる。このフロート6の上記突出量は水Wの水位が下がっても略一定である。
【0032】
また、上記初期状態において、連動桿4の一方の給水連動桿41の端部に設けた押圧動作部5と給水開閉弁3の下弁体33との間の距離はフロート6の上記突出量によって決定される。従って、初期状態から押圧動作部5が給水開閉弁3の下弁体33を押し上げて給水口開閉弁を開くまでに必要な水Wの蒸発量は、重錘体7の重量を変えることにより調節できる。言い換えれば、水Wの蒸発量が一定の場合、給水タンク2から加熱槽1への水Wの単位時間当たりの給水回数を、重さの異なる重錘体7と取り換えることによって調整できる。従って、加熱槽1の水位の上下方向の変化範囲を希望する値に調整できる。
【0033】
図4は、上記第2実施形態に係る加湿器Aの一部を破断して示す断面説明図である。図4において、フロート6には重錘体7が付設されているが、この重錘体7の比重を調節することによって、上記の如く、給水タンク2から加熱槽1への水の補給間隔を所望の時間に調節することができる。
【0034】
また、上記第1実施形態、第2実施形態共に、給水タンク2への水の補給がその上部から可能であり、従来技術において述べたように、給水タンクを加熱槽から取り外して給水し、再び逆さまにして加熱槽に装着するという手間を省けることができる。さらに、従来技術においては、加湿器使用中に万一給水タンクにクラックが発生する等したときは、大気圧によって水が加熱槽に一挙に供給され、溢れる等の事態が生じるが、本願発明に係る加湿器においては、給水口開閉弁3の作用によってそのような事態の発生を防ぐことができる。
【0035】
なお、上記した実施形態は加熱手段Hを伝熱ヒーターとした加湿器を例にとって説明したが、超音波式加湿器にも適用できる。このように本願発明に係る加湿器は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0036】
A 本願第2実施形態に係る加湿器
B 従来方式による加湿器
H 加熱手段
W 水
L1 加熱槽に十分な水が貯留されているときの水位
L2 蒸気の放出によって低下したときの加熱槽の水位
1 加熱槽
2 給水タンク
21 給水口
211 給水部
3 給水口開閉弁
31 上弁体
32 バネ
33 下弁体
4 連動桿
41 給水連動桿
42 フロート連動桿
5 押圧動作部
6 フロート
7 重錘体
8 従来技術における加熱槽
81 水の減少によって低下したときの加熱槽の水位
82 給水で上昇して再び水封状態となったときの加熱槽の水位
9 従来技術における給水タンク
91 給水タンクの給水口
10 支点部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に給水口を有する給水タンクと、該給水口に取り付けられる給水口開閉弁と、この給水口開閉弁の開放により給水路を介して給水される加熱槽と、この加熱槽に供給された水を蒸発させる加熱手段とを有する加湿器において、上記加熱槽に支点部材を設けるとともに、この支点部材にシーソー動作する連動桿の略中央部を軸支し、連動桿の一端に付設された押圧動作部を給水口開閉弁の下方に位置させ、連動桿の他端にフロートを連設し、上記給水口は給水口開閉弁を付勢して通常閉止とされるとともに、フロートの上下移動に連動して上下動する押圧動作部によって、給水口開閉弁を給水タンク内方へ開閉自在としてなる加湿器。
【請求項2】
上記フロートに重錘体を着脱自在に付設してなる本願請求項1に記載の加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2797(P2013−2797A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137908(P2011−137908)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】