説明

加熱装置

【課題】燃焼室の外周面に設けられるフィンへの熱伝導率を高め、燃費の向上を図ることが可能な経済性の高い加熱装置を提供する。
【解決手段】熱媒水を収容する缶体内にバーナ装置を設けた燃焼室を形成し、この燃焼室の外周面に複数の放熱フィンを突設した伝熱板を巻着した加熱装置において、伝熱板は、金属板表面に複数の放熱フィンを接合した後、溶融アルミニウムめっきを施して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関し、詳しくは施設園芸用ハウスや工場内の暖房、あるいは食品の乾燥などに用いることができる加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施設園芸用ハウスや工場内を暖房するのには比較的小型の加熱装置が用いられており、一般に、かかる加熱装置として、バーナを用いて水や空気などの熱媒体を加熱する燃焼室を備えたものが用いられている。
【0003】
このように、バーナを用いた燃焼熱によって熱源となる熱媒体を加熱するのであるが、本出願人は、効率よく熱媒体を加熱できるように、燃焼室を構成する壁体の外周面に放熱フィンを複数設けた加熱装置(温風送風機)を提案した(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3138730号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1をはじめ、放熱フィンを設ける場合、かかる放熱フィンを前記壁体の外周面に重ね合わせて着脱自在に装着可能とした基板に接合することが考えられる。
【0006】
しかし、かかる構成では、基板と燃焼室の壁体との間に、どうしても隙間が生じてしまうため、所望する熱伝導率を得られないことがあった。市場からは、燃費を抑えることが可能な、より経済性の高い加熱装置が常に求められているため、放熱フィンへの熱伝導率を高めることが大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)熱媒体を収容する缶体内にバーナ装置を設けた燃焼室を形成し、この燃焼室の外周面に複数の放熱フィンを突設した伝熱板を巻着した加熱装置において、前記伝熱板は、金属板表面に複数の放熱フィンを接合した後、溶融アルミニウムめっきを施して形成した。
【0008】
(2)上記(1)の加熱装置において、前記燃焼室に一端を連通連結する一方、他端を当該缶体外部に伸延させた煙道を前記熱媒体と接するように配設し、前記燃焼室に加え、当該煙道の外周面にも前記伝熱板を巻着したことを特徴とする。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の加熱装置において、前記伝熱体の金属板と放熱フィンとの接合を、スポット溶接による接合としたことを特徴とする。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)に記載の加熱装置において、前記煙道内に溶融アルミニウムめっきを施したスパイラル形状の伝熱体を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面に放熱フィンとなる複数の金属片を接合した伝熱板を、溶融アルミニウムめっきを施すと、伝熱板の金属片との接合部位の裏面が、金属片の熱膨張によって膨出変形する。このため、伝熱板を燃焼室の外周面に巻着すると、金属片の真裏部分で膨出している変形部分が確実に燃焼室の外周面と接触して熱伝導効率が向上し、熱媒体を効果的に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る温水ボイラの内部構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の温水ボイラの正面の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の伝熱板の構成を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態の伝熱板の巻着状態を説明する略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の伝熱板の巻着状態を説明する斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態の金属材料毎の熱伝導率のデータを説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態の伝熱板の熱伝導効率の差異を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態の伝熱板の変形例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態に係る加熱装置は、熱媒体を収容する缶体内にバーナ装置を設けた燃焼室を形成し、この燃焼室の外周面に複数のフィンを突設した伝熱板を巻着しており、しかも、前記伝熱板は、金属板表面に複数のフィンを接合した後、溶融アルミニウムめっきを施して形成している。
【0014】
また、前記バーナ装置には、吸気装置及び点火装置が設置されており、バーナ装置に付設された燃料噴射ノズルが燃焼室の一端から水平方向に挿入される構成としている。そして、燃料噴射ノズルの先端から吸気装置により燃焼に充分な空気が混合された混合燃料が噴射され、噴射と同時に点火装置により混合燃料が点火されて、燃焼室内で混合燃料が燃焼して燃焼室外周の熱媒体が加熱される。
【0015】
この時、燃焼室が有する熱は、燃焼室の外周面に巻着された伝熱板に設けられた複数の放熱フィンに伝わるため、周囲の熱媒体との伝熱面積が広がることになり、より効率良く周囲の熱媒体を加熱することが可能となる。さらに、この伝熱板は、例えば鉄などの金属板表面に複数の放熱フィンを接合した後、鉄などよりも熱伝導率の高い溶融アルミニウムめっきを施して形成されているので、周囲の熱媒体との熱伝導効率が良くなり、混合燃料の消費を抑えた省エネ効果の高い加熱装置とすることができる。
【0016】
また、前記燃焼室に一端を連通連結する一方、他端を当該缶体外部に伸延させたた煙道を前記熱媒体と接するように配設し、前記燃焼室に加え、当該煙道の外周面にも前記伝熱板を巻着することもできる。
【0017】
これにより、燃焼室で発生した排気ガスは、前記煙道を通過して加熱装置の外部に排気されることになるが、本実施形態においては、前記煙道は前記熱媒体と接するように配設されているため、煙道外周の熱媒体も加熱することができる。さらに、煙道内の外周面にも溶融アルミニウムめっきを施した前記伝熱板を巻着することで、前記煙道の周囲の熱媒体との熱伝導効率が良くなり、混合燃料の消費を抑えた省エネ効果の高い加熱装置とすることができる。
【0018】
また、前記伝熱体の金属板とフィンとの接合は、スポット溶接による接合とすることが好ましい。これにより、前記伝熱体の表面に複数の放熱フィンを突設させる加工を行う場合の作業工程を縮小し、作業時間の短縮を図ることができる。
【0019】
また、前記煙道内に溶融アルミニウムめっきを施したスパイラル状の伝熱体を配設することもできる。この伝熱体も、例えば、素材には鉄などの金属が用いられ、この鉄よりも熱伝導率の高い溶融アルミニウムめっきが施された伝熱体を、前記煙道内に配設することにより、排気ガスの熱を煙道の外周面に巻着された伝熱板に効果的に伝導させる構成とすることができる。
【0020】
すなわち、排気ガスが有する熱を、煙道を介して熱媒体に伝えるために、排気ガスを単に煙道内に滞留させただけでは、排気効率が低下して燃焼室の燃焼効率を低下させてしまう可能性がある。そこで、溶融アルミニウムめっきを施したスパイラル形状の伝熱体とすることにより、排気ガスの排出には何ら支障なく排気ガスが有する熱を効率良く煙道に巻着された伝熱板に伝えることを可能とし、さらに、高温酸性の排気ガスによる伝熱体への耐食性及び耐熱性を高めている。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では加熱装置を、熱媒体として水(以下、熱媒水Wという)を用いた温水ボイラとして説明する。また、加熱装置(温水ボイラ)は施設園芸用ハウスや工場内で好適に使用できるものであるが、暖房が必要な場所であれば如何なる場所にも設置できる。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る温水ボイラ10(加熱装置)の内部構成を示す側断面図、図2は図1に示す温水ボイラ10(加熱装置)のA−A断面図である。
【0023】
図示するように、本実施形態に係る温水ボイラ10は、内部に熱媒水Wを収容する缶体1を備えている。そして、この缶体1内に、バーナ装置3が臨設された耐熱性金属(例えば、ステンレス(SUS304))からなる燃焼室2を設けるとともに、この燃焼室2に一端を連通連結する一方、他端を当該缶体1の外部に伸延させた煙道4を配設している。
【0024】
そして、燃焼室2及び煙道4の熱媒水Wと接触する外周面には、複数の放熱フィン6eを突設した伝熱板6が巻着されている。このように構成することにより、燃焼室2及び煙道4の外周面に設けられた伝熱板6及び伝熱板6に突設された複数の放熱フィン6eと熱媒水Wとが接することになる。
【0025】
また、詳しくは後述するが、伝熱板6は鉄板などに溶融アルミニウムめっきが施されて形成されている。このように鉄よりも熱伝導率の高いアルミニウムをめっきしたことにより、伝熱板6及び伝熱板6に突設された複数の放熱フィン6eと熱媒水Wとの熱伝導の効率を高めることができる。
【0026】
燃焼室2は、水平方向を長手方向とする円筒形状としており、長手方向一側端壁21にバーナ装置3、そして、その上部位置にメンテナンス用の第2点検口25を設けている。また、長手方向の他側端壁22の上部位置にはメンテナンス用の点検口23を設けている。
【0027】
バーナ装置3は、燃料噴射ノズル31を備えており、この燃料噴射ノズル31の先端が燃焼室2内に臨むように、燃焼室2の一側端壁21から水平方向に挿入されている。バーナ装置3には、吸気装置(図示せず)及び点火装置(図示せず)が付設されており、燃料噴射ノズル31の先端から吸気装置により燃焼に充分な空気が混合された混合燃料が噴射され、噴射と同時に点火装置により混合燃料が点火されて、燃焼室2内で混合燃料が燃焼することとなる。
【0028】
また、煙道4は2本配設されている。各煙道4は、それぞれ缶体1内において、各煙道4の外周面に巻着された伝熱板6が熱媒水Wと接するように、燃焼室2の上方に所定間隔離隔した位置に配置され、上記燃焼室2と同様に水平方向を長手方向とする円筒形状としている。そして、かかる2本の煙道4は、点検口23及び第2点検口25と対向する位置で、燃焼室2の下流側上部と一端を連通連結するとともに、他端を、燃焼室2の一側端壁21側から上方へ伸延して缶体1の外部と連通した煙突12の基端と接続している。なお、本実施形態においては、煙道4と煙突12とを別体として形成するようにしたが、例えば、煙道4と煙突12とを別体とせずに、水平に伸延した煙道4の他端側を上方に略90度屈曲させて煙突12を形成してもよい。
【0029】
また、缶体1の底壁13には、熱媒水Wを循環させるための循環ポンプPが中途に設けられた循環パイプ5の一端と、加熱された熱媒水Wを送湯する送湯パイプ8の一端とが連通連結されている。
【0030】
なお、底壁13の燃料噴射ノズル31の先端直下位置に吸気孔14を形成して、燃料噴射ノズル31からの噴射気流に引き寄せられて外気が吸気孔から導入されるようにして、噴射燃料の完全燃焼を促進する構成としている。
【0031】
また、本実施形態に係る温水ボイラ10は、後述する温度センサ17により熱媒水Wの温度を検知して所定温度に維持する温度制御部(図示せず)と、熱媒水Wの水量を検知して所定水位に維持する水量制御部(図示せず)、各制御部と電気的に接続された操作パネル(図示せず)などを備えている。
【0032】
上記構成の温水ボイラ10が稼動して燃焼室2が加熱されると、缶体1に補充されている熱媒水Wのうち、まず燃焼室2の外周面に巻着された伝熱板6及び伝熱板6に突設された複数の放熱フィン6eと接触している熱媒水Wが熱交換により加熱される。そして、循環ポンプPの作動により、燃焼室2の周辺の加熱された熱媒水Wが、循環パイプ5から吸い上げられることにより、燃焼室2の上方のまだ加熱されていない熱媒水Wが、燃焼室2の周辺を経由して加熱されながら缶体1の下方に移動する。一方、循環パイプ5から吸い上げられた熱媒水Wは、温水ボイラ10の上部に設けられた供給口9から再度缶体1に補充される。つまり、図2に示すように、温水ボイラ10の稼働中は、缶体1に充填されている熱媒水Wは、上方から下方に循環しながら全体的に温められていくことになる。
【0033】
このとき、図示するように、円筒形状の燃焼室2及び煙道4の外周面に巻着された伝熱板6には、放熱フィン6eが放射状に複数列突設されており、かかる放熱フィン6eを熱媒水Wと接触させることで熱交換効率を向上させている。
【0034】
すなわち、本実施形態では、燃焼室2の周辺で熱媒水Wが熱交換されるだけではなく、燃焼室2の上部の煙道4を通過する燃焼室2からの排気ガスが有する熱も、煙道4を介して熱媒水Wに伝達される構成として、熱媒水Wの加熱効率を高めている。
【0035】
しかも、放熱フィン6eは、図示するように、平面視略く字状(V字状)に形成し、熱媒水Wの対流方向に対し、適宜の抵抗を付与しつつ十分に接触できるように形成されている。したがって、煙道4の周辺の熱媒水Wは、上述した燃焼室2の外周の熱媒水Wと同様に、煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び伝熱板6に複数突設された放熱フィン6eと接触し、排気ガスが有する熱を効率よく熱媒水Wと熱交換して加熱することができる。
【0036】
また、缶体1の水面11にはフロートスイッチ16が配置されて、このフロートスイッチ16は、上記水量制御部に接続されている。このフロートスイッチ16が水位低下を検知すると、その信号が水量制御部に伝達され、水量制御部が循環ポンプPを作動させて新たな熱媒水Wの補充を行う。
【0037】
すなわち、本実施形態における循環ポンプPは、水量制御部からの制御により、新たな熱媒水Wを供給口9から補充するための機能も備えたものである。このとき、循環ポンプPによる熱媒水Wの循環は停止することになるが、この熱媒水Wの循環を作動させた状態で、同時に熱媒水Wの補充を行う構成とすることも可能である。
【0038】
缶体1の上部には熱媒水Wの温度を計測するための温度センサ17が配置されている。この温度センサ17は温度制御部に接続されている。この温度センサ17が熱媒水Wの温度が所定温度以上であることを検知すると、その信号が温度制御部に伝達され、温度制御部がバーナ装置3の稼働を停止させる。なお、温度センサ17の設定位置は、缶体1に補充された熱媒水Wの全体の温度を計測するために、上部の加熱された熱媒水Wの供給口9と下部の加熱部(つまり、燃焼室2及び煙道4)とのおよそ中間の位置として、上部から下部へ循環する熱媒水Wの、平均温度を計測するようにしている。
【0039】
そして、缶体1の熱媒水Wの温度が所定温度以上になった場合は、缶体1の底壁13に設けられた、加熱された熱媒水を送湯する送湯パイプ8から温水ボイラ10の外部に供給されることになる。なお、本実施形態においては、缶体1から送湯された分の熱媒水Wは、上述したように供給口9から新たに補充されて、缶体1内の熱媒水Wの量は常に一定の範囲内で確保され、缶体1内部の熱媒水Wの温度はバーナ装置3の入切により自動的に制御されている。
【0040】
また、前記燃焼室2の基部にはバーナ装置3が配置され、このバーナ装置3の燃料噴射ノズル31が筒端中心の下側から燃焼室2に挿入されている。この燃料噴射ノズル31は水平方向に挿入され、燃料噴射ノズル31からは燃料と空気を混合した液体燃料が噴射される。これらの液体燃料は重油、灯油、軽油等の液体化石燃料を使用することができ、液体燃料を、空気と混合して霧状とし、圧力を掛けて噴射する。なお、燃料噴射ノズル31には点火装置も付加されており、燃料噴射ノズル31から液体燃料が噴射されると同時に、自動的に点火装置が作動して、液体燃料は点火されることになる。
【0041】
燃料噴射ノズル31の噴射孔の下方には、燃焼室2及び缶体1を貫通して温水ボイラ10の外部に通じる吸気孔14が形成されており、バーナ装置3が稼働すると、燃焼空気の噴流に周囲の気体が吸引され、この吸引流により吸気孔14から外気が吸入されることにより、外気が火炎を下から吹き上げるように燃焼空気と合流するため、噴霧燃料は、下から吹き上げられて燃焼室2内に広がり、燃料が未燃焼のまま落下するのを防止して、噴霧燃料を完全燃焼させる構成としている。しかし、この吸気孔14は特になくても構わない。
【0042】
なお、吸気孔14を形成する場合は、バーナ装置3の燃料噴射ノズル31は、燃焼室2の内径の4分の1の高さから挿入され、燃焼室内には十数cmの燃料噴射ノズルを突起させて、燃料噴射ノズルの噴射孔の直下に吸気孔14を1個形成するとよい。なお、この場合は、吸気孔14の位置、大きさ・形状はバーナ装置3の出力にも関係するが、噴霧燃料を下から吹き上げられるように作用する部位であれば任意であり、噴射火炎の基部または噴射火炎の中央部分に相当する位置の直下に形成することも可能である。
【0043】
そして、燃焼ガスは燃焼室2の奥に接続された2本の煙道4を通過して燃焼気流に流されて煙突12から温水ボイラ10の外部に、排気ガスとして自然排気される。このとき、2本の煙道4の内部には、図示するように伝熱体7が配設されている。
【0044】
この伝熱体7は、スパイラル形状の羽根部7aを有し、燃焼室2から排出される排気ガスは、この羽根部7aと衝突して通過速度が減衰され、渦巻き状に回転しながら通過することになる。これにより、排気ガスが有する熱を効率よく羽根部7aから吸収して、煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び放熱フィン6eに伝導する構成としている。なお、この伝熱体7の羽根部7aの形状等は、排気ガスの通過速度が著しく減衰しないように設計されている。つまり、排気ガスの通過速度が減衰することで、燃焼室2において不完全燃焼が発生しないようにしている。
【0045】
また、鉄などの素材で形成された伝熱体7には、熱伝導効率を高めるために溶融アルミニウムめっきが施されている。このように、素材としての鉄よりも熱伝導効率の高いアルミニウムによりメッキを施すことで、排気ガスの熱を効率よく羽根部7aから吸収して煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び放熱フィン6eに伝導することができる。また、溶融アルミニウムめっきを施された伝熱体7は、耐食性や耐熱性が向上するため、長時間酸性の高温な排気ガスと接触しても、錆や熱による変形などが生じることを防止することができる。
【0046】
こうして、伝熱体7の羽根部7aから吸収されたに熱は、さらに、羽根部7aに外接する煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び当該伝熱板6に複数突設された放熱フィン6eに伝えられて、煙道4の外周の熱媒水Wと熱交換されて、熱媒水Wを過熱することとなる。
【0047】
また、図1に示すように、本実施形態においては、前述したように、側端壁22の上部位置にはメンテナンス用の点検口23を設けられ、この点検口23にビス24a、24aで取り付けられている点検カバー24を外すことにより、伝熱体7を外部に取り出すことを可能としている。
【0048】
これにより、煙道4及び伝熱体7のメンテナンスや清掃を容易に行なえるようにして、排気ガスの通過により煙道4及び伝熱体7に付着した液体燃料の燃焼により生じる煤等を除去することにより、煙道4を自然排気される排気ガスの通過を一定の速度に保つことができ、燃焼室2内での噴霧燃料の不完全燃焼を防止することが可能となる。なお、本実施形態においては、煙道4及び伝熱体7のメンテナンスや清掃を容易に行えるように、点検口23を設けたが、この点検口23は、燃焼室2の内部に付着した煤等を除去するための清掃口として用いることもできる。
【0049】
また、本実施形態における伝熱体7には、図示するようにその中心軸の両端に引き出し部7b、7bが設けられ、この引き出し部7b、7bを引っ張ることにより煙道4からの抜き出しを容易としている。
【0050】
さらに、本実施形態においては、側端壁22の点検口23に対向する位置にも第2点検口25が設けられている。そして、点検口23と同様に、この第2点検口25にビス26a、26aで取り付けられている第2点検カバー26を外すことにより、第2点検口25側からも、伝熱体7を外部に取り出すことを可能として、温水ボイラ10の設置状況に応じて、煙道4及び伝熱体7のメンテナンスや清掃が容易に行なえるようにしている。
【0051】
ここで、図3を用いて、温水ボイラ10の缶体1における燃焼室2及び煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び当該伝熱板6に複数突設された放熱フィン6eの構成について説明する。
【0052】
まず、図3を用いて、燃焼室2の外周面に巻着された伝熱板6及び伝熱板6に複数突設された放熱フィン6eの構成について説明する。なお、以下においては、放熱フィン6eが突設された伝熱板6の一方の面を表面6a、伝熱板6を燃焼室2に巻着するときに、燃焼室2の外周面と接触する他方の面を裏面6bとして説明する。
【0053】
伝熱板6は、例えば、幅H1は200mm、長さL1は2502mm、厚みD1は1mmの長方形の鉄(Fe)製の金属板である。この伝熱板6の表面6aには、一列7枚、合計24列の放熱フィン6eが突設される。つまり、一枚の伝熱板6は、合計7×24=168(枚)の放熱フィン6eを有している。
【0054】
一枚の放熱フィン6eは、幅H2は35mm、長さL2は80mm、厚みD2は1mmの中心を折り曲げてV字状に形成された長方形の金属板であり、やはり鉄(Fe)製としている。そして、図3(b)に示すように、一枚の放熱フィン6eは、合計6箇所の接合部6cでスポット溶接されて伝熱板6の表面6aに垂直に接合されている。
【0055】
このように、一枚の放熱フィン6eの形状をV字状とし、なおかつ、スポット溶接により伝熱板6の表面6aに突設することで、複数の放熱フィン6eを垂直に突設させる加工の作業工程を縮小でき、作業時間の短縮を図ることができる。
【0056】
伝熱板6の表面6aに放熱フィン6eを突設させた後、本実施形態においては、この伝熱板6に対して溶融アルミニウムめっきを施す。この溶融アルミニウムめっきとは、アルミニウム(Al:純度99.7%)を、約670〜720℃で溶融した中に、伝熱板6を所定時間浸漬して、伝熱板6の母材となる鉄の金属板の上に鉄とアルミニウムの合金層、アルミニウムの層、酸化アルミ層を被覆させる複合メッキである。
【0057】
すなわち、伝熱板6に溶融アルミニウムめっきを施すことにより、伝熱板6及び放熱フィン6eは、母材としての鉄の金属板の層を中心として、鉄とアルミニウムとの合金層、アルミニウムの層、という順番で各層が形成され、表面は酸化アルミニウムの膜で覆われる。つまり、伝熱板6及び放熱フィン6eの素材である鉄の金属板は、鉄とアルミニウムとの合金層、アルミニウムの層、そして、酸化アルミニウムの膜の順でサンドイッチ状に被覆される。
【0058】
伝熱板6及び放熱フィン6eの素材である鉄は、基本的に耐食性に劣る。しかしながら、上述したように伝熱板6に溶融アルミニウムめっきを施すことにより、耐食性のみならず耐熱性も向上するため、例えば、放熱フィン6eにより熱媒水Wが高温に加熱された場合でも熱変形を生じることがない。
【0059】
また、アルミニウムは、伝熱板6及び放熱フィン6eの素材である鉄よりも熱伝導率が高いため、伝熱板6及び放熱フィン6eの表面に形成されたアルミニウムから周囲の熱媒水Wに効率よく熱を伝導することができる。
【0060】
すなわち、溶融アルミニウムめっきを施された伝熱板6及び放熱フィン6eは、上述したように、鉄の金属板を中心として、鉄とアルミニウムとの合金層、アルミニウムの層、そして、酸化アルミニウムの膜の順でサンドイッチ上に被覆されるので、周囲の熱媒水Wへは表面のアルミニウムの層が効率よく熱を伝導し、熱媒水Wに熱を伝導して冷却された表面のアルミニウムの層には、中心の鉄に蓄えられた熱が順次伝導されて、周囲の熱媒水Wに効率よく熱を伝導することができる。
【0061】
また、煙道4の外周面に巻着される伝熱板6は、燃焼室2の外周面に巻着される伝熱板6のサイズと比較して、幅や長さが異なり、また、突設される放熱フィン6eの枚数が異なるが、その製造工程及び材質は同一である。そして、溶融アルミニウムめっきも同様に施される。
【0062】
このように、伝熱板6及び放熱フィン6eに溶融アルミニウムめっきを施すことにより、燃焼室2及び煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び放熱フィン6eは、燃焼室2及び煙道4の外周面から伝導した、燃焼室2内のバーナ装置3による燃焼熱や煙道4内を通過する高温の排気ガスの熱を、周辺の熱媒水Wに効率よく伝導することができるので、燃費の向上を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、2つの煙道4の内部にそれぞれ設置される伝熱体7にも溶融アルミニウムめっきが施される。伝熱体7は、溶融アルミニウムめっきを施されることにより、排気ガスの熱をより効率よく吸収して、煙道4の外周面に巻着された伝熱板6及び放熱フィン6eに熱を伝導することができる。
【0064】
また、伝熱体7は、上記伝熱板6及び放熱フィン6eと同様に素材には鉄が用いられる。このように、基本的に耐食性に劣る鉄を素材として用いても、溶融アルミニウムめっきを施すことで、耐食性や耐熱性が向上するため、長時間酸性の高温な排気ガスと接触しても、錆や熱による変形などが生じることを防止できる。
【0065】
また、煙突12から最終的に温水ボイラ10の外部に排出される排気ガスの排気温度も、煙道4に設置された伝熱体7にその熱量を伝導することで下げることができる。これにより、昨今地球環境の温暖化が問題視される中で、温暖化対策にも繋がることになり、地球環境にも配慮した温水ボイラ10を提供することができる。
【0066】
上述した溶融アルミニウムめっきには、アルミニウムの付着量に応じて段階的に3種類があり、1種(耐候性を目的とする)、2種(耐食性を目的とする)、3種(耐熱性を目的とする)に分類される。そして、1種より2種、2種より3種の方がアルミニウムの付着量が多くなる。
【0067】
燃焼室2及び煙道4の外周面に巻着された伝熱板6に施された溶融アルミニウムめっきの種類は、上記3種類のうち、加熱される熱媒体(例えば、水、油、空気)の種類に応じて、例えば、本実施形態のように熱媒水Wを使用する場合は最低でも2種の溶融アルミニウムめっきが施され、また、煙道4の内部に設置されたスパイラル形状の伝熱体7に施された溶融アルミニウムめっきの種類は、高温の排気ガスに耐えられるように3種の溶融アルミニウムめっきが施されることが望ましい。つまり、熱媒体の種類及び燃焼室2から排出される排気ガスとの温度に応じて、適宜必要な種類の溶融アルミニウムめっきが施される。
【0068】
以下、図4及び図5を用いて、上述した溶融アルミニウムめっきが施された後の伝熱板6の燃焼室2及び煙道4の外周面への巻着について説明する。
【0069】
図4(a)に示すように、伝熱板6に溶融アルミニウムめっきを施すときに、高温のアルミニウム(約670〜720℃)の溶液に伝熱板6を所定時間浸漬することで、放熱フィン6eの熱膨張により、伝熱板6の表面6aの放熱フィン6eを突設した箇所の裏面6bが膨出変形して凸部6dが形成される。
【0070】
従来、伝熱板6を燃焼室2の外周面2aに巻着させる場合は、巻着バンド(図示せず)等を用いて当該巻着バンドを締付けることで、燃焼室2の外周面2aに伝熱板6の裏面6bをできるだけ密着するように巻着させていた。ところが、いかに薄板(例えば、厚み1mm)の伝熱板6であっても、ステンレス(例えば、SUS304)などで構成された燃焼室2の外周面2aに完全に密着させることは困難であった。そのため、巻着させるときに、伝熱板6と燃焼室2の外周面2aとの間に隙間などが生じると、燃焼室2の外周面2aから伝熱板6への熱伝導効率が下がってしまう。
【0071】
ところが、本実施形態においては、図4(b)に示すように、伝熱板6の表面6aの放熱フィン6eを突設した箇所の裏面6bに形成された凸部6dが、燃焼室2の外周面2aに接するため、燃焼室2の外周面2aに接した凸部6dから伝熱板6の表面6aの放熱フィン6eへ効率よく燃焼室2内の燃焼熱を伝導させることできる。
【0072】
すなわち、本実施形態における伝熱板6は、従来のように伝熱板6と燃焼室2の外周面2aと伝熱板6の裏面とを隙間なく巻着させる必要がない。つまり、燃焼室2の外周面2aが伝熱板6の裏面6bに形成された凸部6dと接触するように巻着させるだけでよいので、伝熱板6の巻着に精密な作業を必要としない。
【0073】
なお、図5では、燃焼室2の外周面2aに一枚の伝熱板6を巻着させた状態を示しているが、実際には、燃焼室2の外周面2aの長手方向のサイズに合わせて、複数枚の伝熱板6を連続して巻着させることができる。これにより、燃焼室2内の燃焼熱を外周面2aから伝熱板6へより多く伝導させることができるので、伝熱板6の表面に突設された放熱フィン6eから周囲の熱媒水Wへ効率よく熱を伝導して加熱することができる。
【0074】
さらに、上述したように、伝熱板6には溶融アルミニウムめっきが施されているため、燃焼室2の外周面2aから伝熱板6の表面の放熱フィン6eへ伝導した燃焼室2内の燃焼熱は、さらに効率よく周辺の熱媒水Wとの熱伝導を行うことができる。また、煙道4に伝熱板6を巻着させる場合においても、燃焼室2の外周面2aに伝熱板6を巻着させる場合と同じであるため、同様な熱伝導効率の向上を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態においては、伝熱板6、放熱フィン6e及び伝熱体7の素材として鉄(Fe)を用いることで、伝熱板6、放熱フィン6e及び伝熱体7の素材として耐熱性金属のステンレス(SUS304)を用いるよりも熱伝導率を高めることができる。これは金属材料毎に熱伝導率が異なることに起因する。図6に示すように、ステンレスの熱伝導率(0.039)よりも鉄(Fe)の熱伝導率(0.150)が高く、鉄(Fe)の熱伝導率(0.150)よりもアルミニウム(Al)の熱伝導率(0.490)が高い。つまり、溶融アルミニウムめっきを施した場合、素材である鉄とアルミニウムの組合せの方が、ステンレスとアルミニウムの組合せよりも熱伝導率が高くなる。
【0076】
このように、従来では、基本的に耐食性に劣る鉄は、伝熱板6、放熱フィン6e及び伝熱体7の素材に用いられることはなく、鉄よりも耐食性に優れたステンレスなどが用いられていた。しかし、本実施形態のように、溶融アルミニウムめっきを施すことで、耐食性のみならず耐熱性も向上させることが可能となり、伝熱板6、放熱フィン6e及び伝熱体7の素材として鉄を用いることが可能となる。
【0077】
しかも、伝熱板6の素材として鉄を用いた方がステンレスを用いるよりも、熱伝導率が高いため、燃焼室2や煙道4に伝熱板6を巻着させる場合に、燃焼室2の燃焼熱及び煙道4の排気ガスの熱を効率よく伝導して、周囲の熱媒水Wを過熱することが可能となり、より一層の消費燃料の燃費の向上を図ることができる。さらに、伝熱板6及び放熱フィン6eの素材に鉄を用いることで、鉄はステンレスよりも廉価なため、材料費のコスト削減もできる。
【0078】
ここで、図7を参照して、放熱フィン6eに溶融アルミニウムめっきを施した場合と、溶融アルミニウムめっきを施さない場合との、放熱フィン6eの温度上昇の差異を説明する。なお、条件を合わせるために、従来のステンレス(SUS304)を伝熱板6及び放熱フィン6eの素材として用い、放熱フィン6eの一方はそのままで、他方は溶融アルミニウムめっきを施して、伝熱板6の表面6aに載置して裏面6bから加熱した。
【0079】
また、測定場所は無風の室内とし、加熱には携帯ガスコンロ(加熱温度800℃)を用い、3分間の加熱後に、図7(a)に示す放熱フィン6eの上部測定ポイントPH、中部測定ポイントPM、下部測定ポイントPLの3箇所の温度を測定した。
【0080】
図7(b)に示すように、測定結果は、上部測定ポイントPHでは、溶融アルミニウムめっきを施した場合は「218℃」、ステンレスのままの場合は「79℃」である。中部測定ポイントPMでは、溶融アルミニウムめっきを施した場合は「258℃」、ステンレスのままの場合は「108℃」である。下部測定ポイントPLでは、溶融アルミニウムめっきを施した場合は「368℃」、ステンレスのままの場合は「153℃」である。
【0081】
すなわち、図7(b)に示すように、溶融アルミニウムめっきを施した放熱フィン6eの方が、溶融アルミニウムめっきを施さない放熱フィン6eよりも、放熱フィン6eの上中下の3箇所とも高温の測定結果が得られた。なお、この測定結果は、あくまで一例であり、測定環境の変化により測定結果は変動すると考えられるが、少なくとも、溶融アルミニウムめっきを施すことで熱伝導の効率は高くなり、溶融アルミニウムめっきを施された放熱フィン6eは高温になることが証明された。
【0082】
上述してきた構成からなる本実施形態における温水ボイラ10が稼動すると、灯油、重油、軽油等の液体燃料を霧化して空気と混合し、圧力を掛けてバーナ装置3の燃料噴射ノズル31から噴射する。噴射すると同時に、点火装置によって燃焼し、火炎を形成する。ここで、燃焼室2には吸気孔14が形成されているので、燃焼空気の噴流に周囲の気体が吸引される作用により外気が流入する。そして、噴霧燃料は吸気流によって下から吹き上げるように燃焼室内に広がり、未燃焼のまま落下することが防止され完全燃焼される。
【0083】
燃焼室2における液体燃料の燃焼に伴って燃焼室2の外周の熱媒水Wが加熱される。燃焼室2の外周面には、多数の放熱フィン6eが突設された伝熱板6を巻着させているので、効率的に熱交換が行われる。そして、加熱された熱媒水Wは循環ポンプPにより缶体1の底壁13に設けられた循環パイプ5から取水されて缶体1の上部に設けられた供給口9から再度缶体1に補充されるため、加熱された熱媒水Wは流下して缶体1の底壁13に集約される。
【0084】
つまり、温水ボイラ10が稼働した最初の時点では缶体1下方に温水が集約され、循環ポンプPの動作により、缶体1の上方から下方に循環しながら、徐々に缶体1全体の熱媒水Wが温められることになる。そして、缶体1に設けられた温度センサ17により熱媒水Wが所定の温度になったことが検知されると、缶体1の底壁13に形成された送湯パイプ8からは、集約された熱媒水Wが優先的に各所へ送湯される。
【0085】
缶体1ではフロートスイッチ16が水位低下を検知すると、その信号が水量制御部に伝達され、水量制御部により、缶体1の上部に設けられた供給口9から新たな熱媒水Wの補充を行う。そして、缶体1に設けられた温度センサ17により熱媒水Wが所定温度以上であることを検知すると、その信号が温度制御部に伝達され、温度制御部がバーナ装置3の稼働を停止させる。このようにして、缶体1から送湯された分の熱媒水Wは補充が行われ、さらに、缶体1内の熱媒水Wの量は一定の範囲内で確保されるとともに、缶体1の熱媒水Wの温度はバーナ装置3の入切により自動的に制御される。
【0086】
つまり、送湯パイプ8から規定温度の熱媒水Wを送湯すると、フロートスイッチ16が水位の低下を検知して、送湯した量に相当する量の熱媒水Wが缶体1に補充され、缶体1の熱媒水Wの量は一定に保たれる。仮に送湯パイプ8から1時間に500リットル送湯されると、缶体1の上部に設けられた供給口9から同量の500リットルが補充される。
【0087】
すなわち、本実施形態における温水ボイラ10では、缶体1に熱媒水Wが補充されると、缶体1内の熱媒水Wの温度は規定温度より大幅に下がるため、バーナ装置3の燃焼を再開させて規定温度まで加熱している。そして、バーナ燃焼の輻射熱を最大限に得るために、燃焼室2の外周面に複数の放熱フィン6eが突設された伝熱板6を巻着させて熱媒水Wを加熱するとともに、燃焼室2の上部に設置した煙道4の外周にも燃焼室2と同様の複数の放熱フィン6eが突設された伝熱板6を巻着させて、煙道4を自然排気される排気ガスの熱量も熱媒水Wの加熱に利用している。
【0088】
さらに、本実施形態においては、煙道4にスパイラル形状に形成した伝熱体7を設置することで、煙道4を通過する排気ガスの熱量が、効率よく伝熱体7に伝導して煙道4の周囲の熱媒水Wの加熱に利用されるようにしている。また、本実施形態においては、上述したように伝熱板6及び伝熱体7は、溶融アルミニウムめっきが施されているため、より熱伝導効率の高い熱媒水Wの加熱を行うことができる。
【0089】
そして、温水ボイラ10の一番下部に燃焼室2を設置し、バーナ装置3も燃焼室2下部に設置するとともに、燃焼室2の下方、缶体1の底壁13に送湯パイプ8を取り付けている。この構造によって、缶体1の上部に設けられた供給口9より、新たな熱媒水Wを補充しても、送湯パイプ8周辺の熱媒水Wの温度低下を防ぎ、また、缶体1に補充されている熱媒水Wの加熱時間も短縮できるようにしている。
【0090】
[伝熱板の変形例]
ここで、図8を用いて、伝熱板の変形例について説明をする。この変形例における伝熱板60は、例えば、幅H3が100mm、厚みD4は1mmであり、上述した伝熱板6よりも幅が狭いだけで、長さや厚みは同様の長方形の金属板である。
【0091】
この伝熱板60には、切り起こされた矩形の放熱フィン60cが形成されている。すなわち、矩形形状の4辺のうち、伝熱板60の長手方向に直交する一辺を残して切り込みを入れ、切り込みのない前記一辺を支点として略90度で引き起こすことで、厚みD4が1mm、高さH4が20mm、幅L4が30mmの長方形の放熱フィン60cを形成している。この例では、熱媒水Wの流れに対して放熱フィン60cがあたかも対峙するように切り起こされているため、放熱フィン60cと熱媒水Wとが十分に接触できるが、熱媒水Wの流れの抵抗力を考慮して、例えば、図示した切り起こし方向とは直交する方向に切り起こした放熱フィンを交互に配設するなどしてもよい。
【0092】
伝熱板60の素材としては、上述した伝熱板6と同様に鉄(Fe)が用いられる。このように、一枚の伝熱板60に所定間隔で切り込みをいれて、この切込みを切り開け起こすだけで複数の放熱フィン60cを形成できるので、放熱フィン60cを伝熱板60に溶接するなどの作業が不要となり、伝熱板60の加工時間の短縮を図ることができる。
【0093】
変形例においても、伝熱板60の表面60aに放熱フィン60cを形成した後、溶融アルミニウムめっきが施される。そして、溶融アルミニウムめっきが施された伝熱板60は、燃焼室2及び煙道4の外周面に所定の巻着バンド(図示せず)等により巻着される。この場合、熱伝導効率を高めるために、伝熱板60の裏面60bと燃焼室2及び煙道4の外周面とを隙間なく密着させる必要がある。このため、変形例における伝熱板60は、上述した伝熱板6の幅H1(200mm)の半分の幅H3(100mm)にして、巻着バンドによる締付密着度を高めることができるようにしている。
【0094】
なお、上述した実施形態においては、熱媒体として水(熱媒水W)を加熱する温水ボイラ10を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、熱媒体として空気を加熱する温風送風機等に適用することも可能である。
【0095】
また、燃焼室2及び煙道4に巻着させる伝熱板6に突設された複数の放熱フィン6eは、その設置間隔、形状、個数及び熱媒体に接触する面積(つまり、長さ)等は、加熱装置の出力、さらに設置される燃焼室2及び煙道4のサイズに応じて適宜変更可能である。
【0096】
また、燃焼室2及び煙道4の外周面に伝熱板6を巻着させるときは、巻着バンドを用いて、当該巻着バンドを締付けることで燃焼室2及び煙道4の外周面と伝熱板6との密着度を高めることができるようにしているが、伝熱板6を巻着させる始端部及び終端部を、燃焼室2及び煙道4の外周面に溶接して巻着させることもできる。
【0097】
また、上述した実施形態では、伝熱板6、放熱フィン6e及び伝熱体7の素材に、鉄(Fe)やステンレス(SUS304)を用いて説明してきたが、本発明はこれに限らず、溶融アルミニウムめっきを施すことで、熱伝導率を高め、なおかつ、耐食性及び耐熱性が向上する金属であれば、素材として用いることができる。
【0098】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 缶体
2 燃焼室
3 バーナ装置
4 煙道
5 循環パイプ
6 伝熱板
7 伝熱体
8 送湯パイプ
9 供給口
10 温水ボイラ
12 煙突
31 燃料噴射ノズル
14 吸気孔
17 温度センサ
23 点検口
31 燃料噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を収容する缶体内にバーナ装置を設けた燃焼室を形成し、この燃焼室の外周面に複数の放熱フィンを突設した伝熱板を巻着した加熱装置において、
前記伝熱板は、金属板表面に複数の放熱フィンを接合した後、溶融アルミニウムめっきを施して形成したことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記燃焼室に一端を連通連結する一方、他端を当該缶体外部に伸延させた煙道を前記熱媒体と接するように配設し、前記燃焼室に加え、当該煙道の外周面にも前記伝熱板を巻着したことを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記伝熱体の金属板と放熱フィンとの接合を、スポット溶接による接合としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記煙道内に溶融アルミニウムめっきを施したスパイラル形状の伝熱体を配設したことを特徴とする請求項2又は3に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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