説明

加熱調理器

【課題】天板の誤組み付けを防止できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】器具2の前フランジ部28には複数の係合片51が設けられている。係合片51は第1延出部55と第2延出部56を備える。第2延出部56には上方に向けて円弧状に突出する凸部58が設けられている。第2延出部56は天板の前端側の下部に形成されたカーリング部の先端部に対して上方から係合する。天板のカール部の先端部が係合片51の先端の第2延出部56に係合していない場合、天板のカール部は、係合片51の第2延出部56に設けられた凸部58の頂上に載置された状態となる。この場合、天板の前端側が上方に浮いた状態となり、天板と器具2の係合フランジ部27に装着されたパッキン70との間に大きな隙間が形成される。作業者は天板とパッキン70との間に出来た大きな隙間に簡単に気づくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周縁を下方内側に向けて曲げ加工して形成した係合屈曲部を備え且つ本体ケースの上端のケース開口部を覆う天板を備えたビルトインコンロが知られている(例えば特許文献1参照)。ビルトインコンロのコンロ本体の本体ケースは、上方に開放する矩形箱状に形成されている。そのケース開口部の外周には、カウンタトップのカウンタ孔に係合する係合フランジが張り出している。その係合フランジのうち、本体ケースの前板に対応する前フランジ部には、天板に係合する複数の係合片が配設されている。係合片は長方形の金属板を曲げ加工して形成してある。係合片は前フランジ部に固定される基板部と、該基板部の端部に連続する屈曲起立部と、該屈曲起立部の上端から前方に水平に屈曲する係合板部とを備える。係合板部は、本体ケースのケース開口部を被蓋する天板の外周下部に形成された係合屈曲部に対して上方から係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3795839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のビルトインコンロでは、本体ケースの係合片に天板の係合屈曲部が係合できていない状態で天板を本体ケースに組み付けた場合、天板と本体ケースの上端との間にできる隙間は小さく、天板の係合屈曲部に隠れてしまうこともあり、天板の誤組み付けを外観で確認することは困難であった。また、本体ケースの係合片に天板の係合屈曲部が係合できていない状態でも、天板に設けられた固定用の孔の位置と、本体ケースに設けられた固定用の孔の位置とはずれないので、作業者は天板が誤組み付けの状態であることに気づかずにそのままビスを固定してしまうという問題点もあった。また、例え、天板を本体ケースにビスで固定した後に誤組み付けに気づいた場合でも、係合片が天板に押し潰されて変形している可能性があるため、係合片を再利用するには正確な補修作業が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、天板の誤組み付けを防止できる加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る加熱調理器は、上部が開口する器具と、外周縁を下方内側に屈曲して形成した係合屈曲部を備え、前記器具の前記開口を覆うようにして前記器具の上部に取り付けられる天板と、前記器具の前記開口の縁部に設けられ、前記天板の前記係合屈曲部に係合する器具側係合片とを備えた加熱調理器であって、前記器具側係合片は、前記縁部の上方にまで延出された第1延出部と、前記第1延出部の上部から前記器具から離間する方向に延出され、前記係合屈曲部の先端部に対して上方から係合する第2延出部とを備え、前記第2延出部は上方に突出する凸部形状を有することを特徴とする。
【0007】
また請求項2に係る発明の加熱調理器は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記係合屈曲部の先端部には、前記天板の下面に向かって前記天板の外側から内側にかけて斜め上方に傾斜する傾斜部が設けられている。
【0008】
また請求項3に係る発明の加熱調理器は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記天板が前記器具の上部に対して水平方向への位置ずれ無く配置され、且つ前記器具側係合片の前記第2延出部が前記係合屈曲部に係合していない状態では、前記第2延出部の前記凸部形状の頂点上に前記傾斜部の外側の面が配置されることを特徴とする。
【0009】
また請求項4に係る発明の加熱調理器は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記天板には、前記器具又は前記器具内に搭載された部品に設けられた被固定部に固定する為の固定部が設けられている。
【0010】
また請求項5に係る発明の加熱調理器は、請求項1から4の何れかに記載の発明の構成に加え、前記凸部形状は曲面形状である。
【0011】
また請求項6に係る発明の加熱調理器は、上部が開口し、当該開口の縁部から前記開口の内方に向かって略水平に延出された係合延出部を備える器具と、前記器具の前記開口を覆うようにして前記器具の上部に取り付けられる天板と、前記天板の下面外周部に設けられ、前記天板の前記係合延出部に係合する天板側係合片とを備えた加熱調理器であって、前記天板側係合片は、前記下面外周部の下方にまで延出された第3延出部と、前記第3延出部の下端部から略水平に折り返して前記天板から離間する方向に延出され、前記係合延出部に対して下方から係合する第4延出部とを備え、前記第4延出部は下方に突出する凸部形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の加熱調理器では、器具側係合片に天板の係合屈曲部が正常に係合していない場合、第2延出部の凸部形状の上に係合屈曲部が載る状態となる。これにより天板が器具の上面よりも高い位置になるので、天板と器具の上面との間に隙間ができ、天板が浮いた状態となる。作業者は天板が器具の上面から浮いていることに容易に気づくことができるので、外観だけで天板の誤組み付けを確認できる。
【0013】
また請求項2に係る発明の加熱調理器では、請求項1に記載の発明の効果に加え、器具側係合片に天板の係合屈曲部が正常に係合していない状態で、作業者が天板を下方に押し込むと、器具側係合片の第2延出部の凸部形状に対して、係合屈曲部の傾斜部が滑るようになっている。それ故、器具に対して天板がずれるので、作業者は誤組み付けであることを容易に確認できる。
【0014】
また請求項3に係る発明の加熱調理器では、請求項2に記載の発明の効果に加え、器具側係合片に天板の係合屈曲部が係合していない状態で、天板を器具の上部に取り付けようとした場合、傾斜部の外側の面が第2延出部の凸部形状の頂点に接触する。この状態で作業者が天板を下方に押し込むと、凸部形状の頂点に対して傾斜部が滑り落ちる。これにより作業者は天板が誤組み付けであることを容易に確認できる。
【0015】
また請求項4に係る発明の加熱調理器では、請求項2に記載の発明の効果に加え、器具側係合片に天板の係合屈曲部が正常に係合していない状態で、作業者が天板を下方に押し込むと、器具側係合片の凸部形状に対して、係合屈曲部の傾斜部が滑るようになっている。それ故、器具に対して天板がずれるので、器具側の固定部に対して天板側の被固定部がずれる。これにより、作業者は被固定部に対して固定部を固定できないので、天板が誤組み付けの状態で器具に固定されるのを確実に防止できる。
【0016】
また請求項5に係る発明の加熱調理器では、請求項1から4の何れかに記載の発明の効果に加え、凸部形状は曲面であるので、器具側係合片に天板の係合屈曲部が正常に係合していない状態で、天板を下方に押し込むと、天板の係合屈曲部は凸部形状に対して滑らかに滑ることができる。これにより器具に対して天板がずれるので、誤組み付けを容易に確認できる。
【0017】
また請求項6に係る発明の加熱調理器では、天板側係合片が器具の係合延出部に正常に係合していない場合、天板側係合片の凸部形状が係合延出部に載る状態となる。これにより天板が器具の上面よりも高い位置になるので、天板と器具の上面との間に隙間ができ、天板が浮いた状態となる。作業者は、天板が器具の上面から浮いていることに気づくことができるので、外観だけで天板の誤組み付けを容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ビルトインコンロ1の斜視図である。
【図2】天板4を取り外した状態の器具2上部の部分拡大図である。
【図3】図2に示す二転鎖線W1で囲む領域内の拡大図である。
【図4】天板4の外周隆起部60付近の断面図である。
【図5】カール部65が係合片51に正常に係合した状態を示す図である。
【図6】係合片51の凸部58の頂点上に、カール部65の傾斜部66が載置された状態を示す図である。
【図7】図6の状態から傾斜部66が凸部58の頂点から前方に滑り落ちた状態を示す図である。
【図8】変形例である係合片151の斜視図である。
【図9】変形例であるビルトインコンロ100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態であるビルトインコンロ1について、図面に基づいて説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下に記載されている装置の構造などは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
先ず、ビルトインコンロ1の構造について説明する。図1に示すように、ビルトインコンロ1は、略直方体状の器具2を備える。器具2の上部には天板4が取り付けられている。天板4の右前側には右バーナ5が設けられている。天板4の左前側には左バーナ7が設けられている。右バーナ5と左バーナ7とに挟まれる略中央の奥側にはとろ火用の中バーナ6が設けられている。天板4の後端側には複数の排気孔9が設けられている。排気孔9はスリット状である。排気孔9は器具2内に設けられたグリル庫(図示略)内に連通する。
【0021】
器具2の正面中央にはグリル開口12が設けられている。グリル開口12は正面視長方形状である。グリル開口12はグリル庫と連通する。グリル開口12にはグリル扉13が引き出し可能に設けられている。グリル扉13は正面視長方形状の板部材である。グリル扉13を手前側に引き出すと、グリル扉13の裏面下部に連結した受け皿(図示略)を取り出すことができる。グリル扉13の前面上半分にはグリル窓13Aが設けられている。グリル窓13Aの下方には把手13Bが設けられている。
【0022】
グリル開口12の右側には、点火スイッチ15,16が各々設けられている。点火スイッチ15は右バーナ5を点火する為に押下される。点火スイッチ16はグリル庫内のグリルバーナ(図示略)を点火する為に押下される。グリル開口12の左側には、点火スイッチ17,18が各々設けられている。点火スイッチ17は中バーナ6を点火する為に押下される。点火スイッチ18は左バーナ7を点火する為に押下される。
【0023】
点火スイッチ15,16の下側には電池ボックス19が設けられている。電池ボックス19はビルトインコンロ1の電源を供給する乾電池を格納する。点火スイッチ17,18の下側には、操作パネル20が回動可能に設けられている。操作パネル20はビルトインコンロ1を操作する為の操作機器である。操作パネル20は未使用時には器具2内に収納される。使用時には収納状態の操作パネル20を押下する。すると操作パネル20は器具2の外側に回動されて操作可能となる。
【0024】
次に、器具2の構造について説明する。図2に示すように、器具2は略直方体状のケースである。器具2の上部にはケース開口部25が設けられている。ケース開口部25の外周には係合フランジ部27が外方に張り出している。係合フランジ部27は図示しないカウンタトップのカウンタ孔に係合する。係合フランジ部27の外周端部には略L字状の差込片29(図5参照)が設けられている。差込片29には環状のパッキン70が装着されている。
【0025】
パッキン70は樹脂製である。パッキン70は、パッキン本体71と、外周フランジ部72とを備える。パッキン本体71は係合フランジ部27の外周縁に外嵌装着される部分である。外周フランジ部72はパッキン本体71の下端外周から水平方向に張り出した部分である。図5に示すように、パッキン本体71は内側に差込スリット75を備える。差込スリット75はパッキン70の内周全域に連続して形成されている。その差込スリット75に係合フランジ部27の差込片29が挿入されて係合フランジ部27の外周縁にパッキン70が装着される。外周フランジ部72上には、天板4の外周下部に形成された後述するカール部65が載置される(図5参照)。
【0026】
図2に示すように、係合フランジ部27のうち、器具2の前壁21に対応する前フランジ部28の左右両側の各部分には、1又は2以上の係合片51が各々設けられている。これら係合片51は天板4の外周下部に形成されたカール部65に係合する。
【0027】
係合片51の構造について説明する。図3に示すように、係合片51は長方形の金属板を曲げ加工して形成されている。係合片51は、第1延出部55と、第2延出部56とを備える。第1延出部55は前フランジ部28の上面から上方に延出する板部である。第2延出部56は第1延出部55の上端から前方に屈曲して水平に延出する。第2延出部56の前端部の左右方向略中央には溝部57が形成されている。溝部57は後方に向かって略U字状に湾曲する溝である。その溝部57の内側には、係合片51を前方から見た場合に、上方に向けて円弧状に突出する半円筒状の凸部58が設けられている。第2延出部56は、天板4の外周下部に形成されたカール部65の先端部68に対して上方から係合する(図5参照)。
【0028】
そして、器具2のケース開口部25の奥側における左右コーナ部には、ブラケット(図示略)が内向きに突出して設けられている。各ブラケットには天板4を固定する為のネジ孔(図示略)が形成されている。さらに器具2内には右バーナ〜7を各々支持するバーナブラケット(図示略)が設けられている。各バーナブラケットにも、天板4を固定する為のネジ孔(図示略)が形成されている。ブラケット及びバーナブラケットに設けられたネジ孔は、本発明の「被固定部」の一例である。
【0029】
次に、天板4の構造について説明する。図1に示すように、天板4は平面視長方形状の板部材である。天板4の外周縁には外周隆起部60が形成されている。外周隆起部60の内側には浅く絞り加工された中央凹部4Aが設けられている。中央凹部4Aの右前側にはバーナ用開口31が設けられている。中央凹部4Aの左前側にはバーナ用開口33が設けられている。バーナ用開口31,33に挟まれる中央奥側には、バーナ用開口32が設けられている。バーナ用開口31は右バーナに対応する位置にある。バーナ用開口32は中バーナ6に対応する位置にある。バーナ用開口33は左バーナ7に対応する位置にある。バーナ用開口31〜33は略円形状である。
【0030】
さらに、バーナ用開口31の周囲にはリング状の凹部31Aが設けられている。バーナ用開口32の周囲にはリング状の凹部32Aが設けられている。バーナ用開口33の周囲にはリング状の凹部33Aが設けられている。凹部31A〜33Aは中央凹部4Aに対して一段低くなっている。凹部31Aの底面には一対の透孔35が設けられている。凹部32Aの底面には一対の透孔36が設けられている。凹部33Aの底面には一対の透孔37が設けられている。これら透孔35〜37は、器具2に設けた上記バーナブラケットの各ネジ孔に各々対応している。透孔35〜37から上記バーナブラケットの各ネジ孔にビス91を締結する。それ故、天板4の中央部を器具2の上部に固定できる。
【0031】
また、中央凹部4Aの左右の後方コーナ部には、器具2のケース開口部25の左右奥部に設けられた上記ブラケットに対応する透孔38,39が設けられている。透孔38,39から上記ブラケットのネジ孔にビス92を締結する。それ故、天板4の後部を器具2の上部に固定できる。
【0032】
また、図4に示すように、天板4の前端側の外周隆起部60の下部にはカール部65が設けられている。カール部65は、天板4の外周縁を下方内側に巻き込むように形成されている。カール部65の先端部68の近傍には傾斜部66が設けられている。傾斜部66は、天板4の下面に向かって天板4の外側から内側(前方から後方)にかけて斜め上方に傾斜している。
【0033】
次に、ビルイントコンロ1の組み立て作業について説明する。先ず、カウンタトップに設けられたカウンタ孔の周縁に、図2に示す器具2の係合フランジ部27を係合させ、器具2を上記カウンタ孔に落とし込んだ状態で装着する。次いで、天板4の前端側の下部に形成されたカール部65の先端部68を、係合片51の先端の第2延出部56に下方から係合させる。すると、図5に示すように、カール部65は、第2延出部56とその下方に位置するパッキン70の外周フランジ部72との間に収容された状態となる。それ故、係合片51は、天板4のカール部65のうちの天板4の前端部に沿った領域に対して上方から係合できる。
【0034】
次いで、天板4の中央凹部4Aの左右の後方コーナ部に位置する左右一対の透孔38,39から、これに対応する器具2側のブラケットに形成された各ネジ孔に対してビス91を各々締結する。さらに天板4の中央凹部4Aに形成された透孔35〜37から、これに対応する器具2側の各バーナブラケットに形成された各ネジ孔に対してビス92を各々締結する。これにより天板4は器具2の上部に固定され、ビルトインコンロ1の組み立て作業が完了する。
【0035】
次に、組み立て作業時において、天板4のカール部65が係合片51に正常に係合していない場合について説明する。図6に示すように、天板4のカール部65の先端部68は、係合片51の先端の第2延出部56に係合していない。この場合、天板4のカール部65は、係合片51の第2延出部56に設けられた凸部58の頂上に載置された状態となる。この場合、天板4の前端側が上方に浮いた状態となる。それ故、天板4は傾き、天板4と器具2の係合フランジ部27の外周縁に装着されたパッキン70との間に大きな隙間が形成される。作業者は天板4とパッキン70との間に出来た大きな隙間に簡単に気づくことができる。従って、作業者は天板4が器具2に対して誤組み付けであることを外観から容易に判断できる。
【0036】
ところが、作業者によっては、天板4とパッキン70との間に出来た隙間に気づかないことも想定される。例えば、図6に示すように、天板4のカール部65が係合片51に正常に係合していない状態で、天板4が器具2の上部に対して水平方向への位置ずれ無く配置されている場合、係合片51の凸部58の頂点上には、カール部65の傾斜部66の外側部分が接触している。作業者は誤組み付けに気づかないので、天板4を器具2に固定する為に、天板4を下方に押し込んでビス91,92を無理に締結しようとする。
【0037】
ここで、上記の通り、傾斜部66は、天板4の下面に向かって天板4の外側から内側にかけて斜め上方に傾斜している。それ故、図6,図7に示すように、凸部58の頂点に接触するカール部65の傾斜部66に沿って、天板4は前方に滑り落ちる。このとき、図7に示すように、天板4は器具2に対してさらに前方に大きくずれる。つまり、器具2内に設けられたブラケット及びバーナブラケットに設けた各ネジ孔と、天板4に設けられた各透孔35〜39の位置とが水平方向において互いにずれるので、ビス91,92を締結できない。それ故、作業者は天板4が器具2に対して誤組み付けであることを確実に確認できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のビルトインコンロ1において、天板4の前端側の下部にはカール部65が形成されている。カール部65は、天板4の外周縁を下方内側に巻き込むように形成されている。器具2の前フランジ部28には、複数の係合片51が設けられている。係合片51は、第1延出部55と、第2延出部56とを備える。第1延出部55は上下方向に起立する板部である。第2延出部56は第1延出部55の上端から前方に対して水平に屈曲する。第2延出部56の前端部の左右方向略中央には、後方に向かって略U字状に湾曲する溝部57が形成されている。その溝部57の内側には、上方に向けて円弧状に突出する半円筒状の凸部58が設けられている。
【0039】
第2延出部56は天板4の前端側の下部に形成されたカール部65の先端部68に対して上方から係合する。天板4のカール部65の先端部68が係合片51の先端の第2延出部56に係合していない場合、天板4のカール部65は、係合片51の第2延出部56に設けられた凸部58の頂上に載置された状態となる。この場合、天板4と器具2の係合フランジ部27に装着されたパッキン70との間に隙間が形成されるので、天板4の前端側が浮いた状態となる。それ故、作業者は、天板4の前端側が浮いていることに気づくことができるので、外観だけで天板4の誤組み付けを容易に確認できる。
【0040】
また本実施形態では特に、係合片51に天板4のカール部65が正常に係合していない状態で、作業者が天板4を下方に押し込むと、第2延出部56の凸部58に対して、カール部65の傾斜部66が滑るようになっている。それ故、器具2に対して天板4がずれるので、作業者は誤組み付けであることを容易に確認できる。
【0041】
また本実施形態では特に、第2延出部56に天板4のカール部65が係合していない状態で、天板4を器具2の上部に取り付けようとした場合、傾斜部66の外側の面が第2延出部56の凸部58の頂点に接触する。この状態で作業者が天板4を下方に押し込むと、凸部58の頂点に対して傾斜部66が滑り落ちる。これにより作業者は誤組み付けであったことがわかるので、第2延出部56に天板4のカール部65を係合させることができる。
【0042】
また本実施形態では特に、第2延出部56に天板4のカール部65が正常に係合していない状態で、作業者が天板4を下方に押し込むと、第2延出部56の凸部58に対して、カール部65の傾斜部66が滑るようになっている。それ故、器具2に対して天板4がずれるので、器具2側のブラケット、及びバーナブラケットに設けた各ネジ孔と、天板4側に設けられた各透孔35〜39の位置とが互いにずれるので、ビス91,92を締結できない。それ故、作業者は天板4が器具2に対して誤組み付けであることを容易に確認できると共に、天板2が誤組み付けの状態で器具2に固定されることを確実に防止できる。ビス91,92は本発明の「固定部」の一例である。
【0043】
また本実施形態では特に、凸部58は曲面であるので、第2延出部56に天板4のカール部65が正常に係合していない状態で、天板4を下方に押し込むと、天板4のカール部65は凸部58に対して滑らかに滑ることができる。これにより器具2に対して天板4がずれるので、誤組み付けであることを容易に確認できる。
【0044】
なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、係合片51の凸部58は、第2延出部56に設けた溝部57の内側に設けた上方に突出する半円筒状である。例えば、平板状の第2延出部56の上面に円弧状に隆起した凸部を設けてもよい。
【0045】
また、図8に示す変形例である係合片151のように、半円筒状である凸部158の前端面159を緩やかな傾斜面としてもよい。例えば、図4に示す天板4のカール部65の先端部68が係合片151の先端の第2延出部56に係合していない場合、天板4のカール部65は、係合片151の第2延出部56に設けられた凸部158の頂上に載置された状態となる。この状態で、天板4を器具2の上部に取り付けようとした場合、傾斜部66の外側の面が第2延出部56の凸部158の頂点に接触する。この状態で作業者が天板4を下方に押し込むと、凸部158の頂点から前端面159に沿って傾斜部66は緩やかに滑り落ちることができる。
【0046】
また上記実施形態では、器具2の前壁21に対応する前フランジ部28の左右両側の各部分には、1又は2以上の係合片51が各々設けられているが、係合片51の数については限定しない。さらに、係合片51を前フランジ部28以外の係合フランジ部27に設けてもよい。
【0047】
また、上記実施形態は、器具2側に複数の係合片51を設けたものであるが、例えば、天板側に係合片を設けてもよい。例えば、図9に示す変形例であるビルトインコンロ100は、器具200と、天板110とを備える。器具200は略直方体状のケースである。器具200の上部にはケース開口部201が設けられている。ケース開口部201の縁部には係合延出部202が設けられている。係合延出部202はケース開口部201の内方に向かって略水平に延出されている。天板110の下面には天板側係合片120が設けられている。天板側係合片120は、第3延出部125と、第4延出部126とを備える。第3延出部125は、天板110の下面に固定された支持板102の前端部から屈曲して鉛直下方に延出されている。第4延出部126は第3延出部125の下端から前方に対して水平に屈曲する。第4延出部126の前端部の左右方向略中央には、後方に向かって略U字状に湾曲する溝部127が形成されている。その溝部127の内側には、下方に向けて円弧状に突出する半円筒状の凸部128が設けられている。第4延出部126は器具200の係合延出部202に対して下方から係合する。
【0048】
そして、例えば、器具200の係合延出部202に対して、天板側係合片120の先端の第4延出部126が下方から係合していない場合、天板側係合片120の凸部128が器具200の係合延出部202の上面に載置した状態となる。この場合、上記実施形態と同様に、天板110の前端側が上方に浮いた状態となる。それ故、天板110は傾き、天板110と器具200の上部との間に大きな隙間が形成される。作業者は天板110と器具200の上部との間に出来た大きな隙間に簡単に気づくことができる。従って、作業者は天板110が器具200に対して誤組み付けであることを外観から容易に判断できる。
【0049】
また上記実施形態では、加熱調理器の一例としてビルトインコンロ1を説明したが、器具に天板を取り付けるものであればよく、例えば通常のコンロでもよく、コンロ以外の加熱調理器でもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ビルトインコンロ
2 器具
4 天板
25 ケース開口部
27 係合フランジ部
28 前フランジ部
31A 凹部
35〜37、38,39 透孔
51 係合片
55 第1延出部
56 第2延出部
57 溝部
58 凸部
65 カール部
66 傾斜部
68 先端部
91,92 ビス
100 ビルトインコンロ
110 天板
120 天板側係合片
125 第3延出部
126 第4延出部
127 溝部
128 凸部
151 係合片
200 器具
201 ケース開口部
202 係合延出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口する器具と、
外周縁を下方内側に屈曲して形成した係合屈曲部を備え、前記器具の前記開口を覆うようにして前記器具の上部に取り付けられる天板と、
前記器具の前記開口の縁部に設けられ、前記天板の前記係合屈曲部に係合する器具側係合片と
を備えた加熱調理器であって、
前記器具側係合片は、
前記縁部の上方にまで延出された第1延出部と、
前記第1延出部の上部から前記器具から離間する方向に延出され、前記係合屈曲部の先端部に対して上方から係合する第2延出部と
を備え、
前記第2延出部は上方に突出する凸部形状を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記係合屈曲部の先端部には、前記天板の下面に向かって前記天板の外側から内側にかけて斜め上方に傾斜する傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記天板が前記器具の上部に対して水平方向への位置ずれ無く配置され、且つ前記器具側係合片の前記第2延出部が前記係合屈曲部に係合していない状態では、前記第2延出部の前記凸部形状の頂点上に前記傾斜部の外側の面が配置されることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記天板には、前記器具又は前記器具内に搭載された部品に設けられた被固定部に固定する為の固定部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記凸部形状は曲面形状であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
上部が開口し、当該開口の縁部から前記開口の内方に向かって略水平に延出された係合延出部を備える器具と、
前記器具の前記開口を覆うようにして前記器具の上部に取り付けられる天板と、
前記天板の下面外周部に設けられ、前記天板の前記係合延出部に係合する天板側係合片と
を備えた加熱調理器であって、
前記天板側係合片は、
前記下面外周部の下方にまで延出された第3延出部と、
前記第3延出部の下端部から略水平に折り返して前記天板から離間する方向に延出され、前記係合延出部に対して下方から係合する第4延出部と
を備え、
前記第4延出部は下方に突出する凸部形状を有することを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83383(P2013−83383A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222438(P2011−222438)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000112015)株式会社パロマ (298)