説明

加熱調理器

【課題】ヒータ用碍子を用いて加熱室内にヒータが保持された加熱調理器において、ヒータ用碍子を位置決めするための穴からの蒸気漏れを簡単な構成で確実に防止できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】被加熱物を加熱する加熱室8と、加熱室8内の上側に配置された加熱用ヒータ26と、加熱室8内の天板8b側に取り付けられ、加熱用ヒータ26を加熱室8の天板8bに保持するヒータ用碍子100と、加熱室8の天板8bの上面かつヒータ用碍子100に対応する位置に取り付けられた板状のカバー部材200とを備える。上記ヒータ用碍子100は、位置決めのための凸部100cとねじ止め用の切り欠き120とを有する。上記加熱室8の天板8bにヒータ用碍子100の凸部100cが係止される係止穴301を形成する。上記カバー部材200に、加熱室8の天板8bの少なくとも係止穴301の全周を囲むようにシール用の溝210を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器としては、加熱室内に配置されたヒータを、加熱室の壁面にヒータ用碍子を介して取り付けたものがある(例えば、特開平11−6627号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
このような加熱調理器では、加熱室の壁面側に設けられた位置決め用の穴を用いて、ヒータを保持するヒータ用碍子を位置決めして、ヒータ用碍子を加熱室の壁面にねじ止めにより固定している。
【0004】
上記加熱調理器では、蒸気を用いた加熱調理時に加熱室の壁面の位置決め用の穴から蒸気が外部に漏れた場合、本体内の空気の流れによっては、加熱室から漏れた蒸気が水滴となって電源部に流れ込む恐れがある。
【0005】
そこで、上記加熱調理器では、加熱室の壁面側に設けた位置決め用の穴とヒータ用碍子との間の隙間をシール剤またはパッキンで蒸気が加熱室の外に漏れるのを防いでいる。
【0006】
しかしながら、上記加熱調理器において、ヒータによる加熱調理での高温に耐えるシール構造とするには、位置決め用の穴とヒータ用碍子との間の隙間を高価な無機系のセラミックボンドを用いてシールする必要があるが、セラミックボンドは衝撃に弱くかつ作業性が悪いために蒸気漏れを確実に防止することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−6627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、ヒータ用碍子を用いて加熱室内にヒータが保持された加熱調理器において、ヒータ用碍子を位置決めするための穴からの蒸気漏れを簡単な構成で確実に防止できる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、
被加熱物を加熱するための加熱室と、
上記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生装置と、
上記加熱室内の上側に配置されたヒータと、
上記加熱室内の天板側に取り付けられ、上記ヒータを上記加熱室の天板に保持するヒータ用碍子と、
上記加熱室の天板の上面かつ上記ヒータ用碍子に対応する位置に取り付けられた板状のカバー部材と
を備え、
上記加熱室の天板に、上記ヒータ用碍子の位置決めのための凸部が係止される係止穴が形成され、
上記カバー部材または上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域の少なくとも一方に、上記加熱室の天板の少なくとも上記係止穴の全周を囲むように少なくとも1つの溝が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ヒータ用碍子を用いて加熱室の天板にヒータが保持された加熱調理器において、加熱室の天板の上面かつヒータ用碍子に対応する位置に板状のカバー部材を取り付けると共に、そのカバー部材(またはカバー部材により覆われる加熱室の天板の領域)に、加熱室の天板の少なくとも係止穴の全周を囲むように少なくとも1つの溝を形成することによって、加熱室の天板に設けられた係止穴を介して加熱室内から蒸気が外側に漏れても、漏れた蒸気が上記溝内で結露し、その結露水で満たされた溝によって、加熱室の天板とカバー部材との間をウォーターシールにより密閉する。これによって、ヒータ用碍子を用いて加熱室内にヒータが保持された加熱調理器において、ヒータ用碍子を位置決めするための係止穴からの蒸気漏れを簡単な構成で確実に防止できる。
【0011】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記少なくとも1つの溝は、上記カバー部材または上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域の少なくとも一方に、上記加熱室の天板の少なくとも上記係止穴の全周を2重に囲むように形成された2つの溝である。
【0012】
上記実施形態によれば、少なくとも1つの溝として、加熱室の天板の少なくとも係止穴の全周を2重に囲む溝を形成することによって、加熱室の天板とカバー部材との間をより確実に密閉できる。
【0013】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記少なくとも1つの溝は、
上記カバー部材に、上記加熱室の天板の上記係止穴の全周を囲むように形成された第1の溝と、
上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域に、上記加熱室の天板の上記係止穴の全周を囲むように形成された第2の溝である。
【0014】
上記実施形態によれば、加熱室の天板の係止穴の全周を囲むようにカバー部材に形成された第1の溝と、カバー部材により覆われる加熱室の天板の領域に、加熱室の天板の係止穴の全周を囲むように形成された第2の溝とで上記少なくとも1つの溝を構成することによって、ヒータ用碍子を位置決めするための係止穴からの蒸気漏れをより確実に防止できる。
【0015】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記加熱室の天板の上記係止穴から外方に突出する上記ヒータ用碍子の上記凸部の先端側が上記カバー部材に干渉しないように、上記カバー部材に凹部が形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、加熱室の天板の係止穴から外方に突出するヒータ用碍子の凸部の先端側がカバー部材に干渉しないように、カバー部材に凹部を形成することによって、加熱室の天板へのカバー部材の密着性を向上でき、上記少なくとも1つの溝によるウォーターシールの効果が高くなる。
【0017】
また、一実施形態の加熱調理器では、
上記ヒータ用碍子は、ねじ止め用の穴またはねじ止め用の切り欠きを有し、
上記加熱室の天板に、上記ヒータ用碍子の上記ねじ止め用の穴または上記ねじ止め用の切り欠きに通されたねじが貫通するねじ用の穴が形成され、
上記加熱室の天板の上記ねじ用の穴に対応する上記カバー部材の位置に、上記ねじが螺合するねじ穴が形成され、
上記少なくとも1つの溝は、上記加熱室の天板の上記係止穴および上記ねじ用の穴の全周を囲むように形成されている。
【0018】
上記実施形態によれば、カバー部材により覆われる加熱室の天板の領域に形成されたねじ用の穴に、ヒータ用碍子のねじ止め用の穴(またはねじ止め用の切り欠き)に通されたねじを挿入して、カバー部材のねじ穴に螺合させて締め付ける。これにより、ヒータ用碍子とカバー部材により上下方向両側から加熱室の天板を挟んで、ヒータ用碍子とカバー部材を加熱室の天板に固定する。このため、加熱室の天板の領域に形成されたねじ穴を介して加熱室内から蒸気が漏れても、加熱室の天板の係止穴およびねじ用の穴の全周を囲むように形成された少なくとも1つの溝により、密閉することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器によれば、ヒータ用碍子を用いて加熱室内にヒータが保持された加熱調理器において、ヒータ用碍子を位置決めするための穴からの蒸気漏れを簡単な構成で確実に防止できる加熱調理器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明の実施の形態の加熱調理器の正面図である。
【図2】図2は把手付きドアを全開にした状態の上記加熱調理器の正面図である。
【図3】図3は上記加熱調理器のケーシングを取り外した状態を後方かつ斜め上方から見た斜視図である。
【図4】図4は上記加熱調理器のケーシングを取り外した状態を前方かつ斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図5は上記加熱調理器の要部を上方から見た上面図である。
【図6】図6は図5のVI−VI線から見た断面図である。
【図7】図7はヒータ用碍子の上面図である。
【図8】図8はカバー部材の上面図である。
【図9】図9は加熱室の天板の要部の上面図である。
【図10】図10は他の実施の形態の加熱調理器の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1はこの発明の一実施の形態の加熱調理器の正面図である。
【0023】
上記加熱調理器は、図1に示すように、ケーシング1と、このケーシング1の前面側に取り付けられた扉の一例としての把手付きドア2とを備えている。この把手付きドア2の略中央に耐熱ガラス5を取り付けている。また、ケーシング1の前面側には、閉鎖時の把手付きドア2と隣り合うように操作パネル3を設けている。この操作パネル3に、複数の押ボタンなどを取り付けている。また、操作パネル3は液晶表示部7を有し、この液晶表示部7が操作に応じた表示を行う。そして、把手付きドア2と操作パネル3の下方には、排気受け部の一例としての露受容器4を配置している。この露受容器4は、ケーシング1の底部の前側に設けられた2つの前脚6,6に着脱可能な容器である。
【0024】
また、図2は加熱調理器の把手付きドア2を全開にした状態を正面から見た正面図を示している。この図2では、図1に示す加熱調理器と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0025】
図2に示すように、ケーシング1内に被加熱物((図示せず))を加熱するための加熱室8を設置している。ケーシング1の前面側に配置された把手付きドア2は、ケーシング1の左側の側端部を中心に左右方向に回動して、加熱室8の前面の開口8aを開閉する。ここで、把手付きドア2は、ケーシング1の操作パネル3側とは反対の側部にヒンジ(図示せず)を介して回動自在に取り付けられている。また、把手付きドア2の右側かつ後面にラッチフック90,90が設けられている。
【0026】
なお、図2において、80は、蒸気発生装置13(図3に示す)で発生した蒸気が加熱室8内に向かって吹き出す蒸気吹出口である。
【0027】
図3は加熱調理器のケーシング1を取り外した状態を後方かつ斜め上方から見た斜視図を示している。
【0028】
上記ケーシング1内には、図3に示すように、被加熱物を加熱するための加熱室8を設置している。また、ケーシング1内において、加熱室8の側方かつ操作パネル3の後方に冷却空間の一例としての電装品室9を設け、加熱室8の後方かつ電装品室9の後方に吸気空間10を設けている。
【0029】
上記加熱室8の上方、下方、後方および両側方のそれぞれには、遮熱板11,11,…を配置している。つまり、遮熱板11,11,…は、加熱室8の開口8aを除く周囲に配置されている。また、遮熱板11と加熱室8との間の空間に断熱材(図示せず)を充填している。
【0030】
上記加熱室8の後面側に、加熱室8へ供給される蒸気を発生させる蒸気発生装置13を配置し、加熱室8の下側に、この蒸気発生装置13に給水チューブを介して接続された給水ポンプ(図示せず)を配置している。また、ケーシング1内の電装品室9内に、給水タンク(図示せず)が収納されるタンク収納部15と、マグネトロン51と、電源トランス52などが配置されている。そして、被加熱物の加熱時には、冷却ファン16からの冷却空気が電装品室9内を流れ、マグネトロン51などの電装品を冷却できるようにしている。
【0031】
上記吸気空間10には、冷却ファン16の駆動に伴い、ケーシング1外の空気が複数の吸気口(図示せず)から流れ込む。そして、吸気空間10内の空気は冷却ファン16で電装品室9内に送られる。
【0032】
なお、図3において、21は、電装品室9と吸気空間10とを仕切る間仕切壁である。この間仕切壁21に冷却ファン16を取り付けている。また、加熱室8内の上側に加熱用ヒータ26を配置している。
【0033】
上記収納部15に収納された給水タンク内の水は、給水ポンプの駆動により、給水チューブ(図示せず)を介して蒸気発生装置13に供給される。蒸気発生装置13は、給水ポンプからの水を蒸気発生用ヒータ24で加熱して、水蒸気を発生させる。
【0034】
また、図4は上記加熱調理器の把手付きドア2を取り外した状態を前方かつ斜め下方から見た斜視図を示している。この図4では、図1〜図3に示す加熱調理器と同一の構成部に同一参照番号を付している。
【0035】
図4に示すように、加熱室8の天面側に配置された加熱用ヒータ26は、加熱室8内に露出している。この加熱用ヒータ26には、発熱体を絶縁物と金属シースで覆ったシーズヒータを用いている。
【0036】
図5は上記加熱調理器の要部を上方から見た上面図を示しており、詳しくは、加熱用ヒータ26をヒータ用碍子100を用いて加熱室8の天板8bに固定した状態を示している。図5に示すように、加熱室8の上面かつヒータ用碍子100に対応する位置に板状のカバー部材200を取り付けている。この実施の形態では、加熱用ヒータ26の1箇所の支持部分を1つのヒータ用碍子100により保持したが、加熱用ヒータ26を2以上のヒータ用碍子により保持してもよい。
【0037】
また、図6は図5のVI−VI線から見た断面図示しており、図6に示すように、ヒータ用碍子100は、略長方形状の肉厚の基部100aと、その基部100aの略中央から下方に延びた後に基部100aの長手方向に屈曲する屈曲部100bと、基部100aの上面かつ屈曲部100bが屈曲する側に設けられた位置決めのための凸部100cと、基部100aの屈曲部100bが屈曲する側と反対の側に設けられたねじ止め用の切り欠き120とを有する(図7参照)。ヒータ用碍子100の位置決めのための凸部100cは、ねじ止め用の切り欠き120に挿通させたねじを締め付けて天板8bにヒータ用碍子100を固定するときに、ヒータ用碍子100が回らないようにする回り止めの役割を果たす。
【0038】
なお、基部100aのねじ止め用の切り欠き120は、これに限らず、ねじ止め用の穴でもよい。また、ヒータ用碍子100は、これに限らず、位置決めのための凸部と、ねじ止め用の穴(またはねじ止め用の切り欠き)を有し、加熱室の天板にヒータを保持するものであればよい。
【0039】
また、図6に示すように、カバー部材200は、略長方形状の平板部200aと、平板部200aの中心からずれた位置かつヒータ用碍子100の凸部100cに対応する位置に設けられた凹部200bと、平板部200aの中心に対して略対象な位置に設けられたねじ穴200cと、平板部200aの外縁に沿うようにかつその外縁と間隔をあけて設けられた環状のシール用の溝210とを有する(図8参照)。
【0040】
カバー部材200の凹部200bは、下方から上方に向かって狭くなる円錐台の凸形状を形成することにより、その凸形状の内側に設けられている。なお、カバー部材200は、これに限らず、加熱室の天板の上面かつヒータ用碍子に対応する位置に取り付けられた板状のカバー部材であればよい。
【0041】
また、加熱室8の天板8bには、ヒータ用碍子100の凸部100cに対応する位置に、位置決め用の係止穴301を設けると共に、ヒータ用碍子100のねじ止め用の切り欠き120に対応する位置に、ねじ用の穴302を設けている(図9参照)。
【0042】
また、ヒータ用碍子100において、基部100aと屈曲部100bとの間に縦断面が略U字形状のヒータ係止凹部110が形成される。このヒータ用碍子100のヒータ係止凹部110内に加熱用ヒータ26の支持部分を保持した状態で、ヒータ用碍子100の凸部100cを加熱室8の天板8bに設けられた位置決め用の係止穴301に挿入すると共に、ねじ130をヒータ用碍子100のねじ止め用の切り欠き120に挿入し、加熱室8の天板8bのねじ用の穴302に挿入する。そして、カバー部材200のねじ穴200cにねじ130の先端側を螺合させて締め付ける。これによって、カバー部材200の凹部200bがヒータ用碍子100の凸部100cを覆うように、かつ、ヒータ用碍子100とカバー部材200で加熱室8の天板8bを上下方向両側から挟むように、ヒータ用碍子100とカバー部材200を加熱室8の天板8bに固定している。
【0043】
図7はヒータ用碍子100の上面図を示しており、図7に示すように、凸部100cと切り欠き120は、基部100aの中心を通る軸に対して略対象な位置に設けられている。
【0044】
図8はカバー部材200の上面図を示しており、図8に示すように、環状のシール用の溝210は、凹部200bとねじ穴200cの全周を囲むように形成されている。また、シール用の溝210は、略長方形状の平板部200aの外縁に沿うようにかつその外縁と間隔をあけて設けられている。このシール用の溝210内に加熱室8からの蒸気が侵入して結露すると、その結露水が表面張力によってシール用の溝210内を満たすことになる。これにより、シール用の溝210内に満たされた結露水によるウォーターシールの効果によって、加熱室8の天板とカバー部材200との間を密閉する。
【0045】
また、図9は加熱室8(図2〜図4に示す)の天板8bの要部の上面図を示しており、図9に示すように、加熱室8の天板8bに位置決め用の係止穴301およびねじ用の穴302を設けている。
【0046】
上記構成の加熱調理器において、必要量の水を入れた給水タンクを、タンク収納部15に収納した後、操作パネル3を操作して蒸気を用いた加熱調理を開始する。そうすると、給水ポンプを駆動して、給水タンク内の水を蒸気発生装置13に供給し、蒸気発生装置13に供給された水を蒸気発生用ヒータ24で加熱して、水蒸気を発生させる。そして、蒸気発生装置13で発生した水蒸気が加熱室8内に吹き出す。これにより、加熱室8内の食品は、水蒸気により加熱調理される。
【0047】
また、この加熱調理器では、蒸気発生装置13で発生した水蒸気のみを用いた蒸し料理に限らず、加熱用ヒータ26のみを用いたオーブン調理を行う。
【0048】
上記構成の加熱調理器によれば、ヒータ用碍子100を用いて加熱室8の天板8bに加熱用ヒータ26が固定された加熱調理器において、加熱室8の上面かつヒータ用碍子100に対応する位置に板状のカバー部材200を取り付けると共に、そのカバー部材200(またはカバー部材200により覆われる加熱室8の天板8bの領域)に、加熱室8の天板8bの少なくとも係止穴301の全周を囲むようにシール用の溝210を形成することによって、加熱室8の天板8bに設けられた係止穴301を介して加熱室8内から蒸気が外側に漏れても、漏れた蒸気がシール用の溝210内で結露し、その結露水で満たされたシール用の溝210によって、加熱室8の天板8bとカバー部材200との間をウォーターシールにより密閉する。これによって、ヒータ用碍子100を用いて加熱室8内に加熱用ヒータ26が保持された加熱調理器において、ヒータ用碍子100を位置決めするための穴からの蒸気漏れを簡単な構成で確実に防止できる。
【0049】
なお、シール用の溝として、加熱室の天板の少なくとも係止穴の全周を2重に囲む溝を形成してもよい。これによって、加熱室の天板とカバー部材との間をより確実に密閉することができる。
【0050】
また、上記加熱室の天板の係止穴の全周を囲むようにカバー部材にシール用の溝として第1の溝を形成し、カバー部材により覆われる加熱室の天板の領域に、加熱室の天板の係止穴の全周を囲むようにシール用の溝として第2の溝を形成してもよい。
【0051】
例えば、図10は他の実施の形態の要部の断面図示しており、図6と同一の構成部には同一参照番号を付している。この図10の断面と図6の断面との違いは、カバー部材200のシール用の溝210のさらに外側を囲むように、加熱室8の天板8bに係止穴301の全周を囲む第2の溝310を形成している点にある。ここで、カバー部材200のシール用の溝210が第1の溝である。このように、加熱室8の天板8bの少なくとも係止穴301の全周を2つの溝(210,310)で2重に囲むことによって、ヒータ用碍子100を位置決めするための係止穴301からの蒸気漏れをより確実に防止できる。
【0052】
また、上記加熱室8の天板8bの係止穴301から外方に突出するヒータ用碍子100の凸部100cの先端側がカバー部材200に干渉しないように、カバー部材200に凹部を形成することによって、加熱室8の天板8bへのカバー部材200の密着性を向上でき、シール用の溝210によるウォーターシールの効果が高くなる。
【0053】
また、上記カバー部材200により覆われる加熱室8の天板8bの領域に形成されたねじ用の穴302に、ヒータ用碍子100のねじ止め用の切り欠き120に通されたねじ130を挿入して、カバー部材200のねじ穴200cに螺合させて締め付ける。これにより、ヒータ用碍子100とカバー部材200により上下方向両側から加熱室8の天板8bを挟んで、ヒータ用碍子100とカバー部材200を加熱室8の天板8bに固定する。このため、加熱室8の天板8bの領域に形成されたねじ穴200cを介して加熱室8内から蒸気が漏れても、加熱室8の天板8bの係止穴301およびねじ用の穴302の全周を囲むように形成されたシール用の溝210により、カバー部材200と加熱室8の天板8bとの間を密閉することができる。
【0054】
また、カバー部材200の平板部200aの外縁に沿うようにかつその外縁と間隔をあけて環状のシール用の溝210を形成することにより、製造時に平板部200aの平面度を良好に保つことができ、シール効果を高めることができる。
【0055】
なお、この実施の形態では、シール用の溝210は、加熱室8の天板8bの係止穴301およびねじ用の穴302の全周を囲むように形成したが、加熱室8の天板8bの係止穴301のみの全周を囲むように形成してもよい。この場合、ねじ用の穴302は、カバー部材200のねじ穴200cにねじ130の締め付けることによって、カバー部材200のねじ穴200c近傍での金属シールにより蒸気漏れは生じない。
【0056】
上記実施の形態では、少なくとも1つの溝として環状のシール用の溝210が形成されたカバー部材200を備えた加熱調理器について説明したが、少なくとも1つの溝はこれに限らず、カバー部材により覆われる加熱室の天板の領域に少なくとも1つの溝を設けてもよいし、カバー部材およびそのカバー部材により覆われる加熱室の天板の領域の両方に少なくとも1つの溝を夫々設けてもよい。なお、カバー部材およびそのカバー部材により覆われる加熱室の天板の領域の両方に少なくとも1つの溝を夫々設けた場合は、カバー部材側の溝と加熱室の天板側の溝とは、重なり合わないようにすることがより好ましい。
【0057】
この発明の加熱調理器は、ヒータ用碍子を位置決めするための係止穴からの蒸気漏れを、自ら発生する蒸気を用いて形成したウォーターシールにより防ぐものであり、他のシール剤またはシール部材を用いないので、耐熱性および食品衛生上の観点から極めて有効である。
【0058】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…ケーシング
2…把手付きドア
3…操作パネル
4…露受容器
6…前脚
7…液晶表示部
8…加熱室
8a…開口
8b…天板
9…電装品室
10…吸気空間
11…遮熱板
13…蒸気発生装置
15…タンク収納部
16…冷却ファン
21…間仕切壁
24…蒸気発生用ヒータ
26…加熱用ヒータ
51…マグネトロン
100…ヒータ用碍子
100a…基部
100b…屈曲部
100c…凸部
110…ヒータ係止凹部
120…ねじ止め用の切り欠き
130…ねじ
200…カバー部材
200a…平板部
200b…凹部
200c…ねじ穴
210…シール用の溝
301…位置決め用の係止穴
302…ねじ用の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱するための加熱室と、
上記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生装置と、
上記加熱室内の上側に配置されたヒータと、
上記加熱室内の天板側に取り付けられ、上記ヒータを上記加熱室の天板に保持するヒータ用碍子と、
上記加熱室の天板の上面かつ上記ヒータ用碍子に対応する位置に取り付けられた板状のカバー部材と
を備え、
上記加熱室の天板に、上記ヒータ用碍子の位置決めのための凸部が係止される係止穴が形成され、
上記カバー部材または上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域の少なくとも一方に、上記加熱室の天板の少なくとも上記係止穴の全周を囲むように少なくとも1つの溝が形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
上記少なくとも1つの溝は、上記カバー部材または上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域の少なくとも一方に、上記加熱室の天板の少なくとも上記係止穴の全周を2重に囲むように形成された2つの溝であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
上記少なくとも1つの溝は、
上記カバー部材に、上記加熱室の天板の上記係止穴の全周を囲むように形成された第1の溝と、
上記カバー部材により覆われる上記加熱室の天板の領域に、上記加熱室の天板の上記係止穴の全周を囲むように形成された第2の溝であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つに記載の加熱調理器において、
上記加熱室の天板の上記係止穴から外方に突出する上記ヒータ用碍子の上記凸部の先端側が上記カバー部材に干渉しないように、上記カバー部材に凹部が形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の加熱調理器において、
上記ヒータ用碍子は、ねじ止め用の穴またはねじ止め用の切り欠きを有し、
上記加熱室の天板に、上記ヒータ用碍子の上記ねじ止め用の穴または上記ねじ止め用の切り欠きに通されたねじが貫通するねじ用の穴が形成され、
上記加熱室の天板の上記ねじ用の穴に対応する上記カバー部材の位置に、上記ねじが螺合するねじ穴が形成され、
上記少なくとも1つの溝は、上記加熱室の天板の上記係止穴および上記ねじ用の穴の全周を囲むように形成されていることを特徴とする加熱調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−88098(P2013−88098A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231867(P2011−231867)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)