説明

加硫性ゴム組成物および加硫ゴム成形体

【解決手段】[A]エチレン−プロピレン系共重合体エラストマーと、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーのうちから選ばれる1種または2種の熱可塑性エラストマー、[B]エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、[C]有機過酸化物、[D](i) エチレン性不飽和含フッ素化合物類、および/または、(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類、からなることを特徴とする加硫性ゴム組成物。
【効果】通常のカーボンブラック配合系あるいはメタクリル酸金属塩配合系のゴム材料(加硫物)が本来有する機械的強度を保持しつつ、長期的に安定したシール特性を有し、低摩擦性、非粘着性などに優れた加硫ゴム成形体が得られるような加硫性ゴム組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、加硫性ゴム組成物および加硫ゴム成形体に関し、さらに詳しくは、通常のカーボンブラック配合系あるいはメタクリル酸金属塩配合系のゴム材料(加硫物)が本来有する機械的強度を保持しつつ、長期的に安定したシール特性を有し、低摩擦性、非粘着性などに優れた加硫ゴム成形体が得られるような加硫性ゴム組成物および加硫ゴム成形体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】未加硫ゴムにジメタアクリル酸亜鉛または塩基性メタクリル酸亜鉛を混合し、有機過酸化物で架橋することは古くから知られており、例えば、以下のような技術が知られている。
(1) 米国特許第1091818号には、エチレン・プロピレン系ゴムにジメタアクリル酸金属塩と有機過酸化物とを混合して有機過酸化物で架橋することにより、強度に優れた加硫ゴムが得られることが記載されている。
(2) 英国特許第159477号には、ポリブタジエンゴムに塩基性メタクリル酸亜鉛を混合してラジカル発生剤で加硫したゴムをコア材とするゴルフボールが記載されている。
(3) 特開昭59-149938号公報には、天然ゴム並びに共役ジエン系ゴムに、表面積約3.7〜約5.4m2/g以上のジメタクリル酸亜鉛と、カーボンブラックまたはクレーと有機過酸化物加硫剤とを配合してこの有機過酸化物加硫剤で架橋してなる架橋ゴム組成物は、優れた強度特性を有する旨記載されている。
(4) 特開平1-306440号公報等には、『(a)重合体類中の共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系高飽和共重合ゴム100重量部:(b)メタクリル酸と亜鉛のモル比が1/0.5〜1/3であるメタクリル酸の亜鉛塩で20μ以上の粗粒子を5%以下とした化合物10〜100重量部:および(c)有機過酸化物0.2〜10重量部を配合してなることを特徴とする加硫性ゴム組成物』が記載され、このゴム組成物は、加硫後には500kgf/cm2以上の引張強度を有することが記載されている。
【0003】上記(1)〜(4)に記載の公報に示すようにメタクリル酸亜鉛などを配合してなる上記ゴム材料は、強度に優れるが、低摩擦性、非粘着性に劣り、金型離型性が非常に悪いという問題点がある。しかもこのようなゴム材料は、摩擦係数が大きいため、シール部材などに使用すると優れた密着性、変形等に対する追従性を示すが、このようなゴム材料が用いられた機器の消費電力を増大させ、また、いわゆる“鳴き現象”やスティック-スリップ(付着滑り)を誘発し、激しく摩耗して、機器装置の性能を低下させ、耐久性を損なわせるなどの問題点がある。
【0004】ところで、ゴム材料を低摩擦化、非粘着化する手法として、ゴム材料にPE、PTFE、POM、ポリエステル等の樹脂粉末を混入する方法(固体潤滑剤添加法)、ゴム材料にPEG、シリコーンオイル、フッ素化オイル等のオイルを混入する方法(ブリード法)、あるいは、ゴム成形体の表面を樹脂にて被覆する方法(表面被覆法)などが知られている。
【0005】固体潤滑剤添加法では、成形体自身の機械的強度が低下したり、ゴム弾性を低下させ、相手材への追従性が劣るようになる傾向があり、さらに、圧縮永久歪も大きくなる傾向がある。
【0006】ブリード法では、得られる成形体自身の機械的強度が小さく、しかもオイルのブリード(滲出)速度が大きく、成形体の寿命にバラツキがあったり、成形体から滲出したオイルが相手材を汚染したりするという問題点がある。
【0007】表面被覆法では、得られる樹脂被覆成形体を構成しているゴム成形体と表面被覆層との密着性が低下する虞があるため、シール部材として実際に機器に組み込んで動的状態で使用するには不向きであり、また樹脂被覆成形体表面のゴム弾性が低下して相手材への追随性が劣るようになる傾向がある。
【0008】なお、高強度で摩擦係数の小さな材料としては、シリコーンを配合してなる自己潤滑型熱可塑性あるいは熱硬化性ウレタン材料が知られている。しかしながら自己潤滑型熱可塑性あるいは熱硬化性ウレタン材料には、耐熱性、耐加水分解性に劣るという問題点がある。
【0009】このように、長期的に安定したシール特性、低摩擦性および非粘着性を有し、優れた強度を有し、耐熱性および耐加水分解性に優れた加硫ゴムが得られるような加硫性ゴム組成物は未だ見出されていない。
【0010】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、ゴム材料が本来有するシール性、変形追随性等の特性を保持しつつ、強度、耐熱性、耐加水分解性、非粘着性、低摩擦性に優れた加硫ゴム成形体が得られるような加硫性ゴム組成物を提供することを目的としている。
【0011】また、本発明は、ゴム材料が本来有するシール性、変形追随性などの特性を保持しつつ、強度、耐熱性、耐加水分解性、非粘着性、低摩擦性に優れた加硫ゴム成形体を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】本発明に係る加硫性ゴム組成物は、[A]エチレン−プロピレン系共重合体エラストマーと、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーのうちから選ばれる1種または2種の熱可塑性エラストマー、[B]エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、[C]有機過酸化物、[D](i) エチレン性不飽和含フッ素化合物類、および/または(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類、からなることを特徴としている。
【0013】本発明の好ましい態様においては、上記成分[A]100重量部に対して、成分[B]は0〜100重量部の量で、成分[C]は0.2〜15重量部の量で、および成分[D]は2〜40重量部の量で含まれていることが好ましい。
【0014】本発明の上記加硫性ゴム組成物には、さらにゴム補強剤[E]および/または架橋助剤[F]が含まれていてもよい。このような加硫性ゴム組成物では、上記成分[A]100重量部に対して、上記量の成分[B]および成分[C]に加えて、ゴム補強剤[E]は100重量部以下、好ましくは0〜70重量部の量で、また架橋助剤[F]は30重量部以下、好ましくは0〜15重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0015】また、成分[D]は、エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)であることが好ましい。この加硫性ゴム組成物を加硫してなる成形体は、ゴム材料が本来有するシール性、変形追従性等の特性を保持しつつ、強度、耐熱性、耐加水分解性、非粘着性、低摩擦性に優れている。
【0016】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る加硫性ゴム組成物および加硫ゴム成形体について具体的に説明する。
[加硫性ゴム組成物]本発明に係る加硫性ゴム組成物は、[A]■エチレン−プロピレン系共重合体エラストマーと、■過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーのうちから選ばれる1種または2種の熱可塑性エラストマー、[B]エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、[C]有機過酸化物[D](i) エチレン性不飽和含フッ素化合物類、および/または、(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類、からなっている。
【0017】上記熱可塑性エラストマー[A]■(過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマー)としては、その平均分子量が、通常1万〜200万のものが用いられる。熱可塑性エラストマー[A]■のうちで、■エチレン−プロピレン系共重合エラストマーとしては、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとからなる三元共重合ゴムであって、エチレンとプロピレンとの重量比(エチレン/プロピレン)が通常、90/10〜20/80のものが挙げられる。
【0018】この非共役ジエンとしては、分岐を有していてもよい脂環式、鎖式非共役ジエンの何れであってもよく、脂環式非共役ジエンとしては、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられ、鎖式非共役ジエンとしては、具体的には、例えば、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、これらのうちでは脂環式のものが好ましく、特にエチリデンノルボルネンが最も好ましい。
【0019】[A]■過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーとしては、例えば、(a):フッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィンとの共重合体(a-1)、あるいはフッ化ビニリデンと、含フッ素エチレン性二重結合含有エステル系またはエーテル系化合物との共重合体(a-2)、(b):テトラフルオロエチレン−プロピレン二元共重合体およびテトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン三元共重合体、(c):上記(a)および(b)の共重合体中にパーオキサイド架橋に有効な架橋サイトモノマーを導入したもの、(d):含フッ素多元セグメント化ポリマーなどが挙げられる。
【0020】フッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィンとからなる上記共重合体(a-1)を製造する際に用いられる「他の含フッ素オレフィン」としては、炭素数2〜8個程度の鎖状または環状オレフィンを構成している水素原子の全部または1部がフッ素原子にて置換されているか、該水素原子の1部がフッ素原子にて置換され、かつ、残部水素原子の全てあるいは残部水素原子のうちの1部がハロゲン原子(例:塩素、臭素等)にて置換されているものなどが挙げられ、このような「他の含フッ素オレフィン」としては、具体的には、例えば、ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、あるいはトリフルオロクロロエチレンなどが挙げられる。
【0021】上記フッ化ビニリデンと、含フッ素エチレン性二重結合含有エステル系またはエーテル系化合物との共重合体(a-2)を製造する際に用いられる含フッ素エチレン性二重結合含有エステル系あるいはエーテル系化合物としては、具体的には、例えば、エステル系化合物のパーフルオロ(メタ)アクリル酸−アルキルエステル、(メタ)アクリル酸−パーフルオロアルキルエステル、パーフルオロ(アクリル酸アルキルエステル)などのように、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成している炭素数1〜10程度のアルキル基中の水素原子の80%以上好ましくは全部および/または(メタ)アクリル酸残基中の水素原子の80%以上好ましくは全部がフッ素置換されたもの、あるいはエーテル系化合物のパーフルオロメチル−ビニルエーテル、パーフルオロプロピル−ビニルエーテル、パーフルオロメチル−パーフルオロビニルエーテル、パーフルオロプロピル−パーフルオロビニルエーテルなどのように、アルキルビニルエーテルを構成している炭素数1〜10程度のアルキル基中の水素原子の80%以上好ましくは全部および/またはビニル基中の水素原子の80%以上好ましくは全部がフッ素置換されたものなどが挙げられる。
【0022】これらの含フッ素オレフィン、含フッ素エチレン性二重結合含有エステル系あるいはエーテル系化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】本発明では、上記のような(a)フッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィンとの共重合体のうちでは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン2元共重合体およびフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン三元共重合体が好ましく用いられる。
【0024】(c):上記(a)および(b)の共重合体中にパーオキサイド架橋に有効な架橋サイトモノマーを導入してなるフルオロエラストマーとしては、さらに具体的には、例えば、(i)テトラフルオロエチレン(TFE)と、(ii)パーフルオロメチルパーフルオロビニルエーテル(PMVE)[パーフルオロ(メチルビニルエーテル)]と、(iii)硬化部位(架橋サイト)を持つ単量体との3元共重合体が挙げられる。
【0025】この(iii)硬化部位を持つ単量体としては、具体的には、例えば、パーフルオロ(4−シアノブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(4−カーボメトキシブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(3−フェノキシプロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)などが挙げられる。これらの硬化部位を持つ単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】含フッ素多元セグメント化ポリマーとしては、例えば、式[I]:Y−[(A)n−X]m・・・・[I]
で表わされるものが挙げられる。
【0027】式[I]中、Yは、ヨウ素化物(アイオダイド化合物)、臭素化物等のハロゲン化物からハロゲン原子を除いた残基を示す。Aは、ポリマー鎖セグメントを示す。nは、ポリマー鎖セグメント数を示し2または3である。
【0028】複数(n個)のポリマー鎖セグメントAのうちの少なくとも1種は、該ポリマー鎖セグメント中の水素原子の全部または1部がフッ素置換されており、これら複数のポリマー鎖セグメントAは、それぞれ独立に、エラストマー性ポリマー鎖セグメントまたは非エラストマー性ポリマー鎖セグメントの何れかであり、n個のポリマー鎖セグメントAには、両者のセグメントを含む。
【0029】Xは、ヨウ素、臭素等のハロゲン原子を示し、mは、上記ハロゲン化物から除かれたハロゲン原子の数に対応する数を表す。このようなポリマー鎖セグメントAを形成するエラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントとしては、■ビニリデンフルオライド/(ヘキサフルオロプロピレンまたはペンタフルオロプロピレン)/テトラフルオロエチレン(モル比45〜90/5〜50/0〜35)ポリマー、および■パーフルオロ(炭素数1〜3のアルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド(モル比15〜75/0〜85/0〜25)ポリマーから選択された、分子量30000(3万)〜1200000(120万)のポリマー鎖セグメントが挙げられる。
【0030】そして、非エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントとしては、■エチレン/テトラフルオロエチレン/[ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン-1、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピレン-1またはパーフルオロ(炭素数1〜3のアルキルビニルエーテル)](モル比35〜60/60〜35/1〜30)ポリマー、■ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン(モル比0〜100/0〜100)ポリマー、および■エチレン/テトラフルオロエチレン(モル比40〜60/40〜60)ポリマーから選択された、分子量3000〜400000(40万)のポリマー鎖セグメントが挙げられる。(但し、上記モル比は、何れも合計で100モルとする。)
上記の両セグメントの重量比(エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメント/非エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメント)は、通常、40〜95/5〜60(両セグメント合計100重量部)である。
【0031】この熱可塑性エラストマーのポリマー鎖セグメントAの連鎖として、エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントの両側に非エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントが結合した形態をとるときが、熱可塑性エラストマーとして、最も有用な形態となる。
【0032】その他のエラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントとしては、トリフルオロニトロソメタン/テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/プロピレン、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン、トリフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド/ペンタフルオロプロピレン、ビニルフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン等のコポリマーが挙げられる。
【0033】また、その他の非エラストマー性ランダムポリマー鎖セグメントとしては、ポリスチレン等が挙げられる。ハロゲン化物(アイオダイド化合物)としては、モノヨウドパーフルオロメタン、モノヨウドパーフルオロエタン、モノヨウドパーフルオロプロパン、モノヨウドパーフルオロブタン(例:2ヨウドパーフルオロブタン、1-ヨウドパーフルオロ(1,1-ジメチルエタン))、モノヨウドパーフルオロペンタン(例:1-ヨウドパーフルオロ(4-メチルブタン))、1-ヨウドパーフルオロ-n-ノナン、モノヨウドパーフルオロシクロブタン、2-ヨウドパーフルオロ(1-シクロブチル)エタン、モノヨウドパーフルオロシクロヘキサン、モノヨウドトリフルオロシクロブタン、モノヨウドジフルオロメタン、モノヨウドモノフルオロメタン、2-ヨウド-1-ハイドロパーフルオロエタン、3-ヨウド-1-ハイドロパーフルオロプロパン、モノヨウドモノクロロジフルオロメタン、モノヨウドジクロロモノフルオロメタン、2-ヨウド-1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、4-ヨウド-1,2-ジクロロパーフルオロブタン、5-ヨウド-1,2-ジクロロパーフルオロヘキサン、4-ヨウド-1,2,4-トリクロロパーフルオロブタン、1-ヨウド-2,2-ジハイドロパーフルオロプロパン、1-ヨウド-2-ハイドロパーフルオロプロパン、モノヨウドトリフルオロエチレン、3-ヨウドパーフルオロプロペン-1,4-ヨウドパーフルオロペンテン-1、4-ヨウド-5-クロロパフルオロペンテン-1、2-ヨウドパーフルオロ(1-シクロブテニル)エタン、1,3-ジヨウドパーフルオロ-n-プロパン、1,4-ジヨウドパーフルオロ-n-ブタン、1,3-ジヨウド-2-クロロパーフルオロ-n-プロパン、1,5-ジヨウド-2,4-ジクロロパーフルオロ-n-ペンタン、1,7-ジヨウドパーフルオロ-n-オクタン、1-ヨウドパーフルオロデカン、1,12-ジヨウドパーフルオロドデカン、1,16-ジヨウドパーフルオロヘキサデカン、1,2-ジ(ヨウドジフルオロメチル)パーフルオロシクロブタン、2-ヨウド-1,1,1-トリフルオロエタン、1-ヨウド-1-ハイドロパーフルオロ(2-メチルエタン)、2-ヨウド-2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2-ヨウド-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2-ヨウドパーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテル、2-ヨウドパーフルオロエチルパーフルオロイソプロピルエーテル、3-ヨウド-2-クロロパーフルオロブチルパーフルオロメチルチオエーテル、3-ヨウド-4-クロロパーフルオロ酪酸などが例示される。
【0034】これらのうちでは、炭素数1〜16(好ましくは炭素数1〜8)のパーハロゲン化炭化水素であって、そのハロゲン原子の少なくとも1個(好ましくは相互に隣接する2個の炭素原子上において1個のみ)がヨウ素原子であり、他のハロゲン原子がフッ素原子またはフッ素原子と塩素原子からなるもの(ただし、塩素原子が存在する場合、その数はフッ素原子の数よりも多いことはなく、かつ1個の炭素原子上には1個を越える塩素原子が存在することはない。)である。ただし、該ハロゲン化物(アイオダイド化合物)は、その何れか2個の隣接する炭素原子間に酸素原子(−O−)を有していてもよく、また、−CF2H、−CF3などの置換基を有していてもよい。
【0035】ラジカル発生源としては、上記末端ハロゲンX(例:ヨウ素)と上記Yとの結合の解裂によってラジカルを生成させうるものが用いられる。このようなラジカル発生源としては、赤外〜紫外領域の光、熱、放射線、ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0036】ラジカル重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物(例:3,5,6−トリクロロパーフロロヘキサノイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等)、アゾ化合物(例:アゾビスイソブチロニトリル)、有機金属化合物、金属(例:Li、K、Na、Mg、Zn、Hg、Al等)等が挙げられる。
【0037】本発明では、上記式[I]で表わされる含フッ素系多元セグメント化ポリマー[I]のポリマー鎖末端の少なくとも一部を、下記のような不飽和結合を有する化合物で変性したものを、上記■過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーとして用いることもできる。
【0038】このような変性剤としての不飽和結合を有する化合物としては、具体的には、例えば、アリルアルコール、α−メチルスチレン、ジアリルフタレート、テトラアリルピロメリテート等が挙げられる。
【0039】本発明では、上記■エチレン−プロピレン系共重合エラストマー、あるいは■過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーは、過酸化物架橋可能な限り、上記例に限定されず、例えば、これらのエラストマーには、上記以外の「その他のモノマー」由来の構成単位が含まれていてもよく、またこれらのエラストマーは、上記以外の「その他のポリマー」にて変性されていてもよい。
エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B](成分[B])は、下記のようなエチレン性不飽和カルボン酸と金属との塩であって、エチレン性不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸等の不飽和モノカルボン酸:マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸:マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチルなどの不飽和ジカルボン酸のモノエステル:前記以外の不飽和多価カルボン酸および少なくとも1価のフリーのカルボキシル基を残存・保有する不飽和多価カルボン酸のエステル等が挙げられる。
【0040】金属としては、上記のカルボン酸と塩を形成し得るものであれば、特に制限されないが、具体的には、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Hg、Al、Sn、Pb、Sb等が挙げられ、これらの内では、Zn、Mg、Ca、Alが好ましく用いられる。
【0041】このようなエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]としては、メタクリル酸の亜鉛塩、メタクリル酸のMg塩、メタクリル酸のCa塩、メタクリル酸のAl塩、アクリル酸の亜鉛塩、アクリル酸のMg塩が挙げられ、メタクリル酸の亜鉛塩、アクリル酸の亜鉛塩が好ましく用いられる。このようなエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】なお、エチレン性不飽和カルボン酸と金属とのモル比[エチレン性不飽和カルボン酸/金属]は、1/0.5〜1/3の範囲であることが望ましい。また、エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]の粒子径は、特に限定されないが、20μm以下であることが好ましく、このような粒子径のエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]を使用すると、優れた特性の加硫性ゴム組成物が得られる。
【0043】このような粒子径のエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]は、特開平1-306440号公報に記載の方法により得られる。このようなエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]は、上記成分[A]100重量部に対して0〜100重量部の量で、好ましくは5〜50重量部の量で加硫性ゴム組成物中に含まれている。
【0044】なお、本発明においては、この成分[B]は、エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩として加硫性ゴム組成物中に含まれているが、また、加硫性ゴム組成物中でエチレン性不飽和カルボン酸と金属(あるいは金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩など)とからエチレン性不飽和カルボン酸金属塩を形成してもよい。このような金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩等には、20μm以上の粗粒子が含まれないことが好ましい。
有機過酸化物[C]有機過酸化物[C](成分[C])としては、一般的なゴムの過酸化物架橋に使用される有機過酸化物が用いられる。
【0045】このような有機過酸化物[C]として、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。これらの内では、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0046】これらの有機過酸化物は、1種または2種以上組み合わされて用いることができる。本発明においては、上記[A]成分100重量部に対して、有機過酸化物[C]は、0.2〜15重量部、好ましくは1〜10重量部の量で用いられる。
【0047】エチレン性不飽和含フッ素化合物類およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類[D]成分[D]としては、(i) エチレン性不飽和含フッ素化合物類と、(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類のうちの(i)または(ii)のいずれか一方、あるいは(i)と(ii)の両方が用いられる。
【0048】このエチレン性不飽和含フッ素化合物類およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類[D]は、低摩擦・非粘着性を加硫物に付与する部位と加硫物製造時に化学反応性を示す部位とを有するモノマーあるいはマクロモノマー(マクロモノマーとは、通常、その分子量が数百〜数万程度であり、重合性官能基を有し、モノマーとみなし得る化合物をいう。)であって、このような成分[D]が含まれた加硫性ゴム組成物からは、強度、低摩擦性および非粘着性に優れた加硫ゴム成形体を製造することができる。
【0049】エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)は、低摩擦・非粘着性を加硫物に付与せしめる(ポリ)フルオロアルキル、(ポリ)フルオロアルキレン、(ポリ)フルオロエーテル等から選ばれる少なくとも一種類を分子骨格中に保有している。
【0050】エチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)は、低摩擦・非粘着性を加硫物に付与せしめるジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、トリメチルフルオロプロピルシロキサン等のオルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される。この単独重合体または共重合体から誘導される部位には、長鎖アルキル基、フロロアルキル基、アルキレンオキシド基等が付加して変性されていてもよい。また、上記オルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される部位に、アルキレンオキシド、シルフェニレン、シルエチレン、スチレン等の重合性モノマーを共重合させ、あるいはポリカボネート、ナイロン、ポリウレタン等のポリマーを結合させて、上記オルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される部位は変性されていてもよい。
【0051】上記エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)には、化学反応性を示すビニル基、ビニリデン基、メタクリロキシプロピル基等のエチレン結合(C=C)を有する基が存在している。このエチレン結合を有する基は、エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)の片末端あるいは両末端に存在していてもよく、また側鎖(ブランチ)に存在していてもよい。また、エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)中に存在するエチレン結合の個数は、1個以上であれば特に限定されない。
【0052】エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)としては、■(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは8〜15程度の含フッ素アルコールとのエステル[但し、該含フッ素アルコールには、炭素数1〜5程度の低級アルキル基、-OH基などからなる分岐を有していてもよく、該アルコール中の主鎖炭素原子は、「−SO2N−」などで置換されていてもよく、該「−SO2N−」中の窒素原子(N)は、炭素数1〜10程度のアルキル基からなる分岐を有していてもよい。]、■エチレン性二重結合を1〜5個程度含有する含フッ素不飽和炭化水素系化合物などが挙げられる。
【0053】このようなエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)の分子量は、通常、100〜1万、好ましくは150〜5000、さらに好ましくは200ないし1000程度である。
【0054】このようなエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)として、具体的には、例えば、下記表1〜2に示すものが挙げられ、このうち化合物番号(ニ)、(ト)は■に包含され、それ以外は■に包含される。このような表1〜2に示すエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)の中では、上記■[(メタ)アクリル酸エステルと含フッ素アルコールとのエステル]が好ましく、さらには、化合物番号(ロ)、(ハ)、(ホ )が好ましく用いられる。これらの含フッ素化合物類は、1種または2種以上組合せて用いることができる。なお、以下の表中Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
【0055】
【表1】


【0056】
【表2】


【0057】エチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)としては、具体的には、例えば、下記表3〜6に示すものが挙げられ、表3〜6の中では、化合物番号(2)、(3)、(1)が好ましく用いられる。これらのオルガノシロキサン類は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
【表3】


【0059】
【表4】


【0060】
【表5】


【0061】
【表6】


【0062】このような成分[D]は、成分[A]100重量部に対して2〜40重量部の量で、好ましくは5〜25重量部の量で用いられる。この成分[D]が2重量部未満では、低摩擦、非粘着性に優れた加硫ゴム成形体を製造し得るような加硫性ゴム組成物が得られないことがあり、また、40重量部を超えると加硫性ゴム組成物の練り加工性が低下し、得られる加硫ゴム成形体の機械的強度が低下することがある。また、成分[D](ii)の分子量は、通常、300〜50000好ましくは500〜20000であることが望ましい。
【0063】このような加硫性ゴム組成物では、加硫成形加工する際に、有機過酸化物[C]により、該組成物中のエチレン性不飽和カルボン酸の金属塩[B]および成分[D](エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)および/またはエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii))が共重合されるか、あるいは、熱可塑性エラストマー[A]に、その[B]および[D]成分が単独もしくは共重合して結合されることにより、低摩擦、非粘着性に優れた加硫ゴム成形体が得られる。
【0064】このような加硫ゴム成形体では、成分[D]がゴムマトリックス中に強固に化学結合により固定されているため、この加硫ゴム成形体がパッキン等のシール部材あるいは摺動材として使用され、摺動時の剪断力もしくは圧縮などの応力、または熱などの外界からの刺激を受けても成分[D]はゴムマトリックスから脱離しにくく、また、ゴムマトリックス内での移動は制限される。このため、本発明に係る加硫性ゴム組成物を加硫すると、成分[D]が添加されていない従来のゴム材料が元来もっている優れた耐熱性、耐加水分解性、機械的強度、耐摩耗性を有し、しかも低摩擦性、非粘着性にも優れた加硫ゴム成形体が得られるのであろうと思われる。
【0065】このような加硫性ゴム組成物は、上記成分[A]、[B]、[C]および[D]を、好ましくは成分[A]100重量部に対して、成分[B]:0〜100重量部、成分[C]:0.2〜15重量部、成分[D]:2〜40重量部の量で配合し、通常のゴム混合機(例:ロール、バンバリー、ニーダー等)により混練することにより製造される。また、このように成分[D]が含まれた加硫性ゴム組成物からなる加硫ゴム成形体は非粘着性となり、成型加工時の金型離型性に優れている。
【0066】このようにして得られた加硫ゴム成形体では、通常、その引張強度が150kgf/cm2以上、好ましくは200kgf/cm2以上、さらに好ましくは290kgf/cm2以上であり、摩擦係数が通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.0以下であり、耐熱温度が通常280℃以上、好ましくは320℃以上である。この引張強度、摩擦係数、耐熱温度の測定法については、後述する。
【0067】なお、本発明の加硫性ゴム組成物には、上記成分[A]〜[D]の他に、ゴム補強剤[E]および/または架橋助剤[F]が含まれていてもよい。ゴム補強剤[E]としては、カーボンブラック、無機系補強剤(例:シリカ、炭酸マグネシウム、けい酸マグネシウム、ハードクレー等)、有機系補強剤(例:ハイスチレン樹脂、環化ゴム、クマロン・インデン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、変性メラミン樹脂等のアミノ樹脂、ビニルトルエン共重合樹脂、リグニン等)が挙げられ、これらの内では、カーボンブラックが好ましく用いられる。このようなゴム補強剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このようなゴム補強剤[E]は、成分[A]100重量部に対して、通常100重量部以下の量で、さらに好ましくは0〜70重量部の量で用いられる。
【0068】架橋助剤[F]としては、エチレン性二重結合(C=C)を2個以上有するものが用いられ、具体的には、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、1,3-ブチレンジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられ、トリアリルイソシアヌレートが好ましく用いられる。このような架橋助剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】このような架橋助剤[F]は、成分[A]100重量部に対して、通常30重量部以下の量で、さらに好ましくは0〜15重量部の量で用いられる。なお、本発明の加硫性ゴム組成物には、上記成分[A]〜[D]の他に、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の他のモノマーが含まれていてもよい。 また、本発明の加硫性ゴム組成物には、必要に応じて、ゴム工業で通常使用される種々の薬剤例えば、可塑剤、安定剤、加工助剤、固体潤滑剤(例:PTFEオリゴマー)の他、顔料、充填剤等が含まれていてもよい。
【0070】充填剤としては、炭酸カルシウム、けい酸アルミニウム、タルク、けい藻土、マイカ、アルミナホワイト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブリデン、グラファイト等の無機系充填剤;再生ゴム、ゴム粉末、エボナイト粉末、熱硬化性樹脂中空球、サラン中空球、セラミック、木粉、コルク粉末、ポリビニルアルコール繊維、セルロースパウダー、紙、布等の有機系充填剤;が挙げられる。
【0071】
【発明の効果】本発明に係る加硫ゴム成形体は、通常のカーボンブラック配合系あるいはメタクリル酸金属塩配合系のゴム材料(加硫物)が本来有する引張強さなどの機械的強度、伸びなどの特性を保持しつつ、長期的に安定したシール特性を有し、低摩擦性、非粘着性、耐熱性、耐加水分解性などに優れている。
【0072】本発明に係る加硫性ゴム組成物によれば、通常のカーボンブラック配合系あるいはメタクリル酸金属塩配合系のゴム材料(加硫物)が本来有する機械的強度を保持しつつ、長期的に安定したシール特性を有し、低摩擦性、非粘着性、耐熱性、耐加水分解性に優れた加硫ゴム成形体が得られる。
【0073】
【実施例】以下、本発明について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、表中、各成分単位の配合量は、「重量部」表示である。
【0074】
【実施例1〜2、比較例1〜4】表7〜8に示すような組成の加硫性ゴム組成物を調製した。この加硫性ゴム組成物を、表7〜8に示す条件下に加硫して、引張強度、伸び、硬さ等の加硫物性、粘着性、摩擦係数、耐熱性(耐熱強度)、耐加水分解性を測定した。
【0075】結果を表7〜8に示す。なお、表中で使用した原料物性、測定条件等を以下に示す。
(1)エスプレン501A:住友化学工業(株)製,エチレン−プロピレン系3元共重合ゴム:エチレン/プロピレン/非共役ジエン(エチリデンノルボルネン)共重合物、比重0.86。
(2)ダイエルG1001:ダイキン工業(株)製,パーオキサイド加硫可能な3元系フッ素ゴム[成分:()フッ化ビニリデン/()ヘキサフルオロプロピレン/()テトラフルオロエチレン共重合物、比重1.99]。
(3)ノンフレックスRD:精工化学社製,2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物。
(4)亜鉛華1号:堺化学工業社製,亜鉛華。
(5)ルナックS−20:花王石鹸社製,ステアリン酸。
(6)シースト116:東海電極製造(株)製,カーボンブラック(high abrasion furnace black)。
(7)ハイクロスM:精工化学社製,多官能性メタクリレートモノマー。
(8)Perkadox14/40:日本油脂(株)製の有機過酸化物系加硫剤[α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン,純度40%]。
(9)Zn(MAA)2:浅田化学(株)製,メタクリル酸亜鉛。
(10)フロラードFx13:住友スリーエム(株)製,パーフロロアルキルアクリレート[2-(Nエチルパーフロロオクタスルホアミド)エチルアクリレート]。
(11)タイク:日本化成(株)製,トリアリルイソシアヌレート。
(12)サーモブラックMT:キャンカーブ社製,カーボンブラック(medium thermal furnace black)。
(13)パーヘキサ25B:日本油脂社製,2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン。
(14)カルナバワックス:加藤洋行社製。
(15)加硫物性:JIS K 6301に準拠して測定。
(16)粘着力:レオロジー社製のタックテスターにより、相手材としてSUS41を荷重1.0kgf/cm2、速度300mm/分で2秒間圧締した時の粘着力を測定した。
(17)摩擦係数:スラスト式摩擦試験機を用いて、図1R>1に概念的に示すような方法で被測定物(加硫ゴム成形体)の摩擦係数を測定した。すなわち、被測定物(各加硫ゴム成形体)1の上部に付番3で示すリング状の金属SS41をセットし、この加硫ゴム成形体1の下方から上方のリング状金属3に向かって荷重2kgf/cm2を加えた状態で、速度0.1m/秒の条件のもとにこの加硫ゴム成形体1上の金属リング3を回転させることにより、被測定物の摩擦係数を測定した。
【0076】摩擦係数測定条件、摩擦係数の算出法を以下に示す。
[摩擦係数測定条件]
機種:スラスト式摩擦摩耗試験機 TT100C型(三井造船(株)製)
ゴムシート試料サイズ:縦横共に40mm×厚さ2mm金属リングサイズ:φ25.6×φ20×8L(接触面積:2.0×10-42、摺動半径:11.457mm)
金属リング材質:SS41 Rmax2μm程度面圧:0.196MPa速度:0.1m/s摺動距離:5km(時間:13.889hr)
雰囲気:温度23℃±2、相対湿度50%±10金属リング前処理:摺動面を試験前にカーボンランダム(GC1200KIRAIT KENMAZAI)を用いて、定盤上の新聞紙上で仕上げる。
[摩擦係数の算出法]単位時間に得られる摩擦係数の値は、摺動時間とともに経時変化するため、摩擦係数の平均値として求める。
【0077】すなわち、摩擦試験を行うと、例えば、図2R>2に示すようなデータが得られる。この図2中、横軸は摺動時間(hr)を示し、縦軸は摩擦係数(μ)を示す。この図2に示すように、得られたデータ(図2)は、摺動時間に伴う摩擦係数変動面積(図2中、符号Aで示す黒い帯状部分)となって現れる。
【0078】このため、摩擦係数の平均値の算出方法は、得られたデータ(図2)の帯状部分(A)の1/2幅(帯の上下の面積が同一)になるような位置に、摺動時間軸(横軸)に平行な線(B)を引き、このときの摩擦係数を摩擦係数平均値として読み取る。このように、本発明では、摩擦係数の値は、摩擦係数の平均値で示す。
(18)耐熱温度(耐熱性):レオロジー社製の「レオスペクトラーDVE−V14」を用いて温度依存性で周波数11Hz、変位振幅4μm、昇温速度10℃/分の条件下に動的粘弾性を測定した。ゴム状領域を維持し得る最高温度領域を耐熱性(耐熱温度)の指標として用いた。本発明の実施例において耐熱性を決定するための指標として用いた動的粘弾性の測定データを図3に示す。図3中、ゴム状領域を維持し得る最高温度領域は符号「A」で示されている。
(19)耐加水分解性:耐熱水試験を80℃×5000時間行った後に、引張強度を測定した。充分な強度を有していたものを白丸(○)で示し、強度が不十分であったものを(×)で示した。
【0079】なお、表中の各成分の量は、何れも重量部表示である。
【0080】
【表7】


【0081】
【表8】


【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例で用いられる摩擦摩耗試験機(松原式摩擦摩耗試験機の原理説明図である。
【図2】図2は、摩擦摩耗試験機により測定された摩擦試験データの例である。
【図3】図3は、本発明の実施例において耐熱性を決定するための指標として用いた動的粘弾性の測定データを示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・・被測定物(各加硫ゴム成形体)
3・・・・リング状の金属(SS41)

【特許請求の範囲】
【請求項1】[A]エチレン−プロピレン系共重合体エラストマーと、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーのうちから選ばれる1種または2種の熱可塑性エラストマー、[B]エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、[C]有機過酸化物、[D](i) エチレン性不飽和含フッ素化合物類、および/または、(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類、からなることを特徴とする加硫性ゴム組成物。
【請求項2】ゴム補強剤[E]および/または架橋助剤[F]がさらに含まれていることを特徴とする請求項1に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項3】上記成分[A]100重量部に対して、成分[B]:0〜100重量部、成分[C]:0.2〜15重量部、成分[D]:2〜40重量部からなることを特徴とする請求項1に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項4】上記成分[A]100重量部に対して、成分[B]:0〜100重量部、成分[C]:0.2〜15重量部、成分[D]:2〜40重量部、ゴム補強剤[E]:100重量部以下、架橋助剤[F]:30重量部以下からなることを特徴とする請求項2に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項5】請求項1〜4の何れかに記載の加硫性ゴム組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平9−249723
【公開日】平成9年(1997)9月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−61411
【出願日】平成8年(1996)3月18日
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)