説明

加速度センサの異常判定方法

【課題】高精度な異常判定を行うことができる加速度センサ1の異常判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】制御部に、水平面に対して基準角度を有する面上で加速度センサ1に第1加速度値G1を検出させ、第1加速度値G1を検出させた後に同じ面上で加速度センサ1に第2加速度値G2を検出させ、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値が第1異常判定閾値ΔG1より大きいか否かを判定させ、絶対値が第1異常判定閾値ΔG1より大きいときに加速度センサ1に異常があると判定させる。このような加速度センサ1の異常判定方法によれば、第1加速度値G1および第2加速度値G2が水平面に対して同じ基準角度を有する面上で検出されているので、従来の異常判定閾値のように第1異常判定閾値ΔG1を他のセンサの出力等から推定する必要がなく、加速度センサ1の異常判定を高精度に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサの異常判定方法に関し、特に車両に搭載されている加速度センサの経年変化に対する異常判定に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている角速度センサは、経年変化によりオフセット値にずれが生じる場合がある。このため、このような角速度センサでは、検出されたオフセット値と予め設定されているオフセット値との差により、オフセット補正が行われたり、角速度センサの異常判定が行われたりする。
【0003】
例えば、特許文献1において、車両が静止状態であるか否かを判定して、車両が静止している状態であると判定した際に角速度センサにオフセット値を検出させ、検出されたオフセット値と予め設定されているオフセット値との差が異常判定閾値を超えていない場合にはオフセット補正を行い、異常判定閾値を超えている場合には角速度センサに異常があると判定するセンサ装置が開示されている。
【0004】
また、車両に搭載されている加速度センサにおいても、同様に、経年変化によりオフセット値にずれが生じる場合がある。加速度センサでは、加速度の影響を受けない車両静止時においても車両姿勢の影響を受けてしまうため、正確なオフセット値を検出することは困難である。このため、加速度センサの異常判定を行う場合には、車両に搭載されている角速度センサ、舵角センサおよび車輪速センサ等の出力値から加速度センサのオフセット値を推定し、この推定値と実際に加速度センサで検出されたオフセット値との差が予め設定されている異常判定閾値を超えた場合に加速度センサが異常であると判定する異常判定方法が知られている。このような異常判定方法では、角速度センサ、舵角センサおよび車輪速センサ等の出力誤差や車両姿勢による影響を考慮し、異常判定閾値は0.4Gとされている。
【特許文献1】特開2005−331332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的な加速度センサの検出レンジは1.5G程度であり、0.4Gという値は加速度センサの27パーセントもの出力変動に相当することになるが、上記のように加速度センサの異常判定閾値は各センサの出力誤差や車両姿勢の影響を考慮しなければならないため、0.4Gより小さい値を異常判定閾値として設定することはできない。このため、加速度センサでは、低精度の異常判定しか行うことができないという問題がある。
【0006】
また、上記のように加速度センサでは車両姿勢の影響を受けるため正確なオフセット値を検出することが困難であり、オフセット補正は行われていない。このため、異常判定にて加速度センサに異常がないと判定された場合においても、実際は、異常判定閾値内で加速度センサにより検出されるオフセット値が異なっている場合があり、加速度の検出も低精度にしか行えない場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、高精度な異常判定を行うことができる加速度センサの異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、加速度センサ(1)と、加速度値が記憶される記録媒体(3)と、加速度値を記録媒体(3)に記憶させる制御部(100、110、200〜240)と、を有し、制御部(100、110、200〜240)が、水平面に対して基準角度を有する面上で加速度センサ(1)に第1加速度値を検出させるステップ(100)と、加速度センサ(1)で検出させた第1加速度値を記録媒体(3)に記憶させるステップ(110)と、第1加速度値を検出させた後に水平面に対して基準角度を有する面上で加速度センサ(1)に第2加速度値を検出させるステップ(200)と、第1加速度値と第2加速度値との差分の絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)と、絶対値が第1異常判定閾値より大きいときに加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)と、を行うことを特徴としている。
【0009】
このような加速度センサ(1)の異常判定方法によれば、第1加速度値および第2加速度値が水平面に対して同じ基準角度を有する面上で検出されており、第1加速度値と第2加速度値との差分の絶対値を用いて加速度センサ(1)の異常判定を行っているため、従来の異常判定閾値のように他のセンサの出力や第1加速度値および第2加速度値が検出される傾斜角度の影響を考慮しなくてよい。このため、従来の異常判定閾値より小さい値を第1異常判定閾値に設定することができ、従来の加速度センサより加速度センサ(1)の異常判定を高精度に行うことができる。
【0010】
例えば、請求項2に記載の発明のように、制御部(100、110、200〜240)に、絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)の前に、絶対値が第1異常判定閾値よりも小さい値を有する第2異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(210)を行わせ、絶対値が第2異常判定閾値より大きいときに絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)を行わせ、絶対値が第1異常判定閾値より小さいときに加速度センサ(1)のオフセット値を補正するステップ(230)を行わせることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明のように、記録媒体(3)を記録の更新が可能なもので構成し、オフセット値の補正を行うステップ(230)に、記録媒体(3)に記憶されている第1加速度値を第2加速度値に基づいて更新することを含むようにすることもできる。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明のように、第1加速度値を検出させるステップ(100)および第2加速度値を検出させるステップ(200)を加速度センサ(1)が水平面上にあるときに行わせることもできる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明のように、制御部(100、110、200〜240)が、水平面に対する傾斜角度が第1所定角度である面上で加速度センサ(1)に第1加速度値を検出させるステップ(100)と、第1加速度値を水平面に対して基準角度を有する面上で検出させた値となる第1換算値に換算し、第1換算値を記録媒体(3)に記憶させるステップ(110)と、第1加速度値を検出させた後に水平面に対する傾斜角度が第2所定角度である面上で加速度センサ(1)に第2加速度値を検出させるステップ(200)と、第2加速度値を水平面に対して基準角度を有する面上で検出させた値となる第2換算値に換算するステップ(210)と、第1換算値と第2換算値との差分の絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)と、を行うようにすることもできる。
【0014】
このような加速度センサ(1)の異常判定方法によれば、第1加速度値および第2加速度値を傾斜角度が異なる面上で検出させた場合でも、第1加速度値および第2加速度値を水平面に対して基準角度を有する面上で検出させた値となる第1換算値および第2換算値に換算しており、第1換算値と第2換算値との差分の絶対値を用いて異常判定を行っているため、従来の異常判定閾値のように他のセンサの出力や第1加速度値および第2加速度値が検出される傾斜角度の影響を考慮しなくてよい。このため、従来の異常判定閾値より小さい値を第1異常判定閾値に設定することができ、従来より加速度センサ(1)の異常判定を高精度に行うことができる。
【0015】
また、請求項8に記載の発明のように、制御部(100、110、200〜240)が、第1加速度値および第2加速度値を水平面に対して基準角度を有する面上で検出させた値となる第1換算値および第2換算値に換算するステップ(210)を行うようにすることもできる。
【0016】
また、請求項6および請求項9に記載の発明のように、制御部(100、110、200〜240)に、加速度値を換算値に換算するステップ(210)では第1換算値と第2換算値との差分の絶対値が第1異常判定閾値よりも小さい値を有する第2異常判定閾値より大きいか否かを判定させ、絶対値が第2異常判定閾値より大きいときに絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定させ、絶対値が第1異常判定閾値より小さいときに加速度センサ(1)のオフセット値を補正するステップ(230)を行わせることができる。
【0017】
さらに、請求項7に記載の発明のように、記録媒体(3)を記録の更新が可能なもので構成し、オフセット値の補正を行うステップ(230)では、記録媒体(3)に記憶されている第1換算値を第2換算値に基づいて更新させることができる。また、請求項10に記載の発明のように、記録媒体(3)に記憶されている第1加速度値を第2換算値に基づいて更新させることもできる。
【0018】
そして、請求項11に記載の発明のように、加速度センサ(1)を車両に搭載し、第1加速度値を検出させるステップ(100)を加速度センサ(1)が車両に取り付けられたときに行わせることができる。
【0019】
さらに、請求項12に記載の発明のように、加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)では、制御部(100、110、200〜240)の外部に加速度センサ(1)に異常があることを示す信号を送信させるようにすることができる。
【0020】
また、このような加速度センサ(1)の異常判定方法を、加速度センサ(1)と加速度と異なる物理量の変化に応じて信号を出力する物理量センサとを有して構成される複合センサに適用することもできる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本実施形態の加速度センサの異常判定方法が適用されるセンサシステムのブロック図である。なお、本実施形態に用いられるセンサシステムは車両に搭載されている。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のセンサシステムは加速度センサ1、マイクロコンピュータ2(以下、マイコンという)および本発明の記録媒体に相当するメモリ3を有して構成されている。
【0024】
加速度センサ1は、例えば、梁構造を有する加速度検出素子と、その梁の変位量に基づき検出される加速度を信号処理する信号処理回路とを有して構成される周知のものを用いることができ、ブラケット等を介して車両に取り付けられている。
【0025】
マイコン2は制御部等を備えた周知のもので構成されており、車両ECU4と接続されている。また、マイコン2は制御部内の図示しないメモリに記憶された制御プログラムに従って、所定の処理を実行する。
【0026】
制御部は、車両ECU4から送信された加速度値検出信号を受信すると加速度センサ1に加速度値を検出させるものである。また、制御部には予め異常判定閾値が設定されており、制御部は加速度センサ1で検出された加速度値に基づいて加速度センサ1に異常があるか否かの異常判定を行うものである。
【0027】
車両ECU4は外部からの信号に基づいて加速度センサ1に加速度値検出信号を制御部に送信するものである。
【0028】
メモリ3は加速度センサ1で検出された加速度値を記憶するものであり、例えば、記録の更新が可能であるEEPROM等が用いられる。
【0029】
次に本実施形態の加速度センサ1の異常判定方法について説明する。まず、加速度センサ1が車両に取り付けられた直後に、加速度センサ1が水平面と平行になるように車両を配置し、制御部に第1加速度値G1を検出させる。そして、第1加速度値G1が検出されてから所定期間経過後に、例えば、車検時等に、再び加速度センサ1が水平面と平行になるように車両を配置し、制御部に第2加速度値G2を検出させる。そして、制御部に、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値と異常判定閾値とを比較させることにより加速度センサ1に経年変動等による異常があるか否かを判定させる。以下に、加速度センサ1の異常判定方法の具体的な手順について説明する。なお、本実施形態では、車両を水平面上に配置した状態で第1加速度値G1および第2加速度値G2を検出させているので、第1加速度値G1および第2加速度値G2は加速度センサ1のオフセット値に相当するものである。
【0030】
図2は、制御部がメモリ3に第1加速度値G1を記憶させるときの書き込み処理を示すフローチャートである。制御部は、車両ECU4から加速度値検出信号を受信したときに以下の処理を行い、本実施形態では車両に加速度センサ1を取り付けた直後に第1加速度値G1を検出させる。
【0031】
図2に示されるように、ステップ100では、車両ECU4から加速度値検出信号を受信すると、加速度センサ1に第1加速度値G1を検出させてステップ110へ進む。なお、このステップ100では、第1加速度値G1は、車両姿勢の影響を受けないように車両が水平な面上に配置されていると共に、車両が静止している状態で検出される。そして、ステップ110では、第1加速度値G1をメモリ3に書き込んで記憶させ処理を終了する。
【0032】
図3は、制御部が異常判定処理をするときのフローチャートであり、例えば、第1加速度値G1が検出されてから所定期間経過後の車検時等に行われる。この異常判定処理は制御部が車両ECU4から送信された加速度値検出信号を受信したと判定すると行われる。
【0033】
ステップ200では、第1加速度値G1を検出させてから所定期間経過後、例えば、半年後に、再び車両ECU4から加速度値検出信号を受信すると、加速度センサ1に第2加速度値G2を検出させてステップ210へ進む。なお、ステップ200では、ステップ100と同様に、第2加速度値G2は、車両姿勢の影響を受けないように車両が水平な面上に配置されていると共に、車両が静止している状態で検出される。
【0034】
続いて、ステップ210では、メモリ3に記憶されている第1加速度値G1を読み込み、第1加速度値G1とステップ200で検出させた第2加速度値G2との差分の絶対値と、第2異常判定閾値ΔG2との比較を行う。具体的には、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値が第1異常判定閾値ΔG1より大きいか否かを判定し、差分の絶対値が、第2異常判定閾値ΔG2より大きいと判定した場合にはステップ220へ進み、第2異常判定閾値ΔG2より小さいと判定した場合には処理を終了する。なお、第2異常判定閾値ΔG2は、従来のように他のセンサの出力誤差や第1加速度値G1および第2加速度値G2が検出されたときの車両姿勢の影響を考慮しなくてよいため、例えば、0.01Gとすることができる。
【0035】
ステップ220では、さらに、第1加速度値G1とステップ200で検出させた第2加速度値G2との差分の絶対値と第1異常判定閾値ΔG1との比較を行う。具体的には、ステップ210と同様に、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値が第1異常判定閾値ΔG1より大きいか否かを判定し、差分の絶対値が、第1異常判定閾値ΔG1より小さいと判定した場合にはステップ230へ進み、第1異常判定閾値ΔG1より大きいと判定した場合にはステップ240へ進む。なお、この第1異常判定閾値ΔG1も第2異常判定閾値ΔG2と同様に、従来のように他のセンサの出力誤差や第1加速度値G1および第2加速度値G2が検出されたときの車両姿勢の影響を考慮しなくてよいため、例えば、0.1Gとすることができる。
【0036】
そして、ステップ230では、ステップ200で検出させた第2加速度値G2に基づいてオフセット値の補正を行うと共に、メモリ3に記憶される第1加速度値G1を第2加速度値G2に基づいて更新する。メモリ3に記憶される加速度値の更新は、本実施形態ではメモリ3に記憶される加速度値を第1加速度値G1から第2加速度値G2に更新することで行われる。このため、加速度センサ1の異常判定を次に行う場合には、新たにメモリ3に記憶させた第2加速度値G2と所定期間経過後に検出される加速度値に基づいて行われることになる。
【0037】
また、ステップ240では、図示しない警報機に加速度センサ1が異常であることを示す信号を送信し、警報機を作動させることで作業者に加速度センサ1に異常があることを知らせる。
【0038】
このような加速度センサ1の異常判定方法によれば、車両姿勢の影響を受けないように第1加速度値G1および第2加速度値G2を検出しており、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値に基づいて加速度センサ1の異常判定を行っているので、従来の異常判定閾値のように他のセンサの出力誤差や第1加速度値G1および第2加速度値G2が検出されるときの車両姿勢の影響を考慮しなくてもよく、第1異常判定閾値ΔG1を従来の加速度センサの異常判定閾値よりも低い値に設定することができる。このため、従来の加速度センサの異常判定方法よりも高精度に加速度センサ1の異常判定をすることができる。具体的には、本実施形態では第1異常判定閾値ΔG1を0.1Gとすることができ、従来の加速度センサの異常判定方法よりも四倍の精度を得ることができる。
【0039】
また、車両姿勢の影響を受けないように高精度に第2加速度値G2が検出されているので、加速度センサ1のオフセット値の補正をすることもできる。
【0040】
(他の実施形態)
また、上記第1実施形態では、第1加速度値G1および第2加速度値G2は加速度センサ1が水平面と平行になるように車両が水平面上に配置された状態で検出されているが、第1加速度値G1および第2加速度値G2は、水平面に対する傾斜角度が同じ所定角度である面上でそれぞれ検出されるようにしてもよいし、水平面に対する傾斜角度が異なる面上でそれぞれ検出されるようにしてもよい。
【0041】
この場合は、例えば、上記ステップ210で、制御部に、車両に搭載されている傾斜角センサ等で測定された車両が配置されている面の傾斜角度を用いて、第1加速度値G1および第2加速度値G2を水平面上で検出させた値となるように第1換算値および第2換算値に換算させ、第1換算値と第2換算値との差分の絶対値を用いて上記ステップ210およびステップ220の判定を行わせることができると共に、第2換算値を用いて上記ステップ230のオフセット値の補正を行わせることができる。また、上記ステップ230のオフセット値の補正が行われる際に、メモリ3に記憶されている第1加速度値G1を第2換算値に基づいて更新させることもできる。
【0042】
また、例えば、上記ステップ110で、制御部に、車両に搭載されている傾斜角センサ等で測定された傾斜角度を用いて、第1加速度値G1を水平面上で検出させた値となるように第1換算値に換算させ、第1換算値をメモリ3に記憶させることができる。そして、上記ステップ210で、制御部に再び、車両に搭載されている傾斜角センサ等で測定された傾斜角度を用いて第2加速度値G2を水平面上で検出させた値となるように第2換算値に換算させ、第1換算値および第2換算値を用いて上記ステップ210およびステップ220の判定を行わせると共に、第2換算値を用いて上記ステップ230のオフセット値の補正を行わせることもできる。また、上記ステップ230のオフセット値の補正を行わせる際に、メモリ3に記憶されている第1換算値を第2換算値に基づいて更新させることもできる。
【0043】
さらに、予め角度計等により車両が配置される面の傾斜角度を求めておき、この傾斜角度を用いて、制御部に、第1加速度値G1および第2加速度値G2を水平面上で検出させた値となるように第1換算値および第2換算値に換算させ、この第1換算値および第2換算値を用いて上記ステップ210およびステップ220の判定を行わせると共に、第2換算値を用いて上記ステップ230のオフセット値の補正を行わせてもよい。
【0044】
また、メモリに3に記憶されている加速度値または換算値を、上記ステップ230のオフセット値の補正が行われる際に、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分または第1換算値と第2換算値との差分に基づいて更新させることもできる。
【0045】
さらに、上記第1実施形態では、センサシステムを構成するメモリ3が車両に搭載されている例を挙げて説明したが、メモリ3は車両に搭載されていなくてもよい。また、メモリ3は加速度センサ1に組み込まれていてもよいし、マイコン2に組み込まれていてもよい。そして、メモリ3はEEPROMに限定されるものではなく、例えば、更新不可能なRAMを用いて用いることもできる。この場合は、ステップ230における加速度センサ1のオフセット値を補正するときに、メモリ3に第2加速度値G2をメモリ3に記憶させることはできないが、制御部の誤作動によるメモリ3の更新を防止することができる。
【0046】
また、上記第1実施形態において、複数の加速度センサ1を用いてセンサシステムを構成してもよい。例えば、異なる軸方向の加速度の検出を行うことができるように、加速度センサ1をそれぞれ同じブラケットを介して車両に配置した場合には、制御部は、加速度センサ1に異常があると判定する上記ステップ240のときに、加速度センサ1に異常があるのかブラケットに異常があるのかを判定することができる。具体的には、制御部に、上記ステップ220の判定を行ったときに、それぞれの第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値が第1異常判定閾値ΔG1より大きいと共に、各加速度センサ1で得られた第2加速度値G2の値が大きく異なる場合には、各加速度センサ1は同じように経年変化すると推定されるため、加速度センサ1に異常があるのではなく、ブラケットが経年変化により異常な状態であると判定させることができる。このため、上記ステップ240において、例えば、加速度センサ1が異常であると判定した場合とブラケットに異常があると判定した場合とで警報機の作動のさせ方を異ならせて作業者に警告してもよい。
【0047】
さらに、上記第1実施形態では、ステップ210では、第1加速度値G1と第2加速度値G2との差分の絶対値が第2異常判定閾値ΔG2を超える場合にステップ220へ進むフローとされているが、第2異常判定閾値ΔG2を0とし、第1加速度値G1と第2加速度値G2との値が異なる場合にステップ220へ進む構成としてもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態では、制御部は、車両ECU4から送信された加速度値検出信号に基づいて加速度センサ1に第1加速度値G1および第2加速度値G2を検出させているが、加速度値検出信号を外部から制御部に直接送信して加速度センサ1に第1加速度値G1および第2加速度値G2を検出させてもよい。
【0049】
さらに、上記第1実施形態では、マイコン2に備えられている制御部にて加速度センサ1の異常判定処理を行っているが、例えば、車両ECU4に備えられている制御部を用いて行うこともできる。
【0050】
また、本発明の加速度センサ1の異常判定方法は、加速度センサ1と、加速度と異なる物理量に対して変化する物理量センサとの複合センサに適用することができ、例えば、加速度センサ1と角速度センサとを有して構成されるイナーシャセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態における異常判定方法に用いられるセンサシステムのブロック図を示す図である。
【図2】制御部がメモリに第1加速度値を記憶させる際の書き込み処理を示すフローチャートである。
【図3】制御部が加速度センサの異常判定処理をする際のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 加速度センサ
2 マイコン
3 メモリ
4 車両ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度の変化に応じて信号を出力する加速度センサ(1)と、
前記加速度センサ(1)で検出された加速度値が記憶される記録媒体(3)と、
前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値を前記記録媒体(3)に記憶させる制御部(100、110、200〜240)と、を有し、
前記制御部(100、110、200〜240)にて、前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値に基づいて前記加速度センサ(1)の異常判定を行う加速度センサ(1)の異常判定方法であって、
水平面に対して基準角度を有する面上で前記加速度センサ(1)に第1加速度値を検出させるステップ(100)と、
前記加速度センサ(1)で検出させた第1加速度値を前記記録媒体(3)に記憶させるステップ(110)と、
前記第1加速度値を検出させた後に水平面に対して前記基準角度を有する面上で前記加速度センサ(1)に第2加速度値を検出させるステップ(200)と、
前記第1加速度値と前記第2加速度値との差分の絶対値が第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)と、
前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいときに前記加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)と、を行うことを特徴とする加速度センサの異常判定方法。
【請求項2】
前記制御部(100、110、200〜240)は、前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)の前に、前記第1加速度値と前記第2加速度値との差分の前記絶対値が前記第1異常判定閾値よりも小さい値を有する第2異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(210)を行い、前記絶対値が前記第2異常判定閾値より大きいときに前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)を行い、前記絶対値が前記第1異常判定閾値より小さいときに前記加速度センサ(1)のオフセット値を補正するステップ(230)を行うことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項3】
前記記録媒体(3)は記録の更新が可能なもので構成されており、前記オフセット値の補正を行うステップ(230)では、前記記録媒体(3)に記憶されている前記第1加速度値を前記第2加速度値に基づいて更新することを含むことを特徴とする請求項2に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項4】
前記第1加速度値を検出させるステップ(100)および前記第2加速度値を検出させるステップ(200)を前記加速度センサ(1)が水平面上にあるときに行わせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項5】
加速度の変化に応じて信号を出力する加速度センサ(1)と、
前記加速度センサ(1)で検出された加速度値に基づいて換算される換算値が記憶される記録媒体(3)と、
前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値を前記記録媒体(3)に記憶させる制御部(100、110、200〜240)と、を有し、
前記制御部(100、110、200〜240)にて、前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値に基づいて前記加速度センサ(1)の異常判定を行う加速度センサ(1)の異常判定方法であって、
水平面に対する傾斜角度が第1所定角度である面上で前記加速度センサ(1)に第1加速度値を検出させるステップ(100)と、
前記第1加速度値を水平面に対して基準角度を有する面上で検出させた値となる第1換算値に換算し、前記第1換算値を前記記録媒体(3)に記憶させるステップ(110)と、
前記第1加速度値を検出させた後に水平面に対する傾斜角度が第2所定角度である面上で前記加速度センサ(1)に第2加速度値を検出させるステップ(200)と、
前記第2加速度値を水平面に対して前記基準角度を有する面上で検出させた値となる第2換算値に換算するステップ(210)と、
前記第1換算値と前記第2換算値との差分の絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)と、
前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいときに前記加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)と、を行うことを特徴とする加速度センサの異常判定方法。
【請求項6】
前記第2加速度値を前記第2換算値に換算するステップ(210)では、前記第1換算値と前記第2換算値との差分の前記絶対値が前記第1異常判定閾値よりも小さい値を有する第2異常判定閾値より大きいか否かを判定することを含み、前記絶対値が前記第2異常判定閾値より大きいときに前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいか否かの判定を行い、前記絶対値が前記第1異常判定閾値より小さいときに前記加速度センサ(1)のオフセット値を補正するステップ(230)を行うことを特徴とする請求項5に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項7】
前記記録媒体(3)は記録の更新が可能なもので構成されており、前記オフセット値の補正を行うステップ(230)では、前記記録媒体(3)に記憶されている前記第1換算値を換算された前記第2換算値に基づいて更新することを含むことを特徴とする請求項6に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項8】
加速度の変化に応じて信号を出力する加速度センサ(1)と、
前記加速度センサ(1)で検出された加速度値が記憶される記録媒体(3)と、
前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値を前記記録媒体(3)に記憶させる制御部(100、110、200〜240)と、を有し、
前記制御部(100、110、200〜240)にて、前記加速度センサ(1)で検出された前記加速度値に基づいて前記加速度センサ(1)の異常判定を行う加速度センサ(1)の異常判定方法であって、
水平面に対する傾斜角度が第1所定角度である面上で前記加速度センサ(1)に第1加速度値を検出させるステップ(100)と、
前記加速度センサ(1)で検出させた第1加速度値を前記記録媒体(3)に記憶させるステップ(110)と、
前記第1加速度値を検出させた後に水平面に対する傾斜角度が第2所定角度である面上で前記加速度センサ(1)に第2加速度値を検出させるステップ(200)と、
前記第1加速度値および前記第2加速度値に所定の演算を行い、第1加速度値および第2加速度値は傾斜角度が同じである面上で検出された値となるように第1加速度値および第2加速度値を第1換算値および第2換算値に換算するステップ(210)と、
前記第1換算値と前記第2換算値との差分の絶対値と前記第1異常判定閾値より大きいか否かを判定するステップ(220)と、
前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいときに前記加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)と、を行うことを特徴とする加速度センサの異常判定方法。
【請求項9】
前記第1加速度値および前記第2加速度値を前記第1換算値および前記第2換算値に換算するステップ(210)では、前記第1換算値と前記第2換算値との差分の前記絶対値が前記第1異常判定閾値よりも小さい値を有する第2異常判定閾値より大きいか否かを判定することを含み、前記絶対値が前記第2異常判定閾値より大きいときに前記絶対値が前記第1異常判定閾値より大きいか否かの判定を行い、前記絶対値が前記第1異常判定閾値より小さいときに前記加速度センサ(1)のオフセット値を補正するステップ(230)を行うことを特徴とする請求項8に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項10】
前記記録媒体(3)は記録の更新が可能なもので構成されており、前記オフセット値の補正を行うステップ(230)では、前記記録媒体(3)に記憶されている前記第1加速度値を換算された前記第2換算値に基づいて更新することを含むことを特徴とする請求項9に記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項11】
前記加速度センサ(1)は車両に搭載されており、前記第1加速度値を検出させるステップ(100)を前記加速度センサ(1)が前記車両に取り付けられたときに行わせることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項12】
前記加速度センサ(1)に異常があると判定するステップ(240)では、前記制御部(100、110、200〜240)の外部に前記加速度センサ(1)に異常があることを示す信号を送信することを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の加速度センサの異常判定方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の加速度センサ(1)の異常判定方法は、前記加速度センサ(1)と前記加速度と異なる物理量の変化に応じて信号を出力する物理量センサとを有して構成される複合センサに適用されることを特徴とする複合センサの異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−276072(P2009−276072A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124722(P2008−124722)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)