説明

加飾シート及びその製造方法

【課題】透明樹脂フィルムを接着剤にて接着させても気泡の発生を抑制し、意匠が損なわれてしまうのを防止し得るとともに、当該透明樹脂フィルムを短時間で接着可能とする加飾フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シート状に形成された木材1の表面に所定処理が施された処理層5が形成されるとともに、当該処理層5上に透明樹脂フィルム7が形成された加飾シートにおいて、処理層5(下塗り層2、着色層3及び中塗り層4)の表面側に光硬化型接着剤で構成される光硬化型接着剤層6を有するとともに、当該光硬化型接着剤にて透明樹脂フィルム7が接着されて成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成された加飾シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車内の装飾や家具の装飾として、木目を用いたものが多く提供されており、特に印刷で木目を施した木目調ではなく、実際の木材を用い、その木目(本木目)を意匠としたものが使用者に好んで受け入れられているのが実情である。この場合、シート状に形成された木材の表面に対して平滑加工や着色加工などの処理が施され、更にその上面にアクリルフィルム等の透明樹脂フィルムを接着剤にて接着させて成る加飾シートが従来より提案されている。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の加飾フィルムにおいては、透明樹脂フィルムを接着させるための接着剤が揮発成分を多く含むものであったため、当該透明樹脂フィルムを接着させた後、気泡の発生により表面の意匠(本木目意匠)が損なわれる虞があった。また、揮発成分を含む汎用的な接着剤においては、接着に長時間要するものがあるという不具合もあった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透明樹脂フィルムを接着剤にて接着させても気泡の発生を抑制し、意匠が損なわれてしまうのを防止し得るとともに、当該透明樹脂フィルムを短時間で接着可能とする加飾フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成された加飾シートにおいて、前記処理層の表面側に光硬化型接着剤で構成される光硬化型接着剤層を有するとともに、当該光硬化型接着剤にて前記透明樹脂フィルムが接着されて成ることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の加飾シートにおいて、前記処理層は、前記木材の表面に形成され、浸透防止材で構成された下塗り層と、該下塗り層の表面に形成され、着色材で構成される着色層と、該着色層の表面に形成され、表面が略平滑とされる中塗り層とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の加飾シートにおいて、前記木材の裏面には、不織布又は紙で構成された補強層が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成された加飾シートの製造方法において、前記処理層の表面側に光硬化型接着剤を塗布する光硬化型接着剤塗布工程と、該光硬化型接着剤塗布工程により塗布された光硬化型接着剤上に前記透明樹脂フィルムを載置しつつ紫外線または可視光線を照射して当該透明樹脂フィルムを接着させる接着工程とを有したことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の加飾シートの製造方法において、前記処理層は、前記木材の表面に浸透防止材を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、前記下塗り層の表面に着色材を塗布して着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色層の表面に中塗り材を塗布することにより前記木材の導管部を埋めて略平滑にする中塗り層形成工程とを経て形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の加飾シートの製造方法において、前記木材の裏面に、不織布又は紙で構成された補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、4の発明によれば、光硬化型接着剤にて透明樹脂フィルムが接着されるので、透明樹脂フィルムを接着剤にて接着させても気泡の発生を抑制し、意匠が損なわれてしまうのを防止し得るとともに、当該透明樹脂フィルムを短時間で接着可能とする。
【0012】
請求項2、5の発明によれば、下塗り層でその後塗布される着色材及び中塗り材の木材への浸透を防止し、着色層にて木材の表面における木目の色調を調整し、中塗り層にて表面を平滑化することができる。
【0013】
請求項3、6の発明によれば、木材の裏面に、不織布又は紙で構成された補強層を形成するので、破損等してしまうのを抑制し、その後の加工(成形等)を容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る加飾シートは、シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成されたものから成り、例えば自動車などの車内の装飾や家具の装飾として用いられるものである。かかる加飾シートは、図1に示すように、木材1と、下塗り層2と、着色層3と、中塗り層4と、光硬化型接着剤層6と、透明樹脂フィルム7と、補強層8と、プライマー層9とから主に構成されている。
【0015】
木材1は、例えば0.2〜0.8mm程度の厚さにスライスされてシート状に形成されたものから成り、少なくともその表面に木目(本木目)を有している。この木材1は、天然素材故、図2で示すように、その表面(裏面も同様であるが図示していない)に微小凹部から成る導管部pが多数形成されている。
【0016】
補強層8は、木材1の裏面に形成された不織布又は紙で構成された層であり、所望の接着剤にて接着されることにより、加飾シート全体の剛性を向上させて補強し得るようになっている。これにより、その後の加工過程における破損等を抑制し、当該加工を容易とすることができる。この補強層8の裏面には、プライマー層9が形成されている。かかるプライマー層9は、更なる裏面から射出成形したとき、その樹脂と一体化し易いように必要に応じた材質から成るとともに一体化の容易化のための必要に応じた処理が施されたものである。このプライマー層9は必要に応じて形成される。
【0017】
一方、木材1の表面側には、下塗り層2、着色層3及び中塗り層4から成る処理層5が形成されている。このうち下塗り層2は、木材1の表面に形成され、浸透防止材で構成されたもので、その後塗布される着色材及び中塗り材が木材1に浸透してしまうのを防止し得るものである。例えば、下塗り層2は、ウレタン系のシーラを塗布することにより形成され、常温で60分乾燥させて約20μmの厚さで形成されるものが好ましい。尚、下塗り層2は、図3に示すように、木材1の導管部pに入り込んで形成されるものの、その表面は未だ導管部pに倣った微小凹部が形成されることとなる。
【0018】
着色層3は、下塗り層2の表面に形成され、着色材で構成されるものである。即ち、木材1は、天然素材故、その木目の色調には種々変化があることから、例えばウレタン系着色塗料などをスプレーし、色調の調整を行うためのものである。例えば、着色層3は、下塗り層2と同様、着色材を常温で60分乾燥させて約20μmの厚さで形成されるものが好ましい。尚、着色層3は、図3に示すように、下塗り層2の微小凹部に入り込んで形成されるものの、その表面は未だ微小凹部(導管部p)に倣った微小凹部が形成されることとなる。
【0019】
中塗り層4は、着色層3の表面に形成され、図3に示すように、塗布により表面が略平滑にされる中塗り材から成るもので、例えばウレタン系軟質塗料から成る。例えば、中塗り層4は、中塗り材を常温で60分程度乾燥させて約50μmの厚さで形成されるものが好ましい。この中塗り層4は必要に応じて形成されるものであり、例えば木材1の導管部pが浅いものの場合、省略することができる。
【0020】
光硬化型接着剤層6は、紫外線(UV)または可視光線を照射することにより硬化し得る光硬化型接着剤(紫外線硬化型接着剤含む)から成るものであり、例えば10〜100g/mの塗布量で処理層5(具体的には中塗り層4)上に塗布される。この光硬化型接着剤は、揮発成分をほとんど含有しない接着剤であり、透明性が極めて良好とされている。接着においては、例えば出力80W/cmのランプで15秒程度紫外線や可視光線などの光を照射することにより光硬化型接着剤を硬化させ、透明樹脂フィルム7を接着し得るようになっている。
【0021】
透明樹脂フィルム7は、光硬化型接着剤にて接着されて木材1の木目及び処理層5を保護するためのものであり、例えば0.05〜2.0mm程度(更に好ましくは0.2〜0.5mm程度)の厚さの硬質アクリルフィルムから成るものである。この硬質アクリルフィルムから成る透明樹脂フィルム7は、塗膜に匹敵する物性を有するとともに、柔軟性に富むことから、従来のインモールド用成形機による成形が可能とされている。
【0022】
上記加飾シートによれば、揮発成分をほとんど含有しない光硬化型接着剤にて透明樹脂フィルム7が接着されるので、透明樹脂フィルム7を接着剤にて接着させても気泡の発生を抑制し、意匠が損なわれてしまうのを防止し得るとともに、乾燥時間をあまり必要としないことから、当該透明樹脂フィルム7を短時間で接着可能とする。また、下塗り層2でその後塗布される着色材及び中塗り材の木材1への浸透を防止し、着色層3にて木材1の表面における木目の色調を調整し、中塗り層4にて表面を平滑化することができる。
【0023】
次に、上記加飾シートの製造方法について、図4のフローチャートに基づいて説明する。まず、薄くスライスした木材1の裏面に不織布又は紙を貼着し、補強層8を形成した後(S1:補強層形成工程)、更にその裏面に所望樹脂から成るプライマー層9を形成する(S2:プライマー層形成工程)。そして、木材1の表面に浸透防止材を塗布して下塗り層2を形成する下塗り層形成工程S3、下塗り層2の表面に着色材を塗布して着色層3を形成する着色層形成工程S4、及び着色層3の表面に中塗り材を塗布して中塗り層4を形成することにより表面を略平滑にした中塗り層形成工程S5を経ることにより処理層5を形成する。
【0024】
その後、処理層5(中塗り層4)の表面側に光硬化型接着剤を塗布し(S6:光硬化型接着剤塗布工程)、該光硬化型接着剤塗布工程S6により塗布された光硬化型接着剤上に透明樹脂フィルム7を載置しつつ紫外線または可視光線を照射して当該透明樹脂フィルム7を接着させる(S7:接着工程)。以上により、本実施形態に係る加飾シートを得ることができる。上記加飾シートは、そのまま家具等の表面に接着させて本木目の意匠を施すようにしてもよく、或いは自動車等の車内装備(インパネ等)を構成する樹脂成形品を成形する際、その表面に接着させて本木目の意匠を施すようにしてもよい。
【0025】
以上、本実施形態に係る加飾シートについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば処理層5は、塗装以外の方法(例えば、木材1を樹脂溶液に浸漬して導管部pを充填して平坦化する樹脂含浸法、或いは真空下に木材1を載置させて導管部pに効率よく樹脂を注入する真空注入法など)にて形成するようにしてもよい。また、処理層(下塗り層、着色層及び中塗り層)や透明樹脂フィルムは、上記実施形態の如き材質に限定されず、他の材料にて構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
処理層の表面側に光硬化型接着剤で構成される光硬化型接着剤層を有するとともに、当該光硬化型接着剤にて透明樹脂フィルムが接着されて成る加飾シート及びその製造方法であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る加飾シートを示す断面模式図
【図2】同加飾シートの製造過程であって、木材の裏面に補強層及びプライマー層が形成された状態を示す拡大断面模式図
【図3】同加飾シートの製造過程であって、木材の表面に処理層が形成された状態を示す拡大断面模式図
【図4】同加飾シートの製造方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0028】
1 木材
2 下塗り層
3 着色層
4 中塗り層
5 処理層
6 光硬化型接着剤層
7 透明樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成された加飾シートにおいて、
前記処理層の表面側に光硬化型接着剤で構成される光硬化型接着剤層を有するとともに、当該光硬化型接着剤にて前記透明樹脂フィルムが接着されて成ることを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
前記処理層は、
前記木材の表面に形成され、浸透防止材で構成された下塗り層と、
該下塗り層の表面に形成され、着色材で構成される着色層と、
該着色層の表面に形成され、表面が略平滑とされる中塗り層と、
を有することを特徴とする請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
前記木材の裏面には、不織布又は紙で構成された補強層が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の加飾シート。
【請求項4】
シート状に形成された木材の表面に所定処理が施された処理層が形成されるとともに、当該処理層上に透明樹脂フィルムが形成された加飾シートの製造方法において、
前記処理層の表面側に光硬化型接着剤を塗布する光硬化型接着剤塗布工程と、
該光硬化型接着剤塗布工程により塗布された光硬化型接着剤上に前記透明樹脂フィルムを載置しつつ紫外線または可視光線を照射して当該透明樹脂フィルムを接着させる接着工程と、
を有したことを特徴とする加飾シートの製造方法。
【請求項5】
前記処理層は、
前記木材の表面に浸透防止材を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、
前記下塗り層の表面に着色材を塗布して着色層を形成する着色層形成工程と、
前記着色層の表面に中塗り材を塗布することにより表面を略平滑にした中塗り層形成工程と、
を経て形成されることを特徴とする請求項4記載の加飾シートの製造方法。
【請求項6】
前記木材の裏面に、不織布又は紙で構成された補強層を形成する補強層形成工程を有することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の加飾シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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