説明

加飾抗破損フィルムを備えるガラスレンズ

【課題】 本発明は、典型的に必要とされるよりも少ないステップで加飾された破損耐性のあるガラスレンズを製造する方法、及び該製造方法によって製造された加飾された破損耐性のあるガラスレンズを提供することを課題とする。
【解決手段】 パーソナル電子機器用の加飾された破損耐性のあるガラスレンズを製造する方法であって、抗破損フィルムに加飾し、リリースフィルムが裏張りされた接着剤を該抗破損フィルムに対して適用し、該抗破損フィルム及び該接着剤を、ガラスレンズ・ブランクに対応するダイカットフィルム部にダイカットし、該ダイカットフィルム部を該リリースフィルムから剥離し、該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに対して合わせ、該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに接合することを備えることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願第11/175,945号に係る2005年7月6日という出願日の利益を主張するとともに、米国仮出願第60/678,135号に係る2005年5月5日という出願日の利益をも主張するものである。
本発明は、安全ガラスに関し、特に、加飾抗破損フィルムを有する携帯電話のためのガラスレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータモニタ、携帯やPCS電話、インターネット家電、携帯情報端末(PDA)、家庭オーディオ機器、及びキッチン器具等の電子機器には、加飾ガラスレンズが含まれていることがある。そのような加飾されたガラスレンズを生産するためには、典型的には、異なる機械によってなされる多段階の工程を必要とする場合がある。たとえば、各ガラスレンズを、印刷すべき所望の異なる色に従って、別個の印刷ステップで別々に印刷することが必要な場合がある。いくつかの加飾プロセスには、ガラスを弱めるものとして知られている真空金属化ステップが含まれていることがある。加飾に加えて、そのような用途において用いられるガラスレンズには、安全上の理由から、粉砕ないし破損に対する耐性を付与することが必要な場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術は、多くの工程を要するため効率的でなかった。
そこで、本発明は、典型的に必要とされるよりも少ないステップで加飾された破損耐性のあるガラスレンズを製造する方法、及び該製造方法によって製造された加飾された破損耐性のあるガラスレンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
パーソナル電子機器用の加飾された破損耐性のあるガラスレンズを製造する方法であって、抗破損フィルムに加飾し、リリースフィルムが裏張りされた接着剤を該抗破損フィルムに対して適用し、該抗破損フィルム及び該接着剤を、ガラスレンズ・ブランクに対応するダイカットフィルム部にダイカットし、該ダイカットフィルム部を該リリースフィルムから剥離し、該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに対して合わせ、該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに接合することを備えることを特徴とする方法等を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、ガラスレンズに接合されたときに抗破損機能として用いられる加飾フィルムに関する。ここで用いる加飾フィルムとの語には、インクコーティング、導電性インクコーティング、金属スパッタコーティング、反射防止コーティング、簡易クリーンコーティング、抗菌コーティングなど、フィルムに適用される任意のタイプのコーティングが含まれる。加飾抗破損フィルムは、装飾の要素としてだけでなく、ガラスレンズが壊れた場合にガラスの破片や小片が散らばるのを防ぐための安全要素としても役立つ。有利に、該ガラスレンズを製造するその革新的な方法により、典型的に必要とされるよりも少ないステップでガラスレンズを生産することが可能となる。
【0006】
図1は、加飾抗破損フィルム16を有するガラスレンズ10の典型的な実施形態の分解組立図を示す。ガラスレンズ10は、携帯電話のフェースプレートなど、所望の機器に適合するような大きさのガラス・ブランク12を含むことができる。ガラス・ブランク12は、Corning社やShott社などのガラス製造業者から入手可能なフロート・ガラスのような、珪酸でできたガラスから形成することが可能である。本発明の一側面において、該ガラスは、約2.54ミリメートル(mm)未満の厚さtを有し、好ましくは約0.2mmから1.5mmの厚さtを有し、さらに好ましくは約0.2mmから1.0mmの厚さtを有する。接着層14は、加飾抗破損フィルム16をガラス・ブランク12の面18に対して接合する。接着層14は、約0.0051mmと0.254mmの間の厚さtを有する、好ましくは約0.0127mmと0.127mmの間の厚さtを有する、光学的にクリアな接着剤を含む。接着層14において用いられる接着剤は、アクリル樹脂を成分とする材料、ポリマーを成分とする材料、及び紫外線(UV)結合可能材料の内の少なくとも1つを含むことができる。適切な接着剤は、光学的にクリアな接着剤であり、アクリル樹脂からできているか、又はポリマーでできているかするものを含み、3M、Nitto Denko、Mactac又はAdhesive Researchなどの会社から入手可能である。
【0007】
接着層14によってガラス・ブランク12の面18へ接合される抗破損フィルム16は、約0.0051mmと0.508mmの間の、好ましくは約0.0508mmと0.127mmの間の厚さtを有する光学的にクリアなプラスチックを含むことができる。抗破損フィルム16は、ポリカーボネート、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエステル、半透過型材料、及びアクリル樹脂材料の内の少なくとも1つを含んでいてよく、また、多層フィルムを含んでいてもよい。適切なフィルムには、General Electric Corporationから入手可能なOQ1030 Lexan(登録商標)、DuPont Corporationから入手可能なMylar(登録商標)若しくはMelinex(登録商標)、MitsubishiやSKCから入手可能なポリエステル・フィルムなどの類似製品、又は3Mから入手可能な半透過型フィルムが含まれる。
【0008】
本発明の一側面において、抗破損フィルム16はガラス・ブランク12に接着する前に加飾することができる。フィルム16は、上面22又は下面24上で加飾することができる。加飾26は、スパッタリング、電子ビーム又は蒸着などの真空金属化技術を用いることにより適用することができる。他の実施形態において、装飾26は、グラビア印刷、オフセット印刷、tampo印刷、ディジタル印刷などの印刷技術を用いることにより施してもよい。携帯電話レンズの用途においては、加飾26は、携帯電話ディスプレイをフィルム16の中央部28を通して見ることができるように、フィルム16の中央部28に十分な空間を残すフィルム16の周囲20のまわりに適用される所望の印しを含んでいてもよい。
【0009】
加飾抗破損フィルム16を備えたガラスレンズ10を生産する製造工程には、たとえば、真空金属化又は印刷技術を用いて、抗破損フィルム16の少なくとも1面に加飾26を適用することが含まれる場合がある。その後、加飾抗破損フィルム16は、ガラスレンズ10を形成するために接着剤でガラス・ブランク12に接合される。接着剤は、抗破損フィルム16の下面24、ガラス・ブランク12の面18、又は面18、24の両面に適用することができる。
【0010】
図2に描かれた本発明の一実施形態において、抗破損フィルム16はロール・シート32として提供することができ、加飾26は、たとえば所望のガラス・ブランクのサイズに、対応するシート32の各部30に施すことができる。その後、シート32の加飾部30の各々をダイカットして、接着剤を用いてそれぞれのガラス・ブランク12に接着することができる。本発明の一側面において、ロール・シート32は、シート32の面の内の1つに予め適用された接着層14を備えて提供されていてもよく、接着層14に対して適用されたリリースフィルム34を含んでいてもよい。各加飾26は、接着層14の反対側のシート面に適用することができる。その後、各加飾部30をダイカットして、カットが、加飾抗破損フィルム16と接着性層14とを通り抜けるようにし、リリースフィルム34は通り抜けないようにすることができる。その後、ダイカット部30の各々は、リリースフィルム34から剥して、接着剤面を下にして、対応するサイズのガラス・ブランクへ適用することができる。
【0011】
加飾された、破損耐性のあるガラスレンズを製造する典型的な一方法は、印刷された印し又はコーティングなどの加飾を、抗破損フィルム16に対して適用し、図3に描かれたラミネーション・プロセスを用いたりして、リリースフィルムが裏張りされた接着剤38を抗破損フィルム16に対して適用するステップを含むことができる。ラミネーション工程は、リリースフィルムが裏張りされた接着フィルム38の接着層14と抗破損フィルム16とを、これらのフィルムをともにローラ36間で圧縮するなどして、一緒に圧縮することを含んでいてもよい。この方法は、抗破損フィルム16と接着層14を、該リリースフィルムはそのままとなるようにガラスレンズ・ブランク12に相応して図2で示したように、ダイカットフィルム部30にダイカットすることをさらに含んでいてもよい。この方法は、部位30をグリップして除去するための可動真空チャックを用いたりして、該リリースフィルムからダイカットフィルム部を取り除くことをさらに含んでいてもよい。この方法は、その後、図1に示したようにガラスレンズ・ブランク12に関してダイカットフィルム部30を並べ、接着層14を介してガラスレンズ・ブランク12に対してダイカットフィルム部30を接合することを含む。一実施形態において、部位30をガラスレンズ・ブランク12に配列することは、部位30の中心をガラスレンズ・ブランク12の中心に合わせるための、若しくは部位30の1つ以上のエッジをガラスレンズ・ブランク12の1つ以上のエッジと合わせるための、又はこれらの両方を行うための従来のビジュアル配列システムを用いて達成することができる。
【0012】
図4に描かれた別の実施形態において、該製造方法は、ガラスレンズ・ブランク12に対してダイカットフィルム部30を接合する前に、ガラスレンズ・ブランク12の少なくとも1つのエッジ部42に対して境界コーティング40を適用することを含んでいてもよい。境界コーティング40は、ガラスレンズ・ブランク12のエッジ部42に対するダイカットフィルム部30のミスアライメント及び/又はミスサイジングを補償する役割を果たす。たとえば、図1において見ることができるフィルム16の中央部28を、ガラスレンズ・ブランク12の対応する中央部と合わせることは難しいかもしれないが、ガラスレンズ・ブランク12のエッジに沿ってフィルム16のエッジが所定の配列許容範囲内で配列されることを保証する。したがって、中央部28が並べられることを保証するために、ダイカットフィルム部30をエッジ部42に対して意図的に誤配列することができる。加えて、適用したときに部位30がガラスレンズ・ブランク12の1又は2以上のエッジからはみ出さないように、ダイカットフィルム部30は意図的に小さくしてもよい。したがって、フィルム16の中央の配列を最適化するために、境界コーティング42によりガラスレンズ・ブランク12のエッジのまわりの配列許容範囲を増加することが可能となる。図4において仮想線44によって示されているように、部位30のエッジは、ダイカットフィルム部30のミスアライメント及び/又はミスサイジングを補償するために、境界40と重複してよい。典型的な実施形態において、境界コーティング42は、パッド印刷又はスクリーン印刷技術を用いて、ガラスレンズ・ブランク12上に印刷することができる。典型的な実施形態において、境界コーティング42の幅wは、約0.5mmから約2.0mmの範囲で変動することができる。
【0013】
本発明の別の側面において、加飾は、たとえばコーティング工程を回転させるための連続ロールにおいて、抗破損フィルムの1又は2以上の側面に適用されるコーティングを含んでいてもよい。このコーティングは、フィルムに対して接着剤を適用する前に適用することができる。このコーティングは、反射防止コーティング、導電性インクコーティング、簡易クリーンコーティング及び抗細菌コーティングのうちの1又は2以上を含んでいてもよい。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態及びその利点を詳細に記載したが、変形、変更、置換、変換、修正、変様及び改造は、本発明の教示から乖離することなくここに為すことができ、本発明の趣旨及び範囲は添付された特許請求の範囲によって述べられている、ということが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、加飾抗破損フィルムを備えるガラスレンズの典型的な実施形態についての分解組立図を示す。
【図2】図2は、ローリングされた抗破損フィルム・シートの典型的な実施形態についての斜視図を示す。
【図3】図3は、抗破損フィルムに対して接着フィルムをラミネートするためのラミネーション工程の典型的な実施形態を描く図である。
【図4】図4は、ガラスレンズ・ブランクに適用された典型的なアラインメント境界を示す。
【符号の説明】
【0016】
12 ガラスレンズ・ブランク
16 抗破損フィルム
26 加飾
30 ダイカットフィルム部
38 リリースフィルムが裏張りされた接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナル電子機器用の加飾された破損耐性のあるガラスレンズを製造する方法であって、
抗破損フィルムに加飾し、
リリースフィルムが裏張りされた接着剤を該抗破損フィルムに対して適用し、
該抗破損フィルム及び該接着剤を、ガラスレンズ・ブランクに対応するダイカットフィルム部にダイカットし、
該ダイカットフィルム部を該リリースフィルムから剥離し、
該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに対して合わせ、
該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに接合することを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
該ダイカットフィルム部を該ガラスレンズ・ブランクに接合する前に、該ガラスレンズ・ブランクの面の少なくとも1つのエッジ部に対して境界コーティングを施すことをさらに備え、
該境界コーティングは、該ガラスレンズ・ブランクの該エッジ部に対する該ダイカットフィルム部のミスアライメントを補償するのに有効であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該境界コーティングは、約0.5mmから約2.0mmに亘る幅を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
リリースフィルムが裏張りされた接着剤の抗破損フィルムに対する適用は、ラミネーション工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ラミネートすることは、該リリース・バックされた接着フィルムの接着面と該抗破損フィルムとをともに圧縮することを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該ダイカットフィルム部を該ガラス・ブランクに対して合わせることは、該ダイカットフィルム部の中心を該ガラス・ブランクの対応する中心に合わせることを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
加飾は、印刷ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
加飾は、真空金属化ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該加飾は、反射防止コーティングを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該加飾は、簡易クリーンコーティングを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該加飾は、導電性インクコーティングを備えることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項12】
請求項1の方法を用いて生産された、加飾された破損耐性のあるガラスレンズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541151(P2008−541151A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510067(P2008−510067)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016157
【国際公開番号】WO2006/121638
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507344483)ユニプラス コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】