説明

劣化判定装置及び該劣化判定装置を装備した検査装置

【課題】光学部品などが不純物に晒される前にケミカルフィルタなどの不純物除去部材の劣化度を判定することが出来る劣化判定装置を提供すること。
【解決手段】光源(短波長光源28)からの光を誘導する光誘導部(ハーフミラー11)と、前記光誘導部から誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材(ターゲット板12)と、前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部(光電センサ14、モニター部16)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ケミカルフィルタなどの不純物除去部材の劣化度を判定する劣化判定装置及び該劣化判定装置を装備した検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハや液晶表示用ガラス基板などの検査では雰囲気中の化学物質の存在が問題となる。例えば、ウェハなどの検査に際して、雰囲気中に化学物質(有機化合物、アルカリ、酸など)が存在していると、検査用の光源の光により光学系を構成するガラス光学部品に化学物質が結晶化し、曇りを発生して光学性能を劣化させる。例えば、光学部品がレンズの場合には透過率を低下させ、またミラーの場合には反射率を低下させる。特に、ウェハに形成する回路パターンの微細化により検査に使用する光源の光の波長も短波長化してこれにともない化学物質が光学部品に付着する傾向が大きくなっている。
【0003】
このため、有機化合物、アルカリ、酸などの化学物質による汚染を防止するためケミカルフィルタにより雰囲気中の化学物質を除去しているが、ケミカルフィルタを長期間使用していると、化学物質の吸着率(除去率)が低下するので、この吸着率(除去率)が低下した時点で新品のケミカルフィルタと交換する必要がある。
【0004】
ケミカルフィルタの交換時期を正確に把握しておくことは重要である。ケミカルフィルタの交換時期を判定する方法、装置として、例えば、ケミカルフィルタの上流及び下流に除去対象成分の濃度を測定するケミカルセンサをそれぞれ設置しておき、上流側のケミカルセンサの測定値と下流側のケミカルセンサの測定値とが一致した時期をケミカルフィルタの交換時期と判定することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−162387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した方法、装置では、ケミカルフィルタの上流及び下流にそれぞれケミカルセンサを配置するので、コスト高になることが避けられない。
【0007】
また、上流側のケミカルセンサの測定値と下流側のケミカルセンサの測定値とが一致することは、ケミカルフィルタが劣化して機能しなくなったことを意味する。換言すると、ケミカルフィルタで除去されない化学物質に晒される事態が生じてはじめてケミカルフィルタの交換時期と判定している。半導体ウェハの検査装置などではそれを構成する光学部品が化学物質に晒されると、光学性能が劣化して廃棄しなければならない事態に至ることがある。
【0008】
このような事情から、通常、ケミカルフィルタの吸着率(除去率)の低下が大きくなる前に、ある程度余裕をもって、定期的にケミカルフィルタを交換しているが、コストがかかることが指摘されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストが嵩まずにケミカルフィルタなどの不純物除去部材の劣化度を判定することが出来る劣化判定装置及び該劣化判定装置を装備した検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の請求項1に記載の劣化判定装置は、光源からの光を誘導する光誘導部と、設置した状態で使用部位を更新可能なフィルタを介して清浄化された気体を前記光誘導部が配置された空間に供給する気体供給部と、前記光誘導部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の劣化判定装置は、前記使用部位の変更または再生によって行われる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の劣化判定装置は、光源からの光を誘導する光誘導部と、前記光誘導部の配置された空間に集塵手段及びフィルタを介して清浄化された気体を供給する気体供給部と、前記集塵手段を構成する、帯電した不活性ガスを前記気体に含まれる不純物に吹き付けて不純物を帯電させるか、或いは不純物を含む前記気体を帯電した不活性ガス雰囲気中を通過させることにより不純物を帯電させる帯電機構と、前記帯電させた不純物を引き寄せるために逆極性に帯電させた集塵機構と、前記光誘導部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、を備えてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載の劣化判定装置は、前記光誘導部が前記光の集光部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載の劣化判定装置は、前記劣化判定部材が前記フィルタの劣化度を示すことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に記載の劣化度判定装置は、前記劣化判定部材が光学部品で、前記モニター部が前記光学部品の光透過率又は反射率を監視することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に記載の劣化判定装置は、前記光源が光学系の光源で、前記光誘導部により前記劣化判定部材に誘導される光が前記光源から前記光学系へ導入される光の一部で、前記集光部が前記劣化判定部材への単位面積当たりの光の照射量が前記光学系への単位面積当たりの光の照射量よりも多くなるように、前記劣化判定部材に誘導された光を集光することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に記載の劣化判定装置は、光源の光を反射するとともに光学系に入射する光を遮断する光遮断部と、設置した状態で使用部位を変更可能なフィルタを介して清浄化された気体を前記光遮断部が配置された空間に供給する気体供給部と、前記光遮断部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、を備えてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9に記載の検査装置は、 光学系を介して被検物に光を照射して検査する装置であって、前記光学系が所望清浄度の雰囲気となるように不純物を除去するフィルタと、前記光学系と同じ雰囲気中に配置される、前記フィルタの劣化判定部材を有する請求項1乃至6の何れか一項に記載の劣化度判定装置と、前記劣化判定装置のモニター部からの情報に基づいて前記フィルタの使用部位変更時期を判定する変更時期判定部と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コストが嵩まずにケミカルフィルタなどの不純物除去部材の劣化度を判定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の劣化判定装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の劣化判定装置を備えた本発明の検査装置の一実施形態を示す概略図である。
【図3】ケミカルフィルタ22の劣化度合いをターゲット板12の劣化とともに示すグラフである。
【図4】ターゲット板12と光学系27を構成する光学部品の劣化度合いを示すグラフである。
【図5】図1に示す劣化判定装置の変形例を示す概略図である。
【図6】集塵手段の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の劣化判定装置及び該劣化判定装置を装備した検査装置の実施形態について図1乃至図4および図6を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の劣化判定装置の一実施形態を示す概略図、図2は図1の劣化判定装置を備えた本発明の検査装置の一実施形態を示す概略図である。
【0023】
図2に示すように、検査装置20は、集塵手段またはULPA(Ultra Low Penetration Air filter)21とケミカルフィルタ22をウェハ検査室23に搭載して、ウェハ検査室23へのパーティクル、化学物質の侵入を阻止してクリーンエア24を供給するようにしてある。また、ケミカルフィルタ22は、設置した状態で使用部位を変更または再生による更新可能である。
【0024】
ケミカルフィルタ22は、加熱してフィルタに吸着されている有機物を脱離させ、これを排気することにより、設置した状態で再生処理が可能である。或いは、フィルタに加熱空気をパージして吸着されている有機物を脱離させ、これを排気することにより、設置した状態で再生による更新処理が可能である。
【0025】
また、ケミカルフィルタ22は、フィルタに吸着されている酸またはアルカリを除去する液体(オゾンを含んだ純水、アルカリ性水溶液または酸性水溶液)を供給・排出した後、フィルタに乾燥空気をパージすることにより、設置した状態で再生による更新処理が可能である。
【0026】
ケミカルフィルタ22は、長尺のシート状フィルタを二つのロール(供給用ロール及び回収用ロール)に設置し、二つのロールを回転させて使用済み部位から未使用部位に変更することにより、更新処理が可能である。
【0027】
ウェハ検査室23には半導体ウェハ(図示せず)に光を照射して検査する光学ユニット25が配置される。光学ユニット25はケミカルフィルタ22からクリーンエア導入ダクト26を介してクリーンエア24を導入し、光学ユニット25内のクリーン度を維持している。
【0028】
図6は、集塵手段の一例を示す概念図である。
【0029】
集塵手段は、エアーポンプから供給される空気中に含まれる不純物を正または負に帯電させる帯電機構と、前記帯電させた不純物の帯電極性とは、逆の極性に帯電させた集塵機構とを有し、該集塵機構により前記帯電させた不純物を引き寄せる。
【0030】
帯電機構は、帯電した不活性ガスを前記気体に含まれる不純物に吹き付けて不純物を帯電させるか、或いは不純物を含む前記気体を帯電した不活性ガス雰囲気中を通過させることにより不純物を帯電させる。
【0031】
ウェハ検査室23には半導体ウェハ(図示せず)に光を照射して検査する光学ユニット25が配置される。光学ユニット25はケミカルフィルタ22からクリーンエア導入ダクト26を介してクリーンエア24を導入し、光学ユニット25内のクリーン度を維持している。
【0032】
光学ユニット25には半導体ウェハに光を照射する光学系27(図1参照)とケミカルフィルタ22の劣化度(化学物質吸着率、除去率)を判定する劣化判定装置10が配置される。
【0033】
なお、図2中、31はFOUP、32はロードポートで、FOUP31からロードポート32を介して半導体ウェハが光学ユニット25に搬送される。
【0034】
光学ユニット25は、図1に示すように、その外部に配置した水銀ランプなどの短波長光源28からミラー29,光学ユニット25の壁面に設けたシャッター30を介して光学系27に光を導入し、この光学系27を介して搬送された半導体ウェハに光を照射して検査を行う。
【0035】
劣化判定装置10は、図1に示すように、シャッター30を介して短波長光源28から光学系27に導入される光の光路中に配置した光誘導部材としてのハーフミラー11と、このハーフミラー11を反射した光を集光する集光レンズ13と、この集光レンズ13で集光された光が照射される劣化判定部材として例えば光学系27の入射部と同じ硝材からなる平行平板状の透明ガラス板製のターゲット板12と、このターゲット板12を透過した光が入射する光電センサ14と、この光電センサ14を保護するための保護シャッター15と、を備える。また、劣化判定装置10は、光電センサ14の出力を定期的に入力してターゲット板12の透過光量からターゲット板12の劣化度を監視するモニター部16を備える。モニター部16にはフィルタの更新処理時期判定部17が接続されており、このフィルタの更新処理時期判定部17はモニター部16からのターゲット板12の劣化度情報に基づいてケミカルフィルタ22の更新処理時期を判定する。判定結果は表示装置18により表示される。なお、表示装置18をモニター部16に接続して、表示装置18でモニター結果を表示し、ケミカルフィルタ22の更新処理時期についてはモニター結果からユーザー側で判断するようにしてもよい。
【0036】
ハーフミラー11は、短波長光源28から光学ユニット25に導入される光のうち、例えば98%の光を透過させて光学系27に送る一方、残りの2%程度の光量の光を取り出して(反射して)ターゲット板12に誘導する。
【0037】
ターゲット板12は、光学ユニット25に設けたシャッター30が開いたとき(光学系27に光が導入されるとき)にのみ短波長光源28からの光が照射され、シャッター30が閉じたとき(光学系27に光が導入されないとき)には光が照射されない。
【0038】
集光レンズ13は、ハーフミラー11で取り出された光を、光学系27に送られる光の主光束径に比して例えば1/14程度の光束径に集光してターゲット板12に照射する。
【0039】
光学系27とターゲット板12の単位面積当たりの照射量を比較すると、
(0.98/(14×14)):(0.02/(1×1))=0.005:0.02となる。
【0040】
ターゲット板12は、光学系27に照射される光の照射量に比して単位面積当たり4倍の光の照射量で照射されることになる。
【0041】
ターゲット板12と光学系27はともにケミカルフィルタ22からのクリーンエア54に晒されている。換言すると、ターゲット板12は、光学系27と同じ雰囲気中にあり、仮にケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)が低下すると、光学系27と同様に吸着(除去)出来ずに侵入した化学物質に汚染されることになる(化学物質が付着することになる)。ただ、ターゲット板12は、シャッター30を開いて光学系27に光を導入したとき、光学系27に比して単位面積当たり4倍の光量の光(短波長光)が照射されるので、雰囲気中に化学物質が存在する場合、この化学物質が物理・化学反応を起こして曇る割合(劣化度)は光学系27に比して非常に大きい。すなわち、ターゲット板12はわずかな化学物質の存在でも曇る。換言すると、ターゲット板12は、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)の低下に対する検出感度が大きく、化学物質吸着率(除去率)の低下の兆候を素早く検出することが出来る。したがって、モニター部16でターゲット板12の透過光量を定期的にモニターしておき、例えば95%に低下したら更新処理時期判定部17でケミカルフィルタ22の更新処理時期を判定し、これを表示装置18で表示して、この判定にしたがってケミカルフィルタ22を更新処理することにより、光学系27を構成するレンズなどの光学部品の曇りを未然に防ぐことができる。
【0042】
図3はケミカルフィルタ22の劣化度合いをターゲット板12の劣化とともに示すグラフである。グラフの縦軸はケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)を表す。グラフの二点鎖線で示した縦軸はターゲット板12の透過率を表す。グラフの横軸は時間を表す。
【0043】
図3に示すように、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)と、ターゲット板12の透過率は時間の経過とともに徐々に低下する。そして、ケミカルフィルタ22の交換時期になると、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)と、ターゲット板12の透過率はともに低下し始める。そして、交換時期を過ぎると、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)と、ターゲット板12の透過率は大きく低下する。
【0044】
上述したように、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)と、ターゲット板12の透過率は時間の経過とともに略同じように変化するので、ターゲット板12の透過率をモニターすれば、ケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)を推定することが可能となる。
【0045】
したがって、ケミカルフィルタ22の上流と下流(光学ユニット25)にそれぞれケミカルセンサを設置して化学物質濃度を計測するようなことをしなくてもケミカルフィルタ22の更新処理時期を正しく推定することは可能であり、コスト高になるおそれはない。
【0046】
図4はターゲット板12と光学系27を構成する光学部品の劣化度合いを示すグラフである。グラフの縦軸は光学性能(透過率)を表し、横軸は時間を表す。
【0047】
図4に示すように、始めはターゲット板12と光学系27を構成する光学部品の透過率が略同じであるが、時間の経過とともにターゲット板12の透過率が光学系27を構成する光学部品の透過率よりも低下する。すなわち、ターゲット板12は光学部品よりも劣化度合いが大きく、ケミカルフィルタ22の更新処理時期に至ると両者の透過率に明らかな差が生じる。更新処理時期を経過すると、ターゲット板12の透過率は急激に低下するが、光学部品は更新処理時期後ある程度時間が経過するまでは透過率の急激な低下はない。そのため、光学部品の透過率の低下はターゲット板12の透過率の低下に比べて遅れる。
【0048】
ターゲット板12の劣化度をモニターすることにより、光学系27を構成する光学部品の光学性能(透過率)が低下する以前にケミカルフィルタ22の更新処理を知らせることが出来る。
【0049】
また、ターゲット板12の劣化度をモニターしておけば、光学系27の劣化度を推定することが可能となる。上述したように、ターゲット板12への単位面積当たりの光の照射量を、光学系27への単位面積当たりの光の照射量の4倍に設定しておけば、ターゲット板12は光学系27に比して4倍のスピード(光学系27はターゲット板12に比して1/4のスピード)で劣化することになるので、ターゲット板12が初期値の透過光量に対してどれだけ低下しているかをモニターすることにより、光学系27の劣化度合いを推定することが可能で、例えばターゲット板12の透過率が60%に低下したとき、光学系27の透過率は90%に低下していると推定することが可能である。また、ターゲット板12のモニター結果から光学系27のメンテナンスのタイミングを推定することも可能である。
【0050】
ターゲット板12は、劣化判定装置10の交換しやすい位置に設置しておくことが好ましい。そうすればケミカルフィルタ22を更新処理する毎にターゲット板12を交換する作業が容易になる。
【0051】
ターゲット板12は、ケミカルフィルタ22の更新処理毎に交換する(毎回交換する)ようにしてもよいが、この他にケミカルフィルタ22を何回か更新処理した後に交換するようにしてもよい。この場合、ケミカルフィルタ22の更新処理時におけるターゲット板12の透過率を記憶させておき、これを初期値にして次回のケミカルフィルタ22の更新処理時期を判定する。
【0052】
例えば、ターゲット板12の透過率が2%低下した時点でケミカルフィルタ22を更新処理する場合にあっては、ターゲット板12の透過率が100%から98%になった時点で第1回目のケミカルフィルタ22の更新処理を行い、このときの透過率(98%)を記憶させておく。そして、この透過率(98%)を初期値としてこれから2%低下した時点(約96%)で第2回目のケミカルフィルタ22の更新処理を行い、このときの透過率(96%)記憶させておく。さらに、この透過率(96%)を初期値としてこれから2%低下した時点(約94%)で第3回目のケミカルフィルタ22の更新処理を行う。なお、交換毎にターゲット板12の透過率を記憶させておけば、ターゲット板12の交換回数からも光学系27の劣化度合いを推定することが可能である。
【0053】
上記実施形態では、本発明の劣化判定装置10を、半導体ウェハの検査装置50に適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ケミカルフィルタ22によりクリーンエア24が供給された雰囲気中に光学系が装備される装置に広く適用される。
【0054】
また、光誘導部材としてハーフミラー11を使用した場合を示したが、これに限定されるものではない。
【0055】
例えば、図5に示すように、光学ユニット25の運転時に短波長光源28の光を光学系27に導入する一方、光学ユニット25の非運転時に光が光学系に入射しないよう遮断にする、光学ユニット25の外部に配置された遮断部材としてのシャッター35を光誘導部材として利用するようにしてもよい。
【0056】
なお、図5中、図1に示す部分と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
この変形例では、シャッター35の短波長光源28側に位置する面を反射面36に加工する。シャッター35が光学系27への光の入射を遮断するとき(シャッター35が閉じているとき)、短波長光源28の光は反射面36で反射し、集光レンズ13aを介してターゲット板12a側に導かれる(照射される)。なお、図5ではクリーンエア24が光学ユニット25内の光学系27にのみ供給されている状態を示しているが、図2に示すようにクリーンエア24は光学ユニット25の外部にも供給されている。したがって、クリーンエア24中にケミカルフィルタ22で除去できなかった化学物質が存在しているとターゲット板12aは光学系27と同様に化学物質に晒される。ターゲット板12aは、図1に示すターゲット板12と同様に光学系27の入射部と同じ硝材からなる平行平板状の透明ガラス板製であるが、光が照射されるタイミングが異なる。
【0058】
すなわち、ターゲット板12aは、シャッター35が閉じているときに(短波長光源28の光が光学系27に入射していないときに)光源28の光が照射されるが、シャッター35が開いているときに(短波長光源28の光が光学系27に入射しているときに)短波長光源28の光が照射されない。したがって、シャッター35が閉じている時間帯と開いているときの時間帯の比率を求めておけば、ターゲット板12aと光学系27の光の照射量の比率が分かるので、この比率に応じて集光レンズ13aの倍率を決定すれば、ターゲット板12aの単位面積当たりの光の照射量を光学系27の単位面積当たりの光の照射量の数倍に設定することが出来る。これにより、ターゲット板12aをターゲット板12と同様にケミカルフィルタ22の化学物質吸着率(除去率)の低下に対するセンサとして機能させることが出来る。
【0059】
また、図1、図5では平行平板の透明ガラス板で劣化判定部材を構成した場合を示したが、これに限定されず、レンズあるいはミラーなどで劣化判定部材を構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 劣化判定装置10
11 ダイクロイックミラー
12,12a ターゲット板(劣化判定部材)
13,13a 集光レンズ
14 光電センサ
16 モニター部
17 交換時期判定部
18 表示装置
20 検査装置
22 ケミカルフィルタ
24 クリーンエア
25 光学ユニット
28 短波長光源
35 シャッター
36 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を誘導する光誘導部と、
設置した状態で使用部位を更新可能なフィルタを介して清浄化された気体を前記光誘導部が配置された空間に供給する気体供給部と、
前記光誘導部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、
前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、
を備えてなることを特徴とする劣化判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の劣化判断装置において、
前記フィルタの更新は、前記使用部位の変更または再生によって行われることを特徴とする劣化判定装置。
【請求項3】
光源からの光を誘導する光誘導部と、
前記光誘導部の配置された空間に集塵手段及びフィルタを介して清浄化された気体を供給する気体供給部と、
前記集塵手段を構成する、帯電した不活性ガスを前記気体に含まれる不純物に吹き付けて不純物を帯電させるか、或いは不純物を含む前記気体を帯電した不活性ガス雰囲気中を通過させることにより不純物を帯電させる帯電機構と、前記帯電させた不純物を引き寄せるために逆極性に帯電させた集塵機構と、
前記光誘導部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、
前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、
を備えてなることを特徴とする劣化判定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の劣化判定装置において、
前記光誘導部は前記光の集光部を備えることを特徴とする劣化判定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の劣化判定装置において、
前記劣化判定部材は前記フィルタの劣化度を示すことを特徴とする劣化判定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の劣化度判定装置において、
前記劣化判定部材は光学部品で、
前記モニター部は前記光学部品の光透過率又は反射率を監視することを特徴とする劣化度判定装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の劣化判定装置において、
前記光源は光学系の光源で、
前記光誘導部により前記劣化判定部材に誘導される光は、前記光源から前記光学系へ導入される光の一部で、
前記集光部は、前記劣化判定部材への単位面積当たりの光の照射量が前記光学系への単位面積当たりの光の照射量よりも多くなるように、前記劣化判定部材に誘導された光を集光することを特徴とする劣化判定装置。
【請求項8】
光源の光を反射するとともに光学系に入射する光を遮断する光遮断部と、
設置した状態で使用部位を変更可能なフィルタを介して清浄化された気体を前記光遮断部が配置された空間に供給する気体供給部と、
前記光遮断部により誘導された光の照射下で、所望の雰囲気以外の不純物に晒される劣化判定部材と、
前記劣化判定部材の劣化度を監視するモニター部と、
を備えてなることを特徴とする劣化判定装置。
【請求項9】
光学系を介して被検物に光を照射して検査する装置であって、
前記光学系が所望清浄度の雰囲気となるように不純物を除去するフィルタと、
前記光学系と同じ雰囲気中に配置される、前記フィルタの劣化判定部材を有する請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の劣化度判定装置と、
前記劣化判定装置のモニター部からの情報に基づいて前記フィルタの使用部位変更時期を判定する変更時期判定部と、
を備えてなることを特徴とする検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−249517(P2010−249517A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95903(P2009−95903)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】