説明

助剤媒介グラフト化コポリマーおよび調製方法

本発明は、(a)第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(c)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤とを含有するまたはそれらで作られている混合物のフリーラジカル媒介反応から調製される助剤媒介グラフト化コポリマーをもたらすものであり、少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、該第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、該助剤へのラジカル媒介付加に関して該有機ポリマーは類似した反応性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリマーのグラフト化に関する。詳細には、本発明は、アリル、ビニルまたはアクリレート助剤による少なくとも二つのポリマーのフリーラジカルにより開始されるグラフト化に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー複合材およびブレンドは、多くの用途を有する。ポリオレフィン系およびポリスチレン系複合材およびブレンドは、商業上、特に関心が高い。注目に値するポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンゴム、およびポリイソブチレンである。
【0003】
ポリマーブレンドは、ポリマーブレンドの加工特性または完成品にそのブレンドのバランスのとれた特性が生かされるため、特に望ましい。しかし、多くの場合、(i)ポリマーが、不混和性もしくは不相溶性であるため、(ii)ポリマーブレンドが、狭い特性範囲しか示さないため、または(iii)一定のポリマー分散限界を注意深く管理しないと、有害作用が発生するため、所望のポリマーブレンドを調製することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下地ポリマーの固有不混和性または不相溶性を克服するポリマー組成物を提供することは、望ましいことである。従来のポリマーブレンドで現在達成することができるもの以上に特性範囲を広げることは、さらに望ましいことである。従来のポリマーブレンドで現在観察されるポリマー分散限界を拡大しながら有害作用を防止するポリマー組成物を提供することは、さらにいっそう望ましいことである。
【0005】
具体的に言うと、前に記載した特質を達成するグラフト化コポリマーを提供することは、望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その好ましい実施形態において、本発明は、(a)第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(c)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤とを含む混合物のフリーラジカル媒介反応から調製される助剤媒介グラフト化コポリマーをもたらすものであり、この場合、少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、該第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、該助剤へのラジカル媒介付加に関して該有機ポリマーは類似した反応性を有する。
【0007】
本発明のグラフト化コポリマーは、異なる材料間の界面相溶化剤として使用して、透明性、剛性、靭性および応力白化などの特性を改善することができる。本発明のグラフト化コポリマーは、単一のポリマーまたはポリマーの単純なブレンドでは一般に達成することができないユニークな特性を有することができる。例えば、結果として生じた、ポリエチレンとポリプロピレンのコポリマーは、ポリプロピレンの高い上限実用温度と併せてポリエチレンの低温靭性を有することができた。同様に、あるグラフト化コポリマーは、溶融押出フロー中に良好な歪硬化特性と同時に高い溶融強度を示すことができた。
【0008】
本グラフトコポリマーは、向上した固体および溶融状態特性のため、ポリマー加工および二次加工における単一または大多数のブレンド成分として適する。本発明は、押出およびブロー成形などの様々な方法による種々の製品の二次加工に、ならびに発泡体ならびに電線およびケーブル化合物または構造などの一定の用途において、有用である。
【0009】
本発明は、コポリマーのフリーラジカル開始グラフト化方法をさらに提供する。本プロセスは、溶融状態または溶解状態でのフリーラジカルにより開始されるグラフト化を含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好ましい実施形態において、本発明は、(a)第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(c)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤とを含む混合物のフリーラジカル媒介反応から調製される助剤媒介グラフト化コポリマーであり、この場合、少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、該第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、該助剤へのラジカル媒介付加に関して該有機ポリマーは類似した反応性を有する。
【0011】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーは、(i)酸素中心フリーラジカルもしくは炭素中心フリーラジカルの存在下で水素原子引抜を受けることができ、または(ii)剪断熱、熱エネルギーもしくは放射線に付されたときフリーラジカルが形成され得る。適するフリーラジカル反応性有機ポリマーとしては、ポリマー、例えばエチレン/プロピレン/ジエンモノマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、エチレン/スチレン中間体、ハロゲン化ポリエチレン、プロピレンコポリマー、天然ゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン/ジエンコポリマー、ニトリルゴム、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−co−(アクリルまたはメタクリル酸)中間体およびそれらの誘導アイオノマー、ならびにこれらのポリマーの官能化誘導体が挙げられる。
【0012】
適するエチレンポリマーに関して、ポリマーは、一般に、4つの主要クラスに分類される。(1)高度に分枝したもの;(2)不均一な線状のもの;(3)均一に分枝した線状のもの;および(4)均一に分枝した実質的に線状のもの。これらのポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセンもしくはバナジウム系シングルサイト触媒、または幾何拘束シングルサイト触媒を用いて調製することができる。
【0013】
高度に分枝したエチレンポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。これらのポリマーは、高温および高圧でフリーラジカル開始剤を用いて調製することができる。あるいは、高温および比較的低圧で配位触媒を用いて調製することができる。これらのポリマーは、ASTM D−792によって測定して、立方センチメートル当たり約0.910グラムから立方センチメートル当たり約0.940グラムの間の密度を有する。
【0014】
不均一線状エチレンポリマーとしては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。線状低密度エチレンポリマーは、立方センチメートル当たり約0.850グラムから立方センチメートル当たり約0.940グラムの間の密度、およびASTM 1238、条件Iによって測定して10分当たり約0.01から約100グラムの間のメルトインデックスを有する。好ましくは、該メルトインデックスは、10分当たり約0.1から約50グラムの間である。また、好ましくは、該LLDPEは、3から18の炭素原子、さらに好ましくは3から8の炭素原子を有する1つまたはそれ以上の他のα−オレフィンとエチレンとの共重合体である。好ましいコモノマーとしては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。
【0015】
超超低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンは、同義で知られている。これらのポリマーは、立方センチメートル当たり約0.870グラムから立方センチメートル当たり約0.910グラムの間の密度を有する。高密度エチレンポリマーは、一般に、立方センチメートル当たり約0.941グラムから立方センチメートル当たり約0.965グラムの間の密度を有するホモポリマーである。
【0016】
均一に分枝した線状エチレンポリマーとしては、均一LLDPEが挙げられる。均等に分枝した/均一なポリマーは、コモノマーが所与の共重合体分子内にランダムに分布しているポリマーであり、この場合、該共重合体分子は、その共重合体内に同様のエチレン/コモノマー比を有する。
【0017】
均一に分枝した実質的に線状のエチレンポリマーとしては、(a)C−C20オレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよび4−メチル−1−ペンテンのホモポリマー、(b)少なくとも1つのC−C20α−オレフィン、C−C20アセチレン性不飽和モノマー、C−C18ジオレフィンまたはこれらのモノマーの組み合わせと、エチレンの共重合体、および(c)C−C20α−オレフィン、ジオレフィン、または他の不飽和モノマーとの組み合わせでのアセチレン性不飽和モノマーのうちの少なくとも1つと、エチレンの共重合体が挙げられる。これらのポリマーは、一般に、立方センチメートル当たり約0.850グラムから立方センチメートル当たり約0.970グラムの間の密度を有する。好ましくは、該密度は、立方センチメートル当たり約0.850グラムから立方センチメートル当たり約0.955グラムの間、さらに好ましくは、立方センチメートル当たり約0.850グラムから立方センチメートル当たり約0.920グラムの間である。
【0018】
本発明において有用なエチレン/スチレン共重合体としては、オレフィンモノマー(すなわち、エチレン、プロピレンまたはα−オレフィンモノマー)をビニリデン芳香族モノマー、ヒンダード脂肪族ビニリデンモノマー、または脂環式ビニリデンモノマーと重合させることによって調製した実質的にランダムな共重合体が挙げられる。適するオレフィンモノマーは、2から20、好ましくは2から12、さらに好ましくは2から8の炭素原子を含有する。好ましいそのようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。エチレン、およびエチレンとプロピレンまたはC4−8α−オレフィンとの組み合わせが、最も好ましい。場合により、エチレン/スチレン共重合体重合成分は、エチレン性不飽和モノマー、例えば、張力環オレフィンも含むことがある。張力環オレフィンの例としては、ノルボルネンおよびC1−10アルキルまたはC6−10アリール置換ノルボルネンが挙げられる。
【0019】
本発明において有用なエチレン/不飽和エステルコポリマーは、従来の高圧法によって調製することができる。該不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであり得る。該アルキル基は、1から8の炭素原子、好ましくは1から4の炭素原子を有し得る。該カルボン酸基は、2から8の炭素原子を有し得、好ましくは2から5の炭素原子を有する。該エステルコモノマーに帰する該コポリマーの部分は、そのコポリマーの重量に基づき約5から約50重量パーセントの範囲であり得、好ましくは、約15から約40重量パーセントの範囲である。該アクリレートおよびメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。該ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートである。該エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、10分当たり約0.5から約50グラムの範囲であり得る。
【0020】
本発明において有用なハロゲン化エチレンポリマーとしては、フッ素化、塩素化および臭素化オレフィンポリマーが挙げられる。この塩基性オレフィンポリマーは、2から18の炭素原子を有するオレフィンのホモポリマーまたは共重合体であり得る。好ましくは、該オレフィンポリマーは、エチレンとプロピレンまたは4から8の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーとの共重合体である。好ましいα−オレフィンコモノマーとしては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。好ましくは、該ハロゲン化オレフィンポリマーは、塩素化ポリエチレンである。
【0021】
本発明において有用なプロピレンポリマーの例としては、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンとエチレンまたは別の不飽和コモノマーとのコポリマーが挙げられる。コポリマーは、ターポリマー、テトラポリマーなども含む。一般に、該ポリプロピレンコポリマーは、プロピレンから誘導される単位を、少なくとも約60重量パーセントの量で含む。好ましくは、プロピレンモノマーは、そのコポリマーの少なくとも約70重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも約80重量パーセントである。
【0022】
本発明において適する天然ゴムとしては、イソプレンの高分子量ポリマーが挙げられる。好ましくは、該天然ゴムは、約5000の数平均重合度、および広い分子量分布を有する。
【0023】
有用なスチレン/ブタジエンゴムとしては、スチレンとブタジエンのランダムコポリマーが挙げられる。一般に、これらのゴムは、フリーラジカル重合によって製造される。本発明のスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは、相分離系である。本発明において有用なスチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーは、スチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーの水素化から調製される。
【0024】
本発明において有用なポリブタジエンゴムの例としては、1,4−ブタジエンまたは1,2−ブタジエン繰り返し単位のいずれかのみを含有するポリマー、または両方の繰り返し単位タイプが存在するポリマー、および1,4−ブタジエン繰り返し単位がシスまたはトランスのいずれかの立体配置で存在し得るポリマーが挙げられる。好ましくは、本発明のブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンのコポリマーである。該イソプレンは、一般に、約1.0重量パーセントから約3.0重量パーセントの間の量で使用される。
【0025】
本発明のためのポリクロロプレンゴムは、一般に、2−クロロ−1,3−ブタジエンのポリマーである。好ましくは、該ゴムは、乳化重合によって製造される。加えて、この重合を硫黄の存在下で行って、ポリマーに架橋を組み込むことができる。
【0026】
好ましくは、本発明のニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルのランダムコポリマーである。
【0027】
上記第一および第二のポリマーの選択は、上記助剤へのフリーラジカル媒介付加に関して類似した反応性を有するポリマーに依存する。例えば、選択される助剤がアリル助剤であるとき、ポリマーのフリーラジカル反応性を判定するために適する方法は、そのポリマーのアリルベンゾエートグラフト収率の測定による方法である。この量は、過酸化物によって開始されるアリルベンゾエートと対象となるポリマーとの反応の精製生成物内の芳香族エステル含有率の分光測定によって評価することができる。比較的大量の結合した芳香族エステルを含有するポリマー誘導体の方が、アリル助剤のラジカル媒介付加に関して、反応性が高い。
【0028】
本明細書に基づいて、当業者は、選択されるアリル助剤に基づくフリーラジカルの反応性についての他の測定法を容易に決定することができる。同様に、ビニルまたはアクリレート系助剤が存在下でポリマーフリーラジカル反応性を判定するための試験方法を、本出願に基づいて容易に開発することができる。従って、これらの測定法は、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0029】
アリルベンゾエートグラフト収率を、ポリマーのフリーラジカル反応性の類似性を判定するための基準として用いる場合、それらのポリマーは、300パーセントより大きくは異ならないグラフト収率を有さなければならない。好ましくは、該グラフト収率は、200パーセントより大きくは異ならない。さらに好ましくは、該グラフト収率は、100パーセントより大きくは異ならない。関連の比較法については、助剤がビニルまたはアクリレート系であるとき、類似したグラフト収率が達成されるはずである。
【0030】
適するアリール系助剤に関して、有用な助剤としては、トリアリルトリメリテート(TATM)、トリアリルホスフェート(TAP)、ペンタエリトリトールジアリルエーテル(PE(Di)AE)、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル(PE(Tri)AE)、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル(PE(Tetra)AE)、トリアリルトリメセート、トリアリルシアヌレート、およびこれらの混合物が挙げられる。適するビニル助剤の一例は、ジビニルベンゼンである。適するアクリレート系助剤またはメタクリレート助剤の例は、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTAc)、1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、エチレングリコールジメタクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)である。
【0031】
前記助剤は、好ましくは、約0.05重量パーセントから約20.0重量パーセントの範囲の量で存在する。さらに好ましくは、前記助剤は、約0.1重量パーセントから約10.0重量パーセントの間の量で存在する。さらに一層好ましくは、前記助剤は、約0.3重量パーセントから約5.0重量パーセントの間の量で存在する。
【0032】
上記酸素中心フリーラジカルまたは炭素中心フリーラジカルは、様々な方法で作ることができる。例えば、酸素中心フリーラジカルは、有機過酸化物、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素および空気の使用により生ずることができる。この点で、上記混合物は、有機過酸化物、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素または空気をさらに含む場合がある。有機過酸化物が使用される場合、その有機過酸化物は、一般に、約0.005重量パーセントから約20.0重量パーセントの間、さらに好ましくは、約0.01重量パーセントから約10.0重量パーセントの間、およびさらにいっそう好ましくは、約0.03重量パーセントから約5.0重量パーセントの間の量で存在する。
【0033】
例えば、炭素中心フリーラジカルは、アルコキシラジカル切断、アリル助剤活性化、およびフリーラジカル反応性ポリマーへの連鎖移動から生ずることができる。
【0034】
代替実施形態において、本発明は、(a)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤がグラフトされている、第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーとを含む混合物のフリーラジカル媒介反応から調製されるグラフト化コポリマーであり、この場合、少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、該第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、該助剤へのラジカル媒介付加に関して該有機ポリマーは類似した反応性を有する。
【0035】
好ましくは、前記助剤をグラフトさせる前の前記第一の有機ポリマーは、前記第二の有機ポリマーより低いフリーラジカル反応性を示す。
【0036】
そのポリマー成分が助剤付加反応性の点で大きく異なる系で生じるコポリマーは、反応性の低い材料をそのコポリマーの合成前に官能化することによって改善することができると考えられる。この官能化は、そのポリマー誘導体が残留アリル、ビニルまたはアクリレート基を含有するような、助剤のラジカル媒介グラフト付加を含む。この官能化プロセスは、反応性の低いポリマーを高分子助剤に変換し、それによって、コポリマー合成中に活性化されると、その高反応性ポリマーが、良好な収率での所望のコポリマー生成物の生成に優先的に関与することとなる。
【0037】
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、助剤媒介グラフト化コポリマーの調製方法に関する。本方法は、ポリマーが、そのグラフト化反応温度で完全に混和性または部分的に混和性である場合、溶融状態で行うことができる。本方法は、溶解状態でも行うことができる。本方法を溶解状態で行う場合、好ましくは、選択される溶剤は、単相混合物を形成するために十分に第一の有機ポリマー、第二の有機ポリマーおよび助剤を可溶性にする。しかし、その混合物の成分が、その溶剤への少なくとも部分的な混和性を示すならば、溶解状態での方法を行うことができることは、当業者には認識される。
【0038】
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、助剤媒介グラフト化コポリマーから調製される製品である。任意の数のプロセスを用いて、製品を製造することができる。特に有用なプロセスとしては、射出成形、押出、圧縮成形、回転成形、熱成形、ブロー成形、粉体塗装、バンバリーバッチミキサー、紡糸、およびカレンダー成形が挙げられる。
【0039】
本実施形態の適する例としては、電線・ケーブル絶縁、電線・ケーブル用半導電性物品、電線・ケーブル被覆材および外被、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底(異なる密度およびタイプのポリマーを含む)、ウェザーストリップ、ガスケット、異形材、耐久材、硬質超延伸テープ、ランフラットタイヤインサート、建築用パネル、複合材(例えば、木質複合材)、パイプ、発泡体、インフレーションフィルムおよび繊維(バインダー繊維および弾性繊維を含む)が挙げられる。
【0040】
適する発泡製品としては、例えば、押出熱可塑性ポリマー発泡体、押出ポリマーストランド発泡体、発泡性熱可塑性樹脂発泡ビーズ、発泡済熱可塑性樹脂発泡ビーズ、発泡および溶着させた熱可塑性樹脂発泡ビーズ、および様々なタイプの架橋発泡体が挙げられる。該発泡製品は、任意の公知物理構造、例えば、シート、円形、ストランド幾何形状、棒、ソリッドプランク、積層プランク、ストランド合着プランク、異形材およびバンストックを呈するものであり得る。
【実施例】
【0041】
以下の非限定的実施例は、本発明の例証となる。
【0042】
実施例1
トリアリルトリメリテート(TATM)の過酸化物開始共グラフト化によって、ホモポリマー(アイソタクチック)ポリプロピレンおよび1700の数平均分子量を有するポリエチレンからグラフトコポリマーを調製した。該ポリプロピレンは、The Dow Chemical Companyによって製造された実験用反応装置アイソタクチックホモポリマーポリプロピレン粉末(PP)であった。この樹脂の特性は、次のとおりであった。3.14g/10分のメルトフローレート(MFR);167.1摂氏度のDSC融点;および0.47g/ccの嵩密度。
【0043】
PP(1gm)、PE(1gm)およびトリクロロベンゼン(20mL)を油浴内で150摂氏度に加熱して、透明な溶液を得た。TATM(0.06g、3重量パーセント)およびジクミルペルオキシド(DCP)(0.002g、0.1重量パーセント)を添加し、その混合物を150摂氏度で60分間維持した。アセトン(50mL)から沈殿させることによってポリマー反応生成物を回収し、得られたサンプルを真空下で乾燥させた。
【0044】
反応生成物を分画するために、その乾燥ポリマーを140摂氏度のキシレン(25mL)中で攪拌して、透明な溶液を生成した。その溶液を70摂氏度の油浴に浸し、1時間攪拌すると、透明な溶液中に膨潤固相が出現した。その透明な溶液をデカントし、キシレン可溶性画分をアセトン(100mL)中で沈殿させた。膨潤固相を第二のキシレン抽出工程に付して、すべてのキシレン可溶性成分を確実に除去した。
【0045】
その膨潤固相を、キシレン(20mL)に再び溶解し、アセトン(80mL)中で沈殿させることによって、精製した。この画分のFT−IR分析は、PE(719cm−1)とPP(843cm−1および999cm−1)の両方の固有共鳴吸収を示し、1724cm−1でのグラフトされたエステルの固有カルボニル共鳴吸収、すなわち、グラフトコポリマー(PP−g−PE)の証拠も示した(図3)。この膨潤固相のDSC分析は、103.2摂氏度および159.9摂氏度の二つの転移温度を示した(図4)。回収された成分すべてに対する重量分析は、その反応容器に充填した1gのPEのうち、約0.29gのPEが、グラフト化プロセスの結果として不溶性になったことを示した。これは、その膨潤固相におけるPE/PP比が0.29であったことを示している。
【0046】
キシレン可溶性画分のFT−IR分析は、719cm−1での固有PE共鳴吸収、および1724cm−1でのグラフトされたエステルの固有カルボニル共鳴吸収を示した(図1)。このサンプルに対するDSC分析は、PE−g−TATMと一致する106摂氏度のTを示した(図2)。
【0047】
実施例2
前に説明したように、助剤媒介グラフト化コポリマーの調製は、特にアリル基付加に対する、その有機ポリマーの相対的なフリーラジカル反応性に依存する。対象となる4つの材料の反応性を、アリルベンゾエート(AB)の一連の過酸化物媒介付加反応によって評価した。アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーおよびポリエチレン(PE、Mn=1,700、Sigma−Aldrich)は、使用前に溶解/沈殿(キシレン/アセトン)によって精製した。ポリエチレンオキシド(PEO、Mn=5000、Alfa−Aeser)およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA、25重量パーセントVA、Scientific Polymers Products)は、溶解/沈殿(トリクロロベンゼン/アセトン)によって精製した。アリルベンゾエート(AB、99パーセント、TCI)およびジクミルペルオキシド(DCP、98パーセント、Sigma−Aldrich)は、受け取ったまま使用した。
【0048】
以下の手順に従って、各ポリマーへのABのグラフト化を行った。所望のポリマー(1gm)を150℃のトリクロロベンゼン(20mL)に溶解した。アリルベンゾエート(0.05g)および必要量のジクミルペルオキシドをそのポリマー溶液に添加し、その混合物を150摂氏度で60分間攪拌した。そのポリマーをアセトン(100mL)から沈殿させ、濾過し、真空下で乾燥させた。PP、PEおよびPEO生成物の場合は、Nicolet Avatar 360 FT−IR ESPスペクトロメータを使用して、精製材料の薄膜を分析した。各ポリマーについての結合したABの含有率は、PPの491〜422cm−1、PEの2100〜1986cm−1およびPEOの2287〜2119cm−1に対する結合したカルボニルの1670〜1751cm−1の共鳴吸収から導出した面積から決定した。計器の較正は、これらのポリマーとブチルベンゾエートの既知混合物を使用して展開した。変性EVAサンプルについての結合したアリルベンゾエートの含有率は、HNMRによって決定した。内部標準として役立つようにサンプルに対する臭化テトラブチルアンモニウムの既知量を装填させることにより、HNMRスペクトルの定量的積分を遂行した。結合した助剤からのエステルピーク(δ4.20〜4.35ppm)を内部標準(δ3.31〜3.44ppm)に対して積分して、EVA系についてのアリルベンゾエート転化率を導出した。
【0049】
結果を図5に提示する。異なるポリマーについてのアリル基グラフト化に対する反応性に関して明瞭な違いが観察された。助剤付加の選択性は、コポリマー形成に反映される。アリル基付加に対して類似した反応性を有するポリマーは、より容易にコポリマーを形成する(例えば、PP−g−PEまたはPEO−g−EVA)。アリル基付加に対する反応性が大きく異なるポリマーは、反応性の高いポリマーの方が優先的にグラフトされるので(例えば、EVAまたはPEO)、容易にはコポリマーを形成しない(例えば、PP/EVAまたはPP/PEG)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ポリプロピレンとポリエチレンの助剤媒介グラフト化コポリマーについてのキシレン可溶性画分のFT−IRスペクトルを示す。
【図2】ポリプロピレンとポリエチレンの助剤媒介グラフト化コポリマーについてのキシレン可溶性画分のDSCを示す。
【図3】ポリプロピレンとポリエチレンの助剤媒介グラフト化コポリマーについてのキシレン不溶性画分のFT−IRスペクトルを示す。
【図4】ポリプロピレンとポリエチレンの助剤媒介グラフト化コポリマーについてのキシレン不溶性画分のDSCを示す。
【図5】4つのポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、およびエチレン/酢酸ビニルコポリマーにグラフトしているアリルベンゾエートの相対収率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(c)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤と
を含む混合物のフリーラジカル媒介反応から調製されるコポリマーであって、
少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、前記第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、前記助剤へのラジカル媒介付加に関しては前記有機ポリマーが類似した反応性を有する、助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項2】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーの少なくとも一方が、酸素中心フリーラジカルまたは炭素中心フリーラジカルの存在下で水素原子引抜を受ける、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項3】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーの少なくとも一方が、剪断熱、熱エネルギーまたは放射線に付されたときフリーラジカルを形成する、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項4】
前記助剤が、トリアリルトリメリテート、トリアリルホスフェート、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、トリアリルトリメセート、トリアリルシアヌレート、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項5】
前記助剤が、ジビニルベンゼンである、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項6】
前記助剤が、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、および1,6−ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選択される、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項7】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーが、類似した助剤グラフト収率を有する、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項8】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーが、類似したアリルベンゾエートグラフト収率を有する、請求項7に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項9】
前記フリーラジカル反応性有機ポリマーが、約100パーセントまたはそれ以下異なるグラフト収率を有する、請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項10】
(a)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤がグラフトされている、第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマー
とを含む混合物のフリーラジカル媒介反応から調製されるコポリマーであって、
少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、前記第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、前記助剤へのラジカル媒介付加に関しては前記有機ポリマーが類似した反応性を有する、助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項11】
前記助剤をグラフトさせる前の前記第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーが、前記第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーより低いフリーラジカル反応性を有する、請求項10に記載の助剤媒介グラフト化コポリマー。
【請求項12】
(a)第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(c)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤
とを含む混合物を反応によりカップリングさせる工程を含み、
少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、前記第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、前記助剤へのラジカル媒介付加に関しては前記有機ポリマーが類似した反応性を有する、助剤媒介グラフト化コポリマーの調製方法。
【請求項13】
前記工程が、溶融状態で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程が、溶解状態で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(a)アリル、ビニルおよびアクリレート助剤からなる群より選択される助剤がグラフトされている、第一のフリーラジカル反応性有機ポリマーと、
(b)第二のフリーラジカル反応性有機ポリマー、
とを含む混合物を反応によりカップリングさせる工程を含み、
少なくとも一つの物理的特性によって判定すると、前記第一および第二の有機ポリマーは化学的に異なるポリマーであるが、前記助剤へのラジカル媒介付加に関しては前記有機ポリマーが類似した反応性を有する、助剤媒介グラフト化コポリマーの調製方法。
【請求項16】
前記工程が、溶融状態で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記工程が、溶解状態で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の助剤媒介グラフト化コポリマーから調製される、製品。
【請求項19】
請求項10に記載の助剤媒介グラフト化コポリマーから調製される、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−515011(P2009−515011A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539064(P2008−539064)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/042981
【国際公開番号】WO2007/056154
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(391018835)クイーンズ ユニバーシティ アット キングストン (9)
【氏名又は名称原語表記】QUEEN’S UNIVERSITY AT KINGSTON
【Fターム(参考)】