説明

励起又は不安定ガス分子の形成装置及びそのような装置の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、第1電極と、第1電極と共軸で第2電極と結合された誘電体との間に形成された、軸をもった管状ガス通路を有し、両電極が高電圧高周波電源と接続されている種類の、励起又は不安定ガス分子形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種類の放電装置は、ガス通路内に軸方向のガス循環を伴なうオゾン発生装置が記載されたヨーロッパ特許公開第0,160,964号明細書によって知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、著しく改良された性能、増大された信頼性を有し、多数の用途に適合する、コンパクトな形状の新しい装置を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため本発明の一特徴によれば、第1電極は誘電体を取り囲み、かつ軸と平行でほぼ直径方向に対向する細長いガス入口及びガス出口を有し、第2電極は誘電体の内壁に内張りされている。
【0005】本発明の他の特徴によれば、第2電極は、外壁がほうろう層で被覆されている誘電体の内壁の金属被覆によって形成され、第1電極の入口及び出口は、2.5mmを超えないガス通路の半径方向の厚さを超えない高さを有し、電界制限手段は、誘電体両端部レベルの表面でのマイクロ放電の形成を避けるように、第2電極の軸方向端部付近に設けられる。
【0006】このような誘電体障壁放電(dielectric barrier discharge)式配置によって、非常にコンパクトな容積で、著者によってはコロナ放電、又は無声放電又は大気圧グロー放電とも呼ばれる冷放電を実現することができ、これは0.3×105〜3×105 Paの圧力、例えば大気圧で作動し、50%を超える励起種の出力(装置によって供給される全出力対振動量子の励起種の形状でガス内に蓄積された出力の比)を有する数kWのR>放電で、出口におけるガスの著しい加熱なしに、いろいろなガスにより多くの用途に適合する。
【0007】本発明の装置は、このように多くの用途に適合し、オゾンの製造のために、CO2 混合レーザーの供給のために 金属の窒化雰囲気の形成のために 金属清浄の還元雰囲気形成のために使用される。本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、限定のない例として与えられた実施態様についてなされる以下の記載から明らかになるであろう。
【0008】
【実施例】以下になされる記載及び図面では、同一又は類似の構成要素は同一の符号を付されている。図1に示されたように、本発明による装置は、例えば金属ブロック2の内面によって形成された第1管状電極1を有し、その中には、内面に例えば金属被覆によって第2電極4が配置された例えばセラミック製の誘電材料製管3が同心状に配置されている(一層よく理解できるように図1では極端に厚くされている)。
【0009】したがって誘電体3と第2電極4の組立体は、外側には第1電極1とともに管状ガス通路5を、内側には、その電気陰性の性質のためにフレオン(登録商標)であるのが有利な冷媒を循環させる内部空間6を限定する。管状ガス通路5の軸方向の延長は1m以下、典型的には50cm以下であり、その半径方向の厚さeは3mmを超えず、典型的には2.5mm以下である。
【0010】ブロック2は、直径方向に対向する二つの長手方向の間隙7及び8を有し、両者はそれぞれ通路5内で励起すべきガスの入口及び励起された又は不安定な分子を含むガス流の出口を形成する。間隙7及び8は通路5の全軸方向長さにわたって延び、厚さeを超えない、典型的には厚さeとほぼ等しい高さを有する。ブロック2は、例えば水のような冷媒の通過する複数の導管60を第1電極1の周辺に形成されるのが有利である。
【0011】ガス入口7は、ブロック2に接続され、ガス源12から出る0.3×105 〜3×105 Paの圧力のガスを供給する管11を有する箱10内に形成された均質化室9と連通する。電極1及び4は、ほぼ10kWの出力について実際の限界は60kHzであるが15kHzの周波数で作動する高電圧高周波発電機13に接続される。出口8で入手できる励起種を含むガス流は、ずっと前に見たように利用装置14に送られる。
【0012】図2の実施態様では、第2電極を構成する内側金属被覆4をもったほぼ2mm厚の誘電体管3が見られ、第1電極1はここでは、入口7及び出口8を形成する、直径方向に対向する間隙を備えた金属管によって構成される。
【0013】第1電極1及び誘電体管3は、第1絶縁端部片15及び第2絶縁部片16によって気密同軸体を構成するように組立てられ、同軸体は平行六面体の本体20の中ぐり部17内に滑動式に気密に導入され、本体20は、第1電極の入口7が通じている細長い入口開口18及び第1電極の出口8が通じている細長い出口開口19を有する。
【0014】誘電体管3の製造に用いられるセラミックがコンデンサ製造用に適するすぐれた電気的特性を有するならば、それらが研磨されていても、コロナ放電下で軽減された挙動を引き起こす粒状表面を一般に有している。これを改善するために本発明の一態様によれば、誘電体3の外側表面は100ミクロン以下、典型的には約20ミクロンの薄いほうろう層21で覆われている。
【0015】他方では、内側電極4と誘電体との間の緊密接触が誘電体に沿ったマイクロ放電を避けることができるならば、誘電体3−ほうろう21接続によって許容される特定の超高出力の使用の場合でも、内側電極4の両端部における電界の著しい局部的強化の問題が提起される。
【0016】これを改善するために、図2の実施態様によれば、内側電極4は、弯曲形をした可撓性金属接点23によって内側電極4の対向する両端部に接続された中央管状導体22によって給電され、金属接点の外形は、冷却液体中での放電を避けることによって、内側電極により形成される等電位のゆっくりした連続移動を可能とし、放電の危険は、冷媒としてその強い電気陰性の性質の理由でクロルフルオルカーボンを使用することによって著しく低減される。
【0017】実際本発明の一態様によれば、管状導体22は、電源13への接続部を形成する金属ブロック24でふさがれた第2絶縁端部片16を横切り、第2絶縁端部片16は、導体22内に通じる半径方向通路25、及び内部室6内で冷却油を循環させるために内部室6内に通じる第2の半径方向通路26を有する。
【0018】変形では、高電圧電極4の両端部における電界のピーク制限手段は、誘電体管3端部から内側の方へ次第に厚くすることによって、又は誘電体3の端部と第1電極と向い合った、端部との間に誘電体リングを加えることによって実現することができ、リングの環状面は誘電体管3と同時にほうろう化され、リングの周縁は金属被覆されるのが有利である。
【0019】これらの電界のピーク制限手段の他の変形は図3に示され、高電圧電極4の端部の延長部上に配置され、電極4の端部と同じく外側ほうろう層21と同じ種類の内側ほうろう層28で被覆された金属製保護リング27の形状をしている。
【0020】上に述べたように、本発明による装置は、いろいろなガスの励起種をつくり出すために利用することができる。装置内に導入されるガスが大部分窒素であり、典型的には酸素を含む混合ガス中で78%以上の窒素含有量を有するとき、この装置は、振動的に励起された窒素を主としてつくるだけでなくA3 Σg+ のレベルに励起された分子窒素及び原子窒素もつくり出す。
【0021】振動的に励起された窒素は、二つの主な用途がある。すなわち励起窒素がそのエネルギーを移転しそれによってレーザー効果に必要な原子集団(population)の逆流をつくり出すCO2 と励起窒素が急速に混合されるCO2 混合パワーレーザー、及び金属の限定加熱による金属表面の窒化である。窒素含有量は重要な役割を演じる。振動的に窒素を逆励起する不純物CO2 ,CO,H2 及び特にH2 Oは制限されねばならない。
【0022】窒素中の酸素の存在により、発生出力は酸素濃度にほぼ比例して低下する。窒化処理のためには、透過又は吸着によって得られるのが有利な5%酸素含有窒素が、ガス価格が純窒素の価格と比べて、励起窒素の出力を実質的に低下することなしに著しく低減される程度において妥協できるものである。
【0023】本発明による装置は、乾燥空気から又は純酸素からのオゾン製造に有利に利用することができる。酸素の場合、装置はオゾン、一重項酸素及び原子酸素を供給する。これらの製出された種のそれぞれの量は、多数のパラメーター、特にガスの温度(与えられた出力についてのガス流量による)及び発電機の周波数に依存する。
【0024】実際にガスの温度は、オゾンの後からの破壊率を、したがって原子酸素の移動を決定し、周波数は、電子エネルギーに、したがって分子酸素の励起と解離に影響を与える。汚染防止及び殺菌の用途以外に、こうして発生された産物は、ポリマーの表面特性を、特に接着性及び湿潤性を改善するのに利用される。
【0025】装置に水素又は水素をベースとした混合物(例えば水素/アルゴン)を供給することによって、例えば金属清浄に用いられる非常に還元力をもった励起種又は原子種がつくられる。本発明は、特定の実施態様に関して説明されてきたけれども、本発明はそれに限定されることなく、むしろ当業者にとって明らかである改良及び変形を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による装置の略横断面図。
【図2】本発明による装置の好ましい一実施態様の略縦断面図。
【図3】本発明による誘電体端部の一実施態様の拡大断面図。
【符号の説明】
1 第1管状電極
2,24 金属ブロック
3 誘電体管
4 第2内側電極
5 管状ガス通路
e 管状ガス通路の半径方向厚さ
6 内部空間(内部室)
7 ガス入口
8 ガス出口
9 均質化室
10 箱
11 ガス供給導管
12 ガス源
13 高電圧高周波発電機
14 利用装置
15,16 絶縁端部片
17 中ぐり部
18 入口開口
19 出口開口
20 本体
21,28 ほうろう層
22 中央管状導体
23 可撓性金属接点
25,26 半径方向通路
27 金属製保護リング
60 冷媒導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1電極(1)と、第1電極と共軸で第2電極(4)と結合された誘電体(3)との間に形成された、軸をもった管状ガス通路(5)を有し、両電極が高電圧高周波電源(13)と接続されている種類の、励起又は不安定ガス分子の形成装置において、第1電極(1)が誘電体(3)を取り囲み、かつ軸と平行でほぼ直径方向に対向する細長いガス入口(7)及びガス出口(8)を有し、第2電極(4)が、誘電体(3)の内壁に内張りされていることを特徴とする装置。
【請求項2】 第2電極(4)が、誘電体(3)の内壁の金属被覆によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】 ガス入口(7)及びガス出口(8)が、ガス通路(5)の半径方向厚さ(e)を超えない高さを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】 誘電体の外壁が、薄いほうろう層(21)で被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】 電界制限手段(23;27)が、誘電体(3)の両端部でマイクロ放電の形成を避けるように、第2電極(4)の軸方向端部付近に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】 電界制限手段が、第2電極(4)と中央導体(22)との間に形づくられた接点(23)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】 電界制限手段が、第2電極(4)の軸方向延長部の誘電体(3)上に形成された保護リング(27)を有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の装置。
【請求項8】 冷媒を循環させる手段(6;25,22,26)が、誘電体(3)と第2電極(4)の組立て体内に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】 両電極(1;4)及び誘電体(3)が、細長いガス入口開口(18)及びガス出口開口(19)を有する本体(20)内に挿入できる円筒形状につくられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】 ガス通路(5)の半径方向厚さ(e)が2.5mmを超えないことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】 均質化室(9)が、入口通路(18,7)とガス源(12)に接続されたガス供給導管(11)との間に設けられることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】 ガスが空気であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】 ガスが酸素であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】 ガスが窒素であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項15】 ガスが水素であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】 請求項12又は請求項13のいずれか1項に記載の装置をオゾンの製造に使用する使用方法
【請求項17】 請求項12又は請求項14のいずれか1項に記載の装置をCO2 混合レ−ザ−供給用に使用する使用方法
【請求項18】 請求項14に記載の装置を金属窒化雰囲気形成のために使用する使用方法
【請求項19】 請求項15に記載の装置を還元雰囲気形成のためのに使用する使用方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【特許番号】特許第3538438号(P3538438)
【登録日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【発行日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−138591
【出願日】平成5年6月10日(1993.6.10)
【公開番号】特開平6−115907
【公開日】平成6年4月26日(1994.4.26)
【審査請求日】平成12年4月3日(2000.4.3)
【出願人】(595179619)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (1)
【住所又は居所原語表記】75 Quai d’Orsay 75321 Paris Cedex 07 France
【参考文献】
【文献】特開 昭60−235702(JP,A)
【文献】特開 昭55−75905(JP,A)
【文献】実開 昭61−63631(JP,U)
【文献】実公 平4−37865(JP,Y2)
【文献】実公 昭43−25508(JP,Y1)
【文献】米国特許4774062(US,A)