説明

労働安全衛生マネージメントシステム、その方法及びプログラム

【課題】既に存在し、定量化されている工事積算システムにおける歩掛データや積算データを利用して、人手やコストをかけずに危険源評価データを自動生成し、危険源評価書(表)を出力する労働安全衛生マネージメントシステムの提供。
【解決手段】労働安全衛生マネージメントシステムは、複数工事の名称、および工事の各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、各要素別の危険有害要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、評価対象工事の情報を入力する手段と、評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを生成する手段と、内訳データに基づき、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを生成する手段により、前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設関連の会社を対象とした労働安全衛生マネージメントシステム、その方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
労働安全衛生マネージメントシステムOHSAS(Occupational Health and Safety Assessment Series)18001は、国際的な規模で認証を行っている諸機関(例えば、ロイド、SGS、日本規格協会)などが参加した国際コンソーシアムが策定した労働安全衛生マネージメントシステムの規格である。この規格は、企業などの組織内での労働衛生災害リスクを最小化し、将来の発生リスクを回避する活動を継続的に改善しているかどうかをチェックするためのものである(非特許文献1を参照されたい。)。また、OHSAS18001は、ISO14001規格と同様に、計画、実施及び運用、点検及び是正処置、経営層による見直し、という、プラン(計画)−ドゥー(実行)−チェック(点検)−アクション(見直し)から成るいわゆるデミングサイクルで構成されるものであり、OHSAS18001の求めるマネージメントシステムでは、このサイクルの実施が求められている。
【0003】
従って、この労働安全衛生規格に準拠(登録審査及び維持審査に合格)するためには、事業活動のすべてを網羅して、労働安全衛生における危険源、即ち、リスクを抽出しこれの影響を算出・評価しなければならないが、手計算でも、コンピュータを用いるにしても、手際よく、定量的に処理する方法を模索しているのが現状である。このような状況において、企業が独自に労働安全衛生関連の書類を整えその登録を受けることは非常に困難であり、一般的には、専門の労働安全衛生コンサルタントに依頼し、危険源評価に関する書類を作成してもらう必要があった。さらに、この規格は一定の周期で維持審査があり、上述したデミングサイクルを常時実践し続け、危険源評価表を作成する必要があった。
【0004】
ところで、建設会社では、施工する工事に関して労働者及び周辺に影響を及ぼす要素(典型的なものは、工事作業者の転落、転倒、工事用重機による作業者のけがなど)が多数存在し、これらの各要素の影響を考慮した危険源評価表を作成する必要があるが、1つの工事であっても様々な多数の要素(作業工程)から構成されており、さらに、建設会社では多数の工事を抱えているのが通常であるため、多数の工事の各要素の危険源を適切に評価した危険源評価表を作成するのは非常に労力や時間がかかるものであった。
【非特許文献1】吉沢正監修、労働安全衛生マネージメントシステム−OHSAS18001・18002−対訳と解説(出版社:日本規格協会、発行年月2004年03月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した諸問題に鑑みて、本発明は、建設関連の会社を対象とした労働安全衛生マネージメントシステムであって、より詳細には、既に存在し、定量化されている建設工事積算システムにおける歩掛データや積算データを効率的に利用して、人手やコストをかけずに簡易かつ簡便に危険源評価データを自動生成し、このデータを編集した危険源評価書(表)を出力する労働安全衛生マネージメントシステムを提供することを目的とする。
【0006】
また、従来の建設業界では、いわゆる歩掛を用いた積算方式(積み上げ)を使って歩掛積算テーブルを構築し、或いは標準的な積算テーブルを用いて、これに適合した工事単位を工事名称として使用し、単価計算や入札などを行ってきていた。しかしながら、諸官庁によって、コストの削減、価格の透明性などを目的として、工事を構成する個々の要素の単価を積み上げずに、包括的な施工対象の工事別のユニットプライス型積算方式(施工単価形式)を用いた入札・受注の形態に変化してきている。このようなユニットプライス形式とは、発注者と受注者の取引価格をベースに、工事目的物の施工単価(ユニットプライス)を調査・決定する方式である。具体的には、例えば、工事目的物の工事名称がアスファルト舗装工(車道部)、契約単位が200m、その値段が2千万円などの形式である。本発明は、今後、広く使われるであろうユニットプライス形式の積算方式でも、簡易かつ簡便に危険源評価データを自動生成し、このデータを編集した危険源評価書(表)を出力する労働安全衛生マネージメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した諸課題を解決すべく、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
労働安全衛生マネージメントシステムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素(工程)の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報(例えば、工事名称(工種)=バックホウ掘削など)を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素(及び、望ましくはそれらの標準的な数値情報)を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データ(これは、各危険有害要因に対応する個別リスクに相当する)を含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段(プリンタ、またはCRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、評価対象工事の簡易な情報を提供するだけで、歩掛マスターテーブルのデータを利用することによって、その工事に関連する各要素の危険源評価データを自動的に労力や人手をかけずに自動的に生成し、危険源評価データを含む危険源評価表を出力することができるようになる。また、対象工事に関する数値情報が与えられてなくても、対象工事を標準的な数量の工事と仮定して、これに含まれる各要素に対する標準的な歩掛データの数値を使用して数値情報を付加することもできる。このように、本発明によれば、労働安全衛生コンサルタントなどの助けを得ずに簡易かつ自動的に危険源評価表を作成することが可能となる。
【0008】
また、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、ユニットプライス形式で入力された評価対象工事の情報であっても、ユニットプライス形式で記述された、或いはユニットプライス形式の工事名称に関連付けられた各要素を含む各テーブルを参照して、簡易かつ自動的に危険源評価表を作成することが可能となる。このように、歩掛テーブルはユニットプライス形式でも使用することが可能であり、即ち、過去のデータを有効に活用することが可能である。
【0009】
また、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
前記評価対象工事の情報は、その数量(例えば、工事名称がバックホウ掘削である場合は、数量(工事規模)=100mなど、或いは対象工事に含まれる各要素(工程)の各数値情報)をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部は、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、与えられた数値情報を利用することによって、より詳細かつ適切な危険源評価データを作成することが可能となる。
【0010】
また、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称(通常の積み上げ方式の工事名称、または、ユニットプライス形式の工事名称)、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値(例えば、合致する要素の数や割合)を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、当該評価対象工事に対して、自社内の実数値に対応してカスタマイズされた統計情報が十分にある場合は、カスタマイズ統計情報を含む「建設積算テーブル」を使い、十分にない場合は、標準統計情報を含む「歩掛マスターテーブル」を使うという判定動作を自動的に行うことができるため、より適切かつ正確な危険源響評価データを生成することが可能となる。即ち、カスタマイズされた統計情報の蓄積度に応じて、評価対象工事別に標準統計情報を使うべきかカスタマイズ統計情報を使うべきかを自動的に判定できるため、非常に適正かつ正確な危険源評価ができる。或いは、この閾値の設定次第では、強制的に一方のデータテーブルを使う設定にすることもでき、閾値の設定変更によって、異なるデータテーブルから作成された2種類の評価表を作成して比較するなどが簡単に可能である。
【0011】
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
前記危険源評価マスターテーブルの危険源情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられており、
前記危険源評価データ作成手段は、前記発生可能性の数値情報、および前記結果重大性の数値情報を含む前記危険源評価データを作成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、危険源がもたらすリスクを数値情報によって定量的に評価することが可能となる、
【0012】
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、労働安全衛生規制の法規を含む労働安全関連法規テーブルをも含み、
前記危険源評価データ作成手段は、前記労働安全関連法規テーブルを参照して、前記危険源評価データのうち、労働安全衛生規制の法規の規制があるものについては、対応する法規を当該危険源評価データに関連付ける、
ことを特徴とする。
本発明によれば、危険源評価データのうち法規制のあるものを当該法規(例えば、労働安全衛生法などの法律・条例、など)に関連付けることによって、企業の労働安全衛生のコンプライアンス(法令遵守)活動をより容易にすることができる。具体的には、危険な作業工程を要する工事や危険を伴う機械を使用する工事などの場合の安全装置の設置義務、或いは作業者への保護防具などの装着義務などの法令を付加した危険源評価データを作成することなどが容易に行うことができる。
【0013】
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
外部システムから、(従来の積み上げ方式或いはユニットプライス形式の)工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、実際の工事データをネットワークを介して受信する受信手段と、
前記受信した実際の工事データに基づき、前記記憶手段に格納されている前記建設積算データテーブルを更新する更新手段をも含む、
ことを特徴とする。
本発明によれば、実際の工事データ(いわゆる工事日報、工事週報、工事月報など)を定期的に受信しこれに基づき、カスタマイズされた統計情報を含む建設積算テーブルをさらに適切かつ正確なものになるようカスタマイズすることができ、これによって、危険源響評価データをさらに適切かつ正確なものにすることが可能である。
【0014】
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
複数の工事の名称、および前記複数の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システム(建設に関する諸データを含む、建設積算システム、携帯端末、携帯電話など)から、少なくとも工事の名称を含む評価対象工事の情報をネットワーク(有線或いは無線のネットワーク)を介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段(プリンタ、CRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、少なくともユニットプライス形式の工事の名称を含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする。
建設会社では、多数の工事に関する詳細なデータを含む建設積算(建設情報管理)システムを導入して、通常の積み上げ方式であってもユニットプライス形式であっても、工事に含まれる詳細な工程(要素)、その各工程の詳細な単価などの蓄積情報を持つデータベース(さらに、標準統計情報を含む歩掛マスターテーブル、当該会社にカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルも含まれている。)を保持している場合が多い。本発明は、建設業界ではこのような建設積算システムが導入されている場合があることに着目し、この建設積算システム(本システムから見て外部にあるシステムであるため便宜上「外部システム」と呼ぶ。)に蓄積されているデータを利用することによって、当該建設会社の工事関連の危険源評価データを自動的に生成することを可能にする。従って、建設会社に建設積算システムが導入されており必要な工事関連データが存在すればこのデータをそのまま利用することによって、人手をかけずに危険源評価データ(危険源評価表など)を自動的に作成することが可能となる。
【0015】
さらにまた、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記選択された評価対象工事およびその数量に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする。
【0016】
上述したように本発明の解決手段をシステム(装置)として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現され得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。なお、下記のプログラムや方法の各ステップは、データの処理においては必要に応じて、CPU、DSPなどの演算処理装置を使用するものであり入力したデータや加工・生成したデータなどを磁気テープ、HDDなどの記憶装置に格納するものである。
【0017】
例えば、本発明を方法として実現させると、本発明による労働安全衛生リスクマネージメント方法は、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
また、本発明による労働安全衛生リスクマネージメント方法は、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0018】
或いは、本発明をプログラムとして実現させると、本発明による労働安全衛生リスクマネージメントプログラムは、
労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための方法であって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による労働安全衛生リスクマネージメントプログラムは、
労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための労働安全衛生リスクマネージメントプログラムであって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以降、諸図面を参照しつつ、本発明の実施態様を詳細に説明する。主として従来の積み上げ形式の積算方式に準拠したシステムの形態で説明するが、ユニットプライス形式の積算方式であっても本発明は同様に実現でき、同様の効果が得られるものである。
図1は、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。図に示すように、本発明による労働安全衛生マネージメントシステム100は、記憶手段110、入力手段120、内訳データ生成手段125、危険源評価データ生成手段130、出力手段135、受信手段140、及び更新手段145を具える。労働安全衛生マネージメントシステム100は、インターネット、WAN、LAN、有線・無線電話回線網などのネットワーク200を介して端末122、建設積算システムやPDA、携帯機器、携帯電話などの外部システム250と接続されている。また、端末122の一部は本システム100に直接ローカルで接続されている。
【0021】
記憶手段(装置)110は、複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブル112と、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブル114とを格納している。さらに、記憶手段110は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブル116をも含む。
【0022】
なお、本発明での評価対象工事の工事名称の入力形式は、大別して、従来からある積み上げ方式での工事名称と、ユニットプライス形式での工事名称との2つが想定される。ここで、目的工事であるユニットプライス形式で規定された工事名称は、従来の積み上げ方式と同じ名称のものも想定され、このような場合には、歩掛マスターテーブルなどの各種テーブルは、従来からある積み上げ式の積算方式で構築されたものであっても何ら問題なく使用可能である。しかしながら、工事名称が、ユニット定義などによって異なったり、より包括的なものになったりしている場合などに適切に対応するために、「ユニットプライス型積算方式に準拠した工事名称」と、これに含まれる各要素との関連付けを再設定することが望ましい。さらに、両方式が併用可能になるように、工事名称にはユニットプライス形式であることを示すフラグ、或いは通常の積み上げ形式のものであることを示すフラグを設けることが好適である。この場合には、後述の入力手段120で評価対象工事を入力する際にもユニットプライス形式を示すフラグを付加することによって、ユニットプライス形式での入力であることを示す。
【0023】
ユニットプライス型積算方式では、目的工事に含まれる個々の要素(工程)、例えば、建設資材や燃料などの単価や数量などには着目しないため、基本的には歩掛積算テーブルを作成する必要はない。しかしながら、ユニットに含まれる各要素に基づきユニットプライスを決定するときの根拠や社内での原価管理などのために歩掛積算テーブルを構築する必要性がある。さらに、危険源評価データを算出するためには、歩掛積算テーブル上に構築されている各要素の情報が必須である。そこで、本発明によるシステムでは、従来からある歩掛積算テーブルに構築されているこれらの要素のデータを継承して有効利用を図るものである。
【0024】
入力手段120は、ローカル接続された、或いはネットワークを介して接続された端末122を介して評価対象工事(危険源評価の対象となる工事)の名称およびその数量を入力する。
【0025】
内訳データ生成手段125は、記憶手段110に格納されている前記歩掛マスターテーブル112を参照して、前記入力された評価対象工事の名称およびその数量に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素およびそれらの数量を含む内訳データを演算手段(例えばMPU、CPUなど。図示せず)を使用して生成する。さらに、内訳データ生成手段125は、評価対象工事に含まれる各要素と、建設積算データテーブル116に含まれるカスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、建設積算データテーブル116をも参照して、評価対象工事およびその数量に基づき、内訳データを生成することもできる。
【0026】
危険源評価データ生成手段130は、前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブル114を参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する。即ち、内訳データに含まれる情報と合致する情報が危険源評価データの項目に含まれる場合は、その項目を抽出し、さらにこの項目に関連付けられている事故型分類データの項目も抽出して危険源評価データとする。
出力手段135は、危険源評価データを編集し危険源評価表(書)として端末122に出力したり、或いは、エクセルなどの表計算アプリケーションに準拠したファイルとして出力したり、さらにはプリンタ(図示せず)に印刷したりする。
【0027】
受信手段140は、外部システム250から、工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、「実際の工事データ」をネットワーク200を介して受信する。
更新手段145は、受信した実際の工事データに基づき、記憶手段110に格納されている前記建設積算データテーブル116を更新する。
或いは、本システム100は、入力手段の代わりに、受信手段140を使って、外部システム250から、評価対象工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む「評価対象工事データ」をネットワーク200を介して受信することもできる。このように外部システムから評価対象工事データを受信する構成をとれば、何ら人手を介さずに既存の外部システム上に構築された建設関連データを有効活用して、煩雑で膨大な労力がかかる危険源評価表を容易かつ自動的に作成することが可能となる。
【0028】
図2は、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。
図に示すように、ステップS10では、参照するデータベースとして、手動で、或いは所定の閾値を用いて、歩掛マスターテーブル、積算データテーブル(実際の受注工事)、或いは工事区分テーブルを使うかを選択する。
歩掛マスターテーブルを参照することが選択された場合は、複数の階層のうちどの階層(階層は、後で詳細に説明する。)でデータを集約するのかを選択する(S12a)。次に、建設積算管理システムなどのような外部システムなどから供給された省庁一覧表から評価対象工事が関連する所望の省庁に対応した歩掛データテーブルを選択し、この選択した省庁の下の階層にある工種リストから1つの工種(例えば土木工事)を選び出す(S14a)。選ばれた工種の下の階層にある種別リストから1つの種別(例えば機械土工(土砂))を選び出し、さらに、この選んだ種別の下の階層にあるリストから少なくとも1つのものを評価対象工事として選択する。
或いは、工種の選択以降は、その選択で表示される一覧から対象でない項目を除外することによって非表示にしたり、生成された内訳データの一覧から対象でない項目を除外することによって非表示にしたりすることもできる。この非表示設定は、記憶しておき、次回の選択時に自動的に除外して非表示にする構成をとることも可能である。
或いは、評価対象工事の情報は、別途、工事の名称及びその数量を直接的に入力したり、外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。この評価対象工事の情報に基づき、選択した省庁用の歩掛マスターテーブルを参照して、前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(S16a)。
【0029】
ステップS10で積算データテーブル(即ち、ある企業、団体などの実際の受注工事データに基づきカスタマイズされているデータテーブル)を参照することが選択された場合は、ステップ12aと同様に複数の階層のうちどの階層でデータを集約するのかを選択する(S12b)。次に、外部システムなどから得られる受注工事一覧表から所望の評価対象工事を選択するが(S14b)、このとき、選択した評価対象工事に適した積算データテーブルも自動的に選択される。そして、この評価対象工事の情報に基づき、内訳データを演算手段を使用して生成する(S16c)。
ステップS10で工事区分テーブル(例えば、道路工事、ダム工事、トンネル工事などの区分別に編成されたもの)を参照することが選択された場合は、ステップ12aと同様に複数の階層のうちどの階層でデータを集約するのかを選択する(S12c)。次に、外部システムなどから得られる工事区分テーブルから所望の評価対象工事を選択するが(S14c)、このとき、選択した評価対象工事に適した積算データテーブルも自動的に選択される。そして、この評価対象工事の情報に基づき、内訳データを演算手段を使用して生成する(S16c)。
【0030】
或いは、評価対象工事の情報については、別途、工事の名称及びその数量を直接的に入力したり、外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。予め入力或いは受信してある評価対象工事の情報に基づき、選択した工事に対応した積算データテーブルをも参照(基本的には歩掛マスターテーブルを参照する)して、前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(S16b)。
なお、評価対象工事の情報は、ユニットプライス形式で入力することも可能であり、例えば各省庁や機関によって発表されているユニットプライス規定集や定義集に準拠した形式、具体的には、工事名称としてのユニット区分=表層(車道部)、契約単位として施行面積=200m3(工事区分=舗装、工種=舗装工、種別=アスファルト舗装工)などの形式で入力することもできる。
【0031】
ステップS16a、16bで作成された内訳データは、一旦、記憶装置に格納しておく(S18a)。同様に、ステップS16cで作成された内訳データも、一旦、記憶装置に格納しておく(S18b)。
生成された内訳データに基づき、工種別リンクテーブル、工事区分別リンクテーブル、危険源評価マスターテーブル、或いは関連法規データベースを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する(S20)。生成された危険源評価データは、一旦、記憶装置に格納しておく(S22)。
その後、危険源評価データを編集し、危険源響評価表として出力する(S24)。
【0032】
図3は、上述したステップS12aなどにおける階層の指定、および、評価対象工事に適応した歩掛データベース(マスターテーブル)を指定するための画面インターフェイスの一例を示す図である。図に示すように、工種(最も大雑把で高レベルの階層であり、例えば、土工(土木工事)など)、種別(その下の階層であり、例えば、機械土工など)、の2階層があり、ユーザは、画面内の所望の階層のラジオボタンを選択する。また、この例では歩掛データベースは省庁別に設けられており、ユーザは、評価対象工事の歩掛データベースとして最適なものを「省庁名」をキーとして選択する。
【0033】
図4は、評価対象工事に対応する所望の歩掛データベースを選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。図に示すように、省庁として国土交通省が選択され、工種として土工、種別として機械土工(土砂)、規格としてブルドーザ掘削押土が選択されている。図中の右側で、さらに、詳細なレベルでの選択も可能である。
【0034】
図5は、工種(a)、種別(b)の各階層を選択したときに、内訳データを集約(グループ化)するときのグループ(項目)の一例を示す図である。階層を選択した場合は、図に示すような階層下のグループに内訳データは集約されることとなる。
【0035】
図6は、評価対象工事を選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。ユーザは、工事情報ツリー(リスト)から分類別にグループ化されたものから1つの分類(この図の例では旧建設省発注工事)を選択し、その下の階層のリストから1つのグループ(この図の例ではリスク評価用工事)を選択し、さらにその下の階層のリストから1つのカテゴリ(この図の例ではリスク評価用工事1)を選択する。このようにして、評価対象工事を選択するが、本システムは、1つの工事のみならず複数の工事をも選択することも可能である。
このような選択の下で、さらに、選択されたカテゴリである「リスク評価用工事1」において、さらに幾つかの階層(レベル)で抽出条件を規定することもできる。
【0036】
図7は、積算工事データベース内の所望の建設積算データテーブルにアクセスするための画面インターフェイスの一例である。図6で選択された評価対象工事の「リスク評価用工事1」には、これに対応する積算工事データベースが関連付けられており、評価対象工事を選択すると、このような関連付けられた建設積算データテーブルが呼び出され、後続処理である内訳データ作成でこのテーブルが利用される。
或いは、選択された評価対象工事と同様の種類の要素を含むその他の積算工事データベースのデータテーブルを代用することもできる。
【0037】
図8は、工種(工事種類)リンクテーブルの一例を示す図である。図に示すように、工種、作業名、工程(各工程には歩掛コードが関連付けられている)などのリストを持ち、各工程は、対応する危険源評価マスターテーブルの項目が関連付けられている。例えば、以下の表のような「内訳データ」(表1)と「工種リンクテーブル」(表2)とを歩掛コードなどでマッチング処理を行い、合致するデータを危険源評価マスターテーブルより取得し、危険源評価データを生成すること可能となる。即ち、この表の例では、歩掛コードB0001、B0002をキーとして表2のような工種リンクテーブルを検索し、同じキーB0001、B0002を持つものを探し出し、その探し出した項目に関連付けられている危険源評価マスターテーブルの該当項目から危険源評価データを抽出する。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
図9は、危険源評価マスターテーブルの一例を示す図である。図に示すように、危険源評価マスターテーブルは作業工程で分類されており、この図では、右側に、人力掘削に関する作業工程(掘削作業や持ち場の点検など)とその有害要因(通路、岩石など)およびそれに関連付けられた事故型分類(つまずき、切れなど)が表示されている。また、テーブル中では、これらの有害要因別にその重要度、発生可能性、評価(重要度×発生可能性)、ランク(例えば評価の数値が1−10の範囲ならA、11−20はB、21以上はCという基準でランク付けする)なども数値化或いはランク付けされている。
【0041】
図10は、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムによって生成された危険源評価データを示す図である。この危険源評価データは、生成された内訳データに基づき、(工種リンクテーブルを介して)危険源評価マスターテーブルを参照して生成されたものである。例えば、図10では、「人力掘削」を評価対象工事として含み、この工事に含まれる各要素(作業工程)のうちの要素「工具、保護具の点検」、及び「持ち場、周囲の点検」については、「その他:切れ、こすれ」及び「通路:つまずき」という有害要因(起因物)及びその事故型分類を表示するものである。そして、このデータには各有害要因に関する重要度、発生可能性、評価などの数値情報・ランク付けなども含まれる。ユーザは、これらの数値情報で労働安全リスクを容易に評価することが可能となる。
なお、図10は、従来の積み上げ方式の積算システムに準拠する形式で評価対象工事を入力することによって作成したものであるが、ユニットプライス方式に準拠する形式で評価対象工事を入力することによっても同様の表を作成できる。
【0042】
図11は、積算データテーブルの使用歩掛によって危険源評価データを編集(グループ化)する過程を示す図である。図に示すように、評価対象工事としてA工事、B工事、C工事があり、これらの工事には、少なくとも1つの具体的な工事名称及びその数量が含まれる(図11a)。これらの工事名称に対応する歩掛の索引が積算データテーブルにあるため、本システムは、積算データテーブルを参照することによって(図11b)、土工、及び、コンクリート工という大分類からその下層をなす小分類でグループ化された危険源評価表を作成することができる(図11c)。
【0043】
図12は、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムで作成された危険源評価表を示す図である。本発明による労働安全衛生マネージメントシステムによれば、図に示すような危険源評価表を労働安全衛生規格コンサルタントなどのサポートなしで、さらには何ら人手をかけずに自動的に作成することが可能である。
【0044】
これまで、説明してきた実施例では、主として工事関連の「会社全体」即ち全社レベルを対象として危険源評価を行うシステムとして説明してきた。しかしながら、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムは、組織や会社などにおける「現場別」での危険源評価を行うことに適した構成にカスタマイズすることも可能である。さらには、会社全体の危険源評価を一次評価として行い、その後に、二次評価として管理者が管理すべき危険源(リスク)を所定の閾値(例えば、評価数値が20以上のものなど)として予め規定しておけば、下記のように特定リスクデータ(即ち、特定リスク一覧表)を生成することもできる。
【0045】
図13は、本発明による労働安全衛生マネージメントシステムで作成された特定リスク一覧表を示す図である。この表においては、個別環境、管理によるリスク低減が実行可能かを判断する「管理によるリスク低減値」が算出されている。管理によるリスク低減値は、「人」、「設備」、「作業」及び「業務」のサブ項目に細分化されている。項目「人」の数値は、身体的機能に関する制約が無い場合は−1点、項目「設備」の数値は、安全に対する設備が十分である場合は−1点、項目「作業」の数値は、作業環境が心理的不安要素に影響しない場合は−1点、項目「業務」の数値は、工程的にゆとりがあり、突貫的作業や深夜作業が殆ど発生しない場合は−1点、という方式で評価点(値)から差し引く処理を行う。なお、これらの全てにおいて該当する場合は評価値から合計4点が差し引かれることとなる。これらのサブ項目を含む「管理によるリスク低減値」は、予め、各作業工程における各有害要因に対して関連付けられたリスク低減値テーブルに規定しておく。本システムは、この低減値テーブルを参照して自動的に各有害要因の評価値から差し引くべき数値を算出することが可能である。
即ち、これらの項目の数値をもとに、項目「低減後評価点」は、
「低減後評価点」=「評価値」+「管理によるリスク低減値」
で計算される。
また、項目「作業頻度」の数値は、作業を行う頻度を係数化した値であり、例えば、多い:1.2、普通:1.0、少ない:0.7、稀:0.5等のように規定されている。
項目「最終評価点」の数値は、
「最終評価点」=「低減後評価点」×「作業頻度」 (但し、少数以下四捨五入)
で計算される。そして、この最終評価点の数値に基づき特定したリスクのランクが「確定リスク」として決定される。この「確定リスク」は、一次評価と同様に、最終評価点が16点未満はA、16点以上はB、20点以上はCというようにランク付けされる。本システムは、所定の管理用のテーブルと所定の閾値とを参照してこのような二次的評価も容易かつ簡便に実施して、特定リスク一覧表(データ)として出力することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の効果をまとめると以下のようになる。そもそも、定量化と迅速化が難しい労働安全衛生マネージメントシステムに対して現実的な手段を提供できる。また、労働安全衛生マネージメントシステムは、時系列的にデータの蓄積と評価精度を上げてゆくことが望ましいが、本発明は蓄積や経験の少ない初期段階から成熟段階まで、概算的評価と詳細評価を比較しながら、発展する手段を提供できる。
また、実際の工事の進捗に応じて工事日報データを反映させることにより、さらに定量的に危険源評価(リスク評価)ができるようになる。また、その工事日報データを携帯通信端末(携帯電話、通信機能を具えたPDAなど)からサーバーに毎日送信することにより自動的にデータを集積することにより、さらに迅速かつ正確な危険源評価ができるようになる。
特に、ユニットプライス形式の積算方式は、今後、急速に普及することが予想されるものであり、ユニットプライス形式での包括的な工事目的物とその数量とを入力することによって、迅速かつ正確な危険源評価が簡便に達成できる利点は大きい。
【0047】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることを留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の部材、手段、ステップなどを1つに組み合わせたり或いは分割したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による労働安全衛生マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による労働安全衛生マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。
【図3】上述したステップS12aにおける階層の指定、および、評価対象工事に適応した歩掛データベース(マスターテーブル)を指定するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図4】評価対象工事に対応する所望の歩掛データベースを選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図5】工種(a)、種別(b)の各階層を選択したときに、内訳データを集約(グループ化)するときのグループ(項目)の一例を示す図である。
【図6】評価対象工事を選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図7】積算工事データベース内の所望の建設積算データテーブルにアクセスするための画面インターフェイスの一例である。
【図8】工種(工事種類)リンクテーブルの一例を示す図である。
【図9】危険源評価マスターテーブルの一例を示す図である。
【図10】本発明による労働安全衛生マネージメントシステムによって生成された危険源評価データを示す図である。
【図11】積算データテーブルの使用歩掛によって危険源評価データを編集(グループ化)する過程を示す図である。
【図12】本発明による労働安全衛生マネージメントシステムで作成された危険源評価表を示す図である。
【図13】本発明による労働安全衛生マネージメントシステムで特定リスク一覧表を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
100 労働安全衛生マネージメントシステム
110 記憶手段
112 歩掛マスターテーブル
114 危険源評価マスターテーブル
116 建設積算データテーブル
120 入力手段
122 端末
125 内訳データ生成手段
130 危険源評価データ生成手段
135 出力手段
140 受信手段
145 更新手段
200 ネットワーク
250 外部システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働安全衛生マネージメントシステムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項2】
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象工事の情報は、その数量をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部に対しては、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記危険源評価マスターテーブルの危険源情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および重大性の数値情報が関連付けられており、
前記危険源評価データ作成手段は、前記発生可能性の数値情報、および前記結果重大性の数値情報を含む前記危険源評価データを作成する、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、労働安全衛生規制の法規を含む労働安全関連法規テーブルをも含み、
前記危険源評価データ作成手段は、前記労働安全関連法規テーブルを参照して、前記危険源評価データのうち、労働安全衛生規制の法規の規制があるものについては、対応する法規を当該危険源評価データに関連付ける、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
外部システムから、工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、実際の工事データをネットワークを介して受信する受信手段と、
前記受信した実際の工事データに基づき、前記記憶手段に格納されている前記建設積算データテーブルを更新する更新手段をも含む、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項8】
複数の工事の名称、および前記複数の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、少なくとも工事の名称を含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項9】
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、少なくともユニットプライス形式の工事の名称を含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成手段と、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象工事の情報は、その数量をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部に対して、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の労働安全衛生マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする労働安全衛生マネージメントシステム。
【請求項12】
労働安全衛生マネージメント方法であって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメント方法。
【請求項13】
労働安全衛生マネージメント方法であって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする労働安全衛生マネージメント方法。
【請求項14】
労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための労働安全衛生リスクマネージメントプログラムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする労働安全衛生リスクマネージメントプログラム。
【請求項15】
労働安全衛生リスクマネージメント方法をコンピュータに実行させるための労働安全衛生リスクマネージメントプログラムであって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各要素別の危険有害要因およびそれに関連付けられた事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記危険源評価マスターテーブルを参照して、危険有害要因データおよび事故型分類データを含む危険源評価データを前記演算手段を使用して生成する危険源評価データ生成ステップと、
前記危険源評価データを編集し危険源評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする労働安全衛生リスクマネージメントプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−59332(P2006−59332A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205682(P2005−205682)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501263809)株式会社コンピュータシステム研究所 (26)