説明

効率的な押出によるポリオレフィン微多孔膜の製造方法

本発明は、各種電池用隔離膜(battery separator)、分離用フィルター及び微細ろ過用分離膜(membrane)などに使用できるポリオレフィン微多孔膜の製造方法である。本発明によるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、ポリオレフィン(成分I)15〜55重量%と、ポリオレフィンと熱力学的単一相をなすダイルエント(成分II)及びポリオレフィンと熱力学的液−液相分離をなすことができるダイルエント(成分III)85〜45重量%とを、押出機内への効率的な分離注入を利用した混練/押出を通じて、微多孔膜を製造する方法である。これは、前記組成物に対する通常的な押出方法が、1)押出混練性が悪くて、2)押出条件の設定が厳しく、3)押出過程でポリオレフィン及びダイルエントの過度なる酸化により、微多孔膜の物性及び耐久性の低下が発生するようになる短所を克服する。そして、前記組成物の混練性を高めて押出を容易にする。また、製造された微多孔膜の物性と耐久性を向上させる製造方法である。また、本発明によるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、押出加工性に優れており、生産性も向上するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリオレフィン微多孔膜(microporous film)は、その化学的安定性と優れた物性により、各種電池用隔離膜(battery separator)、分離用フィルター及び微細ろ過用分離膜(membrane)などに広く利用されている。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンから微多孔膜を製造する方法の中、湿式法は、ポリオレフィンを高温でダイルエント(diluent:希釈剤)と混練し単一相を形成して、冷却過程でポリオレフィンとダイルエントを相分離させる。その後、ダイルエント部分を抽出し、ポリオレフィンに孔隙を形成する方法であって、生産されるフィルムの厚さが薄くて均一であり、薄膜のフィルムを製造することができて、物性にも優れているため、リチウムイオン電池など、2次電池の隔離膜用に広く使用されている。
【0003】
湿式法による多孔性フィルムの製造方法は、フィルムを構成する高分子(樹脂)と混練されたダイルエントがどのような過程を経て相分離され気孔を作るのかによって、固−液相分離法と液−液相分離法とに分類される。二つの方法共に、高分子とダイルエントを高温で混合し、単一相を作る段階までは同一であるが、相分離メカニズムの差により、最終的に製造される微多孔膜の特性は相異なっている。
【0004】
固−液相分離の場合、冷却を経つつ高分子が結晶化され固体となるまで、いかなる相分離も起こらない。即ち、高分子鎖が結晶化されつつダイルエントを結晶の外に押し出すことにより相分離が生じるようになる。したがって、この時発生される相分離相の大きさは、高分子結晶の大きさと比肩される非常に小さい大きさを有するようになり、分離された相の形及び大きさなどの構造を多様に調節できないという短所がある。この場合、最近2次電池の製造会社で開発中の高容量2次電池に求められる、高透過性を有する2次電池隔離膜への適用に限界が生じるようになる。また、機械的強度を高める方法としては、超高分子量ポリエチレンを混合する方法など、根本的に高分子樹脂の分子量を高める他には、方法がない。したしながら、超高分子量樹脂は、高価で、混合が難しく、しかも加工負荷を大いに上昇させる短所を有している。固−液相分離の代表的な組成としては、ポリオレフィン樹脂にパラフィンオイル(paraffin oil)あるいは鉱油(mineral oil)を混合することが広く知られており、米国特許第4,539,256号、米国特許第4,726,989号、米国特許第5,051,183号、米国特許第5,830,554号、米国特許第6,245,272号、米国特許第6,566,012号などに紹介されている。
【0005】
液−液相分離の場合、高分子が結晶化されて固体に固まる前に、高分子が結晶化する温度以上で、液体状態の高分子物質と液体状態のダイルエントとがまず熱力学的な不安定性により相分離が発生するものである。それにより、相分離条件の変化により分離される相の形と大きさなどが変化するようになる。したがって、液−液相分離の場合、高分子の種類とダイルエントの組み合せにより、液−液相分離の温度及び分離される相の大きさを調節することができるだけではなく、熱力学的液−液相分離温度と実際相分離を進行させる温度との差、各段階における滞留時間によって、相の大きさを多様に調節できるという長所がある。液−液相分離法により製造される微多孔膜の場合、固−液相分離法による微多孔膜と異なって、気孔の大きさを調節することができて、固−液相分離法による微多孔膜の気孔の大きさに比べ、数倍以上の大きさの気孔を有する微多孔膜の製造も可能である。
【0006】
液−液相分離法は、上記の長所にもかかわらず、加工上の難しさにより、広く使用されていない。その理由は、第一、液−液相分離法は、使用される高分子とダイルエントを、押出機内で液−液相分離温度以上の条件でまず単一相を形成して混練し、それから相分離を進行しなければならないからである。そのため、液−液相分離温度以上の条件でまず単一相を形成する工程では、温度が必ず液−液相分離温度以上でなければならない。そうすると、温度が液−液相分離温度まで上がる過程では熱力学的混練が起こらない。このような理由で、一般的な押出方法を使用する場合、押出温度が非常に高くなり、押出条件の設定も厳しく、生産性が低下する。また、押出過程で組成物の過度なる酸化を招来し、製造された微多孔膜の物性及び耐久性の低下をもたらす。第二の理由は、液−液相分離法を使用するためには、ポリマーの加工条件に適した適切な液−液相分離条件(温度)を有するダイルエントを探さなければならない。しかし、これもまた容易なことではない。
【0007】
米国特許第4,247,498号は、液−液相分離が可能な、多様な高分子とダイルエントとの組み合せを紹介する。このように液−液相分離された組成物からダイルエントを抽出させて、広範囲な厚さの製品が製造できることを述べている。米国特許第4,867,881号には、液−液相分離された組成物を延伸、抽出、乾燥、熱固定して、配向された微多孔膜を製造する方法が開示されている。したし、二つの特許とも、液−液相分離が発生する組成物を効果的に押出し、液−液相分離法の効果を極大化する方法を提示することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた品質の製品が生産できるという長所にもかかわらず、加工上の問題によりよく使用されていない液−液相分離法の加工問題を解決する。その効果を極大化するためのポリオレフィン微多孔膜の製造方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、ポリオレフィンと熱力学的単一相をなすダイルエントと、液−液相分離をなすことができるダイルエントとを混合して使用する場合、押出に適した液−液相分離温度を有するダイルエント組成が可能であることを見出した。また、これらのダイルエントを、本発明による方法により押出機内に分離注入すると、一般的な押出方法の短所を排除して、押出条件の設定が簡単になる。そして、押出温度が低くなり、押出過程で組成物の過度なる酸化を防止して、製造された微多孔膜の物性及び耐久性の低下が防止される。これにより、組成物の混練性が高くて押出が容易になって、製造された微多孔膜の物性と耐久性が向上することを見出した。また、本発明による押出/混練方法を使用する場合、混練性が向上し、生産性も向上するということを見出した。
【0010】
本発明の目的は、優れた品質の製品が生産できるという長所にもかかわらず、加工上の問題でよく使用されていない液−液相分離法の加工問題を解決して、その効果を極大化するためのポリオレフィン微多孔膜の製造方法を提供することである。
【0011】
前記目的を達成するための本発明によるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(a)ポリオレフィン(成分I)15〜55重量%と、ポリオレフィンと熱力学的単一相をなすダイルエント(成分II)及びポリオレフィンと熱力学的液−液相分離をなすことができるダイルエント(成分III)85〜45重量%とを押出機内に分離注入して混練/押出するステップである。成分Iと成分IIを押出機内の1/3地点以前に注入/混練して、成分IIIは、押出機内の1/3以後で且つ2/3以前の地点に分離注入する。そして、成分IIIの注入以後の地点の温度を、成分I、II及びIII混合物の液−液相分離温度以上に上げて混練/押出し、押出機内で熱力学的単一相にするステップと、
(b)前記溶融物を、押出温度が液−液相分離温度以下である区間を通過させて、液−液相分離を進行し、シート状に成形するステップと、
(c)前記シートを、必要に応じて延伸するステップと、
(d)前記シートから成分IIとIIIを抽出して乾燥するステップと、
を含む工程からなるポリオレフィン微多孔膜の製造方法である。
【0012】
湿式ポリオレフィン微多孔膜の製造方法に使用されるダイルエント(低分子量有機物質)は、二つの種類に大別される。ポリオレフィンが溶融されている全温度領域でポリオレフィンと単一相をなすポリオレフィンと液−液相分離ができない単一相ダイルエントと、ポリオレフィンが溶融されている温度領域の中、高温でのみポリオレフィンと単一相をなすポリオレフィンと液−液相分離ができる相分離ダイルエントである。
【0013】
単一相ダイルエントを使用する方法が固−液相分離法であり、相分離ダイルエントを使用する方法が液−液相分離法である。
【0014】
単一相ダイルエントを使用する場合(固−液相分離法)、ポリオレフィンが溶融される瞬間からダイルエントとポリオレフィンが熱力学的に単一相をなすため、混練自体が非常に容易である(別途の混練がなくても、時間た経つと混練がなされる)。また、相分離は、温度が低くなってポリオレフィンが固体になると、液相のダイルエントが分離されて起こる。したがって、ダイルエント相の大きさを調節することがほとんど不可能である。
【0015】
相分離ダイルエントを使用する場合(液−液相分離法)、ポリオレフィンが溶融されても、組成物の温度がポリオレフィンとダイルエントの熱力学的液−液相分離温度以上に上がらないと、互いに熱力学的に混練されない。この際、組成物を、組成物の熱力学的液−液相分離温度以上に上げると、その時から二つの物質が熱力学的単一相に混練されるようになる。液−液相分離法において、完全な混練のためにこの過程は必ず必要である。完全な混練後、組成物の温度を再び組成物の液−液相分離温度以下、ポリオレフィンの結晶化温度以上に維持すると、ポリオレフィンとダイルエントの液−液相分離が起こるようになる。この際、相分離される各相は、ポリオレフィンが大部分の含量を構成するポリオレフィン多含有相(polyolefin rich phase)と、ダイルエントに溶けている少量のポリオレフィンとダイルエントとからなるダイルエント多含有相(diluent rich phase)からなる。熱力学的に相分離された二つの相は、時間が経つにつれて、同じ相同士に固まるCoarsening作用により、相分離された相の大きさが大きくなる。この時、Coarsening作用により、相分離された相が大きくなる程度は、液−液相分離状態における滞留時間と、液−液相分離状態が維持される温度によって異なってくる。即ち、滞留時間が長いほど(滞留時間の1/4二乗に比例する)、液−液相分離が発生する温度と液−液相分離が実際進行される温度との差が大きいほど、各相の大きさは大きくなる。各相の大きさの増加は、溶融物の温度がポリエチレン多含有相の結晶化温度以下に下がって、ポリエチレン多含有相が結晶化されるまで続く。
【0016】
上記のような理由で、液−液相分離法によるポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、固−液相分離法による製造方法と異なって、分離される相の大きさを調節することができる。即ち、熱力学的液−液相分離温度と実際相分離を進行させる温度との差及び各段階における滞留時間によって、相の大きさを多様に調節できる。これにより、液−液相分離法により製造される微多孔膜の場合、固−液相分離法による微多孔膜と異なって、気孔の大きさを調節することができる。したがって、固−液相分離法による微多孔膜の気孔の大きさに比べ、数倍以上の気孔 大きさを有する微多孔膜の製造も可能である。また、相分離が十分なされると、ポリエチレン多含有相のポリエチレン濃度が高くなり、製品の機械的強度も増加させることができる。
【0017】
液−液相分離法は、上記の長所にもかかわらず、二つの加工上の短所を有している。
【0018】
第一は、適切な相分離ダイルエントを探すことが難しいということである。その理由は、上述したように、液−液相分離をする前に、押出/混練機内で組成物を必ず熱力学的単一相にしなければならないからである。ポリオレフィンの押出可能加工温度は、160〜300℃程度であるが、実際、押出は低い温度ですることが好ましい。適正加工温度は、160〜260℃である。したがって、相分離ダイルエントは、ポリオレフィンとの液−液相分離温度が必ずこの領域内である必要があり、180〜260℃であることが好ましい。上記の条件を満足し且つ熱安定性及び商業的な安全性などを全て満足するダイルエントは多くなく、これらの場合も、固−液相分離法で一般的に使用されるパラフィンオイルに比べ、経済性の面で劣る。
【0019】
第二は、相分離ダイルエントをポリオレフィンと熱力学的単一相にすることが容易ではないということである。その理由は、ポリオレフィンが溶融/押出機内で溶融されて、相分離ダイルエントとの液−液相分離温度以上に温度が上がるまで、ポリオレフィンとダイルエントは、熱力学的に混練されないからである。しかし、条件によって機械的な混練は可能であるが、ポリオレフィンは溶融状態で粘度が非常に高く(通常、ダイルエントに比べ100〜200倍以上)、機械的な混練は、効果がほとんどない。このような理由で、通常的な押出方法では、この組成物を混練するために、押出機の温度を非常に高く維持するか、押出機内の滞留時間を増やす方法(押出機の長さを長く設計するか、押出量を減らす方法)が使用されている。しかしながら、このような方法は、押出過程で組成物の過度なる酸化を招来し、製造された微多孔膜の物性及び耐久性の低下を誘発して、混練そのものが容易ではない。また、生産性も低下して、生産装備の構造も難しくなるため、経済性を落としてしまう結果を招来する。
【0020】
本発明者らは、上記のような液−液相分離法の短所が克服できる、以下のような二つの事実を見出した。
【0021】
その一は、単一相ダイルエントと相分離ダイルエントを混練して使用する場合、ポリオレフィンとダイルエント間の液−液相分離温度を調節することができるということである。即ち、相分離ダイルエントに単一相ダイルエントを混練すると、相分離ダイルエントの単独使用に比べ、ポリオレフィンとの液−液相分離温度が低くなるということである。また、これを利用すると、ポリオレフィンの加工温度を超過する温度(300℃以上)で液−液相分離をするダイルエントも、単一相ダイルエントとの混練比によって使用が可能になる。即ち、多様な相分離ダイルエントの使用が可能であり、相分離ダイルエントの使用量も減らすことができて、安定性、安全性及び経済性を同時に満足することができる。
【0022】
第二は、上記のように単一相ダイルエントと相分離ダイルエントを混合して使用する時、二種類のダイルエントを同時にポリオレフィンと混練しないことである。そして、ポリオレフィンとダイルエントを先に混練して単一相を作った後、それから相分離ダイルエントを混練すると、生産性の向上と共に、優れた特性の微多孔膜が得られる。即ち、単一相ダイルエントと相分離ダイルエントを分離して注入して、且つ加工条件を本発明のように調節する場合、1)混練性に優れ、押出量を高めて、生産性を向上させることができる。2)相対的に低温で押出が可能であって、通常的な押出過程で発生する短所である、ポリオレフィン及びダイルエントの過度なる熱酸化による微多孔膜の物性及び耐久性の低下を克服し、製造された微多孔膜の物性と耐久性を向上させることができる。3)単一相ダイルエントと相分離ダイルエントとが互いに相分離が起こって、前もって混練が不可能な場合にも適用が可能である。
【0023】
上記の二つの事実に基づいた本発明の微多孔膜の製造方法は、
(a)ポリオレフィン(成分I)15〜55重量%と、ポリオレフィンと熱力学的単一相をなすダイルエント(成分II)及びポリオレフィンと熱力学的液−液相分離をなすことができるダイルエント(成分III)85〜45重量%とを押出機内に分離注入して混練/押出するステップである。成分Iと成分IIを押出機内の混練部1/3地点以前に注入/混練して、先ず単一相を形成して、成分IIIは、押出機内の混練部1/3以後で且つ2/3以前の地点に別途注入する。そして、成分IIIの注入以後の地点の温度を、成分I、II及びIII混合物の液−液相分離温度以上に上げて混練/押出し、押出機内で熱力学的単一相にするステップと、
(b)前記溶融物を、押出温度が液−液相分離温度以下である区間を通過させて、液−液相分離を進行し、シート状に成形するステップと、
(c)前記シートを、必要に応じて延伸するステップと、
(d)前記シートから成分IIとIIIを抽出して乾燥するステップと、
を含む工程により生産されるポリオレフィン微多孔膜の製造方法である。
【0024】
本発明のポリオレフィン(成分I)としては、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどを重合した半結晶性の単独重合体あるいは共重合体及びこれらの混合物などが使用できる。この中でも、結晶度が高くて樹脂の溶融点が低い高密度ポリエチレンが最も好ましい。ポリオレフィンの分子量は、シート形状に成形が可能であれば、そんなに重要ではない。しかし、2次電池用分離膜のように、強い物性特性が要求される用途の場合、分子量が大きいほど好ましい。この場合、好ましいポリオレフィンの重量平均分子量は、1×10〜1×10であって、さらに好ましくは、2×10〜5×10である。
【0025】
単一相ダイルエント(成分II)としては、ポリオレフィンが溶融される全温度領域でポリオレフィンと熱力学的に単一相をなす(ポリオレフィンと液−液相分離をしない)あらゆる有機液状化合物が使用できる。工程の安定性と安全性を考慮すると、パラフィンオイル、鉱油、またはワックスなどのような不活性有機物質が好ましい。
【0026】
相分離ダイルエント(成分III)としては、成分IIと成分III間の重量比率が成分II:成分III=1:4〜5:1の領域でポリオレフィン(成分I)と液−液相分離をすることができる。そして、その温度が180℃〜260℃となるあらゆる有機液状化合物(organic liquid)が可能である。その例としては、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid)類と、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)などの芳香族エーテル類と、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10〜20個の脂肪酸類と、パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10〜20個の脂肪酸アルコール類と、パルミチン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、ステアリン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、オレイン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、リノール酸モノ−、ジ−、またはトリエステルなどの脂肪酸群の炭素元素数4〜26個の飽和及び不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシで置換された一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1〜8個で且つ炭素数が1〜10個のアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類とがある。上記条件を充足すれば、成分IIIとして上記物質の混合物も使用可能である。
【0027】
液−液相分離温度が180℃未満に下がると、液−液相分離を十分進行させるために、押出後端部の温度を180℃以下に十分下げなければならない。しかし、この場合、ポリオレフィンの融点に近い温度で押出を行わなければならないため、ポリオレフィンが十分溶融されず、粘度が非常に高くなって、押出機に機械的に無理を与えるようになる。そうなると、シートの表面も粗くなって、正常的な押出加工ができなくなる。逆に、液−液相分離温度が260℃以上に上がると、初期押出時熱力学的単一相を作るために、260℃以上の十分な温度で混練をしなければならない。しかし、この場合、温度が高すぎて、組成物の酸化分解反応が急激に促進され、所望の物性を有する製品を生産することができなくなる。
【0028】
液−液相分離温度が180〜260℃になるようにするための成分IIと成分III間の重量比率が成分II:成分III=1:4〜5:1から外れる場合、混練上の問題が発生する可能性がある。即ち、成分IIIの含量が成分II:成分III=1:4より多い場合、ダイルエントの4/5以上を押出機の1/3以後の地点に注入するようになる。これにより、全体的な混練時間が短くなり、混練が難しくなる。また、成分IIIの含量が成分II:成分III=5:1より少ない場合、ダイルエントの5/6以上を押出機の1/3以前の地点に注入するようになる。ところが、このような場合も、高粘度のポリオレフィン(成分I)が、低粘度のダイルエントに比べてあまりにも少なくなり、混練が難しくなる。最も好ましい成分IIと成分III間の重量比率は、成分II:成分III=1:2〜4:1である。
【0029】
本発明で使用されるポリオレフィン(成分I)の含量は、15〜55重量%であることが好ましい。ポリオレフィンの含量が55重量%を超過すると(即ち、総ダイルエント(成分II+成分III)が45重量%未満であると)、孔隙度が減少して孔隙大きさが小さくなる。そうなると、孔隙間の相互連結(interconnection)が少なく、透過度が非常に低下する。その反面、前記ポリオレフィンの含量が15重量%未満であると、ポリオレフィンとダイルエントの混練性が低下し、ポリオレフィンがダイルエントに熱力学的に混練されない。そして、ゲル状に押出されて、延伸時、破断及び厚さ不均一などの問題を引き起こす可能性がある。
【0030】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0031】
前記組成物を最も効率的に押出/混練するための押出機は、二軸混練押出機である。ポリオレフィン(成分I)と単一相ダイルエント(成分II)は、予めブレンディングされてコンパウンダーに投入されるか、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入される。前記二つの成分は、押出機の1/3以後且つ2/3以前の地点で投入される相分離ダイルエント(成分III)との混練以前に十分混練されるように、なるべく押出初盤部に投入することが好ましい。
【0032】
本発明において、相分離ダイルエントが投入される以前までの温度は、ポリオレフィンの溶融温度以上を維持するだけでいい。ポリオレフィンの場合は、160℃程度が好ましい。このようにすることにより、押出過程におけるポリオレフィンの熱酸化を最大限防止することができるようになって、生産される微多孔膜の品質が向上されるようになる。
【0033】
相分離ダイルエント(成分III)は、成分Iと成分IIが単一相に混練された以後である、押出機の1/3以後且つ2/3以前の地点に投入される。この際、2/3以後に投入されると、全体的な混練性が著しく落ちてしまい、好ましくない。相分離ダイルエント(成分III)が投入された以後の温度は、成分I、成分II及び成分III混合物の液−液相分離温度以上に維持して、混合物を熱力学的単一相に作る。即ち、既に成分Iと成分IIが単一相の溶融物をなした状態で、成分IIIを混練するのである。そうすると、成分Iと成分IIの溶融物は、成分IIIと相対的に粘度差が少ない。そして、既に十分温度が上がっている状態であるため、ポリオレフィン(成分I)に成分IIと成分IIIを一遍に混練する場合に比べ、混練性が非常に向上する。これにより、同一大きさの押出機で時間当たりさらに多い量の混合物を溶融/押出することができる。したがって、経済性も大きく向上するようになる。
【0034】
上記のように、単一相ダイルエントと相分離ダイルエントの分離注入とこれによる温度調節を行うと、押出機内で必要以上に熱酸化が発生することを防止し、微多孔膜の品質が向上する。そして、溶融/押出効率が増加し、生産性及び経済性が大きく増加する。
【0035】
単一相に混練された溶融物は、ダイよりシート状に押出/成形される前に、温度が液−液相分離温度以下の区間を通過して、液−液相分離が発生/進行されるようにしなければならない。この時の温度及び滞留時間は、温度の場合、溶融物の液−液相分離温度より10℃以上低いことが好ましい。そして、滞留時間の場合、30秒以上であることが好ましいが、生産しようとする微多孔膜の特性によって自由に調節することができる。
【0036】
シート状の成形物を製造する方法としては、水冷、空冷式を利用した一般的なキャスティング(casting)あるいはカレンダリング(calendaring)方法のいずれも使用できる。
【0037】
延伸は、電池用隔離膜などのように、最終フィルムの強度が要求される場合、強度向上のために行うことができる。延伸過程は、ロール方式またはテンター方式(Tenter type)の逐次あるいは同時延伸により行うことができる。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ4倍以上であり、総延伸比は、25〜50倍であることが好ましい。一方向の延伸比が4倍未満である場合は、一方向の配向が十分ではなく、且つ縦方向及び横方向間の物性均衡が崩れ、引張強度及び穿孔強度などが低下する。また、総延伸比が25倍未満であると、未延伸が発生し、50倍を超過すると、延伸中、破断が発生する可能性が高くなる。また、最終フィルムの収縮率が増加する短所がある。
【0038】
この際、延伸温度は、使用されたポリオレフィンの融点と、ダイルエントの濃度及び種類によって異なってくる。最適延伸温度は、前記シート成形物内のポリオレフィンの結晶部分の30〜80重量%が溶ける温度範囲で選択されることが好ましい。前記延伸温度が、前記シート成形物内のポリオレフィンの結晶部分の30重量%が溶ける温度より低い温度範囲で選択されると、フィルムの軟質性(softness)がないため、延伸性が悪くなる。そうなると、延伸時に破断が発生する可能性が高く、且つ未延伸も発生する。その反面、前記延伸温度が、結晶部分の80重量%が溶ける温度より高い温度範囲で選択すると、延伸が容易である。未延伸の発生は少ないが、部分的な過延伸により厚さ偏差が発生して、樹脂の配向効果が低く、物性が大きく劣るようになる。一方、温度による結晶部分の溶ける程度は、フィルム成形物のDSC(Differential Scanning Calorimeter)から得られる。
【0039】
延伸されたフィルムは、有機溶媒を使用して抽出して乾燥する。本発明で使用可能な有機溶媒は、特に限定されず、樹脂押出に使用されたダイルエントを抽出可能な溶剤ならいずれも使用可能である。しかし、好ましくは、抽出効率が高く、乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサンなどが好ましい。抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的な溶媒抽出方法を独立的にあるいは組み合せて使用できる。抽出時、残留ダイルエントの含量は、1重量%以下でなければならない。残留ダイルエントが1重量%を超えると、物性が低下し且つフィルムの透過度が減少する。残留ダイルエントの量(抽出率)は、抽出温度と抽出時間により大きく左右される。抽出温度は、ダイルエントと溶剤の溶解度増加のために、高いことが好ましいが、溶剤の沸き(boiling)による安定性問題を考慮すると、40℃以下が好ましい。抽出温度がダイルエントの凝固点以下であると、抽出効率が大きく低下するため、必ずダイルエントの凝固点より高くなければならない。抽出時間は、生産されるフィルムの厚さにより異なるが、10〜30μm厚の一般的な微多孔膜を生産する場合、2〜4分が好ましい。
【0040】
乾燥されたフィルムは、必要に応じて、電池用隔離膜用途のように、残留応力を減らして最終フィルムの高温収縮率を縦方向、横方向それぞれ5%以下に減少させる必要がある場合は、熱固定過程を経る。熱固定は、フィルムを固定させて熱を加え、収縮しようとするフィルムを強制に固定し、残留応力を除去することである。熱固定温度は、高いほど収縮率を低めるに有利である。しかし、高すぎる場合は、フィルムが部分的に溶けて、形成された微多孔が目詰まって、透過度が低下する。好ましい熱固定温度は、フィルムの結晶部分の10〜30重量%が溶ける温度範囲で選択することが好ましい。前記熱固定温度が、前記フィルムの結晶部分の10重量%が溶ける温度より低い温度範囲から選択されると、フィルム内のポリオレフィン分子の再配列(reorientation)が十分ではなくて、フィルムの残留応力除去効果がない。そして、フィルムの結晶部分の30重量%が溶ける温度より高い温度範囲で選択されると、部分的溶融により微多孔が目詰まって、透過度が低下される。
【0041】
熱固定時間は、熱固定温度が高い場合は、相対的に短くして、熱固定温度が低い場合は、相対的に長くすることができる。好ましくは5秒〜1分程度である。
【0042】
上述のような本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、次のような特性を有する。ポリオレフィン微多孔膜の製造時、特性向上のために、液−液相分離をなす組成物を押出する時、通常的な押出方法より押出条件の設定が容易になる。また、押出過程でポリオレフィン及びダイルエントの過度なる酸化を招来し、製造された微多孔膜の物性及び耐久性の低下をもたらすような短所を克服する。また、前記組成物の押出を容易にして、且つ製造された微多孔膜の物性と耐久性を向上させ、電池用隔離膜及び各種フィルターに有用に使用できる。また、押出加工性に優れ、生産性が向上するようになる。
【0043】
以下、実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0044】
ポリオレフィンの分子量及び分子量分布の測定は、Polymer Laboratory社の高温GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定された。
【0045】
ポリオレフィンとダイルエントは、Φ=46mmの二軸押出機で混練された。二軸押出機の最初から最後のダイまでの区間は、全部して20個であって、最後のダイ部分を除いては、全て同じ長さで構成されている。混練部は、最初から12個の区間(バレル)にかけての長さだけ設けられており、混練部に設けられたスクリューの長さ/直径の比率は、47であった。14番目区間には、ギアポンプが設けられており、一定な厚さのシートを生産することができるようになっている。押出機全体の滞留時間(residence time)は、組成によって少しずつ差があるが、約6分であって、12番目区間まで(バレル)の滞留時間は、約3分であった。
【0046】
押出は、成分I、成分II及び成分IIIの注入位置とバレル及びその他の押出区間の温度を変化させながら行った。
【0047】
押出された溶融物は、T字形ダイより押出されて、キャスティングロールにより厚さ600〜1,200μmのシートに成形されて、これらは延伸に使用された。延伸は、テンタータイプの同時延伸機で、温度を変化させながら延伸比を6×6にした。溶融及び混練不良によるゲルの存在有無を調べるために、200μm厚のフィルムを別途に製作して評価した。分離膜に使用されるためには、2,000cm面積(厚さ200mmのシート基準)内のゲルの数が5個以下でなければならない。
【0048】
延伸のためのシート成形物の熱的特性は、DSC(Differencial Scanning Calorimetry)で分析を行った。分析条件は、サンプル重量5mg、スキャン速度(scanning rate)10℃/minであった。
【0049】
シートの延伸は、テンタータイプの連続式延伸機で、延伸比、延伸温度を変化させながら同時延伸により進行された。延伸速度は、2.0m/minに維持した。
【0050】
ダイルエントの抽出は、メチレンクロライドを利用し、浸漬方式により行った。抽出機内の滞留時間は2分にして、フィルム内残留ダイルエントは、1%以下に加工した。
【0051】
熱固定は、ダイルエントの抽出されたフィルムを空気中で乾燥した後、テンタータイプの連続式フレームで行って、時間は15秒間とした。
【0052】
製造されたフィルムは、微多孔膜において最も重要な物性である穿孔強度、気体透過度及び収縮率を測定し、その結果を表1に示した。
【0053】
*物性測定方法
(1)穿孔強度は、直径1.0mmのピンが120mm/minの速度でフィルムを破断させる時の強度で測定した。
(2)気体透過度は、孔隙測定機(porometer:PMI社のCFP-1500-AEL)で測定された。一般に、気体透過度は、Gurley numberで表示されるが、Gurley numberは、フィルム厚の影響が補正されないため、フィルム自体の孔隙構造による相対的透過度が分かり難い。これを解決するために、本発明では、Darcy’s透過度常数を使用した。Darcy’s透過度常数は、下記数学式1から得られて、本発明では、窒素を使用した。
[数学式1]
C=(8FTV)/(πD(P−1))
ここで、C=Darcy透過度常数
F=流速
T=サンプル厚
V=気体の粘度(0.185 for N2)
D=サンプル直径
P=圧力
本発明では、100〜200psi領域で、Darcy’s透過度常数の平均値を使用した。
(3)収縮率は、フィルムを105℃で10分間放置した後、縦方向及び横方向の収縮を%で測定した。
【0054】
(実施例1)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、ジブチルフタレート(下記表の成分B)を使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ31重量%、46重量%及び23重量%であり、成分II:成分IIIは2:1であって、全ての成分を合わせた総押出量は、15kg/hrであった。
【0055】
各成分の注入方法は、成分Iと成分IIは、前もってスラリー状態に混練され、押出部の#1バレル区間に注入されて、成分IIIは、混練区間の1/3以後で且つ2/3以前の地点である#6区間に注入された(上記のように、全体混練区間は、12区間であった)。
【0056】
成分IIIの注入以前までの温度は、高密度ポリエチレンの溶融温度より少し高い170℃にした。そして成分IIIの注入以後の温度は、液−液相分離温度以上の230℃にした。また、混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の180℃にした。
【0057】
延伸、抽出及び熱固定は、上記の基本条件に基づいて行った。抽出は、メチレンクロライドを使用して浸漬方式により行った。抽出機内の滞留時間は2分であって、フィルム内残留ダイルエントは、1%以下であった。延伸及び熱固定の詳細条件は、下記の表に示した。
【0058】
(実施例2)
成分Iとして、重量平均分子量が2.1×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、オレイン酸トリグリセリドとリノール酸トリグリセリドとを1:2に混合(下記表の成分C)して使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ45重量%、44重量%及び11重量%であった。また、成分II:成分IIIは4:1であって、全ての成分を合わせた総押出量は、20kg/hrであった。
【0059】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIは、#2区間にそれぞれ注入された。そして、成分IIIは、混練区間の1/3以後で且つ2/3以前の地点である#8区間に注入された。
【0060】
成分IIIの注入以前までの温度は、実施例1のように180℃にした。成分IIIの注入以後の温度は、液−液相分離温度以上の230℃にした。混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の170℃にした。
【0061】
延伸及び熱固定の詳細条件は、下記の表に示して、抽出条件は、実施例1と同様である。
【0062】
(実施例3)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、リンシード(linseed)オイル(下記表の成分D)を使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ35重量%、13重量%及び52重量%であった。成分II:成分IIIは1:4であって、全ての成分を合わせた総押出量は、10kg/hrであった。
【0063】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIは、#3区間にそれぞれ注入された。成分IIIは、混練区間の1/3以後で且つ2/3以前の地点である#5区間に注入された。
【0064】
成分IIIの注入以前までの温度は、高密度ポリエチレンの溶融温度より少し高い170℃にした。成分IIIの注入以後の温度は、液−液相分離温度以上の250℃にした。混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の200℃にした。
【0065】
延伸及び熱固定の詳細条件は、下記の表に示して、抽出条件は、実施例1と同様である。
【0066】
(比較例1)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、オレイン酸トリグリセリドとリノール酸トリグリセリドとを1:2に混合(下記表の成分C)して使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ30重量%、35重量%及び35重量%であった。また、成分II:成分IIIは1:1であって、全ての成分を合わせた総押出量は、10kg/hrであった。
【0067】
各成分の注入方法は、成分Iと成分IIは、前もってスラリー状態に混練され、#1及び#2区間に同量にそれぞれ分離注入された。そして、成分IIIは、混練区間の2/3以後の地点である#10区間に注入された。
【0068】
成分IIIの注入以前までの温度は、実施例1のように180℃にした。成分IIIの注入以後の温度は、液−液相分離温度以上の250℃にした。混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の200℃にした。
【0069】
延伸、抽出、熱固定などの、以後の工程は、生産されたシートの不良(ゲル及び表面)により、行うことができなかった。
【0070】
(比較例2)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、ジブチルフタレート(下記表の成分B)を使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ40重量%、50重量%及び10重量%であった。成分II:成分IIIは5:1であって、全ての成分を合わせた総押出量は、10kg/hrであった。
【0071】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIは、#2区間にそれぞれ注入された。成分IIIは、混練区間の1/3以後で且つ2/3以前の地点である#6区間に注入された。
【0072】
成分IIIの注入以前/以後の温度を、全て液−液相分離温度以下の180℃にした。
【0073】
延伸、抽出、熱固定などの、以後の工程は、生産されたシートの不良(ゲル及び表面)により、行うことができなかった。
【0074】
(比較例3)
成分Iとして、重量平均分子量が2.1×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、オレイン酸トリグリセリドとリノール酸トリグリセリドとを1:2に混合(下記表の成分C)して使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ58重量%、6重量%及び36重量%であった。また、成分II:成分IIIは1:6であって、全ての成分を合わせた総押出量は、10kg/hrであった。
【0075】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIは、#2区間にそれぞれ注入された。成分IIIは、混練区間の1/3以前の地点である#3区間に注入された。
【0076】
成分IIIの注入以前までの温度は、実施例1のように180℃にした。成分IIIの注入以後の温度は、液−液相分離温度以上の280℃にした。混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の220℃にした。
【0077】
延伸、抽出、熱固定などの、以後の工程は、生産されたシートの不良(ゲル及び表面)により、行うことができなかった。
【0078】
(比較例4)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、ジブチルフタレート(下記表の成分B)を使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ40重量%、10重量%及び50重量%であった。成分II:成分IIIは1:5であって、全ての成分を合わせた総押出量は、10kg/hrであった。
【0079】
各成分の注入方法は、成分I、成分II及び成分IIIは、前もってスラリー状態に混練され、#1に全て投入された。
【0080】
混練押出温度は、液−液相分離温度以上の270℃にして、混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の200℃にした。
【0081】
延伸、抽出、熱固定などの、以後の工程は、生産されたシートの不良(ゲル及び表面)により、行うことができなかった。
【0082】
(比較例5)
成分Iとして、重量平均分子量が2.1×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、ジブチルフタレート(下記表の成分B)を使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ25重量%、50重量%及び25重量%であった。成分II:成分IIIは2:1であって、全ての成分を合わせた総押出量は、15kg/hrであった。
【0083】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIと成分IIIは、前もって混練され、#2区間と#5区間に同量に分離注入された。
【0084】
混練/押出部の全区間の温度は、液−液相分離温度以上の270℃にして、混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の200℃にした。
【0085】
混練不良によりゲルの数が大きく増加し、商品性はなかったが、物性測定のために、延伸、抽出、熱固定などを行って、詳細条件は、下記の表に示した。抽出条件は、実施例1と同様であった。
【0086】
(比較例6)
成分Iとして、重量平均分子量が4.0×10である高密度ポリエチレン(HDPE)、成分IIとしては、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイル(下記表の成分A)、成分IIIとしては、オレイン酸トリグリセリドとリノール酸トリグリセリドとを1:2に混合(下記表の成分C)して使用した。成分I、成分II及び成分IIIの含量は、それぞれ10重量%、30重量%及び60重量%であった。成分II:成分IIIは1:2であって、全ての成分を合わせた総押出量は、20kg/hrであった。
【0087】
各成分の注入方法は、成分Iは、#1区間に、成分IIと成分IIIは、前もって混練され、#2区間と#5区間に同量に分離注入された。
【0088】
混練/押出部の全区間の温度は、液−液相分離温度以上の250℃にして、混練/押出部以後の温度は、液−液相分離温度以下の200℃にした。
【0089】
混練不良によりゲルの数が大きく増加し、商品性はなかったが、物性測定のために、延伸、抽出、熱固定などを行って、詳細条件は、下記の表に示した。抽出条件は、実施例1と同様であった。
【0090】
上記実施例及び比較例の実験条件及びこれにより得られた結果を表1〜4にまとめて示した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0095】
上述のように本発明は、ポリオレフィン微多孔膜の製造時、特性向上のために、液−液相分離をなす組成物を押出する時、通常的な押出方法に比べ押出条件の設定が容易になる。また、押出過程でポリオレフィン及びダイルエントの過度なる酸化を招来し、製造された微多孔膜の物性及び耐久性の低下をもたらすような短所を克服することができる。また、前記組成物の押出を容易にして、且つ製造された微多孔膜の物性と耐久性を向上させ、電池用隔離膜及び各種フィルターに有用に使用できる。また、押出加工性に優れ、生産性が向上するようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィン(成分I)15〜55重量%と、ポリオレフィンと熱力学的単一相をなすダイルエント(成分II)及びポリオレフィンと熱力学的液−液相分離をなすことができるダイルエント(成分III)85〜45重量%とを押出機内に分離注入して混練/押出するステップであって、成分Iと成分IIを押出機内の1/3地点以前に注入/混練して、成分IIIは、押出機内の1/3以後で且つ2/3以前の地点に別途注入し、成分IIIの注入以後の地点の温度を、成分I、II及びIII混合物の液−液相分離温度以上に上げて混練/押出し、押出機内で熱力学的単一相にするステップと、
(b)前記溶融物を、押出温度が液−液相分離温度以下である区間を通過させて、液−液相分離を進行し、シート状に成形するステップと、
(c)前記シートから成分IIとIIIを抽出して乾燥するステップと、
を含む工程により生産されるポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項2】
成分IIは、成分Iの溶融点以上で成分Iと熱力学的に単一相をなすパラフィンオイル、鉱油、またはワックスから選択されるダイルエントであることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項3】
成分IIIは、成分I及び成分IIと溶融混練されて成分I、II及びIIIの混合溶融物になった時、180℃〜260℃で混合溶融物の液−液相分離できるダイルエントであることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項4】
前記成分IIIは、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid)類と、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)などの芳香族エーテル類と、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10〜20個の脂肪酸類と、パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10〜20個の脂肪酸アルコール類と、パルミチン酸モノ−、ジ−、またはトリエステル、ステアリン酸モノ−、ジ−、またはトリエステル、オレイン酸モノ−、ジ−、またはトリエステル、リノール酸モノ−、ジ−、またはトリエステルなどの脂肪酸群の炭素元素数4〜26個の飽和及び不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシで置換された一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1〜8個で且つ炭素数が1〜10個のアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類と、からなる群から選択される一つ以上の成分であることを特徴とする、請求項3に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
成分IIと成分III間の重量比率は、成分II:成分III=1:4〜5:1であることを特徴とする、請求項3に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項6】
単一相の溶融物が通過する液−液相分離温度領域区間は、単一相の溶融物がシート形態に固形化される前の押出機内部、あるいは押出された以後冷却前までの区間であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項7】
抽出/乾燥されたフィルムを熱固定することを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項8】
前記シートを延伸するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項9】
延伸は、シートの融点と−20℃の間の温度でなされて、ロール方式またはテンター(Tenter)方式を含む逐次あるいは同時2軸延伸方法により、各軸の延伸比が4倍以上で、総延伸比が50倍以下になるように延伸することを特徴とする、請求項8に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

【公表番号】特表2010−513590(P2010−513590A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541228(P2009−541228)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006487
【国際公開番号】WO2008/072906
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(308007044)エスケー エナジー カンパニー リミテッド (53)
【Fターム(参考)】