動きが連動しない多目的三つ折りコンパクト
ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバーと、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができる物品キャリアと、を備える、安定性が向上した多目的で使用に便利な一体型化粧用コンパクトである。ベースに対して連動しない物品キャリアの動きと、カバー及び物品キャリアが独立に動くという構成と、の組合せにより、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されるか、又は、平らな姿勢、ベースが延長された姿勢、及び安定なA字形フレームの姿勢など、有用で様々な姿勢で表面上に置かれてもよい、多目的の三つ折りコンパクトが作り出される。このコンパクトは、多目的で、安定で、シンプルで、安価に製造できるとともに、上品で遊び心のある雰囲気を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な物品をパッケージ化する、又は便利に格納するための容器に関する。具体的には、本明細書に記載される実施例は、選択的な回転機構を特徴とする三つ折りコンパクトである。説明目的のため、記載される容器は、化粧用又は皮膚疾患用の製品、並びにミラー、ブラシ、及び他のアプリケータなどの補助的品目など、パーソナルケア物品用のコンパクトとして実現される。ただし、本発明の原理は化粧用コンパクトに限定されるものではなく、パッケージ化及び格納の他の領域における実施例も見出されることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
コンパクトは、便利で、機能的で、且つ安全であるとともに、視覚的に魅力的であるという点で汎用性が高く、中でも、後者は小売り環境における重要な特徴である。化粧用コンパクトは、使用の際に片手で保持されるように寸法が決められ、正方形、長方形、楕円形、円形、又は他の規則的若しくは不規則な形状であってもよい。説明目的のため、本発明を、幅及び深さが高さよりも大きい一種のコンパクトとして具体化する。この種の化粧用コンパクトは比較的扁平で平面的であり、本発明の観点で記載するのが容易である。本明細書における対象となるコンパクトは、一般に、ヒンジ又はピボット機構によって相互に向き付けることができるベース部材及びカバー部材を備える。一般性を失うことなく、本明細書全体を通して、「ヒンジ」は、コンパクトの部材間の相対回転を容易にするあらゆるタイプの接続を指すものとする。一般的には、基部及びカバーは、一つ若しくは複数のプラスチックで成型されるか、又は、例えばより高級な体裁の場合、金属で形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(二つ折りコンパクト)
本明細書全体を通して、「二つ折りコンパクト」は、共通のヒンジによって相互に回転することができる、厳密に二つの部材を有するコンパクトを指す。二つ折りコンパクトは、一般的に、トレーとして形成されたベース部材を含む。トレーは、一つ又は複数の凹部を有し、一つ又は複数の化粧品材を保持することができる。また、一般的な二つ折りは、ベース部材にヒンジ留めされ、ベース部材及び化粧品材の上に重なるカバー部材を含む。カバーは、化粧品の乾燥、汚染、又はこぼれの発生を低減する。この種のコンパクトは、パウダー、ファンデーション、アイシャドー、頬紅、マスカラ、口紅、及び他の製品を格納するのに適している。一つ若しくは複数のアプリケータ又は補助的品目も、コンパクト内でベースとカバーとの間に配置されてもよい。ベースとカバーの取付け部品が細長いピン又は軸線を有するヒンジであるとき、ベース及びカバーは、コンパクトの一辺の一部分を形成する直線の縁部に沿って取り付けられる。ヒンジを有さないコンパクトの一辺(例えば、ヒンジの反対側の辺)には、コンパクトが不用意に開くのを防ぐため、ラッチ機構が設けられる場合がある。ベースに対するカバーの可動域は一般に90°〜360°であるが、270°程度の回転には、一般に、特別なヒンジ機構が必要とされる。少なくとも180°回転する二つ折りコンパクトは平らになってもよく、これは、安定性が一つの要素である場合に利点となることがある。例えば、場合によっては、開いたコンパクトは不安定であり、カバーがある安定限界点を超えて回転すると、表面上に置かれたベースは平らにならない。この場合、コンパクトを「広げて」、それを平らにすることが便利なことがある。したがって、表面上で平らにならないコンパクトは不利になることがある。
【0004】
二つ折りコンパクトでは、ミラーは、コンパクトを開いたときにユーザが見ることができるように、カバーの内側に面する表面内に設けられる場合が多い。このようにカバー内に配置されるミラーによって、ユーザが、コンパクトを表面上に置くのとは対照的に、コンパクト及びミラーを片手で保持しながら、他方の手でアプリケータを操作するという選択肢が与えられる。これはユーザにとって非常に便利なものであるが、それは、別個の携帯型のミラーが使用された場合、ユーザが二つの手のみで操作する品目が三つになるためである。また、ミラーがベースに対して回転することができるので、手で操作するのに最適な形体を達成することができることも有利である。ミラー内蔵カバーの配置の一つの不利な点は、カバーがシースルーであったとしても、ミラーが邪魔になっているため、コンパクトの内部を見ることができないことである。また、ユーザが製品ではなくミラーを使用したいと思う場合が多い。ミラーがカバーに取り付けられていると、カバーを開き、製品を露出したままにしなければならず、製品が、乾燥、汚染、又は不用意な接触の影響を受けやすい。したがって、コンパクトのカバー部材内に取り付けられたミラーは更に不利である。
【0005】
これらのミラー内蔵カバーの不利な点を克服するため、一部の二つ折りコンパクトは、ベース部材及び/又はカバー部材に対して滑動することができる第3の部材を備える。例えば、米国特許2004-0221866は、ベース内部で滑動可能に支持される「引出し」を有する二つ折りコンパクトを開示している。引出しは、ベースの内部に向かって、且つその外部に向かって平行移動することができるが、ベースに対して回転することはできない。ミラーは、カバーの内部ではなく引出し内に配置され、これは、シースルーカバーを許容し、カバーが閉じているときであってもミラーを使用できるようにするという利点を有するが、ベースに対してミラーを回転させることができないという不利な点がある。引出し式(slide-out)部材は、コンパクトの安定性の点で利点を提供することができる。上述したように、一部のコンパクトは、安定限界点を超えてカバーを回転させるとひっくり返る。しかし、ベースから引き出される引出し又はトレーは、事実上より大型のベースとなり、コンパクトがひっくり返るのを防ぐことができる。したがって、ベースに引出し式部材を有さないコンパクトは、コンパクトの設計の点で利点を提供することができる。
【0006】
カバー内に取り付けられたミラーを依然として有しながら、シースルーに関する課題を克服するため、米国特許第6,769,438号は、カバー内部に滑動可能に取り付けられたミラーを有する二つ折りコンパクトを記載している。滑動するミラーは、販売前は一つの位置にあり(カバーにある窓を通して見ることを可能にする)、使用前に購入者によって別の位置に移動される。このコンパクトはシースルーカバーを有する(少なくとも時間の一部)が、コンパクトのカバー部材内に取り付けられたミラーは不利になり得る。上述したように、ユーザは製品ではなくミラーを使用したいと思う場合が多い。ミラーがカバー内に取り付けられている場合、カバーを開き、製品を露出させたままにしなければならない。
【0007】
(三つ折りコンパクト)
三つの枢動する部材を備えた化粧用コンパクトも知られている。三つの部材及び一つ又は複数のヒンジによって、様々な形体が可能である。
【0008】
例えば、三つ折りコンパクトの一つの部類は、二つのヒンジによって互いに枢動する三つの部材を有する。この場合、ベース部材及び二つの外側部材を規定することができる。ベース部材は、その周囲の異なる部分に沿って分離された二つのヒンジを有する。別個のヒンジはそれぞれ、中央の部材を外側部材の一つに接続する。この種のコンパクトの例は、米国特許第6,029,848号(図10)及び米国特許第6,412,640号に開示されている。この種の配置の一つの特徴は、外側部材が両方とも、それらの閉位置から離れて十分に回転されると、コンパクトが平らになってもよい(三つの部材が全て、同じ面内で同時に平らになる)ことである。上述したように、コンパクトが平らになる能力は有利な場合があり、表面上で平らになることができないコンパクトは不利なことがある。
【0009】
三つ折りコンパクトの別の形態では、任意の二つの部材が第3の部材の同じ縁部に沿って第3の部材にヒンジ留めされるので、コンパクトは本のように開閉する(例えば、米国特許第4,126,145号、米国特許第5,107,871号、US2006-0005853、及びUS2006-022164を参照)。この種の三つ折りコンパクトは、上記に規定したように平らにすることができず、したがって不利である。カバー部材はシースルーであってもよいが、これによって見えるのはカバーに直ぐ隣接した部材のみであり、それは必ずしも製品とは限らない。製品がカバーから更に離れて部材内にあるとき、介在する部材のため、シースルーカバーであっても製品は見えない。これは、第145号、第871号、及び第853号の参照文献に該当する。第164号の参照文献では、製品はカバーに隣接しているが、ミラーがカバー部材の内側に位置付けられており、それによってシースルーカバーが無効になっている。また、ここでもやはり、ユーザが製品ではなくミラーを使用したいと思う場合、カバーを開き、製品を露出したままにしなければならず、製品が、乾燥、汚染、又は不用意な接触の影響を受ける。この種のコンパクトでは、最初の二つの部材は同じ経路で回転するため、互いに全く無関係に動くことはできない。これにより、コンパクトが取り得る有用な姿勢の数が限定される。
【0010】
(包装の問題)
化粧用コンパクトは、二つ折り又は三つ折りのどちらであっても、収容された化粧品材を汚染に晒すことなく、材料を顧客が見ることができるような形で包装される場合がある。したがって、コンパクトは、カバーが開き、ベース及びカバーが平らになるようにカバーがベースに対して180°回転するようにして、透明プラスチックフィルム内に、例えばブリスターパッケージ内に封止されてもよい。しかし、この種の包装に関する問題は、包装の体積が、通常、それ以外の方法で包装した場合の約2倍の大きさである点である。これにより、包装の費用が増加し、廃棄物が増加し、且つ棚スペースが費やされる。また、ブリスターパックは、製品の視覚的表示を著しく損ねる場合がある。
【0011】
この問題を軽減する一つの方法は、コンパクトを閉じた形体で包装し、窓を設けるか、又はカバーを透明にするかどちらかによって、閉じたカバーを通して化粧品材を見る手段を設けることである。これを行う方法並びにそれらの利点及び不利な点は上述している。
【0012】
ブリスター包装のサイズを低減する別の方法は、カバーがベースの下にくる位置まで360°回転できるようにする、特別な関節式ヒンジをコンパクトに提供するものである(例えば、米国特許第5,568,820号を参照)。しかし、そのようなヒンジは、従来のヒンジよりも構造的に複雑で、且つ実現するのが高価な傾向がある。360°のヒンジはまた、より従来型のヒンジが使用されたときのように、開位置にあるカバーが止め具に支えられないため、使用の際の安定性が低いことがある。
【0013】
完全に取外し可能なトレー(例えば、米国特許第5,605,167号及び同第6,002,651号)、気密封止(例えば、米国特許第5,842486号及び同第6,199,559号)、透明カバー、又は窓若しくはレンズを備えたカバー(例えば、米国特許第6,227,208号、同第6,769,438号、及びUS2004/0221866)、回転し過ぎた場合の破損を防ぐスナップ式カバー(例えば、米国特許第5,638,838号)、並びに内部照明(例えば、米国特許第4,126,145号)を備えたコンパクトを作成することも知られている。本発明によるコンパクトは、これらの特徴のいずれかを備えていてもよい。
【0014】
上記に列挙した参照文献のうち、どの参照文献又はそれらの任意の組合せも、次の全てを特色とする単一の化粧用コンパクトを開示していない。ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバー、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができるミラー、完全にシースルーのカバー又はその任意の部分、シースルーカバーによってそのサイズが影響されず、且つカバーの位置にその位置が依存しないミラー、不要なときにミラー又はカバーが邪魔にならないようにすることができる、即ちカバーを閉じ、製品が露出しない状態でミラーを使用することができるコンパクト、使用の際に便利に手で保持するか、又は表面上に置くことができるコンパクト、安定した有用なA字形フレーム形体(以下を参照)を達成することができる、又は平らにすることができるコンパクト、安定性を付加してひっくり返る可能性を低減するように、ベースを延長することができるコンパクト、格納された補助的品目が目に見える、又は隠されたコンパクト、上述の不利な点を有さない、ブリスタータイプの包装に入れて販売することができるコンパクトである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバーと、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができる物品キャリアと、を備える、安定性が向上した多目的で使用に便利な一体型化粧用コンパクトである。カバー及び物品キャリアは相互に独立に動く。本発明によるコンパクトは、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されてもよく、又は、コンパクトは、ベースを延長し、安定したA字形の姿勢(形態)を含む、様々な有用な姿勢(形態)で表面上に置かれてもよい。
【0016】
選択的回転機構は次の特徴を有する。すなわち、ベースに対して、物品キャリアは平行移動できる場合があり、また回転移動できる場合があるが、キャリアは一度に一つのタイプの動きのみを行うことができる。更に、キャリアが実行してもよい移動のタイプ(平行移動又は回転)が、キャリア及びベースの相対的な向きによって決定されるという点で、ユーザは選択肢を有さない。この規則には一つの例外がある。ユーザが、その向きからの平行移動又は回転のどちらか(ただし、両方同時にではない)を実行する選択肢を有する、ベースに対するキャリアの一つのみの向きが存在する。物品キャリアがベースに対して共面の向きから離れる方向に回転すると、キャリアは平行移動できなくなる。ベースに対してキャリアを別の方向に複合的に動かすことはできない。ここで、「複合的な動き」とは、同時に生じる二つ以上のタイプの動き、即ち平行移動と回転を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による化粧用コンパクトの分解斜視図である。
【図2A】本発明による化粧用コンパクトのベース部材の斜視図であり、ベースが複数のパウダー皿を保持している図である。
【図2B】本発明による化粧用コンパクトのベース部材の斜視図である。
【図3】本発明による化粧用コンパクトの物品キャリアの斜視図である。
【図4】本発明による化粧用コンパクトのベースカバーの斜視図である。
【図5A】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図5B】物品キャリアのピボットがそれぞれ一つの直線状縁部を有する、物品キャリアの一部を取り除いて溝及びピボットの境界面を露出させた、部分的に平行移動させた位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図5C】物品キャリアのピボットがそれぞれ一つの直線状縁部を有する、物品キャリアの一部を取り除いて溝及びピボットの境界面を露出させた、完全に平行移動させ部分的に回転させた位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図6A】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの上面斜視図である。
【図6B】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの底面斜視図である。
【図7A】物品キャリアが開位置にあり、ベースカバーが閉位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【図7B】物品キャリアが閉位置にあり、ベースカバーが開位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【図7C】物品キャリア及びベースカバーが開位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書全体を通して、用語「comprise」、「comprises」、「comprising」などは、一貫して、対象の集合体が具体的に列挙される対象に限定されないことを意味するものとする。
【0019】
「一体型コンパクト」などは、請求される発明の構成要素が使用の際常に接続されていることを意味する。構成要素間の接続は、構成要素の相互の自由度を制限する。したがって、例えば、使用の際に分離されるコンパクト及びミラーは一体型コンパクトを形成しない。
【0020】
「平行移動」及び関連する文法的形式は、要素の回転とは異なる要素の線形的運動を指す。「回転」及び関連する文法的形式は、要素の平行移動とは異なる、物理的ピボットを中心にした要素の運動を指す。
【0021】
単なる例示を目的として、図面は、高さが幅及び奥行きよりも著しく小さい、薄型、又は扁平で平面的な一体型の化粧用コンパクトを示す。そのようなコンパクトは、固形パウダーを金属又はプラスチックの皿に収容するのに使用される場合が多く、また、アプリケータ又はミラーなどの補助的品目を格納してもよい。ただし、本明細書に開示される原理は、高さが幅若しくは奥行きと同程度の、又はそれらよりも大きいものを含む、他のタイプの小型容器に適用可能である。
【0022】
本発明の便利な特徴は、物品キャリア(30)及びカバー(40)が相互に独立に動いて、三つ折りの効果を作り出す点である。したがって、物品キャリアが任意の位置にある状態でカバーが開かれてもよく、またその逆も同様である。参照を容易にするため、多数の形体を規定する。
【0023】
1.(平らな姿勢)
開かれたカバー(40)、ベース(10)、及び完全に延長された物品キャリア(30)が同じ面内に置かれ、その結果コンパクトが平らに置かれる。図7Cの実施形態では、カバーは平らに置かれているが、カバーがベースの底面で回転しているため、ベースは一端側でわずかに持ち上げられていることに留意されたい。ベースはわずかに持ち上がっているものの、依然として、カバー及びベースは平らに置かれており、同じ面内にあるものとする。ベースのあらゆるわずかな持ち上がりを排除する、カバーの異なる実施形態を想像することは容易である。また、コンパクトの二つの部分のみが同じ面内にある場合は常に、開かれたカバー及びベースが平らに置かれているか、又は完全に延長された物品キャリア及びベースが平らに置かれているものとすることができる。
【0024】
2.(90°の姿勢)
90°の姿勢とは、物品キャリア(30)がベース(10)に対して上向きに回転し、ベースに対して直角である場合である。
【0025】
3.(270°の姿勢)
270°の姿勢とは、物品キャリア(30)がベース(10)に対して下向きに回転し、ベースに対して直角である場合である。
【0026】
4.(延長されたベース)
カバー(40)及びベース(10)が平らに置かれる一方、物品キャリア(30)が90°の姿勢に向かって上向きに回転される。この位置では、カバーは有効にベースを延長し、また、コンパクトが物品キャリアの重量を受けてひっくり返るのを防いでもよい。
【0027】
5.(安定したA字形フレームの姿勢)
「A字形フレームの姿勢」とは、ベース(10)及び物品キャリア(30)が少なくとも約270°の角度で相互に位置付けられる場合である。「安定したA字形フレームの姿勢」とは、A字形フレームの頂点がA字形フレームの辺(又は脚部)よりも上位にある状態で、倒れずに表面上で直立することができる場合である。例えば、A字形フレームがそれ自体の重量を受けて、又は外力の結果として潰れるのを防ぐため、ベース及びキャリアは適所で係止されてもよい。安定したA字形フレームの姿勢はスタンドとして有用である。係止機構を有さないか、又は別の形で不安定なコンパクトは、有用な期間の間A字形フレームの姿勢を保持しないことがある。本発明のコンパクトは、有用な期間の間A字形フレームの姿勢を保持することができる。例えばUS2006-0005853のように、扁平又は平面状ではないコンパクトは、安定したA字形フレームの姿勢にあまり適さない。
【0028】
(ベース)
図1、2A、及び2Bを参照すると、ベース(10)は、一般に、コンパクトの最大の又は主要な構成要素である。本質的に長方形の形で示されているが、本発明の原理は、長方形とは大きく異なるベースとして表されてもよい。図2A及び2Bの実施形態では、ベースは、底壁(11)、前壁及び後壁(12、12')、並びに二つの側壁(13、13')を有する。前壁及び/又は後壁と関連する水平寸法をコンパクトの幅と称することが便利である。同様に、側壁と関連する水平寸法がコンパクトの奥行きと称される。ベースの頂部(14)は、一つ若しくは複数の化粧用又は皮膚疾患用物品及び/或いは製剤を受け入れるために開かれている。ベースの内部は区画に分割されてもよい。図1では、パウダー皿(50)を受け入れる区画及びアプリケータ(60)を保持する区画がある。区画の数は、コンパクトのコンパクト全体寸法に収容される物品のサイズによって制限される。
【0029】
ベースは、ベースの一つ又は複数の壁に沿って延びる一つ又は複数の溝(15)を備える。以下の記載では、一つの溝がベースの各側壁(13、13')に沿って走っているものとして描写される。溝は、ベースの側壁を完全に通っていてもいなくてもよい。ベースは、通常、何らかの従来の手段によって一つ又は複数のプラスチックから作られる。
【0030】
図1から、コンパクトの相対寸法は本発明の実施例を著しく限定しないことが明白であろう。化粧用コンパクトでは、幅及び/又は奥行きは、一般に、少なくとも30mm程度から150mmまで変わり、それ以上であってもよい。コンパクトの高さは、一般に、約15mm程度から変わり、又は更に低くてもよい。ベース(10)の側壁(13、13')は溝(15)に適応するのに十分な高さでなければならないので、これらの壁の高さに対して実際的な下限がある。研究では、側壁の高さが3/4センチメートル程度しかない本発明によるコンパクトが、過度の困難なしに製作されている。ベースの側壁は3/4センチメートルよりも低くてもよいが、ある時点で、デバイスが小さ過ぎてユーザが便利に扱うことができなくなることは明白である。したがって、実際問題として、約1/2センチメートルが、ベースの側壁の高さの下限、又は溝を具体化する特徴の高さの下限である。更に、1/4センチメートルが溝の高さのおおよその下限である。
【0031】
(物品キャリア)
図3では、物品キャリア(30)は、コンパクトに収容されている物品のレセプタクルである。物品キャリアは、化粧用物品を受け入れ保定することができるレセプタクルの役割をしてもよく、例えば、ミラーが物品キャリアの底部に接着されてもよい。物品キャリアは、化粧用物品をしっかり保持することができるあらゆる適切な構造であってもよい。「しっかり保持する」とは、通常の使用の間物品が物品キャリア内で保定され、物品キャリアが、コンパクトデバイスの当業者には知られている手段を用いることによって、物品を固定するように適合されていることを意味する。更に、物品キャリアは、化粧用物品を格納することができるレセプタクルの役割をしてもよく、その物品はユーザによってキャリアから取り外すことができる。例えば、アプリケータが物品キャリアに収容されてもよい。キャリアは、通常、あらゆる従来の手段によって、一つ又は複数のプラスチックから作られてもよい。図3の実施形態では、キャリアは、箱と同じように、底面(31)、前壁(32)、及び側壁(33、33')を有する。物品キャリアの後壁(32')は、ベース(10)の一部分を受け入れるように開かれている。
【0032】
図5Bでは、物品キャリア(30)の一方の側壁(33)の一部分は、その下にある接続を示すために取り除かれている。ベース(10)は、物品キャリアに嵌合して、キャリアの後壁(32')を通して受け入れられている。物品キャリアは、場合によっては、ベースに対して水平に滑動(平行移動)することができる。平行移動するとき、物品キャリアの側壁(33、33')はベースの側壁(13、13')の上を滑動し、物品キャリアの底面(31)の内表面はベースの底面(11)の外表面の上を滑動する。好ましくは、物品キャリアの内部は、それが上を滑動するベースの部分の外部を補完するように形作られる。この締り嵌めによって、ベースに対する物品キャリアの望ましくない動きが制限される。
【0033】
物品キャリア(30)は、キャリアの前面(32)がベース(10)の前面(12)に最も近い完全後退位置(図5A)と、キャリアの前面がベースの前面から最も遠い完全延長位置との間で滑動する。物品キャリアが延長位置まで平行移動すると、その前はベースの下に隠れていた、物品キャリア内の一つ又は複数の化粧用物品が露出する。
【0034】
物品キャリア(30)が図5A又は5Bに示されるような位置にあるとき、キャリアが、ベース(10)に対して「水平」である且つ/又は回転していないと称する。対照的に、図5Cは、ベースに対して回転している、即ち水平ではない物品キャリアを示す。
【0035】
キャリア(30)の各側壁(33、33')は、ベース(10)に対して滑動及び旋回する取付け部品を備える。取付け部品は、ベースの側壁(13、13')に設けられた溝(15)によって達成される。取付け部品は、例えば、物品キャリアの側壁の内表面から溝内へと延びるピボット要素(34、34')であってもよく、ピボット要素は通常、コンパクトの通常の使用の間溝内に残る。接続は、場合によっては、ベースに対してキャリアが平行移動できるようなものであり、また場合によっては、ベースに対してキャリアが回転できるようなものであるが、両方の動きを同時に生じさせることはできない。実際には、ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるときにのみ、物品キャリアは回転することができる。ピボットがそれらの完全に水平な限界未満にある場合、キャリアは回転することができない。これを達成するための特定の実施例が以下に記載される。実施例は、溝の幾何学形状、及び溝内で移動する取付け部品(即ち、ピボット)の幾何学形状に関する。しかし、本発明に含まれる一般的原理は任意の選択的回転機構であり、ここで、「選択的回転機構」とは、次の三つの要件を満たす装置として規定される。
【0036】
1. ピボット(34、34')がそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、選択的回転機構は物品キャリア(30)の回転を防ぐ。
【0037】
2. ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるとき、選択的回転機構はキャリアの回転を可能にする。
【0038】
3. キャリアが水平なとき(即ち、ベースに対して回転していない)に限り、選択的回転機構はキャリアの平行移動を許容する。
【0039】
より簡潔に述べると、選択的回転機構は、ベースに対してキャリアが完全に延長されているときは、キャリア(30)の回転のみを可能にし、ベースに対してキャリアが回転していないときは、キャリアの平行移動のみを許容する。総合すると、これらの要件は、キャリアが平行移動及び回転を同時に行うことができないことも意味する。即ち、キャリアは複合的運動を行うことができず、つまりキャリアの運動は連動しない。したがって、物品キャリア(30)の回転及び平行移動の両方がそこから生じてもよい、ベース及び物品キャリアの姿勢(形態)は一つのみである。「一つのみの姿勢」によって、構成要素の嵌合における何らかの遊びによって発生する、姿勢のわずかな変動を除外するものとする。プラスチック構成要素の製造分野における慣例的な許容差を維持することによって、本発明の趣旨に従うことが確保される。より厳しい許容差はわずかな改善しか付加しないことがある。これらの要件を満たす選択的回転機構は、出願人による同時係属中の出願US11/537,210に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込むものである。
【0040】
(ベースカバー)
本発明によるベースカバー(40)が図4に示される。カバーは、好ましくは、物品キャリアの動き又は使用を妨害しないベースの後壁(12')付近で、ベースに枢動的に取り付けられる。閉位置では、カバーはベースの上に、又はおそらくはベースの頂部のすぐ内側にある。この位置では、カバーはベースの内容物を保護する。カバーは一般に平らであってもよく、好ましくは、カバーの少なくとも一部分はシースルー、最も好ましくは透明である。これらの特徴のどちらも厳密な要件ではないが、シースルーカバーは、消費者がコンパクトを開かずにコンパクトの内容物を見ることができるという点で大きな利点である。例えば、化粧品の消費者は、コンパクト内に含まれる一つ又は複数の化粧用製剤の色を見ることができる。カバーがシースルーではない場合、消費者に化粧品の色を見せるための他の何らかの手段を提供しなければならなくなる。多くの場合、化粧品の消費者が購入しようとしている物を見ることができるようにするため、「展示見本」を提供しなければならなくなる。各色又はバリエーションの一つのサンプルを提供しなければならないことを考慮すると、本発明の透明カバーは、ユニットの節約、及びサンプルを展示するのに必要な売台スペースの節約を意味する。消費者がベース内の重要な特徴を見ることができる限り、カバー全体がシースルーであってもなくてもよい。例えば、カバーの一部分は装飾的又は情報的特徴を表示してもよい。カバーは、通常、任意の従来の手段によって一つ又は複数のプラスチックから作られる。
【0041】
好ましくは、ベース(10)に対するカバー(40)の旋回取付け部品によって、ベースに対してカバーが少なくとも90°、より好ましくは少なくとも180°回転できるようになるので、カバーは、ベースと同じ面内で平らになることができる(図7Cを参照)。取付け部品は、カバーのどちらかの側面に従属してベースの補完的スロットに受け入れられる一つ又は複数のピボット(44、44')であってもよい。ピボット及びスロットの構造は、スナップ嵌め係合、又はピボットがスロットから脱するのを妨げるあらゆる手段を特色としてもよい。多くの等価な手段が当業者には明白であろう。物品キャリア(30)とは異なり、カバーは、一般に、ベースに対して平行移動することができない。カバーは、単に回転してベースから離れて、ベースの内部に対するアクセスを提供する。
【0042】
上述したように、カバー及び物品キャリア(30)は、ベースの向かい合った端部付近に位置するピボットを中心にして回転する。好ましくは、カバー及び物品キャリアの回転軸は、それぞれが他方とは独立に動くことができるように十分に離される。また、「相互に独立に」とは、カバー及び物品キャリアの経路が交差しない、又は別の形で互いに影響しないことを意味する。カバーは、物品キャリアが任意の位置にある状態で閉じられてもよく、またその逆も同様である。カバー及び物品キャリアは常に、同時に又は一度に一つずつ動くことができる。これは、一つの旋回部材の位置が別の旋回部材の動きと干渉することがある、多くの従来技術の三つ折りコンパクト、特にブックタイプの場合には該当しない。
【0043】
(選択的回転機構)
一実施形態(図5B、5Cを参照)では、ベース(10)は少なくとも一つの溝を備える。好ましくは、ベースは、ベースの各側壁(13、13')に一つずつ、二つの溝(15、15')を備える。各溝には二つの区画がある。一方の区画は、ベースの側壁に沿って水平に走る、比較的長い直線溝(16)である。ベースの前面(12)に近付くと、直線溝は円形溝(17)に通じる。円形溝は、直線溝の高さよりも大きい直径を有する。溝全体は、溝を境界付ける溝壁によって規定される。直線溝は、溝壁の直線状の平行な区画(18)によって両側で境界付けられる。円形溝は、溝壁の円形区画(19)によって境界付けられる。直線溝(16)の中心線は円形溝(19)の中心からずれている。実際には、直線溝の一方の壁は、円形溝に対する接線であるものとして図5B及び5Cに示される。したがって、直線溝の中心線は円形溝の中心を通らない。物品キャリアのピボット(34、34')は、各ピボットの中心の経路が円形溝の中心からずれるようにして、溝(15、15')に沿って移動する。
【0044】
各ピボット(34、34')には一つ又は複数の直線状縁部が関連付けられる。したがって、例えば、各ピボットは、一部を切った円筒形であってもよい(図5B及び5Cに示されるように)。物品キャリアが平行移動する間、直線状縁部(35)はそれぞれ直線溝(16)内を移動し、その場合、溝壁(18)と密接に接触している。ピボット要素が直線溝内にあるとき、直線状縁部は直線溝の壁に平行である。また、直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、直線状縁部が溝壁に当接することによって、物品キャリア(30)が大きく下向きに回転することがない。当然ながら、図5Bから明らかなように、キャリアの底面(31)がベースの底面(11)に当接していることによって、物品キャリアが上向きに回転することも不可能である。したがって、直線状縁部が円形溝(17)の外にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することはできるが、回転はできない。しかし、物品キャリアの下向きの回転は、直線状縁部が直線溝(16)の壁(18)に当接することによってのみ防止される。
【0045】
更に、直線状縁部(35)は円形溝(17)の直径よりも短い。したがって、直線状縁部が円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、物品キャリアが水平から離れて回転すると、同じ直線状縁部が直線溝(16)に再び入ることはできない。これによって物品キャリアが平行移動するのが防止される。
【0046】
したがって、ピボット(34)がそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、直線状縁部(35)によって物品キャリア(30)の平行移動が可能になるが、物品キャリアの回転は防止される。更に、ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるとき、直線状縁部によって物品キャリアの回転が可能になるが、物品キャリアが水平のときを除いて平行移動は防止される。物品キャリアが水平のときのみ、ユーザは、物品キャリアをどのように動かすか(平行移動又は回転)の選択肢を有する。ただし、一度に一つの運動のみが可能である。特徴のこの組合せは、安定性及び便利さを付与するとともに、実現するのが簡単であり、且つ従来技術のいずれとも異なる。
【0047】
選択的回転機構の代替実施形態が、出願人の同時係属中の出願US11/537,210に記載されている。例えば、物品キャリアピボットの代替の実施例は、物品キャリアの内表面から隆起する一つ又は複数のリッジである。この実施形態では、ピボットは実際には丸みを帯びた部分を有さない。直線状リッジはそれぞれ直線溝(16)内を移動し、そこでは溝壁(18)と密接に接触している。直線状リッジは、溝壁と平行であり、直線溝の高さよりも長い。この長さは十分なので、溝壁に対する直線状リッジの当接によって、物品キャリア(30)の大幅な下向きの回転が防止される。したがって、直線状リッジが円形溝(17)の外にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することができるが、回転はできない。
【0048】
更に、直線状リッジの長さは円形溝(17)の直径よりも短いので、直線状リッジが円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、物品キャリアが水平から離れて回転すると、同じ直線状リッジが直線溝(16)に再び入ることはできない。これによって物品キャリアが平行移動するのが防止される。
【0049】
したがって、直線状リッジがそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、直線状リッジによって物品キャリア(30)の平行移動が可能になるが、物品キャリアの回転は防止される。更に、直線状リッジがそれらの完全に水平な限界にあるとき、直線状リッジによって物品キャリアの回転が可能になるが、物品キャリアが水平のときを除いて平行移動は防止される。物品キャリアが水平のときのみ、ユーザは、物品キャリアをどのように動かすか(平行移動又は回転)の選択肢を有する。ただし、一度に一つの運動のみが可能である。特徴のこの組合せは、安定性及び便利さを付与するとともに、実現するのが簡単であり、且つ従来技術のいずれとも異なる。
【0050】
どちらかの実施形態が有効であるが、ピボット(34)の一部を切った円筒形の実施形態が直線状リッジよりも好ましいことがあり、それは、図3に示されるような円筒形が薄いリッジよりも強く、摩耗及び引裂きに対する抵抗性に優れていることがあるためである。いずれの場合も、直線状縁部が円形溝(17)の下にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することができるが、回転はできない。
【0051】
選択的回転機構の実施形態に関わらず、直線状縁部が円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。具体的には、物品キャリアは上下どちらかに回転してもよい。上向き又は下向きの回転に関して、どちらの方向にも約90°を超える円弧を規定する必要はないが、これは任意である。物品キャリアが十分に延長されているが、回転はしていないとき、キャリア及びベースは互いに対して180°の位置にあるか若しくは回転しており、又は平らになっていることを示す。キャリアが上向きに回転すると、キャリア及びベースは90°の姿勢に向かって動いていることを示し、キャリアが下向きに回転すると、キャリア及びベースは270°の姿勢に向かって動いていることを示す。好ましくは、キャリア及びベースが相互に回転すると、コンパクトは、コンパクトの重量を受けて動くことなく、回転した姿勢を維持することができる。例えば、回転した見当合わせを保持するため、スナップ嵌め若しくは摩擦嵌めによる係合、又は他の係止機構が設けられてもよい。
【0052】
物品キャリアが上向きに回転すると、物品キャリアの底面の内表面はコンパクトの内部に面する。カバーが閉じている場合、この姿勢は手持ちの操作に便利であり、二つ折りコンパクトには慣例的である。
【0053】
物品キャリアが下向きに回転し、係止されると、物品キャリアの底面の内表面はコンパクトの外側に面し、コンパクトはA字形フレームの姿勢をとる。A字形フレームの姿勢は、コンパクトを表面上に置くのに便利である。キャリアの内表面上にミラーが設けられている場合、ユーザは、ミラーで自身を見ながら、両手を使用して化粧をするか、又は別の方法で他の何らかの行動をすることができる。任意に、一時的に係止することができるキャリア及びベースのいくつかの向きがあってもよい。そのような一時的係止をもたらす手段は、当業者には容易に明白になるであろう。A字形フレームの姿勢では、カバーは開かれても閉じられてもよいが、開かれたカバーは、コンパクトに安定性を付加するとともに、ベース内の化粧用品目へのアクセスを提供することができる。
【0054】
ベース(10)は、化粧用製剤又はアプリケータなどの一つ若しくは複数の化粧用品目を収容する。本発明の扁平で平面状のコンパクトは、一般的には金属又はプラスチックの皿に予め充填された、固形パウダーを保持するのに良く適している。したがって、一つ又は複数の金属皿(50)が、ベース内の空間のいくつか又は全てを埋めてもよい。各皿は、一つのタイプの化粧品の異なる色彩のものを含んでもよく、又は異なるタイプの化粧品を含んでもよい。皿がベースから外れるのを妨げる手段が設けられてもよい。例えば、皿は、ベース内に接着されるか、又は磁石若しくは機械的手段で固定されてもよい。コンパクトの内部空間の一部分は、製品を適用するための一つ又は複数のアプリケータ(60)も収容してもよい。一般的なアプリケータとしては、ブラシ、櫛、スポンジ、ペンシルなどが挙げられる。シースルーカバー(40)が設けられている場合、ベース内の品目は常に見えていてもよい。シースルーカバーとしては、完全又は部分的に透明なカバー、完全又は部分的に半透明のカバー、窓を有するほぼ不透明のカバーなどが挙げられる。
【0055】
物品キャリア(30)は様々なタイプの品目を収容してもよいが、これらは、物品キャリアが閉位置にあるときはほぼ見えないように隠れる。好ましくは、物品キャリアはミラー(70)を収容する。ミラーは、様々な手段によって、例えば接着によって物品キャリア内で固定されてもよく、又はミラーは物品キャリアから取外し可能であってもよい。できるだけ大きなミラーを提供することが好ましいとき、物品キャリアの底面の内表面全体がミラーで覆われるべきである。この場合、ミラーの寸法は、コンパクトの寸法から物品キャリアの壁の厚さを差し引いたものに非常に近い。
【0056】
任意に、ピボット(34)の端部は、それらが溝(15)から後退するのを防ぐ隆起した特徴を備えてもよい。
【0057】
任意に、カバーを、閉位置、開位置、又は中間位置で保持するため、ベース(10)及びカバー(40)それぞれの上に配置されたスナップ金具が設けられてもよい。
【0058】
そのような多くの拡張例は、ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバーと、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができる物品キャリアと、を備える、安定性が向上した使用に便利な一体型化粧用コンパクトである本発明の趣旨を拡張することなく、当業者には明白であろう。コンパクトは、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されてもよく、又は、コンパクトは、ベースが延長された安定なA字形フレームの姿勢(形態)など、様々な有用な姿勢で表面上に置かれてもよい。
【0059】
驚くことに、三つ折りの効果と選択的回転機構を備えた物品キャリアとの組合せによって、多目的で、安定で、シンプルで、安価に製造できるとともに、上品で遊び心のある雰囲気を有するコンパクトが作り出される。ベースに対して連動しない物品キャリアの動きと、カバー及び物品キャリアが独立に動くという構成と、の組合せによって、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されるか、又は従来技術のあらゆる化粧用コンパクトとは異なり、ベースが延長された安定なA字形フレームの姿勢など、有用で様々な姿勢で表面上に置かれてもよい、多目的で使用に便利なコンパクトが作り出されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な物品をパッケージ化する、又は便利に格納するための容器に関する。具体的には、本明細書に記載される実施例は、選択的な回転機構を特徴とする三つ折りコンパクトである。説明目的のため、記載される容器は、化粧用又は皮膚疾患用の製品、並びにミラー、ブラシ、及び他のアプリケータなどの補助的品目など、パーソナルケア物品用のコンパクトとして実現される。ただし、本発明の原理は化粧用コンパクトに限定されるものではなく、パッケージ化及び格納の他の領域における実施例も見出されることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
コンパクトは、便利で、機能的で、且つ安全であるとともに、視覚的に魅力的であるという点で汎用性が高く、中でも、後者は小売り環境における重要な特徴である。化粧用コンパクトは、使用の際に片手で保持されるように寸法が決められ、正方形、長方形、楕円形、円形、又は他の規則的若しくは不規則な形状であってもよい。説明目的のため、本発明を、幅及び深さが高さよりも大きい一種のコンパクトとして具体化する。この種の化粧用コンパクトは比較的扁平で平面的であり、本発明の観点で記載するのが容易である。本明細書における対象となるコンパクトは、一般に、ヒンジ又はピボット機構によって相互に向き付けることができるベース部材及びカバー部材を備える。一般性を失うことなく、本明細書全体を通して、「ヒンジ」は、コンパクトの部材間の相対回転を容易にするあらゆるタイプの接続を指すものとする。一般的には、基部及びカバーは、一つ若しくは複数のプラスチックで成型されるか、又は、例えばより高級な体裁の場合、金属で形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(二つ折りコンパクト)
本明細書全体を通して、「二つ折りコンパクト」は、共通のヒンジによって相互に回転することができる、厳密に二つの部材を有するコンパクトを指す。二つ折りコンパクトは、一般的に、トレーとして形成されたベース部材を含む。トレーは、一つ又は複数の凹部を有し、一つ又は複数の化粧品材を保持することができる。また、一般的な二つ折りは、ベース部材にヒンジ留めされ、ベース部材及び化粧品材の上に重なるカバー部材を含む。カバーは、化粧品の乾燥、汚染、又はこぼれの発生を低減する。この種のコンパクトは、パウダー、ファンデーション、アイシャドー、頬紅、マスカラ、口紅、及び他の製品を格納するのに適している。一つ若しくは複数のアプリケータ又は補助的品目も、コンパクト内でベースとカバーとの間に配置されてもよい。ベースとカバーの取付け部品が細長いピン又は軸線を有するヒンジであるとき、ベース及びカバーは、コンパクトの一辺の一部分を形成する直線の縁部に沿って取り付けられる。ヒンジを有さないコンパクトの一辺(例えば、ヒンジの反対側の辺)には、コンパクトが不用意に開くのを防ぐため、ラッチ機構が設けられる場合がある。ベースに対するカバーの可動域は一般に90°〜360°であるが、270°程度の回転には、一般に、特別なヒンジ機構が必要とされる。少なくとも180°回転する二つ折りコンパクトは平らになってもよく、これは、安定性が一つの要素である場合に利点となることがある。例えば、場合によっては、開いたコンパクトは不安定であり、カバーがある安定限界点を超えて回転すると、表面上に置かれたベースは平らにならない。この場合、コンパクトを「広げて」、それを平らにすることが便利なことがある。したがって、表面上で平らにならないコンパクトは不利になることがある。
【0004】
二つ折りコンパクトでは、ミラーは、コンパクトを開いたときにユーザが見ることができるように、カバーの内側に面する表面内に設けられる場合が多い。このようにカバー内に配置されるミラーによって、ユーザが、コンパクトを表面上に置くのとは対照的に、コンパクト及びミラーを片手で保持しながら、他方の手でアプリケータを操作するという選択肢が与えられる。これはユーザにとって非常に便利なものであるが、それは、別個の携帯型のミラーが使用された場合、ユーザが二つの手のみで操作する品目が三つになるためである。また、ミラーがベースに対して回転することができるので、手で操作するのに最適な形体を達成することができることも有利である。ミラー内蔵カバーの配置の一つの不利な点は、カバーがシースルーであったとしても、ミラーが邪魔になっているため、コンパクトの内部を見ることができないことである。また、ユーザが製品ではなくミラーを使用したいと思う場合が多い。ミラーがカバーに取り付けられていると、カバーを開き、製品を露出したままにしなければならず、製品が、乾燥、汚染、又は不用意な接触の影響を受けやすい。したがって、コンパクトのカバー部材内に取り付けられたミラーは更に不利である。
【0005】
これらのミラー内蔵カバーの不利な点を克服するため、一部の二つ折りコンパクトは、ベース部材及び/又はカバー部材に対して滑動することができる第3の部材を備える。例えば、米国特許2004-0221866は、ベース内部で滑動可能に支持される「引出し」を有する二つ折りコンパクトを開示している。引出しは、ベースの内部に向かって、且つその外部に向かって平行移動することができるが、ベースに対して回転することはできない。ミラーは、カバーの内部ではなく引出し内に配置され、これは、シースルーカバーを許容し、カバーが閉じているときであってもミラーを使用できるようにするという利点を有するが、ベースに対してミラーを回転させることができないという不利な点がある。引出し式(slide-out)部材は、コンパクトの安定性の点で利点を提供することができる。上述したように、一部のコンパクトは、安定限界点を超えてカバーを回転させるとひっくり返る。しかし、ベースから引き出される引出し又はトレーは、事実上より大型のベースとなり、コンパクトがひっくり返るのを防ぐことができる。したがって、ベースに引出し式部材を有さないコンパクトは、コンパクトの設計の点で利点を提供することができる。
【0006】
カバー内に取り付けられたミラーを依然として有しながら、シースルーに関する課題を克服するため、米国特許第6,769,438号は、カバー内部に滑動可能に取り付けられたミラーを有する二つ折りコンパクトを記載している。滑動するミラーは、販売前は一つの位置にあり(カバーにある窓を通して見ることを可能にする)、使用前に購入者によって別の位置に移動される。このコンパクトはシースルーカバーを有する(少なくとも時間の一部)が、コンパクトのカバー部材内に取り付けられたミラーは不利になり得る。上述したように、ユーザは製品ではなくミラーを使用したいと思う場合が多い。ミラーがカバー内に取り付けられている場合、カバーを開き、製品を露出させたままにしなければならない。
【0007】
(三つ折りコンパクト)
三つの枢動する部材を備えた化粧用コンパクトも知られている。三つの部材及び一つ又は複数のヒンジによって、様々な形体が可能である。
【0008】
例えば、三つ折りコンパクトの一つの部類は、二つのヒンジによって互いに枢動する三つの部材を有する。この場合、ベース部材及び二つの外側部材を規定することができる。ベース部材は、その周囲の異なる部分に沿って分離された二つのヒンジを有する。別個のヒンジはそれぞれ、中央の部材を外側部材の一つに接続する。この種のコンパクトの例は、米国特許第6,029,848号(図10)及び米国特許第6,412,640号に開示されている。この種の配置の一つの特徴は、外側部材が両方とも、それらの閉位置から離れて十分に回転されると、コンパクトが平らになってもよい(三つの部材が全て、同じ面内で同時に平らになる)ことである。上述したように、コンパクトが平らになる能力は有利な場合があり、表面上で平らになることができないコンパクトは不利なことがある。
【0009】
三つ折りコンパクトの別の形態では、任意の二つの部材が第3の部材の同じ縁部に沿って第3の部材にヒンジ留めされるので、コンパクトは本のように開閉する(例えば、米国特許第4,126,145号、米国特許第5,107,871号、US2006-0005853、及びUS2006-022164を参照)。この種の三つ折りコンパクトは、上記に規定したように平らにすることができず、したがって不利である。カバー部材はシースルーであってもよいが、これによって見えるのはカバーに直ぐ隣接した部材のみであり、それは必ずしも製品とは限らない。製品がカバーから更に離れて部材内にあるとき、介在する部材のため、シースルーカバーであっても製品は見えない。これは、第145号、第871号、及び第853号の参照文献に該当する。第164号の参照文献では、製品はカバーに隣接しているが、ミラーがカバー部材の内側に位置付けられており、それによってシースルーカバーが無効になっている。また、ここでもやはり、ユーザが製品ではなくミラーを使用したいと思う場合、カバーを開き、製品を露出したままにしなければならず、製品が、乾燥、汚染、又は不用意な接触の影響を受ける。この種のコンパクトでは、最初の二つの部材は同じ経路で回転するため、互いに全く無関係に動くことはできない。これにより、コンパクトが取り得る有用な姿勢の数が限定される。
【0010】
(包装の問題)
化粧用コンパクトは、二つ折り又は三つ折りのどちらであっても、収容された化粧品材を汚染に晒すことなく、材料を顧客が見ることができるような形で包装される場合がある。したがって、コンパクトは、カバーが開き、ベース及びカバーが平らになるようにカバーがベースに対して180°回転するようにして、透明プラスチックフィルム内に、例えばブリスターパッケージ内に封止されてもよい。しかし、この種の包装に関する問題は、包装の体積が、通常、それ以外の方法で包装した場合の約2倍の大きさである点である。これにより、包装の費用が増加し、廃棄物が増加し、且つ棚スペースが費やされる。また、ブリスターパックは、製品の視覚的表示を著しく損ねる場合がある。
【0011】
この問題を軽減する一つの方法は、コンパクトを閉じた形体で包装し、窓を設けるか、又はカバーを透明にするかどちらかによって、閉じたカバーを通して化粧品材を見る手段を設けることである。これを行う方法並びにそれらの利点及び不利な点は上述している。
【0012】
ブリスター包装のサイズを低減する別の方法は、カバーがベースの下にくる位置まで360°回転できるようにする、特別な関節式ヒンジをコンパクトに提供するものである(例えば、米国特許第5,568,820号を参照)。しかし、そのようなヒンジは、従来のヒンジよりも構造的に複雑で、且つ実現するのが高価な傾向がある。360°のヒンジはまた、より従来型のヒンジが使用されたときのように、開位置にあるカバーが止め具に支えられないため、使用の際の安定性が低いことがある。
【0013】
完全に取外し可能なトレー(例えば、米国特許第5,605,167号及び同第6,002,651号)、気密封止(例えば、米国特許第5,842486号及び同第6,199,559号)、透明カバー、又は窓若しくはレンズを備えたカバー(例えば、米国特許第6,227,208号、同第6,769,438号、及びUS2004/0221866)、回転し過ぎた場合の破損を防ぐスナップ式カバー(例えば、米国特許第5,638,838号)、並びに内部照明(例えば、米国特許第4,126,145号)を備えたコンパクトを作成することも知られている。本発明によるコンパクトは、これらの特徴のいずれかを備えていてもよい。
【0014】
上記に列挙した参照文献のうち、どの参照文献又はそれらの任意の組合せも、次の全てを特色とする単一の化粧用コンパクトを開示していない。ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバー、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができるミラー、完全にシースルーのカバー又はその任意の部分、シースルーカバーによってそのサイズが影響されず、且つカバーの位置にその位置が依存しないミラー、不要なときにミラー又はカバーが邪魔にならないようにすることができる、即ちカバーを閉じ、製品が露出しない状態でミラーを使用することができるコンパクト、使用の際に便利に手で保持するか、又は表面上に置くことができるコンパクト、安定した有用なA字形フレーム形体(以下を参照)を達成することができる、又は平らにすることができるコンパクト、安定性を付加してひっくり返る可能性を低減するように、ベースを延長することができるコンパクト、格納された補助的品目が目に見える、又は隠されたコンパクト、上述の不利な点を有さない、ブリスタータイプの包装に入れて販売することができるコンパクトである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバーと、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができる物品キャリアと、を備える、安定性が向上した多目的で使用に便利な一体型化粧用コンパクトである。カバー及び物品キャリアは相互に独立に動く。本発明によるコンパクトは、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されてもよく、又は、コンパクトは、ベースを延長し、安定したA字形の姿勢(形態)を含む、様々な有用な姿勢(形態)で表面上に置かれてもよい。
【0016】
選択的回転機構は次の特徴を有する。すなわち、ベースに対して、物品キャリアは平行移動できる場合があり、また回転移動できる場合があるが、キャリアは一度に一つのタイプの動きのみを行うことができる。更に、キャリアが実行してもよい移動のタイプ(平行移動又は回転)が、キャリア及びベースの相対的な向きによって決定されるという点で、ユーザは選択肢を有さない。この規則には一つの例外がある。ユーザが、その向きからの平行移動又は回転のどちらか(ただし、両方同時にではない)を実行する選択肢を有する、ベースに対するキャリアの一つのみの向きが存在する。物品キャリアがベースに対して共面の向きから離れる方向に回転すると、キャリアは平行移動できなくなる。ベースに対してキャリアを別の方向に複合的に動かすことはできない。ここで、「複合的な動き」とは、同時に生じる二つ以上のタイプの動き、即ち平行移動と回転を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による化粧用コンパクトの分解斜視図である。
【図2A】本発明による化粧用コンパクトのベース部材の斜視図であり、ベースが複数のパウダー皿を保持している図である。
【図2B】本発明による化粧用コンパクトのベース部材の斜視図である。
【図3】本発明による化粧用コンパクトの物品キャリアの斜視図である。
【図4】本発明による化粧用コンパクトのベースカバーの斜視図である。
【図5A】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図5B】物品キャリアのピボットがそれぞれ一つの直線状縁部を有する、物品キャリアの一部を取り除いて溝及びピボットの境界面を露出させた、部分的に平行移動させた位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図5C】物品キャリアのピボットがそれぞれ一つの直線状縁部を有する、物品キャリアの一部を取り除いて溝及びピボットの境界面を露出させた、完全に平行移動させ部分的に回転させた位置にある本発明による化粧用コンパクトの概略図である。
【図6A】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの上面斜視図である。
【図6B】閉位置にある本発明による化粧用コンパクトの底面斜視図である。
【図7A】物品キャリアが開位置にあり、ベースカバーが閉位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【図7B】物品キャリアが閉位置にあり、ベースカバーが開位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【図7C】物品キャリア及びベースカバーが開位置にある、本発明による化粧用コンパクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書全体を通して、用語「comprise」、「comprises」、「comprising」などは、一貫して、対象の集合体が具体的に列挙される対象に限定されないことを意味するものとする。
【0019】
「一体型コンパクト」などは、請求される発明の構成要素が使用の際常に接続されていることを意味する。構成要素間の接続は、構成要素の相互の自由度を制限する。したがって、例えば、使用の際に分離されるコンパクト及びミラーは一体型コンパクトを形成しない。
【0020】
「平行移動」及び関連する文法的形式は、要素の回転とは異なる要素の線形的運動を指す。「回転」及び関連する文法的形式は、要素の平行移動とは異なる、物理的ピボットを中心にした要素の運動を指す。
【0021】
単なる例示を目的として、図面は、高さが幅及び奥行きよりも著しく小さい、薄型、又は扁平で平面的な一体型の化粧用コンパクトを示す。そのようなコンパクトは、固形パウダーを金属又はプラスチックの皿に収容するのに使用される場合が多く、また、アプリケータ又はミラーなどの補助的品目を格納してもよい。ただし、本明細書に開示される原理は、高さが幅若しくは奥行きと同程度の、又はそれらよりも大きいものを含む、他のタイプの小型容器に適用可能である。
【0022】
本発明の便利な特徴は、物品キャリア(30)及びカバー(40)が相互に独立に動いて、三つ折りの効果を作り出す点である。したがって、物品キャリアが任意の位置にある状態でカバーが開かれてもよく、またその逆も同様である。参照を容易にするため、多数の形体を規定する。
【0023】
1.(平らな姿勢)
開かれたカバー(40)、ベース(10)、及び完全に延長された物品キャリア(30)が同じ面内に置かれ、その結果コンパクトが平らに置かれる。図7Cの実施形態では、カバーは平らに置かれているが、カバーがベースの底面で回転しているため、ベースは一端側でわずかに持ち上げられていることに留意されたい。ベースはわずかに持ち上がっているものの、依然として、カバー及びベースは平らに置かれており、同じ面内にあるものとする。ベースのあらゆるわずかな持ち上がりを排除する、カバーの異なる実施形態を想像することは容易である。また、コンパクトの二つの部分のみが同じ面内にある場合は常に、開かれたカバー及びベースが平らに置かれているか、又は完全に延長された物品キャリア及びベースが平らに置かれているものとすることができる。
【0024】
2.(90°の姿勢)
90°の姿勢とは、物品キャリア(30)がベース(10)に対して上向きに回転し、ベースに対して直角である場合である。
【0025】
3.(270°の姿勢)
270°の姿勢とは、物品キャリア(30)がベース(10)に対して下向きに回転し、ベースに対して直角である場合である。
【0026】
4.(延長されたベース)
カバー(40)及びベース(10)が平らに置かれる一方、物品キャリア(30)が90°の姿勢に向かって上向きに回転される。この位置では、カバーは有効にベースを延長し、また、コンパクトが物品キャリアの重量を受けてひっくり返るのを防いでもよい。
【0027】
5.(安定したA字形フレームの姿勢)
「A字形フレームの姿勢」とは、ベース(10)及び物品キャリア(30)が少なくとも約270°の角度で相互に位置付けられる場合である。「安定したA字形フレームの姿勢」とは、A字形フレームの頂点がA字形フレームの辺(又は脚部)よりも上位にある状態で、倒れずに表面上で直立することができる場合である。例えば、A字形フレームがそれ自体の重量を受けて、又は外力の結果として潰れるのを防ぐため、ベース及びキャリアは適所で係止されてもよい。安定したA字形フレームの姿勢はスタンドとして有用である。係止機構を有さないか、又は別の形で不安定なコンパクトは、有用な期間の間A字形フレームの姿勢を保持しないことがある。本発明のコンパクトは、有用な期間の間A字形フレームの姿勢を保持することができる。例えばUS2006-0005853のように、扁平又は平面状ではないコンパクトは、安定したA字形フレームの姿勢にあまり適さない。
【0028】
(ベース)
図1、2A、及び2Bを参照すると、ベース(10)は、一般に、コンパクトの最大の又は主要な構成要素である。本質的に長方形の形で示されているが、本発明の原理は、長方形とは大きく異なるベースとして表されてもよい。図2A及び2Bの実施形態では、ベースは、底壁(11)、前壁及び後壁(12、12')、並びに二つの側壁(13、13')を有する。前壁及び/又は後壁と関連する水平寸法をコンパクトの幅と称することが便利である。同様に、側壁と関連する水平寸法がコンパクトの奥行きと称される。ベースの頂部(14)は、一つ若しくは複数の化粧用又は皮膚疾患用物品及び/或いは製剤を受け入れるために開かれている。ベースの内部は区画に分割されてもよい。図1では、パウダー皿(50)を受け入れる区画及びアプリケータ(60)を保持する区画がある。区画の数は、コンパクトのコンパクト全体寸法に収容される物品のサイズによって制限される。
【0029】
ベースは、ベースの一つ又は複数の壁に沿って延びる一つ又は複数の溝(15)を備える。以下の記載では、一つの溝がベースの各側壁(13、13')に沿って走っているものとして描写される。溝は、ベースの側壁を完全に通っていてもいなくてもよい。ベースは、通常、何らかの従来の手段によって一つ又は複数のプラスチックから作られる。
【0030】
図1から、コンパクトの相対寸法は本発明の実施例を著しく限定しないことが明白であろう。化粧用コンパクトでは、幅及び/又は奥行きは、一般に、少なくとも30mm程度から150mmまで変わり、それ以上であってもよい。コンパクトの高さは、一般に、約15mm程度から変わり、又は更に低くてもよい。ベース(10)の側壁(13、13')は溝(15)に適応するのに十分な高さでなければならないので、これらの壁の高さに対して実際的な下限がある。研究では、側壁の高さが3/4センチメートル程度しかない本発明によるコンパクトが、過度の困難なしに製作されている。ベースの側壁は3/4センチメートルよりも低くてもよいが、ある時点で、デバイスが小さ過ぎてユーザが便利に扱うことができなくなることは明白である。したがって、実際問題として、約1/2センチメートルが、ベースの側壁の高さの下限、又は溝を具体化する特徴の高さの下限である。更に、1/4センチメートルが溝の高さのおおよその下限である。
【0031】
(物品キャリア)
図3では、物品キャリア(30)は、コンパクトに収容されている物品のレセプタクルである。物品キャリアは、化粧用物品を受け入れ保定することができるレセプタクルの役割をしてもよく、例えば、ミラーが物品キャリアの底部に接着されてもよい。物品キャリアは、化粧用物品をしっかり保持することができるあらゆる適切な構造であってもよい。「しっかり保持する」とは、通常の使用の間物品が物品キャリア内で保定され、物品キャリアが、コンパクトデバイスの当業者には知られている手段を用いることによって、物品を固定するように適合されていることを意味する。更に、物品キャリアは、化粧用物品を格納することができるレセプタクルの役割をしてもよく、その物品はユーザによってキャリアから取り外すことができる。例えば、アプリケータが物品キャリアに収容されてもよい。キャリアは、通常、あらゆる従来の手段によって、一つ又は複数のプラスチックから作られてもよい。図3の実施形態では、キャリアは、箱と同じように、底面(31)、前壁(32)、及び側壁(33、33')を有する。物品キャリアの後壁(32')は、ベース(10)の一部分を受け入れるように開かれている。
【0032】
図5Bでは、物品キャリア(30)の一方の側壁(33)の一部分は、その下にある接続を示すために取り除かれている。ベース(10)は、物品キャリアに嵌合して、キャリアの後壁(32')を通して受け入れられている。物品キャリアは、場合によっては、ベースに対して水平に滑動(平行移動)することができる。平行移動するとき、物品キャリアの側壁(33、33')はベースの側壁(13、13')の上を滑動し、物品キャリアの底面(31)の内表面はベースの底面(11)の外表面の上を滑動する。好ましくは、物品キャリアの内部は、それが上を滑動するベースの部分の外部を補完するように形作られる。この締り嵌めによって、ベースに対する物品キャリアの望ましくない動きが制限される。
【0033】
物品キャリア(30)は、キャリアの前面(32)がベース(10)の前面(12)に最も近い完全後退位置(図5A)と、キャリアの前面がベースの前面から最も遠い完全延長位置との間で滑動する。物品キャリアが延長位置まで平行移動すると、その前はベースの下に隠れていた、物品キャリア内の一つ又は複数の化粧用物品が露出する。
【0034】
物品キャリア(30)が図5A又は5Bに示されるような位置にあるとき、キャリアが、ベース(10)に対して「水平」である且つ/又は回転していないと称する。対照的に、図5Cは、ベースに対して回転している、即ち水平ではない物品キャリアを示す。
【0035】
キャリア(30)の各側壁(33、33')は、ベース(10)に対して滑動及び旋回する取付け部品を備える。取付け部品は、ベースの側壁(13、13')に設けられた溝(15)によって達成される。取付け部品は、例えば、物品キャリアの側壁の内表面から溝内へと延びるピボット要素(34、34')であってもよく、ピボット要素は通常、コンパクトの通常の使用の間溝内に残る。接続は、場合によっては、ベースに対してキャリアが平行移動できるようなものであり、また場合によっては、ベースに対してキャリアが回転できるようなものであるが、両方の動きを同時に生じさせることはできない。実際には、ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるときにのみ、物品キャリアは回転することができる。ピボットがそれらの完全に水平な限界未満にある場合、キャリアは回転することができない。これを達成するための特定の実施例が以下に記載される。実施例は、溝の幾何学形状、及び溝内で移動する取付け部品(即ち、ピボット)の幾何学形状に関する。しかし、本発明に含まれる一般的原理は任意の選択的回転機構であり、ここで、「選択的回転機構」とは、次の三つの要件を満たす装置として規定される。
【0036】
1. ピボット(34、34')がそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、選択的回転機構は物品キャリア(30)の回転を防ぐ。
【0037】
2. ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるとき、選択的回転機構はキャリアの回転を可能にする。
【0038】
3. キャリアが水平なとき(即ち、ベースに対して回転していない)に限り、選択的回転機構はキャリアの平行移動を許容する。
【0039】
より簡潔に述べると、選択的回転機構は、ベースに対してキャリアが完全に延長されているときは、キャリア(30)の回転のみを可能にし、ベースに対してキャリアが回転していないときは、キャリアの平行移動のみを許容する。総合すると、これらの要件は、キャリアが平行移動及び回転を同時に行うことができないことも意味する。即ち、キャリアは複合的運動を行うことができず、つまりキャリアの運動は連動しない。したがって、物品キャリア(30)の回転及び平行移動の両方がそこから生じてもよい、ベース及び物品キャリアの姿勢(形態)は一つのみである。「一つのみの姿勢」によって、構成要素の嵌合における何らかの遊びによって発生する、姿勢のわずかな変動を除外するものとする。プラスチック構成要素の製造分野における慣例的な許容差を維持することによって、本発明の趣旨に従うことが確保される。より厳しい許容差はわずかな改善しか付加しないことがある。これらの要件を満たす選択的回転機構は、出願人による同時係属中の出願US11/537,210に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込むものである。
【0040】
(ベースカバー)
本発明によるベースカバー(40)が図4に示される。カバーは、好ましくは、物品キャリアの動き又は使用を妨害しないベースの後壁(12')付近で、ベースに枢動的に取り付けられる。閉位置では、カバーはベースの上に、又はおそらくはベースの頂部のすぐ内側にある。この位置では、カバーはベースの内容物を保護する。カバーは一般に平らであってもよく、好ましくは、カバーの少なくとも一部分はシースルー、最も好ましくは透明である。これらの特徴のどちらも厳密な要件ではないが、シースルーカバーは、消費者がコンパクトを開かずにコンパクトの内容物を見ることができるという点で大きな利点である。例えば、化粧品の消費者は、コンパクト内に含まれる一つ又は複数の化粧用製剤の色を見ることができる。カバーがシースルーではない場合、消費者に化粧品の色を見せるための他の何らかの手段を提供しなければならなくなる。多くの場合、化粧品の消費者が購入しようとしている物を見ることができるようにするため、「展示見本」を提供しなければならなくなる。各色又はバリエーションの一つのサンプルを提供しなければならないことを考慮すると、本発明の透明カバーは、ユニットの節約、及びサンプルを展示するのに必要な売台スペースの節約を意味する。消費者がベース内の重要な特徴を見ることができる限り、カバー全体がシースルーであってもなくてもよい。例えば、カバーの一部分は装飾的又は情報的特徴を表示してもよい。カバーは、通常、任意の従来の手段によって一つ又は複数のプラスチックから作られる。
【0041】
好ましくは、ベース(10)に対するカバー(40)の旋回取付け部品によって、ベースに対してカバーが少なくとも90°、より好ましくは少なくとも180°回転できるようになるので、カバーは、ベースと同じ面内で平らになることができる(図7Cを参照)。取付け部品は、カバーのどちらかの側面に従属してベースの補完的スロットに受け入れられる一つ又は複数のピボット(44、44')であってもよい。ピボット及びスロットの構造は、スナップ嵌め係合、又はピボットがスロットから脱するのを妨げるあらゆる手段を特色としてもよい。多くの等価な手段が当業者には明白であろう。物品キャリア(30)とは異なり、カバーは、一般に、ベースに対して平行移動することができない。カバーは、単に回転してベースから離れて、ベースの内部に対するアクセスを提供する。
【0042】
上述したように、カバー及び物品キャリア(30)は、ベースの向かい合った端部付近に位置するピボットを中心にして回転する。好ましくは、カバー及び物品キャリアの回転軸は、それぞれが他方とは独立に動くことができるように十分に離される。また、「相互に独立に」とは、カバー及び物品キャリアの経路が交差しない、又は別の形で互いに影響しないことを意味する。カバーは、物品キャリアが任意の位置にある状態で閉じられてもよく、またその逆も同様である。カバー及び物品キャリアは常に、同時に又は一度に一つずつ動くことができる。これは、一つの旋回部材の位置が別の旋回部材の動きと干渉することがある、多くの従来技術の三つ折りコンパクト、特にブックタイプの場合には該当しない。
【0043】
(選択的回転機構)
一実施形態(図5B、5Cを参照)では、ベース(10)は少なくとも一つの溝を備える。好ましくは、ベースは、ベースの各側壁(13、13')に一つずつ、二つの溝(15、15')を備える。各溝には二つの区画がある。一方の区画は、ベースの側壁に沿って水平に走る、比較的長い直線溝(16)である。ベースの前面(12)に近付くと、直線溝は円形溝(17)に通じる。円形溝は、直線溝の高さよりも大きい直径を有する。溝全体は、溝を境界付ける溝壁によって規定される。直線溝は、溝壁の直線状の平行な区画(18)によって両側で境界付けられる。円形溝は、溝壁の円形区画(19)によって境界付けられる。直線溝(16)の中心線は円形溝(19)の中心からずれている。実際には、直線溝の一方の壁は、円形溝に対する接線であるものとして図5B及び5Cに示される。したがって、直線溝の中心線は円形溝の中心を通らない。物品キャリアのピボット(34、34')は、各ピボットの中心の経路が円形溝の中心からずれるようにして、溝(15、15')に沿って移動する。
【0044】
各ピボット(34、34')には一つ又は複数の直線状縁部が関連付けられる。したがって、例えば、各ピボットは、一部を切った円筒形であってもよい(図5B及び5Cに示されるように)。物品キャリアが平行移動する間、直線状縁部(35)はそれぞれ直線溝(16)内を移動し、その場合、溝壁(18)と密接に接触している。ピボット要素が直線溝内にあるとき、直線状縁部は直線溝の壁に平行である。また、直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、直線状縁部が溝壁に当接することによって、物品キャリア(30)が大きく下向きに回転することがない。当然ながら、図5Bから明らかなように、キャリアの底面(31)がベースの底面(11)に当接していることによって、物品キャリアが上向きに回転することも不可能である。したがって、直線状縁部が円形溝(17)の外にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することはできるが、回転はできない。しかし、物品キャリアの下向きの回転は、直線状縁部が直線溝(16)の壁(18)に当接することによってのみ防止される。
【0045】
更に、直線状縁部(35)は円形溝(17)の直径よりも短い。したがって、直線状縁部が円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、物品キャリアが水平から離れて回転すると、同じ直線状縁部が直線溝(16)に再び入ることはできない。これによって物品キャリアが平行移動するのが防止される。
【0046】
したがって、ピボット(34)がそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、直線状縁部(35)によって物品キャリア(30)の平行移動が可能になるが、物品キャリアの回転は防止される。更に、ピボットがそれらの完全に水平な限界にあるとき、直線状縁部によって物品キャリアの回転が可能になるが、物品キャリアが水平のときを除いて平行移動は防止される。物品キャリアが水平のときのみ、ユーザは、物品キャリアをどのように動かすか(平行移動又は回転)の選択肢を有する。ただし、一度に一つの運動のみが可能である。特徴のこの組合せは、安定性及び便利さを付与するとともに、実現するのが簡単であり、且つ従来技術のいずれとも異なる。
【0047】
選択的回転機構の代替実施形態が、出願人の同時係属中の出願US11/537,210に記載されている。例えば、物品キャリアピボットの代替の実施例は、物品キャリアの内表面から隆起する一つ又は複数のリッジである。この実施形態では、ピボットは実際には丸みを帯びた部分を有さない。直線状リッジはそれぞれ直線溝(16)内を移動し、そこでは溝壁(18)と密接に接触している。直線状リッジは、溝壁と平行であり、直線溝の高さよりも長い。この長さは十分なので、溝壁に対する直線状リッジの当接によって、物品キャリア(30)の大幅な下向きの回転が防止される。したがって、直線状リッジが円形溝(17)の外にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することができるが、回転はできない。
【0048】
更に、直線状リッジの長さは円形溝(17)の直径よりも短いので、直線状リッジが円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。直線状縁部は直線溝の高さよりも長いので、物品キャリアが水平から離れて回転すると、同じ直線状リッジが直線溝(16)に再び入ることはできない。これによって物品キャリアが平行移動するのが防止される。
【0049】
したがって、直線状リッジがそれらの完全に水平な限界未満にあるとき、直線状リッジによって物品キャリア(30)の平行移動が可能になるが、物品キャリアの回転は防止される。更に、直線状リッジがそれらの完全に水平な限界にあるとき、直線状リッジによって物品キャリアの回転が可能になるが、物品キャリアが水平のときを除いて平行移動は防止される。物品キャリアが水平のときのみ、ユーザは、物品キャリアをどのように動かすか(平行移動又は回転)の選択肢を有する。ただし、一度に一つの運動のみが可能である。特徴のこの組合せは、安定性及び便利さを付与するとともに、実現するのが簡単であり、且つ従来技術のいずれとも異なる。
【0050】
どちらかの実施形態が有効であるが、ピボット(34)の一部を切った円筒形の実施形態が直線状リッジよりも好ましいことがあり、それは、図3に示されるような円筒形が薄いリッジよりも強く、摩耗及び引裂きに対する抵抗性に優れていることがあるためである。いずれの場合も、直線状縁部が円形溝(17)の下にあるとき、物品キャリアはベース(10)に対して平行移動することができるが、回転はできない。
【0051】
選択的回転機構の実施形態に関わらず、直線状縁部が円形溝に入ると、物品キャリア(30)は回転することができる。具体的には、物品キャリアは上下どちらかに回転してもよい。上向き又は下向きの回転に関して、どちらの方向にも約90°を超える円弧を規定する必要はないが、これは任意である。物品キャリアが十分に延長されているが、回転はしていないとき、キャリア及びベースは互いに対して180°の位置にあるか若しくは回転しており、又は平らになっていることを示す。キャリアが上向きに回転すると、キャリア及びベースは90°の姿勢に向かって動いていることを示し、キャリアが下向きに回転すると、キャリア及びベースは270°の姿勢に向かって動いていることを示す。好ましくは、キャリア及びベースが相互に回転すると、コンパクトは、コンパクトの重量を受けて動くことなく、回転した姿勢を維持することができる。例えば、回転した見当合わせを保持するため、スナップ嵌め若しくは摩擦嵌めによる係合、又は他の係止機構が設けられてもよい。
【0052】
物品キャリアが上向きに回転すると、物品キャリアの底面の内表面はコンパクトの内部に面する。カバーが閉じている場合、この姿勢は手持ちの操作に便利であり、二つ折りコンパクトには慣例的である。
【0053】
物品キャリアが下向きに回転し、係止されると、物品キャリアの底面の内表面はコンパクトの外側に面し、コンパクトはA字形フレームの姿勢をとる。A字形フレームの姿勢は、コンパクトを表面上に置くのに便利である。キャリアの内表面上にミラーが設けられている場合、ユーザは、ミラーで自身を見ながら、両手を使用して化粧をするか、又は別の方法で他の何らかの行動をすることができる。任意に、一時的に係止することができるキャリア及びベースのいくつかの向きがあってもよい。そのような一時的係止をもたらす手段は、当業者には容易に明白になるであろう。A字形フレームの姿勢では、カバーは開かれても閉じられてもよいが、開かれたカバーは、コンパクトに安定性を付加するとともに、ベース内の化粧用品目へのアクセスを提供することができる。
【0054】
ベース(10)は、化粧用製剤又はアプリケータなどの一つ若しくは複数の化粧用品目を収容する。本発明の扁平で平面状のコンパクトは、一般的には金属又はプラスチックの皿に予め充填された、固形パウダーを保持するのに良く適している。したがって、一つ又は複数の金属皿(50)が、ベース内の空間のいくつか又は全てを埋めてもよい。各皿は、一つのタイプの化粧品の異なる色彩のものを含んでもよく、又は異なるタイプの化粧品を含んでもよい。皿がベースから外れるのを妨げる手段が設けられてもよい。例えば、皿は、ベース内に接着されるか、又は磁石若しくは機械的手段で固定されてもよい。コンパクトの内部空間の一部分は、製品を適用するための一つ又は複数のアプリケータ(60)も収容してもよい。一般的なアプリケータとしては、ブラシ、櫛、スポンジ、ペンシルなどが挙げられる。シースルーカバー(40)が設けられている場合、ベース内の品目は常に見えていてもよい。シースルーカバーとしては、完全又は部分的に透明なカバー、完全又は部分的に半透明のカバー、窓を有するほぼ不透明のカバーなどが挙げられる。
【0055】
物品キャリア(30)は様々なタイプの品目を収容してもよいが、これらは、物品キャリアが閉位置にあるときはほぼ見えないように隠れる。好ましくは、物品キャリアはミラー(70)を収容する。ミラーは、様々な手段によって、例えば接着によって物品キャリア内で固定されてもよく、又はミラーは物品キャリアから取外し可能であってもよい。できるだけ大きなミラーを提供することが好ましいとき、物品キャリアの底面の内表面全体がミラーで覆われるべきである。この場合、ミラーの寸法は、コンパクトの寸法から物品キャリアの壁の厚さを差し引いたものに非常に近い。
【0056】
任意に、ピボット(34)の端部は、それらが溝(15)から後退するのを防ぐ隆起した特徴を備えてもよい。
【0057】
任意に、カバーを、閉位置、開位置、又は中間位置で保持するため、ベース(10)及びカバー(40)それぞれの上に配置されたスナップ金具が設けられてもよい。
【0058】
そのような多くの拡張例は、ベースと、ベースに対して回転することができるヒンジ付きカバーと、選択的回転機構によってベースに対して平行移動及び回転することができる物品キャリアと、を備える、安定性が向上した使用に便利な一体型化粧用コンパクトである本発明の趣旨を拡張することなく、当業者には明白であろう。コンパクトは、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されてもよく、又は、コンパクトは、ベースが延長された安定なA字形フレームの姿勢(形態)など、様々な有用な姿勢で表面上に置かれてもよい。
【0059】
驚くことに、三つ折りの効果と選択的回転機構を備えた物品キャリアとの組合せによって、多目的で、安定で、シンプルで、安価に製造できるとともに、上品で遊び心のある雰囲気を有するコンパクトが作り出される。ベースに対して連動しない物品キャリアの動きと、カバー及び物品キャリアが独立に動くという構成と、の組合せによって、二つ折りコンパクトと同様に手で保持されるか、又は従来技術のあらゆる化粧用コンパクトとは異なり、ベースが延長された安定なA字形フレームの姿勢など、有用で様々な姿勢で表面上に置かれてもよい、多目的で使用に便利なコンパクトが作り出されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
選択的回転機構によって前記ベースに接続された物品キャリアと、
カバー及び前記物品キャリアの一方が他方とは独立に動くことができるように前記ベースにヒンジで取り付けられたカバーと、を備える、三つ折り化粧用コンパクト。
【請求項2】
溝をそれぞれが有して、各溝が第1及び第2の区画を有する二つの側壁と、
前記ベースの一方の側壁に沿い、前記第2の区画内へと開いた直線溝である前記第1の区画と、
前記直線溝の高さよりも大きい直径を有する円形溝である前記第2の区画と、
前記直線溝を境界付ける一対の平行な直線の壁と、
前記円形溝を境界付ける円形壁と、を前記ベースが備えている、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項3】
内部にピボット要素をそれぞれが有している二つの側壁と、
各ピボット要素と関連付けられ、前記直線溝の高さよりも長いが前記円形溝の直径よりも短い一つ又は複数の直線状縁部と、を前記物品キャリアが備えている、請求項2に記載のコンパクト。
【請求項4】
前記物品キャリアの前記ピボット要素及び前記直線状縁部が、前記ベースの前記溝内へと延びている、請求項3に記載のコンパクト。
【請求項5】
前記直線状縁部が前記直線溝内にあるとき、前記直線状縁部が前記直線溝の前記壁に当接することによって、前記ベースに対する前記物品キャリアの下向きの回転が防止され、前記物品キャリアの一部分が前記ベースの一部分に接することによって、前記物品キャリアの上向きの回転が防止される、請求項4に記載のコンパクト。
【請求項6】
前記直線状縁部が前記円形溝内にあるとき、前記物品キャリアが前記ベースに対して上下どちらかに回転することができる、請求項5に記載のコンパクト。
【請求項7】
前記物品キャリアが少なくとも90°上向き及び少なくとも90°下向きに回転することができる、請求項6に記載のコンパクト。
【請求項8】
前記物品キャリアが前記ベースに対して回転すると、前記コンパクトが、前記コンパクトの重量に抗して回転した姿勢を維持することができる、請求項7に記載のコンパクト。
【請求項9】
安定したA字形フレームの姿勢をとることができる、請求項8に記載のコンパクト。
【請求項10】
前記カバーが、前記ベースに対して少なくとも90°、より好ましくは少なくとも180°回転することができる、請求項2に記載のコンパクト。
【請求項11】
ベースが延長された姿勢をとることができる、請求項10に記載のコンパクト。
【請求項12】
平らに置かれた姿勢をとることができる、請求項10に記載のコンパクト。
【請求項13】
前記ベースが一つ又は複数の化粧用品目を受け入れることができる、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項14】
一つ又は複数の皮膚用製剤が前記ベース内に配置される、請求項13に記載のコンパクト。
【請求項15】
一つ又は複数のアプリケータが前記ベース内に配置される、請求項13に記載のコンパクト。
【請求項16】
前記物品キャリアが一つ又は複数の補助的物品を受け入れることができる、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項17】
ミラーが前記物品キャリア内に配置される、請求項16に記載のコンパクト。
【請求項18】
前記カバーの少なくとも一部分がシースルーである、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項19】
前記カバーの少なくとも一部分が透明である、請求項18に記載のコンパクト。
【請求項20】
最初にミラーを滑動させ、次にベースに対して前記ミラーを回転させるステップと、
前記ベースに対してカバーを回転させて、一つ又は複数の化粧用製剤を露出させるステップと、を含む、三つ折り化粧用コンパクトを閉じた姿勢から開く方法。
【請求項21】
前記コンパクトを、平らな姿勢、ベースを延長した姿勢、又は安定なA字形フレームから成る群から選択される姿勢のままにする、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
ベースと、
選択的回転機構によって前記ベースに接続された物品キャリアと、
カバー及び前記物品キャリアの一方が他方とは独立に動くことができるように前記ベースにヒンジで取り付けられたカバーと、を備える、三つ折り化粧用コンパクト。
【請求項2】
溝をそれぞれが有して、各溝が第1及び第2の区画を有する二つの側壁と、
前記ベースの一方の側壁に沿い、前記第2の区画内へと開いた直線溝である前記第1の区画と、
前記直線溝の高さよりも大きい直径を有する円形溝である前記第2の区画と、
前記直線溝を境界付ける一対の平行な直線の壁と、
前記円形溝を境界付ける円形壁と、を前記ベースが備えている、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項3】
内部にピボット要素をそれぞれが有している二つの側壁と、
各ピボット要素と関連付けられ、前記直線溝の高さよりも長いが前記円形溝の直径よりも短い一つ又は複数の直線状縁部と、を前記物品キャリアが備えている、請求項2に記載のコンパクト。
【請求項4】
前記物品キャリアの前記ピボット要素及び前記直線状縁部が、前記ベースの前記溝内へと延びている、請求項3に記載のコンパクト。
【請求項5】
前記直線状縁部が前記直線溝内にあるとき、前記直線状縁部が前記直線溝の前記壁に当接することによって、前記ベースに対する前記物品キャリアの下向きの回転が防止され、前記物品キャリアの一部分が前記ベースの一部分に接することによって、前記物品キャリアの上向きの回転が防止される、請求項4に記載のコンパクト。
【請求項6】
前記直線状縁部が前記円形溝内にあるとき、前記物品キャリアが前記ベースに対して上下どちらかに回転することができる、請求項5に記載のコンパクト。
【請求項7】
前記物品キャリアが少なくとも90°上向き及び少なくとも90°下向きに回転することができる、請求項6に記載のコンパクト。
【請求項8】
前記物品キャリアが前記ベースに対して回転すると、前記コンパクトが、前記コンパクトの重量に抗して回転した姿勢を維持することができる、請求項7に記載のコンパクト。
【請求項9】
安定したA字形フレームの姿勢をとることができる、請求項8に記載のコンパクト。
【請求項10】
前記カバーが、前記ベースに対して少なくとも90°、より好ましくは少なくとも180°回転することができる、請求項2に記載のコンパクト。
【請求項11】
ベースが延長された姿勢をとることができる、請求項10に記載のコンパクト。
【請求項12】
平らに置かれた姿勢をとることができる、請求項10に記載のコンパクト。
【請求項13】
前記ベースが一つ又は複数の化粧用品目を受け入れることができる、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項14】
一つ又は複数の皮膚用製剤が前記ベース内に配置される、請求項13に記載のコンパクト。
【請求項15】
一つ又は複数のアプリケータが前記ベース内に配置される、請求項13に記載のコンパクト。
【請求項16】
前記物品キャリアが一つ又は複数の補助的物品を受け入れることができる、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項17】
ミラーが前記物品キャリア内に配置される、請求項16に記載のコンパクト。
【請求項18】
前記カバーの少なくとも一部分がシースルーである、請求項1に記載のコンパクト。
【請求項19】
前記カバーの少なくとも一部分が透明である、請求項18に記載のコンパクト。
【請求項20】
最初にミラーを滑動させ、次にベースに対して前記ミラーを回転させるステップと、
前記ベースに対してカバーを回転させて、一つ又は複数の化粧用製剤を露出させるステップと、を含む、三つ折り化粧用コンパクトを閉じた姿勢から開く方法。
【請求項21】
前記コンパクトを、平らな姿勢、ベースを延長した姿勢、又は安定なA字形フレームから成る群から選択される姿勢のままにする、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公表番号】特表2010−512972(P2010−512972A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543050(P2009−543050)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/086799
【国際公開番号】WO2008/079637
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/086799
【国際公開番号】WO2008/079637
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
[ Back to top ]