説明

動作補助具

【課題】作業者の姿勢の変化に容易な操作で迅速に対応可能な動作補助具を提供する。
【解決手段】動作補助具1Aは、作業者の右脚を覆う右側拘束部23R及び左脚を覆う左側拘束部23Lを有し、作業者に装着される拘束部材2と、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lのそれぞれに設けられ、作業者の前傾する姿勢によって作業者の上半身から下半身にかけてテンションを付与する弾性部材3と、拘束部材2の正面の下部を右側拘束部23Rと左側拘束部23Lで左右に分割するスリット5と、スリット5による右側拘束部23Rと左側拘束部23Lの開閉の有無を切り替える閉じ具6Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前傾姿勢で作業を行う作業者を支える動作補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上半身を前屈みにする姿勢を続けたり、重量物を上げ、これを保持する動作を行う作業を行う作業者は、腰痛を伴う場合が多い。このため、作業者の体を拘束し、上体体重を保持する器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような補助器具では、作業者の右脚と左脚に合わせてそれぞれ弾性部材を位置させ、作業者が前傾姿勢となると、弾性部材の弾性変形により、上半身の重さを弾性部材を通して下半身に配分、分散させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−247110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の補助器具では、作業者の腰部と左右の脚にそれぞれ弾性部材が固定される形態であり、前屈みの姿勢から、しゃがむ姿勢に移る作業では、弾性部材を更に変形させるための力を掛ける必要があり、しゃがむ姿勢に移るために作業者に負担が掛かっていた。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、弾性部材の一部を外すことで、しゃがむ姿勢が取れるようになっているが、弾性部材が弾性変形しているような前屈みの姿勢で、弾性部材の着脱を行うことは容易ではなく、前屈みの姿勢からしゃがむ姿勢に迅速に移るような作業に適用することはできない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、作業者の姿勢の変化に容易な操作で迅速に対応可能な動作補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、作業者の右脚に対応した右側拘束部及び左脚に対応した左側拘束部を有し、作業者に装着される拘束部材と、右側拘束部と左側拘束部の少なくとも一方に設けられ、作業者の姿勢の変化によって作業者の上半身から下半身にかけてテンションを付与する弾性部材と、拘束部材の下部を右側拘束部と左側拘束部で左右に分割するスリットと、スリットによる右側拘束部と左側拘束部の開閉の有無を切り替える閉じ具とを備えた動作補助具である。
【0009】
本発明の動作補助具では、前屈みの姿勢になる場合は、閉じ具により右側拘束部と左側拘束部を閉じた状態とすることで、作業者の上体の重さの一部等が、作業者の姿勢の変化に合わせて変形する弾性部材の弾性力で支えられ、作業者の負担が軽減される。
【0010】
前屈みの姿勢からしゃがむ姿勢に移る場合、閉じ具を解放することで、弾性部材が復元する力で右側拘束部と左側拘束部のスリットが開き、作業者の膝が、スリットの開いた部分に入り込む。これにより、作業者は、弾性部材を変形させるための力を掛けることなく、しゃがむ姿勢に移ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の動作補助具よれば、簡単な操作で、弾性部材のテンションによる支持が必要な姿勢から、弾性部材のテンションによる支持が不必要な姿勢への変化が、作業者に負担をかけることなく迅速に行える。
【0012】
また、弾性部材のテンションによる支持が不必要な姿勢から、弾性部材のテンションによる支持が必要な姿勢への変化が、作業者に負担をかけることなく迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態の動作補助具の一例を示す正面図である。
【図2】本実施の形態の動作補助具の一例を示す背面図である。
【図3】本実施の形態の動作補助具の使用形態を示す説明図である。
【図4】弾性部材の一例を示す斜視図である。
【図5】スリット及び閉じ具の一例を示す正面図である。
【図6】本実施の形態の動作補助具の使用例を示す動作説明図である。
【図7】本実施の形態の動作補助具の使用例を示す動作説明図である。
【図8】閉じ具の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の動作補助具の実施の形態について説明する。
【0015】
<本実施の形態の動作補助具の構成例>
図1は、本実施の形態の動作補助具の一例を示す正面図、図2は、本実施の形態の動作補助具の一例を示す背面図、図3は、本実施の形態の動作補助具の使用形態を示す説明図である。
【0016】
本実施の形態の動作補助具1Aは、作業者Pに巻かれる形態で装着される拘束部材2と、拘束部材2を装着した作業者Pの姿勢の変化によって、作業者Pの上半身から下半身にかけてテンションを付与する弾性部材3と、作業者Pの腹部を締める補助ベルト4を備える。また、動作補助具1Aは、拘束部材2の正面の下部を開閉するスリット5と、スリット5による拘束部材2の開閉の有無を切り換える閉じ具6Aを備える。
【0017】
拘束部材2は、本例では四角形状で、布、ビニール等の可撓性を有した材質で構成される。拘束部材2は、例えば、通気性を有したメッシュ素材の素地が複数枚組み合わされ、所定の形状に構成される。拘束部材2は、正面の上部の2箇所に穴部20が設けられ、作業者Pの首に掛けられる紐21が、穴部20に通される。
【0018】
拘束部材2は、図1に示すように、正面の上部に補助ベルト4が取り付けられる。また、拘束部材2は、図2に示すように、裏面に弾性部材3が着脱される面ファスナ22が取り付けられる。面ファスナ22は位置調整手段を構成し、拘束部材2の裏面の左右両側に、それぞれ上下方向に延在する形態で取り付けられる。
【0019】
すなわち、面ファスナ22は、作業者Pから見て右脚側となる拘束部材2の右側拘束部23Rの裏面と、左脚側となる拘束部材2の左側拘束部23Lの裏面に、上下方向に延在する形態で取り付けられる。
【0020】
図4は、弾性部材の一例を示す斜視図であり、次に、各図を参照して弾性部材3の構成について説明する。弾性部材3は、棒状バネ30と、1本あるいは複数本の棒状バネ30が収容されるケース31を備える。棒状バネ30は、図4(c)に示すように、例えば複数本の棒バネが束ねられ、長手方向の両端に保護部30aが設けられる。棒バネとして、本例では、超弾性金属と称される、ある一定以上のひずみに対して応力が変化しない金属が用いられ、一定角度の折り曲げで、負荷が一定となるように構成される。
【0021】
ケース31は、棒状バネ30の長手方向に沿った長方形の袋状で、内部に棒状バネ30を並列して収納可能な空間が形成される。ケース31は、作業者Pと対向する面となる一方の面には、図4(a)に示すように、長手方向の一端と他端、本例では上端と下端に保護部材32が設けられる。また、ケース31を開閉して棒状バネ30の出し入れが行われる線ファスナ33が設けられる。
【0022】
ケース31は、拘束部材2に取り付けられる面となる他方の面には、図4(b)に示すように、全面に亘り位置調整手段を構成する面ファスナ34が設けられる。弾性部材3は、面ファスナ34が拘束部材2の面ファスナ22に結合されることで、拘束部材2に着脱可能に固定される。拘束部材2の面ファスナ22の幅は、弾性部材3の面ファスナ34の幅より長く構成され、弾性部材3の取り付け位置が、面ファスナ22の幅の範囲で調整可能となっている。
【0023】
補助ベルト4は、ベルト部40と圧迫部41が、拘束部材2の幅方向である左右方向に延在し、作業者Pの腹部に巻き付く長さを有する。補助ベルト4は、輪状としてベルト部40の先端部40aがバックル42に通されて折り返され、面ファスナ43と面ファスナ44が結合されることで、任意の長さに調整される。
【0024】
図5は、スリット及び閉じ具の一例を示す正面図であり、次に、各図を参照してスリット5及び閉じ具6Aの構成について説明する。スリット5は、拘束部材2の下部を、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lで左右に2分割する。スリット5は、拘束部材2に切れ目を入れて左右に分割する構成でも良いが、本来では、拘束部材2が複数枚の素地の組み合わせで構成され、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが正面で重なる重なり部23Cが構成される。
【0025】
閉じ具6Aは、本例では、作業者Pの右手で操作を可能とするため、拘束部材2の右側拘束部23Rに、面ファスナ60とベルト部61が設けられ、左側拘束部23Lに、ベルト部61を折り返すバックル62が設けられる。
【0026】
面ファスナ60は調整手段を構成し、右側拘束部23Rの正面に、左右方向に延在して設けられる。ベルト部61は調整手段を構成し、右側拘束部23Rの正面で面ファスナ60の一方の端部から左側拘束部23Lに向かって延在し、バックル62に通されて折り返され、面ファスナ60に到達する長さを有する。
【0027】
ベルト部61は、先端側を輪状として操作部61aが設けられる。また、ベルト部61は、先端側の裏面に所定の長さに亘って面ファスナ61bが設けられる。バックル62は、左側拘束部23Lと右側拘束部23Rが重なる重なり部23Cで、左側拘束部23Lの裏面に設けられる。閉じ具6Aは、バックル62が左側拘束部23Lの裏面に設けられることで、左側拘束部23Lの正面側にバックル62及びベルト部61の折り返される部分が露出せず、作業の妨げになることがない。
【0028】
閉じ具6Aは、右側拘束部23Rから延在するベルト部61が、左側拘束部23Lに設けたバックル62に通されて折り返され、ベルト部61の面ファスナ61bが右側拘束部23Rの面ファスナ60に結合されることで、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じた状態で保持される。
【0029】
また、閉じ具6Aは、操作部61aが引かれることで、ベルト部61の面ファスナ61bと右側拘束部23Rの面ファスナ60が離されて解放され、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが開くことが可能になる。
【0030】
<本実施の形態の動作補助具の使用例>
次に、各図を参照して、本実施の形態の動作補助具1Aの使用例について説明する。まず、動作補助具1Aの装着は、補助ベルト4が作業者Pの腹部の高さとなるように、紐21の長さを調整する。
【0031】
また、拘束部材2と弾性部材3は、面ファスナ22と面ファスナ34の結合で着脱可能に取り付けられ、左右方向の位置が調整可能であるので、拘束部材2の右側拘束部23Rに取り付けられる弾性部材3が、右脚の外側の側面から正面側にかけての所望の位置となるように左右方向の位置を調整すると共に、左側拘束部23Lに取り付けられる弾性部材3が、左脚の外側の側面から正面側にかけての所望の位置となるように左右方向の位置を調整する。
【0032】
そして、紐21を首に掛け、補助ベルト4及び拘束部材2を体に巻くようにして、補助ベルト4を腹部に巻き付け、補助ベルト4のベルト部40の先端部40aをバックル42に通して折り返し、腹部を締め付けるような位置で、面ファスナ43と面ファスナ44を結合させる。
【0033】
これにより、動作補助具1Aは、作業者Pの腹部が補助ベルト4の圧迫部41で圧迫されて腹腔圧が高められた状態で、拘束部材2が作業者Pの腰部付近の正面に装着される。
【0034】
この状態で、作業者Pの右脚に対応した拘束部材2の右側拘束部23Rは、作業者Pの右脚を正面側から外側の側面側にかけて覆う。また、右側拘束部23Rに取り付けられた弾性部材3は、作業者Pの腹部、腰部から右脚の大腿部付近における側面側から正面側にかけての所望の位置、例えば、腹部、腰部から右脚の大腿部付近の側面側、あるいは、側面側から正面側にかけての右斜め前等の略側面側に位置する。
【0035】
同様に、作業者Pの左脚に対応した拘束部材2の左側拘束部23Lは、作業者Pの左脚を正面側から外側の側面側にかけて覆う。また、左側拘束部23Lに取り付けられた弾性部材3は、作業者Pの腹部、腰部から左脚の大腿部付近における側面側から正面側にかけての所望の位置、例えば、腹部、腰部から左脚の大腿部付近の側面側、あるいは、側面側から正面側にかけての左斜め前等の略側面側に位置する。
【0036】
図6及び図7は、本実施の形態の動作補助具の使用例を示す動作説明図で、次に、動作補助具1Aを装着しての作業例について説明する。図6に示すように、介護や農作業、製造業等で前屈みの姿勢で作業を行う場合は、閉じ具6Aにより右側拘束部23Rと左側拘束部23Lを閉じた状態とする。なお、左右の弾性部材3の間隔は、ベルト部61の面ファスナ61bと右側拘束部23Rの面ファスナ60を結合する位置を左右方向でずらすことで調整可能であり、動作補助具1Aを装着した後の調整が可能である。
【0037】
動作補助具1Aは、拘束部材2が作業者Pの腹部、腰部から両脚の大腿部にかけて装着される形態で、補助ベルト4により作業者Pの腹部付近に締め付けられており、作業者Pの腹部付近では、弾性部材3が作業者Pに支持されている状態である。
【0038】
この状態で作業者Pが前屈みの姿勢をとると、拘束部材2の右側拘束部23Rに取り付けられた弾性部材3は、作業者Pの腹部、腰部から右脚の大腿部付近の略側面側に位置するので、弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとする。
【0039】
拘束部材2は、右側拘束部23Rの下端側がベルト等で作業者Pの右脚に固定されてはおらず、弾性部材3の下端部が右脚に直接支持されてはいない。但し、拘束部材2は、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じ具6Aで閉じた状態であると、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lを開くことができない。
【0040】
従って、右側拘束部23Rに取り付けられた弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとする力が、右側拘束部材23Rを介して右脚の前面で受け止められ、弾性部材3が作業者Pの前傾する姿勢に合わせて曲げられて弾性変形し、作業者Pの上体の荷重が支えられる。
【0041】
同様に、拘束部材2の左側拘束部23Lに取り付けられた弾性部材3は、作業者Pの腹部、腰部から左脚の大腿部付近の略側面側に位置するので、弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとするが、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じ具6Aで閉じた状態であり開くことができない。
【0042】
従って、左側拘束部23Lに取り付けられた弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとする力が、左側拘束部材23Lを介して左脚の前面で受け止められ、弾性部材3が作業者Pの前傾する姿勢に合わせて曲げられて弾性変形し、作業者Pの上体の荷重が支えられる。
【0043】
これにより、作業者Pが前屈みの姿勢で介護者を支える等、重量物を保持する場合は、作業者Pの上半身から下半身にかけて弾性部材3によるテンションが付与されることで、重力物及び作業者Pの上体の重さの一部が弾性部材3の弾性力で支えられ、作業者Pの下半身に配分、分散される。従って、作業者Pの負担が軽減される。
【0044】
例えば、介護作業では、中腰で介護者をベッドから車椅子に移動させた後、しゃがんで靴を履かせて車椅子のフットレストに足を乗せる等、前屈みの姿勢から、しゃがむ姿勢に移る場合がある。
【0045】
このように、前屈みの姿勢からしゃがむ姿勢に移る場合、作業者Pは、操作部61aを引いて閉じ具6Aを解放する。本例では、閉じ具6Aは、右側拘束部23Rから延在するベルト部61が、左側拘束部23Lに設けたバックル62に通されて折り返され、操作部61aが右側拘束部23Rの外側に向けて延在しているので、操作部61aを引いてベルト部61の面ファスナ61bと右側拘束部23Rの面ファスナ60を離す操作が、片手で容易に行える。
【0046】
閉じ具6Aは、操作部61aが引かれることで、ベルト部61の面ファスナ61bと右側拘束部23Rの面ファスナ60が離されて解放され、拘束部材2は、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが開くことが可能になる。
【0047】
これにより、閉じ具6Aを解放して、図7に示すように前屈みの姿勢からしゃがむ姿勢に移ると、拘束部材2の右側拘束部23Rは、弾性部材3の下端部が背面側に下がるような方向へ弾性部材3が復元する力で、右横方向、更には右斜め後ろ方向へ外側に向かって移動すると共に、左側拘束部23Lは、弾性部材3の下端部が背面側に下がるような方向へ弾性部材3が復元する力で、左横方向、更には左斜め後ろ方向へ外側に向かって移動し、スリット5が開く。そして、作業者Pの膝が、スリット5の開いた部分に入り込むことで、弾性部材3の弾性力を受けることなく、あるいは、弾性部材3から受ける弾性力が弱い状態で、作業者Pは、しゃがむ姿勢に移ることができる。
【0048】
しゃがんだ姿勢から立つ場合や、前屈みの姿勢に戻る場合は、操作部61aでベルト部61の面ファスナ61bを右側拘束部23Rの面ファスナ60に結合することで、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じた状態に戻り、作業者Pの姿勢によって、作業者Pの上半身から下半身にかけて、弾性部材3によって所定のテンションが付与される状態となる。
【0049】
このように、動作補助具1Aでは、介護者等を支えるため、前屈みの姿勢になる場合は、閉じ具6Aにより右側拘束部23Rと左側拘束部23Lを閉じた状態とすることで、介護者の体重及び作業者Pの上体の重さの一部が、作業者Pの姿勢の変化に合わせて変形する弾性部材3の弾性力で支えられ、作業者Pの負担が軽減される。
【0050】
前屈みの姿勢からしゃがむ姿勢に移る場合、操作部61aを引いて閉じ具6Aを解放することで、弾性部材3が復元する力で右側拘束部23Rと左側拘束部23Lのスリット5が開き、作業者Pの膝が、スリット5の開いた部分に入り込む。これにより、作業者Pは、弾性部材3の弾性力を受けることなく、あるいは、弾性部材3から受ける弾性力が弱い状態で、更に、弾性部材3を変形させるための力を掛けることなく、しゃがむ姿勢に移ることができる。
【0051】
拘束部材2の右側拘束部23Rと左側拘束部23Lに取り付けられた弾性部材3が、それぞれ作業者Pの両脚の大腿部付近の略側面側に位置する構成では、前屈みの姿勢の作業者Pが閉じ具6Aを解放すると、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lを直接操作することなく、弾性部材3の復元力でスリット5が開く。
【0052】
そして、閉じ具6Aを解放する操作は、作業者Pが片手、本例では右手で操作部61aを引くという簡単な操作で行えることから、弾性部材3のテンションによる支持が必要な姿勢から、弾性部材3のテンションによる支持が不必要な姿勢への変化が、作業者Pに負担をかけることなく迅速に行える。
【0053】
同様に、閉じ具6Aを閉じる操作も簡単な操作で行えることから、弾性部材3のテンションによる支持が不必要な姿勢から、弾性部材3のテンションによる支持が必要な姿勢への変化が、作業者Pに負担をかけることなく迅速に行える。
【0054】
なお、動作補助具1Aは、補助ベルト4を備えることで、作業者Pの腹部が補助ベルト4の圧迫部41で圧迫されて腹腔圧が高められた状態で装着されるので、上半身で受ける重さを、より積極的に分散することができる。
【0055】
<本実施の形態の動作補助具の変形例>
本実施の形態の動作補助具1Aでは、弾性部材3が右側拘束部23Rと左側拘束部23Lの両方に取り付けられる例で説明したが、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lのどちらか一方にのみ、弾性部材3が取り付けられる構成でも良い。
【0056】
例えば、拘束部材2の右側拘束部23Rにのみ弾性部材3が取り付けられた構成でも、作業者Pが前屈みの姿勢をとると、弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとするが、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じ具6Aで閉じた状態であると、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lを開くことができない。
【0057】
従って、右側拘束部23Rに取り付けられた弾性部材3の下端部が背面側に下がろうとする力が、右側拘束部材23Rを介して右脚の前面で受け止められ、弾性部材3が作業者Pの前傾する姿勢に合わせて曲げられて弾性変形し、作業者Pの上体の荷重が支えられる。なお、拘束部材2の左側拘束部23Lにのみ弾性部材3が取り付けられた構成でも同様である。
【0058】
補助ベルト4は、拘束部材2に一体に取り付けられるものではなく、別体であっても良い。また、補助ベルト4を拘束部材2と別体とする場合等では、拘束部材2を作業者に巻かれる形態で装着できるようにするため、圧迫部を有しない通常のベルトや、紐等のベルト部材を設ける構成とすると良い。
【0059】
閉じ具6Aは、ベルト部61の面ファスナ61bと右側拘束部23Rの面ファスナ60の左右方向の長さの範囲内で、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lの重なり部23Cの長さを調整して、左右の弾性部材3の間隔が調整可能であるが、ベルト部61に長さを調整可能とする調整手段としてアジャスタを設けても良い。
【0060】
図8は、閉じ具の変形例を示す正面図である。図8に示す変形例の閉じ具6Bは、アジャスタ63により解放可能な構成を備える。すなわち、閉じ具6Bは、拘束部材2の右側拘束部23Rにアジャスタ63で繋がるベルト部64とベルト部65が設けられ、左側拘束部23Lに、ベルト部64を折り返すバックル66が設けられる。
【0061】
ベルト部64は、右側拘束部23Rの正面から左側拘束部23Lに向かって延在し、バックル66に通されて折り返され、アジャスタ63が右側拘束部23Rの正面に露出する位置となるような長さを有する。ベルト部65は、一端がアジャスタ63に通されると共に、他端が右側拘束部23Rに固定される。
【0062】
閉じ具6Bは、操作部を構成するベルト部65の一端を引っ張ることで、ベルト部65の長さが短くなるように調整され、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが閉じた状態で保持される。
【0063】
また、閉じ具6Bは、操作部を構成するアジャスタ63をベルト部65の延在方向に対し傾ける等の操作を行うことで、ベルト部65の長さが長くなるように調整されて解放され、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lが開くことが可能になる。また、ベルト部65及びアジャスタ63は調整手段を構成し、右側拘束部23Rと左側拘束部23Lの重なり部23Cの長さを調整して、左右の弾性部材3の間隔が調整可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、介護分野、農業分野、製造業分野等で、上半身を前屈みにする動作、上半身を前屈みにして重量物を保持する動作、しゃがむ動作を行う作業者の動作を補助して負担を軽減する動作補助具に適用される。
【符号の説明】
【0065】
1A・・・動作補助具、2・・・拘束部材、22・・・面ファスナ、23R・・・右側拘束部、23L・・・左側拘束部、3・・・弾性部材、4・・・補助ベルト、5・・・スリット、6A、6B・・・閉じ具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の右脚に対応した右側拘束部及び左脚に対応した左側拘束部を有し、作業者に装着される拘束部材と、
前記右側拘束部と前記左側拘束部の少なくとも一方に設けられ、作業者の姿勢の変化によって作業者の上半身から下半身にかけてテンションを付与する弾性部材と、
前記拘束部材の下部を前記右側拘束部と前記左側拘束部で左右に分割するスリットと、
前記スリットによる前記右側拘束部と前記左側拘束部の開閉の有無を切り替える閉じ具と
を備えたことを特徴とする動作補助具。
【請求項2】
前記閉じ具は、前記右側拘束部または前記左側拘束部の正面に操作部が設けられ、前記操作部が設けられる側の片手による操作で前記右側拘束部と前記左側拘束部の開閉の有無が切り替えられる
ことを特徴とする請求項1記載の動作補助具。
【請求項3】
前記閉じ具は、前記右側拘束部と前記左側拘束部の左右方向の位置を調整して、左右の前記弾性部材の間隔を調整する調整手段を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載の動作補助具。
【請求項4】
前記拘束部材は、作業者の腹部を締めるベルト部材を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の動作補助具。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記拘束部材に対して着脱可能に構成され、前記弾性部材と前記拘束部材は、左右の前記弾性部材の間隔を調整する位置調整手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の動作補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117178(P2012−117178A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269534(P2010−269534)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】