説明

動力伝動ベルト

【課題】 耐熱屈曲性が高く、しかも優れた耐磨耗性、耐発音性を備えたVリブドベルトを提供する。
【解決手段】Vリブドベルト1は、カバー帆布5からなる伸張部2と、コードよりなる心線3を埋設した接着層4と、その下側に弾性体層である圧縮部6からなっている。この圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有している。そして少なくともリブ側面9を、ゴム100重量部に対して植物性軟質粒8を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成したことを特徴とする。植物性軟質粒は、クルミ殻、杏核、桃核及びとうもろこし穂芯から選ばれてなる少なくとも1種の植物の粉砕物であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝動ベルトに関し、詳しくは優れた静音性、耐摩耗性を有し、また屈曲性、耐熱性が高い動力伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。自動車用部品に用いられるゴム製品のなかに動力伝動ベルトがあり、例えば自動車のエアーコンプレッサーやオルタネータ等の補機駆動の動力伝動に広く利用されている。
【0003】
近年、静粛化について厳しい要求があり、特に駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策について要請がある。駆動装置における異音としては、回転変動の大きな条件や高負荷条件において発生するスリップ音や、圧縮ゴムが粘着摩耗を起こし、その結果リブ間の溝底に付着した粘着ゴムにより発生する騒音が指摘されている。
【0004】
これらの問題に対して、圧縮ゴムに綿、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド繊維などの短繊維群をベルト幅への配向性を保って埋設することにより、ベルトの摩擦伝動部の耐側圧性を高め、更に埋設した短繊維の一部をベルト側面より意図的に突出させることによって、リブ部の摩擦性能および粘着による発音の抑止効果を狙うことが一般になされている。また、上記ベルトの効果をさらに向上させるために、摩擦伝動部の両側壁面に突出させる短繊維としてアラミド繊維を用いることで、アラミド繊維特有の耐摩耗性によるベルト自体の耐久性の向上を意図した伝動ベルトも提案されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開平1−164839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、短繊維を配合した場合、ベルトの耐熱屈曲性が悪くなり、ベルト性能が低下することが問題視されている。また短繊維をベルト長手方向に対して直角に配向させるという工程が必要になるため、ベルトがコスト高になるといった問題もあった。
【0006】
上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、本発明を提案するものであり、その目的とするところは、製造工程が簡便で、耐摩耗性、静音性が高く、優れた耐熱屈曲性を兼ね備えた動力伝動ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも動力伝動面をゴム100重量部に対して植物性軟質粒を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成したことを特徴とする動力伝動ベルトである。
【0008】
本発明はまた前記動力伝動ベルトにあって、植物性軟質粒が、クルミ殻、杏核、桃核及びとうもろこし穂芯から選ばれてなる少なくとも1種の植物の粉砕物である;ゴム組成物に固体潤滑材が配合されてなる;動力伝動ベルトが、伸張部とベルト周方向に延びる複数のリブを有する圧縮部を有し、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである;圧縮部が内層と表層からなる二層構成であって、表層が該ゴム組成物で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、少なくとも摩擦伝動面を特定組成のゴム組成物で構成することで、静音性、耐摩耗性を向上させると共に、耐熱屈曲性に優れた動力伝動ベルトが得られる。尚、植物軟質粒は短繊維のようにベルト幅方向に配向させる必要がないため、製造工程が簡便になり、コストを抑えることができる。また該植物性軟質粒を、クルミ殻、杏核、桃核及びとうもろこし穂芯から選ばれてなる少なくとも1種の植物の粉砕物とすることで、より耐磨耗性、耐発音性に優れるといった特徴がある。更に固体潤滑剤を併用することで、静音性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明に係る動力伝動ベルトの一実施例としてVリブドベルトの断面斜視図を示す。Vリブドベルト1は、カバー帆布5からなる伸張部と、コードよりなる心線3を埋設した接着層4、その下側に圧縮部6を配置した構成からなっている。該圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有している。このリブが動力伝動部、リブ側面9が動力伝動面となり、植物性軟質粒8がリブ表面から突出した構成となっている。
【0011】
本発明では、少なくとも動力伝動面、即ち前記リブの少なくともリブ側面9が、ゴム100重量部に対して植物性軟質粒8を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成されることを必須条件としているが、図1では圧縮部6全体を該ゴム組成物で構成している。
【0012】
植物性軟質粒とは、耐久性と弾力性に富んだ植物由来の粒状体であって、例えば植物を粉砕処理することにより得ることができる。具体的には、クルミ殻、杏核、桃核及びとうもろこし穂芯から選ばれてなる少なくとも1種の植物の粉砕物を用いることが望ましく、その粒径としては、好ましくは50〜500μm、更に好ましくは100〜300μmのものが用いられる。粒径が50μm未満の場合はリブ表面への突出が少なく、耐発音性への効果に乏しい。一方、500μmを超えると表面への突出が多くなり、プーリとの摩擦によって剥ぎ取られるため、耐摩耗性が低下する恐れがある。尚、所望の粒径分布の上限の目を有する篩と下限の目を有する篩を用いて篩い分けることで、所望の粒径分布の植物性軟質粒を得ることができる。また硬度は1.0〜5.0(Mou’s)のものが望ましい。1.0未満であれば耐摩耗性に劣り、5.0を超えると早期クラックの原因となる恐れがある。
【0013】
その配合量は、ゴム100重量部に対して5〜50重量部である。5重量部未満では耐発音性に対して効果がなく、50重量部を超えるとゴムへの分散性に難があり、耐摩耗性やベルト耐久寿命が低下するなどの不具合がある。
【0014】
動力伝動面を構成するゴム組成物のうち、原料ゴムは、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー、エチレン−α−オレフィンゴム等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。なかでもエチレン・α−オレフィンゴムが、優れた耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有しているとともに比較的に安価で、脱ハロゲンという要求を満たすことから好ましく用いられる。
【0015】
エチレン・α−オレフィンゴムとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなど)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。EPDMは耐熱性や耐寒性に優れるという特性を有しており、耐熱・耐寒性能の高い動力伝動ベルトを得ることができる。このEPDMはヨウ素価が3〜40のものが好ましく用いられる。ヨウ素価が3未満であると、ゴム組成物の加硫が十分でなく摩耗や粘着の問題が発生し、またヨウ素価が40を超えると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなり、耐熱性が悪くなるものである。
【0016】
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1.1−t−ブチルペロキシ−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルペロキシジ−イソプロピル)ベンゼン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、ゴム100重量部に対して1〜8重量部の範囲で好ましく使用される。
【0017】
また加硫促進剤を配合しても良い。加硫促進剤としてはチアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系の加硫促進剤が例示でき、チアゾール系加硫促進剤としては、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等があり、チウラム系加硫促進剤としては、具体的にテトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等があり、またスルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等がある。また、他の加硫促進剤としては、ビスマレイミド、エチレンチオウレアなども使用できる。これら加硫促進剤は単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0018】
また、架橋助剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。架橋助剤として挙げられるものとしては、TIAC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常、有機過酸化物架橋に用いるものであるが、なかでもN−N’−m−フェニレンビスマレイミドが好ましい。その配合量はゴム成分100重量部に対して、0.5〜10重量部が望ましく、0.5質量部未満では添加による効果が顕著でなく、10質量部を超えると引裂き力や接着力が低下するといった不具合がある。
【0019】
更に、上記ゴム組成物に固体潤滑剤を配合することによって、耐発音性を向上せしめることができる。固体潤滑材としては、グラファイト、二硫化モリブデン、雲母、タルク、三酸化アンチモン、2セレン化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを単独もしくは併用して用いることができる。好ましくはグラファイト、二硫化モリブデン、そしてPTFEから少なくとも1種選ばれたものである。固体潤滑剤の添加量はゴム100重量部に対して10〜100重量部、更に好ましくは10〜60重量部であり、10重量部未満の場合にはベルト表面の摩擦係数がさほど変化しないため発音抑制効果が顕著でなく、他方100重量部を越えると、ゴム物性の伸びが小さくなり、ベルト寿命が短くなる。
【0020】
そして、上記植物性軟質粒以外に必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものを用いることができる。
【0021】
接着層4は、圧縮部6と同様のゴム組成物を用いることもできるが、別のゴム組成物で構成してもよい。上述の如き原料ゴム、配合剤を用いることができるが、接着性を考慮すると植物性軟質粒は混入しないほうが好ましい。
【0022】
心線3は、ポリエステル繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などを材料とする撚コードが使用できる。ガラス繊維の組成は、Eガラス、Sガラス(高強度ガラス)のいずれでもよく、フィラメントの太さ及びフィラメントの集束本数及びストランド本数に制限されない。
【0023】
前記心線3は接着処理を施されることが望ましく、例えば(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200℃に温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260℃に温度設定した延伸熱固定処理器に30〜600秒間通し−1〜3%延伸して延伸処理コードとする、ことができる。
【0024】
この前処理液で使用するイソシアネート化合物としては、例えば4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0025】
また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
【0026】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール.ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン.ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0027】
RFL処理液はレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物をゴムラテックスと混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は1:2〜2:1にすることが接着力を高める上で好適である。モル比が1/2未満では、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の三次元化反応が進み過ぎてゲル化し、一方2/1を超えると、逆にレゾルシンとホルムアルデヒドの反応があまり進まないため、接着力が低下する。またゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどがあげられる。
【0028】
尚、レゾルシン−ホルムアルデヒドの初期縮合物と上記ゴムラテックスの固形分質量比は1:2〜1:8が好ましく、この範囲を維持すれば接着力を高める上で好適である。上記の比が1/2未満の場合には、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が多くなり、RFL皮膜が固くなり動的な接着が悪くなり、他方1/8を超えると、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が少なくなるため、RFL皮膜が柔らかくなり、接着力が低下する。
【0029】
更に、上記RFL液には加硫促進剤や加硫剤を添加してもよく、添加する加硫促進剤は、含硫黄加硫促進剤であり、具体的には2−メルカプトベンゾチアゾール(M)やその塩類(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩等)ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム類、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)ジエチルジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)等のジチオカルバミン酸塩類等がある。
【0030】
また、加硫剤としては、硫黄、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛)、過酸化物等があり、上記加硫促進剤と併用する。
【0031】
上記心線3を用いたVリブドベルト1は、Vリブドベルトを2%伸張させるのに必要な引張力が100〜250N/リブ、更に好ましくは130〜210N/リブとすることが好ましく、このような引張力であると、たとえリブゴム磨耗等によりベルト伸びが発生した場合でも、急激な張力低下を引き起こすことなく、安定した張力が維持できる。250N/リブを超えるとベルト伸び時に急激な張力低下が見られ、100N/リブ未満であると心線伸びによるベルト張力低下が大きくなる。
【0032】
またベルトに147N/5本コードの初荷重をかけ、100℃雰囲気下30分放置した後に発生したベルト乾熱時収縮力が50〜150N/5本コードである特性を付与すると、ベルト伸びが発生しても張力を自己調整可能であり、オートテンショナーを設置しなくともベルトスリップ率が小さくてベルト寿命が長いものを得ることができる。ベルト乾熱時収縮力が50N未満の場合には、ベルト張力を調整する性能に乏しく、スリップ率が高くなる傾向がある。また、ベルト乾熱時収縮力が150Nを越える場合には、ベルト長さの経時収縮が大きくなる傾向がある上に、スリップ率が小さくなる効果は小さい。
【0033】
カバー帆布5は、織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織、綾織、朱子織等することにより製織される。
【0034】
上記カバー帆布5は、公知技術に従ってRFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムをカバー帆布5に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
【0035】
以上のように、図1では圧縮部6全体を該ゴム組成物で構成した一実施形態を示したが、本発明では、動力伝動ベルト本体の少なくとも動力伝動面(Vリブドベルトではリブ側面9)を上述の如きゴム組成物で構成することを必須条件としてあげており、いうまでもなくベルト本体を構成するゴム組成物全てを該ゴム組成物で構成することもできる。また以下のような構成も可能である。
【0036】
本発明に係る動力伝動ベルトの他の一実施例を図2に示す。Vリブドベルト10は、カバー帆布15からなる伸張部と、コードよりなる心線13を埋設した接着層14、その下側に圧縮部16を配置した構成からなっている。この圧縮部16はベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブを有しており、リブが動力伝動部、リブ側面9が動力伝動面となる。そしてリブは内層12と表層17の2層構成を有しており、表層17がゴム100重量部に対して植物性軟質粒8を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成されている。該ゴム組成物としては上述と同様のものが使用できる。
【0037】
内層12は、表層17と同様のゴム組成物を用いることもできるが、別のゴム組成物で構成してもよい。例えば上述の如き原料ゴム、配合剤を用いることができるが、コストや接着性を考慮すると植物性軟質粒は混入しないほうが好ましい。また表層17は0.1〜0.5mmの厚みを有することが望ましい。0.1mm未満では摩耗により表層の効果が薄れてしまうといった不具合がある。また、心線13、接着層14、カバー帆布15などは上述と同様のものが使用できる。
【0038】
尚、Vリブドベルトは、図1や図2のような構成に限定されず、例えば接着層を配置しないVリブドベルトや、背面にカバー帆布を貼着せずゴムを露出させたVリブドベルトなども本発明の技術範囲に属する。以下、これらの実施形態を説明する。またVリブドベルト以外の動力伝動ベルトとしては例えばVベルトなどある。
【0039】
図3に示すVリブドベルト21は、背面が短繊維を含有するゴム組成物で形成された伸張部25と、該伸張部25の下層に圧縮部26を配置した構成を有する。心線23は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張部25に接し、残部が圧縮部26に接した状態となっている。そして、前記圧縮部25にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられており、このリブが動力伝動部、リブ側面29が動力伝動面となる。該リブは内層22と表層27の2層構成を有し、表層がゴム100重量部に対して植物性軟質粒28を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成される。
【0040】
図4に示すVリブドベルト31は、背面が短繊維を含有するゴム組成物で形成された伸張部35と、該伸張部35の下層に接着層34が配設され、更にその下層に圧縮部36を配置した構成を有する。心線33は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張部35に接し、残部が接着層34に接した状態となっている。そして前記圧縮部36はベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブが設けられており、このリブが動力伝動部、リブ側面39が動力伝動面となる。該リブはゴム100重量部に対して植物性軟質粒38を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成される。
【0041】
図3,4では、伸張部をカバー帆布で構成せず、短繊維を含有するゴム組成物で形成した構成を示したが、この際、背面駆動時の異音を抑制すべく、背表面に凹凸パターンを設けることができる。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどを挙げることができるが、最も好ましくは織物パターンである。また短繊維としては、ポリエステル、アラミド、ナイロン、綿などを所望に応じて配合することができ、好ましくはベルト幅方向に配向させることが望ましい。圧縮部や接着層を構成するゴム組成物、心線などは上述と同様のものが使用できる。
【0042】
尚、図3のように接着層を配置しない構成の場合、心線23は伸張部25と圧縮部26の境界領域でベルト本体に埋設されることになる。この時、心線23とベルト本体との接着性を考慮すると、圧縮部の内層27は植物性軟質粒を含有しないゴム組成物で構成することが望ましく、また内層22と表層27の構成については上述と同様の構成とすることができる。
【0043】
次に、Vリブドベルトの製造方法を説明する。製造方法としては限定されるものではないが例えば以下のような方法がある。
【0044】
第1の方法としては、まず、円筒状の成形ドラムの周面に伸張部を構成する部材と接着層を構成する接着ゴムシートとを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮部(動力伝動部)を構成する圧縮ゴムシートを順次巻き付けて未加硫スリーブを形成した後、加硫して加硫スリーブを得る。次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の該加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮部表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨して摩擦伝動面を形成する。このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0045】
第2の方法としては、周面にリブ刻印を設けた円筒状の成形ドラムに、圧縮部を構成する圧縮ゴムシート、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き付けた後、心線をスピニングし、伸張部を構成する部材を巻き付けて未加硫スリーブを配置する。その後、該未加硫スリーブを成形ドラムに押圧しながら加硫することで、圧縮部にリブを型付けする。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0046】
第3の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に伸張部を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き、その上に心線をスピニングした後、さらに圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを順次無端状に捲き付けて未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して加硫成形する。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0047】
第4の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に圧縮部を構成する圧縮ゴムシートを配置した第1未加硫スリーブを形成した後、可撓性ジャケットを膨張させて、該第1未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して、リブ部を有する予備成型体を作製する。そして、前記予備成型体を密着させた外型から、内型を離間させ、次いで、内型に伸張部を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを配置し、心線をスピニングして第2未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、前記予備成型体を密着させた外型に、該第2未加硫スリーブを内周側から押圧して予備成型体と一体的に加硫する。得られた加硫ベルトスリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0048】
尚、図2や図3のようにVリブドベルトの圧縮部を表層と内層の2層からなる構成とする場合、表層と内層の2層構成を有する圧縮ゴムシートを巻き付ける、もしくは表層用圧縮ゴムシートと内層用圧縮ゴムシートを順次巻き付けるなどにより、表層と内層の2層構成を有する圧縮部を配置した未加硫スリーブを形成する必要がある。このとき、第1の方法では研磨によりリブを形成するため、得られたVリブドベルトのリブ山には表層が存在するがリブ側面やリブ底には内層が露出することが考えられる。そのため、図2のようなVリブドベルトは、第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することが望ましい。また図3のような接着層を配置しないVリブドベルトは、上記方法において接着ゴムシートを配置せずに製造することで得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体的な実施例を伴って説明する。
【0050】
実施例1〜4及び比較例1〜4では、表1に示す配合に従いゴム組成物を調整し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールにて圧延し、圧縮ゴムシートを作製した。また、実施例5,6については、表1に従い調整したゴム組成物を表層、比較例4に従い調整したゴム組成物を内層として積層した圧縮ゴムシートを作製した。
【0051】
次に、該圧縮ゴムシートを用いてVリブドベルトを作製した。Vリブドベルトの構成としては、ポリエステル繊維のロープからなる心線を接着層内に埋設し、その上側に伸張部としてゴム付綿帆布を2プライ積層し、他方接着層の下側に設けた圧縮部に3個のリブをベルト長手方向に配したものである。実施例5,6については、表層の厚みが0.25mmとなるよう構成されてなる。
【0052】
【表1】

【0053】
ベルトの製造方法としては、まず周面にリブ刻印を設けた円筒状の成形ドラムに、圧縮ゴムシート、接着ゴムシート(表1のゴム配合から植物性軟質粒、固体潤滑剤、短繊維を除いたゴム配合)を巻き付け、ポリエステルロープをスピニングし、2プライのゴム付綿帆布を巻き付けて未加硫スリーブを配置した後、該未加硫シートの上に加硫用ジャケットを挿入する。次いで、成形モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状のリブ付き加硫スリーブを成形ドラムから脱型し、所定幅に切断してVリブドベルトを得た。
【0054】
但し、比較例1は、フラットな円筒モールドに2プライのゴム付綿帆布を巻いた後、接着ゴムシート(表1のゴム配合から植物性軟質粒、固体潤滑剤、短繊維を除いたゴム配合)を巻き付けてポリエステルロープをスピニングする。そして圧縮ゴムシートを配置した後、該圧縮ゴムシートの上に加硫用ジャケットを挿入した。次いで、円筒モールドを加硫缶内に入れ、加硫した後、筒状の加硫スリーブをモールドから取り出した。該スリーブの圧縮部をグラインダーによってリブに成形し、成形体から個々のベルトに切断した。
【0055】
このようにして得られた各Vリブドベルトの耐熱屈曲性試験、6%スリップ磨耗試験、並びにミスアライメント発音試験の結果を表2に示す。
【0056】
耐熱屈曲性試験の評価に用いた走行試験機は、駆動プーリ(直径60mm)、アイドラープーリ(直径50mm)、従動プーリ(直径50mm)、テンションプーリ(直径50mm)、そしてアイドラープーリ(直径50mm)とを順に配置したものである。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、ベルトのアイドラープーリへの巻き付け角度を90°にし、雰囲気温度130℃、駆動プーリの回転数が3300rpm、ベルト張力が800N/リブになるように駆動プーリに荷重を付与し、500時間走行させた後、心線に達する亀裂の発生の有無を調べた。
【0057】
6%スリップ磨耗試験では、駆動プーリ(直径80mm)、従動プーリ(直径80mm)、そしてテンションプーリ(直径120mm)を配置したものである。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、ベルトのテンションプーリへの巻き付け角度を90°とし、室温条件下で、駆動プーリの回転数を3300rpm、従動プーリのトルクを0.7kg・m、ベルトスリップ率が6%となるようベルト張力を自動調整しながら24時間走行させた。そして走行試験前後のベルト重量を測定し、ベルト重量減量(走行前ベルト重量−走行後ベルト重量)を走行前ベルト重量で除したものを、摩耗率として算出した。
【0058】
ミスアライメント発音試験では、駆動プーリ(直径125mm)、従動プーリ(直径125mm)、そしてテンションプーリ(直径60mm)を配置したものである。尚、駆動プーリと従動プーリの軸離を212mmとし、1.8°のミスアライメントを設定した。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、室温条件下で、駆動プーリの回転数が1000rpm、ベルト張力が6kgf/リブになるように駆動プーリに荷重を付与し、走行させた時の発音レベルを評価した。発音レベルとしては5段階で評価し、“5”が最も発音レベルが低く、全く音が聞こえない状態を示す。尚、“3”以上を発音が気にならないレベルとして定義した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の結果より、実施例では、耐熱屈曲性、耐摩耗性及び耐発音性において優れた結果が得られた。短繊維を配合した比較例1は、耐摩耗性、耐発音性は高いものの、耐熱屈曲性に劣ることが確認された。また短繊維を配向させる工程が必要だったためコスト高になった。そして植物性軟質粒を少量配合した比較例2では、耐摩耗性は満足するものの、耐発音性に劣ることが知見された。一方、植物性軟質粒を多量に配合した比較例3は、磨耗率が1.5%と高く、耐摩耗性が極端に低下していることが判明した。更に、植物性軟質粒、短繊維を共に配合しなかった比較例4では、耐摩耗性、耐発音性に共に実使用不可能なレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明にかかるVリブドベルトは自動車用あるいは一般産業用の駆動装置などに装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態であるVリブドベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるVリブドベルトの断面斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態であるVリブドベルトの断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態であるVリブドベルトの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 Vリブドベルト(動力伝動ベルト)
3 心線
4 接着層
5 カバー帆布
6 圧縮部(摩擦伝動部)
8 植物性軟質粒
9 リブ側面(摩擦伝動面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも動力伝動面をゴム100重量部に対して植物性軟質粒を5〜50重量部配合したゴム組成物で構成したことを特徴とする動力伝動ベルト。
【請求項2】
植物性軟質粒が、クルミ殻、杏核、桃核及びとうもろこし穂芯から選ばれてなる少なくとも1種の植物の粉砕物である請求項1記載の動力伝動ベルト。
【請求項3】
ゴム組成物に固体潤滑材が配合されてなる請求項1又は2記載の動力伝動ベルト。
【請求項4】
動力伝動ベルトが、伸張部とベルト周方向に延びる複数のリブを有する圧縮部を有し、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項1〜3のいずれか1項に記載の動力伝動ベルト。
【請求項5】
圧縮部が内層と表層からなる二層構成であって、表層が該ゴム組成物で構成される請求項4記載の動力伝動ベルト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−77785(P2006−77785A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259099(P2004−259099)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)