説明

動力伝動用ベルト

【課題】ベルトの耐側圧性を向上させることができるとともにコグ部側面の摩擦係数を低減してベルト走行中の発熱や摩耗を防止し、しかも、重量の増加を小さなものに抑えることができる動力伝動用Vベルトの提供を目的とする。
【解決手段】心線3を埋設した接着ゴム層2に隣接して圧縮ゴム層6と伸張ゴム層5を配してなるベルトであり、少なくとも圧縮ゴム層6がコグ山部8とコグ谷部7を交互に配したコグ部を有している動力伝動用ベルト1において、コグ部Cを構成するゴム中に補強部材9を埋設配置してベルトの耐側圧性を向上させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝動用ベルトに係り、スノーモービル、スクーター及び一般産業用のベルトで主に高負荷の変速ベルトとして使用される動力伝動用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクーター、バギー、雪上車(スノーモービル)または一般産業用の機械分野の駆動系においては、駆動プーリと従動プーリに動力伝動用ベルトを懸架し、プーリの有効径を変化させて変速させるベルト式変速装置が用いられている。ここで使用されている動力伝動用ベルトは圧縮ゴム層と伸張ゴム層の両層もしくは圧縮ゴム層のゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を接着ゴム層内に埋設した構成からなり、ローエッジダブルコグドベルトあるいはローエッジシングルコグドベルトなどのローエッジコグドベルトとして知られている。
【0003】
これらのベルトは、ゴムを主要な素材としており、伸張ゴム層や圧縮ゴム層にコグを設けていることもあって屈曲性はおおむね良好であるが、反面、図5に示すようにベルト走行中にプーリPから大きな側圧を受けるために、ベルトB全体が横方向に湾曲変形して断面形状で皿のように形状になってプーリ溝の下方向に落ち込むディッシングと呼ばれる現象を起こすことがある。
【0004】
ディッシングが発生するとベルトがスリップして伝達力の低下、ベルトを構成する心線等の部材が剥離することで早期破損の原因になるといった問題を生じていた。よって、ベルトが変形しないように短繊維、帆布、スダレ等の繊維材料をベルトのコグ部に横方向に配向して埋設することが行われていた。
【0005】
しかし、近年では高トルク用のベルトに対する要求が大きく、その需要が増大する傾向にあるが、前記のような短繊維や帆布、又はスダレといった繊維を埋設して補強したゴムでは、自動二輪車や大型農機に用いる高トルク用ベルトとしては十分な耐久性を持っているとはいえない。
【0006】
このようなコグドVベルトを補強することについては次のような先行特許があり、例えば特許文献1には、メッキ又は樹脂層で被覆した焼結金属や多孔性セラミックス焼結体のような多孔焼結構造体をベルトのコグ部においてベルト幅方向に挿入してなるベルトが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、複数層の弾性バネ板を、各バネ板間にゴム層を介した状態の積層体にして、それを、ベルト幅方向を補強するような向きにしてコグ部内に挿入埋設することによって、プーリからの側圧に耐えうるようにした動力伝動用Vベルトが開示されている。
【0008】
更に、特許文献3には、やはりCVT等に用いられるベルトのコグを横切って横補強部材を配置したベルトが開示されている。横補強部材はポリエーテルエーテルケトン等のプラスチックや非金属物質からなっており、コグ側面の摩耗を抑えるとともに発熱も低減するものである。
【0009】
【特許文献1】実公昭61−32188号公報
【特許文献2】実公昭62−6349号公報
【特許文献3】特表2004−507672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたベルトでは、コグ中に金属やセラミックスの焼結体をベルト幅方向に埋設することで、ベルトの耐側圧性を高めて変形を抑え、ベルトの伝動効率の低下や早期に寿命に到るのを軽減するよう狙ったものであるが、金属の焼結体やセラミックスでは、プーリとの間の摩擦によって発熱を起こして焼き付きを生じることから、潤滑剤を含浸させなければならない。
【0011】
また特許文献2に記載のベルトでは、コグ部に複数層の弾性バネ板を、ゴム層を介在させて埋設したものであり、やはりベルトのコグ部における耐側圧性を高める目的のものであるとともに、ベルト幅方向の弾性を持たせて走行中の耐衝撃性を高めたものであるが、ベルト側面の摩擦係数の調整を行うことはできないことと、複数のバネ板にゴム層を介在させるなど、コストと手数がかかってしまう。
【0012】
特許文献3には、CVTベルトにおいてコグ部に、非金属または熱可塑性物質、熱硬化性物質等からなる横補強部材を設けてなることを特徴としてものであり、横補強部材を設けることによって、耐側圧性を補強するとともにベルト側面の滑りを制御して、騒音や摩耗、発熱をコントロールすることができるが、コグ部のかなりの部分を占める体積を有しており、重量の増加が避けられないことと、補強部材周囲のゴム層の厚みが薄くなってしまうことから、耐久性にも問題があると考えられる。
【0013】
そこで、本発明では、ベルトの耐側圧性を向上させることができるとともにコグ部側面の摩擦係数を低減してベルト走行中の発熱や摩耗を防止し、しかも、重量の増加を小さなものに抑えることができる動力伝動用Vベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成すべく請求項1では、心線を埋設した接着ゴム層に隣接して圧縮ゴム層と伸張ゴム層を配し、少なくとも圧縮ゴム層がコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有している動力伝動用ベルトにおいて、前記コグ部をベルト幅方向に貫通するとともに側面がベルト側面と面一となる補強部材を配置しており、該補強部材の両端は樹脂素材からなっていることを特徴とする。
【0015】
請求項2では、前記補強部材は、中央の支柱部と該支柱部よりも大径な両端のプーリ当接部とからなっている請求項1記載の動力伝動用ベルトとしている。
【0016】
請求項3では、支柱部は金属からなっており、プーリ当接部は樹脂からなっている請求項1〜2のいずれかに記載の動力伝動用ベルトとしている。
【0017】
請求項4では、前記補強部材は、中央で分割できるようになっており、ベルトのコグ部に設けた貫通孔に左右両側から差し込み中央で連結するようになっている請求項1〜3のいずれかに記載の動力伝動用ベルトとしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1における動力伝動用ベルトでは、コグ部に貫通孔を設けて両端が樹脂素材からなる補強部材を配置しており、コグ部の耐側圧性を補強することができるので、ベルト走行時のプーリ中におけるディッシング現象といったベルトがプーリ溝に落ち込み変形する問題を防止することができ、ベルトの伝達効率の低下を抑えることができる。
【0019】
また、請求項2では、補強部材が、中央の支柱部と該支柱部よりも大径な両端のプーリ当接部からなっており、支柱部によって耐側圧性を確保するとともに、両端のプーリ当接部でベルトのコグ部側面の滑りをよくすることができ、ベルト走行時の発熱や摩耗を低減することができるものである。また、プーリ当接部のみを大径としていることから補強部材全体では軽量化を図ることができるので、ベルトの重量増による遠心力の増大や、それによるベルトの故障の発生を延ばすことができる。
【0020】
請求項3では、支柱部を金属製としていることから、強度は大きくプーリから側圧に十分に耐えうることができ、プーリ当接部を樹脂製としていることから、摩擦係数も小さく摺動性にも優れており、摩耗や発熱を低減させることができる。
【0021】
請求項4では、補強部材として分割可能なものを用い、コグ部に設けた貫通孔に後から挿入して連結できるようになっており、補強部材の組み付けもより簡単なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。図1は本発明に係る動力伝動用ベルトの部分正面図、図2は図1に示す動力伝動用ベルトの断面図、そして図3は製造過程における動力伝動用ベルトの断面図、図4は本発明に係る他の動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【0023】
本発明の動力伝動用ベルト1は、接着ゴム層2内に繊維コードからなる心線3が埋め込まれ、接着ゴム層2の上部には背面にゴムが露出した状態の伸張ゴム層5を有しており、また下部にはカバー帆布4を積層した圧縮ゴム層6がある。圧縮ゴム層6には、それぞれ一定ピッチでベルト長手方向に沿ってコグ谷部7とコグ山部8とを交互に配したコグ部Cが設けられている。伸張ゴム層5の上表面にもカバー帆布が積層されていてもよい。
【0024】
本発明の動力伝動用ベルト1は主に変速ベルトの用途に用いられるものであり、エンジンの出力が上がると大きなトルクを伝達する必要があり、プーリからの側圧も大きなものになる。動力の伝達をスムーズに行うためには、大きな側圧に耐えてベルトの形状を保持し続けなければならない。また、大きく変形することがなければ、走行中のベルトの振動も少なくすることができ、騒音の発生や摩耗も少なくすることができる。
【0025】
ベルトを構成するゴムを高弾性化することによって、耐側圧性を上げることができベルトの形状を保持することができるが、ベルトの屈曲性は損なわれることになり、小径のプーリに巻きかかりにくくなって、動力伝達効率が低下したり、繰り返し屈曲によってベルトに亀裂が発生したりするような問題もおきてくる。
【0026】
そのために本発明のベルトでは、コグ部Cにおいてベルト幅方向に貫通する補強部材9を貫通配置している。補強部材9は、中央の支柱部9aと該支柱部9aよりも大径な両端のプーリ当接部9bとからなっている。支柱部はベルトがプーリ中に侵入したときにプーリから受ける側圧を受け持つ部分であり、素材としてはステンレスやアルミニウム合金等の金属からなることが好ましいが、熱硬化樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂素材でも構わない。樹脂には強度を上げるために繊維で補強したものも使用可能である。
【0027】
プーリ当接部9bは、ベルト側面と面一になってプーリと接触する部分であり、プーリとの間で擦れ合っても摩耗が発生しにくいように比較的低摩擦係数のものが好ましい。素材としては樹脂を挙げることができ、熱硬化性樹脂であればフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂等を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド4・6、ポリアミド9・T、ポリアミドポリエーテルエーテルケトンなど、摩擦係数が低くして摩耗しにくい樹脂を挙げることができる。
【0028】
支柱部9aとプーリ当接部9bとでは、支柱部9aの径dはより小径であり、プーリ当接部9bの径Dはより大径となっている。支柱部9aの径dは小径であっても耐側圧性を十分に持たせるために金属等の強度の高い材質を用いており、そうすることによってベルトの重量の増加を抑えることができる。ベルト重量が大きくなりすぎると走行時の遠心力が大きくなって、心線やゴムなどのベルトを構成する各材料へかかる負担が大きくなるので結果的に寿命を短くしてしまうことになる。
【0029】
また、プーリ当接部9bの径Dは大径としており、コグ部Cにおけるベルト側面のかなりの部分を占めることができるので、プーリとの接触による発熱やベルト側面の摩耗を広く低減することができて、ベルトの寿命をより永いものとすることができる。
【0030】
本発明のような構造のベルトを製造する方法としては、未加硫ゴムからのベルト形状の成形時にコグ部に支柱部9aと略同径の棒を埋め込んでおき、加硫して硬化させた後に棒を抜き去ることによって、図3のようにコグ部に貫通孔を形成することができる。そして、その貫通孔に分割式の補強部材を両側から差し込んで貫通構内で連結することで、コグ部に補強部材を配置したベルトを製造することができる。
【0031】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でもエチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を撚り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くでき、ベルト寿命を延長させるために好ましい。このコードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニールが4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなり過ぎ、また8,000を越えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が悪くなる。
【0032】
エチレン−2,6−ナフタレートは、通常ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下で適当な条件のもとにエチレングリコールと縮重合させることによって合成させる。このとき、エチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体ポリエステルが合成される。
【0033】
接着処理されたコードは、スピニングピッチ、即ち心線の巻き付けピッチを1.0〜1.3mmにすることで、モジュラスの高いベルトに仕上げることができる。1.0mm未満になると、コードが隣接するコードに乗り上げて巻き付けができず、一方1.3mmを越えると、ベルトのモジュラスが徐々に低くなる。
【0034】
図4に示す動力伝動用ベルト1は、伸張ゴム層5においてもコグ山部9とコグ谷部8を交互に配した上側にもコグ部Cを有したダブルコグドVベルトの例であり、このようなベルトにおいて、ベルトの下側のコグ部Cのみでなく、上側のコグ部Cにも同様に補強部材を設けることは可能である。
【0035】
上記圧縮ゴム層6および伸張ゴム層5になるゴム組成物は、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルファン化ポリエチレン(ACSM)、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用され、これに通常用いられるカーボンブラック、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、粘着剤、加硫促進剤、短繊維等と共に使用することができる。
【0036】
カバー帆布4については必ずしも設ける必要はない。カバー帆布の配置を省略するとベルトの屈曲性にはプラスであり、小プーリ径で使用した場合でもベルトがよく屈曲してベルト表面から亀裂を発生したり、プーリとの間でスリップを発生したりするのを改善することができる。しかし、一般的に補強帆布を配置していないベルトが変形しやすく、ベルトの縦方向のみならず横方向に曲がってしまったりねじれが生じたりし、形状保持性が高いとはいえなかった。よって、ベルト走行時に変形の発生によるベルトの振動を発生してしまうといった問題があった。本発明では、圧縮ゴム中に繊維強化樹脂からなる補強層を埋設配置していることから、ベルトの耐側圧性を向上させるとともに捩れ等の変形に対しても補強する効果があり、屈曲性の低下を極力少なくした上でベルトの形状保持性を向上させることができる。
【0037】
以下、更に具体的な実験例により本発明の効果を確認する。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
実施例1として伸張ゴム層および圧縮ゴム層ともにコグ部を有すると共に圧縮ゴム層には、コグ部に貫通孔を設けて補強部材を挿入配置したベルトを用いた。補強部材としてはステンレス製の支柱部の両端にポリアミド4・6樹脂からなるプーリ当接部を取り付けたものを使用している。なお、支柱部の径は2.8mmとし、プーリ当接部のベルト側面位置での径は5.0mmとした。
【0039】
心線として1,500デニールのアラミド繊維(商品名:トワロン)を上撚り数19.7回/10cm、下撚り数15.8回/10cmで上下逆方向に撚糸して2×3の撚り構成とし、トータルデニール9,000の未処理コードを準備した。次いで、この未処理コードをイソシアネート系接着剤でプレディプした後、約170〜180°Cで乾燥し,RFL液に浸漬した後、200〜240°Cで延伸熱固定処理を行ない処理コードにした。
【0040】
補強帆布として、アラミド繊維(商品名:トワロン)とポリエチレンテレフタレート繊維を重量比で50:50の混撚糸を使用したワイドアングルの平織帆布を用いた。これらの帆布をRFL液に浸漬した後、150°Cで2分間熱処理して処理帆布とした。その後、これらの処理帆布にゴム組成物をフリクション・コーチングして、ゴム付帆布とした。
【0041】
圧縮ゴム層と伸張ゴム層はアラミドの短繊維を含んだクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用い、また接着ゴム層は短繊維を含まないクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用いた。
【0042】
コグパッドとして、1枚の補強布、所定厚みの圧縮ゴム層用シート(1層目)、1枚のスダレ、所定厚みの圧縮ゴム層用シート(2層目)との積層物を、歯部と溝部を交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75°Cで加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッドに形成した。その時にコグ部に貫通孔を形成するための棒を予め埋め込んでおいた。上記コグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断した。
【0043】
これらの材料を用意した後、モールドに装着した内母型にコグパッドを巻き付けてジョイントし、更に所定厚みの圧縮ゴム層用シートと接着ゴム用シートと予め積層したシートを他の位置でジョイントした後、心線、平坦な伸張ゴム層を順次巻き付けて成形体を作製した。続いて、モールドを支持台の所定位置に設置した後、円周方向に沿って所定の間隔で設けた凹状部を有する加硫ゴム製の円筒状母型を挿入した。その後、ジャケットを被せてモールドを加硫缶に設置し、加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターによってV状に切断してコグを有する変速ベルト(サイズ:上幅29.8mm、厚さ16.4mm、外周長866mm)に仕上げた。
【0044】
得られたベルトを用いて耐久走行試験を行った。その結果(ベルト寿命とその故障原因)を表1に示す。耐久走行試験では、上記ベルトを直径100mmの駆動プーリと直径100mmの従動プーリからなる恒温槽内に配置された2軸の横型走行試験機に懸架し、ベルトの緩み側において恒温槽内に固定枠を設け、ベルト背面との距離を15mmとしている。また、入力トルクを3.0kgfとし、従動プーリに荷重60kgfをかけ、そして回転数は7,000rpm±500rpmで変動させ、雰囲気温度は90℃であった。
【0045】
(実施例2)
実施例2では、補強部材として支柱部の径、プーリ当接部の径も含めて2.8mmの一定の径としたものを用いた以外は実施例とまったく同様のベルトを作成し、耐久走行試験を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
実施例3では、補強部材として支柱部の径、プーリ当接部の径も含めて5.0mmの一定の径としたものを用いた以外は実施例とまったく同様のベルトを作成し、耐久走行試験を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
比較例1では、コグ部に補強部材を埋設しなかった以外は実施例と全く同じベルトを作成し、同じ条件で耐久走行試験を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
この結果、実施例1は、かなりの長時間を走行したが、異常が発生せず200時間で試験を中断した。コグ部に埋設配置している補強部材によって、ベルトの側面の摩耗も抑えられていることがわかる。
【0050】
それに比べて補強部材を配置しているものの、支柱部からプーリ当接部も含めて小径で一定の径を有する補強部材とした実施例2では、ある程度の走行時間を確保することはできたものの、ベルト側面の摩耗を抑えきれずに摩耗量が大きくなって寿命を迎えている。また、実施例3では、補強部材の径が大きすぎてコグ部のほとんどを占めており、補強部材を覆うゴムの層が薄くなりすぎて、途中で補強部材が脱落してしまい寿命となっている。比較例1では、コグ部に補強部材を埋設しなかった比較例1では、きわめて短時間でベルト側面の摩耗により寿命に達している。
【0051】
これらのことから、コグ部に補強部材を埋設することによって、ベルト側面の耐摩耗性を向上させることができることがわかるとともに、補強部材の径をコグ部に埋まっている中央付近では小径とし、ベルト側面で大径とすることで、コグ部を形成するゴムによる補強部材の保持性脳を低下させることなく、ベルト側面の摩耗を低下させることができ、より寿命の長いベルトとすることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の伝動ベルトは、スノーモービル、スクーター及び一般産業用の変速ベルトに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【図2】図1に示す動力伝動用ベルトの断面図である。
【図3】補強部材を装着する前の動力伝動用ベルトの断面図である。
【図4】本発明に係る他の動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【図5】ベルトがディッシングしている様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 動力伝動用ベルト
2 接着ゴム層
3 心線
4 補強帆布
5 伸張ゴム層
6 圧縮ゴム層
7 コグ谷部
8 コグ山部
9 補強部材
C コグ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線を埋設した接着ゴム層に隣接して圧縮ゴム層と伸張ゴム層を配し、少なくとも圧縮ゴム層がコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有している動力伝動用ベルトにおいて、前記コグ部をベルト幅方向に貫通するとともに側面がベルト側面と面一となる補強部材を配置しており、該補強部材の両端は樹脂素材からなっていることを特徴とする動力伝動用ベルト。
【請求項2】
前記補強部材は、中央の支柱部と該支柱部よりも大径な両端のプーリ当接部とからなっている請求項1記載の動力伝動用ベルト。
【請求項3】
支柱部は金属からなっており、プーリ当接部は樹脂からなっている請求項1〜2のいずれかに記載の動力伝動用ベルト。
【請求項4】
前記補強部材は、中央で分割できるようになっており、ベルトのコグ部に設けた貫通孔に左右両側から差し込み中央で連結するようになっている請求項1〜3のいずれかに記載の動力伝動用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175013(P2010−175013A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19829(P2009−19829)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)