説明

動力回収システム

【課題】動力回収率を安定させることが可能な動力回収システムを提供する。
【解決手段】この動力回収システム1は、シリンダ16の上部16aに冷熱が供給されることで動力を生成するスターリングエンジン10と、液体をシリンダ16の上部16aに接触させた状態で収容し、その液体の冷熱をシリンダ16の上部16aに供給することで当該液体を気化させる気化装置20とを備えている。気化装置20は、液体をシリンダ16の上部16aに接触させた状態で貯留する液体容器21と、この液体容器21を包むように設けられ、液体容器21の周囲に空間部30を形成する外側容器22とを含んでいる。空間部30は、液体容器21と排気口22aとに連通し、液体容器21で気化した気体が当該空間部30を通して液体容器21から排気口22aに至るまでの間に液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過する形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリングエンジンと、液体を気化させるための気化装置とを備えた動力回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スターリングエンジンと気化装置とを備えた動力回収システムがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この動力回収システムは、スターリングエンジンと気化装置とを組み合わせることで構成されており、液体の気化処理に伴って動力を回収しようとするものである。
【0004】
スターリングエンジンは、温熱用熱交換部および冷熱用熱交換部を有しており、温熱用熱交換部に温熱が供給されるとともに冷熱用熱交換部に冷熱が供給されることで動力を生成するように構成されたエンジンである。
【0005】
例えば、スターリングエンジンは、ピストンを収容したシリンダを有しており、そのシリンダの一端部(冷熱用熱交換部)に冷熱が供給されるとともに他端部(温熱用熱交換部)に温熱が供給されることで、ピストンが作動して動力を発生するように構成されている。
【0006】
また、気化装置は、LNG等の低温の液体を収容し、その液体のもつ冷熱(潜熱)を奪う、すなわち液体を温めることで当該液体を気化するものである。
【0007】
具体的に、気化装置の液体貯留部には、スターリングエンジンのシリンダの一端部に接触した状態で液体が貯留されており、当該液体のもつ冷熱(潜熱)がシリンダに供給されることにより、スターリングエンジンで動力が発生し当該動力が回収される。一方、上記動力回収の過程で、気化装置では、冷熱を奪われた液体が気化して気体となり、その気体が回収される。
【0008】
ところで、このような動力回収システムでは、液体貯留部に外部から熱(以下、外熱という)が伝達されると、液体貯留部の液体では、この外熱に奪われた冷熱の分だけ、スターリングエンジンに供給する冷熱の量が少なくなる。これは、動力発生に使用される冷熱の量が少なくなることを意味し、当該システムの動力回収率の低下に繋がるため、液体貯留部への外熱の伝達は好ましくない。
【0009】
これに対しては、ウレタン等の断熱材を液体貯留部の周囲に設けることで液体貯留部に対する断熱を図る方法が考えられる。この方法によれば、液体貯留部に伝達される熱量を減らし、液体の冷熱の損失を防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−22550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記断熱方法では、ある程度の断熱効果は期待できるものの、外熱により断熱材の温度が上昇すると、断熱材による断熱効果が低下する。このため、動力回収率が時間の経過とともに低下するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、動力回収率を安定させることが可能な動力回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の動力回収システムは、温熱用熱交換部および冷熱用熱交換部を有し、温熱用熱交換部に温熱が供給されるとともに冷熱用熱交換部に冷熱が供給されることで動力を生成するスターリングエンジンと、冷熱をもつ液体を前記冷熱用熱交換部に接触させた状態で収容し、その液体の冷熱を前記冷熱用熱交換部に供給することで当該液体を気化させる気化装置とを備えた動力回収システムであって、前記気化装置は、液体を前記冷熱用熱交換部に接触させた状態で貯留する液体貯留部と、この液体貯留部を包むように設けられ、前記液体貯留部の周囲に空間部を形成する外側部材とを含み、前記空間部は、前記液体貯留部とこの液体貯留部から離れた位置にあって液体貯留部で気化した気体を排出する排出部とに連通し、前記液体貯留部で気化した気体が当該空間部を通して前記液体貯留部から前記排出部に至るまでの間に前記液体貯留部と前記外側部材の外壁面との間を通過する形状を有することを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載動力回収システムでは、液体貯留部で気化した低温の気体が空間部を通して排出部に至るまでの間に液体貯留部と外側部材の外壁面との間を通過するので、外側部材の外壁面からの侵入熱が、液体貯留部に到達する前に前記空間部内を流れる上記気体に次々と吸収される。従って、液体貯留部の液体の冷熱が上記侵入熱によって消費されるのが継続して抑えられ、液体貯留部に対する断熱性が維持される。これにより、冷熱用熱交換部に供給される液体の冷熱量が安定し、スターリングエンジンの駆動効率、および、動力回収率が安定する。
【0015】
また、液体貯留部で気化した気体が空間部を通ることによって当該液体貯留部に対する断熱が図られる構成であるので、空間部を通る低温の気体を別途用意する必要がなく、経済的である。
【0016】
なお、冷熱(潜熱)を失って気化した気体の温度は、気化前の液体の温度とほぼ同じである。従って、そのような低温の気体が空間部に送り込まれても、液体貯留部の液体の冷熱が空間部の気体によって消費されることはほとんどなく、これによって断熱性が損なわれることはない。
【0017】
請求項2に記載の動力回収システムは、上記請求項1に記載の動力回収システムにおいて、前記外側部材は、前記液体貯留部と間隔を置いて設けられて液体貯留部との間に第1空間部を形成する内壁面を有し、前記排出部が、前記外側部材に設けられた排気口を含むことを特徴とする。この構成によると、液体貯留部で気化した気体が、当該液体貯留部を囲むように配される第1空間部に自然に流れ込むため、第1空間部への気体の供給が容易になる。また、外側部材の内壁面の設置位置を工夫するだけで、当該第1空間部を簡単に形成することができる。
【0018】
請求項3に記載の動力回収システムは、上記請求項2に記載の動力回収システムにおいて、前記排気口が、前記外側部材の上壁部に設けられ、昇温により上昇した気体を排出することを特徴とする。このように構成すれば、侵入熱を吸収して昇温した気体が第1空間部内から速やかに排出されるため、第1空間部の温度上昇が抑えられる。
【0019】
請求項4に記載の動力回収システムは、上記請求項3に記載の動力回収システムにおいて、前記気化装置は、前記第1空間部に設けられて、前記液体貯留部で気化した気体を前記外側部材の側壁部の内壁面に沿って上昇させて前記排気口へと誘導する誘導部を含むことを特徴とする。このような誘導部を設けることによって、第1空間部内に、外側部材の側壁部に沿う上昇気流が積極的に形成されるので、第1空間部内を流れる気体による侵入熱の吸収が効率良く行われる。
【0020】
請求項5に記載の動力回収システムは、上記請求項4に記載の動力回収システムにおいて、前記誘導部は、前記液体貯留部と前記排気口との間に設けられ、気体の液体貯留部から排気口への上昇を阻んで当該気体を側方に誘導する第1誘導壁を有することを特徴とする。このように第1誘導壁を設けることによって、気化した気体が侵入熱を吸収することなく排気口から排出されるのを抑えることができるので、気体による侵入熱の吸収がより効率良く行われる。
【0021】
請求項6に記載の動力回収システムは、上記請求項5に記載の動力回収システムにおいて、前記誘導部は、前記第1誘導壁の周縁から下方に延在して、前記液体貯留部との間に、気体を当該液体貯留部の外面に沿って下降させるための下降流路を形成するとともに、前記外側部材との間に、気体を当該外側部材の側壁部の内壁面に沿って上昇させるための上昇流路を形成する第2誘導壁をさらに有することを特徴とする。このように第2誘導壁を設けることによって、第1空間部内に、液体貯留部の外面に沿う下降気流と外側部材の側壁部に沿う上昇気流とが積極的に形成される。従って、第1空間部内を流れる気体による侵入熱の吸収がさらに効率良く行われる。
【0022】
請求項7に記載の動力回収システムは、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の動力回収システムにおいて、前記外側部材の内部に、前記液体貯留部および前記排出部に連通する第2空間部が設けられていることを特徴とする。このように構成すると、液体貯留部で気化した気体が、外側部材の内部の第2空間部を通して液体貯留部から排出部に至るまでの間に、液体貯留部と外側部材の外壁面との間を通過するようになる。これにより、外側部材の外壁面からの侵入熱が、液体貯留部に到達する前に第2空間部内を流れる気体に次々と吸収され、液体貯留部の液体の冷熱が上記侵入熱によって消費されるのが継続して抑えられる。
【0023】
請求項8に記載の動力回収システムは、上記請求項1〜7のいずれか一項に記載の動力回収システムにおいて、前記気化装置は、前記液体貯留部に接続されて、当該液体貯留部に液体を連続的に供給する液体供給装置をさらに備えることを特徴とする。このように、気化装置が液体供給装置を備えていれば、液体を気体に順次変換する連続気化システムとして機能させることができる。そして、そのシステムにおいて動力回収率を維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の動力回収システムによれば、液体貯留部で気化した低温の気体が空間部を通して排出部に至るまでの間に液体貯留部と外側部材の外壁面との間を通過するので、外側部材の外壁面からの侵入熱が、液体貯留部に到達する前に前記空間部内を流れる上記気体に次々と吸収される。従って、液体貯留部の液体の冷熱が上記侵入熱によって消費されるのが継続して抑えられ、液体貯留部に対する断熱性が維持される。これにより、冷熱用熱交換部に供給される液体の冷熱量が安定し、スターリングエンジンの駆動効率、および、動力回収率が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態による動力回収システムの断面図である。
【図2】第1実施形態の変形例1による動力回収システムの断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例2による動力回収システムの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による動力回収システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1に示す動力回収システム1は、液体の気化処理に伴って動力を回収するように構成されており、スターリングエンジン10と、液体を気化させるための気化装置20とを備えている。
【0028】
スターリングエンジン10は、熱差(温度差)によって動力を発生することが可能なエンジンである。
【0029】
スターリングエンジン10は、ディスプレーサピストン11と、パワーピストン12と、クランク機構13と、フライホイール14と、駆動軸15とを含んでいる。
【0030】
ディスプレーサピストン11およびパワーピストン12は、密閉された筒状のシリンダ16内に高圧のヘリウムガスとともに収容されている。これらのピストン11,12は、上下に並んで配設されており、シリンダ16内を上下動する。
【0031】
ディスプレーサピストン11の外径は、パワーピストン12の外径よりも小さく設定されている。従って、シリンダ16内のヘリウムガスは、ディスプレーサピストン11とシリンダ16との間を通過して当該シリンダ16内を移動する。
【0032】
また、両ピストン11,12は、それぞれ、ピストンロッド11a,12aを有している。各ピストンロッド11a,12aは、クランク機構13の相異なる箇所にそれぞれ連結されている。なお、ディスプレーサピストン11のピストンロッド11aは、パワーピストン12を貫通するように設けられている。
【0033】
クランク機構13は、両ピストン11,12の上下動を回転動に変換するためのものである。このクランク機構13の中心部には、駆動軸15が配設されている。
【0034】
フライホイール14は、駆動軸15に取り付けられている。このフライホイール14は、惰性を利用することで駆動軸15の回転を安定させるために設けられている。
【0035】
駆動軸15は、ピストン11,12の上下動がクランク機構13で回転動に変換されることで回転するようになっている。この駆動軸15は図略の発電機に接続されており、当該駆動軸15の回転によって発電機で電力が発生する。
【0036】
シリンダ16は、その上部16aが冷熱を供給される冷却部位として機能し、その下部16bが温熱を供給される加熱部位として機能する。つまり、当該シリンダ16の上部16aが本発明の「冷熱用熱交換部」に相当し、シリンダ16の下部16bが本発明の「温熱用熱交換部」に相当している。
【0037】
本実施形態では、シリンダ16の上部16aには、気化装置20の後述の液体容器21に貯留された低温の液体が接触しており、液体のもつ冷熱(潜熱)が当該上部16aに供給されるようになっている。
【0038】
また、シリンダ16の下部16bには、ヒータ17が当該下部16bを取り囲むように隣接配置されている。このヒータ17で発生した温熱がシリンダ16の下部16bに供給される。
【0039】
このようにシリンダ16の上部16aが冷却されるとともに下部16bが加熱されると、シリンダ16内のヘリウムガスの気圧が変動する。これにより、両ピストン11,12が上下動し、クランク機構13を介して駆動軸15が回転する。このとき、フライホイール14の惰性によって、ピストン11,12の上下動が維持されるとともに、駆動軸15が回転し続ける。その結果、電力という形で動力が回収される。
【0040】
上記気化装置20は、低温の液体(例えばLNG:液化天然ガス)を収容して、その液体のもつ冷熱を上記スターリングエンジン10のシリンダ16の上部16aに供給することで、当該液体を気化させるものである。また、この気化装置20は、液体を連続的に気化可能なように構成されている。
【0041】
詳細には、気化装置20は、液体容器21と、外側容器22と、断熱材23と、誘導部24と、図略の液体供給装置と、空温式気化器50とを含んでいる。なお、液体容器21は本発明の「液体貯留部」に相当する。また、外側容器22と断熱材23とで本発明の「外側部材」が構成されている。
【0042】
液体容器21は、液体をシリンダ16の上部16aの上方に当該上部16aに接触させた状態で貯留することが可能な形状に形成されている。本実施形態の液体容器21は筒状に形成されている。この液体容器21の上部は、気化した気体を通過させるための開口21aとなっている。
【0043】
外側容器22は、液体容器21を包むように配されている。また、断熱材23は、その外側容器22をさらに包むように配されている。この断熱材23の外壁面23aは大気等に曝される部位となっている。なお、断熱材23は例えばウレタン製である。
【0044】
ここで、本実施形態では、外側容器22の内壁面22eが液体容器21と間隔を置いて設けられており、液体容器21と外側容器22との間に空間部30が形成されている。なお、空間部30は本発明の「第1空間部」に相当している。
【0045】
この空間部30は、液体容器21の開口21aおよび後述の外側容器22の排気口22aの双方に連通している。このため、液体容器21で気化した気体は、空間部30を通して液体容器21から排気口22aに至るようになっている。具体的には、当該気体は、空間部30に流れ込んだ後に排気口22aから排出される。
【0046】
また、空間部30は、液体容器21を囲むように形成されており、液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間に介在している。従って、液体容器21で気化した気体は、空間部30を通して排気口22aに至るまでの間に、液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過する。
【0047】
このように、本実施形態では、液体容器21で気化した気体が空間部30内を流れることで、その流動する気体(気流)からなる断熱層(ガスシールド層)が液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間に配された状態が形成される。そして、この断熱層によって断熱材23の外壁面23aからの侵入熱が吸収される。なお、冷熱を失って気化した気体の温度は、気化前の液体の温度とほぼ同じである。
【0048】
外側容器22の上壁部22cには、当該外側容器22の内部、つまり空間部30の気体を排出するための排気口22aが設けられている。この排気口22aは、液体容器21の開口21aの上方の当該開口21aから離れた位置に配されている。このように排気口22aを空間部30の上部に臨むように設けることで、昇温により上昇した空間部30内の気体が効率良く排出される。また、排気口22aには排気管25が挿入されることで接続されている。
【0049】
外側容器22の側壁部22dの下端には排液口22bが設けられている。この排液口22bには排液管26が挿入されることで接続されている。排液管26は、外側容器22の底に溜まった液体(液体容器21から飛び出た液体や、LNG等に含まれる高沸点で気体になりにくい液体)を外側容器22から排出するためのものである。この排液管26から排出された液体は、図略の気化器によって別途気化されて回収される。また、排液管26には、液体の排出量を調整するためのバルブ26aが設けられている。
【0050】
なお、液体として噴霧流(気体中に液体が霧状に散在する状態の流体)を用いることも可能で、その場合には、上記排液口22bおよび排液管26を省略することができる。
【0051】
外側容器22の下壁部22fには開口22gが形成されており、その開口22gにはスターリングエンジン10のシリンダ16が嵌入されている。
【0052】
また、誘導部24は、空間部30に設けられており、液体容器21で気化した気体を外側容器22の側壁部22dの内壁面22eに沿って上昇させて排気口22aへと誘導するためのものである。この誘導部24は、第1誘導壁24aと、第2誘導壁24bと、取付け部24cとで構成されている。
【0053】
第1誘導壁24aは、液体容器21の開口21aと外側容器22の排気口22aとの間に設けられている。この第1誘導壁24aは、気体の液体容器21から排気口22aへの上昇を阻んで当該気体を側方に誘導するためのものである。
【0054】
第2誘導壁24bは、第1誘導壁24aの周縁から下方に延在しており、液体容器21と外側容器22の側壁部22dとの間に配設されている。この第2誘導壁24bは、当該第2誘導壁24bと液体容器21との間に、気体を液体容器21の外面21bに沿って下降させるための下降流路24cを形成するとともに、当該第2誘導壁24bと外側容器22との間に、気体を外側容器22の側壁部22dの内壁面22eに沿って上昇させるための上昇流路24dを形成している。
【0055】
また、第2誘導壁24bと外側容器22の下壁部22fの上面との間には、下降流路24cと上昇流路24dとを連通する間隙が設けられている。
【0056】
この第2誘導壁24bによって、空間部30内には、液体容器21の外面21bに沿う下降気流と外側容器22の側壁部22dに沿う上昇気流とが積極的に形成される。
【0057】
取付け部24cは、第1誘導壁24aと外側容器22の上壁部22cとを連結している。この取付け部24cには、気体を通過させるための図略の通気部が設けられている。
【0058】
上記液体供給装置(図示せず)には、供給パイプ41の一端が接続されている。この供給パイプ41の他端は液体容器21内に位置しており、当該パイプ41を通して液体が液体容器21に供給される。また、供給パイプ41には、液体の供給量を調整するためのバルブ41aが設けられている。
【0059】
空温式気化器50は、排気管25に取り付けられている。この空温式気化器50は、排気管25内を通過する気体を所定温度まで温めるためのものである。
【0060】
上記のように構成された気化装置20では、供給パイプ41を通って液体容器21に供給された液体は、当該液体容器21においてその冷熱をシリンダ16の上部16aに供給することで気化される。そして、液体容器21で気化した気体は、空間部30を経由して排気口22aから排出される。詳細には、上記液体容器21で気化した気体は、図1中に矢印で示すように、第1誘導壁24aによって側方へ誘導された後、液体容器21と第2誘導壁24bとの間の下降流路24cを下降し、第2誘導壁24bの下端の下を通って、第2誘導壁24bと外側容器22の側壁部22dとの間の上昇流路24dを上昇し、排気口22aに到達する。その後、当該気体は排気管25を通って所定温度まで温められながら排出される。
【0061】
従って、液体容器21で気化した低温の気体は、空間部30を通して排気口22aに至るまでの間に液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過する際、断熱材23の外壁面23aからの侵入熱を次々と吸収する。すなわち、液体容器21で気化して当該液体容器21から流出する気体を熱吸収媒体として有効利用することにより、液体容器21の液体の冷熱が上記侵入熱によって消費されるのが継続して抑えられ、液体容器21に対する断熱性が維持される。これにより、シリンダ16の上部16aに供給される液体の冷熱量が安定し、スターリングエンジン10の駆動効率、および、動力回収率が安定する。
【0062】
また、液体容器21で気化した気体が空間部30を通ることによって当該液体容器21に対する断熱が図られる構成であるので、空間部30を通る低温の気体を別途用意する必要がなく、経済的である。
【0063】
なお、冷熱(潜熱)を失って気化した気体の温度は、気化前の液体の温度とほぼ同じである。従って、そのような低温の気体が空間部30に送り込まれても、液体容器21の液体の冷熱が空間部30の気体によって消費されることはほとんどなく、これによって断熱性が損なわれることはない。
【0064】
また、外側容器22の内壁面22eを液体容器21と間隔を置いて設けることにより外側容器22と液体容器21との間に空間部30を形成するとともに、当該外側容器22に排気口22aを設けることによって、液体容器21で気化した気体が、当該液体容器21を囲むように配される空間部30に自然に流れ込むため、空間部30への気体の供給が容易になる。また、外側容器22の内壁面22eの設置位置を工夫するだけで、当該空間部30を簡単に形成することができる。
【0065】
また、排気口22aを外側容器22の上壁部22cに設けることによって、侵入熱を吸収して昇温した気体が空間部30内から速やかに排出されるため、空間部30の温度上昇が抑えられる。
【0066】
また、空間部30に、液体容器21で気化した気体を外側容器22の側壁部22dの内壁面22eに沿って上昇させて排気口22aへと誘導する誘導部24を設けることによって、空間部30内に、外側容器22の側壁部22dに沿う上昇気流が積極的に形成されるので、空間部30内を流れる気体による侵入熱の吸収が効率良く行われる。
【0067】
また、第1誘導壁24aを設けることによって、気化した気体が侵入熱を吸収することなく排気口22aから排出されるのを抑えることができるので、気体による侵入熱の吸収がより効率良く行われる。
【0068】
また、第2誘導壁24bを設けて下降流路24cおよび上昇流路24dを形成することによって、空間部30内に、液体容器21の外面21aに沿う下降気流と外側容器22の側壁部22dの内壁面22eに沿う上昇気流とが積極的に形成される。従って、空間部30内を流れる気体による侵入熱の吸収がさらに効率良く行われる。
【0069】
また、液体容器21に液体を連続的に供給するための図略の液体供給装置を設けることによって、液体を気体に順次変換する連続気化システムとして機能させることができる。
【0070】
なお、上記第1実施形態の変形例1として、図2に示すような液体容器21への液体の供給経路を異ならせた構成の気化装置120を備えた動力回収システム101がある。この気化装置120では、供給パイプ141が、第1実施形態と異なり、排気管25の壁面および第1誘導壁24aを貫通して液体容器21まで延びている。このような構成であれば、外側容器22および断熱材23に、供給パイプを通すための孔を設ける必要がないので、断熱性の低下が抑えられる。
【0071】
また、第1実施形態の変形例2として、図3に示すように、誘導部24を省略した構成の気化装置220を備えた動力回収システム201であってもよい。この気化装置220においても、液体容器21で気化した気体が、空間部30に流れ込んで液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過した後に排気口22aから排出されるようになる。なお、空間部30に流れ込んだ気体は、断熱材23の外壁面23aからの侵入熱を吸収することで昇温し、外側容器22の側壁部22dの内壁面22eに沿って上昇する。このため、空間部30内には、液体容器21の外面21bに沿う低温気体の下降気流と、外側容器22の側壁部22dに沿う高温気体の上昇気流とが自発的に形成される。このように、誘導部24を省略して気化装置220の構成を簡略化しても、液体容器21に対する断熱性をある程度維持可能である。
【0072】
なお、変形例2のように誘導部24を全て省略するのではなく、誘導部24の第2誘導壁24bのみを省略するようにしてもよい。この場合、第1誘導壁24aによって、液体容器21で気化した気体の上昇が阻まれて当該気体が積極的に側方に誘導されるため、空間部30内の気流形成がより積極的に行われるようになり、上記変形例2に比べて断熱性維持の効果がより得られる。
【0073】
しかし、第1実施形態の気化装置20のように、第2誘導壁24bを備えることで、気体が空間部30内で循環するのを防止することができるので、より好ましい。
【0074】
(第2実施形態)
第2実施形態の動力回収システム301では、気化装置320が、図4に示すように、上記第1実施形態の空間部30に加え、断熱材23の内部に設けられた空間部31をさらに備えている。なお、空間部31は本発明の「第2空間部」に相当している。この空間部31は、外側容器22を囲むように外側容器22と断熱材23の外壁面23aとの間に形成されており、誘導パイプ32を介して排気管25と連通している。また、空間部31には、当該空間部31内の気体を排出するための排気パイプ33が接続されている。
【0075】
この第2実施形態の動力回収システム301によれば、液体容器21で気化した気体を排気口22aに至るまでの間に液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過させる空間部30に加えて、排気口22aから排出された気体の一部を、誘導パイプ32を通して液体容器21と断熱材23の外壁面23aとの間を通過させる空間部31を設けたので、断熱材23の外壁面23aからの侵入熱が、液体容器21に到達する前に2つの空間部30,31で気体に次々と吸収される。従って、液体容器21の液体の冷熱が侵入熱によって消費されるのがさらに抑えられる。
【0076】
また、第2実施形態の変形例として、外側容器22の排気口22aを塞ぐとともに、外側容器22と空間部31とを連通させ、さらに空間部31を排気パイプ33を介して図外の排出部に接続するように構成された動力回収システムであってもよい。
【0077】
また、この変形例において、液体容器21を省略して、液体を外側容器22に直接貯留するように構成してもよい。この場合、空間部30が省略され、空間部31のみの構成となる。また、外側容器22が本発明の「液体貯留部」に相当し、断熱材23が単体で本発明の「外側部材」を構成する。
【0078】
また、上記実施形態および変形例で示したスターリングエンジンは一例であり、その構成に限定されるものではない。従って、上記エンジンと異なる機構で動作する他のスターリングエンジンと気化装置とを組み合わせた動力回収システムに対しても本発明を適用可能である。
【0079】
また、上記実施形態および変形例では、液体を液体容器21の上方から注ぎ込むように供給したが、液体容器21の側壁部を貫通するように供給パイプを配設し、その供給パイプを通して液体を容器21内に供給する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1、101、201、301 動力回収システム
10 スターリングエンジン
16 シリンダ
16a 上部(冷熱用熱交換部)
16b 下部(温熱用熱交換部)
20、120、220、320 気化装置
21 液体容器(液体貯留部)
21b 外面
22 外側容器(外側部材)
22a 排気口(排出部)
22c 上壁部
22d 側壁部
22e 内壁面
23 断熱材(外側部材)
23a 外壁面
24 誘導部
24a 第1誘導壁
24b 第2誘導壁
24c 下降流路
24d 上昇流路
30 空間部(第1空間部)
31 空間部(第2空間部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱用熱交換部および冷熱用熱交換部を有し、温熱用熱交換部に温熱が供給されるとともに冷熱用熱交換部に冷熱が供給されることで動力を生成するスターリングエンジンと、冷熱をもつ液体を前記冷熱用熱交換部に接触させた状態で収容し、その液体の冷熱を前記冷熱用熱交換部に供給することで当該液体を気化させる気化装置とを備えた動力回収システムであって、
前記気化装置は、液体を前記冷熱用熱交換部に接触させた状態で貯留する液体貯留部と、この液体貯留部を包むように設けられ、前記液体貯留部の周囲に空間部を形成する外側部材とを含み、
前記空間部は、前記液体貯留部とこの液体貯留部から離れた位置にあって液体貯留部で気化した気体を排出する排出部とに連通し、前記液体貯留部で気化した気体が当該空間部を通して前記液体貯留部から前記排出部に至るまでの間に前記液体貯留部と前記外側部材の外壁面との間を通過する形状を有することを特徴とする動力回収システム。
【請求項2】
前記外側部材は、前記液体貯留部と間隔を置いて設けられて液体貯留部との間に第1空間部を形成する内壁面を有し、
前記排出部が、前記外側部材に設けられた排気口を含むことを特徴とする請求項1に記載の動力回収システム。
【請求項3】
前記排気口が、前記外側部材の上壁部に設けられ、昇温により上昇した気体を排出することを特徴とする請求項2に記載の動力回収システム。
【請求項4】
前記気化装置は、前記第1空間部に設けられて、前記液体貯留部で気化した気体を前記外側部材の側壁部の内壁面に沿って上昇させて前記排気口へと誘導する誘導部を含むことを特徴とする請求項3に記載の動力回収システム。
【請求項5】
前記誘導部は、前記液体貯留部と前記排気口との間に設けられ、気体の液体貯留部から排気口への上昇を阻んで当該気体を側方に誘導する第1誘導壁を有することを特徴とする請求項4に記載の動力回収システム。
【請求項6】
前記誘導部は、前記第1誘導壁の周縁から下方に延在して、前記液体貯留部との間に、気体を当該液体貯留部の外面に沿って下降させるための下降流路を形成するとともに、前記外側部材との間に、気体を当該外側部材の側壁部の内壁面に沿って上昇させるための上昇流路を形成する第2誘導壁をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の動力回収システム。
【請求項7】
前記外側部材の内部に、前記液体貯留部および前記排出部に連通する第2空間部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の動力回収システム。
【請求項8】
前記気化装置は、前記液体貯留部に接続されて、当該液体貯留部に液体を連続的に供給する液体供給装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の動力回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256775(P2011−256775A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131649(P2010−131649)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)