説明

動力装置

【課題】永久磁石の組み合わせで発生する吸引力、反発力を利用して可動磁石を往復運動させ、クランク軸を連続的に回転させて動力を取り出す。
【解決手段】案内筒3−1と可動永久磁石4−1と一側吸反用永久磁石5−1と他側吸反用永久磁石6−1とから構成される気筒部2−1を設け、可動永久磁石の往復運動を回転運動に変換するクランク軸8を設け、可動永久磁石の往復運動をクランク軸に伝達するコネクティングロッド10−1を設け、可動永久磁石の磁極に対向する一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石の磁極の位相を変更する位相変更機構12−1を設け、可動永久磁石の磁極に対向する一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石の磁極を位相変更機構により同極および異極あるいは異極および同極の位相に変更することで、発生する吸引力と反発力とにより可動永久磁石を往復運動させてクランク軸を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は動力装置に係り、特に、永久磁石の組み合わせで発生する吸引力、反発力を利用して動力を取り出すことができる動力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁石を利用した動力装置には、直接的に回転運動を発生する電動機がある。一方、磁石を利用した動力装置には、直線往復運動をクランク軸の回転運動に変換して取り出す動力装置がある。
【0003】
この動力装置には、コネクティングロッドによりクランク軸に連結された複数の進退軸に電磁石を取り付けて可動磁石とし、この可動磁石である電磁石と対面する位置に永久磁石を取り付けて固定磁石とし、電磁石の励磁による磁極を永久磁石と同極とし、電磁石の励磁タイミングを電磁石と永久磁石の接近時から離反行程の間とすることで進退軸を直線運動させ、この進退軸の直線運動をクランク軸の回転運動に変換して取り出す装置がある。(特開2004−137967号公報)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1の動力装置は、クランク軸に一端を連結した進退軸の他端に可動磁石である電磁石を取り付け、この電磁石の磁極を対面する位置の固定磁石である永久磁石と同極にし、反発力で進退軸をクランク軸側に直線運動(往動)させてクランク軸を回転させているため、進退軸をクランク軸から離れる側に移動(復動)させることができない。
このため、特許文献1の動力装置は、1本の進退軸を往復運動させることができず、クランク軸を連続的に回転させることができないことから、クランク軸を挟んで両側に一本ずつ、2本の進退軸を配置してクランク軸を連続的に回転させている。しかし、特許文献1の動力装置は、2本の進退軸をクランク軸から両側に突出するように配置していることから、構造的に大型化する問題がある。
【0006】
1本の進退軸を往復運動させる場合には、進退軸に取り付けた可動磁石である電磁石の磁極を対面する位置の固定磁石である永久磁石と異極にして、吸引力を発生させなけばならない。しかし、進退軸がクランク軸に接近した状態では、電磁石と永久磁石との間の距離が大きいことから、進退軸を永久磁石側に移動させるだけの吸引力を発生させるために、電磁石に大きな電流を供給する必要がある。
【0007】
この発明は、永久磁石の組み合わせで発生する吸引力、反発力を利用して、大電流の供給や大型化を招くことなく可動磁石を往復運動させることができ、クランク軸を連続的に回転させて動力を取り出すことができる動力装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、長手方向に延びる案内筒と、この案内筒内に往復運動自在に支持され且つ往動方向側端および復動方向側端におのおの異なる磁極を有する可動永久磁石と、前記案内筒の往動方向側端部に配設され且つ前記可動永久磁石の往動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極を有して吸引力または反発力を発生させる一側吸反用永久磁石と、前記案内筒の復動方向側端部に配設され且つ前記可動永久磁石の復動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極を有して吸引力または反発力を発生させる他側吸反用永久磁石と、から構成される気筒部を設け、前記可動永久磁石の往復運動を回転運動に変換するクランク軸を設け、前記可動永久磁石の往復運動を前記クランク軸に伝達するコネクティングロッドを設け、前記可動永久磁石の往復運動に連動して前記可動永久磁石の磁極に対向する前記一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石の磁極の位相を変更する位相変更機構を設け、前記可動永久磁石の往動方向側端の磁極に対向する前記一側吸反用永久磁石の外周の磁極を前記位相変更機構により同極および異極のいずれか一方の位相に変更するともに前記可動永久磁石の復動方向側端の磁極に対向する前記他側吸反用永久磁石の外周の磁極を前記位相変更機構により同極および異極のいずれか他方の位相に変更することで、前記可動永久磁石と前記一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石との間に発生する吸引力と反発力とにより前記可動永久磁石を往復運動させて前記クランク軸を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の動力装置は、可動永久磁石を往復運動自在に支持する案内筒の往動方向側端部および復動方向側端部にそれぞれ一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石を配設し、可動永久磁石の往復運動に連動して可動永久磁石の各磁極に対向する一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石の各磁極の位相を同極および異極あるいは異極および同極に変更することで、可動永久磁石と一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石との間に吸引力と反発力とを発生させ、この吸引力と反発力とを利用して可動永久磁石を往復運動させてクランク軸を回転させる。
これにより、この動力装置は、永久磁石の組み合わせで発生する吸引力と反発力を利用して、大電流の消費や大型化を招くことなく可動永久磁石を往復運動させることができ、クランク軸を連続的に回転させて回転力を取り出すことができる。取り出されたクランク軸の回転力は、発電機や産業機器などを駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は動力装置の模式図である。(実施例)
【図2】図2は第1可動永久磁石が復動方向側端に位置した第1気筒部の模式図である。(実施例)
【図3】図3は第1可動永久磁石が往動方向側端に位置した第1気筒部の模式図である。(実施例)
【図4】図4はクランク軸を軸線方向から見た場合の第1〜第3クランクピンの位置を示す模式図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は動力装置である。動力装置1は、複数個の気筒部2を設けている。この実施例では、奇数個の第1気筒部2−1〜第3気筒部2−3の3個を設けている。第1気筒部2−1〜第3気筒部2−3は、同様に構成されているので、以下においては、第1気筒部2−1について、図2、図3を引用して詳細を説明する。
前記第1気筒部2−1は、第1案内筒3−1と、第1可動永久磁石4−1と、第1一側吸反用永久磁石5−1と、第1他側吸反用永久磁石6−1と、から構成される。
前記第1案内筒3−1は、長手方向に延びる四角筒形状に形成され、長手方向に延びる第1ガイド溝7−1・7−1を上下に備えている。前記第1可動永久磁石4−1は、直方体形状に形成されて第1案内筒3−1内に往復運動自在に支持され、且つ往動方向(矢印A方向)側端および復動方向(矢印B方向)側端におのおの異なる磁極N、Sを有している。この実施例の第1可動永久磁石4−1は、往動方向側端に磁極Nを備え、復動方向側端に磁極Sを備えている。
前記第1一側吸反用永久磁石5−1は、第1案内筒3−1の往動方向側端部に配設され、且つ第1可動永久磁石4−1の往動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極N、Sを有している。第1一側吸反用永久磁石5−1は、周方向において4等分した外周の周方向に磁極N、磁極Sを交互に配列し、第1可動永久磁石4−1との間に吸引力または反発力を発生させる。
前記第1他側吸反用永久磁石6−1は、第1案内筒3−1の復動方向側端部に配設され、且つ第1可動永久磁石4−1の復動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極N、Sを有している。第1他側吸反用永久磁石6−1は、周方向において4等分した外周の周方向に磁極N、磁極Sを交互に配列し、第1可動永久磁石4−1との間に吸引力または反発力を発生させる。
【0013】
動力装置1は、第1可動永久磁石4−1の往復運動を回転運動に変換するクランク軸8を設けている。クランク軸8は、第1案内筒3−1の往動方向側延長線上において、第1案内筒3−1の長手方向と直交するように軸線を上下方向に向けて回転可能に配置している。クランク軸8には、上下に離間して一対の第1クランクピン9−1、9−1を設けている。
前記動力装置1は、第1可動永久磁石4−1の往復運動をクランク軸8に伝達する一対の第1コネクティングロッド10−1、10−1を設けている。第1可動永久磁石4−1には、第1案内筒3−1の第1ガイド溝7−1・7−1を貫通して上下に延びる一対の第1支持軸11−1・11−1を設けている。前記一対の第1コネクティングロッド10−1・10−1は、第1案内筒3−1を上下から挟むように配設し、一端側を第1支持軸11−1・11−1に接続し、他端側をクランク軸8の第1クランクピン9−1・9−1に接続している。
なお、この実施例においては、上側の第1コネクティングロッド10−1を直線形状に形成し、下側の第1コネクティングロッド10−1を直線形状でなく円環形状に形成している。これは、後述する第1位相変更機構12−1の第1一側回転軸17−1との干渉を回避しつつ、第1可動永久磁石4−1をクランク軸8に接続するためである。
【0014】
前記動力装置1は、第1可動永久磁石4−1の往復運動に連動して、第1可動永久磁石4−1の磁極N、Sに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1の外周の磁極N、Sの位相を変更する第1位相変更機構12−1を設けている。この実施例の第1位相変更機構12−1は、クランク軸8の回転力で第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1を回転させることで、第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極N、Sの位相を変更する。
前記第1位相変更機構12−1は、クランク軸8に設けた第1駆動ギヤ13−1と、この第1駆動ギヤ13−1に1/2のギヤ比で減速して噛み合う第1一側従動ギヤ14−1と、この第1一側従動ギヤ14−1に第1中間ギヤ15−1を介して同ギヤ比で噛み合う第1他側従動ギヤ16−1とを備えている。
前記第1一側従動ギヤ14−1は、第1一側回転軸17−1により第1一側吸反用永久磁石5−1に連結され、第1一側吸反用永久磁石5−1をクランク軸8の1/2の速度で回転させる。第1中間ギヤ15−1は、回転自在な第1中間軸18−1に取り付けられている。第1他側従動ギヤ16−1は、第1他側回転軸19−1により第1他側吸反用永久磁石6−1に連結され、第1他側吸反用永久磁石6−1をクランク軸8の1/2の速度で回転させる。
【0015】
前記第1位相変更機構12−1は、図2に示すように、第1可動永久磁石4−1を往動方向(矢印A方向)に移動させる場合に、第1可動永久磁石4−1の往動方向側端の磁極Nに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極の位相を異極のSに変更して吸引力を発生させるとともに、第1可動永久磁石4−1の復動方向側端の磁極Sに対向する第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極の位相を同極のSに変更して反発力を発生させるように、クランク軸9の回転力で第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1を回転させる。
また、第1位相変更機構12−1は、図3に示すように、第1可動永久磁石4−1を復動方向(矢印B方向)に移動させる場合に、第1可動永久磁石4−1の往動方向側端の磁極Nに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極の位相を同極のNに変更して反発力を発生させるとともに、第1可動永久磁石4−1の復動方向側端の磁極Sに対向する第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極の位相を異極のNに変更して吸引力を発生させるように、クランク軸9の回転力で第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1を回転させる。
これにより、第1可動永久磁石4−1は、往動方向(矢印A方向)及び復動方向(矢印B方向)へ移動される。この第1可動永久磁石4−1の往復運動は、第1コネクティングロッド10−1・10−1によりクランク軸8に伝達され、回転運動に変換される。
【0016】
また、前記第2気筒部2−2は、第1気筒部2−1と同様に、第2案内筒3−2と、第2可動永久磁石4−2と、第2一側吸反用永久磁石5−2と、第2他側吸反用永久磁石6−2とから構成され、往動方向側端および復動方向側端に異なる磁極N、Sを有する第2可動永久磁石4−2を一対の第2コネクティングロッド10−2・10−2によりクランク軸8の第2クランクピン9−2・9−2に接続している。第2コネクティングロッド10−2・10−2は、後述する第2位相変更機構12−2の第2一側回転軸17−2との干渉を回避しつつ、第2可動永久磁石4−2をクランク軸8に接続するために、円環形状に形成している。なお、符号7−2は第2ガイド溝、符号11−2は第2支持軸である。
前記第2気筒部2−2は、第2可動永久磁石4−2の往復運動に連動して、第2可動永久磁石4−2の磁極N、Sに対向する第2一側吸反用永久磁石5−2および第2他側吸反用永久磁石6−2の外周の磁極N、Sの位相を変更するように、クランク軸8の回転力で第2一側吸反用永久磁石5−2および第2他側吸反用永久磁石6−2を回転させる第2位相変更機構12−2を備えている。第2位相変更機構12−2は、第2駆動ギヤ13−2と、第2一側従動ギヤ14−2と、第2中間ギヤ15−2と、第2他側従動ギヤ16−2とを備え、第2一側回転軸17−2により第2一側吸反用永久磁石5−2をクランク軸8の1/2の速度で回転させ、また、第2他側回転軸19−2により第2他側吸反用永久磁石6−2をクランク軸8の1/2の速度で回転させる。なお、符号18−2は、第2中間ギヤ15−2の第2中間軸である。
【0017】
前記第2位相変更機構12−2は、第1位相変更機構12−1と同様に、第2可動永久磁石4−2を往動方向(矢印A方向)に移動させる場合に、第2可動永久磁石4−2の往動方向側端の磁極Nに対向する第2一側吸反用永久磁石5−2の磁極の位相を異極のSに変更して吸引力を発生させるとともに、第2可動永久磁石4−2の復動方向側端の磁極Sに対向する第2他側吸反用永久磁石6−2の磁極の位相を同極のSに変更して反発力を発生させるように、クランク軸8の回転力で第2一側吸反用永久磁石5−2および第2他側吸反用永久磁石6−2を回転させる。
また、第2位相変更機構12−2は、第1位相変更機構12−1と同様に、第2可動永久磁石4−2を復動方向(矢印B方向)に移動させる場合に、第2可動永久磁石4−2の往動方向側端の磁極Nに対向する第2一側吸反用永久磁石5−2の磁極の位相を同極のNに変更して反発力を発生させるとともに、第2可動永久磁石4−2の復動方向側端の磁極Sに対向する第2他側吸反用永久磁石6−2の磁極の位相を異極のNに変更して吸引力を発生させるように、クランク軸8の回転力で第2一側吸反用永久磁石5−2および第2他側吸反用永久磁石6−2を回転させる。
これにより、第2可動永久磁石4−2は、往動方向(矢印A方向)及び復動方向(矢印B方向)へ移動される。この第2可動永久磁石4−2の往復運動は、第2コネクティングロッド10−2・10−2によりクランク軸8に伝達され、回転運動に変換される。
【0018】
さらに、前記第3気筒部2−3は、第1気筒部2−1と同様に、第3案内筒3−3と、第3可動永久磁石4−3と、第3一側吸反用永久磁石5−3と、第3他側吸反用永久磁石6−3とから構成され、往動方向側端および復動方向側端に異なる磁極N、Sを有する第3可動永久磁石4−3を一対の第3コネクティングロッド10−3・10−3によりクランク軸8の第3クランクピン9−3・9−3に接続している。第3コネクティングロッド10−3・10−3は、後述する第3位相変更機構12−3の第3一側回転軸17−3との干渉を回避しつつ、第3可動永久磁石4−3をクランク軸8に接続するために、円環形状に形成している。なお、符号7−3は第3ガイド溝、符号11−3は第3支持軸である。
前記第3気筒部2−3は、第3可動永久磁石4−3の往復運動に連動して、第3可動永久磁石4−3の磁極N、Sに対向する第3一側吸反用永久磁石5−3および第3他側吸反用永久磁石6−3の外周の磁極N、Sの位相を変更するように、クランク軸8の回転力で第3一側吸反用永久磁石5−3および第3他側吸反用永久磁石6−3を回転させる第3位相変更機構12−3を備えている。第3位相変更機構12−3は、第3駆動ギヤ13−3と、第3一側従動ギヤ14−3と、第3中間ギヤ15−3と、第3他側従動ギヤ16−3とを備え、第3一側回転軸17−3により第3一側吸反用永久磁石5−3をクランク軸8の1/2の速度で回転させ、また、第3他側吸反用軸19−3により第3他側吸反用永久磁石6−3をクランク軸8の1/2の速度で回転させる。なお、符号18−3は、第3中間ギヤ15−3の第3中間軸である。
【0019】
前記第3位相変更機構12−3は、第1位相変更機構12−1と同様に、第3可動永久磁石4−3を往動方向(矢印A方向)に移動させる場合に、第3可動永久磁石4−3の往動方向側端の磁極Nに対向する第3一側吸反用永久磁石5−3の磁極の位相を異極のSに変更して吸引力を発生させるとともに、第3可動永久磁石4−3の復動方向側端の磁極Sに対向する第3他側吸反用永久磁石6−3の磁極の位相を同極のSに変更して反発力を発生させるように、クランク軸8の回転力で第3一側吸反用永久磁石5−3および第3他側吸反用永久磁石6−3を回転させる。
また、第3位相変更機構12−3は、第1位相変更機構12−1と同様に、第3可動永久磁石4−3を復動方向(矢印B方向)に移動させる場合に、第3可動永久磁石4−3の往動方向側端の磁極Nに対向する第3一側吸反用永久磁石5−3の磁極の位相を同極のNに変更して反発力を発生させるとともに、第3可動永久磁石4−3の復動方向側端の磁極Sに対向する第3他側吸反用永久磁石6−3の磁極の位相を異極のNに変更して吸引力を発生させるように、クランク軸8の回転力で第3一側吸反用永久磁石5−3および第3他側吸反用永久磁石6−3を回転させる。
これにより、第3可動永久磁石4−3は、往動方向(矢印A方向)及び復動方向(矢印B方向)へ移動される。この第3可動永久磁石4−3の往復運動は、第3コネクティングロッド10−3・10−3によりクランク軸8に伝達され、回転運動に変換される。
【0020】
このように、動力装置1は、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の往動方向側端の磁極N、Sに対向する第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3の外周の磁極N、Sを第1〜第3位相変更機構12−1〜12−3により同極および異極のいずれか一方の位相に変更するともに第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の復動方向側端の磁極N、Sに対向する第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3の外周の磁極N、Sを第1〜第3位相変更機構12−1〜12−3により同極および異極のいずかれ他方の位相に変更することで、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3と第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3との間に発生する吸引力と反発力とにより第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3を往復運動させてクランク軸8を回転させる。
このとき、動力装置1は、奇数個の第1〜第3気筒部2−1〜2−3の第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3が第1〜第3案内筒3−1〜3−3内を一定間隔で順次に往復運動するように、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の相対位置を異ならせて第1〜第3コネクティングロッド10−1〜10−3によりクランク軸8の第1〜第3クランクピン9−1〜9−3に接続している。
この実施例では、図4に示すように、クランク軸8を軸線方向から見た場合、第1〜第3クランクピン9−1〜9−3をクランク軸8の周方向に120度の等間隔で配置することで、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3が第1〜第3案内筒3−1〜3−3内を一定間隔で順次に往復運動するように、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の相対位置を異ならせてクランク軸8と接続している。
【0021】
次に、動力装置1の作用を説明する。
先ず、第1気筒部2−1の第1可動永久磁石4−1の往復運動によるクランク軸8の回転を説明する。
動力装置1は、図2に示すように、第1気筒部2−1の第1可動永久磁石4−1が復動方向(矢印B方向)側端に位置した状態では、第1位相変更機構12−1によって、第1可動永久磁石4−1の往動方向側端の磁極Nに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1の外周の磁極がS、第1可動永久磁石4−1の復動方向側端の磁極Sに対向する第1他側吸反用永久磁石6−1の外周の磁極がSとなっている。
第1可動永久磁石4−1は、往動方向側端の磁極Nと第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極Sとの間に発生する吸引力と、復動方向側端の磁極Sと第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極Sとの間に発生する反発力とにより往動方向(矢印A方向)に移動され、第1コネクティングロッド10−1を介してクランク軸8を矢印C方向に回転させる。
このとき、第1位相変更機構12−1は、第1可動永久磁石4−1の往動方向(矢印A方向)への移動に連動して、第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1を矢印D方向に回転させ、第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極の位相をSからNに次第に変更するとともに、第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極の位相をSからNに次第に変更する。
【0022】
動力装置1は、図3に示すように、第1可動永久磁石4−1が往動方向(矢印A方向)側端に移動すると、第1位相変更機構12−1によって、第1可動永久磁石4−1の往動方向側端の磁極Nに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1の外周の磁極がN、第1可動永久磁石4−1の復動方向側端の磁極Sに対向する第1他側吸反用永久磁石6−1の外周の磁極がNとなる。
第1可動永久磁石4−1は、往動方向側端の磁極Nと第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極Nとの間に発生する反発力と、復動方向側端の磁極Sと第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極Nとの間に発生する吸引力とにより復動方向(矢印B方向)に移動され、クランク軸8を矢印C方向に回転させる。
このとき、第1位相変更機構12−1は、第1可動永久磁石4−1の復動方向(矢印B方向)への移動に連動して、第1一側吸反用永久磁石5−1および第1他側吸反用永久磁石6−1を矢印D方向に回転させ、第1一側吸反用永久磁石5−1の磁極の位相をNからSに次第に変更するとともに、第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極の位相をNからSに次第に変更する。
図2に示すように、第1可動永久磁石4−1が復動方向(矢印B方向)側端に移動すると、第1位相変更機構12−1によって、第1可動永久磁石4−1の往動方向側端の磁極Nに対向する第1一側吸反用永久磁石5−1の外周の磁極がS、第1可動永久磁石4−1の復動方向側端の磁極Sに対向する第1他側吸反用永久磁石6−1の外周の磁極がSとなる。
動力装置1は、図2に示す状態になることで、再び第1可動永久磁石4−1が吸引力と反発力とにより往動方向(矢印A方向)に移動され、第1コネクティングロッド10−1を介してクランク軸8を矢印C方向に回転させる。このように、動力装置1は、第1可動永久磁石4−1の往復運動を繰り返してクランク軸8に伝達し、クランク軸8を回転させる。
【0023】
この動力装置1は、図1に示すように、奇数個の第1〜第3気筒部2−1〜2−3を設け、第1〜第3気筒部2−1〜2−3の第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3が第1〜第3案内筒3−1〜3−3内を一定間隔で順次に往復運動するように、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の相対位置を異ならせて、第1〜第3コネクティングロッド10−1〜10−3によりクランク軸8の第1〜第3クランクピン9−1〜9−3に接続している。
第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の相対位置は、図4に示すように、第1〜第3クランクピン9−1〜9−3をクランク軸8の周方向に120度の等間隔で配置しているので、例えば、第1可動永久磁石4−1が復動方向(矢印B方向)側端に位置して往動方向(矢印A方向)側への移動を開始している場合に、第2可動永久磁石4−2が往動方向(矢印A方向)側端の近傍に位置して往動方向(矢印A方向)側端へ移動し、第3可動永久磁石4−3が往動方向(矢印A方向)側端の近傍に位置して復動方向(矢印B方向)側端へ移動している状態の位置関係にある。
第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の往復運動は、第1〜第3コネクティングロッド10−1〜103を介してクランク軸8に一定間隔で順次に伝達され、クランク軸8を矢印C方向に回転させる。これにより、動力装置1は、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3のそれぞれの往復運動を相互に補完して強化しながらクランク軸8に伝達させることができ、クランク軸8を連続して滑らかに回転させることができる。
【0024】
このように、この動力装置1は、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3を往復運動自在に支持する第1〜第3案内筒2−1〜2−3の往動方向側端部および復動方向側端部にそれぞれ第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3を配設し、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の往復運動に連動して第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3の各磁極に対向する第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3の各磁極の位相を同極および異極あるいは異極および同極に変更することで、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3と第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3との間に吸引力と反発力とを発生させ、この吸引力と反発力とにより第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3を往復運動させてクランク軸8を回転させる。
これにより、この動力装置1は、永久磁石の組み合わせで発生する吸引力と反発力を利用して、大電流の消費や大型化を招くことなく可動永久磁石4を往復運動させることができ、クランク軸8を連続的に回転させて回転力を取り出すことができる。取り出されたクランク軸8の回転力は、発電機や産業機器などを駆動することができる。
【0025】
なお、上述実施例では、複数個の気筒部2として3つの第1〜第3気筒部2−1〜2−3を設けた動力装置1を例示したが、3つに限定されるものでなく、5、7などの奇数個の気筒部2を設けることができ、奇数個だけでなく、2、4、6等の偶数個の気筒部2を設けることもできる。
また、動力装置1は、第1〜第3一側回転軸17−1〜17−3を接続し、第1〜第3他側回転軸18−1〜18−3を接続することで、第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−1および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3をそれぞれ第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3に連動してクランク軸9の1/2の速度で回転させることができる。この場合には、第1〜第3位相変更機構12−1〜12−3のいずれか2つを廃して1つ、例えば、第1位相変更機構12−1を残し、この1つの第1位相変更機構12−1により第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−1および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3を回転させることができる。
【0026】
さらに、動力装置1は、第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3の磁極の位相を変更して第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3への吸引、反発を繰り返すが、位相を変更するための第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3の回転をクランク軸8の回転力により行っている。
この回転において、例えば、第1可動永久磁石4−1と第1他側吸反用永久磁石6−1とが最接近し、第1可動永久磁石4−1の磁極Sと第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極Nとの間に大きな吸引力が作用している状況では、第1他側吸反用永久磁石6−1の磁極Nを磁極Sに変更するために要求される回転力が大きくなり、少々の回転力不足が生じて第1他側吸反用永久磁石6−1を円滑に回転させ難くなる。
このような円滑に回転させ難い状況は、第1〜第3可動永久磁石4−1〜4−3が第1〜第3案内筒2−1〜2−3の往動方向側端部および復動方向側端部に位置している場合に、第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3の全てについて起こりうる。
そこで、このような状況で第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3を円滑に回転させるために、回転に必要とするエネルギの一部、つまり少々の不足エネルギを外部から供給することも考えられ、このような外力の補給システムを付加する場合もある。
例えば、図1に2点鎖線で示すように、第1〜第3位相変更機構12−1〜12−3の第1〜第3一側回転軸17−1〜17−3あるいは第1〜第3他側吸反用軸18−1〜18−3のいずれか一方に、回転力を補う回転力補給機構20を設けることができる。回転力補給機構20は、第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3を回転させる際のクランク軸8の回転力を補うことで、第1〜第3一側吸反用永久磁石5−1〜5−3および第1〜第3他側吸反用永久磁石6−1〜6−3を円滑に回転させることができ、クランク軸8を連続して滑らかに回転させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、永久磁石の組み合わせで発生する吸引力と反発力を利用して、クランク軸を連続的に回転させて回転力を取り出すことができるものであり、発電機や産業機器などを駆動するための原動機として利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 動力装置
2−1〜2−3 第1気筒部〜第3気筒部
3−1〜3−3 第1案内筒〜第3案内筒
4−1〜4−3 第1可動永久磁石〜第3可動永久磁石
5−1〜5−3 第1一側吸反用永久磁石〜第3一側吸反用永久磁石
6−1〜6−3 第1他側吸反用永久磁石〜第3他側吸反用永久磁石
7−1〜7−3 第1ガイド溝〜第3ガイド溝
8 クランク軸
9−1〜9−3 第1クランクピン〜第3クランクピン
10−1〜10−3 第1コネクティングロッド〜第3コネクティングロッド
11−1〜11−3 第1支持軸〜第3支持軸
12−1〜12−3 第1位相変更機構〜第3位相変更機構
13−1〜13−3 第1駆動ギヤ〜第3駆動ギヤ
14−1〜14−3 第1一側従動ギヤ〜第3従動ギヤ
15−1〜15−3 第1中間ギヤ〜第3中間ギヤ
16−1〜15−3 第1他側従動ギヤ〜第3他側従動ギヤ
17−1〜17−3 第1一側回転軸〜第3一側回転軸
18−1〜18−3 第1中間軸〜第3中間軸
19−1〜19−3 第1他側回転軸〜第3他側回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる案内筒と、この案内筒内に往復運動自在に支持され且つ往動方向側端および復動方向側端におのおの異なる磁極を有する可動永久磁石と、前記案内筒の往動方向側端部に配設され且つ前記可動永久磁石の往動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極を有して吸引力または反発力を発生させる一側吸反用永久磁石と、前記案内筒の復動方向側端部に配設され且つ前記可動永久磁石の復動方向側端に対向する外周に複数の異なる磁極を有して吸引力または反発力を発生させる他側吸反用永久磁石と、から構成される気筒部を設け、
前記可動永久磁石の往復運動を回転運動に変換するクランク軸を設け、
前記可動永久磁石の往復運動を前記クランク軸に伝達するコネクティングロッドを設け、
前記可動永久磁石の往復運動に連動して前記可動永久磁石の磁極に対向する前記一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石の磁極の位相を変更する位相変更機構を設け、
前記可動永久磁石の往動方向側端の磁極に対向する前記一側吸反用永久磁石の外周の磁極を前記位相変更機構により同極および異極のいずれか一方の位相に変更するともに前記可動永久磁石の復動方向側端の磁極に対向する前記他側吸反用永久磁石の外周の磁極を前記位相変更機構により同極および異極のいずれか他方の位相に変更することで、前記可動永久磁石と前記一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石との間に発生する吸引力と反発力とにより前記可動永久磁石を往復運動させて前記クランク軸を回転させることを特徴とする動力装置。
【請求項2】
前記気筒部を複数個設け、
前記複数個の気筒部の可動永久磁石が案内筒内を一定間隔で順次に往復運動するように、前記複数個の気筒部の可動永久磁石の相対位置を異ならせて前記コネクティングロッドにより前記クランク軸に接続したことを特徴とする請求項1に記載の動力装置。
【請求項3】
前記位相変更機構により前記一側吸反用永久磁石および他側吸反用永久磁石を回転させる際の前記クランク軸の回転力を補う回転力補給機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の動力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92102(P2013−92102A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234607(P2011−234607)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(396023074)有限会社龍建築設計事務所 (1)