説明

動物生細胞の生体外保存及び動物生細胞の保存に使用するのに適した化合物

式(I)のある種の化合物又はその塩は、動物生細胞の生体外保存に使用するのに適している。動物生細胞は、幹細胞などの単離細胞、又は組織若しくは器官などの細胞の群であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物生細胞の生体外(in vitro)保存及び動物生細胞の保存に使用するのに適した化合物に関する。特に、限定しないが、本発明は、幹細胞の生体外保存、及び幹細胞の保存に使用するのに適した化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、いったん採取すると、生存可能な状態であり続けるために及びその未分化状態を保つために、医療又は研究の目的に使用する前に保存しなければならない。
【0003】
幹細胞は、液体窒素の温度(−196℃)で保存した場合にはいつまでも保存できることは周知である。しかし、凍結方法は、細胞に回復できない損傷を引き起こすかもしれず、そのようなものとして、種々の凍結保存剤を凍結方法に先立って細胞懸濁液に加えることができることが文献で十分に立証されている。米国特許出願公開第2005/0106554号明細書には、多能性細胞、特にヒト胚幹細胞を凍結保存するための方法及び組成物が開示されている。米国特許出願公開第2005/0106554号明細書に開示されている方法は、従来の方法と比較すると細胞生存率の上昇及び細胞分化の低下を示すことが明らかにされている。米国特許出願公開第2005/0106554号明細書に開示されている凍結保存方法は、固体支持マトリックスの二つの層の間に細胞を封入し、得られるマトリックス−細胞−マトリックス組成物に凍結保存剤を加え、前記組成物を、細胞を凍結保存するのに十分な温度まで冷却することからなる。米国特許出願公開第2005/0106554号明細書には、適当な凍結保存剤として、炭水化物系媒体、好ましくはトレハロースが開示されている。国際公開第WO2005/118785号明細書には、幹細胞を凍結保存する方法であって、細胞懸濁液について、幹細胞の長期保存を可能にするのに十分な温度に下げる前に、氷核形成を行うことを含む、幹細胞を凍結保存する方法が開示されている。国際公開第WO2005/118785号明細書には、さらに、細胞懸濁液は外因性生物学的凍結保護剤、例えば血清を含有していてもよいし又は含有していなくてもよいことが開示されている。
【0004】
また、幹細胞の保存について多数の非低温方法も知られている。このような方法では、幹細胞は、一般に、組織細胞培養増殖培地を含有する水溶液に細胞分散液として保存される。多くの場合、このような水溶液には、細胞生存率が低下する割合を下げるように、防腐剤化合物を含有させる。典型的な例において、米国特許第5,912,174号明細書には、前記の細胞の集団をゼラチン含有水性混合物に懸濁させることによって複製及び分化できる哺乳動物細胞の集団を保存する方法が開示されている。好ましい混合物は、標準組織細胞培養増殖培地、例えばRMPI培地又はイーグルの培地を含有する。場合によっては、細胞特異的増殖因子を、細胞生存率を保持するために加えてもよく、最適保存寿命のために、保存温度は0〜4℃の間に維持されるべきである。また、欧州特許出願公開第EP−A−1057405号明細書には、特に、移植用の幹細胞、組織又は器官の生体外非凍結保存のための、ポリフェノールと、ユーロ・コリンズ(Euro−Collins)溶液、UW溶液、血清及び抗生物質溶液から選択される保存液とを含有する水性保存液の使用が開示されている。欧州特許出願公開第EP−A−1057405号明細書に開示されているポリフェノールは、カテキン類、例えばエピガロカテキン、タンニン酸、プロアント−ジアニシジン、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、オイゲノール及びケルセチンを包含する。欧州特許出願公開第EP−A−1057405号明細書には、開示されている化合物のいずれも未分化細胞の生存能力を保存し得るという効果は、何ら示唆されていない。
【0005】
酸化的損傷を伴う疾患又は障害、例えば癌、心疾患、神経障害、自己免疫疾患、虚血再灌流障害、糖尿病性合併症、敗血症性ショック、肝炎、アテローム性動脈硬化症、及びHIV又はB型肝炎により生じる合併症を有する患者の治療用の酸化防止剤としてある種のフラボノイド化合物の治療使用可能性が、国際公開第WO2004/007475号明細書から知られている。国際公開第WO2004/007475号明細書にはまた、日焼け止め組成物及びスキンケア組成物におけるフラボノイド化合物の応用可能性も開示されている。また、国際公開第WO2004/007475号明細書には、フラボノイド化合物の食品安定剤としての使用可能性が開示されており、この場合には該化合物のフリーラジカルを除去する能力は、保存中の食品の品質の劣化を防ぐか又は遅らせることに有用であると考えられる。しかし、国際公開第WO2004/007475号明細書には、生命体(living matter)の生体内治療処置及び無機物(dead matter)の生体外安定化処置のためのフラボノイド化合物の使用が開示されているが、フラボノイド化合物が生命体物の生体外保存に有用であろうということは開示も示唆もない。
【0006】
J.Agric.Food Chem.、第48巻、第3876−3884頁(Mirandaら)には、ヒト低比重リポタンパク質の生体外酸化を抑制するためにある種のフラボノイド化合物の試験が開示されている。British Journal of Cancer、2003年、第89(2)巻、第357−362頁及び第89(11)巻、第2140−2146頁には、ヒト臍帯血管内皮細胞及び新生児ラット心臓粘液細胞それぞれの保護に基づいて、生体外でのドキソルビシン誘発性炎症作用に対する保護及び生体外でのドキソルビシン誘発性心臓毒性に対する保護を提供するとしてモノHERの使用が開示されている。両方の細胞型は、完全に分化している。Free Radical Biology & Medicine、2002年、第32(7)巻、第596−604頁には、ある種のフラボノイドについて酸化ストレスからラット皮質細胞の一次培養物を保護するための試験が開示されている。これらの細胞型は、完全に分化している。Bio.& Pharm.Bull.、2001年、第24(12)巻、第1373−1379頁には、ヒト皮膚細胞に対する酸化ストレスに対してある種の植物由来の抽出物、例えば幾つかのフラボノイドの混合物の生体外保護効果が開示されている。これらの細胞型は、完全に分化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0106554号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2005/118785号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開EP−A−1057405号明細書
【特許文献4】国際公開WO2004/007475号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.、第48巻、第3876−3884頁
【非特許文献2】British Journal of Cancer、2003年、第89(2)巻、第357−362頁
【非特許文献3】British Journal of Cancer、2003年、第89(11)巻、第2140−2146頁
【非特許文献4】Free Radical Biology & Medicine、2002年、第32(7)巻、第596−604頁
【非特許文献4】Bio.& Pharm.Bull.、2001年、第24(12)巻、第1373−1379頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、動物生細胞の改良された生体外保存方法を提供することにある。特に、本発明の目的は、研究又は医療の目的、例えば移植のための哺乳動物の細胞、組織又は器官の改良された生体外保存方法を提供することにある。さらに好ましくは、本発明の目的は、幹細胞の改良された生体外保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その種々の態様における発明は、付属の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0011】
第一の態様において、本発明は、動物生細胞を生体外保存する方法であって、前記動物生細胞を、式I
【0012】
【化1】

〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含み;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり且つRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25はHを表し且つR27及びR28はHを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は、1を越えない〕
の化合物又はその塩と接触させることを含む、方法を提供する。
【0013】
一実施形態において、本発明は、動物生細胞を生存可能な非最終分化状態で生体外保存する方法であって、非最終分化動物生細胞を、式I
【0014】
【化2】

〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含み;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり且つRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25はHを表し且つR27及びR28はHを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は、1を越えない〕
の化合物又はその塩と接触させることを含む、方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、組織又は器官として存在する動物生細胞を生体外保存する方法であって、前記動物生細胞を、式I
【0016】
【化3】

〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含み;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり且つRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25はHを表し且つR27及びR28はHを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は、1を越えない〕
の化合物又はその塩と接触させることを含む、方法を提供する。
【0017】
動物生細胞の生体外保存方法に関する他に、本発明はまた、新規化合物にも関する。意外にも、これらの新規化合物は、動物生細胞用の保存剤として使用するのに適していることが見出された。
【0018】
従って、本発明の別の態様において、式Ia
【0019】
【化4】

〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含有し;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり及びRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27は、R28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25は、Hを表し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖は、C、Cあるいは5員、6員又は7員環に結合する−CH−基を含み且つ二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は1を超えない;
但し、i)n=1であり、ii)Xが−O−を表し、iii)R12が−OHを表し、iv)R24がR25と一緒になって=Oを表し、v)R20、R21、R22及びR23が、CとCとを含むベンゼン環を形成し、且つvi)前記ベンゼン環が、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である少なくとも一つの基で置換される場合には、前記C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、スルホニル、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;及び/又は前記C2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され;この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;及び/又は前記ベンゼン環は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖から選択される一つ以上の基で置換され、C1−6炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されることを条件とする〕
の化合物又はその塩が提供される。
【0020】
本発明のそれぞれの態様において、式I又はIaの化合物又はその塩は、式II
【0021】
【化5】

〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含有し;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり及びRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27は、R28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25は、Hを表し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖は、C、Cあるいは5員、6員又は7員環に結合する−CH−基を含み且つ二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は1を超えない〕
の化合物又はその塩であってよい。
【0022】
本発明のそれぞれの態様において、XはOであり得る。
【0023】
本発明のそれぞれの態様の幾つかの実施形態において、n=0である。本発明のそれぞれの態様の別の実施形態において、n=1である。
【0024】
本発明のそれぞれの態様において、R12及びR26は、両方共にOHを表し得るか又は両方共にグリコシド官能基を表し得る;及び/又はR12及びR26の両方ではなく一方は、グリコシド官能基を表し得、例えば、R26がグリコシド官能基である場合には、R12はOHであり得るし又は逆も同様である;及び/又はR11及びR13の一つ又は両方は、OHを表し得る;及び/又はR10及びR14は、それぞれ独立してH、OH又はC1−6アルコキシ−を表す。X=Oであり且つR27がR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するこのような化合物の例は、式III
【0025】
【化6】

〔式中:
A)R10及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含有し;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;又は
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;及び
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;又は
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含有する5員、6員又は7員不飽和環(「A」環)の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、場合により及び独立してニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成するか、又はii)R24及びR25はHを表し;
前記のR20、R23又は5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、場合により及び独立してC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;R20、R23あるいは5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、場合により及び独立して−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;並びに
環C上の=Oの総数は、1を越えない〕
の化合物又はその塩である。X=Oであり、n=1であり、R24がR25と一緒になって=Oを形成し且つR27がR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するこのような化合物のさらなる例は、式VI
【0026】
【化7】

〔式中:
A)R10及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;及び環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含有し;且つ−O−glyは、グリコシド官能基を表し;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;又は
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;及び
23は、HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
この場合のR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含有する5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、場合により及び独立してニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
前記のR20、R23あるいは5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、場合により及び独立してC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;R20、R23あるいは5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、場合により及び独立して−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);及びこの場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2である〕
の化合物又はその塩である。
【0027】
20、R21、R22及びR23が5員、6員又は7員環の一部分を形成する本発明の第一の態様に有用な化合物の例は、式VII
【0028】
【化8】

(式中、
はC〜C30飽和又は不飽和炭化水素鎖であり;
10、R11、R13、R14及びR26は、それぞれ独立してH、OH、C1−6アルコキシを表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;
場合によりC環のCとCの間に二重結合が存在し;及び
nは、0又は1を表し;並びに
は、C〜C15飽和又は不飽和炭化水素鎖であり、Rが存在する場合にはR及びRは共にC〜C12脂肪族アルキル鎖である)
の化合物又はその塩である。
【0029】
基は、環A上でCに対してパラ位で置換されるのが好ましい。R基は、C6−15飽和又は不飽和炭化水素鎖であることが好ましい。
【0030】
式VIIの化合物は、国際公開第WO2004/007475号明細書に開示されており、それ自体は、具体的には本発明の第二の態様の範囲から除外される。
【0031】
本発明の両方の態様において、式I又はIaの化合物あるいはこれらの塩は、アントシアニンであってもよい。アントシアニン類は、一般に、これらの水和ヘミケタール体とこれらのフラビリウムカチオン体との間で平衡で存在することが知られており、水和ヘミケタール体及びフラビリウムカチオン体の両方は、本発明の範囲内に入るとみなされる。本発明の範囲内のアントシアニン類は、式Iの化合物又はその塩であって、
12がOHを表し、
26がグリコシド官能基を表し、
25が、R27と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し、
28がOHを表し、
X=Oであり、
n=1であり、並びに
20、R21、R22及びR23が、CとCとを含有する6員不飽和環の一部分を形成し、この環が、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である少なくとも一つの基で置換され、この環が、場合により及び独立してニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C1−6炭化水素鎖が、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよい、式Iの化合物又はその塩である。本発明の範囲内のアントシアニン類は、式VIIIHH(これは、その水和ヘミアセタール型の化合物の構造式である)及び式VIIIFC(これは、そのフラビリウムカチオン型の化合物の構造式である)で表すことができる。フラビリウムカチオン型はまた、式VIIIFHで表される非イオン性フラビリウム型と平衡状態にある。
【0032】
【化9】

式VIIIHH
【0033】
【化10】

式VIIIFC
【0034】
【化11】

式VIIIFH
【0035】
本発明のそれぞれの態様において、式I又はIaの化合物あるいはその塩においてR20、R21、R22及びR23が、CとCとを含有する5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成する場合には、その環は、前記で定義された通り、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれかでC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖で置換される。環は、独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換されていてもよく、C1−6炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよい。オルト位での置換とは、環のCに隣り合った炭素上での置換を意味する。メタ位での置換とは、Cから離れたオルト位に隣り合った炭素上での置換を意味する。パラ位での置換とは、Cから離れたメタ位に隣り合った炭素上での置換を意味する。当業者には、5員環の場合には、パラ位は、メタ位としても定義し得ることが分かるであろう。一つの実施形態において、式Iの化合物又はその塩は、5員、6員又は7員環であってそのメタ位又はパラ位で置換されたC2−30炭化水素鎖を有する5員、6員又は7員環からなる。例えば、式Iの化合物又はその塩は、6員環であってそのメタ位又はパラ位で置換されたC2−30炭化水素鎖を有する6員環からなり得る。
【0036】
「グリコシド官能基」という用語は、当該技術において周知であり、本明細書の構造式において−O−glyとして表される。しかし、誤解を避けるために、本発明者らは、主要構造にグリコシド官能基結合によって結合された炭水化物基を意味する。炭水化物は、糖であることが好ましい。糖は、グルコース、ラムノース又はルチノースであることが好ましい。
【0037】
本発明のそれぞれの実施形態において、R20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、2〜20個の炭素原子、好ましくは6〜15個の炭素原子を有していてもよい。前記炭化水素鎖は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個又は18個の連続した炭素原子を有する主鎖を有することが適切である。
【0038】
20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、C、Cあるいは5員、6員又は7員環に結合する−CH−を含有していてもよい。これは、例えば、前記C2−30炭化水素鎖はアルコキシ基でなくてもよいが、C2−30炭化水素鎖内の一つ以上の炭素原子がアルコキシ基で置換されていてもよいことを意味する。
【0039】
20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、非置換であってもよく、飽和されることが好ましい。R20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、好ましくは6〜15個の炭素原子を含有する直鎖炭化水素鎖であることが好ましい。
【0040】
2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖が5員、6員又は7員不飽和環上に存在する場合には、この環は、場合により及び独立してニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよい。一つの実施形態において、前記の環は、C2−30炭化水素鎖を除いて非置換である。別の実施形態において、この環は、−NH及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基で置換されていてもよく、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよい。
【0041】
動物生細胞を保存することができる具体的な化合物又はその塩の例としては、
【0042】
【化12】


が挙げられる。
【0043】
本発明の化合物は、動物生細胞の生体外保存に有用である。当業者には、ある状況においては、保存は永続的な状態ではないかもしれないが、ここでは保存とは個々の細胞又は細胞の群の生存率の低下の割合の減少を包含することを意図することが、分かるであろう。「動物生細胞の生体外保存」という表現は、当業者には十分に理解されるであろうが、万が一何らかの疑念が生じる場合には、組織及び器官を含め個々の細胞又は細胞の群の生体外保存を意味することを意図する。生体外での研究目的に有用である他に、当業者には、細胞又は細胞の群のこのような生体外保存は、結果として生じる自己移植、同系移植、同種移植又は異種移植のためのものであり得ることが分かるであろう。
【0044】
例えば、本発明の化合物は、生存可能な最終分化細胞、例えば赤血球細胞、及びt−細胞及びb−細胞等のリンパ球細胞の生体外保存において使用し得る。前記の一つ以上の最終分化細胞は、個々の単能性幹細胞の形態であるか又は組織、すなわち生体内で同様の機能を果たすことができる相互結合細胞の集まりの形態であることができる。保存に適した組織としては、上皮組織、結合組織、筋肉組織及び神経組織が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記の一つ以上の完全に分化した細胞は、器官、すなわち特定の機能又は機能の群を生体内で果たすことができる組織の群を形成でき、又はその一部であることができる。保存に適した器官としては、心臓、肺、脳、眼、胃、脾臓、骨、膵臓、腎臓、肝臓、腸、皮膚及び膀胱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の方法は、動物生細胞を生存可能な非最終分化状態で保存するのに使用される。「生存可能な非最終分化状態での動物生細胞の保存」という表現は、当業者には十分に理解されるであろうが、万が一何らかの疑念が生じる場合には、細胞が分裂する能力を保ち且つ少なくとも一つの非最終分化細胞型を生じるような、非最終分化動物生細胞の保存を包含することを意図する。
【0046】
分化とは、未分化細胞が分化するプロセスであり、実際には、未分化細胞が特定の細胞系統になる、及び/又はその特定の細胞型に分化する元の能力を失うことを意味する。
【0047】
非最終分化した細胞は、種々の異なる細胞型を生じ、また部分的分化細胞として記載することができる。このような細胞としては、三つの胚生殖細胞層:内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞が挙げられる。本発明の方法を使用して保存される細胞としては、未分化細胞も挙げられ、これらは多数の細胞型に分化する能力を有する。本発明の方法を使用して保存される未分化細胞は、典型的には幹細胞である。本発明の方法を使用して保存される細胞としてはまた、脱分化細胞も挙げられ、これらは、部分的分化又は最終分化細胞が初期発育段階に戻る場合に産生される。従って、脱分化細胞は、分化されていないか又は部分的に分化されることができる。この態様において、本発明の方法は、脱分化神経細胞の保存に特に有用である。また、本発明の方法は、脱分化している細胞培養における細胞の保存に有用である。
【0048】
非最終分化細胞としては、分化プロセス又は脱分化プロセスの特定の段階で停止している細胞が挙げられる。従って、非最終分化細胞としては、特定の細胞系統になりながら特定の段階で停止している細胞、非最終分化又は最終分化した後に初期発育段階に戻りながら特定の段階で停止している細胞、及び脱分化した後に再分化する細胞が挙げられる。
【0049】
一つの実施形態において、本発明は、輸送又は保存される前に、分化の非最終状態まで分化している細胞、すなわち部分的分化細胞の保存に用途が見出される。細胞は、この場合に、必要とされる場合には最終分化状態に誘導することができる。
【0050】
本発明のこの態様において、本発明の方法で保存される細胞は、移植に使用できる。典型的には、このような細胞は、部分的に分化しており、多数の異なる細胞型に分化する能力を保有する。
【0051】
本発明の方法を使用して保存できる未分化動物細胞は、典型的には幹細胞である。幹細胞は、種々の異なる型の細胞に分化することができ且つ自己再生できる未分化細胞である。本発明の方法を使用して保存できる幹細胞としては、全能性幹細胞(胚及び胚外細胞型に分化することができる)、多分化能幹細胞(内胚葉、中胚葉及び外胚葉に分化することができる)、及び多能性幹細胞(複数の密接に関連した細胞に分化することができる)が挙げられる。
【0052】
本発明の方法を使用して保存できる幹細胞の型としては、胚幹(ES)細胞(ESC)、成体幹細胞及び誘導多能性幹(iPS)細胞が挙げられる。胚幹細胞は、哺乳動物胚の胚盤胞から誘導され、全能性である。胚幹細胞は、EvansとKaufmanによって初めて記載された(Nature、292(5819):154−156、1981)。成体幹細胞は、多能性であり、造血幹細胞及び間葉幹細胞を包含する。誘導多能性細胞は、非多能性細胞、例えば成体体細胞からある種の遺伝子を挿入することによって人工的に誘導され、胚幹細胞に極めて類似している(Takahashi et al.、Cell、131(5):861−872、2007;及びYu et al.、Science 318(5858)、1917−1920、2007)。幹細胞はまた、臍帯血中にも見出され、このような臍帯血幹細胞も本発明の方法を使用して保存できる。
【0053】
本発明の方法を使用して保存できる幹細胞は、ヒト又は非ヒト幹細胞であり得る。典型的には、幹細胞は、マウス胚幹細胞又はヒト胚幹細胞である。本発明の方法を使用して保存できる幹細胞としては、トランスジェニック幹細胞が挙げられる。本発明の方法を使用して保存できる幹細胞としてはまた、ハイブリッド胚又は細胞質ハイブリッド(サイブリッド)胚から産生される幹細胞も挙げられる。
【0054】
本発明の方法を使用して保存できる他の型の未分化細胞としては、胚性生殖(EG)細胞及び胚性癌(EC)細胞が挙げられる。
【0055】
未分化細胞は、例えば、特定の標識遺伝子の発現によって同定することができる。例えば、幹細胞は、標識遺伝子Oct3/4及びNanogの発現によって同定することができる。このような標識遺伝子の発現は、当該技術において知られている適当な方法、例えば、qPCRで調べることができる。
【0056】
本発明の方法を使用して保存できる未分化動物細胞は、典型的には哺乳動物細胞である。このような哺乳動物細胞としては、ヒト細胞及び非ヒト細胞が挙げられる。例えば、非ヒト細胞は、齧歯類、例えばマウス、ラット及びモルモット;有蹄類、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ及びブタ;又はその他の哺乳動物、例えばネコ、イヌ、ウマ又はウサギ由来の細胞であり得る。動物細胞は、あるいは、鳥細胞、例えばニワトリ又は七面鳥由来の細胞、又は魚細胞、例えばゼブラフィッシュ又はサケ由来の細胞であり得る。
【0057】
式Iの化合物又はその塩は、欧州特許出願公開第EP−A−1057405号明細書に開示されている関連方法のいずれかで動物生細胞を保存するのに使用し得る。
代表的な化合物の合成
20、R21、R22及びR23がCとCとを含有する6員不飽和環の一部分を形成する式I及びIaの化合物は、国際公開第WO2004/007475号明細書に記載の方法で形成し得る。当業者は、この方法を5員又は7員環を含有する式I又はIaの化合物の製造に容易に適合させることができるであろう。
【0058】
20、R21、R22及びR23がCとCとを含有する6員不飽和環の一部分を形成しない式I又はIaの化合物は、以下の方法で形成し得る。
【0059】
その場での急冷プロトコールの使用により、最終的に目的化合物のB環を形成するのに使用される所望のボロン酸を得た(スキーム1)。
【0060】
【化13】

スキーム1.試薬及び条件:i.BBr(1.0M CHCl溶液、10当量)、CHCl、0℃〜室温、16時間(97%);ii.BnBr(3.30当量)、KCO(4.00当量)、DMF、100℃、18時間。(57%);iii.t−BuLi(2.20当量)、B(O−Pr)、THF、−78℃〜室温、16時間、(60%)。
【0061】
ホスホン酸エステル(11)を、次の通りに調製した:
【0062】
【化14】

【0063】
THF(50mL)に溶解した5(1.88g、8.52ミリモル、1.00当量)の攪拌溶液に、ベンジルアルコール(4.40mL、4.60g、42.6ミリモル、5.00当量)を加え、次いでトリフェニルホスフィン(2.23g、8.52ミリモル、1.00当量)を加えた。反応物を0℃に冷却し、DIAD(1.7mL、1.72g、8.52ミリモル、1.00当量)を滴加した。反応物を室温まで温め、4時間攪拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(10%EtOAc:90%石油→20%EtOAc:80%石油→30%EtOAc:70%石油→50%EtOAc:50%石油)で精製して、ベンジル化化合物を約30%低減したDIADを含有する黄色油状物として得た(1.01g、38%、不純物を含有)。得られた粗製ベンジル化化合物(535mg、1.72ミリモル、1.00当量)をCHCl(5mL)で希釈し、SOCl(188μL、2.58ミリモル、1.50当量)を0℃で加えた。反応物を、室温まで温めながら、HPLCで反応が完結するときまで2.5時間攪拌した。反応混合物を、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(10%EtOAc:90%石油→20%EtOAc:80%石油)で精製して、褐色油状物を得た(276mg、49%)。得られた塩化物(261mg、0.79ミリモル、1.00当量)をトリメチルホスファイト(2mL)に溶解し、反応物を加熱還流し、16時間攪拌した。反応物を室温まで冷却し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(70%EtOAc:30%石油→100%EtOAc)で精製して、表題ホスホン酸エステル11を褐色油状物として得た(233mg、73%)。H−NMR(400MHz,CDC13)7.47−7.43(2H,m,2xArH),7.38 7.31(3H,m,3xArH),6.35(1H,d,J3.0,ビニルH),5.25(2H,s,OCH2Ar),3.80(6H,d,J11.1,2xOCH3),3.07(2H,d,J21.7,CH2P)。
【0064】
【化15】

【0065】
1:1のDMF/THF(8mL)に溶解した11(400mg、0.99ミリモル、1.00当量)に、−78℃で、LHMDS(1.0M THF溶液;1.10mL、1.09ミリモル、1.10当量)を加え、反応物をその温度で10分間攪拌した(黄色/橙色)。DMF(4mL)に溶解したヘプトアルデヒド(113mg、0.99ミリモル、1.00当量)を−78℃で一度に加え、反応物をその温度で45分間攪拌した。反応物を0℃まで温め、HPLCで反応が完結するまで、10分間攪拌した。反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を用いて急冷し、EtOAc(3×10mL)に抽出した。一緒にした有機抽出液を、水(10mL)及び食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーで精製し(10%EtOAc:90%石油)、アルケン12bを無色油状物及びE異性体とZ異性体それぞれの2.5:1.0混合物として得た(251mg、65%)。H−NMR(400MHz,CDC13)7.50−7.45(2H,m,2xArH),7.40−7.30(3H,m,3xArH),6.62(0.7H,dt,J15.7及び7.1,ビニルH),6.24(0.3H,s,HC=CO);6.16(0.7H,s,HC=CO),6.08−5.98(0.3H,m,ビニルH),6.01(0.7H,dt,J15.7及び1.5,ビニルH),5.92(0.3H,dt,J12.1及び1.52,ビニルH),5.28(0.6H,s,OCH2Ar),5.26(1.5H,s,OCH2Ar),2.46(0.6H,ddd,J13.1,7.5及び1.5,アリルCH2),2.24(1.5H,ddd,J13.1,7.5及び1.5,アリルCH2),1.52−1.44(2H,m,CH2),1.40−1.24(6H,m,CH2),0.93−0.88(3H,m,CH3)。
【0066】
【化16】

【0067】
1:1のDMF/THF(8mL)に溶解した11(400mg、0.99ミリモル、1.00当量)に、−78℃で、LHMDS(1.0M THF溶液;1.10mL、1.09ミリモル、1.10当量)を加え、反応物をその温度で10分間攪拌した(黄色/橙色)。DMF(4mL)に溶解したウンデカナール(168mg、0.99ミリモル、1.00当量)を−78℃で一度に加え、反応物をその温度で45分間攪拌した。反応物を0℃まで温め、HPLCで反応が完結するまで、10分間攪拌した。反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を用いて急冷し、EtOAc(3×10mL)に抽出した。一緒にした有機抽出液を、水(10mL)及び食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーで精製し(5%EtOAc:95%石油→10%EtOAc:石油)、アルケン12cを無色油状物及びE異性体とZ異性体それぞれの約3:1混合物として得た(336mg、76%)。H−NMR(400MHz,CDC13)7.50−7.45(2H,m,2xArH),7.40−7.30(3H,m,3xArH),6.61(0.7H,dt,J15.7及び7.1,ビニルH),6.24(0.3H,s,HC=CO),6.16(0.7H,s,HC=CO),6.07−5.99(0.3H,m,ビニルH),6.00(0.7H,dt,J16.1及び1.5,ビニルH),5.92(0.3H,dt,J11.6及び1.5,ビニルH),5.28(0.6H,s,OCH2Ar),5.25(1.4H,s,OCH2Ar),2.46(0.5H,ddd,J15.2,7.6及び1.5,アリルH),2.24(1.5H,ddd,J15.2,7.6及び1.5,アリルH),1.52−1.42(2H,m,CH2),1.40−1.22(14H,m,7xCH2),0.90(3H,t,J7.1,CH3)。
【0068】
【化17】

【0069】
DMF/HO(2:1、5.1mL)中の12b(251mg、0.64ミリモル、1.00当量)、Pd(PPh(69mg、0.06ミリモル、10モル%)及びKCO(283mg、2.05ミリモル、3.20当量)の懸濁液を5分間脱気し、次いでDMF(1.8mL)に溶解したボロン酸(310mg、0.71ミリモル、1.10当量)の脱気溶液を加え、反応物を60℃に加熱し、4時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、水(20mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。一緒にした有機抽出液を、乾燥し(MgSO)、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーで精製し(10%EtOAc:90%石油→20%EtOAc:80%石油→30%EtOAc:70%石油→40%EtOAc:60%石油)、表題化合物を黄色油状物として得た(332mg、74%)。H−NMR(400MHz,CDC13)7.48−7.20(22H,m,22xArH),6.52−5.90(3H,m,ビニルH及びピラノンH),5.32−4.92(8H,m,4xOCH2Ar),2.60−2.20(2H,m,CH2),1.58−1.40(2H,m,CH2),1.40−1.20(6H,m,3xCH2),1.00−0.80(3H,m,CH3)。
【0070】
【化18】

【0071】
DMF/HO(2:1、5.1mL)中の12c(204mg、0.46ミリモル、1.00当量)、Pd(PPh(53mg、0.05ミリモル、10モル%)及びKCO(203mg、1.47ミリモル、3.20当量)の懸濁液を5分間脱気し、次いでDMF(1.8mL)に溶解したボロン酸(221mg、0.50ミリモル、1.10当量)の脱気溶液を加え、反応物を60℃に加熱し、4時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、水(20mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。一緒にした有機抽出液を、乾燥し(MgSO)、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーで精製し(10%EtOAc:90%石油→20%EtOAc:80%石油→30%EtOAc:70%石油→40%EtOAc:60%石油)、表題化合物を黄色油状物として得た(260mg、74%)。H−NMR(400MHz,CDC13)7.50−7.20(22H,m,22xArH),6.50−6.00(3H,m,3xビニルH),5.30−4.90(6H,m,OCH2Ar),2.56−2.48(0.4H,m,CH2),2.28−2.20(1.4H,m,CH2),1.57−1.40(2H,m,CH2),1.40−1.20(14H,m,7xCH2),0.92−0.84(3H,m,CH3)。
【0072】
【化19】

【0073】
13b(320mg、0.45ミリモル、1.00当量)を、必要最少量の酢酸エチルに溶解し、MeOH(10mL)に溶解した。10%Pd/C(180mg)を、MeOH(1mL)を用いてスラリー化し、前記溶液に加えた。得られた溶液を、排気し、Hで3回充填し直し、1時間攪拌した。得られた懸濁物を、セライト(Celite)(登録商標)に通して濾過し、真空中で濃縮し、14bを黄褐色固体として得た(105mg、67%)。H−NMR(400MHz,d−DMSO/D2O shake)7.06(2H,s,2xArH),6.24(1H,s,ビニルH),2.59(2H,t,J7.1,CH2),1.64(2H,クインテット,J7.1,CH2),1.30−1.10(10H,m,5xCH2),0.81(3H,t,J7.1,CH3)。
【0074】
【化20】

【0075】
13c(250mg、0.33ミリモル、1.00当量)を、必要最少量の酢酸エチルに溶解し、MeOH(10mL)に溶解した。10%Pd/C(150mg)を、MeOH(1mL)を用いてスラリー化し、前記溶液に加えた。溶液を、排気し、Hで3回充填し直し、1時間攪拌した。得られた懸濁物を、セライト(Celite)(登録商標)に通して濾過し、真空中で濃縮し、14cを黄褐色固体として得た(84mg、63%)。H−NMR(400MHz,d−DMSO/D2O shake)7.08(2H,s,2xArH),6.24(1H,s,ビニルH),2.59(2H,t,J7.1,CH2),1.64(2H,クインテット,J7.1,CH2),1.37−1.00(18H,m,9xCH2),0.81(3H,t,J7.1,CH3)。
【0076】
実験
次の実験を、マウス胚幹細胞における酸化ストレス誘発細胞毒性に関してある種の抗酸化化合物の保護効果を実証するために行った:
酸化ストレス及び関連フリーラジカル損傷を、細胞、例えば幹細胞において、培養培地中でtert−ブチルヒドロペルオキシドに細胞を暴露することによって誘発させた。ある時間にわたる過酸化物の分解は、活性酸素種の規則的な発生をもたらす。これは、次々にフリーラジカル介在事象のカスケードを誘発し、最終的に回復不可能な損傷をもたらし、最終的に天然抗酸化防御として細胞死を負わせる。
【0077】
過酸化物暴露によって誘発される細胞毒性の程度は、多数の十分に文献で立証されたアッセイ、例えばMTTプロトコールを使用して定量することができる。これは、MTTのホルマザンへの還元、すなわち細胞が生存可能である場合にだけ生じることができるプロセスを測定する比色アッセイである。従って、対照細胞中で産生されるホルマザンの量を、細胞毒性物質、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドで処理した細胞と比較することによって、細胞毒性物質によって誘発された細胞生存率の低下を測定できる。
【0078】
このアッセイは、細胞毒性物質に対して保護を提供する化合物の有効性を調べるためにさら拡張できる。新規な抗酸化剤(本特許の主題)の場合には、これは、tert−ブチルヒドロペルオキシドによる酸化ストレスの誘発の前に細胞の抗酸化剤とのプレインキュベーションによって達成できる。従って、対照細胞と、細胞毒性過酸化物を存在させ新規抗酸化剤とのプレインキュベーションを行うか又は行わない細胞との、産生されるホルマザンの量の比較により、化合物が細胞生存率を保持できる程度を調べることができる。
MTTアッセイのメカニズム
【0079】
【化21】

【0080】
96ウエルプレートに、ウエル当たり約20,000個のマウス胚幹細胞を接種し、37℃(5%CO)で一夜増殖させた。抗酸化剤(実験1、実験2及び実験3として表示した)を、DMSOに溶解し、ウエルに三重反復で加え、その30分後にtert−ブチルヒドロペルオキシドを用いて酸化ストレスを誘導した。ウエルの供試抗酸化剤の得られた濃度は、0.1μM、0.5μM及び1μMであった。対照もまた、細胞培地(DMEM)/DMSOを使用して開始させた。30分のプレインキュベーション時間の後に、tert−ブチルペルオキシドをウエルに加えて400μMの最終濃度を得た。平板培養細胞を、インキュベーター(37℃)に90分間戻した。この時間の後に、20μLのMTT試薬溶液を全てのウエルに加えた。次いで、プレートをさらに3時間インキュベートした。上清をウエルから除去し、200μlのDMSOを全てのウエルに加えて還元されたMTT(ホルマザン)を可溶化させた。プレートを光から保護し、10分間振盪した。上清をウエルから除去し、比色測定用に新たな96ウエルプレートに分注した。吸光度を540nmで測定した。
【0081】
結果及び考察
DMEM対照(これは、抗酸化化合物又はtert−ブチルヒドロペルオキシドを含有していなかった)についての平均補正吸光度(0.737)は、100%生存率基準を表した。種々のウエル処理レジームの補正吸光度と、DMEM対照の補正吸光度との比較は、細胞生存率に対して得られる効果を算出することを可能にした。tBHP=tert−ブチルヒドロペルオキシド。
【0082】
表1から、tert−ブチルヒドロペルオキシドに対する暴露は、細胞生存率を対照の37%まで低下させる。過酸化物を存在させない培養培地の1μMの濃度では、実験1も実験2も、生存率に悪影響を及ぼさず、化合物はその暴露の濃度で細胞毒性を誘発しないことを示す。
【0083】
実験1、実験2及び実験3は全て、tert−ヒドロペルオキシドの酸化ストレス誘発細胞毒性からの強い保護効果を示した。実験2は、この点で特に注目すべきであり、tert−ヒドロペルオキシドによって誘発される細胞生存率の減少をほぼ完全に反転させることができた(96.9%±3.9標準偏差)。濃度依存効果が観察された。
【0084】
構造活性相関について、実験2のドデシル鎖は、実験3のオクチル鎖よりも大きい効果を付与することが明らかである。これらの結果の重要な所見は、天然フラボノイドに関する文献に関連しており、そこでは多数の著者が、フラボノイドのA環の重要性について分子の抗酸化活性の不可欠な構成要素であるとさりげなく言及している(「Structure−Antioxidant Activity Relationships Of Flavonoids and Phenolic Acids; Rice−Evans et al.、;Free Radical Bioplogy & Medicine、Vol.20、No.7、pp933−956、1996」に例示されているように)。
【0085】
ここに示したデータは、A環構成要素は、必ずしも必須ではなく、強い抗酸化生物活性を保持しながら分子から完全に取り除くことができることを明確に実証している。この細胞生存率酸化ストレスアッセイにおける実験1と実験の2の比較は、活性はA環を取り除くことによって保ち得るだけではなく、高め得ることも示している。
【0086】
【表1】

試験化合物
実験1:
【0087】
【化22】

実験2:
【0088】
【化23】

実験3:
【0089】
【化24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物生細胞を生存可能な非最終分化状態で生体外保存する方法であって、非最終分化動物生細胞を、式I
【化1】







〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含み;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり且つRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25はHを表し且つR27及びR28はHを表すか、又はR27はR28と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になって、CとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖中の二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は、1を越えない〕
の化合物又はその塩と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
式Ia
【化2】







〔式中:
A)R12及びR26は、それぞれ独立して−OH又はグリコシド官能基を表し;R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、−OH、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、グリコシド官能基、C1−6アルコキシ−、ヒドロキシ−C1−6アルキル−、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル−を表すか、あるいはニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン又はアルデヒド基の一つ以上で置換されていてもよい飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖を表し;且つ環Bは、一つ以下のグリコシド官能基を含有し;
B)a):
20は、H又はC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21は、
i)Hを表すか;
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又は
iii)Xが−NR−であり及びRがH又はC1−6アルキルでない場合には、Rと一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
22は、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
23は、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;
ii)R22と一緒になって=Oを形成し;
この場合にR20及びR23の少なくとも一つは、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖であるか;あるいは、
b):
20、R21、R22及びR23は、CとCとを含む5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成し、この環は、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である基で置換され、この環は、任意に及び独立して、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C2−15炭化水素鎖から選択される一つ以上の基でさらに置換され、C2−15炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されていてもよく;
C)nは0又は1であり、nが0である場合には、i)R27及びR28は、Hを表すか、又はii)R27は、R28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;あるいはnが1である場合には、i)R24及びR25は、一緒になって=Oを形成し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか、又はii)R24及びR25は、Hを表し且つR27及びR28は、Hを表すか、又はR27はR28と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供するか;又はiii)R24はHを表し、R25はR27と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し、R28は−OHを表し且つXは−O−であり;
D)Xは、−O−、−S−又は−NR−であり、Rは、i)H又はC1−6アルキルを表すか、あるいはii)R21と一緒になってCとNの間の第二の結合を提供し;
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、任意に及び独立して、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;且つR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、任意に及び独立して、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され(但し、常に、得られる鎖は、C、Cあるいは5員、6員又は7員環に結合する−CH−基を含み且つ二つのこのような置換が連続していないことを条件とする);この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;
並びに環C上の=Oの総数は1を超えない;
但し、i)n=1であり、ii)Xが−O−を表し、iii)R12が−OHを表し、iv)R24がR25と一緒になって=Oを表し、v)R20、R21、R22及びR23が、CとCとを含むベンゼン環を形成し、且つvi)前記ベンゼン環が、C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖である少なくとも一つの基で置換される場合には、前記C2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖は、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、Cl、F、Br、I、−CN、−COH、スルホニル、−CO1−6アルキル、−S(O)1−6アルキル、−S(O)フェニル、−SC1−6アルキル、−NO、−OH、−CF、−N(R)(R)、−NHC(O)NHC1−6アルキル、−C(O)N(R)(R)、イミン及び置換又は非置換トリフェニルホスホニウムから選択される一つ以上の基で置換され;及び/又は前記C2−30炭化水素鎖に存在する一つ以上の利用可能な−CH−基は、−O−、−C(O)−、−S(O)−又は−N(R)−で置換され;この場合のR及びRは、それぞれ独立して、H又はC1−6アルキルを表し且つpは0〜2であり;及び/又は前記ベンゼン環は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ケトン、アルデヒド及び飽和又は不飽和C1−6炭化水素鎖から選択される一つ以上の基で置換され、C1−6炭化水素鎖は、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド又はニトロン基の一つ以上で置換されることを条件とする〕
の化合物又はその塩。
【請求項3】
Xが−O−を表す、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
12及びR26が共に−OHを表す、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2又は3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
12及びR26の一方が−OHを表し且つR12及びR26の他方がグリコシド官能基を表す、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2又は3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
n=1である、請求項1又は3〜5のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
n=0である、請求項1又は3〜5のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
20が、HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表し;
21が、
i)Hを表すか;又は
ii)R22と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;
22が、
i)Hを表すか;
ii)R23と一緒になって=Oを形成するか;又は
iii)R21と一緒になってCとCの間の第二の結合を提供し;及び
23が、
i)HあるいはC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖を表すか;又は
ii)R22と一緒になって=Oを形成する;
請求項1又は3〜7のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
20、R21、R22及びR23が、CとCとを含有する5員、6員又は7員不飽和環の一部分を形成する、請求項1又は3〜7のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項2〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記不飽和環が、Cに対してメタ位又はパラ位でC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖で置換されるか、あるいは前記不飽和環が、Cに対してオルト位、メタ位及びパラ位の二つでC2−15飽和又は不飽和炭化水素鎖で置換される、請求項9に記載の方法又は化合物。
【請求項11】
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖が、C、Cあるいは5員、6員又は7員環に結合する−CH−基を含む、請求項1又は請求項3〜10のいずれか一項に記載の方法あるいは請求項2〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖が置換されない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖が飽和される、請求項12に記載の方法又は化合物。
【請求項14】
前記のR20、R23及び5員、6員又は7員不飽和環のC2−30飽和又は不飽和炭化水素鎖が6〜15個の炭素原子を含有する直鎖炭化水素である、請求項12又は13に記載の方法あるいは化合物。
【請求項15】
前記動物生細胞が幹細胞である、請求項1又は請求項3〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞が、胚幹細胞(ESC)、成体幹細胞及び誘導多能性幹(iPS)細胞からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記胚幹細胞がヒト胚幹細胞又はマウス胚幹細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記幹細胞が誘導多能性幹(iPS)細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記動物生細胞が脱分化細胞である、請求項1又は請求項3〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−500013(P2011−500013A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528488(P2010−528488)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050931
【国際公開番号】WO2009/047568
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510080794)アントキシス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】