説明

動物用処置台

【課題】 大型犬などを載置するのに十分な大きさを持ち、かつ、必要最小限度の広さの処置室に設置した場合においても獣医師等がスムーズに処置等を行うことができる動物用処置台を提供すること。
【解決手段】 キャビネット20の長手方向に対して第1簀の子50と第2簀の子53との長さを120cmとし、キャビネット20からはみだすように配置できるので、キャビネット20の長さを100cmとしても、大型犬などに対する処置を行うことができる。また、第1簀の子50を突出させると、係止材52aなど4つの係止材が係止部42aなど4つの係止部に係止され、この状態において第1簀の子50の一部を第2簀の子53が覆るので、2つの簀の子の間に間隙を生じることがない。また、縁材33の上面を凹陥領域31に向かって下り勾配としたので、縁材33の上面も凹陥領域31として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用処置台に関し、特に獣医師が動物に対して洗浄などの処置を行うための動物用処置台に関する。
【背景技術】
【0002】
動物用処置台は、動物病院において、犬や猫、フェレット、うさぎなどの動物に対して手術準備として体を洗浄したり、けがをした動物のよごれや血液を洗い流したり、緊急処置をするために利用するものである。この種の動物用処置台では、処置中又は処置前後における動物の取り扱いを容易にするために簀の子を載置してあるものが多い。
【0003】
図16は、従来技術に係る動物用処置台の一例を示す斜視図である。図16において、70は動物用処置台、71はシンク、72は縁材、73はキャビネット、74は第2簀の子、75及び76は第1簀の子である。なお、図16に示した動物用処置台は、特開2006−197815公報において開示されているものである。
【0004】
動物用処置台70は、シンク71の枠状の縁材72に動物載置用の第1簀の子75及び76を嵌め込むように配置しているものである。また、図16には図示していないが、シンク71の物品載置用の第2簀の子74の下方となる部位に混合水栓を設置している。この構成によって、処置を行う動物を第1簀の子75及び76の上に横たわらせ、又は、立たせた状態で、体毛に付着した泥や汚物を混合水栓で洗い流したり、体毛を刈り取ったり、さらには体に薬品を塗布することが容易に行うことができる。また、第1簀の子75及び76を取り外した場合には、処置対象の大型の動物をシンク71の内部に立たせた状態で処置することもできる。くわえて、第2簀の子74をシンク71の縁材72に嵌め込むように配置しているので、洗剤や、はさみ、薬品などを第2簀の子74に置くことが可能である。したがって、獣医師などの手元に近いところに洗剤や、はさみ、薬品などを置けるので、効率的に作業を行うことができる。また、シンク71の縁材72に配置する簀の子を第2簀の子74と第1簀の子75及び76との3枚で構成することによって、1枚当たりの簀の子の重さを軽くして、簀の子の着脱を容易に行えるようにしている。
【0005】
また、大型犬に対して処置を行うことを考慮する場合、キャビネット73は長手方向について少なくとも120cmの長さとする必要がある。さらに、長手方向と直交する方向については少なくとも55cm、望ましくは60cm程度の長さとが求められる。ところで、動物用処置台70は、処置室の中央に設置する、又は、キャビネット73の長手方向に直交する面が処置室の壁面に接するように配置する必要がある。これは、動物に対する処置を迅速に、かつ、確実に行うためには、第1簀の子75及び76の上に横たわった動物に対して少なくとも3方向からの観察や処置を行う必要があることによる。
【0006】
しかし、日本の動物病院では、諸般の事情から処置室に対して必要最小限度の広さしか確保できない場合が多い。このような処置室では、ストレッチャーに載せた動物を動物用処置台に移し替えるときなどに、不自然な姿勢で移し替え作業を行わざるを得なくなって獣医師等の身体的負担が大きくなる、あるいは、キャビネットなどに脚や肘をぶつけてけがをするおそれがある。さらに、医療機器などを台車に載せて動物用処置台の横を通り抜けるときに、台車を動物用処置台にぶつけるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−197815公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するために、大型犬などを載置するのに十分な大きさを持ち、かつ、必要最小限度の広さの処置室に設置した場合においても獣医師等がスムーズに処置等を行うことができる動物用処置台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、キャビネットと、該キャビネットの上面側に開口するように設けられたシンクと、該シンクの開口部を囲む縁材に支持されて前記開口部の一部又は全部を覆うようになされた簀の子とを備えた動物用処置台において、前記シンクは、前記開口部を囲む縁材のうち、少なくとも前記キャビネットの長手方向に沿った部分の上面が前記開口部に向かって下り勾配となるように形成され、前記簀の子は、前記縁材の前記キャビネットの長手方向と直交する方向に沿った部分を越えて水平に突出するように配置可能になされていることを特徴とする動物用処置台である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シンクは、前記縁材の外周面に設けられた係止部を備え、前記簀の子は、前記シンクの前記キャビネットの長手方向と直交する方向に沿った前記縁材を越えて水平に突出しているときに、前記係止部に係止される係止材が設けられていることを特徴とする動物用処置台である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記簀の子の一部を覆うように、かつ、水平に配置されると共に、前記簀の子の上面を摺動可能に設けられた別の簀の子をさらに備えたことを特徴とする動物用処置台である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記別の簀の子は、前記簀の子の上面と接する上面板部と、前記簀の子の右側端部と接する右側端板部と、前記簀の子の左側端部と接する左側端板部とを備え、前記簀の子は、前記別の簀の子の前記上面板部、前記右側端部及び前記左側端部に囲まれた空間内に挿入可能であることを特徴とする動物用処置台である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記簀の子及び前記別の簀の子は、これらの一方又は両方に、他方に係止可能なフックが設けられていることを特徴とする動物用処置台である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記簀の子と蝶番を介して互いに接続され、かつ、水平に配置された別の簀の子をさらに備えたことを特徴とする動物用処置台である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、さらに、前記キャビネットの前記側板に固定された支柱と、前記支柱に回転可能に支持された水平アームと、前記水平アームに回転可能に支持された器具台とを備えていることを特徴とする動物用処置台である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、シンクの開口部を囲む縁材のうち、少なくともキャビネットの長手方向に沿った部分の上面を開口部に向かって下り勾配としたので、下り勾配とした縁にかかった水や薬剤はシンク内へ確実に流れ落ちる。シンクの縁は一般的に4〜6cmの幅を持っているので、下り勾配とした縁の幅だけシンクの大きさを大きくしたのと同じ作用効果が得られる。また、簀の子は、前記縁材の前記キャビネットの長手方向と直交する方向に沿った部分を越えて水平に突出するように配置可能になされているので、シンクの縁を越えて突出しているところにも、動物の体の一部、例えば尾が位置するようにすれば、キャビネットを長手方向に対して100cmとしても実質的に120cmのシンクとして使用することが可能となる。以上の構成により、キャビネットの大きさを、例えば長手方向に対して20cm、長手方向と直交する方向に10cm短くし、これに応じてシンクを小さくしても処置台としての作用効果を減殺することがなく、大型犬の処置なども全く問題なく行うことができる。同時に、動物用処置台を小さくすることによって、必要最小限度の広さの処置室に設置した場合においても、獣医師等が簀の子の角に衣服を引っ掛けることなどが低減され、スムーズに処置等を行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、簀の子と別の簀の子とのいずれか一方又は両方がシンクの係止部に係止されるので、処置中の動物が万一暴れても、簀の子が跳ね上がって動物又は獣医師がけがをすることを防止できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、また、簀の子をシンクの縁を越えて突出するように配置しているときに、別の簀の子が簀の子の一部を覆うようにできるので、動物の脚部が2つの簀の子に落ち込むことがない。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、簀の子を別の簀の子に挿入可能な入れ子式にすることによって、簀の子をシンクの縁を越えて突出する構成にすることが簡単に実現できる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、簀の子及び別の簀の子は、これらの一方又は両方に、他方に係止可能なフックが形成されているので、簀の子がシンクの縁を越えて突出した状態に配置されているときに、動物が暴れて簀の子が跳ね上がったり落下したりすることを確実に防止できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、簀の子を別の簀の子に対して回転させて展開すれば、直ちに第1の簀の子がシンクの縁を越えて突出した状態に配置することが可能になる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、キャビネットの側板によって間接的に支持された器具台とを備えているので、シンクの縁材に処置に必要となる器具や洗浄剤などを置くスペースを設ける必要がなく、シンクの開口部をさらに大きくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る動物用処置台の使用状態を示す図であり、(a)は第2簀の子を移動した状態を示す平面図、(b)は第2簀の子を吊り下げた状態を示す正面図である。
【図4】キャビネット及びシンクを示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】キャビネット及びシンクを示す図(2)であり、(a)は右側面図、(b)はシンクを一部破断した右側面図である。
【図6】第1簀の子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図7】第2簀の子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である
【図8】キャビネット及びシンクの変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す斜視図である。
【図10】第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す斜視図である。
【図11】第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させ、かつ、シンクを開口させた状態示す斜視図である。
【図12】第3の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す斜視図である。
【図13】第3の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を折り畳んだ状態示す斜視図である。
【図14】第4の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は係止部の拡大断面図である。
【図15】第5の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す斜視図である。
【図16】従来技術に係る動物用処置台の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る動物用処置台を図面に基づいて説明する。最初に、キャビネット及びシンクについて説明する。図4は、キャビネット及びシンクを示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図4において、20はキャビネット、21は側板、22は配管スペース、23は台輪、24は収納スペース、30はシンク、31は凹陥領域、32は底面部、33は縁材、34a、34b、34c及び34dは傾斜面、35はトッププレート、36は囲み板、37は排水トラップ、40は混合水栓、41は水栓レバー、42a、42b、42c及び42dは係止部である。また、図5は、キャビネット及びシンクを示す図(2)であり、(a)は右側面図、(b)はシンクを一部破断した右側面図である。図5において、26は側板、38は側面部であり、その他の符号は図4と同じものを示す。
【0025】
この実施の形態に係る動物用処置台におけるキャビネット20は、長手方向の長さを100cm、長手方向と直交する方向、つまり幅を58cmとしている。従来技術におけるキャビネットでは、長手方向の長さを120cm又はこれ以上の長さとしており、キャビネット20は長手方向において20cm又はそれ以上に短くなっている。したがって、従来技術に係る動物用処置台を設置するのに適していない狭いスペースに設置することが可能である。また、キャビネット20の上面側、つまり側板21の背後にはシンク30を設けており、シンク30の下方は吹き抜け状の収納スペース24と、排水トラップ37等を設けるための配管スペース22としている。収納スペース24は、扉を設けずに開放スペースとしたので、医療廃棄物用容器を置いておき、処置中に生じた廃棄物を即座に投入することができる。したがって、動物用処置台の周辺に医療廃棄物用容器を置いたときに、獣医師が医療廃棄物用容器につまずいたり、移動中のストレッチャーと衝突したりすることを防止できる。また、医療廃棄物用容器内の血液や汚物が付着したガーゼなどが人目に付きにくくなるので、処置室内の美観を向上することもできる。なお、キャビネット20の大きさは上述のものに限られるものではない。
【0026】
また、キャビネット20は、図5(a)に示した側板26が処置室の壁面に接するように、又は、接近するように設置することを前提とした構成となっているが、処置室の中央に設置することも可能である。さらに、台輪23は、図5に示すように、キャビネット20の長手方向に沿った側面を床面側に近づくにしたがって互いの幅が漸次狭くなるように、つまり、キャビネット20の長手方向に沿った2つの側面がオーバーハングしている傾斜面となるように形成されている。これは、台輪23の床面に対する設置面積を小さくすることによって、例えば獣医師が処置中に脚を拡げて踏ん張りやすくなるなど、動物用処置台の使用を容易にすることを目的としている。
【0027】
シンク30は、凹陥領域31の開口部を囲むように縁材33が設けられている。凹陥領域31の開口部と縁材33は、矩形の小さなトッププレート35を除いてキャビネット20の上面側を占めているので、キャビネット20の上面側のほとんどの領域がシンクとして利用できる。縁材33の上面は、傾斜面34a、34b、34c及び34dの4つの傾斜面で構成されている。すなわち、図5(b)に示すように、傾斜面34c及び34dは凹陥領域31に向かってそれぞれ下り勾配となるように形成されており、ここで図示していない傾斜面34a及び34bも同様の下り勾配を持っている。したがって、縁材33の上面に落下した水は凹陥領域31に向かって流れ落ちるので、縁材33の上面も凹陥領域31の一部として機能する。また、縁材33の上面は、後述するように、簀の子を載置し、さらに摺動させるための面となる。この上面を、それぞれ傾斜面34a、34b、34c及び34dとしているので、簀の子と接するのは傾斜面34a、34b、34c及び34dの外側の縁辺部分だけとなる。したがって、縁材33の上面と簀の子との摩擦抵抗を低減でき、かつ、金属同士が摩擦するときに生じる不快音を低減することができる。なお、縁材33の上面のうち、シンク30の使用時に水がかかりやすいのは、キャビネット20の長辺方向に沿った部分、つまり傾斜面34a及び34cなので、この部分のみを傾斜面としてもよい。
【0028】
シンク30の凹陥領域31は、キャビネット20の長手方向の長さを100cmとした分に対応して短くなる。なお、凹陥領域31の底面部32及び側面部38は、従来技術に係るものと同様の構成である。また、キャビネット20の上面のうち、長手方向と直交する側の一部をトッププレート35としている。トッププレート35は、キャビネット20の長手方向の長さを10cmとした金属板であり、処置室の壁面に接する側板26側に混合水栓40及び水栓レバー41の配置スペースを確保するとともに、洗浄剤や消毒用エタノールの容器などを置くためのスペースとなる。トッププレート35の3方向の縁辺部を囲む囲み板36は、洗浄剤などの容器の転落を防ぐために設けている。なお、後述するように、処置室の壁面に混合水栓40及び水栓レバー41を設ける場合などにはトッププレート35を省略してもよく、また、トッププレート35に相当するものを凹陥領域31の内部に設けてもよい。さらに、縁材33の外周面のキャビネット20の長手側となる部分には、係止部42a、42b、42c及び42dが設けられている。係止部42a、42b、42c及び42dは、後述するように、簀の子を係止する役割を持つと共に、処置用器具などを一時的に係止するための役割を持つ。くわえて、係止部42a及び42dは、後述するように、使用していない簀の子を吊下状態で保持する役割も併せ持っている。なお、この実施の形態における係止部42a、42b、42c及び42dでは、両端部が縁材33に接続されるように形成しているが、簀の子及び処置用器具を係止可能であれば、例えば略T字状の外形に形成する、又は、略L字状の外形に形成する、略I型の外形に形成するなど他の形状にしてもよい。さらに、係止部42a、42b、42c及び42dを設けずに、これらの係止部に相当するものを側面部38に設けてもよい。
【0029】
続けて、簀の子について説明する。図6は、第1簀の子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。図6において、50は第1簀の子、51a及び51bは枠材、52a、52b、52c及び52dは係止材である。また、図7は、第2簀の子を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図7において、53は第2簀の子、53a及び53bは規制部である。
【0030】
この実施の形態に係る動物用処置台における第1簀の子50は、主として動物を載置するためのものであり、略長方形板状の外形を有している。また、枠材51aと枠材51bとは、シンク30の縁材33上に載置したときに、キャビネット20の長手方向と平行になる枠材であり、これらの間隔はキャビネット20の幅よりも若干大きくなるように形成されている。したがって、枠材51aと枠材51bとは、縁材33上に載置したときに、傾斜面34aと傾斜面34cとの外側の縁辺部分に接する。また、シンク30の縁材33上に載置したときには、シンク30から水平に突出して縁材33からはみだすように配置したときと、シンク30の縁材33上にほぼ収まるように配置したときにも水平状態を保つように形成して、円筒状のものを置いたときに転がり落ちることがないようしている。さらに、枠材51aと枠材51bとの下側には、係止材52a及び52cと係止材52b及び52dとがそれぞれ設けられている。係止材52aは縁材33の外周面の係止部42aに対応する位置に設けられており、同様に、係止材52bは係止部42d、係止材52cは係止部42b、係止材52dは係止部42cに対応する位置にそれぞれ設けられている。また、これらの係止材は、正面側から見てそれぞれ逆L字状に形成されているが、係止材52a及び52bは係止材52c及び52dよりも水平部分が短くなるようにしてある。これは、後述するように、第1簀の子50をシンク30に対して装着した際に、係止材52a及び52bの先端部がキャビネット20から突出して、獣医師の着衣などに引っ掛かることを防止するためになされたものである。さらに、これらの係止材の先端側は枠材51a及び51bと平行に延びており、これらの係止部と枠材51a及び51bとの間隙はさらに縁材33の4つの係止部の径よりも多少大きいものとしている。これは、第1簀の子50に動物を載せているときに、第1簀の子50ががたつくことを低減するためである。
【0031】
第2簀の子53は、主として洗浄剤や消毒用エタノールの容器などを一時的に載置するためのものであり、略長方形板状の外形を有している。また、第1簀の子50と第2簀の子53との長さの計は、キャビネット20の長手方向に対して120cmである。キャビネット20の囲み板36を設けた部分以外の長手方向の長さは90cmであるので、これらの簀の子を縁材33に置くと、両者が2、3cmほど重なり合うようにおいても、キャビネット20の長手方向に対して25cm強突出するようにはみだすことになる。また、第2簀の子53を縁材33上に載置したときには、第1簀の子50の配置に関係なく、常に水平状態を保って、容器などが倒れないように形成している。なお、第2簀の子53は、キャビネット20の長手方向と直交する方向が長辺側となるので、長辺の方向が異なる配置となっている。さらに、第2簀の子53の短辺となる側には、規制部53aと規制部53bとがそれぞれ形成されている。規制部53aと規制部53bとの間隔は、これらの間に枠材51a及び枠材51bを挿入できるように設定されている。さらに、縁材33に跨るように置くことも可能である。前述のように、第1簀の子50は縁材33に係止可能であるので、第1簀の子50及び第2簀の子53を縁材33上に載置して使用しているときに、処置している動物が暴れてもこれらの簀の子が床に落下することを防止できる。
【0032】
次に、この実施の形態に係る動物用処置台の全体構成と使用方法について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図1において、10は動物用処置台であり、その他の符号は図4、図6及び図7と同じものを示す。また、図2は、第1の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図2において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。さらに、図3は、第1の実施の形態に係る動物用処置台の使用状態を示す図であり、(a)は第2簀の子を移動した状態を示す平面図、(b)は第2簀の子を吊り下げた状態を示す正面図である。図3において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。
【0033】
動物用処置台10は、図1に示すように、第1簀の子50及び第2簀の子53をシンク30の縁材33上に載置したときに、シンク30の開口部を完全に覆うように構成されている。前述のように、第1簀の子50と第2簀の子53とをそのまま並べて載置すると、第1簀の子50がキャビネット20の長手方向に対して25cm強はみだすことになる。そこで、図1では、第1簀の子50の一部を第2簀の子53が覆うように部分的に重なった状態で載置して、両者合わせて90cmほどの長さとなる状態にしている。また、係止材52aは、係止部42aに囲まれた空間内に入っているが、係止部42aに対して係止されてはいない。同様に、係止材52bは係止部42d、係止材52cは係止部42b、係止材52dは係止部42cに囲まれた空間内に入っている。この状態においても、第1簀の子50、又は、第1簀の子50と第2簀の子53とに猫などの比較的小型の動物を載置して処置を行うことが可能である。なお、第1簀の子50及び第2簀の子53を離脱させる場合には、図1に示す状態において、第2簀の子53、第1簀の子50の順序で持ち上げれば良い。
【0034】
また、大型犬など、2つの簀の子を合わせた90cmほどの長さで不足する場合には、図1の矢印に示す方向、つまり、処置室の壁面に接する側とは反対側となる傾斜面34dに向かって第1簀の子50を摺動させる。第1簀の子50を摺動させると、図2に示すように、係止材52aは、係止部42aの傾斜面34d側の部分に当接し、係止材52aが係止部42aに係止された状態となり、キャビネット20の長手方向に対して25cm程度突出するようにはみだす。同様に、係止材52bは係止部42d、係止材52cは係止部42b、係止材52dは係止部42cに対してそれぞれ係止される。また、これらの係止部と枠材51a及び51bとの間隙に縁材33の4つの係止部が位置しているので、例えば、第1簀の子50の縁材33からはみだした部分に手を突いたり、しゃがんだ状態から立ち上がるときに当該部分に頭をぶつけたりしたときにも、第1簀の子50が傾いて床面に落下する、又は、シンク30の凹陥領域31内に落ちることを防止できる。さらに、第1簀の子50は、縁材33の傾斜面34d側を越えて水平に25cm強突出し、かつ、第2簀の子53とは接した状態となるので、第1簀の子50の水平に突出した領域に大型犬などの尾や後肢の先端が位置するように載置すれば、第1簀の子50上で胴体の洗浄などを行っても、洗浄に使った水がシンク30の凹陥領域31に流れ落ちるので、床面を濡らすことがない。なお、係止材52a及び52cは、水平部分の長さを係止材52b及び52dよりも短くして、図2(b)に示すように、キャビネット20の側方に突出しないようにしている。なお、第1簀の子50を重量が大きい材料で形成して、処置中の大型犬などが暴れても跳ね上がりにくい場合には、4組の係止材及び係止部のうち1組又は2組を省略してもよい。
【0035】
くわえて、図3(a)に示すように、第1簀の子50をシンク30から水平に突出して縁材33からはみだすように配置しているときに、第2簀の子53を第1簀の子50側に摺動させると、シンク30の凹陥領域31の一部が開放された状態となる。したがって、処置の前後や処置中に第2簀の子53を摺動させて、混合水栓40を使用して手や器具の洗浄を迅速に行うことができる。また、係止部42a及び42dの傾斜面34d側の端部は、縁材33の角部の近傍に位置している。したがって、図3(b)に示すように、第1簀の子50を使用していないときには、第1簀の子50を垂直状態に保持にしつつ、係止部42aに係止材52cを係止し、係止部42dに係止材52dを係止すると、第1簀の子50を吊下状態で保持することができる。したがって、凹陥領域31内で第1簀の子50を洗浄した後や、凹陥領域31内で動物を薬浴させるときなどに、第1簀の子50をこのように吊り下げておけば、床面に置いたときのように第1簀の子50に躓いてけがをすることを防止できる。
【0036】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る動物用処置台10は、キャビネット20の長手方向に対して、第1簀の子50と第2簀の子53との長さの計を120cmとし、キャビネット20からはみだすように配置できるので、キャビネット20の同方向の長さを100cmとしても、大型犬などに対する処置を行うことができる。また、第1簀の子50を縁材33の傾斜面34d側を越えて水平に突出させたときには、第1簀の子50の係止材52aなど4つの係止材を、縁材33に設けた係止部42aなど4つの係止部にそれぞれ係止され、かつ、係止された状態において、第1簀の子50の一部を第2簀の子53が覆った状態となるので、処置中の動物が暴れても第1簀の子50が跳ね返って獣医師や動物がけがをすることがない。また、第1簀の子50と第2簀の子53との間に間隙を生じることがないので、処置中の動物の前肢が間隙に嵌まり込んだり、処置用器具をシンク30の凹陥領域31内に落としたりすることがない。さらに、縁材33の上面を凹陥領域31に向かって下り勾配となる傾斜面34a、34b、34c及び34dで構成したので、実質的に縁材33の上面も凹陥領域31として作用する。したがって、縁材33の上面の幅の分だけ凹陥領域31を大きくしたとの同じ効果が得られる。また、第1簀の子50を突出させているときには、第2簀の子53を摺動させてシンク30を使用することもできる。くわえて、第1簀の子50との接触面積が減少するので、縁材33の上面と第1簀の子50との摩擦抵抗を低減でき、かつ、金属同士が摩擦するときに生じる不快音を低減することができる。また、第1簀の子50をキャビネット20側に後退させた状態で使用することもできる。さらに、収納スペース24に医療廃棄物用容器を置くことによって、動物用処置台の周辺に医療廃棄物用容器を置いたときに、獣医師が医療廃棄物用容器につまずいたり、移動中のストレッチャーと衝突したりすることを防止できる。同時に、血液や汚物が付着した脱脂綿やガーゼなどが人目に付きにくく、処置室内の視覚的環境が良くなるという利点もある。また、第1簀の子50を使用していないときには吊下状態で保持することができるので、第1簀の子50を置く場所を別途用意する必要がない。
【0037】
さらに、キャビネットの変形例について説明する。図8は、キャビネット及びシンクの変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図8において、27a及び27bは引違戸、39は段差部である。
【0038】
図5で示したキャビネット20はあくまでも一例であり、様々な変形例が考えられる。例えば、図8に示すように、キャビネット20の下側に開放されたスペースを設けず、引違戸27a及び27bを設ける。さらに、図示しないが、背面側にも同様の引違戸を設けて、処置器具等の収納スペースと配管スペースを兼ねたものとする。このように構成したキャビネットは、医療廃棄物用容器を置くことには適さないが、処置室内に処置器具等の収納するための別のキャビネットを設置することができない場合に好適と言える。また、シンクについては、図8(a)のシンク30に示すように、トッププレート35を設けず、シンク30の開口側を開口部とこれを囲む縁材33だけとする。そして、凹陥領域31の側面部38のうち、処置室の壁面に接する側に、下側が階段状にせり出した段差部39を形成する。そして、段差部39の平坦面に混合水栓40及び水栓レバー41を設ける。このように構成したキャビネットは、図8(b)に示すように、縁材33よりも上方に突出するものが存在しないので、シンクとして使える領域がさらに広くなる。くわえて、縁材33の上面が形成しているので、キャビネット20の長手方向の長さが100cmしかない場合でも、長手方向の長さが120cmである従来技術に係るキャビネット及びシンクよりも機能的には大きなものとなる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る動物用処置台について説明する。図9は、第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す斜視図である。図9において、11は動物用処置台、25は側板、28a及び28bは支柱、29は側板、43は帯状係止板、44は混合水栓、45は水栓レバー、54は簀の子集合体、55は第1簀の子、55aは規制部、55aaは折曲部、55bは規制部、55baは折曲部、56は第2簀の子、56bは規制部、57は第3簀の子、57bは規制部、58は取っ手であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図10は、第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す斜視図である。図10において、用いた符号はすべて図9と同じものを示す。さらに、図11は、第2の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させ、かつ、シンクを開口させた状態示す斜視図である。図11において、59は突出領域であり、その他の符号は図9と同じものを示す。
【0040】
本発明の第2の実施の形態に係る動物用処置台11は、図9に示すように、分離可能な第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57で構成される簀の子集合体54を伸縮させて使用するものである。すなわち、第1簀の子55のキャビネット20の長手方向に沿った2つの縁辺部に垂下するように延びる規制部55aと規制部55bを形成し、さらにこれらの下端部に互いに対向するように水平に延びる折曲部55aaは、折曲部55baとを形成している。第2簀の子56と第3簀の子57との縁辺部にも、規制部56bと規制部57bを形成し、さらにこれらの下端部に折曲部をそれぞれ形成している。したがって、第1簀の子55の規制部55aと規制部55bと折曲部55aa及び55baとが第2簀の子56を包み込むように保持しており、第2簀の子56の規制部及び折曲部も第3簀の子57包み込むように保持しており、全体として入れ子のような構成を実現している。したがって、簀の子集合体54は、3枚の簀の子で構成されてはいるが、動物の処置中は全体で1枚の簀の子として機能するようになされており、3枚分の重量によって簀の子の跳ね上がりや位置ずれを防止できるようにした点に特徴がある。なお、逆に、第1簀の子55を第2簀の子56から抜き出し、第2簀の子56を第3簀の子57から抜き出すことによって簡単に分離することができるので、これらの簀の子を個別に洗浄することが非常に容易である。また、図示していないが、反対側の縁辺部にも同様の規制部と折曲部をそれぞれ形成している。また、第3簀の子57の混合水栓44側に、第3簀の子57をシンク30の縁材33上で摺動させるための取っ手58を設けている。
【0041】
このように構成することにより、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57は、矩形状の筒に近い形状を持つことになる。くわえて、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57において、キャビネット20の長手方向に直交する方向の長さと、規制部の垂直方向の長さを、第2簀の子56を第3簀の子57に収納し、さらに第2簀の子56を第1簀の子55に収納する、つまり、これらの簀の子構成体を入れ子状に収納できるようにしている。さらに、これらの簀の子構成体の規制部は、シンク30の縁材33に跨るように配置されているので、簀の子構成体を摺動させてもキャビネット20の長手方向に直交する方向における位置ずれを生じない。したがって、簀の子集合体54をシンク30の縁材33上に載置し、第1簀の子55を支柱28a及び28b側に摺動させれば、図9に示すように、第1簀の子55をシンク30の縁材33を越えて水平に突出させることができる。
【0042】
また、逆方向に摺動させると、図10に示すように、縁材33上にのみ簀の子集合体54を配置することができる。また、図11に示すように、第1簀の子55がシンク30の縁材33を越えて水平に突出しているときに、取っ手58を使って第3簀の子57を支柱28a及び28b側に摺動させれば、シンク30の凹陥領域31が現れる。したがって、第3簀の子57を図11に示す状態にすれば、凹陥領域31内で動物や処置用器具を洗浄することも可能である。くわえて、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57は、縁材33上に載置しているときには一体的になっているので、処置している動物が暴れてもこれらの簀の子構成体が跳ね上がることがない。したがって、従来技術に係る簀の子で使用を避けていたアルミ合金などの軽い金属で形成することができ、簀の子集合体54の洗浄作業などが容易になるという利点もある。
【0043】
なお、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57を図11に示す状態にしているときに、第1簀の子55に加重が集中すると、支柱28a及び28b側の縁材33を支点として、第3簀の子57の取っ手58側がテコのように浮き上がり、場合によっては簀の子集合体54が転落する可能性もあるので、第2簀の子56及び第3簀の子57は第1簀の子55よりも相対的に重い材料で形成することが望ましい。また、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57の折曲部を水平にさらに長く形成し、縁材33の下面に接するように形成してもよい。この場合、第1簀の子55に加重が集中しても、3つの簀の子の折曲部が縁材33に掛かって第3簀の子57が浮き上がることを防止できるようになる。さらに、縁材33の支柱28aと28bとのいずれかの近傍に突起を設けておき、規制部56bと規制部57bとのいずれかにこの突起に対応する側に進退可能な突起を設け、縁材33の突起が規制部56b又は規制部57bの突起に干渉することによって突出領域59が所定の範囲を超えないようにしてもよい。
【0044】
また、この実施の形態に係る動物用処置台11は、縁材33に係止部を設けず、支柱28aから側板25を越えて側板29まで水平に延びる帯状係止板43を設けている。前述のように、この実施の形態では、簀の子集合体54自体が落下を防止する構成を備えているので、ワイヤーやチューブなどの処置用器具を係止することを容易にするために、キャビネット20の長手方向のほぼ全長に渡る帯状係止板43を設けている。くわえて、この実施の形態におけるシンク30は、混合水栓44に対して水栓レバー45が一体のものを使用して、トッププレート35に洗浄剤や消毒用エタノールの容器などを置ける面積を拡げている。
【0045】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る動物用処置台について説明する。図12は、第3の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す斜視図である。図12において、12は動物用処置台、60は簀の子連結体、61は第3簀の子、61bは規制部、62は第1簀の子、62bは規制部、63は第2簀の子、63bは規制部、64a及び64bは蝶番であり、その他の符号は図9と同じである。また、図13は、第3の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を折り畳んだ状態示す斜視図である。図13におおいて用いた符号は、全て図12と同じものを示す。
【0046】
本発明の第3の実施の形態に係る動物用処置台12は、図12に示すように、簀の子連結体60と第3簀の子61とをシンク30の縁材33に跨るように配置しているので、簀の子構成体を摺動させてもキャビネット20の長手方向に直交する方向における位置ずれを生じないようにしている。なお、簀の子連結体60と第3簀の子61とは、シンク30の縁材33に対して個別に載置又は離脱することができる。また、この実施の形態における特徴的な点として、簀の子連結体60が第1簀の子62と第2簀の子63とを備えており、これらが蝶番64a及び64bによって互いに回転可能に接続されていることが挙げられる。すなわち、図13に示すように、第2簀の子63の先端部を跳ね上げるように回転させて、第1簀の子62上に折り畳んでおくことができる。したがって、簀の子連結体60を摺動させることなく水平に突出した状態とすることが可能であり、シンク30に摺動による傷を生じることがないという利点がある。なお、使用後の洗浄を容易にするために、第1簀の子62を第2簀の子63から分離可能にすることが望ましい。
【0047】
さらに、本発明の第4の実施の形態に係る動物用処置台について説明する。図14は、第4の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を突出させた状態示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は係止部の拡大断面図である。図14において、13は動物用処置台、65a及び65bは係止部であり、その他の符号は図9と同じである。
【0048】
本発明の第4の実施の形態に係る動物用処置台13は、図14(a)に示すように、第2の実施の形態に係る動物用処置台11とほぼ同じであるが、第1簀の子55、第2簀の子56及び第3簀の子57のいずれに対しても折曲部を形成していない。これに代えて、図14(b)に示すように、第1簀の子55に係止部65a及び65bを設け、第2簀の子56の透孔に係止させている。したがって、第1簀の子55の位置は、第2簀の子56の透孔に対して係止部65a及び65bを係止可能なところに限られるが、第1簀の子55の落下を確実に防止できる。なお、係止部65a及び65bとは逆に上方に突出する係止部を第2簀の子56に形成し。第1簀の子55の透孔に係止させてもよいし、両者に形成してもよい。
【0049】
次に、本発明の第5及の実施の形態に係る動物用処置台について説明する。図15は、第5の実施の形態に係る動物用処置台において、簀の子を後退させた状態示す斜視図である。図15において、14は動物用処置台、46は支持材、46aは固定レバー、47は支柱、48は支持アーム、49は円形トレイ、66は簀の子集合体、67は第1簀の子、67bは規制部、68は第2簀の子、68bは規制部、69は第3簀の子、69bは規制部であり、その他の符号は図9と同じである。
【0050】
本発明の第5の実施の形態に係る動物用処置台14は、図8(a)で示したシンク30のように、トッププレート35を設けず縁材33よりも上方に突出するものが存在しないシンクとする場合に好適なものである。すなわち、側板29に支持材46を設け、さらに支持材46に支柱47を上下方向に移動可能に設ける。なお、支柱47は、固定レバー46aを緩める又は締め付けることによって移動可能とする、又は、固定する。支柱47は、水平に延在する支持アーム48を上端部において回転可能に支持している。くわえて、支持アーム48は、円形トレイ49を先端部において回転可能に支持している。なお、第1簀の子67、第2簀の子68及び第3簀の子69は、本発明の第2の実施の形態に係る動物用処置台11と同様に、入れ子状の簀の子集合体66を構成しているが、規制部67b、68b及び69bの下端部には折曲部を形成していない。さらに、第1簀の子67、第2簀の子68及び第3簀の子69の反対側の縁辺部にも規制部を形成しているが、こちらの下端部にも折曲部を形成していないので、第1簀の子67を上方に持ち上げればそのまま抜き取ることができる。第2簀の子68及び第3簀の子69も同様である。このように構成したことにとって、処置用器具などを円形トレイ49に載置させることができ、図1や図9で示したトッププレート35を設ける必要がない。また、支柱47の高さを調節できる上に支柱47と支持アーム48とに回転軸を備えているので、円形トレイ49の位置を自在に調整することができる。なお、円形トレイ49に代えて、正方形、長方形、六角形などの各種形状のトレイを用いること可能であるが、円形であれば、トレイの角が獣医師の白衣の袖などに掛かって処置を妨げることがないので、円形とすることが望ましい。
【0051】
以上のように、本発明の各実施の形態においては、キャビネットが長手方向に対して100cmとしても、従来技術に係る120cm又はそれ以上の長さのキャビネットと同様の機能を発揮する。また、簀の子の一部をシンクの縁材から突出するように配置できるので、大型犬など比較的大型の動物に対する処置を行うことができる。また、シンクの縁材に掛かった水などがシンク内に落ちるので、キャビネットの周囲の床が濡れるのを低減することが可能となる。さらに、簀の子の載置及び離脱が容易である。また、簀の子の摺動が容易である上に金属同士が摩擦するときの不快な音を生じにくい。さらに、円形トレイを設けることもできるので、処置の効率化を図ることも可能である。
【0052】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、簀の子をグレーチング状ではなく格子状にする又は微細な貫通孔を多数形成したものにする、シンクの側面部の全周に渡って段差部を設けてここに簀の子を載置する、第2簀の子又は第3簀の子を適宜変更してもよい。さらに、複数の実施の形態の構成を組み合わせることなどについては、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 動物用処置台
11 動物用処置台
12 動物用処置台
13 動物用処置台
14 動物用処置台
20 キャビネット
21 側板
22 配管スペース
23 台輪
24 収納スペース
25 側板
26 側板
27a 引違戸
27b 引違戸
28a 支柱
28b 支柱
29 側板
30 シンク
31 凹陥領域
32 底面部
33 縁材
34a 傾斜面
34b 傾斜面
34c 傾斜面
34d 傾斜面
35 トッププレート
36 囲み板
37 排水トラップ
38 側面部
39 段差部
40 混合水栓
41 水栓レバー
42a 係止部
42b 係止部
42c 係止部
42d 係止部
43 帯状係止板
44 混合水栓
45 水栓レバー
46 支持材
46a 固定レバー
47 支柱
48 支持アーム
49 円形トレイ
50 第1簀の子
51a 枠材
51b 枠材
52a 係止材
52b 係止材
52c 係止材
52d 係止材
53 第2簀の子
53a 係止材
53b 係止材
54 簀の子集合体
55 第1簀の子
55a 規制部
55aa 折曲部
55b 規制部
55ba 折曲部
56 第2簀の子
56b 規制部
57 第3簀の子
57b 規制部
58 取っ手
59 突出領域
60 簀の子連結体
61 第3簀の子
61b 規制部
62 第1簀の子
62b 規制部
63 第2簀の子
63b 規制部
64a 蝶番
64b 蝶番
65a 係止部
65b 係止部
66 簀の子集合体
67 第1簀の子
67b 規制部
68 第2簀の子
68b 規制部
69 第3簀の子
69b 規制部
70 動物用処置台
71 シンク
72 縁材
73 キャビネット
74 第2簀の子
75 第1簀の子
76 第1簀の子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、該キャビネットの上面側に開口するように設けられたシンクと、該シンクの開口部を囲む縁材に支持されて前記開口部の一部又は全部を覆うようになされた簀の子とを備えた動物用処置台において、
前記シンクは、前記開口部を囲む縁材のうち、少なくとも前記キャビネットの長手方向に沿った部分の上面が前記開口部に向かって下り勾配となるように形成され、
前記簀の子は、前記縁材の前記キャビネットの長手方向と直交する方向に沿った部分を越えて水平に突出するように配置可能になされていることを特徴とする動物用処置台。
【請求項2】
前記シンクは、前記縁材の外周面に設けられた係止部を備え、
前記簀の子は、前記シンクの前記キャビネットの長手方向と直交する方向に沿った前記縁材を越えて水平に突出しているときに、前記係止部に係止される係止材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動物用処置台。
【請求項3】
前記簀の子の一部を覆うように、かつ、水平に配置されると共に、前記簀の子の上面を摺動可能に設けられた別の簀の子をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動物用処置台。
【請求項4】
前記別の簀の子は、前記簀の子の上面と接する上面板部と、前記簀の子の右側端部と接する右側端板部と、前記簀の子の左側端部と接する左側端板部とを備え、
前記簀の子は、前記別の簀の子の前記上面板部、前記右側端部及び前記左側端部に囲まれた空間内に挿入可能であることを特徴とする請求項3に記載の動物用処置台。
【請求項5】
前記簀の子及び前記別の簀の子は、これらの一方又は両方に、他方に係止可能なフックが設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の動物用処置台。
【請求項6】
前記簀の子と蝶番を介して互いに接続され、かつ、水平に配置された別の簀の子をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動物用処置台。
【請求項7】
前記キャビネットは、側面に設けられた側板を備え、
さらに、前記キャビネットの前記側板に固定された支柱と、
前記支柱に回転可能に支持された水平アームと、
前記水平アームに回転可能に支持された器具台とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の動物用処置台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−55894(P2013−55894A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194903(P2011−194903)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(591160707)株式会社東京メニックス (18)