説明

動物糞便吸引装置

【課題】動物糞便吸引装置を提供する。
【解決手段】差し入れ部と接続部とを含む管状本体と、管状本体に形成された糞便吸引通路と、管状本体の管壁に設けられ、差し入れ部側に複数の液体出口が形成された複数の液体通路と、接続部に接続されるとともに糞便吸引通路に連通され、糞便吸引通路に吸引力を発生させる吸引器と、接続部に接続されるとともに液体通路に連通され、液体出口を介して動物の大腸に液体を供給する液体供給装置とを備え、差し入れ部が動物の大腸に差し入れられて液体が供給されることにより糞便を軟化させ、吸引力により糞便を糞便吸引通路を介して動物の大腸から吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物糞便吸引装置に関し、特に犬猫の便秘の治療に適用される動物糞便吸引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、低出生率、都市化、独身主義及び小家族化の進行によって、ペットを飼育する人は年々増加している。また、飼い主は、ペットを単なる愛玩動物としてではなく、生活のパートナー及び精神的な支えとして見なすのが一般的であり、ペットの体の具合が悪くなると、すぐに動物病院に駆け込んでペットに対して全力で治療に取り組む。飼い主がペットの生理、心理状態に対して重大な関心を払うことから、ペットの健康介護市場は極めて大きいと言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
犬、猫類のペットは、年齢の増加に伴い、又は飼料における栄養素の不均衡、繊維質の不足、若しくはペット自身の遺伝子の欠陥により、胃腸の蠕動力が衰え、糞便が硬くなり結腸に堆積することがよくある。この場合、獣医師は、まず浣腸液を大腸に注入して糞便の排出ができるようにする方法を採用することが多い。糞便の堆積が深刻な場合、獣医師は、指をペットの肛門から直腸に差し入れ、堆積した糞便を素手で取り出す。しかしながら、糞便が直腸より奥の結腸の箇所に堆積することがよくあるため、単に人の手指の長さに頼るだけでは、堆積した糞便を徹底的に取り除くことができない。
【0004】
糞便の堆積がさらに深刻となれば、頻発する糞便の堆積問題を根本的に解決するために、獣医師は、ペットへの別の対処方法として、結腸の切除手術を行い、結腸の末端を切除することがある。大腸全体の長さが短くなると、糞便からの水分の吸収が少なくなり、糞便が硬化及び堆積しにくくなって、ペットの便秘問題の改善が可能となる。しかしながら、結腸切除手術は、高齢又は病弱のペットにとっては健康上のリスクがあるため、全てのペットに適用することができない。
【0005】
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、本発明は、動物において糞便が大腸に堆積する問題を解決するために、動物の大腸に差し入れ、液体を利用して糞便を軟化させて当該糞便を大腸から吸引するための動物糞便吸引装置を提供する。この動物糞便吸引装置によれば、獣医師が糞便を素手で取り出すよりも除去効率が高いのみならず、結腸切除手術に見られる感染や合併症のリスクを回避することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る動物糞便吸引装置は、管状本体、糞便吸引通路、複数の液体通路、吸引器及び液体供給装置を備える。管状本体は、動物の大腸に差し入れられる差し入れ部と、接続部とを含み、糞便吸引通路が管状本体に形成される。液体通路は、管状本体の管壁に設けられ、差し入れ部に複数の液体出口が形成される。
【0007】
吸引器は、接続部に接続されるとともに、糞便吸引通路に連通されたポンプを含み、該ポンプにより糞便吸引通路に吸引力を発生させる。液体供給装置は、接続部に接続されるとともに、液体通路に連通された加圧ポンプを含み、該加圧ポンプにより液体に対する加圧を行って、液体出口を介して動物の大腸に液体を供給する。ここで、液体は、水と潤滑剤のいずれか一つであってもよい。差し入れ部が動物の大腸に差し入れられ、液体出口を介して液体を送ることで糞便を軟化させるとともに、ポンプによって発生された吸引力を利用して糞便を糞便吸引通路を介して動物の大腸から吸引する。
【0008】
本発明に係る好ましい実施例において、吸引器は、大腸から吸引された糞便を収容するための糞便収容空間を有する着脱可能な収容容器をさらに含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る動物糞便吸引装置によれば、従来のような獣医師がペットの便秘問題を指又は結腸切除手術でしか解決できないという問題を克服できる。即ち、本発明に係る動物糞便吸引装置は、管状本体の差し入れ部を動物の大腸に差し入れるとともに、液体供給装置を用いて液体通路及び液体出口を介して動物の大腸に液体を供給することにより、乾いて硬い糞便を軟化させる。糞便が軟化された後、さらに吸引器により管状本体における糞便吸引通路に吸引力を発生させ、糞便を動物の大腸から吸引し、吸引器における着脱可能な収容容器中の糞便収容空間に収容する。
【0010】
本発明に係る動物糞便吸引装置は、上述した使用方法によれば、獣医師が糞便を指で取り出すよりも糞便の除去効果に優れ、ペットを結腸切除手術によるリスクから回避させることが可能であるため、新規でかつ優れた臨床効果を有する創作である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の立体構造図である。
【図2】本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の断面模式図である。
【図3】本発明に係る好ましい実施例の第2の実施例における動物糞便吸引装置の立体構造図である。
【図4】本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の適用模式図である。
【図5】本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の使用模式図である。
【図5A】本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の使用模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好ましい2つの実施例を用いて本発明の実施形態を説明する。当業者は、本明細書の記載内容に基づいて容易に実施可能である。
【0013】
図1及び図2は、本発明の好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の立体構造図及び断面模式図をそれぞれ示す。これらの図に示すように、動物糞便吸引装置100は、管状本体1、糞便吸引通路2、複数の液体通路3、吸引器4及び液体供給装置5を含む。
【0014】
管状本体1は、プラスチック射出成形により製造されてもよく、金属、ゴム又はシリコンゲルからなってもよい。管状本体1の前方部及び後方部は、それぞれ差し入れ部E1及び接続部E2である。差し入れ部E1は、動物の大腸に差し入れられ、接続部E2は、吸引器4と液体供給装置5とを接続する。糞便吸引通路2は、管状本体1における中空箇所に形成され、複数の液体通路3が、管状本体1の管壁に環状に分布して設けられるとともに、差し入れ部E1に複数の液体出口31が形成される。また、それらの複数の液体通路3は、管状本体1の管壁における環状通路32を介して互いに連通される。
【0015】
吸引器4は、ポンプ(図示せず)及び着脱可能な収容容器41を含み、着脱可能な収容容器41は糞便収容空間を有する袋又はケース状物であってもよい。本実施例において、着脱可能な収容容器41は袋であり、吸引器4のハウジングの後端に着脱自在に嵌設される。吸引器4は、接続部E2に接続されるとともに糞便吸引通路2に連通され、ポンプ(図示せず)により糞便吸引通路2に吸引力を発生させる。本実施例において、吸引器4は接続部E2に直接設けられる。
【0016】
液体供給装置5は、輸液管51、加圧ポンプ52及び液体収容槽53を含み、輸液管51が液体収容槽53に連通され、液体収容槽53が液体を収容し、加圧ポンプ52が該液体に対して加圧を行う。ここで、液体は、糞便300を軟化させるための水又はグリセリン等の潤滑剤であってもよく、液体には、糞便の軟化効果を高める関連化合物がさらに添加されてもよい。
【0017】
液体供給装置5は、輸液管51を介して管状本体1の接続部E2における管壁内の環状通路32に連通され、それによって複数の液体通路3に連通される。加圧ポンプ52が起動されると、液体が加圧されてそれらの複数の液体通路3を介して動物の大腸内に送られる。
【0018】
図3は、本発明に係る好ましい実施例の第2の実施例における動物糞便吸引装置の立体構造図である。図3に示すように、本実施例において、動物糞便吸引装置100’は、第1の実施例と同様に、管状本体1、管状本体1の中空箇所に形成された糞便吸引通路2、管状本体1の管壁に環状に分布して設けられた液体通路(図示せず)を含む。液体通路(図示せず)は、管状本体1の差し入れ部E1に複数の液体出口31が形成されるとともに管状本体1の管壁において互いに連通される。
【0019】
この実施例において、動物糞便吸引装置100’はさらに操作本体8、吸引器6及び液体供給装置7を含む。吸引器6は、連通管61、ポンプ62及び着脱可能な収容容器63を含む。液体供給装置7は、輸液管71、加圧ポンプ72及び液体収容槽73を含む。操作本体8にはポンプ62と加圧ポンプ72とが一体化されており、電子機械の構成により使用者は、操作本体8の押しボタンを操作してポンプ62及び加圧ポンプ72のそれぞれに対して始動及び停止制御を行うことにより、吸引器6及び液体供給装置7の作動をより容易に制御することができる。
【0020】
連通管61は、一方が管状本体1の接続部E2に接続されるとともに糞便吸引通路2に連通され、同時に着脱可能な収容容器63にも連通される。輸液管71は、液体通路(図示せず)及び液体収容槽73に連通される。この実施例において、着脱可能な収容容器63は、管状本体1から独立して設けられており、より大きな収容空間によって一度により多くの糞便を収容できるようにするために、体積の大きいケース状物に設計されてもよい。
【0021】
図4は、本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の適用模式図である。図4に示すように、動物200、例えば猫に対して全身又は局所の麻酔を行い、消毒された動物糞便吸引装置100の差し入れ部E1を、動物200の肛門210から動物200の大腸における結腸の箇所に差し入れる。次に、液体供給装置5の加圧ポンプを起動させ、液体を輸液管51を介して液体通路3に加圧注入する。
【0022】
次に、図5及び図5Aは、本発明に係る好ましい実施例の第1の実施例における動物糞便吸引装置の使用模式図である。図5に示すように、液体は、液体通路3を経由し、差し入れ部E1上の液体出口31から大腸220に吐出される。液体は、乾いて硬い糞便が堆積された糞便塊に吐出され、糞便塊に浸入した後、糞便塊を糞便の小塊300に分解し、これと同時に、腸壁に潤いを与える。
【0023】
図5Aに示すように、糞塊が柔らかい糞便の小塊300に分解されるとともに腸壁に充分潤いが与えられた後、吸引器4のポンプを起動し、糞便吸引通路2に吸引力を発生させ、糞便の小塊300を糞便吸引通路2を介して動物200の大腸220から吸引し、着脱可能な収容容器41における糞便収容空間に収容する。
【0024】
上述の実施形態は本発明の原理および効果・機能を例示的に説明するに過ぎず、本発明は、これらによって限定されるものではない。本発明に係る実質的な技術内容は、特許請求の範囲に定義される。本発明は、当業者により本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に修正及び変更されることが可能であり、そうした修正及び変更は、特許請求の範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0025】
100、100’ 動物糞便吸引装置
200 動物
210 肛門
220 大腸
300 糞便の小塊
1 管状本体
2 糞便吸引通路
3 液体通路
31 液体出口
32 環状通路
4、6 吸引器
61 連通管
62 ポンプ
41、63 着脱可能な収容容器
5、7 液体供給装置
51、71 輸液管
52、72 加圧ポンプ
53、73 液体収容槽
E1 差し入れ部
E2 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体により動物の大腸における糞便を軟化させるとともに前記糞便を前記動物の大腸から吸引するための動物糞便吸引装置であって、
前記動物の大腸に差し入れるための差し入れ部と接続部とを含む管状本体と、
前記管状本体に形成された糞便吸引通路と、
前記管状本体の管壁に設けられ、前記差し入れ部側に複数の液体出口が形成された複数の液体通路と、
前記接続部に接続されるとともに前記糞便吸引通路に連通され、前記糞便吸引通路に吸引力を発生させる吸引器と、
前記接続部に接続されるとともに前記液体通路に連通され、前記液体出口を介して前記動物の大腸に前記液体を供給する液体供給装置と、
を備え、前記液体により前記糞便を軟化させるとともに、前記吸引器からの前記吸引力により前記糞便を前記糞便吸引通路を介して前記動物の大腸から吸引することを特徴とする動物糞便吸引装置。
【請求項2】
前記吸引器は、前記動物の大腸から吸引された前記糞便を収容するための糞便収容空間を含むことを特徴とする請求項1に記載の動物糞便吸引装置。
【請求項3】
前記吸引器は、着脱可能な収容容器を含み、前記着脱可能な収容容器には前記糞便収容空間が設けられることを特徴とする請求項2に記載の動物糞便吸引装置。
【請求項4】
前記液体は、水及び潤滑剤のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の動物糞便吸引装置。
【請求項5】
前記吸引器は、前記吸引力を発生させるためのポンプを含むことを特徴とする請求項1に記載の動物糞便吸引装置。
【請求項6】
前記液体供給装置は、前記液体に対して加圧を行うための加圧ポンプを含むことを特徴とする請求項1に記載の動物糞便吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【公開番号】特開2012−30073(P2012−30073A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164891(P2011−164891)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511183445)