説明

動物飼料組成物

【課題】動物飼料組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される、安息香酸、その誘導体または代謝産物を活性成分として含む、例えば家禽などの動物のための新しい飼料組成物に関する。発明者らは、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用すると、安息香酸のよく知られている機能に加えて、この化合物が有望な生育促進剤として使用できることを発見した。特に発明者らは、適量の安息香酸と相乗効果で併用される植物の異なる部位に存在する化合物の混合物が、全く思いがけないことに、本発明によって探求される、家禽飼料の消化吸収率を改善する、すなわち動物において飼料転換率および/または毎日の体重増加を改善する効果を示すことを実証できた。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、飼料転換率および/または体重増加および/または腸管内菌叢調節の改善のための、および動物のより良い健康状態のためのチモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの精油化合物の混合物と併用される、安息香酸、その誘導体または代謝産物の使用に関する。
【0002】
本発明はまた、好ましくはチモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの精油化合物の混合物である少なくとも1つの精油化合物と併用される、好ましくは安息香酸、その誘導体または代謝産物である有機酸を活性成分として含む、動物、特に家禽のための新しい飼料組成物にも関する。
【0003】
より詳しくは、本発明は、上で定義される組成物の動物飼料または飲用水、あるいは飼料または飲用水添加剤の構成要素としての使用、ならびに組成物、飼料添加剤、それらを含有する飲用水および飼料に関する。
【0004】
安息香酸は商業的に入手可能であり(例えばスイス国カイゼルオーガストのDSMニュートリショナル・プロダクツ(DSM Nutritional Products(Kaiseraugst,Switzerland))によって供給されるVevoVitall(登録商標)として)、または先行技術でよく知られている工程および方法を使用して、当業者が容易に調製できる。
【0005】
本発明に従った精油化合物は商業的に入手可能であり、または先行技術でよく知られている工程および方法を使用して、当業者が容易に調製できる。
【0006】
精油化合物は、混合物中の高度精製形態で、または天然に入手できる植物抽出物または抽出物混合物の形態で使用できる。
【0007】
本明細書で用いる「抽出物」という用語は、溶剤抽出(「抽出油」としてもまた知られている)、水蒸気蒸留(「精油」としてもまた知られている)または当業者に知られているその他の方法によって得られる組成物を含む。適切な抽出溶剤としては、エタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0008】
本明細書において、「天然」という表現は、天然化合物からなり、天然物からまたは合成を通じて得られる物質と理解されたい。天然物質は、好ましくは上で定義される化合物の少なくとも2つを主成分として、さらに例えばカプサイシン、タンニンまたはカルバクロールなどのその他の精油化合物を含有してもよい。
【0009】
飼料または飼料組成物という用語は、動物による摂取に適し、またはそれを意図した、あらゆる化合物、調製品、混合物、または組成物を意味する。
【0010】
動物という用語は、ヒトをはじめとする全ての動物を含む。動物の例は、非反芻動物および反芻動物である。反芻動物としては、例えばヒツジ、ヤギ、および例えば肉牛および乳牛などの雌牛などの畜牛などの動物が挙げられる。特定の実施態様では、動物は非反芻動物である。非反芻動物としては、ウマ、ウサギ、ブタまたは猪(子ブタ、生育期ブタ、および雌豚を含むが、これに限定されるものではない)、およびシチメンチョウ、アヒル、およびニワトリなどの家禽(ブロイラー、産卵鶏を含むが、これに限定されるものではない)が挙げられる。
【0011】
EP−A−0 683 985から、安息香酸またはその塩を含む動物飼料組成物を使用して、養豚場における有機廃棄物、特に動物排泄物および厩肥からの悪臭を放つアンモニア排出を最小化できることが知られている。離乳したばかりの子ブタの食餌への安息香酸の添加が、動物の畜産学的性能を改善することがさらに知られている。
【0012】
動物飼料中の安息香酸の使用の欠点は、望ましくない副作用のために、安息香酸が>10000mg/kgブタ飼料の投与量、および>5000mg/kg家禽飼料の投与量で使用できないことである。
【0013】
上で定義される活性化合物の混合物と併用すると、有効性を失うことなく最終動物飼料中の安息香酸およびその塩の投与量範囲を低減できることが、今や意外にも発見された。
【0014】
さらに発明者らは、安息香酸、その誘導体または代謝産物が、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用すると、上の機能に加えて、有望な生育促進剤として使用できることを発見した。特に発明者らは、適量の安息香酸と相乗効果で併用される植物の異なる部位に存在する化合物の混合物が、全く思いがけないことに、本発明によって探求される、家禽飼料の消化吸収率、または動物の畜産学的性能を改善する効果を示すことを実証できた。
【0015】
したがって本発明は、動物における飼料転換率または例えば毎日の体重増加(DWG)などの体重増加の改善のための、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される、安息香酸、その誘導体または代謝産物の使用に関する。この態様はまた、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物を含む組成物と共に、主成分の安息香酸を含む組成物を動物へ同時給餌する方法も包含する。
【0016】
飼料転換率という用語は、本発明に従った組成物が飼料1kgあたり適切な濃度で動物飼料に添加される第1の処置、および動物飼料への組成物添加なしの第2の処置(対照)を含む生育試験に基づいて判定される。
【0017】
一般に知られているように、改善されたFCRは対照FCRよりも低い。特定の実施態様では、FCRは、対照と比較して少なくとも1.0%または5%改善される(すなわち低下する)。
【0018】
本発明の第2の態様は、好ましくは動物またはDWGにおける飼料転換率改善のための、安息香酸、その誘導体または代謝産物と、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物との混合物を含む組成物の使用に関する。
【0019】
本発明者らは、安息香酸と、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物とを含む飼料組成物が、思いがけない抗菌剤活性、さらに動物の腸管内菌叢を調節する可能性もまた有することを意外にも発見した。
【0020】
したがって本発明の第3の目的は、動物の腸管内菌叢調節のための、そして抗菌剤としての、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される、安息香酸、その誘導体または代謝産物の使用を提供することである。
【0021】
本明細書で用いる「腸管」という用語は、胃腸または消化管(digestive tract)(または消化管(alimentary canal)とも称される)を指し、それは食物を取り込み、それを消化してエネルギーおよび栄養素を抽出し、残る廃棄物を排出する多細胞動物内の臓器システムを指す。
【0022】
本明細書で用いる腸管内「微生物叢」という用語は、腸管内に生息して、適切な消化を助けおよび/または免疫系機能を支持することによって健康を維持する、天然微生物の培養物を指す。
【0023】
腸管内微生物叢との関連で、本明細書で用いる「調節する」という用語は、一般に、健康で正常に機能している動物の機能またはその状態を変更し、操作し、修正し、または調整すること、すなわち非治療的な使用を意味する。調節は本発明の組成物に反応する。
【0024】
抗菌剤活性は、例えば殺菌性、静菌性、殺真菌性、静真菌性、および/または殺ウイルス性であってもよい。「殺菌性」という用語は細菌細胞を死滅させることができ、「静菌性」という用語は細菌生育を阻害でき、すなわち生育中の細菌細胞を阻害でき、「殺真菌性」という用語は真菌細胞を死滅させることができ、「静真菌性」という用語は真菌生育を阻害でき、すなわち生育中の真菌細胞を阻害でき、「殺ウイルス性」という用語はウイルスを不活性化できるものと理解されたい。
【0025】
以下は本発明に従った組成物によって得られる腸管内微生物叢調節効果の非限定的特定例である(本発明の組成物なしの対照と比較した変化)。
(i)例えば子ブタまたはブロイラーなどの生体内で、サルモネラ(Salmonella)種および/またはクロストリジウム・ペルフリンジェンス(Clostridium perfringens)が発生する頻度の低下。
(ii)例えば子ブタまたはブロイラーなどの生体内における、大腸菌(Escherichia coli)および/またはエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)および/または乳酸桿菌(Lactobacillus)種および/またはカンピロバクター(Campylobacter)種の数の減少。
【0026】
なおもさらに腸管内微生物叢調節効果との関連で、本発明の組成物は、好ましくは、
(iii)例えば子ブタおよび/またはブロイラーの腸内容物から単離される細菌などの有害微生物の生体外生育に実質的に影響し、例えばそれを低下させる。
【0027】
本発明の第4の態様は、安息香酸、その誘導体または代謝産物と、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物との混合物を含む、動物飼料組成物または添加剤またはそのためのプレミックスに関する。動物に投与される安息香酸またはその誘導体の量は、動物に給餌される各飼料の総重量を基準にして0.001〜5%の範囲である。しかし安息香酸またはその誘導体の機能が、排泄物からのアンモニア排出を抑止するために、このような食餌を給餌された動物の排泄物のpHを制御することであれば、この量はより多くてもよい。このようなより多くの量は、総動物飼料組成物を基準にして最大で約10%に適切に制限される。
【0028】
家禽飼料構想の好ましい実施態様では、安息香酸または安息香酸誘導体は、それが投与される対象の体重1kgあたり5mg〜体重1kgあたり約80mg、好ましくは体重1kgあたり10mg〜体重1kgあたり約40mgの一日投与量を提供するのに十分な量で使用される。
【0029】
最終動物飼料中の安息香酸またはその誘導体の量は、50〜1000mg/kg飼料の範囲内、好ましくは100〜500の範囲内、最も好ましくは200〜250mg/kg飼料の範囲内である。
【0030】
チモール、オイゲノール、およびピペリンの3つの活性化合物を飼料1kgあたり0.1〜20mg(ppm)、好ましくは飼料1kgあたり0.3〜10mgの範囲内の量(投与量範囲)で投与することが目下考察される。
【0031】
最終家禽飼料中の3つの化合物の特に好ましい投与量の例は、互いに独立して次の範囲内である。
チモール 1〜20ppm、好ましくは1〜10ppm;
オイゲノール 1〜5ppm、例えば2ppm;
ピペリン 1ppmまで、好ましくは0.3〜0.5ppm。
【0032】
好ましい飼料添加剤の組成は、場合により、飼料1kgあたり、例えば植物中に見られ、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物などのその他の化合物を含む。
約1mgまでのプロピリデン、ブチリデン、フタリド(phtalides)、ジンゲロール、ラベンダー油;
約2mgまでのデカ−、ウンデカ−、ドデカラクトン、イオノン、イロン、レソルシノール、ユーカリプトール、メントール、ペパーミント油、α−ピネン;
約3mgまでのリモネン、グアヤコール、アネトール、リナロール、ジヒドロジャスモン酸メチル;
約4mgまでのカルバクロール、プロピオン酸、酢酸または酪酸、ローズマリー油、クローブ油、ゲラニオール、テルピネオール、シトロネロール;
約5mgまでのアミルおよび/またはサリチル酸ベンジル、桂皮アルデヒド、バニリン(vanilline)、植物ポリフェノール(タンニン);
約5mgまでのターメリック粉末またはウコン抽出物。
【0033】
これら全ての追加の化合物は、乳化界面活性剤との併用で使用してもよい。
【0034】
乳化剤は、有利には、例えばエステル化リシノール酸または脂肪酸プロピレングリコールエステルなどの脂肪酸ポリグリセロールエステル、糖−エステルまたは糖−グリセリド、ポリエチレングリコール、レシチンなどのかなり親水性のものから選択できる。
【0035】
家禽飼料構想の好ましい実施態様では、飼料添加剤は安息香酸とチモール、オイゲノール、およびピペリン混合物とを含み、これらの3化合物は、それが投与される対象の体重1kgあたり0.1mg〜約1mgのチモールおよびオイゲノール、および0.02mg〜約0.06mgのピペリンの一日投与量を提供するのに十分な量で使用される。
【0036】
上で例示される家禽飼料への飼料添加剤組成物の組み込みは、実際には濃縮物またはプレミックスを使用して実施される。プレミックスとは、好ましくは1つ以上の微小成分と希釈剤および/またはキャリアとの均一混合物を指す。プレミックスを使用してより多量のミックス中の微小成分の均一分散を促進する。本発明に従ったプレミックスは、固形物(例えば水溶性粉末)または液体として、飼料成分または飲用水に添加できる。
【0037】
本発明の化合物混合物の他に、本発明の動物飼料添加剤は、少なくとも1つの脂溶性ビタミン、および/または少なくとも1つの水溶性ビタミン、および/または少なくとも1つの極微量のミネラル、および/または少なくとも1つのマクロミネラルを含有する。
【0038】
さらなる任意の飼料添加剤成分は、例えばβ−カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、アポエステル、およびルテインなどのカロテノイドなどの着色剤と、芳香化合物と、安定剤と、抗菌剤ペプチドと、多価不飽和脂肪酸(PUFA)と、反応性酸素発生化学種と、および/またはフィターゼ(EC3.1.3.8または3.1.3.26)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)、ガラクタナーゼ(EC3.2.1.89)、α−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.22)、タンパク質分解酵素(EC3.4.、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)、ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)、リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5);ホスホリパーゼC(EC3.1.4.3)、ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4)、例えばα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)などのアミラーゼ、および/またはβ−グルカナーゼ(EC3.2.1.4またはEC3.2.1.6)から選択される少なくとも1つの酵素である。
【0039】
抗菌剤ペプチド(AMP)の例は、CAP18、ロイコシン(Leucocin)A、プロテグリン(Protegrin)−1、タナチン(Thanatin)、デフェンシン、ラクトフェリン、ラクトフェリシン(Lactoferricin)、およびノビスピリン(Novispirin)(Robert Lehrer、2000年)、プレクタシン(plectasin)、およびスタチンなどのオビスピリン(Ovispirin)である。
【0040】
多価不飽和脂肪酸の例は、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(docosohexaenoic acid)、エイコサペンタエン酸、およびγ−リノール酸などのC18、C20、およびC22多価不飽和脂肪酸である。
【0041】
反応性酸素発生化学種の例は、過ホウ酸塩、過硫酸塩,または過炭酸塩などの化学物質、およびオキシダーゼ、オキシゲナーゼまたはシンセターゼ(syntethase)などの酵素である。
【0042】
通常、脂肪および水溶性ビタミン、ならびに極微量ミネラルが飼料への添加を意図するいわゆるプレミックスの一部を形成するものであるのに対し、マクロミネラルは通常、飼料に別々に添加される。
【0043】
以下はこれらの構成要素の例の非排他的一覧である。
−脂溶性ビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、および例えばビタミンK3などのビタミンKである。
−水溶性ビタミンの例は、ビタミンB12、ビオチンおよびコリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸、および例えばCa−D−パントテン酸(panthothenate)などのパントテン酸塩(panthothenate)である。
−極微量ミネラルの例は、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ヨウ素、セレン、およびコバルトである。
−マクロミネラルの例は、カルシウム、リン、およびナトリウムである。
【0044】
プレミックスは、例えば家禽飼料1トンあたり、50〜200gの活性化合物混合物のプロピレングリコール溶液、20〜1000gの乳化剤、50〜900gの穀物および副産物、20〜100gのタンパク質担体(粉乳、カゼインなど)、および50〜300gのミネラル構成要素(膨張シリカ、飼料品質石灰、ビ−カルシウムリン酸など)を含有できる。
【0045】
最後に発明者らは、精油化合物と併用される、好ましくは安息香酸である有機酸を含む飼料添加剤組成物が、精油化合物をミネラルキャリア上に吸着させて付着剤および有機酸と混合するならば、安定性、内容均一性、耐性、および飼料原料利用に関して良好な特性を示すことを意外にも発見した。
【0046】
したがって少なくとも2つの精油化合物と併用される、有機酸、その誘導体または代謝産物を含む飼料添加剤組成物を提供することが本発明の第5の態様であり、精油化合物(群)は、ミネラルキャリア上に吸着されて付着剤および有機酸と混合される。
【0047】
本発明に従った飼料添加剤組成物の重要な特性は、組成物中に存在する精油がミネラルキャリア上に吸着されることであり、ミネラルキャリアは、好ましくは二酸化ケイ素、アルミニウム、およびケイ酸マグネシウム、およびケイ藻土からなる群に属する。
【0048】
飼料添加剤組成物の別の重要な特性は、有機酸粒子に精油化合物を吸着させる原因である付着剤が組成物中に存在することであり、付着剤は、好ましくは例えばダイズ油などの植物油、ワックス、糖蜜、ポリエチレングリコール、ペクチン、およびセルロース誘導体からなる群に属する。
【0049】
本発明の重要なもう1つの特性は、ミネラルキャリア上に吸着される精油化合物が、最後に有機酸粒子表面の付着剤を通じて吸着されることである。
【0050】
好ましくは、少なくとも1つの精油化合物は、チモール、オイゲノール、ユーカリプトール、メントール、グアヤコール、カルバクロール、ゲラニオール、桂皮アルデヒドバニリン(vanilline)、タンニン、およびピペリンからなる群から選択され、組成物の2%〜50重量%の量で組成物中に存在する。有機酸は、例えばクエン酸、琥珀酸、安息香酸、フマル酸、L−アスパラギン酸(L−asparate)またはL−リンゴ酸に由来し、50%〜95重量%の量で組成物中に存在する。
【0051】
このような飼料添加剤組成物の好ましい例は、好ましくはケイ酸塩であるミネラルキャリア上に吸着されるチモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物を含む。組成物は、植物油および安息香酸とさらに混合される。
【0052】
別の好ましい本発明の実施態様では、精油化合物は、ミネラルキャリア上への吸着が起きる前に、乳化界面活性剤と混合されもよい。乳化剤は、有利には、例えばエステル化リシノール酸または脂肪酸プロピレングリコールエステルなどの脂肪酸ポリグリセロールエステル、糖−エステルまたは糖−グリセリド、ポリエチレングリコール、レシチンなどの親水性のものから選択できる。
【0053】
本発明の別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの精油化合物または抽出物が組成物の5%〜20%、より好ましくは5〜10重量%の量で存在し、好ましくは安息香酸である有機酸が、組成物の80%〜90%、より好ましくは80〜85重量%の量で組成物中に存在する。
【0054】
前述のようにチモール、オイゲノール、およびピペリンは商業的に入手可能であり、または先行技術でよく知られている工程および方法を使用して当業者が容易に調製でき、混合物中の高度精製形態で、または天然植物抽出物または抽出混合物形態で使用できる。これは上述の全てのその他精油化合物にも当てはまる。
【0055】
クエン酸、フマル酸、およびリンゴ酸は、一般に天然に見られ、トリカルボン酸回路(クレブス回路)の中間体である。クレブス回路は、ヒトおよび動物における炭水化物分解およびエネルギー産生のための経路である。これらの有機酸はまた、顕著な反芻胃細菌の生育とも関連付けられている。
【0056】
アスパラギン酸は非必須アミノ酸であり、肝臓中のその他のアミノ酸から生成できる。アスパラギン酸は、反芻胃および盲腸内微生物の生育のために必要とされる。アスパラギン酸はまた、食餌性タンパク質からの老廃物の適切な排除のために尿素回路においても非常に重要である。
【0057】
上で定義される飼料添加剤組成物の範囲において、上に列挙する精油および有機酸は、飼料添加剤中で使用される好ましいタイプの化合物を代表するものであるが、精油および有機酸が、飼料添加剤を消費する動物の生育を促進し、および/または飼料変換を改善しさえすれば、組成物はその他のタイプの精油および有機酸から構成されてもよいことに留意すべきである。
【0058】
最後に、飼料添加剤組成物の動物飼料への組み込みは、実際には上述されるような濃縮物またはプレミックスを使用して実施される。
【0059】
本明細書で開示される特定の実施態様は、本発明のいくつかの態様の例示を意図するので、本明細書で記述され特許請求される本発明は、これらの実施態様によって範囲を制限されない。あらゆる同等の実施態様は、本発明の範囲内であることが意図される。確かに前述の説明から、当業者には本明細書で示され記述されるものに加えて、本発明の様々な修正が明らかになるであろう。このような修正はまた、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0060】
以下の実施例で本発明をさらに例示する。
【0061】
[実施例1]
本発明に従った化合物の混合物を含有するブロイラー飼料(「スターター」)は、室温で従来の混合装置を使用して、以下の成分を共に混合して調製できる。
【0062】
【表1】

【0063】
[実施例2]
本発明に従った化合物の混合物を含有するブロイラー飼料(「グローワー」)は、室温で従来の混合装置を使用して、以下の成分を共に混合して調製できる。
【0064】
【表2】

【0065】
[実施例3:3週間にわたるブロイラー生育性能に対する、少なくともチモール、オイゲノール、おおびピペリンと、安息香酸(VevoVitall)との混合物を含む組成物の異なる組み合わせの効果の評価]
ブロイラーにおいて、生育性能試験を8日目から29日目にかけて実施した。ニワトリは金網床バタリーケージ内で飼育した。生後1日目から8日目まで、小麦、トウモロコシ、およびダイズミールベースの実験前食餌をニワトリに給餌した。実験期間中(8〜29日目)は、小麦、ライ麦、およびダイズミール(組成物は表1参照)ベースの食餌をニワトリに給餌した。ニワトリ群は、8、15、22、および29日目に秤量した。中間期の飼料消費を判定し、体重増加および飼料転換率を計算した。
【0066】
非栄養補給対照処置、および飼料1kgあたり10mgの抗生物質アビラマイシンを含有する正の対照以外に、安息香酸(VevoVitall)を飼料1kgあたり500mgで含めた。さらに飼料1kgあたり、250mgの安息香酸と50mgのチモール、オイゲノール、およびピペリンを含む組成物(本明細書ではTEPと略記される)、ならびに500mgの安息香酸と25mgのTEP、または500mgの安息香酸と50mgのTEPの組み合わせのいずれかをそれぞれ試験した。
【0067】
飼料1kgあたり250mgの安息香酸と50mgTEPの併用では、体重増加は対照と比較して4.2%改善された。用量500mg/kgのVevoVitall単独では、体重増加は対照と比較して3%改善された。飼料1kgあたり500mgの安息香酸と25mgのTEPの併用は+4.8%の体重増加をもたらした。体重増加の最高の改善は、抗生物質アビラマイシン(+8.7%)、および500mgの安息香酸と50mgのTEP(+11.2%)併用で見られた(表2)。飼料変換(FCR)では、250mgの安息香酸と50mgのTEP併用の好ましい効果は、抗生物質アビラマイシンを添加した正の対照と同一範囲であった(負の対照と比較して4.3%)。FCRの最高の改善は、500mgの安息香酸と50mgのTEP(10.2%)とを添加した処置で見られた。
【0068】
本試験の結果は、安息香酸とTEPとの異なる組み合わせが、3週間にわたり小麦、ライ麦、およびダイズミールベースの食餌を給餌されたニワトリの生育性能を改善するのに、効果的であることを実証する。
【0069】
[実験計画]
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
[実施例4:本発明に従った組成物の抗菌活性の評価]
グリセロール原液から開始して、37℃で10mlのトリプシンダイズブロス(TSB、メルク(Merck))中において250rpmで一晩振盪して、大腸菌(E.coli)およびクロストリジウム・ペルフリンジェンス(Clostridium perfringens)の前培養を実施した。これらの前培養をTSB中で希釈して、およそ4×10cfu/mlの細菌懸濁液を得た。実施例3で明記されるようなVevoVitallおよび組成物TEPを溶解して、細菌懸濁液に添加した。
【0074】
開始時点でOD595nmを測定して、沈殿化合物に起因するあらゆる濁度を考慮した。次にプレートを嫌気生活で湿潤雰囲気内において200rpmで振盪し、37℃で一晩インキュベートした。24時間後にOD595nmを測定して、%阻害を計算した。
【0075】
結果を図1(クロストリジウム・ペルフリンジェンス(Clostridium perfringens))および図2(大腸菌(Escherichia coli))に示し、双方の図の垂直軸は「生育阻害(対照の%)」を示し、双方の図の水平軸は「本発明の全混合物の等価含量として示される化合物含量」を示す。
【0076】
[実施例5:乾燥飼料添加剤の調製]
50gのケイ藻土をビーカーに入れ、10gのオイゲノールと1gのローズマリー油をミネラルに緩慢に滴下して添加し、緩慢に撹拌した。500gの安息香酸をターブラー(TURBULA)ミキサーに入れて、60℃に加温した10gの硬化パーム油を酸上に噴霧して、緩慢に5分間混合した。次に50gの精油含有ミネラルを添加して10分間混合し、均一の乾燥粉末を得た。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に従った組成物のクロストリジウム・ペルフリンジェンス(Clostridium perfringens)に対する抗菌活性の評価である。
【図2】本発明に従った組成物の大腸菌(Escherichia coli)に対する抗菌活性の評価である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物における飼料転換率および/または毎日の体重増加および/または腸管内菌叢調節の改善のための組成物の製造における、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される安息香酸、その誘導体または代謝産物の使用。
【請求項2】
動物における飼料転換率および/または毎日の体重増加および/または腸管内菌叢調節の改善のための、および/または抗菌剤としての、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される安息香酸、その誘導体または代謝産物の使用。
【請求項3】
チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物を含む組成物と共に、安息香酸を主成分として含む組成物を動物へ同時給餌することによって特徴づけられる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
動物が非反芻動物または反芻動物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
動物が、家禽、ブタ、および畜牛から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記混合物が、チモール、オイゲノール、およびピペリンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記混合物が、プロピリデン、ブチリデン、フタリド(phtalides)、ジンゲロール、ラベンダー油、デカ−、ウンデカ−、ドデカラクトン、イオノン、イロン、レソルシノール、ユーカリプトール、メントール、ペパーミント油、α−ピネン、リモネン、グアヤコール、アネトール、リナロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、カルバクロール、プロピオン酸、酢酸または酪酸、ローズマリー油、クローブ油、ゲラニオール、テルピネオール、シトロネロール、アミルおよび/またはサリチル酸ベンジル、桂皮アルデヒド、バニリン(vanilline)、植物ポリフェノール、ターメリック粉末、ウコン抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記安息香酸またはその誘導体が、それが投与される対象の体重1kgあたり5mg〜体重1kgあたり約80mgの一日投与量を提供するのに十分な量で使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
チモール、オイゲノール、およびピペリンが、それが投与される対象の体重1kgあたり0.5mg〜約1mgのチモールおよびオイゲノール、および0.02mg〜約0.06mgのピペリンの一日投与量を提供するのに十分な量で使用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
安息香酸、その誘導体または代謝産物と、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの化合物の混合物とを含む、動物飼料組成物または添加剤またはそのためのプレミックス。
【請求項11】
前記混合物がチモール、オイゲノール、およびピペリンを含む、請求項10に記載の動物飼料組成物または添加剤またはプレミックス。
【請求項12】
前記混合物が、プロピリデン、ブチリデン、フタリド(phtalides)、ジンゲロール、ラベンダー油、デカ−、ウンデカ−、ドデカラクトン、イオノン、イロン、レソルシノール、ユーカリプトール、メントール、ペパーミント油、α−ピネン、リモネン、グアヤコール、アネトール、リナロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、カルバクロール、プロピオン酸、酢酸または酪酸、アミルおよび/またはサリチル酸ベンジル、桂皮アルデヒド、バニリン(vanilline)、ターメリック粉末からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む、請求項10または11に記載の動物飼料組成物または添加剤またはプレミックス。
【請求項13】
固形物または液体として飼料成分に、あるいは飲用水に添加できる、請求項10〜12のいずれか一項に記載の動物飼料組成物または添加剤またはプレミックス。
【請求項14】
動物における飼料転換率および/または毎日の体重増加および/または腸管内菌叢調節の改善のための、請求項10〜13のいずれか一項に記載の組成物または添加剤またはプレミックスの使用。
【請求項15】
好ましくは安息香酸である有機酸、および少なくとも1つの精油化合物を含み、精油化合物がミネラルキャリア上に吸着されて付着剤および有機酸と混合される、飼料添加剤組成物。
【請求項16】
ミネラルキャリアが、ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、マグネシウムケイ酸塩、ケイ藻土からなる群に属する、請求項15に記載の飼料添加剤組成物。
【請求項17】
付着剤が、植物油、ワックス、糖蜜、ポリエチレングリコール、ペクチン、およびセルロース誘導体からなる群に属する、請求項15または16に記載の飼料添加剤組成物。
【請求項18】
有機酸が、クエン酸、コハク酸、安息香酸、フマル酸、L−アスパラギン酸(asparate)またはL−リンゴ酸に由来し、50%〜95重量%の量で組成物中に存在する、請求項15〜17のいずれか一項に記載の飼料添加剤組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの精油化合物が、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択され、精油化合物(群)が2%〜50重量%の総量で組成物中に存在する、請求項15〜18のいずれか一項に記載の飼料添加剤組成物。
【請求項20】
動物によって摂取される飼料成分として存在する、チモール、オイゲノール、およびピペリンからなる群から選択される少なくとも2つの活性化合物の混合物と併用される、有効量の安息香酸または安息香酸誘導体を飼料摂取動物に提供するステップを含む、動物において飼料転換率および/または毎日の体重増加および/または腸管内菌叢調節を改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11320(P2009−11320A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−171055(P2008−171055)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】