説明

動特性検査装置

【課題】ワークを機械的に加振するようにした低コストな動特性検査装置において、その加振周期だけでなく振幅も容易に変更可能とし、より広い条件下での検査を容易に行えるようにする。
【解決手段】加振テーブル10上に載置したマウントMに上方から所要の予荷重をかけて保持するとともに、下方から加振して荷重及び位置の変化を計測し、この計測データに基づいてマウントMの動特性を検査する。加振テーブル10の下部にリンク部材15を介してスイングアーム20の前端部を連結し、これを駆動機構23により駆動する。駆動機構23のアーム24とスイングアーム20とは相互に回動可能に、かつ駆動アーム24に対してはスライド移動可能に連結する。駆動アーム24の有効長さが変化することで、スイングアーム20の揺動ストロークが連続的に変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防振ゴムのような製品(ワーク)の動特性を検査するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の動特性検査装置としては例えば特許文献1等に開示されるように、機台の上面から上方に突出する加振機の出力軸端にテーブルを設け、ここに載置した防振ゴム等のワークを上方から油圧シリンダにより押圧し、予め所定の荷重をかけた状態で、さらに加振機により下方から振動(繰り返し荷重)を加えようにしたものが知られている。ワークにかける予荷重はその使用状況下での静荷重に相当し、加振機による振動はワークの使用状況下で入力すると想定される振幅及び周期のものとする。
【0003】
そうして使用状況下に相当する条件でワークを加振するために、加振機にも通常は油圧シリンダを用いており、これに供給する作動油圧をサーボバルブによって制御することで、前記のように予め設定した振幅及び周期で正確にワークを加振することができる。そして、そのように加振機によりワークを下方から加振する一方、上方の油圧シリンダとの間に介設したロードセルによって、ワークに作用している荷重の変化を計測し、この計測データに基づいてワークのばね特性や内部損失を求めることができる。
【0004】
しかしながら、油圧シリンダを用いた加振機は、油圧ポンプやこれを駆動する原動機、さらには油圧配管等によって大掛かりなものになりやすく、しかも高精度のサーボバルブが必要になるため、コスト高になることは避けられない。また、それらの設備のメンテナンスも大変で、維持コストもかなりかかってしまう。
【0005】
この点につき本願の発明者らは、電動機によって偏心カムを駆動し、これによりワークを加振するようにした動特性検査装置を開発して、既に特許出願をしている(特許文献2を参照)。このものでは、カムの偏心量によって加振振幅を設定できるとともに、電動機の回転数によって加振周波数を設定でき、油圧を利用しない比較的低コストのものでありながら設定した条件で正確にワークを加振し、その使用状況下における動特性を検査することができる。
【特許文献1】特開昭64−13434号公報
【特許文献2】特開2007−327827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記本願発明者らの先願(特許文献2)に係る装置では、カムの形状によって加振振幅が決まってしまうことから、振幅の条件が異なるときにはカムを交換しなくてはならず、手間が掛かるという不具合があり、また、振幅を或る範囲内で変更しながら加振するような検査には対応できない。
【0007】
斯かる点に鑑みて本発明の目的は、ワークを機械的に加振することを前提としながら、その加振周期だけでなく振幅も容易に変更可能な検査装置を提供し、より広い条件下での検査を手間を掛けずに行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために本発明に係る動特性検査装置では、ワークを加振するために載置台に連結したアームを揺動させるとともに、そのストロークを連続的に変更可能な可変駆動機構を設けている。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、ワークを台上に載置し上方から予荷重をかけて保持するとともに下方から加振して、この加振力による荷重の変化を検出し、少なくともその荷重のデータに基づいてワークの動特性を検査するようにした動特性検査装置を対象とする。
【0010】
そして、前記載置台を上下方向に往復動するように案内するガイド部材と、その載置台にリンク部材を介して連結され、上下に揺動する揺動アームと、加振のための動力源である電動機と、を備えるとともに、この電動機により駆動されて前記揺動アームを上下に揺動させる駆動力の伝達経路に、その揺動ストロークを連続的に変更可能な可変駆動機構を設けたものである。
【0011】
前記の構成により、ワークを検査するときには、これを載置台に載せてその使用状況下での静荷重に相当する予荷重をかけるとともに、電動機により可変駆動機構を駆動して、予め設定した振幅及び周期で載置台及びワークを機械的に加振する。この加振振幅は、可変駆動機構により揺動アームのストロークを変更することによって連続的に変更可能であり、また、加振周期は電動機の制御によって変更することができる。
【0012】
そうして下方から加振しながら、これによるワークの荷重の変化を検出し、その荷重データと例えば前記加振振幅や周期等とに基づいて、ワークの動ばね、内部損失等、その動特性を表す物理量を求めることができる。つまり、従来例(特許文献2)のように手間をかけることなく加振振幅や周期を変更して、より広い条件下での検査を行える。
【0013】
但し、そうした可変駆動機構を前記従来例の偏心カムのように載置台の下方に配置すると、この載置台の周辺に確保すべき作業スペースとの取り合いの問題が生じる虞れがある。この点につき前記の構成では、載置台と可変駆動機構との間に揺動アームが設けられており、このアームの分、可変駆動機構を載置台から離してその周辺の作業スペースを確保することができる。
【0014】
また、前記従来例のような偏心カムによる加振では、そのストロークが大きくなると載置台が飛び跳ねてしまい、ワークに加わる加振波形に大きな乱れを生じる虞れがあるが、前記の構成では載置台と揺動アームとをリンク部材によって連結しているので、加振振幅の大きなときでも載置台の飛び跳ねは阻止できる。
【0015】
前記可変駆動機構として好ましいのは、揺動アームを駆動する駆動アームを設け、これらのアーム同士を相互に回動可能にかつ少なくとも一方のアームに対しスライド移動可能に連結して、この連結部位のスライド移動によって揺動アームの揺動ストロークを変更する構成である(請求項2)。こうして、それぞれ揺動する2本のアームの連結部位を変更し、少なくとも一方のアームの有効長さを変化させるという簡単な構成でもって、揺動アームのストロークを連続的に変更することができる。
【0016】
その場合に、駆動アームと揺動アームとは略平行に配置し、それぞれの支点を互いの連結部位に対してアーム長手方向につき同じ側に位置づけることが好ましい(請求項3)。このように配置すれば、2本のアームはパラレルリンクのように同位相で揺動し、互いの連結部位の揺動軌跡が概ね重なるようになるので、この連結部位に余計な力が作用し難く、正確な加振を行う上で有利になる。
【0017】
また、載置台の下部に気体圧シリンダを取り付けて上方に押圧するようにすれば、加振方向の両側から載置台(ワーク)を押圧保持できるので、揺動アームを介しての加振力の伝達経路に僅かなガタがあっても、その影響を極小化してワークをより正確に加振することができる(請求項4)。この際、シリンダの気体圧はワークへの予荷重の大きさに応じて調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明に係る動特性検査装置によると、電動機からの駆動力によって機械的にワークを加振する場合に、そのストロークを連続的に変更可能な可変駆動機構を介して揺動アームを駆動し、これによりワークの載置台を加振するようにしたから、カム交換のような手間を掛けずに加振振幅も容易に変更可能であり、より広い条件下でワークの動特性を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1〜6は、本発明に係る動特性検査装置を自動車のエンジンマウントM(防振ゴム)の検査装置Aとして実施した形態を示す。この検査装置Aは、ワークであるマウントMを加振テーブル(載置台)10上に載置し、上方からエンジン等の静荷重に相当する予荷重をかけるとともに、下方からは予め設定した振幅及び周期で加振して、実際に使用される状況下でマウントMの示す動ばね定数や損失係数を検査するためのものである。
【0021】
図3にはマウントMの一例を示し、これは、車体側にブラケットbを介して連結される連結軸m1と、この連結軸m1の外周を離間して取り囲む円筒状のハウジングm2とを備えている。連結軸m1とハウジングm2とは軸方向に相対変位可能なようにゴム弾性体(図示せず)によって連結されている。ハウジングm2の軸方向他端側の外周にはフランジm3が突設され、ここに締結されるブラケットを介してエンジンに連結されるようになっている。また、ハウジングm2の他端開口はキャップm4により覆われている。
【0022】
−検査装置の全体構成−
図1、2にはそれぞれ検査装置Aの全体構成を示し、角パイプを組み合わせてなるフレーム1内にはその前寄りの部位において左右一対のサイドパネル2,2が立設され、それらの上端に跨るようにアッパーパネル3が架設されている。図の例では、前後に長い矩形ボックス状の基台4が防振ゴムを介してフレーム1の前寄りの部位に配設され、その左右両側縁にそれぞれ前記サイドパネル2,2の下端が取り付けられている。
【0023】
前記アッパーパネル3の上面の前寄りの部位には昇降用の電動サーボシリンダ5が倒立状態で配設されており、その下端から突出するロッド5aが、アッパーパネル3の貫通孔に遊嵌状態で挿通されている。また、サーボシリンダ5の左右両側の部位においてそれぞれアッパーパネル3を貫通し上下に伸びるようにガイドシリンダ6,6が配設されている。各ガイドシリンダ6の外筒はアッパーパネル3に固定され、内筒の下端には矩形の板部材7(以下、クロスヘッドという)が締結されて、その上面にサーボシリンダ5のロッド5aの下端が取り付けられている。
【0024】
そして、前記サーボシリンダ5の作動により上下に移動されるクロスヘッド7の下面にはロードセル8が配置され、その下部には樹脂製の押さえ治具9が取り付けられている。この押さえ治具9は、下方に向かって開口する碗状のものであり、前記のようにクロスヘッド7が下降したときに、下方の加振テーブル10上に載置されているマウントMのハウジングm2上部と係合して、これを保持するようになる(図4、5に仮想線で示す)。そして、その状態でサーボシリンダ5によりマウントMを上方から押圧すれば、エンジン等の静荷重に相当する予荷重をかけることができる。
【0025】
一方、図1、2の如くサーボシリンダ5のロッド5aが退入し、押さえ治具9がマウントMの上方に離れた状態では、そのマウントMと押さえ治具9との間に十分な間隔が空き、マウントMを加振テーブル10上へ載置することも、反対に加振テーブル10上から取り上げることも容易に行える。すなわち、押さえ治具9は、それが加振テーブル10上のマウントMを押圧して保持する保持位置と、そこから上方へ移動してマウントMから離間した退避位置との間で移動されるようになっている。
【0026】
そのように上下動可能に設けられた押さえ治具9の下方には、マウントMを載置して加振するための加振テーブル10が配設されている。この加振テーブル10は、前記のように押さえ治具9が退避位置にあるときにマウントMを容易に載置できるように、左右のサイドパネル2,2の前縁付近において作業者の腰くらいの高さに配置されていて、サイドパネル2,2間に跨って配設された支持板11に対し上下動可能に取り付けられている。
【0027】
−加振テーブル−
図4、5に拡大して示すように、加振テーブル10は矩形板状とされ、その4隅がそれぞれガイドシリンダ12,12,…(ガイド部材)によって支持板11に対し上下動可能に連結されている。すなわち、各ガイドシリンダ12の外筒は支持板11に貫通状態で固定される一方、内筒はその上端が加振テーブル10の4隅に締結され、下端は矩形状の連結板13の4隅に締結されている。この連結板13の中央部には丸穴13aが開口して、後述するエアシリンダ14のロッド14aを離間して囲んでいる。
【0028】
また、加振テーブル10と連結板13との間には厚板状のリンク部材15が上下に延びるように配設され、後述するスイングアーム20(揺動アーム)の前端部を加振テーブル10の下部に連結している。すなわち、リンク部材15の上部にはその厚み方向に貫通するように軸部材16が配設され、この軸部材16がベアリング17を介して加振テーブル10の下部の取付片に回転自在に取り付けられている。
【0029】
また、リンク部材15は、支持板11の中央に設けられた丸穴11aに挿通されて、その下部にはベアリング18を介して軸部材19が回転自在に取り付けられ、この軸部材19の両端部がそれぞれ、二股に分岐しているスイングアーム20の前端部に締結されている。よって、後述するようにスイングアーム20が揺動してその前端部が円弧状の軌跡を描くときに、加振テーブル10はガイドシリンダ12により案内されて上下動(振動)するようになる。
【0030】
さらに、前記リンク部材15の下端にはエアシリンダ14のロッド14aの上端が押し付けられており、エア圧によりリンク部材15を、即ちこれを介して加振テーブル10を上方に押圧している。すなわち、エアシリンダ14は、図1、2に示すように基台4上に起立状態で配設され、その上端から上方に延びるロッド14aが上述したように加振テーブル10の連結板13の丸穴13aを通過して、リンク部材15に下方から当接している。エアシリンダ14には、図示しないレギュレータ回路等のエア圧(気体圧)調整手段を介して、工場の設備である高圧エア供給ラインが接続されており、サーボシリンダ5によるマウントMへの予荷重の大きさに対応する最適値に調整されるようになっている。
【0031】
つまり、マウントM及び加振テーブル10は、上下両方から押圧されて一体に保持されており、この状態でスイングアーム20により上下に加振されることになるから、そのスイングアーム20からリンク部材15を経て加振テーブル10に至る駆動力の伝達系に僅かなガタがあっても、その影響は極く僅かなものになり、マウントMが正確に加振されるようになる。
【0032】
尚、前記加振テーブル10の上面略中央には、マウントMのセット治具10aが配設されており、位置決めピンにマウントMの連結軸m1のボルト穴を外挿することにより、当該マウントMを容易に位置決めしてセットすることができる。また、図示は省略するが、振動する加振テーブル10の位置を計測するために例えばサイドパネル2にレーザ変位センサ等が配設されている。
【0033】
−スイングアームとその駆動機構−
上述したように前端部がリンク部材15により加振テーブル10に連結されているスイングアーム20は、図1に示すようにフレーム1の上縁付近において前後方向に延びていて、その前後方向の中央部やや後寄りの部位において軸部材21により回動可能に支持されている。そして、以下に述べる駆動機構23により後端部を駆動されることで、スイングアーム20はシーソーのように前側及び後側が上下に逆位相で揺動するようになっている。
【0034】
詳細は図示しないがスイングアーム20は、左右一対の長尺の板部材20a(図5にのみ符号を付す)からなり、これらの間に補強部材を挟み込んで締結したもので、その長手方向の中間部位に前記の如く軸部材21が配設されて、ベアリング等を備えたブラケット21aによりサイドパネル2に回転自在に取り付けられている。また、スイングアーム20の前端部においては、図5に示すように左右の板部材20aの間に軸部材19が配設されて、上述したようにリンク部材15の下端部に取り付けられている。
【0035】
さらに、スイングアーム20の後端部には前端部の軸部材19と同様に軸部材22が配設されて、駆動機構23のアーム24(駆動アーム)に回転自在に、かつこれに対しスライド自在に連結されている。図の例ではスイングアーム20の支点である軸部材21から作用点である前端部の軸部材19までの距離が、力点である後端部の軸部材22までの距離よりも長いので、駆動アーム24による揺動ストロークは増幅されて加振テーブル10に伝達されるようになる。
【0036】
前記駆動機構23において駆動アーム24は、スイングアーム20と略平行に検査装置Aの前後方向に延びていて、その前端部が軸部材25を介してベース26に取り付けられる一方、後端部には、軸部材27を介してリンク28の上端部が回転自在に連結され、このリンク28の下部が連結されている偏心軸29の回転によって、リンク28の上端部が駆動アーム24の後端部を上下に揺動させるようになっている。
【0037】
すなわち、詳細は図示しないが、駆動機構23のベース26は、前部に上方への延出部が形成されたL字状のパネル26aを2枚組み合わせてなり、その延出部の上部において左右のパネル26a間に渡された軸部材25に、ベアリングを介して駆動アーム24の前端部が回転自在に取り付けられている。一方、ベース26の後端部には同様にして前記偏心軸29が配設されており、その偏心部にリンク28の下端部が回転自在に連結されている。
【0038】
前記駆動アーム24は下方に開いた断面コ字状のものであり、その上面には長手方向のレール24aに沿ってスライド移動するようにスライダ30が配設されている。このスライダ30は矩形状の本体の上面から上方に延びる凸壁部を有し、ここにベアリング(図示せず)を介して、スイングアーム20の後端の軸部材22が回転自在に取り付けられている。そして、スライダ30が駆動アーム24上をスライド移動することにより該駆動アーム24の有効長さが変化し、これにより上下に揺動されるスイングアーム20のストロークが連続的に変更されるようになっている。
【0039】
また、そうして揺動するスイングアーム20及び駆動アーム24のそれぞれの支点、即ちスイングアーム20の軸部材21及び駆動アーム24の軸部材25は、いずれも、スライダ30による両アーム20,24同士の連結部位よりも前側に、換言すれば、両者の連結部位よりもアーム長手方向(前後方向)について同じ側に位置している。このため、両アーム20,24はパラレルリンクの如く同位相で揺動するようになり(図6の矢印aを参照)、その連結部位(スライダ30)の揺動軌跡は概ね同じ形状となる。
【0040】
そのように駆動機構23を動作させる動力源は、駆動機構23の後方に近接して配置された電動機31であり、その出力軸に回転不能に取り付けられたプーリ31aと、駆動機構23の偏心軸29に取り付けられたプーリ29aとの間に、伝動ベルト32が巻き掛けられている。また、電動機31と駆動機構23とは、基台4の上面に前後にスライド移動可能に配設された定盤33上に搭載されていて、一体に前後に移動されるようになっている。
【0041】
すなわち、基台4の上面には左右一対のスライドレール34(図には一つのみ示す)が前後方向に延びるように設けられていて、この各スライドレール34上にそれぞれ3つずつ設けられたスライダ35が、定盤33の左右両側縁においてそれぞれ前後方向に並んでいる。そして、図示しないエアシリンダ等のアクチュエータによって定盤33は前後方向に移動され、任意の位置に停止されるようになっている。
【0042】
そうして定盤33が移動されて駆動機構23が前後方向に移動されると、駆動アーム24に対しスライダ30が相対移動することになり、この駆動アーム24の有効長さが変化して、前記のようにスイングアーム20の揺動ストロークが変化する。すなわち、図1のように定盤33が最も後退した位置にあり、駆動アーム24の前端部近傍にスライダ30が位置するときには、その有効長さは殆ど零になるから、それが揺動してもスイングアーム20は殆ど揺動しない。
【0043】
そこから定盤33が前方に移動すると、これに連れて前方に移動する駆動アーム24に対し相対的にはスライダ30が後方に移動することになり、その相対移動量だけ駆動アーム24の有効長さが長くなって、スイングアーム20の揺動ストロークが増大してゆく。そして、図6のように定盤33が最も前進した位置では駆動アーム24の有効長さが最長になって、スイングアーム20の揺動ストロークも最大になるのである。
【0044】
ところで、前記図6のような定盤33が最も前進したときでも駆動機構23と加振テーブル10との間には大きなスペースが残されており、このスペースに上述の如くエアシリンダ14が配設されている。また、加振テーブル10の周囲には十分な作業スペースを確保することができる。
【0045】
−検査装置の作動−
上述した検査装置Aの作動制御はコントローラ40によって行われる。コントローラ40は、図1に示すように検査装置Aの後端の電源ボックス41内に収容されていて、例えばサーボシリンダ5のエンコーダやロードセル8の他に、加振テーブル10の変位を検出するセンサ、電動機31の出力軸の回転角を検出するセンサ(図示せず)等からの信号が入力される。
【0046】
そして、コントローラ40は、サーボシリンダ5によって押さえ治具9を下方に押圧しマウントMに上方から予荷重をかける一方、エアシリンダ14によって加振テーブル10を上方に押圧し、それらを上下両方から押圧した状態で電動機31を作動させて、加振機構23によりスイングアーム20を上下に揺動させることにより加振テーブル10を、即ちマウントMを加振する。
【0047】
同時にコントローラ40は、加振テーブル10の変位とマウントMの荷重の変化とをそれぞれ計測し、少なくともこの計測データに基づいてマウントMの動ばね定数や損失係数等を演算する。こうして、マウントMにその使用状況下での静荷重に相当する予荷重をかけながら、予め設定した加振条件下において動ばね定数、損失係数等の検査を行うことができる。
【0048】
その際にコントローラ40は、駆動機構23を前後に移動させて駆動アーム24の有効長さを変化させることにより、スイングアーム20の揺動ストロークを連続的に変更して加振振幅を変更可能であり、加振周期については電動機31の制御によって変更できるから、例えば従来例(特許文献2)のカム交換のような手間はかからず、より広い条件下での検査を容易に行える。さらに、スイングアーム20を揺動させながらそのストロークを変更することもでき、こうすれば振幅を変更しながらの検査も行える。
【0049】
尚、この実施形態の駆動機構23は、上述したように駆動アーム24によってスイングアーム20を揺動させるもので、それらのアーム20,24同士の連結部位を変化させるという簡単な構成で、スイングアーム20の揺動ストロークを連続的に変更でき、コストはあまり増大しない。
【0050】
さらに、この実施形態では、スイングアーム20の前端部をリンク部材15によって加振テーブル10の下部に連結し、これにより加振テーブル10を強性的に上下動させるようにしているので、加振振幅が大きくなっても加振テーブル10が飛び跳ねることはなく、加振波形に大きな乱れは生じない。しかも、従来同様にマウントMに上方から予荷重をかける一方で、加振テーブル10をエアシリンダ14によって下方から押圧し、加振方向である上下両方から押圧保持するようにしており、このことも正確な加振に有利になる。
【0051】
図7には、この実施形態の検査装置Aにおける加振波形の振幅及び荷重のグラフを、敢えてエアシリンダ14を作動させないとき等と対比して示す。加振振幅は±1.5mmくらいであり、周波数は35〜40Hzくらいである。同図(a)には、従来例(特許文献2)のように偏心カムによって加振した場合のデータを示し、この場合は荷重(実線のグラフ)も振幅(破線で示す)も大きくばらついていて、偏心カムと加振テーブルとの間で飛び跳ねが生じているものと考えられる。
【0052】
これに対し図(b)には、この実施形態の検査装置Aにおいてエアシリンダ14を作動させないときのデータを示し、図(a)との比較では荷重、変位ともにばらつきが少なく安定していることが分かる。一方で、矢印aによって示すように荷重の波形の頂点付近にギザギザの乱れが現れており、これは加振力の伝達経路におけるガタの影響と考えられる。
【0053】
そこで、この実施形態のようにエアシリンダ14を所定のエア圧で作動させると、同図(b)の荷重のグラフに見られた乱れもなくなって、同図(c)のデータのようにきれいな加振波形が得られており、上述したようにマウントMを狙い通り正確に加振できることが分かる。こうして加振波形の乱れが解消されるのは、エアシリンダ14においてシール部から僅かにエアが漏れるときの減衰も有利に働くものと推定される。
【0054】
したがって、この実施形態に係る動特性検査装置Aによると、電動機31により駆動機構23を介して機械的にワーク(マウントM)を加振するようにする場合に、加振テーブル10に連結したスイングアーム20を揺動させるとともに、そのストロークを連続的に変更可能な駆動機構23を設けたから、従来例(特許文献2)におけるカム交換のような手間を掛けずに加振振幅を容易に変更可能で、より広い条件下でワークの動特性を検査することができる上に、振幅が大きくなっても飛び跳ねが生じず、機械的なガタの影響も極小化して、狙い通り正確な検査が行える。
【0055】
尚、本発明に係る検査装置の構成は前記実施形態のものに限定されず、その他の種々の構成も包含する。例えば、前記の実施形態では、スイングアーム20の後端部と駆動アーム24とを連結するスライダ30が該駆動アーム24上をスライド移動するようにしているが、反対にスイングアーム20上をスライド移動するようにしてもよいし、双方共にスライド移動するようにしてもよい。
【0056】
また、前記の実施形態ではスイングアーム20を中間の支点(軸部材21)の周りにシーソーのように揺動する構造としているが、これに限らず、スイングアームはその後端部を支点として前側のみが揺動する構造とし、作用点となる前端部との間に駆動アーム24を連結するようにしてもよい。さらに、駆動機構23としては駆動アーム24の有効長さを変化させるものに限らず、それ以外の種々の可変機構を用いることが可能である。
【0057】
また、前記実施形態では駆動機構23や原動機31を搭載した定盤33をエアシリンダ等のアクチュエータによって移動させるようにしているが、これに限らず、それらを手動で行うようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上、説明したように本発明は、防振ゴムのような製品(ワーク)の使用状況下における動特性を検査するための装置に関し、油圧駆動のような大掛かりな設備を必要とせずに、広い条件下での検査を容易に行えるものであり、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態の動特性検査装置を向かって左側から見て、その全体構成を示す側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】検査する製品(ワーク)としてのエンジンマウントの一例を示す斜視図である。
【図4】加振テーブル等を拡大して示す図1の部分断面図である。
【図5】同図2の一部を拡大した部分断面図である。
【図6】駆動機構を前進させたときの図1相当図である。
【図7】加振振幅及び荷重の波形の一例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0060】
A 動特性検査装置
M マウント(ワーク)
10 加振テーブル(載置台)
12 ガイドシリンダ(ガイド部材)
14 エアシリンダ(気体圧シリンダ)
15 リンク部材
20 スイングアーム(揺動アーム)
21 軸部材(支点)
22 軸部材(連結部位)
23 可変駆動機構
24 駆動アーム
25 軸部材(支点)
30 スライダ(連結部位)
31 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを台上に載置し、上方から予荷重をかけて保持するとともに下方から加振して、この加振力による荷重の変化を検出し、少なくともその荷重のデータに基づいてワークの動特性を検査するようにした動特性検査装置であって、
前記載置台を上下方向に往復動するように案内するガイド部材と、
前記載置台にリンク部材を介して連結され、上下に揺動する揺動アームと、
加振のための動力源である電動機と、
前記電動機により駆動されて前記揺動アームを上下に揺動させるとともに、この揺動ストロークを連続的に変更可能な可変駆動機構と、
を備えていることを特徴とする動特性検査装置。
【請求項2】
可変駆動機構は、揺動アームを駆動する駆動アームを有し、該両アーム同士は相互に回動可能に、かつ少なくとも一方のアームに対しスライド移動可能に連結されていて、この連結部位のスライド移動によって揺動アームの揺動ストロークが変化するように構成されている、請求項1に記載の動特性検査装置。
【請求項3】
駆動アームが揺動アームと略平行に延びていて、該両アームのそれぞれの支点が互いの連結部位に対してアーム長手方向につき同じ側にある、請求項2に記載の動特性検査装置。
【請求項4】
載置台の下部には、これを上方に押圧するように気体圧シリンダが取り付けられ、
前記気体圧シリンダの気体圧を、前記載置台への予荷重の大きさに応じて調整するための気体圧調整手段を備えている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の動特性検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−145251(P2010−145251A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322903(P2008−322903)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)