説明

動的運動板を使用した立位補助具

骨折、骨粗鬆症、またはその他骨に関する病気によって強度が低下した骨構造を、動的運動板(101)を使用して、治療するための治療システムを提供する。この治療システムは、1回の治療期間中、動的運動板上で直立姿勢を維持できない患者の体重を支える際に補助となるハーネス(202)およびリフトシステム(105)を利用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
本開示は、概して、低強度の骨構造を治療する医療システム、具体的には、1回の治療期間中、直立姿勢を維持できない患者を補助するための立位補助具と動的運動板とを併用した、低強度の骨構造を治療する医療システムに関する。
【0002】
先行技術の説明
低強度の骨構造および不適切に治癒した、または治癒速度が遅い骨折は、生活の質
(quality of life)を下げる場合がある。早い治癒速度が保証され、骨折に伴う骨塩量(骨量)の喪失が抑えられ、これによって骨強度の低下が抑えられれば、骨折患者の生活の質を向上させることは可能である。また、骨粗鬆症などの代謝性骨疾患も生活の質を下げる。
【0003】
骨粗鬆症は、必ずではないが、通常は年配の女性がなる悪性疾患である。また、寝たきりの人にも骨粗鬆症の症状は現れ、さらに、長期間、無重力状態に置かれる宇宙飛行士にも現れることがある。骨粗鬆症は骨量の減少によって生じるので、骨粗鬆症になった骨は、よりもろく砕け易くなる。
【0004】
骨の破壊が骨形成を上回ると、骨粗鬆症によって骨量が減少する。この破壊と形成とのバランスには、ホルモン、カルシウム摂取量、ビタミンDとその代謝物、体重、喫煙量、アルコール消費量、年齢、遺伝的決定基、および特に運動量または骨組織に動荷重をかける他の方法のみならず、その他多くの要因が影響する。治癒過程が損なわれかねないあらゆる要因を考慮すれば、治癒過程の促進、補強、および/または保証が可能な、何らかの刺激が大いに必要とされる。
【0005】
骨粗鬆症の初期段階では、肉体的な変化があまり顕著でないことから、容易には骨粗鬆症であると判断されない。骨粗鬆症は次第に進行するので、初期の診断と適切な治療によれば、症状の深刻化は回避できる。幼少時の適切な食事および運動によって、後年の骨粗鬆症の損傷効果が抑えられることがある。骨成長を維持または促進する方法は、多くの特許文献に記載されている。たとえば、McLeodおよびRubinの米国特許第5103806号明細書、米国特許第5191880号明細書、米国特許第5273028号明細書、および米国特許第5376065号明細書は、骨成長を促進し、骨量の減少を防ぐ手段および方法をまとめて記載している。上述の特許文献に記載された方法は、非侵襲的方法で成長を促進させるように骨に機械的な振動荷重をかけることに関する。McLeodおよびRubinの米国特許第5103806号明細書、米国特許第5191880号明細書、米国特許第5273028号明細書、および米国特許第5376065号明細書は参照によって本明細書に組込まれる。
【0006】
予め定められた周波数の範囲内で誘起される、約0.5〜約500マイクロストレインのひずみで機械的な負荷が骨組織にかけられると、骨喪失が抑えられて新しい骨の形成が促進される。このように骨組織に機械的な負荷をかけることは、骨折箇所にエネルギーが集中するように肌または外付けの固定器に取付けられる、振動する底板と椅子、筋肉の電気刺激、等尺運動、変調超音波または変換器など、様々なシステムによって導入され得る。
【0007】
骨折または骨粗鬆症の年配の患者および他の身体的な障害および/または欠陥があるその他の患者は、治療継続期間中、特に治療過程の初期においては、自身の全体重を動的運動板にかけることができない場合がある。この場合、治療中、その効果が最大限に得られるように骨組織に適切な負荷を与えながら、患者の体重を部分的に支えるシステムが必要である。理想的には、このようなシステムは、技術者または医師が骨組織にかかる負荷を変更できる調節機能を備えるであろう。
【0008】
要約
本開示は、脊椎動物の生体(すなわち患者)の骨成長を促進する治療システムに関する。このシステムは、患者に振動運動を伝える動的運動板を含む。この動的運動板は、患者が自然な姿勢で、本質的には直立姿勢で立つことが可能な適切なプラットフォームを備えるように寸法決めされ、患者の全体重を機能的に支えるように構成される。さらに、患者が骨成長のための刺激を受けている間、その動的運動板上で自身の全体重を支えることができないときに患者を支える立位補助具が含まれる。
【0009】
立位補助具は、患者によって装着可能なハーネスを含む。このハーネスは、少なくとも1つのアンカーポイントと、患者の体重が立位補助具によって完全に支えられたときに患者にかかる、痛みを伴う圧力が最小限になるようにハーネスを固定するストラップとを有する。また、立位補助具は、ハーネスを装着した患者を吊上げるリフトシステムも有する。このリフトシステムは、ハーネスの少なくとも1つのアンカーポイントに取付けられた少なくとも1本のケーブルによって、ハーネスに取付けられる。
【0010】
脊椎動物の生体の骨成長を促進する方法もまた本開示によって提供される。この方法によって、動的運動板を使用して、振動運動が患者に伝えられる。この動的運動板は、患者が自然な姿勢、本質的には直立姿勢を維持しながらその上に立っていられるような適切なプラットフォームを備えるように寸法決めされており、患者の全体重を機能的に支えるように構成される。また、患者が骨成長のための刺激を受けている間、動的運動板上で自身の全体重を支えることができない場合、患者は支えられる。患者が完全に支えられたときに患者にかかる、痛みを伴う圧力が最小限になるように、患者にハーネスを取付け、次に、ハーネスの少なくとも1つのアンカーポイントに取付けられた少なくとも1本のケーブルが、ハーネスを取付けた患者を吊上げることによって、患者の支持を行う。
【0011】
本開示のこれらおよびその他の特徴、側面および利点は、以下の記載、添付の請求項、および添付の図面によって、より理解されるであろう。
【0012】
好適な実施形態の説明
図1は、システム100の好適な実施形態の概略図を示す。このシステム100は、基台102に組込まれた動的運動板101を提供する。この基台102には、動的運動板101が作動中、患者に横方向の安定した支持を提供するための手すり103が設けられる。
【0013】
また、片持ち柱104が基台102に取付けられている。この片持ち柱104によって、ウィンチ106、ケーブル107、およびコネクタ108から成るリフトシステム105が支持される。片持ち柱104およびリフトシステム105は、肥満、負傷、または麻痺によって、1回の治療期間中、自身の体重を充分に支えることができない患者を吊上げられる程度の支持力、強度、および安定性が必要である。このリフトシステム105は、片持ち柱104によって支えられる患者の体重の割合を変更する手段を有する。本明細書では、片持ち柱104およびリフトシステム105を「立位補助具」と総称する。
【0014】
ウィンチ106は、好ましくは、調整可能な特定の長さだけケーブル107を巻取ることができる電動ステッピングモータであり、したがって、操作者は、リフトシステム105によって支えられる体重の割合を正確に調整できる。リフトシステム105によって支えられる重量を示す重量センサ109がリフトシステム105の1部品として含まれていてもよい。重量センサ109の精度は、好ましくは、±1lbよりも高いことが好ましい。
【0015】
コネクタ108は、カラビナまたはスナップリング型のコネクタであってもよく、患者に装着されるハーネス202(図2参照)のアンカーリング204またはこのような他のアンカーポイントにコネクタ108を留める。ハーネス、好ましくは一般に入手可能なシットハーネスまたはフルボディハーネスの変形物は、リフトシステム105が患者206の体重を支えているとき、患者206の胴および脚を支えることによって、患者206が治療の効果を得られるようにしつつも、その患者に不快感が生じないようにする。アンカーリング204は、好ましくは、患者206の上背中央にくるように位置付けられ、リフトシステム15が使用されると、患者の姿勢は、直立、またはほぼ直立に維持される。
【0016】
参照によって本明細書に組込まれる米国特許第5145027号明細書および米国特許第6050364号明細書に記載されているシットハーネスまたはフルボディハーネスは、一般的に、登山用の安全装具として使用されるので、アンカーリングをハーネスの前部に備えている。このアンカー位置の場合、患者は治療の間中、不自然かつ居心地の悪い姿勢にさせられてしまう。アンカーリングを上背中央部に移動させれば、より良い治療結果が得られるような方法で患者を支えることが可能である。したがって、好適なハーネス202は脚用支持ストラップ208を有し、この脚用支持ストラップ208が脚ストラップ210に取付けられて、ハーネス202内を通って背中まで延び、その端がアンカーリング204に取付けられる。
【0017】
追加の上半身用支持ストラップ212は、一端部がハーネス202の上背部に取付けられ、他端部がアンカーリング204に取付けられる。この上半身用支持ストラップ212は、脚用支持ストラップ208に対して、所定の、または調節可能な緩みを有する。この緩みは、ハーネスによって患者が支えられるときに、上半身支持ストラップ212に負荷がかかる前に脚用支持ストラップ208が上半身用支持ストラップ212に負荷がかかるようにするために必要である。こうすれば、患者の脚をわずかに座位にさせるので、動的運動板に対して適切な姿勢を維持しながらも、より快適に患者の体重が支えられる。上半身用支持ストラップ212の緩みを調節することによって、患者はほとんど座位の姿勢にさせられてもよい。
【0018】
本開示の追加の実施形態として、ハーネス200が複数のアンカーポイントを有し、これらに対応する複数のコネクタ108が含まれていてもよく、この複数のコネクタ108は、単一のケーブル107に取付けられていても、各コネクタ108がそれぞれ固有のケーブル107に取付けられてもいてもよい。また、リフトシステム105、何らかの重量センサから受信したデータの集積および表示、作動中の治療の経過時間および/または残り時間の表示、および治療効果を減少させ得る問題、たとえば、リフトシステム105によって支えられている重量が突然変化して患者202の疲労が示される場合に操作者に警告するインジケータなどを制御するコントローラが含まれていてもよい。このコントローラは、血圧および心拍数のモニタリングなど適用可能な診断ツールをさらに有していてもよいが、ハードウェア・コンポーネントの増設が必要となる場合がある。
【0019】
図3は、骨成長促進治療を行う方法の実施形態を示す。まず、ステップ301において、患者の治療の必要性を判断する。ステップ301では、治療継続時間、適切な振動周波数などを決定する。ステップ302に進み、患者が動的運動板101上に立つときに補助が必要か否かを判断する。患者は、負傷、麻痺、肥満、または他の症状によって補助を必要とする場合がある。通常、患者は、自身の体重の大部分を動的運動板101上にかけて、20分以上続く場合もある治療の間中、正しい直立姿勢を維持しなければならない。
【0020】
補助が必要な場合はステップ202に進み、患者はハーネス202を装着する。ステップ304において、ハーネス202のアンカーポイント204に少なくとも1本のケーブル107を取付ける。ケーブル107の張りは、ステップ305において、患者の体重が適切な割合で支えられるまで調節される。次にステップ306に進み、ステップ301で決定された周波数、継続時間などの適切な設定を調節して治療の準備をする。ステップ307に進み、治療を行う。治療中、患者は不適切な疲労、ストレスを感じていないか、不適切な姿勢になっていないか、その他これに関して治療の効果に影響し得るような問題が生じていないか、監視されることが好ましい。これらの問題を解決する適切な措置が取られる必要がある。
【0021】
図4を参照して、本開示の追加の実施形態は、既存の動的運動板への追加物としての立位補助具400を提供する。立位補助具400は、図1に示される実施形態の動的運動板101を除く全部品を含む。本実施形態において、立位補助具400は安定性が備わるように寸法決めされた基台102と、動的運動板101を挿入するための領域401とを有する。この領域401は、動的運動板101が嵌まり込む切欠として構成されても、動的運動板101を載置するプラットフォームとして構成されてもよい。
【0022】
図5を参照して、システム500は、米国特許第6440046号明細書に開示されるユーザ・リフトシステム502によって立位補助を行う。このリフトシステム502は、支持ハーネス504および背部支持材506を有し、動的運動板508と一体化している。上半身支持材510、腰部補強材512、および膝部補強材514などの他の支持材および補強材があってもよい。
【0023】
本開示に記載した実施形態は、限定よりもむしろ例示を意図するものであり、本開示の全ての実施形態を示すことを意図するものではない。文言上においても、法上均等と認められる範囲においても、特許請求の範囲に記載した開示の精神または範囲から逸脱することなく、種々の変更および変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本開示に従う動的運動板を有する立位補助具の実施形態の概略図である。
【図2】図1に示される立位補助具に使用するハーネスの実施形態の説明図である。
【図3】本開示に従う立位補助具と動的運動板とを併用した治療方法の実施形態の工程を示すフローチャートである。
【図4】本開示に従う動的運動板の追加付属物として構成される立位補助具の追加の実施形態の概略図である。
【図5】本開示に従うリフトシステムを含む立位補助組立体の追加の実施形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の生体の骨成長促進システムであって、
患者の足を通じて単一面の振動運動を伝える動的運動板であって、患者が自然な姿勢で、本質的には直立姿勢で立つことが可能な適切なプラットフォームを備えるように寸法決めされ、患者の体重を機能的に支えるように構成される動的運動板と、
患者を支える立位補助具とを含み、
該補助具は、
ハーネスであって、少なくとも1つのアンカーポイントと、患者にハーネスを固定するストラップとを有するハーネスと、
ハーネスを装着した患者を吊上げるリフトシステムであって、ハーネスの少なくとも1つのアンカーポイントに取付けられた少なくとも1本のケーブルによってハーネスに取付けられるリフトシステムとを有することを特徴とする脊椎動物の生体の骨成長促進システム。
【請求項2】
構造物は、第1端がウィンチに固定され、第2端がアンカーポイントに固定される1本のケーブルを有する片持ち柱であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ケーブルは、立位補助具によって支えられる体重の割合を変更するために調節可能であることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
立位補助具によって支えられる重量を検知する重量センサと、
リフトシステムの制御を目的とした操作者による入力を受信するインターフェースと、
重量センサから情報を受信して表示し、操作者による入力を受け入れて実行するコントローラとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
ハーネスはシットハーネスであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
脊椎動物の生体の骨成長促進方法であって、
患者が自然な姿勢で、本質的には直立姿勢で立つことが可能な適切なプラットフォームを備えるように寸法決めされる動的運動板を使用して、患者に振動運動を伝え、
動的運動板上の患者に補足的な支持を与え、
該補足的な支持は、
患者にハーネスを取付けて、
ハーネスの少なくとも1つのアンカーポイントに取付けられた少なくとも1本のケーブルによって、ハーネスを取付けた患者を吊上げることを含むことを特徴とする脊椎動物の生体の骨成長促進方法。
【請求項7】
ケーブルは、立位補助具によって支えられる体重の割合を変更するために調節されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
支えられている患者の体重の割合を検知して、検知した体重を操作者に読取可能な形式で表示し、
リフトシステムの制御を目的とした操作者による入力を受信することをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ハーネスの取付けはシットハーネスを使用することによってなされることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
動的運動板を使用した骨成長促進治療中に患者が直立の姿勢で立つように補助する補足的な支持を与える立位補助システムであって、
患者の足を通じて単一面の振動運動を伝えるための動的運動板と、
ハーネスであって、少なくとも1つのアンカーポイントと、患者にハーネスを固定するストラップとを有するハーネスと、
ハーネスを取付けた患者を吊上げるリフト組立体であって、ハーネスの少なくとも1つのアンカーポイントに取付けられた少なくとも1本のケーブルによってハーネスに取付けられるリフト組立体とを含み、
該リフト組立体は、
動的運動板を受けるように構成され、寸法決めされる基台部材と、
第1端が基台部材に取付けられた少なくとも1つの縦支持材と、
少なくとも1つの縦支持材の第2端に接合される少なくとも1つの片持ち梁部材と、
少なくとも1つの片持ち梁部材に取付けられ、少なくとも1本のケーブルの端部に取付けられるウィンチ組立体とを含むことを特徴とする立位補助システム。
【請求項11】
ケーブルは、システムによって支えられる体重の割合を変更するために調節可能であることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
システムによって支えられる体重を検知する体重センサと、
リフト組立体の制御を目的とした操作者による入力を受信するインターフェースと、
重量センサから情報を受信して表示し、操作者による入力を受け入れて実行するコントローラとをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
ハーネスはシットハーネスであることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
脊椎動物の生体の骨成長促進システムであって、
患者の足を通じて単一面の振動運動を伝える動的運動板であって、患者が自然な姿勢で、本質的には直立姿勢で立つことが可能な適切なプラットフォームを備えるように寸法決めされ、患者の体重を機能的に支えるように構成される動的運動板と、
患者の背中を支える目的の背部支持材と患者の腰の周囲に置かれる支持ハーネスとを含むユーザ・リフトシステムとを含むことを特徴とする脊椎動物の生体の骨成長促進システム。
【請求項15】
ユーザ・リフトシステムは、腰部補強材、膝部補強材、および上半身支持材のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−500130(P2008−500130A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527272(P2007−527272)
【出願日】平成17年5月5日(2005.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/015628
【国際公開番号】WO2005/115298
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506092754)ジュベント,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】JUVENT,INC.
【住所又は居所原語表記】300 Atrium Drive,Somerset,New Jersey,The United States of America