説明

包装用容器

【課題】包装用容器を多段に積み重ねたときの全体の積み上げ高さを低く抑えながら、ラッピングフィルム用の支持突起16を設けた側壁12aに対向する側壁12c側に向けて全体が傾斜した姿勢となるのを阻止することのできる包装用容器10を開示する。
【解決手段】底面11および底面11の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁12を有する略矩形状のトレイ部15と、1つの側壁12aにその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起16とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器10において、支持突起16を備えない側壁に、側壁12の外側面から外側に膨出する肉厚の膨出部20を形成する。膨出部20の形成位置は、同じ形態の包装用容器10を同じ方向で積み重ねたときに、下位に位置する包装用容器の側壁12内面または頂部に当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持することができる位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂シートを成形した包装用容器であって、包装時に使用されるラッピングフィルムを支持するための支持突起を備えた包装用容器に関し、特に、その複数個を同じ方向で上下方向に積み重ねたときに、その積み重ね姿勢をほぼ垂直な姿勢に維持できるようにした発泡樹脂シートを成形した包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、刺身等の鮮度保持が厳しく求められる食品を収納する包装用容器として、断熱性に優れ、また軽量化できる点においても優れていることから、発泡樹脂シートを成形した包装用容器が使用されている。使用に当たっては、収納物の鮮度を保ちながら外からもよく見えるようにするために、透明なフィルム等であるいわゆるラッピングフィルムによって全体を包装することが行われる。ラップ包装をした際に、ラッピングフィルムが収納物に接触して見栄えが低下したり、接触により刺身などが変形してつぶれることで商品価値が低下する恐れがある。それを防止するために、側壁や底面の一部に支持突起を形成した包装容器が用いられており、ラッピングフィルムの一部をこの支持突起の先端で持ち上げた姿勢で全体を包装(ラッピング)することによって、つぶれの発生等を回避している。
【0003】
この種の発泡樹脂シートを成形した包装用容器は、約30〜100枚程度を、姿勢を同じ方向とした状態で積み重ねた後、筒状の袋に包装し、この包装した袋体の複数個をダンボールケースなどに詰めて、保管や運搬に供される。
【0004】
ところで、発泡樹脂シートを成形して作られる包装用容器は、形状を問わず、一般に非常に軽量であり、同じ形状の包装用容器を自然状態で積み重ねたときに、下位に位置する包装用容器の表面側と上位に位置する包装用容器の裏面側とが密着状態となるまで、上位の包装用容器が下位の包装用容器に向けて均一に沈み込むことはほとんどなく、両者が一部において摩擦接触した状態で、上位の包装用容器の移動が停止する場合が多い。どのような部位において部分的摩擦接触するかは、その容器の形状や重ね合わせるときの姿勢に依存する。
【0005】
すなわち、上からの押し付け力を特に加えることなく、下位の包装用容器の上に上位の包装用容器を重ね合わせた場合、上位に位置する包装用容器は、下位に位置する包装用容器と平行な姿勢で積み重なることは少なく、前記部分的な摩擦接触の部位に依存するいずれかの方向に傾斜した姿勢となることが多い。そのために、積み重ねたときの全体の姿勢が不安定となるのを避けられない。
【0006】
図8に示すように、側壁2の一部にラッピングフィルムのための支持突起3を形成した包装容器1の場合、上位の包装用容器の支持突起裏面の空間部に、下位に位置する包装用容器の支持突起が入り込むようにして、順次、積み重ねられるが、積み重ねする際に生じる前記部分的な摩擦接触は、上位の包装用容器の支持突起3の裏面側と下位の包装用容器の支持突起3の表面側との間で最初に起こることが多い。一方、支持突起3を形成した側壁2aに対向する側の側壁2bは全体として平坦面であり滑りやすいことから、図8に示すように多段に積み重ねた場合に、支持突起3を設けた側壁2aに対向する側壁側2bが次第に沈み込んでいき、支持突起3を設けた側壁2aに対向する側壁2b側に向けて全体が傾斜する姿勢となるのを避けられない。
【0007】
特許文献1には、前記したような支持突起を設けた形態の包装用容器において、一つの側壁に前記支持突起を1つ設けた包装用容器が記載されている。この形態の包装用容器では、積み重ねする際に生じる前記部分的な摩擦接触は、前記したように、上位の包装用容器の支持突起の裏面側と下位の包装用容器の支持突起の表面側との間で最初に起こることが多く、その場合、支持突起が1つであるために、支持突起の左右側に上位の包装用容器が傾きがちとなる。そこで、特許文献1に記載の包装用容器では、支持突起を設けた側壁の少なくとも両側に位置する隅部に、側壁の一部を外側に突出させた受け部を設け、同じ形状の包装用容器を積み重ねたときに、前記各受け部が他の包装用容器の受け部内面にそれぞれ当接するように、かつその状態で、上位の包装用容器の支持突起の裏面側と下位の包装用容器の支持突起の表面側とが接触しないようにすることによって、上位の包装用容器が支持突起の左右側に傾くことを防止し、多数の包装用容器を相互に水平に安定して積み重ねることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3677642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ラッピングフィルムのための支持突起を設けた包装用容器において、支持突起には、ラップ包装の際に強い締め付け力がかかるため、この締め付けによって破損しないだけの十分な強度が求められる。そのために、支持突起は容器の他の部分の厚みと比べて肉厚に成形される場合がある。この形態では、上位の支持突起の裏面空間部に、下側に積み重ねられる包装用容器の支持突起を挿入して重ねるに際し、厚みがすべて等しくされている包装容器の場合と比較して、その他の(支持突起を設けていない3つの)側壁の積み重ね部分より高くなりやすい。そのために、前記した支持突起を設けた側壁に対向する側壁側の沈み込みがさらに大きくなり、多数個を積み重ねた際に、支持突起を設けた側壁に対向する側壁側に向けて全体が傾斜する程度は、一層大きくなる。それにより、全体が倒れ易くなることから、積み重ね段数を少なくせざるを得ないという問題を有している。
【0010】
上記特許文献1に記載の包装用容器は、上位に位置する包装用容器をラッピングフィルム用の支持突起を中心としてその左右側には傾斜しない姿勢で、順次多段に積み重ねる得ることを期待できる。しかし、支持突起を設けた側壁の両側に位置する隅部のみに、前記受け部を設けた構成では、多段に積み重ねた場合に、支持突起を設けた側壁に対向する側壁側で次第に沈み込んでいくのを避けることができず、前記側壁側に向けて全体が傾斜する姿勢となるのを避けられない。
【0011】
支持突起を設けた側壁に対向する側の側壁隅部にも同様な受け部を設けることにより、前記した傾斜姿勢となるのを回避することができる。しかし、上下の包装用容器は、前記したように、上下の支持突起同士が当接しないように空隙が形成された状態で積み重ねられており、その空隙分だけ、積み重ねた高さが高くなる。1つの空隙部の距離はわずかであっても、前記したように、30〜100枚程度を積み重ねたときには、その累積距離は無視できないものとなり、保管や運搬に際して、より大きなダンボールケースが必要になり、また、より多くの保管スペースが必要となる。そのために、運搬時の積載効率も低下する。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、底面および底面の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら次第に外側に傾斜する側壁を有する略矩形状のトレイ部と、前記側壁の1つの側壁にその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器において、その包装用容器を多段に積み重ねたときの全体の積み上げ高さを低く抑えながら、ラッピングフィルム用の支持突起を設けた側壁に対向する側壁側に向けて全体が傾斜した姿勢となるのを阻止することのできる、より改良された包装用容器を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による包装用容器の第1の形態は、底面および底面の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁を有する略矩形状のトレイ部と、前記側壁の1つの側壁にその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器において、前記包装用容器は、前記側壁のうちの前記支持突起を備えない側壁に、当該側壁の外側面から外側に膨出する肉厚の膨出部を有しており、前記肉厚の膨出部は、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、下位に位置する包装用容器の側壁内面または頂部に当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持することができる位置に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明による包装用容器の第2の形態は、底面および底面の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁を有する略矩形状のトレイ部と、前記側壁の1つの側壁にその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器において、前記包装用容器は、前記側壁のうちの前記支持突起を備えない側壁に、当該側壁の内側面から内側に膨出する肉厚の膨出部を有しており、前記肉厚の膨出部は、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、上位に位置する包装用容器の側壁外面が当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持できる位置に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明による包装用容器では、いずれの形態であっても、ラッピングフィルムを支持するための支持突起を備えた側壁およびそこに連続する隅部には膨出部や受け部等は形成されていないので、2つの包装用容器を上下に重ね合わせたときに、上下の支持突起同士は、互いに当接した姿勢、すなわち、上位の包装用容器の支持突起の裏面側と下位の包装用容器の支持突起の表面側とが接触した姿勢を取ることができる。そのために、全体の積み上げ高さを低く抑えることができる。
【0016】
一方、支持突起を備えない側壁には、肉厚の膨出部、すなわち、当該膨出部が形成される側壁の厚さよりも厚みが厚くされている膨出部、が形成されており、その作用により、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、上位に位置する包装用容器全体を下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持することができる。そのために、多段に包装用容器を積み上げても、高さを抑制した状態で、全体をほぼ垂直な姿勢に維持することができる。それにより、多数個を積み重ねた包装容器群を、例えば筒状の袋で包装する作業が容易となり、さらに、包装した袋体の複数個をダンボールケースなどに詰める作業も容易となる。包装した袋体は高さが低くかつ垂直状であることから、保管や運搬時のスペースも低減できる。
【0017】
本発明による包装用容器において、前記肉厚の膨出部は、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁を含まない他の側壁同士で形成される隅部に形成されていてもよく、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁に連続する2つの側壁に対をなすようにして形成されていてもよく、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁に対向する側壁に形成されていてもよい。それらを組み合わせた形態でもよい。部分的に形成されていてもよく、側壁の上縁に沿うようにして筋状に形成されていてもよい。
【0018】
いずれの場合でも、略矩形状のトレイ部の壁部あるいは隅部に肉厚の膨出部が形成されることにより、トレイ部の強度を向上させることもでき、ラップ包装時にトレイ部に割れが生じたりするのを防止することができるとともに、容器自体を軽量化することもできる。
【0019】
本発明による包装用容器の製造に用いられる前記発泡樹脂シートは、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、スチレン樹脂単独、スチレンモノマーと共重合可能なブタジエン、無水マレイン酸、メタクリル酸などのモノマーとスチレンモノマーとの共重合体樹脂単独、スチレン樹脂と前記共重合体樹脂との混合物・ポリエチレン樹脂・ポリプロピレン樹脂、または、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを、ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させてなる樹脂発泡シート、さらにはこの発泡シートに樹脂フィルムを積層させたものを使用できる。
【0020】
前記樹脂フィルムの積層は、樹脂発泡シートの片面側のみであってもよく、両面側に積層してもよい。樹脂発泡シートに積層される樹脂フィルムとしては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、耐熱ポリスチレン樹脂などのスチレン系樹脂が用いられてなるフィルムや、ポリエチレン樹脂・ポリプロビレン樹脂などのポリオレフィン樹脂が用いられてなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂が用いられてなるフィルム、ポリビニルアルコール樹脂、または、ポリ塩化ビニリデン樹脂などのガスバリア性に優れた樹脂が用いられてなるフィルムの単独物を挙げることができる。これらのフィルム同士を複合させたフィルム(複合フィルム)も発泡シートに積層させる樹脂フィルムとして挙げることができる。
【0021】
なかでも、本発明による包装用容器用の発泡樹脂シートとしては、発泡樹脂シートと前記積層フィルムとが同じ材質で構成されたものが、包装用容器のリサイクル性を向上させ得る点で好ましい。
【0022】
また、使用する発泡シートは0.5〜5mmの厚みのシートが、積層する樹脂フィルムは3μm〜100μm程度の厚みのフィルムを用いることが好ましい。
【0023】
本発明による包装用容器は前記した発泡樹脂シートを加熱して軟化させた状態で、金型等によって所定形状に成形して冷却する熱成形、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形等によって製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による包装用容器では、多数個の包装用容器を、高さを抑制した状態で、互いに水平状態に安定して積み重ねることができるので、段積みした多数個の包装用容器を外装用袋に収容する作業が容易となり、包装作業の効率を大きく改善することができる。また、外装用袋に包装した包装体を無駄な空間のない状態でダンボールケース内に収容することができるので、ダンボールケースの容積も節減することができ、保管時の省スペース化が図られ、また運搬時の積載効率も向上する。さらに、隅部およびまたは壁部に壁部よりも肉厚の膨出部を形成したことで、包装用容器の強度を向上させることができ、ラップ包装時に包装用容器に割れが生じるのも防止することができるとともに、容器自体を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による包装用容器の一例を上面から見て示す斜視図。
【図2】図2(a)は図1に示す包装用容器の平面図、図2(b)は図1に示す包装用容器の右側面図。
【図3】図3(a)は図2のa−a線に沿う断面図、図3(b)は図2のb−b線に沿う断面図。
【図4】図1に示す包装用容器を多段に積み重ねたときのラッピングフィルム用の支持突起の部分を示す断面図。
【図5】図1に示す包装用容器を多段に積み重ねたときの状態を示す側面図。
【図6】図6(a)は本発明による包装用容器の他の例を示す平面図、図6(b)は図6(a)のc−c線に沿う断面図、図6(c)は図6(a)のd−d線に沿う断面図。
【図7】本発明による包装用容器の他の形態を示す、図3(b)に相当する図。
【図8】従来のラッピングフィルムのための支持突起を形成した包装容器を多段に積み上げたときの状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をいくつかの実施の形態に基づき説明する。
本発明による包装用容器10は発泡樹脂シートを成形した包装用容器10であり、基本的に、図1および図2に示すように、底面11および底面11の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁12を有する略矩形状のトレイ部15と、前記側壁12の1つの側壁12aにその一部を上方に向けて山形に成形した、ラッピングフィルムを支持するための1個または1個以上の支持突起16とを備える。図示のものでは、2個の同じ形状の支持突起16が側壁12aに形成されているが、前記したように、個数は任意であり、また、同じ形状の包装用容器10を上下方向に多段に積み重ねうることを条件に、各支持突起16は異なった形状であってもよい。
【0027】
包装用容器10の製造に用いられる前記発泡樹脂シート等は前記したとおりである。包装用容器10の成形には、発泡樹脂シートを加熱して軟化させた状態で、金型等によって所定形状に成形して冷却する熱成形が好適である。
【0028】
図3(a)に、図2(a)のa−a線に沿う断面を示すように、支持突起16の表面側および裏面側はともに平坦な面であり、また、4周の側壁の表面側および裏面側も平坦な面とされている。さらに、図示のものでは、底面11の中央部は盛り上がり部17とされており、底面11の周囲には、液溜まり部18が形成されている。側壁12の上縁には、下面は水平面であり上面は弧面となったフランジ19が形成されており、包装用容器10、特にトレイ部15の強度を大きくしている。なお、図示のものでは、支持突起16の厚さは側壁12の厚さとほぼ同じとされているが、ラップ時に支持突起16に作用する圧力によって変形等が生じないように、支持突起16の厚さを側壁12の厚さよりも厚くするようにしてもよい。
【0029】
図示の包装用容器10において、略矩形状のトレイ部15における前記支持突起16を形成した側壁12aを含まない他の側壁、すなわち、図で側壁12aを除く3つの側壁12b,12c,12d同士で形成される隅部であって、側壁12の頂部よりやや下方の位置には、図2に示されるように、外側向けて膨出した膨出部20が形成されており、該膨出部20の領域は、側壁12の他の部分と比べて肉厚となっている(図3(b)参照)。
【0030】
なお、図5は、上記の包装用容器10を多段に積み上げた状態を示しており、また、図4は、包装用容器10を多段に積み重ねたときに、上下に位置する支持突起16、16の位置関係を示している。図5に示すように、方向を同じにして包装用容器10同士を上下に積み重ねたとき、上位に位置する包装用容器10の前記外側に膨出した膨出部20は、下位に位置する包装用容器10の対応する隅部の平坦な内側面あるいは頂部と当接する。そして、その当接位置により、上下の包装用容器10、10における、支持突起16を形成した側壁12aに対向する側の側壁12c、12cの頂部間の距離は変化する。
【0031】
一方、図4に示すように、支持突起16を形成した側壁12a側では、上下に位置する支持突起16、16は互いに接した状態、すなわち、上位の支持突起16の裏面と下位の支持突起16の表面とが接した状態となっており、上下の包装用容器10は、無駄な隙間のない状態で、すなわち、包装用容器10の形状によって規制される最も低い積み上げ高さとして、積み重ねられている。
【0032】
したがって、前記膨出部20の形成位置およびまたは形状を、包装用容器10の形状に応じて適切に設定することにより、上位に位置する包装用容器10が下位に位置する包装用容器10とほぼ平行な姿勢を保持した状態で、積み重ねることが可能となる。同時に、全体の積み上げ高さも、包装用容器10の肉厚等に応じて必然的に設定される高さを超えない低い積み上げ高さとすることができる。
【0033】
なお、膨出部20の形状は、図3(b)の断面図に示すように、外側面21がほぼ垂直面であり、下端面22がほぼ水平面であることは、成形性および成形型から包装用容器10を脱型するときの容易性の観点から好ましいが、これに限らない。また、前記外側面21は型抜き方向に垂直であってもよいが、成形材料が発泡樹脂シートであることから、抜き方向に対して幾分逆テーパとなっていても差し支えない。その場合、膨出部20は、外側面21が垂直面であるのと比較して、その下端部22をより外側に膨出した形状とすることができ、より小型の膨出部20で所期の目的を達成することが可能となる。
【0034】
前記したように、上記した包装用容器10では、前記した外側に膨出した膨出部20の作用により、同じ形態の包装用容器10を同じ方向で積み重ねたときに、高さを抑制した状態で、全体をほぼ垂直な姿勢に維持することができる。そのために、多数個を積み重ねた包装容器群を、図示しない筒状の袋で包装する作業がきわめて容易となる。また、包装した袋体の複数個をダンボールケースなどに詰める作業も容易となる。さらに、包装した袋体は高さが低くかつ垂直状であることから、保管や運搬時のスペースも低減できる。
【0035】
また、上記した包装用容器10をラッピングフィルムを用いて包装する場合、包装用容器10はラッピングフィルムのための支持突起16を有することから、ラッピングフィルムとの接触により刺身などが変形してつぶれることを回避することができることに加え、隅部に形成した膨出部20によって、トレイ部15の強度を向上させることができ、ラップ包装時にトレイ部15に割れが生じたりするのを防止することもできる。
【0036】
上記膨出部20は、例えば、次のようにして形成することができる。真空成形機の雄型と雌型との間に、発泡樹脂シートを挟んで両面あるいは片面真空成形によって包装用容器10を成形する場合に、膨出部20を形成する箇所においては、雄型と雌型とを閉じた際に形成される成形のためのスペースが他の箇所よりも広い状態となっている。熱成形前には、発泡樹脂シートと成形型表面との間には空隙部が形成されているが、真空成形においては成形型表面に形成された微細な吸気口から型内部の空気が吸引される。この吸引によって発泡樹脂シートと成形型との間の空隙部が真空状態となる。このとき、前記発泡樹脂シートは加熱されて軟化された状態にあり、真空状態下での気泡の熱膨張ならびに真空引きによって、その箇所の厚みが増大されることによって、前記膨出部20が形成される。
【0037】
図6は、本発明による包装用容器の他の形態を説明している。この包装用容器10Aでは、外側に膨出する肉厚の膨出部として、前記隅部に形成した膨出部20に代えて、略矩形状のトレイ部15における支持突起16を形成した側壁12aに連続する2つの側壁12b,12dに、対をなすようにして外側に膨出した第2の肉厚の膨出部20aが形成され、さらに、支持突起16を形成した側壁12aに対向する側壁12cにも外側に膨出する第3の肉厚の膨出部20bが形成されている。
【0038】
前記した膨出部20の場合と同様、第2の肉厚の膨出部20aおよび第3の肉厚の膨出部20bを、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持することができるように位置および形状をそれぞれ設定して形成することにより、包装用容器10Aを互いに平行姿勢を維持しながら多段に積み上げることが可能となり、かつ安定した積み上げ姿勢を得ることができる。
【0039】
図示しないが、さらに他の形態として、略矩形状のトレイ部15における支持突起16を形成した側壁12aに連続する2つの側壁12b,12dに、対をなすようにして外側に膨出した第2の肉厚の膨出部20aのみを形成した形態、あるいは、支持突起16を形成した側壁12aに対向する側壁12cに外側に膨出する第3の肉厚の膨出部20bのみを形成した形態であっても、各包装用容器は所期の目的を達成することができることは容易に理解できる。
【0040】
また、図6に示した形態の第2および第3の膨出部20a,20bを備えた包装用容器10Aに対して、支持突起16を形成した側壁12aを含まない他の側壁12b,12c,12d同士で形成される隅部に、さらに前記した外側に膨出した膨出部20を形成することもできる。
【0041】
さらに、前記第2の肉厚の膨出部20aおよび第3の肉厚の膨出部20bを形成する場合は、膨出部を各側壁の頂部(フランジ部19)に沿って部分的に形成してもよく、頂部の全長に沿って形成してもよい。後者の場合には、略矩形状のトレイ部15の側壁周縁を補強する効果ももたらされる。
【0042】
また、上記の説明では、肉厚の膨出部20、20a、20bは外側に膨出しているものとして説明したが、図7に示すように、肉厚の膨出部を、略矩形状のトレイ部15の内側に膨出する形状の膨出部20cとすることもできる。ただし、この場合には、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、上位に位置する包装用容器の側壁12の外面が、下位に位置する内側に膨出した肉厚の膨出部20cと当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持されることとなる。なお、図示しないが、前記した第2の肉厚の膨出部20aおよび第3の肉厚の膨出部20bについても、内側に膨出する形状の膨出部として形成することができる。
【符号の説明】
【0043】
10…本発明による包装用容器、
11…底面、
12(12a,12b,12c,12d)…側壁、
15…略矩形状のトレイ部、
16…ラッピングフィルムを支持するための支持突起、
17…底面の盛り上がり部、
18…液溜まり部、
19…側壁の上縁に形成したフランジ、
20、20a、20b…外側向けて膨出した膨出部、
20c…内側に膨出する形状の膨出部、
21…膨出部の外側面、
22…膨出部の下端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面および底面の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁を有する略矩形状のトレイ部と、前記側壁の1つの側壁にその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器において、
前記包装用容器は、前記側壁のうちの前記支持突起を備えない側壁に、当該側壁の外側面から外側に膨出する肉厚の膨出部を有しており、前記肉厚の膨出部は、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、下位に位置する包装用容器の側壁内面または頂部に当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持することができる位置に形成されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
底面および底面の周囲から上方開口部に向けて拡開しながら外側に傾斜する側壁を有する略矩形状のトレイ部と、前記側壁の1つの側壁にその一部を上方に向けて山形に成形したラッピングフィルムを支持するための支持突起とを備えた発泡樹脂シートを成形した包装用容器において、
前記包装用容器は、前記側壁のうちの前記支持突起を備えない側壁に、当該側壁の内側面から内側に膨出する肉厚の膨出部を有しており、前記肉厚の膨出部は、同じ形態の包装用容器を同じ方向で積み重ねたときに、上位に位置する包装用容器の側壁外面が当接することで、上位に位置する包装用容器が下位に位置する包装用容器とほぼ平行な姿勢を保持できる位置に形成されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項3】
前記肉厚の膨出部は、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁を含まない他の側壁同士で形成される隅部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記肉厚の膨出部は、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁に連続する2つの側壁に対をなすようにして形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。
【請求項5】
前記肉厚の膨出部は、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁に対向する側壁に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。
【請求項6】
前記肉厚の膨出部は、前記略矩形状のトレイ部における支持突起を形成した側壁に連続する2つの側壁および対向する側壁にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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