説明

化合物、重合方法、重合体、およびブロック重合体

【課題】 重合開始剤において、核磁気共鳴装置を用いた測定で、重合体由来の吸収帯と重ならない開始剤を提供し、分子量の算出が容易となる重合体を提供する。
【解決手段】 下記一般式1で示される化合物を主たる構成にする。
【化15】


(一般式1において、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、nは整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、重合方法、重合体、およびブロック重合体に関し、例えば原子移動型リビングラジカル重合などで用いられる重合開始剤に関連した化合物、重合方法、重合体、およびブロック重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子移動型リビングラジカル重合方法(Atomic Transfer Radical Porimelzation(ATRP)法)は、分子内に塩素原子または臭素原子を有する化合物を用いることで、簡便に狭分散重合体が得られる方法として知られている(例えば非特許文献1〜7参照)。
【非特許文献1】Jin-Shan Wang : J.Am.Chem.Soc. ,117,5614 (1995)
【非特許文献2】Jin-Shan Wang : Macromolecules, 28,7572 (1995)
【非特許文献3】Virgil Percec : Macromolecules,28,7970(1995)
【非特許文献4】Mitsuru Kato : Macromolecules,28,1721(1995)
【非特許文献5】Jianhui Xia : Macromolecules, 32, 3531(1999)
【非特許文献6】Dong-Qi Qin : Macromolecules, 33, 6987(2000)
【非特許文献7】Shenmin Zhu : Macromolecules, 33, 8233(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、重合体の分子量の測定方法として、核磁気共鳴装置(NMR)を用い、重合体末端の開始剤由来の吸収とそれ以外に由来するプロトンの吸収スペクトルの強度比を元に算出することは知られている。しかしながら、従来知られている開始剤では、開始剤に由来のケミカルシフト値と、それ以外の重合体のケミカルシフト値の差が小さいため、重合度が大きくなると重合体由来の吸収に紛れてしまい重合体分子量を正確に算出することが難しくなる点に問題があった。
【0004】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであり、核磁気共鳴装置を用いた測定で、重合体由来のプロトン吸収ケミカルシフト値と大きく異なるケミカルシフト値を有する開始剤を提供し、重合体の分子量の算出を容易とすることができる化合物、重合方法、重合体、およびブロック重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、下記一般式(1)で示される化合物を最も主要な特徴とする。
【化4】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは整数を表す。)
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の化合物を開始剤として用いる重合方法を特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1記載の化合物由来の下記に示す残基が含まれる重合体を主要な特徴とする。
【化5】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、nは整数を表す。)
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3記載の重合体であって、繰り返し単位として下記一般式(2)で示される構造を含むことを主要な特徴とする。
【化6】

(式中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表す。)
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の重合体をマクロ開始剤として用いる重合方法を主要な特徴とする。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5記載の重合方法により得られるブロック重合体を主要な特徴とする。
【0011】
検証の結果、分子内にベンゼン環を有する構造であり、そのベンゼン環の2、3、5、6位に置換基を置換させないことで、ベンゼン環由来のプロトン吸収と、重合体由来のプロトン吸収を独立に観察できることが明らかとなった。
また、上記した一般式(1)で示される化合物を開始材として用いて合成された重合体は、分子量を正しく算出されることが出来ることが明らかとなった。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記した一般式(1)中で、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、nは整数を表す一般式(1)で示される化合物により、分子量評価を目的とした新しい開始剤の提供が可能となる。
【0013】
また、高真空下で封止したアンプル等で合成することなく簡便な環境で重合体を合成する方法を提供し、正確な分子量を評価した重合体を提供することが可能となる。
【0014】
さらに、請求項1に記載の化合物を用いたブロック重合体の合成方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態は重合開始剤およびこれを用いた重合方法、重合体に関するものであり、特に原子移動型リビングラジカル重合で用いる開始剤に関するものである。
この本実施形態のリビングラジカル重合開始剤は、下記の一般式(1)で示される化合物からなるものである。
【化7】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは整数を表す。)
【0016】
上記したアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の一級アルキル基、イソブチル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、1-プロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-プロピル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、1-イソプロピルペンチル基、1-イソプロピル-2-メチルブチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-プロピルヘキシル基、1-イソブチル-3-メチルブチル基等の二級アルキル基、ネオペンチル基、tert-ブチル基、tert-ヘキシル基、tert-アミル基、tert-オクチル基等の三級アルキル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、4-(2-エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基(アダマンタン基)等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0017】
更に、これら一級及び二級アルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、置換又は未置換のアリール基、置換又は未置換の複素環残基等で置換されていてもよい。また、酸素、硫黄、窒素等の原子を介して上記したアルキル基が付加された構造となるように置換されていてもよい。
【0018】
酸素を介して付加された状態となるよう置換されているアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が、硫黄を介して置換されているアルキル基としては、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、エチルチオプロピル基、フェニルチオエチル基等が、窒素を介して置換されているアルキル基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基等が挙げられる。複素環残基の具体例としては、インドリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリル基等が挙げられる。
ハロゲン原子の具体例は、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0019】
また、上述した一般式(1)で示される化合物由来の残基が含まれる重合体は、繰り返し単位として下記一般式(2)で示される構造を含むことが好ましい。
【化8】

(式中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表す。置換基の具体例は、前述のものと同じであってよい。)
【0020】
上述した一般式(1)で示される開始剤は、ベンゼン環を有し、その1位と4位のみに置換基を有していることが特徴である。言い換えると、ベンゼン環の2、3、5、6位に水素原子が付いていることが特徴である。
ベンゼンの1位(4位)には炭素原子が、4位(1位)には酸素原子が置換している。このような構造を取ることで、プロトンNMR測定において特徴的な吸収スペクトルを示すことができる。ベンゼン環に由来する水素の電磁波吸収は、2種類のダブレット吸収帯のみとなる。1、4位のみが置換しているため、2位と6位、3位と5位は縮重し、7.1ppmおよび6.8ppm付近に特徴的なダブレット(二重項)として観測される。
【0021】
図1は、上述した一般式(1)で示される化合物例のプロトンNMRスペクトル(6.5−7.3ppm)の拡大図である。以下の図1から図8について、図中、横軸に化学シフト値(δ値)、縦軸に吸収強度を配する。
【0022】
一般的にATRP法による重合手順は、大体次のようなものである。
必要となる原材料をアンプル等の容器に入れ、液体窒素等の中に投入し内容物を凝固する。次に、真空ポンプ等により十分に脱気しコック等で密栓後、内容物を溶解し液体中の溶存気体を気相中に排出する。次ぎに、容器内に窒素等の酸素を含まない気体で容器内を置換する。この一連の作業を数回繰り返した後、再度容器内を真空ポンプ等で吸引し高真空状態にした後、容器を完全に密封する。この際、ガラス製の容器の口をバーナー等で焼き切り密封するのが一般的である。この後、必要な温度に加熱することで、反応が開始される。
【0023】
ATRP法で用いられる開始剤の多くは沸点が低いため、脱気の際、液体窒素等に投入するなどして開始剤の蒸発を防止し、反応系内の化学量論比が変わらないように工夫する必要がある。これに対し、一般式1で示される開始剤は沸点が高いため、脱気による開始剤の蒸発をそれほど気にする必要がない。
一般式1で示される開始剤を用いた重合では、反応容器に原材料を入れ室温下、原材料および容器内から脱酸素後、アルゴン、窒素等のラジカルに影響しない不活性ガスで置換し、大気圧下、必要な加熱をすることで、下記に示す一般式(1)由来の残基を開始末端とする重合体を得ることが出来る。
【化9】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、nは整数を表す。)
【0024】
このようにして得た重合体をプロトンNMRにより電磁波吸収を観測すると、重合体に由来する吸収帯と異なる位置に開始剤由来の吸収帯を観測できるため、重合体の分子量の決定を容易とすることができる。
【0025】
一般式(1)で示した開始剤は、特に一般式(2)で示される繰り返し単位を持つ重合体において有利である。これらを合成する際用いられる開始剤の多くは、分子量の小さなエステル系化合物である。このような開始剤を用いて合成した重合体の分子量特定は、開始剤のエステル基の酸素と結合したメチル、メチレンもしくはメチン基由来の吸収帯と、重合体のエステル基の酸素と結合したメチル、メチレンもしくはメチン基由来の吸収帯との吸収面積比により決定している。
【0026】
重合体の分子量が大きくなるに従い、そのプロトンNMRスペクトルにおいて、開始剤由来の吸収帯が重合体由来の吸収帯に埋もれてしまい判断できない。また、ヒドロキシ−メチル−メタアクリレート(HEMA)の重合体では、開始剤由来の吸収帯が重合体由来の吸収帯に完全に重なるため、分子量を決定することが出来ない。比較例1として、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エチルエステルを開始剤としたメチル−メタアクリレート(MMA)重合体のNMRスペクトルを図2に、比較例2として、同じ開始剤を用いたMMAとHEMAの共重合体のスペクトルを図3に、それぞれ示す。
【0027】
図2に示す比較例1では、開始剤由来のメチレン基の吸収帯が約4.1ppmに観察されている。開始剤由来のメチレン基の吸収帯とMMA由来のメチル基の吸収帯が近いため、重合体の分子量が大きくなるに従い、開始剤由来のメチレン基の吸収帯が重合体由来のメチル基の吸収帯に埋もれてしまう。また、比較例2のようにHEMAの存在する重合体では、図3に示すように開始剤由来のメチレン基の吸収帯が観察される4.1ppm付近に、HEMA由来の2種のメチレン基の吸収帯があり開始剤由来のメチレン基の吸収帯と重なるため観測することが出来なくなってしまう。
【0028】
これに対し、本実施形態としての上述した一般式(1)で示される化合物を開始剤として重合したMMAとHEMAの重合体のプロトンNMRスペクトルを図4に示す。開始剤由来のベンゼン環の吸収帯が、7.1ppmおよび6.8ppm付近に特徴的なダブレットとして観測される。
一般式(1)で示される開始剤から合成された重合体は、その分子量を正確に決められるため、マクロ開始剤として利用することに適している。分子量の決定されたマクロ開始剤を用いることで、必要となる触媒量を正確に投入出来るため、ブロック重合体の合成方法として優れている。
【実施例1】
【0029】
〔化合物例1の合成〕
反応容器に4−メトキシフェネエチルアルコール10.0g、脱水テトラヒドロフラン(THF)100ml、およびトリエチルアミン8.0gを投入し、氷浴にて5℃以下まで冷却した。この溶液に臭化2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸16.7gを滴下し、5時間攪拌を続けた。析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾取後濃縮し、濃縮したオイル状物質を水300mlに排出した。中和後、これをトルエンで抽出し、トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。濃縮後蒸留し、目的物19.1gを得た。
得られた化合物の1H、13C NMRスペクトルをそれぞれ図5、図6に示す。
【0030】
図5の解析結果を以下に示す。
【化10】

【0031】
図6の解析結果を以下に示す。
【化11】

【実施例2】
【0032】
〔化合物例2の合成〕
反応容器に4−メトキシフェネエチルアルコール15.3g、脱水THF75ml、およびトリエチルアミン13.3gを投入し、氷浴にて5℃以下まで冷却した。この溶液に塩化2−クロロプロピオン酸15.4gを滴下し、5時間攪拌を続けた。析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾取後濃縮し、濃縮したオイル状物質を水300mlに排出した。中和後、これをトルエンで抽出し、トルエン層を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し濃縮した。濃縮物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン)により生成し、目的物22.6gを得た。
得られた化合物の1H、13C NMRスペクトルをそれぞれ図7、図8に示す。
【0033】
図7の解析結果を以下に示す。
【化12】

【0034】
図8の解析結果を以下に示す。
【化13】

【実施例3】
【0035】
〔重合例1の合成〕
冷却管及びアルゴンガスを充填した風船を取り付けた反応容器中に、MMA4.00g、HEMA1.30g、メチルエチルケトン10mlを加えた。次に1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.0461g及び塩化第一銅0.0099gを添加し、銅塩が溶解するまで攪拌した。この溶液に化合物例1を0.0301g投入し、真空ポンプで反応系内を脱気後、系内をアルゴンガスで置換した。この作業を3回繰り返した後、大気圧アルゴンガス雰囲気下、40℃で5時間重合を行った。重合終了後、反応溶液をメタノール−水( 1:3 )中に排出し、析出したMMA-HEMAランダム共重合体を得た。
Mn(NMR)=45,000
Mn(GPC)=37,000
Mw(GPC)=46,000
Mw/Mn(GPC)=1.24 GPC:MMA換算
【実施例4】
【0036】
〔重合例2の合成〕
冷却管及びアルゴンガスを充填した風船を取り付けた反応容器中に、重合例1を1.60g、スチレン3.00g、DMF5mlを加えた。次にトリ(2−ジメチルアミノエチル)アミン0.0165g及び塩化第一銅0.0035gを添加し、銅塩が溶解するまで攪拌した。銅塩溶解後、真空ポンプで反応系内を脱気後、系内をアルゴンガスで置換した。この作業を3回繰り返した後、大気圧アルゴンガス雰囲気下、120℃で10時間重合を行った。重合終了後、反応溶液をメタノール中に排出し、析出した(PMMA−PHEMA)−b−ポリスチレンのブロック共重合体を得た。
Mn(NMR)=69,000
Mn(GPC)=44,000
Mw(GPC)=66,000
Mw/Mn(GPC)=1.50 GPC:MMA換算
【実施例5】
【0037】
〔重合例3の合成〕
冷却管及びアルゴンガスを充填した風船を取り付けた反応容器中に、4−ビニルピリジン5.00g、DMF10mlを加えた。次にトリ(2−ジメチルアミノエチル)アミン0.0276g及び塩化第一銅0.0099gを添加し、銅塩が溶解するまで攪拌した。この溶液に化合物例2の0.0243g投入し、真空ポンプで反応系内を脱気後、系内をアルゴンガスで置換した。この作業を3回繰り返した後、大気圧アルゴンガス雰囲気下、50℃で5時間重合を行った。重合終了後、反応溶液を水中に排出し、析出した4−ビニルピリジン重合体を得た。
Mn(NMR)=39,000
Mn(GPC)=43,000
Mw(GPC)=55,000
Mw/Mn(GPC)=1.28 GPC:スチレン換算
【実施例6】
【0038】
〔重合例4の合成〕
冷却管及びアルゴンガスを充填した風船を取り付けた反応容器中に、重合例3を1.50g、MMA3.00g、DMF5mlを加えた。次にトリ(2−ジメチルアミノエチル)アミン0.0115g及び塩化第一銅0.0038gを添加し、銅塩が溶解するまで攪拌した。銅塩溶解後、真空ポンプで反応系内を脱気後、系内をアルゴンガスで置換した。この作業を3回繰り返した後、大気圧アルゴンガス雰囲気下、40℃で4時間重合を行った。重合終了後、反応溶液をメタノール−水(1:2)中に排出し、析出したポリ4−ビニルピリジン−b−PMMAのブロック共重合体を得た。
Mn(NMR)=82,000
Mn(GPC)=86,000
Mw(GPC)=114,000
Mw/Mn(GPC)=1.33 GPC:スチレン換算
【0039】
〔化合物例〕
本発明の実施形態としての化合物例一般式を示す。
【化14】

【0040】
上記した化合物例一般式に対する例示化合物を以下に示す。
上述した実施例1は、表1中の「化合物例1」に対応する化合物の合成実施例であり、図5、図6がその化合物を測定するためのデータに相当する。
上述した実施例2は、表1中の「化合物例2」に対応する化合物の合成実施例であり、図7、図8がその化合物を測定するためのデータに相当する。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態での一般式(1)で示される化合物例のNMRスペクトル拡大図である。
【図2】比較例1のNMRスペクトル図である。
【図3】比較例2のNMRスペクトル図である。
【図4】上記一般式(1)で示される化合物を開始剤として用いて重合された重合体例のNMRスペクトル図である。
【図5】本発明の実施例1における1H-NMRスペクトル図である。
【図6】本発明の実施例1における13C-NMRスペクトル図である。
【図7】本発明の実施例2における1H-NMRスペクトル図である。
【図8】本発明の実施例2における13C-NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とする化合物。
【化1】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは整数を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の化合物を開始剤として用いることを特徴とする重合方法。
【請求項3】
請求項1記載の化合物由来の下記に示す残基が含まれることを特徴とする重合体。
【化2】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表し、nは整数を表す。)
【請求項4】
請求項3記載の重合体であって、繰り返し単位として下記一般式(2)で示される構造を含むことを特徴とする重合体。
【化3】

(式中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基を表す。)
【請求項5】
請求項3または4に記載の重合体をマクロ開始剤として用いることを特徴とする重合方法。
【請求項6】
請求項5記載の重合方法により得られたことを特徴とするブロック重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−232715(P2006−232715A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48571(P2005−48571)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】