説明

化学物質で汚染された土壌の処理方法

【課題】化学物質で汚染された土壌の処理を、低コストで、施工容易に行うことができる化学物質で汚染された土壌の処理方法を提供する。
【解決手段】油等の化学物質で汚染された土壌部分を掘削した後、その穴1を囲む土壌面に第1のシート状化学物質吸着材2を敷き、その上に、前記掘削した汚染土壌3を埋め戻し、埋め戻した汚染土壌3の上に、第2のシート状化学物質吸着材4を敷き、その上を化学物質で汚染されていない土5で覆土する。各シート状化学物質吸着材2,4は、化学物質を吸着する活性炭シート層6,6間に生分解性の補強シート層7を設けた三層構造のものからなっているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油やVOC、有機塩素系化合物等の化学物質で汚染された土壌の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質で汚染された土壌の処理方法として、汚染された土壌部分を掘削して産廃処分する方法の他、生石灰法や微生物浄化法などがあるが、コスト面や工期面での問題があり、また、発熱や、発熱による揮発臭気の発生、処理の不確実性というような問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−39954号公報
【特許文献2】特開2008−55319号公報
【特許文献3】特開2008−68244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、化学物質で汚染された土壌の処理を、低コストで、施工容易に行うことができ、また、発熱や、発熱による揮発臭気の発生を防ぐことができると共に、確実な処理を実現することができる、化学物質で汚染された土壌の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、化学物質で汚染された土壌部分を掘削した後、その穴を囲む土壌面に第1のシート状化学物質吸着材を敷き、その上に、前記掘削した汚染土壌を埋め戻し、埋め戻した汚染土壌の上に、第2のシート状化学物質吸着材を敷き、その上を化学物質で汚染されていない土で覆土することを特徴とする化学物質で汚染された土壌の処理方法によって解決される(第1発明)。
【0006】
この処理方法によれば、掘削穴に埋め戻された汚染土壌に含まれる化学物質は、掘削穴の土壌面に敷かれた第1のシート状化学物質吸着材と、埋め戻した汚染土壌の上に敷かれた第2のシート状化学物質吸着材とによって吸着されていき、それにより、埋め戻された汚染土壌に含まれる化学物質が周囲の土壌部分に広がるのを防ぐことができると共に、埋め戻された汚染土壌も清浄化していくことができ、汚染土壌から発する悪臭や異臭が処理後の地表面から発せられるのも防ぐことができて、有効効果的な処理を実現することができる。
【0007】
しかも、掘削した汚染土壌は、掘削した穴に埋め戻すため、汚染掘削土の産廃処分の必要がなく、処理をコスト的に有利に行うことができると共に、
掘削、掘削穴へのシート状化学物質吸着材の敷設、埋戻し、シート状化学物質吸着材の敷設、覆土の各工程を行っていくだけで処理を終えることができて、施工が非常に容易で、短工期で処理を終えることができ、
また、埋め戻した汚染土壌の上に敷設した第2シート状化学物質吸着材の上には覆土をするので、第2シート状化学物質吸着材を固定化して地盤を安定させることができると共に、第2シート状化学物質吸着材を保護することができる。また、各シート状化学物質吸着材は補強シート層によって補強されているので、埋め戻した汚染土壌や覆土によって損傷することもない。
【0008】
また、上記の課題は、化学物質で汚染された土壌の地表面部に、シート状化学物質吸着材を敷き、該化学物質吸着材の上を化学物質で汚染されていない土で覆土することを特徴とする化学物質で汚染された土壌の処理方法によって解決される(第2発明)。
【0009】
この方法によれば、シート状化学物質吸着材の下の汚染土壌に含まれる化学物質は、該シート状化学物質吸着材によって吸着されていき、それにより、汚染土壌を清浄化していくことができると共に、汚染土壌から発する悪臭や異臭が処理後の地表面から発せられるのも防ぐことができて、有効効果的な処理を実現することができる。
【0010】
しかも、汚染土壌を掘削する必要もなく、掘削土を産廃処分する必要もないので、処理をコスト的に有利に行うことができると共に、
シート状化学物質吸着材の敷設と覆土の工程を行っていくだけで処理を終えることができて、施工が非常に容易で、短工期で処理を終えることができ、
また、汚染土壌の上に敷設したシート状化学物質吸着材の上には覆土をするので、シート状化学物質吸着材を固定化して地盤を安定させることができると共に、シート状化学物質吸着材を保護することができる。また、シート状化学物質吸着材は補強シート層によって補強されているので、覆土によって損傷することもない。
【0011】
第1,第2発明において、前記シート状化学物質吸着材が、化学物質を吸着する多孔質シート層間に生分解性の補強シート層を設けた三層構造のものからなっているとよい(第3発明)。
【0012】
この場合は、化学物質を多孔質で吸着するから、処理中に、熱や、熱による揮発臭気の発生もなく、施工を安全に行うことができ、しかも、シート状化学物質吸着材は、そのような多孔質シート層間に補強シート層を設けた三層構造のものからなっているから、強度的に強く、環境に耐えて化学物質を効果的に吸着することができ、加えて、補強シート層は生分解性であるから、環境負荷を小さくすることができる。
【0013】
第3発明において、多孔質シート層が活性炭シート層からなる場合(第4発明)は、補強シート層が生分解性であることも相俟って、環境負荷を非常に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のとおりのものであるから、化学物質で汚染された土壌の処理を、低コストで、施工容易に行うことができる。また、発熱や、発熱による揮発臭気の発生を防ぐことができると共に、確実な処理を実現することができ、また、環境への負荷も小さく済ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図(イ)はシート状化学物質吸着材の断面図、図(ロ)は第1実施形態の処理方法によって処理された土壌の断面正面図、図(ハ)は第2実施形態の処理方法によって処理された土壌の断面正面図である。
【図2】図(イ)〜図(ハ)は、図3(ニ)〜(ヘ)とともに、第1実施形態の処理方法を順次に示す断面正面図である。
【図3】図(ニ)〜図(ヘ)は、図2(イ)〜(ハ)とともに、第1実施形態の処理方法を順次に示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
第1実施形態の方法によって処理された土壌を示す図1(ロ)において、1は掘削穴、2は第1のシート状化学物質吸着材、3は汚染土壌、4は第2のシート状化学物質吸着材、5は化学物質で汚染されていない土である。
【0018】
第1,第2のシート状化学物質吸着材2,4はそれぞれ、図1(イ)に示すように、化学物質を吸着する多孔質シート層6,6間に生分解性の補強シート層7を設けた三層構造のものからなって、本実施形態では、多孔質シート層6,6は活性炭シート層からなっている。活性炭シート層6,6は、例えば、活性炭を不織布のようにシート状に加工したものからなっていて、補強シート層7は、トウモロコシなどの植物性のものなどからなっていて、汚染の種類によって2〜数十年程度で生分解して二酸化炭素と水になるものであるのがよい。なお、活性炭シート層6,6には、化学物質の浄化作用のある微生物や、化学物質を分解、溶解する界面活性剤、酵素などの分解促進剤を添加するようにしてもよい。
【0019】
施工は、図2(イ)に示すように化学物質で汚染された土壌部分3を、図2(ロ)に示すように掘削した後、その穴1を囲む土壌面に、図2(ハ)に示すように第1のシート状化学物質吸着材2を敷き、その上に、図3(ニ)に示すように、上記の掘削した汚染土壌3を埋め戻し、埋め戻した汚染土壌3の上に、図3(ホ)に示すように、第2のシート状化学物質吸着材4を敷き、そして、その上を、図3(ヘ)に示すように、化学物質で汚染されていない土5で覆土する、というようにして行う。覆土は10〜50cm程度行うとよい。
【0020】
これにより、掘削穴1に埋め戻された汚染土壌3に含まれる化学物質は、掘削穴1の土壌面に敷かれた第1のシート状化学物質吸着材2と、埋め戻した汚染土壌3の上に敷かれた第2のシート状化学物質吸着材4とによって吸着されていき、それにより、埋め戻された汚染土壌3に含まれる化学物質が周囲の土壌部分8に広がるのを防ぐことができると共に、埋め戻された汚染土壌3も清浄化していくことができ、汚染土壌3から発する悪臭や異臭が処理後の地表面から発せられるのも防ぐことができて、有効効果的な処理を実現することができる。
【0021】
しかも、掘削した汚染土壌3は、掘削した穴1に埋め戻すため、汚染掘削土3の産廃処分の必要がなく、処理をコスト的に有利に行うことができる。また、施工も、掘削、掘削穴1への第1シート状化学物質吸着材2の敷設、埋戻し、第2シート状化学物質吸着材4の敷設、覆土の各工程を行っていくだけで処理を終えることができて、施工が非常に容易で、短工期で処理を終えることができる。更に、埋め戻した汚染土壌3の上に敷設した第2シート状化学物質吸着材4の上には覆土5がなされているので、第2シート状化学物質吸着材4を固定化して地盤を安定させることができると共に、第2シート状化学物質吸着材4を保護することができる。また、第1シート状化学物質吸着材2も、埋め戻された汚染土壌3によって、しっかりと固定化され、保護もされる。各シート状化学物質吸着材2,4は補強シート層7によって補強されているので、埋め戻した汚染土壌3や覆土5によって損傷することもない。
【0022】
そして、第1,第2のシート状化学物質吸着材2,4は、多孔質シート層6,6を構成する活性炭で化学物質を吸着するものであるから、処理中に、熱や、熱による揮発臭気の発生もなく、施工を安全に行うことができると共に、補強シート層7によって強度的に強く、そのため環境に耐えて化学物質を効果的に吸着することができ、活性炭シート層6,6と生分解性補強シート層7の採用によって、環境負荷を小さくすることができる。
【0023】
図1(ハ)は、第2実施形態の方法によって処理された土壌を示すもので、化学物質で汚染された土壌3の地表面部に、第1実施形態で使用したのと同じシート状化学物質吸着材4を敷き、該化学物質吸着材4の上を、第1実施形態の場合と同様に、化学物質で汚染されていない土5で覆土したものである。
【0024】
このような処理方法によっても、シート状化学物質吸着材4の下の汚染土壌3に含まれる化学物質は、該シート状化学物質吸着材4によって吸着されていき、それにより、汚染土壌3を清浄化していくことができると共に、汚染土壌3から発する悪臭や異臭が処理後の地表面から発せられるのも防ぐことができて、有効効果的な処理を実現することができる。
【0025】
しかも、汚染土壌3を掘削する必要もなく、掘削土を産廃処分する必要もないので、処理をコスト的に有利に行うことができる。また、シート状化学物質吸着材4の敷設と覆土5の工程を行っていくだけで処理を終えることができて、施工が非常に容易で、短工期で処理を終えることができる。更に、汚染土壌3の上に敷設したシート状化学物質吸着材4の上には覆土5がなされているので、シート状化学物質吸着材4を固定化して地盤を安定させることができると共に、シート状化学物質吸着材4を保護することができる。また、シート状化学物質吸着材4は補強シート層7によって補強されているので、覆土5によって損傷することもない。
【符号の説明】
【0026】
1…掘削穴
2…第1のシート状化学物質吸着材
3…汚染土壌
4…第2のシート状化学物質吸着材
5…覆土
6…活性炭シート層(多孔質シート層,化学物質吸着シート層)
7…補強シート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質で汚染された土壌部分を掘削した後、その穴を囲む土壌面に第1のシート状化学物質吸着材を敷き、その上に、前記掘削した汚染土壌を埋め戻し、埋め戻した汚染土壌の上に、第2のシート状化学物質吸着材を敷き、その上を化学物質で汚染されていない土で覆土することを特徴とする化学物質で汚染された土壌の処理方法。
【請求項2】
化学物質で汚染された土壌の地表面部に、シート状化学物質吸着材を敷き、該化学物質吸着材の上を化学物質で汚染されていない土で覆土することを特徴とする化学物質で汚染された土壌の処理方法。
【請求項3】
前記シート状化学物質吸着材が、化学物質を吸着する多孔質シート層間に生分解性の補強シート層を設けた三層構造のものからなっている請求項1又は2に記載の化学物質で汚染された土壌の処理方法。
【請求項4】
前記多孔質シート層が活性炭シート層からなる請求項3に記載の化学物質で汚染された土壌の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253420(P2010−253420A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108273(P2009−108273)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】