説明

化粧品汚染性能評価の試験方法

【課題】化粧品が付着しにくい布帛やあるいは付着しても落ちやすい布帛を見分ける化粧品汚染性能を評価(判定)する試験方法を提供する。
【解決手段】化粧品および/または人工皮脂を付着した人工皮革と、押さえるための荷重を有した駆動部に取り付けた繊維布帛とを接触偏心回転運動させた後、該繊維布帛の表面の色が化粧品および/または人工皮脂で変化した状態を汚染用グレースケールで判定する化粧品汚染性能評価の試験方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品が付着しにくい布帛や付着しても落ちやすい布帛を見分ける化粧品汚染性能を評価(判定)する試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年地球環境の悪化に伴い、耐汚染性能評価試験方法に関する特許が出願されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2000−186995号公報)にあるように住宅・ビルの外層など建築材料の汚染抵抗性の評価、特許文献2(特開2003−337100号公報)の自動車全体の塗膜汚染度合いを管理するための評価方法、あるいは特許文献3(特開2000−232895号公報)の抗菌製品の抗菌性評価などの特許出願がある。また、特許文献4の布帛の撥水性の評価方法(特開平4−236351号公報)や特許文献5の抜け毛の評価方法(特開平11−51837号公報)等はあるが、日常着用する衣料用テキスタイルの汚染防止性能の評価方法についてはいまだに提供されていない。
【0004】
なお、特許文献6(特開2007−271294号公報)には油焦付き汚れに対する防汚性の評価方法が開示されているが、油焦付き汚れに対する耐性を評価するものであって、本願発明のように化粧品や人間の皮脂に対する防汚性を評価するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−186995号公報
【特許文献2】特開2003−337100号公報
【特許文献3】特開2000−232895号公報
【特許文献4】特開平4−236351号公報
【特許文献5】特開平11−51837号公報
【特許文献6】特開2007−271294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、化粧品が付着しにくい布帛やあるいは付着しても落ちやすい布帛を見分ける化粧品汚染性能を評価(判定)する試験方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、化粧品および/または人工皮脂が付着した人工皮革と、ホルダーに取り付けた繊維布帛とを荷重をかけながら接触偏心回転運動させた後、該繊維布帛の表面の色が化粧品および/または人工皮脂で変化した状態を汚染用グレースケールで判定する化粧品汚染性能評価の試験方法である。
なお、本発明において「化粧品および/または人工皮脂」とは、「化粧品および人工皮脂」と「化粧品または人工皮脂」のいずれの意味をも含むのである。
【発明の効果】
【0008】
日常生活の中では、メークアップした後に衣服を着脱する時など化粧品が衣服の襟廻りに付くことやスポーツをしていて腕を振り上げた時に口紅が付くようなことがある。また、通勤や通学のラッシュ時に他人の化粧が自分の衣服に付いたりすることもある。
【0009】
本発明の化粧品汚染性能評価の試験方法においては、化粧品が衣服に付着した場合の付きにくさや、付いても繰り返し洗濯による落ちやすさを容易に判断することできるため、化粧品汚染性能を有する繊維布帛を提供することが容易になった。
【0010】
また、本発明の化粧品汚染性能評価の試験方法をもちいることで、定量的に測定・評価をすることができるため、誰でも同じように評価判断することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例で使用したアピアランス・リテンション形試験機の主要部の概略図である。
【図2】比較例2で実施した方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
化粧品が衣服に付く場合を想定してみると、衣服を着脱した時や通勤のラッシュ時にまわりの誰かとぶつかったり、自分の何気ない動作などで身頃や袖に触れて化粧品が付くなどさまざまな状況が考えられる。その付着の程度は千差万別であるが、そのままの化粧品が衣服に付いた状態で過ごすことは不快である。
【0013】
このような、普段の生活の中での衣服(布帛)への化粧品の付き方や洗濯による汚れの落ちかたが客観的に定量的に判定できれば、防汚加工した商品を適切に選び、着用して、快適な生活を送ることができる。本発明者らは、このような、繊維布帛の表面の色が化粧品および/または人工皮脂で変化した状態を汚染用グレースケールで判定する化粧品汚染性能評価の試験方法によりその課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0014】
本発明における「化粧品の汚れ」とは、ファンデーションや口紅等の化粧品と自分の顔から出てくる皮脂が混合されたものをいう。
【0015】
普段使用する市販の化粧品には、様々なメーカーから色々な形態のものが出されている。
【0016】
例えば、ファンデーションでは粉状(パウダリー)、液状(リッキドタイプ)や、夏場の汗や海水浴の時に強いウオータプルーフなどがある。
【0017】
一般に市販されている化粧品の成分は、ファンデーションでは、着色料(顔料)、混合物(固形ワックスまたはシリコン)、乳化補助剤(グリセリン、アルコール)、乳化剤(脂肪酸エステル、ポリオールなど)、その他(水、防腐剤、香料、酸化チタンなど)がある。
また、口紅の成分には、着色料(顔料)、油脂成分(ワックス、脂肪酸エステル、高級アルコールなど)、その他(酸化防止剤、香料など)である。
【0018】
したがって、これら化粧品汚れの主な成分は、アニオン性油成分、顔料および皮脂である。
【0019】
日常生活において化粧品が衣服に付着する状態をどのように再現できるか、その方法を検討した結果、均一に繊維布帛に化粧品を付着させることができる方法を見出した。
【0020】
繊維布帛に化粧品を付着させるだけであればいかなる方法を用いてもできるが、化粧品を均一に付着させないと、付着状態が異なったもので判定しても公平な判定ができないし、さらにその後の洗濯処理による化粧品の落ち方も公平に判断することができなくなる。
【0021】
そこで、本発明者らでは化粧品や皮脂を評価用繊維布帛に均一に付ける方法として回転運動や平行運動をさせる方法を検討した。その結果、回転運動が望ましく、さらには偏心回転をさせる方法が望ましい方法であることを見出した。回転運動による方法は、JIS L1076−1992「織物及び編物のピリング試験方法」の4.3アピアランス・リテンション形試験機に記載されているような円周軌道を描いて運動する機器を用いるのが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、評価するための皮膚の代替として人工皮革を評価に用いる。
この人工皮革とは、顔や唇などの人の皮膚の代用として使用するものである。皮膚の代替としては、化粧品の油分が皮革の表面から浸透しない基布であれば天然皮革でも人工皮革でも材質は特に限定されるものではないが、天然皮革は表面の溝幅や溝の深さが不均一になりやすく同じような形態の物を揃えることが難しいこともあり、均一性のある人工皮革の方を用いて評価するのが望ましいのである。
ここでいう人工皮革とは、人工皮革であれば特に限定されない。乾式法によるポリウレタン、アクリル、あるいは塩化ビニールのいずれか1種類を離けい紙上にコーティングし、ドット状あるいは全面状の接着樹脂で起毛されていない織物または編物面に接着させた後、離けい紙を剥がしながらエンボス仕上げ加工によりシボを付ける人工皮革や、あるいは織物または編物の生地の裏面に直接ポリウレタン、アクリル、塩化ビニールのいずれか1種類を離けい紙上にコーティングした後、水の中に入れて凝縮させるいわゆる湿式法による得られる人工皮革でもあってもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
本発明の評価に用いるファンデーションは市販品からリキッドタイプのプラウデアオークル30((株)資生堂製)を、また口紅はピエヌゴールデンリップフィニッシュ((株)資生堂製)を使用した。
【0024】
ファンデーションを評価する場合は、ファンデーションと人工皮脂を混用して用いる。ファンデーションのみでなく人工皮脂を用いて評価するのは、通常ファンデーションを塗った後2〜3時間もすると鼻や額等から皮脂が出てきて、ファンデーションとまざりあった状態となるためで、出来るだけ実際に近い状態を再現する目的で人工皮脂を混用したものである。
【0025】
なお、評価する際の皮脂は、人工皮脂を用いる。この人工皮脂の成分はマカデミアンナッツ油、イソステアリルパルミテート、パルミチン酸、オレイン酸、スクワランである。
【0026】
化粧する時に使われるファンデーションや口紅の量としては一般には0.2mg/cm程度であると言われているが、汚染の程度を評価試験する場合には、ファンデーションや口紅の量が少なすぎると繊維布帛への付着量も少なくなりグレースケールでの判定が難しくなる。また、ファンデーションや口紅の量が多すぎると繊維布帛への付着量が多くなりすぎてサンプルの裏側まで油脂成分が浸透し判定しにくくなるなどのことが予備実験で判った。
【0027】
そこで、まず、ファンデーションを評価する場合の、ファンデーションの塗布量について説明する。ファンデーションの塗布量は、ファンデーションと人工皮脂の重量の割合が2:1になるように混ぜ合わせた時の混合物の重量で、該重量が0.05mg/cm〜0.8mg/cmの範囲内になるよう人工皮革に塗布するものである。なお、塗布量は単位面積あたりで換算しているが、この時の塗布面積とは人工皮革の中央部に直径7cm程度の円形に塗布した面積である。人工皮革に塗布された量が0.05mg/cm以下では繊維布帛に塗布した時全体に薄く塗布されるため、汚染用グレースケールでの判定が難しい。また、人工皮革に塗布された量が0.8mg/cm以上であると繊維布帛にべっとり化粧品が塗布され、繰り返し洗濯を行っても化粧品が落ちにくく判定が難しい。より好ましくは0.1mg/cm〜0.6mg/cmである。
【0028】
口紅の汚染防止評価をする場合は、口紅に既に油脂成分が含まれているため、本発明においては必ずしも人工皮脂を混ぜる必要はない。なお、口紅では、特に赤色系が落ちにくい傾向にあるため本発明の試験評価では赤色口紅を用いることが望ましい。
【0029】
口紅を評価する場合の人工皮革への塗布量は、0.1mg/cm〜0.8mg/cmが望ましい。人工皮革への塗布量が0.1mg/cm以下では、評価用の繊維布帛に均一に塗布されず、人工皮革への塗布量が0.8mg/cm以上では評価用布帛にべっとり塗布された化粧品が繰り返し洗濯をしても落ちにくく判定が難しい。さらに好ましくは0.1mg/cm〜0.6mg/cmである。
【0030】
人工皮革に均一に化粧品および/または人工皮脂を付着させる具体的方法を以下の通り示す。
【0031】
直径11cmの円形にカットした人工皮革を20℃・65%にした部屋で4時間以上調湿したあと、その人工皮革の重量を測定する。天秤は、少数点第3位まで計測できるものを用いる。次に、化粧品および/または人工皮脂をシャーレなどに一定量とりわけ、混用する場合は均一に混ぜ合わせる。化粧品もしくは化粧品と人工皮脂を混ぜあわせたものをヘラなどで人工皮革に直径7cm以内になるよう均一に塗布し、少数点第3位まで計測できる天秤で塗布した総重量を計量する。そこから最初に測定した人工皮革の重量を差し引いた値が、0.1〜1.0mg/cmとなるように調整する。これを化粧品の重量とする。その後、化粧品および/または人工皮脂を塗布した人工皮革を乾燥機に入れて乾燥させる。これは化粧品に含まれる水分を完全に乾燥させるためのものである。
【0032】
次に、アピアランス・リテンション形試験機の試料ホルダーに繊維布帛を付け、装置の上部ホルダー支柱に取り付け、下部の摩擦板をはずして取り付けた化粧品および/または人工皮脂を付着させた人工皮革と接触させる。
【0033】
該試料ホルダーに繊維布帛を付ける時には、直径4.0cmにカットした化粧用パフをのせ、さらに試験評価用にカットした試料を取り付けることが望ましい。化粧用パフを用いるのは、回転運動で試料に化粧品をつける場合に上側のホルダーのみで、化粧品と人工皮脂を混ぜた物を試料に付着させると試料に輪郭だけが非常にはっきり付き、円内面部の方が薄く付着して、判定がまぎらわしくなるのを避けるためである。
【0034】
繊維布帛と人工皮革を接触させて押さえるための荷重(押圧荷重)は0.3〜0.5N/cmであることが好ましい。ここで、荷重0.3〜0.5N/cmとは試料ホルダーとホルダー支柱の重さをあわせた重さのものとする。0.3N/cm以下の軽い荷重では人工皮革に塗布されている化粧品が布帛の側につきにくく、0.5N/cm以上の重い荷重にすると全体に濃くべったりと化粧品がつきすぎて判定しにくくなる。
下部に取り付けた人工皮革の支持台は直径7.5cmの円周軌道を描いて85±3rpmの速度で偏心回転運動するものが望ましい。これにより、繊維布帛と化粧品および/または人工皮脂を付着させた人工皮革とが荷重がかかった状態で接触偏心回転運動することとなる。回転運動の速度が0.5rpm〜3.0rpmが望ましい。0.5rpm以下であると最初にのせた部分にのみ化粧品が強く塗布されてしまい、その部分のみ化粧品および/または人工皮脂が強く付着汚染されることになり、均一になりにくい。また、回転運動の速度が3.0rpm以上であれば、回転速度がはやすぎて全体に薄くついてしまい好ましくない。回転運動の速度は0.5〜3.0rpmが好ましく、さらには0〜2.0rpmがより好ましい。
偏心回転運動の移動範囲としては、駆動軸の移動直径が3cm〜10cmが好ましい。移動直径が3cm以下では化粧品で汚染された布帛の面積が小さく、繰り返し洗濯後の汚染程度を判定するときにわかりにくい。移動直径が10cm以上では広い面積に化粧品を塗ることとなり均一塗布することが難しく、移動直径が3cm〜10cmが好ましい。より好ましい駆動軸の移動直径は5cm〜8cmである。
【0035】
以上の方法により、化粧品および/または人工皮脂が繊維布帛に移ったの時の色の状態でJIS L 0805 汚染用グレースケール(日本規格協会堅ろう度委員会監修)により判定し、化粧品の付着しにくさを評価することができる。
【0036】
なお、JIS L 0849−1996「摩擦に対する染色堅牢度試験方法」に記載の4.(1)摩擦試験機(1.2)摩擦試験機II形(学振形)水平往復運動装置では、毎分30回往復の速度で120mmの間を水平往復運動させる方法であるが、化粧品が同じ場所に繰り返しこすりつけられ、化粧品が際の部分にのみ多く付き輪郭が非常にはっきりするため、判定しにくいため、好ましくない。
【0037】
本発明においては、さらに布帛の化粧品の落ちやすさを評価することもできる。すなわち、上記の方法で化粧品および/または人工皮脂を繊維布帛に付着させた後、一定条件で洗濯し、その後に繊維布帛の色の状態をJIS L 0805汚染用グレースケール(日本規格協会堅ろう度委員会監修)で判定する。この結果により、当該布帛の洗濯による化粧品の落ちやすさを評価することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
タテ糸に“テトロン(登録商標)”65%/綿35%の60番手、ヨコ糸に“ライクラ(登録商標)”を使用し、綾織物を製織後、通常の染色方法でリラックス・精練し、白に染色し、仕上げセットを行いタテ密度94本/2.54cm、ヨコ密度75本/2.54cmの織物を作製した。
【0040】
その織物のシワのない部分をタテ12cm、ヨコ12cmにカットした3枚を準備し、直径11cmにカットした人工皮革3枚とともに20℃・65%RHの温度調整している部屋で24時間調湿した。
【0041】
人工皮革は、繊度が110デシテックスで36フィラメントからなるポリエステル丸断面糸を用いたマット(平組織)織物の基布にポリウレタンをコーティングした後、エンボス加工したもので50g/cm荷重時の厚さが0.5mm 、240g/cm荷重時の厚さが1.0mmで、目付けが150g/mを用いた。
【0042】
20℃・65%RHの温度・湿度調整している部屋でこの人工皮革の試料の各1枚の重量を測定した。次に、ファンデーション(プラウデアオークル30、(株)資生堂製)と人工皮脂の重量割合が2:1になるようにそれぞれ取り分け、シャーレで混ぜたあと、混合したものを直径7cmの円形状に均一に塗布した。塗布にあたっては、化粧品と人工皮脂を塗布した人工皮革の重量から、なにもつけていない人工皮革の重量を差し引いた重さが0.4mg/cmとなるように調整した。
【0043】
このように化粧品および/または人工皮脂を塗布した人工皮革を、35℃の乾燥機で1時間乾燥する。なお、乾燥機は(株)タバイ製パーフェクトオーブンPVH−120を使用した。
【0044】
接触運動をさせる装置としては、JIS L 1076−1992 4.3 アピアラン・スリテンション形試験機を用いた。概略を図1に示す。
【0045】
評価用繊維布帛を取り付けた試料ホルダーを、ホルダー支柱に取り付け、下部の摩擦板をはずして取り付けた化粧品およびまたは人工皮脂を付着させた人工皮革に接触させる。また、該試験機の試料ホルダーには直径4.0cmにカットした化粧用パフをのせ、さらに12×12cmにカットした繊維布帛を試料ホルダーにリングではめ込み、さらにホルダー支柱に取り付けた。この時の押圧荷重は0.3N/cmであった。
【0046】
下部の摩擦板をはずして取り付けた化粧品および/または人工皮脂を付着させた人工皮革と接触させながら5回の回転運動により、一定量塗布した化粧品および/または人工皮革と繊維布帛を摩擦した。
【0047】
評価用繊維布帛に移った化粧品および/または人工皮脂の程度を、JIS L 0805 汚染用グレースケールで判定した。
【0048】
評価用繊維布帛に移った化粧品および人工皮脂は、均一に塗布され、判定しやすかった。
【0049】
次に、該繊維布帛を家庭用洗濯機で、洗濯し、洗濯後の化粧品の落ちやすさ(汚染の落ち方)を評価した。
【0050】
洗濯条件としては、繊維布帛が250gで温水の量が25L(浴比1:100)とした。洗剤は弱アルカリ性洗剤を使用し、その量は1g/L(25g/25L)であった。40℃×5分で洗い、脱水30秒、水道水ですすぎを2分×1回(オーバーフロー)、脱水30秒、水道水ですすぎを2分×1回(オーバーフロー)、脱水は15秒した後、吊り干し乾燥した。
【0051】
乾燥後の繊維布帛をJIS L 0805 汚染用グレースケールで判定した場合でも、輪郭のみ濃い状態になったり、塗布した円状の内面部がムラ状になることもなく判定しやすかった。
【0052】
[実施例2]
繊維布帛及び人工皮革は実施例1と同じ試料を使い、口紅の評価を実施した。
【0053】
20℃・65%RHの温度・湿度調整している部屋で、この人工皮革の試料の各1枚の重量を測定した。次に、赤色口紅(ピエヌゴールデンリップフィニッシュ、(株)資生堂製)0.2mg/cmを直径7cmの円形状に均一に塗布した(人工皮脂は混用しなかった。)。人工皮革と塗布した口紅の重量から、人工皮革の重量を引いた重さが0.2mg/cmとなるように調整した。
【0054】
実施例1と同様に、アピアランス・リテンション形試験器で試料に口紅を均一に塗布できた。繊維布帛に移った口紅は、均一に塗布され、判定しやすかった。
【0055】
[比較例1]
試験装置および摩擦条件以外は実施例1と同様にして、ファンデーション(プラウデアオークル30、(株)資生堂製)による評価を実施した。
試験装置はJIS L 0849−1996 摩擦に対する染色堅ろう度試験法に記載の4.(1.2)摩擦試験機II形(学振形)を用い、水平往復運動による接触で評価測定した。すなわち、試験台上に、たて方向23cmよこ方向3cmにカットした人工皮革の中央部分にたて方向10.5cm、よこ方向2cmの長方形内にファンデーションを塗布した。この時の塗布量は実施例1と同様である。摩擦子の先端に試料を取り付け、2Nの荷重で人工皮革の10cm間を毎分30回往復の速度で5回往復摩擦した。
【0056】
繊維布帛に付着した化粧品および人工皮脂は輪郭がはっきりでていることと、水平往復運動のため長方形に付着していて長さ方向にムラがあるため、判定しにくかった。
【0057】
[比較例2]
試験装置および摩擦条件以外は実施例1と同様にして、ファンデーション(プラウデアオークル30、(株)資生堂製)による評価を実施した。
【0058】
直径3.0cmのゴム栓の平らな部分にファンデーションを付着させ、その後該ゴム栓を評価用繊維布帛の上に置いて、指でゴム栓を90度回転させる方法で布帛に化粧品を塗布した。概略を図2に示す。
【0059】
しかしながらこの方法では、ゴム栓の直径が小さく化粧品および人工皮脂を一定の厚みで均一な量を付けることが難しく、ゴム栓の輪郭部分のみが非常に多く付着し、さらに円状の内面部分がムラ状になり、評価できなかった。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、化粧品が衣服に付着した場合の付きにくさや、付いても繰り返し洗濯による落ちやすさを容易に判断することでき、例えば衣料用布帛の選定において有用である。
【符号の説明】
【0062】
1:ホルダー支柱
2:試料ホルダ
3:化粧用パフ
4:評価用繊維布帛
5:人工皮革
6:支持台
7:ゴム栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品および/または人工皮脂を付着した人工皮革と、ホルダーに取り付けた繊維布帛とを荷重をかけながら接触偏心回転運動させた後、該繊維布帛の表面の色が化粧品および/または人工皮脂で変化した状態を汚染用グレースケールで判定する化粧品汚染性能評価の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−185671(P2010−185671A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28163(P2009−28163)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)