説明

化粧料の成型装置および成型方法

【課題】化粧料の容器中にある中皿に化粧料の一部を装填するに際し、当該中皿の奥まで装填することができるようにする。
【解決手段】当該成型装置1に対する装填部3aの相対位置を変えることにより、装填部3aが中皿に装填される際に容器の一部と当該成型装置1の一部とが干渉するのを回避可能とした段部8が形成されている。当該成型装置1は、装填部3a以外の少なくとも一部を成型する第1の金型4と、該第1の金型4に着脱可能であり化粧料3のうち少なくとも装填部3aを成型する第2の金型5と、第1の金型4と化粧料3との間に設けられる弾性を有するモールド6からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の成型装置および成型方法に関する。さらに詳述すると、本発明は口紅等の棒状化粧料を成型する装置の構造の改良、さらにはこの成型装置を用いた成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅など成型した化粧料の一部を容器内の中皿に取り付けて出し入れ可能とし、例えばダイヤルを回すことによって当該容器からの突出量を調整できるようにした化粧品が知られている。
【0003】
従来、このような化粧料を所定の形状(例えば棒状ないしはスティック状)に成型するための手法としては、金型(メタルモールド)を使って行う成型手法が多く利用されている。この場合、当該金型内に形成されたキャビティに溶融状態の化粧料を充填し、固化させることによって所定形状となった化粧料を得る(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば上述のようにして所定形状とした化粧料の一部を中皿に装填する際、構造によっては容器の先端と金型とが干渉してしまい、当該化粧料の一部(例えば本体部以外の部分からなる装填部)を中皿の奥まで装填することができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、化粧料の容器中にある中皿に化粧料の一部を装填するに際し、当該中皿の奥まで装填することができるようにした化粧料の成型装置および成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。例えば棒状(スティック状)に形成される口紅等の化粧料は、塗りやすさやデザイン等を考慮してその先端が斜めにカットされた形状となっているものが多い。また、例えば口紅を大まかに分類すると、砲弾型と呼ばれるタイプおよびこれより細身のスリム型と呼ばれるタイプの2種類に分けることができるが、このうち特にスリム型の場合には、化粧料自体が細身であっても使用者が塗りやすいように、さらにはデザインも考慮して、当該化粧料の先端形状に合わせて容器の先端をも斜めにカットしている場合がある。
【0007】
また、化粧料の一部を中皿に装填する際には、分離可能なモールドで成型された化粧料のうち細径とされた装填部のモールドを取り外して露出させ、当該装填部が中皿に装填されるように容器を当該化粧料の方へと押し込むという手法が採用されている。ところが、上述したように容器の先端が斜めにカットされた形状になっていると、当該先端部分と他のモールド(例えば下型やラバーモールド)とが干渉してしまう結果、化粧料の装填部を中皿の奥まで装填することが困難となる場合がある。一方で、容器や化粧料自体の先端を斜めにカットすることは上述したような使用者にとっての塗りやすさやデザインの面で重要なものであるから、このような形状であることを前提としつつモールドの構造を改良することにより中皿の奥まで化粧料の一部を装填できるようにすることが好適だと考えられた。
【0008】
以上のような着想の下、モールドの構造に着目してさらに検討を重ねた本発明者はかかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づくものであり、容器に収容可能な棒状の化粧料を成型する際、該化粧料の一部を前記容器中の中皿に装填可能な装填部として成型する成型装置であって、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と当該成型装置の一部とが干渉するのを回避するための段部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この成型装置の一部(例えば装填部を成型するための型、あるいはこれと別の型)に形成されている段部は、例えば容器先端と干渉する可能性のある型から装填部を遠ざけ、あるいは容器先端が入り込むスペースないしは隙間を形成するなどし、装填部が中皿に装填される際に容器の一部と当該成型装置の一部とが干渉するのを回避する。これによれば、化粧料の容器中にある中皿に化粧料の一部を装填するに際し、当該中皿の奥まで装填することが可能となる。
【0010】
前記段部は、例えば、当該成型装置に対する前記装填部の相対位置を変えるように形成されているものである。この段部は、装填部の相対位置をさらに容器寄りにするもの、別の表現をすれば、装填時に容器先端と干渉する可能性のある型(モールド)から装填部を遠ざけるものである。こうした場合、装填部が中皿に装填される際、容器の一部(例えば容器の先端部分)と当該成型装置の一部(例えば下型)とが干渉するのを回避することができるから、化粧料の一部(装填部)を中皿の奥まで装填することが可能となる。
【0011】
この場合、前記段部は、前記化粧料の本体部と前記装填部との境界部分に段差を形成するものとなっている。通常、中皿に装填される装填部は本体部よりも径が細くなっている。本発明にかかる成型装置の段部によれば、このような径の差異に基づく段差を本体部と装填部との間に形成することができる。
【0012】
また、本発明にかかる当該成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とで構成されており、前記第2の型には、当該第2の型に対する前記装填部の相対位置を変え、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と前記第1の型とが干渉するのを回避する前記段部が形成されているものである。このような成型装置の場合、第1の型に第2の型を取り付け、両者の内部に形成されるキャビティに化粧料を充填し、固化後に第2の型を取り外し、これによって装填部を露出させた状態とする。その後、化粧料に被せるようにして容器を押し込み、中皿に装填部が装填されるようにする。この際、型に形成されている段部が、当該成型装置に対する装填部の相対位置を変えており、装填部が中皿に装填される際に容器の一部と第1の型とが干渉することを回避できるようにしている。したがって、この成型装置によって成型された化粧料は、その装填部が中皿の奥まで装填されうるようになっている。
【0013】
この場合、前記第1の型と前記第2の型の境界面のうち、少なくとも前記化粧料との境界を含む部分が傾斜していることも好ましい。上述のように第1の型と第2の型とで形成したキャビティに化粧料を充填して成型を行う際、当該化粧料の外周に、当該第1の型と第2の型との境界に沿った境界線(線状の跡)が残る場合がある。この点、本発明では両型の境界面のうち化粧料との境界を含む部分が傾斜しているから、境界線(線状の跡)もこれに沿うようにして傾斜したものとなる。例えば容器の先端が上述のように斜めにカットされた形状となっている場合、化粧料の外周の境界線をこのように傾斜させれば、容器先端に隠れるようにして目立たなくすることができる。この場合、前記傾斜部は、前記容器の先端の斜度に合わせて形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記段部は、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部が入り込む凹部によって形成されていてもよい。当該凹部によってスペースないしは隙間が形成され、当該スペースに容器の一部を入り込ませることが可能となるから、その分、干渉を避けつつ当該容器をさらに深く押し込むことができる。したがって、化粧料の装填部が中皿に装填される際、容器の一部(例えば容器の先端部分)と当該成型装置の一部(例えば下型)とが干渉するのを回避しつつ、化粧料の一部(装填部)を中皿の奥まで装填することが可能となる。
【0015】
また、本発明において、当該成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とからなり、前記第2の型には、前記第1の型に形成された前記凹部に嵌合する凸部が形成されたものとなっている。このような成型装置の場合、第1の型に第2の型を取り付け、両者の内部に形成されるキャビティに化粧料を充填し、固化後に第2の型を取り外し、これによって装填部を露出させた状態とする。その後、化粧料に被せるようにして容器を押し込み、中皿に装填部が装填されるようにする。この際、第1の型には、容器の一部が入り込むことが可能な凹部が形成されているから、装填部が中皿に装填される際に容器の一部と第1の型とが干渉することを回避することが可能となっている。また、第2の型に形成されている凸部は、型どうしを取り付けた際に第2の型の凹部に嵌合し、当該凹部に化粧料が充填されるのを防ぐように機能する。
【0016】
この場合、前記凹部は、前記容器の先端の斜度に合わせて傾斜した形状に形成されていることが好ましい。容器の先端が斜めにカットされた形状となっている場合に、当該先端部分をこのような凹部に入り込ませることができる。
【0017】
このような成型装置において、前記第1の型は、前記化粧料が充填される弾性を有するモールドと、該弾性を有するモールドが装着される金型とで構成されていることが好ましい。弾性を有するモールドは例えばシリコンゴム等からなるラバー製のモールドである。柔らかい材質の化粧料を成型する場合、ラバーモールドといったような弾性を有するモールドを介在させた状態で成型を行うことが好適である。また、このようにラバーモールド等を介在させて行う成型手法によれば、外観が綺麗になり、尚かつデザイン性に富む化粧料を成型することが可能になるという利点もある。したがって、常温において固形状の性状を有している化粧料に適用して好適であり、さらには、通常の金型では困難な形状の化粧料を成型することが可能になるという利点もある。本発明によれば、このように柔らかい材質の化粧料、外観が綺麗な化粧料、デザイン性に富む化粧料を成型することが可能となり、尚かつ、成型の際に容器の一部とモールドの一部(例えばラバーモールド)とが干渉するのを回避することができる。
【0018】
ここまで説明したような成型装置は、例えば口紅等のスティック状の化粧料を成型するための装置として好適である。
【0019】
また、本発明は、容器に収容可能な棒状の化粧料を成型する際、該化粧料の一部を前記容器中の中皿に装填可能な装填部として成型する化粧料の成型方法であって、請求項1から12のいずれかに記載の化粧料の成型装置を用い、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と当該成型装置の一部とが干渉するのを回避しつつ前記化粧料を成型するというものである。
【0020】
上述したような成型装置を用いることにより、装填部の相対位置をさらに容器寄りにする、別の表現をすれば、装填時に容器先端と干渉する可能性のある型(モールド)から装填部を遠ざけることができる。これによれば、装填部が中皿に装填される際、容器の一部(容器の先端部分)と当該成型装置の一部(例えば下型)とが干渉するのを回避することができるから、化粧料の一部(装填部)を中皿の奥まで装填することが可能となる。
【0021】
また、本発明の成型方法において、前記成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とからなり、前記第1の型は、前記化粧料が充填される弾性を有するモールドと、該モールドが装着される金型とで構成されたものとなっている。この成型方法では、まず第1の型に第2の型を取り付け、両者の内部に形成されるキャビティに化粧料を充填し、固化後に第2の型を取り外し、これによって装填部を露出させた状態とする。その後、化粧料に被せるようにして容器を押し込み、中皿に装填部が装填されるようにする。この際、型に形成されている段部が、当該成型装置に対する装填部の相対位置を変えており、あるいは容器先端が入り込むスペースないしは隙間を確保しており、装填部が中皿に装填される際に容器の一部と装置の一部とが干渉することを回避できるようにしている。したがって、この成型方法によって成型された化粧料は、その装填部が中皿の奥まで装填されうるようになっている。しかも、ラバーモールドといった弾性を有するモールドを用いるこの成型方法によれば、柔らかい材質の化粧料、外観が綺麗な化粧料、デザイン性に富む化粧料を成型することが可能である。
【0022】
さらに本発明にかかる成型方法では、前記第1の型に前記第2の型を取り付け、前記弾性を有するモールドの内部に形成されたキャビティに前記化粧料を充填し、固化後、前記第2の型を取り外し、露出した前記装填部を前記容器の中皿に対して相対的に装填し、装填後、前記化粧料の本体部を前記弾性を有するモールドから抜き出すようにしている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、化粧料の容器中にある中皿に化粧料の一部を装填するに際し、当該中皿の奥まで装填することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1〜図8に本発明にかかる化粧料の成型装置および成型方法の一実施形態を示す。この成型装置1は、容器2に収容可能な棒状の化粧料3を成型する際、該化粧料3の一部を容器2中の中皿2aに装填可能な装填部3aとして成型するための装置である。本実施形態においては、当該成型装置1に対する装填部3aの相対位置を変えることにより、装填部3aが中皿2aに装填される際に容器2の一部と当該成型装置1の一部とが干渉するのを回避可能とした段部8を形成することとしている。
【0026】
以下に示す実施形態では、化粧料3の一例として棒状(スティック状)の口紅に本発明を適用する場合について説明する。ただしここで示す口紅は化粧料3の一例に過ぎず、これ以外にも、コンシーラー、ファンデーション、アイブロウ、アイライナー、アイシャドゥ、マスカラ、チーク、マニュキュア、ペディキュア、リップクリームといった種々の化粧品における棒状の化粧料3に本発明を適用することが当然に可能である。
【0027】
容器2は化粧料3を収容する部材であり、例えば棒状の化粧料3を収容する本実施形態の場合には先端のみ開口した筒状に形成されている(図7等参照)。また、この筒状の小径部(図8において符号2bで示す)の基端側には、これよりも太い大径部(図8において符号2cで示す)が形成されている。小径部2bと大径部2cとは相対的に回転することが可能な構造となっている。容器2の開口した先端部分(小径部2bの先端部分)は、化粧料3が細身である場合にも塗りやすく尚かつデザイン性も向上させうるように斜めにカットされている。なお、化粧料3の使用時以外には、当該化粧料3を引っ込めた状態で小径部2bにキャップ(蓋容器)9を被せることができるようになっている。このキャップ9は、被せられたときに大径部2cと一体化した形状となるように当該大径部2cと等しい外径に形成されている(図8参照)。
【0028】
また、この容器2の内部には、化粧料3の一部(具体的に装填部3a)が装填された状態で当該化粧料3を保持する中皿2aが設けられている(図7等参照)。この中皿2aは容器2の内部を軸方向に移動可能に設けられており、これによって化粧料3を容器2の先端部分(開口端)から所望量だけ出したりあるいは引っ込めたりすることができるようになっている。特に図示していないが、中皿2aを軸方向に移動させるための機構は例えばねじ機構や螺旋構造の円筒カム機構などによって構成されており、容器2の小径部2bと大径部2cとの相対回転量に応じた分だけ当該中皿2aが容器2内を移動するようになっている。
【0029】
成型装置1は、上述した容器2に収容可能な棒状の化粧料3を成型する装置である。例えば本実施形態の場合、第1の金型4と該第1の金型4に着脱可能な第2の金型5という分離可能なモールドからなる割型によってこの成型装置1を構成している(図1等参照)。
【0030】
第1の金型4は例えば割型のうちの下型として用いられている(以下、単に下型ともいう)。本実施形態における下型4は中央部分に凹部が設けられており、化粧料3のうち装填部3a以外の部分、すなわち実際に化粧料3として使用される部分(本明細書ではこの部分を本体部3bという)の少なくとも一部を成型する。
【0031】
第2の金型5は上述した下型4に対し着脱可能な上型として用いられている(以下、単に上型ともいう)。本実施形態における上型5は中央部分に透孔が設けられており、その上部開口から溶融状態の化粧料3が充填されるようになっている(図3参照)。下型4に設けられている凹部、および上型5に設けられている透孔によって成型用のキャビティ7の少なくとも一部が形成される。
【0032】
なお、上述した下型4と上型5の2つのモールドを用いて化粧料3を成型することも可能であるが、本実施形態においては弾性を有するモールド6を下型の一部としてさらに用いることとしている。このような弾性を有するモールド6の材質は特に限定されるものではないが、例えば本実施形態ではシリコンゴムからなるラバー製のモールド(以下、ラバーモールドともいう)を、下型4と化粧料3との間に介在するように配置している(図3等参照)。ラバーモールド6等は、成型時に適度な弾性を発揮しうることから特に柔らかい材質の化粧料3を成型する場合に好適である。また、このようにラバーモールド6等を介在させて行う成型手法によれば、成型対象たる化粧料3の外観が綺麗になり、尚かつデザイン性に富む化粧料3を成型することが可能になるという利点もある。さらには、成型後において成型品(化粧料3)を離型させやすい場合もある。
【0033】
本実施形態のラバーモールド6は、上述した下型4の凹部(透孔)に嵌め込み可能な外径であり、一方の端部のみが開口した底付きの略筒状に形成されている。開口端側には、下型4の凹部に引っ掛かる大きさのフランジ部6aが設けられている。また、キャビティ7を形成する底部内側は傾斜面6bで構成されており、化粧料3の先端部分が斜めに成型されるようにしている(図2等参照)。
【0034】
また、ラバーモールド6は、その内径が、上型5の凹部のうち大径部(図2において符号5bで示す)における内径と等しくなるように形成されていることが好ましい(図2等参照)。本実施形態の成型装置1の場合には、ラバーモールド6およびこの大径部5bの両方によって化粧料3の本体部3bが成型されることから、両者の内径が等しくなっていれば当該本体部3bの外径が均一となるよう成型することが可能となる。
【0035】
なお、特に図示していないが、このラバーモールド6および下型4には、ラバーモールド6を位置決めするとともにその状態を保持する位置決め手段が設けられていることが好ましい。このような位置決め手段によれば、本実施形態のように先端部分が斜めの化粧料3を成型してさらに容器2へと装填する場合に、当該容器2に対する化粧料3の相対的な向きを一律に揃えることが可能となる。位置決め手段は、例えば、下型4の上部開口端の周囲に設けられた少なくとも1本のピンと、これらピンが嵌まり込むようにフランジ部6aに設けられた凹部とで構成することができる。
【0036】
また、上述したように、この成型装置1においては当該成型装置1に対する装填部3aの相対位置を変える段部8が形成されている。この段部8は、化粧料3の装填部3aが中皿2aに装填される際、容器2の一部と当該成型装置1の一部とが干渉するのを回避可能とするためのもので、例えば本実施形態の場合には、上型5の凹部の途中に形成されている(図1等参照)。上型5の凹部は小径部5aとこれよりも大きい大径部5bとからなり、これらのうち小径部5aは化粧料3の装填部3aを、大径部5bは本体部3bの一部をそれぞれ成型する。本実施形態の段部8はこれら小径部5aと大径部5bとの間に形成される段差部分であり、化粧料3の本体部3bと装填部3aとの境界部分に段差を形成する。
【0037】
ここで、より具体的に説明すると、本実施形態の段部8は、当該段部8からラバーモールド6の上面(または下型4の上面)までの距離が、装填時における中皿2aから容器2の先端までの距離よりも大きくなるような位置に形成されている(図6等参照)。例えば従前の一般的な型の場合には、下型4と上型5の境界がすなわち段差部分であり、下型4で化粧料3の本体部3bを、上型5で装填部3aをそれぞれ成型するようになっている。これに対し、本実施形態の成型装置1の場合には、装填部3aの相対的な位置をさらに容器2寄りにし、下型4から遠ざけることとして装填に要する深さを確保しているので、装填部3aが中皿2aに装填される際、容器2の一部(容器2の先端部分)と当該成型装置1の一部(例えばラバーモールド6の上面または下型4の上面)とが干渉するのを回避することができる。したがって、化粧料3の一部(装填部3a)を中皿2aの奥まで装填することが可能となる(図6等参照)。
【0038】
続いて、上述のような成型装置1を用いた場合の成型の手順の一例を図に沿って説明する。
【0039】
まず、下型4の凹部(透孔)にラバーモールド6を嵌め込んだ状態で上型5を下型4に取り付ける(図1、図2参照)。この時点で、上型5とラバーモールド6との内部には成型用の空間となるキャビティ7が形成される。
【0040】
次に、成型装置1に化粧料を充填する。例えば本実施形態では、充填用のノズル10を用い、上型5の上部開口からキャビティ7に向けて溶融状態の化粧料3を当該上部開口のあたりまで充填することしている(図3参照)。充填が完了したら、例えばラバーモールド6の底部に冷風を吹き付け、あるいは下型4の下部をチラー水で冷却する等によって化粧料3を冷却して固化させる(図4参照)。また、本実施形態では、これと併せて上型4の上方から化粧料3の装填部3aに向けて温風を吹き付けることとしている。これによれば、冷却に伴う化粧料3の収縮口(冷却によって変形した化粧料3の端面部分)の形状を修正してから固化させることができる。
【0041】
化粧料3が固化したら、下型4に取り付けられていた上型5を取り外す。これにより、化粧料3の装填部3aが露出した状態となる(図5参照)。
【0042】
その後、化粧料3に被せるようにして容器2を倒立姿勢で押し込む(図6参照)。これにより、化粧料3の装填部3aが中皿2aへと装填される。ここで、上述したように本実施形態の成型装置1においては上型5に形成されている段部8が装填部3aの相対位置を容器2寄りに変えており、装填部3aが中皿2aに装填される際に容器2の一部と下型4とが干渉することを回避している。したがって、本実施形態の成型方法によれば、化粧料3の装填部3aを中皿2aの奥まで装填することが可能となっている。
【0043】
最後に成型品を抜き取る作業をする。ここでは容器2を倒立姿勢のまま上方へと移動させ、これによって化粧料3をラバーモールド6から抜き出す(図7参照)。上述のように装填部3aを中皿2aの奥まで装填することが可能な本実施形態によれば、このように化粧料3を抜き出す際、当該化粧料3と容器2との一体的な状態を保ちやすい。以上の成型手順により、装填部3aが中皿2aの奥まで装填された状態で容器2に収容された化粧料3を得ることができる(図8参照)。
【0044】
以上、ここまでの説明から明らかなように、本実施形態の成型装置1、およびこれを用いた成形方法によれば、化粧料3の容器2中にある中皿2aに当該化粧料3の一部(装填部3a)を装填するに際し、この中皿2aの奥まで装填することが可能となっている。例えば、現状においては塗りやすさやデザイン等の面で容器2や化粧料3自体の先端が斜めにカットされている場合があるのに対し、本実施形態では装填部3aを中皿2aの奥まで装填することが可能な形状の化粧料3を成型することができる。
【0045】
しかも、本実施形態においては化粧料3の成型後、上型4のみを取り外した状態で容器2を押し込み、装填部3aを中皿2aに装填することが可能となっている。化粧料3を成型する手法としては金型(メタルモールド)のみを用い、しかも成型後の化粧料3をモールドから取り出して容器2の中皿2aに装填するというものがあるが、本実施形態の手法によればこれと比較して手間や手順を簡素化しうるという利点がある。
【0046】
また、以上のような成型装置1や成型方法は、特にスリム型と呼ばれるタイプの細身の棒状化粧料3に適用して好適である。先細り形状であるいわゆる砲弾型の化粧料3の場合であれば当該化粧料3と容器2との間に隙間が形成されるのに対し、斜めにカットされた先端部分以外では径がほぼ一定となるスリム型の場合、当該化粧料3と容器との間には隙間がほとんど形成されない。この点、構造を改良した金型(下型4、上型5)を用い、尚かつ弾性を有するラバーモールド6も用いる本実施形態の成型装置1および成型方法は、比較的成型し難いこのようなスリム型の化粧料3に対して特に好適である。もちろん、スリム型のみならず上述したような砲弾型の化粧料3に適用しても好適であることはいうまでもない。
【0047】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では下型4と成型対象たる化粧料3との間にラバーモールド6を下型の一部として介在させることとしたが、これと同様にして上型5と化粧料3との間にもラバーモールド6を介在させることができる。この場合、上型5の凹部の全面にラバーモールド6を介在させてもよいし、あるいはその一部(例えば上型5の凹部のうちの大径部5b)にのみラバーモールド6を介在させてもよい。
【0048】
また、本実施形態では上型5の凹部内に内径の異なる小径部5aと大径部5bとを設けてこれらの境界の段差部分を段部8としたが、この段部8をラバーモールド6等の弾性を有するモールドで形成することも可能である。例えば、上述したように上型5の凹部のうちの大径部5bにのみラバーモールド6を介在させ、当該ラバーモールド6の縁を利用して段部8を形成することも可能である。
【0049】
また、本実施形態では下型4、上型5として金型を用いたがこれも一例に過ぎない。例えば、耐熱性の硬化樹脂などからなる型を下型4や上型5として用いることも可能である。
【0050】
さらに、上述した実施形態では下型4と上型5との境界面を水平かつ平坦な面としたが(図1等参照)、この境界面のうち、少なくとも化粧料3との境界を含む部分を傾斜させることとしてもよい(図9〜図11参照)。下型4(ラバーモールド6)と上型5とで形成したキャビティ7に化粧料3を充填して成型するに際し、当該化粧料3の本体部3bの外周に、下型4(ラバーモールド6)と上型5との境界に沿った境界線(線状の跡)が残る場合があるが、以下に示す第2の実施形態のような成型装置1によればこのような境界線が覆い隠されるような化粧料3を成型することが可能である。
【0051】
すなわち、下型4、上型5について、化粧料3との境界部分を含む型中央帯を傾斜面とする(図9、図10参照)。さらに、ラバーモールド6についてはフランジ部6aを含む上面をこれら下型4や上型5と同様に傾斜させる(図10等においては上型5、ラバーモールド6の各傾斜面を符号5s,6sで示している)。このような成型装置1の場合、下型4(ラバーモールド6)および上型5と化粧料3との境界が傾斜円(より詳しくは傾斜した楕円)形状となる。したがって、当該化粧料3の本体部外周の境界線(図9等において符号3cで示している)も同じく傾斜円(傾斜楕円)の形となる(図9、図10参照)。スリム型口紅のように容器2の先端が斜めにカットされた形状となっている場合、境界線3cの相対的な位置にもよるが、当該化粧料3(装填部3a)を容器2(中皿2a)に装填した際、当該境界線3cを容器2の先端に隠れるようにして目立たなくすることが可能である(図11参照)。この場合、境界線3cが容器2の先端に一致するよう、各傾斜面5s,6sの斜度を容器先端の斜度に合わせていることが好ましい。
【0052】
なお、ここでは各傾斜面(例えば傾斜面5s,6s)が平面である場合を例示したが(図10等参照)、曲面とすることも可能である。要は、化粧料3の本体部3bの外周に残りうる境界線3cは、下型4(ラバーモールド6)および上型5と当該化粧料3との境界がどのような形になっているかで定まるものであるから、当該境界を所望の形にしうるものであれば傾斜面は平面であっても曲面であっても構わない。
【0053】
また、ここまでは段部8が当該成型装置1における装填部3aの相対位置を変えるものである場合について説明したが、容器2の先端と下型4(ラバーモールド6)との干渉を回避するという観点からすれば、段部8を他の形態とすることが可能である。以下、第3の実施形態として一例を説明する(図12〜図14参照)。
【0054】
本実施形態における段差8は、装填部3aが中皿2aに装填される際に容器2の一部が入り込むことのできる凹部8aによって形成されている(図13等参照)。このような凹部8aによれば当該スペースないしは隙間に容器2の一部を入り込ませることが可能となるから、例えば下型4やラバーモールド6と干渉するのを避けつつ当該容器2をさらに深くまで押し込むことができるようになる。したがって、容器2の先端部分とラバーモールド6等とが干渉するのを回避しつつ、化粧料3の装填部3aを中皿2aの奥まで装填することが可能となる。
【0055】
例えば本実施形態では、ラバーモールド6の上面のうち容器2の先端部分と干渉しうる部分に凹部8aを形成している。また、本実施形態の凹部8aは、容器2の先端の斜度に合わせて底面が傾斜した形状となっている(図13参照)。
【0056】
さらに本実施形態では、このような凹部8aに嵌合する形状の凸部8bを上型5に形成している(図12等参照)。この凸部5tは、下型4に上型5が取り付けられた状態で当該凹部8aに嵌合し、化粧料3がこの凹部8aにまで充填されるのを防ぐように機能する。また、本実施形態の凸部8bは、容器2の先端の形状および斜度に合わせ、切り口が斜めである円筒形状のように傾斜した形状に形成されている(図13参照)。
【0057】
第3の実施形態として説明した以上のような成型装置1においても、他の実施形態における場合と同様、容器2の中皿2aに化粧料3の一部(装填部3a)を装填するに際し、この中皿2aの奥まで装填することが可能である。また、本実施形態の場合には化粧料3の本体部3bの外周に境界線が残るようなことがないから、境界線が目立つといったことを考慮する必要がないという点で好ましい(図14参照)。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態における化粧料の成型装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】下型に上型を取り付けた状態を示す成型装置の断面図である。
【図3】キャビティに化粧料を充填する様子を示す成型装置の断面図である。
【図4】冷却に伴う収縮口を修正しながら化粧料を冷却する様子を示す成型装置の断面図である。
【図5】下型から上型を取り外した様子を示す成型装置の断面図である。
【図6】化粧料に被せるようにして容器を倒立姿勢で押し込み、装填部を中皿へと装填する際の様子を示す図である。
【図7】容器を倒立姿勢のまま上方へと移動させて化粧料をラバーモールドから抜き出す際の様子を示す図である。
【図8】成型後の化粧料を容器に収容した化粧品(スリム型の口紅)の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態において、下型に上型が取り付けられた状態でキャビティに化粧料が充填されたときの様子を示す成型装置の断面図である。
【図10】下型から上型を取り外した様子を示す成型装置の断面図である。
【図11】化粧料に被せるようにして容器を倒立姿勢で押し込み、装填部を中皿へと装填する際の様子を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態において、下型に上型が取り付けられた状態でキャビティに化粧料が充填されたときの様子を示す成型装置の断面図である。
【図13】下型から上型を取り外した様子を示す成型装置の断面図である。
【図14】化粧料に被せるようにして容器を倒立姿勢で押し込み、装填部を中皿へと装填する際の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1…成型装置、2…容器、2a…中皿、3…化粧料、3a…装填部、3b…本体部、4…下型(第1の金型)、5…上型(第2の金型)、6…ラバーモールド(弾性を有するモールド)、7…キャビティ、8…段部、8a…凹部(段部)、8b…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容可能な棒状の化粧料を成型する際、該化粧料の一部を前記容器中の中皿に装填可能な装填部として成型する成型装置であって、
前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と当該成型装置の一部とが干渉するのを回避するための段部が形成されている
ことを特徴とする化粧料の成型装置。
【請求項2】
前記段部は、当該成型装置に対する前記装填部の相対位置を変えるものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料の成型装置。
【請求項3】
前記段部は、前記化粧料の本体部と前記装填部との境界部分に段差を形成するものであることを特徴とする請求項2に記載の化粧料の成型装置。
【請求項4】
当該成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とで構成されており、前記第2の型には、当該第2の型に対する前記装填部の相対位置を変え、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と前記第1の型とが干渉するのを回避する前記段部が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の化粧料の成型装置。
【請求項5】
前記第1の型と前記第2の型の境界面のうち、少なくとも前記化粧料との境界を含む部分が傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の化粧料の成型装置。
【請求項6】
前記傾斜部は、前記容器の先端の斜度に合わせて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の化粧料の成型装置。
【請求項7】
前記段部は、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部が入り込む凹部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料の成型装置。
【請求項8】
当該成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とからなり、前記第2の型には、前記第1の型に形成された前記凹部に嵌合する凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の化粧料の成型装置。
【請求項9】
前記凹部は、前記容器の先端の斜度に合わせて傾斜した形状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の化粧料の成型装置。
【請求項10】
前記第1の型は、前記化粧料が充填される弾性を有するモールドと、該弾性を有するモールドが装着される金型とで構成されていることを特徴とする請求項4〜6、8、9のいずれかに記載の化粧料の成型装置。
【請求項11】
前記弾性を有するモールドはラバー製のモールドであることを特徴とする請求項10に記載の化粧料の成型装置。
【請求項12】
前記化粧料は常温において固形状の性状を有しているものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の化粧料の成型装置。
【請求項13】
容器に収容可能な棒状の化粧料を成型する際、該化粧料の一部を前記容器中の中皿に装填可能な装填部として成型する化粧料の成型方法であって、
請求項1から12のいずれかに記載の化粧料の成型装置を用い、前記装填部が前記中皿に装填される際に前記容器の一部と当該成型装置の一部とが干渉するのを回避しつつ前記化粧料を成型することを特徴とする化粧料の成型方法。
【請求項14】
前記成型装置は、前記装填部以外の少なくとも一部を成型する第1の型と、該第1の型に着脱可能であり前記化粧料のうち少なくとも前記装填部を成型する第2の型とからなり、前記第1の型は、前記化粧料が充填される弾性を有するモールドと、該モールドが装着される金型とで構成されていることを特徴とする請求項13に記載の化粧料の成型方法。
【請求項15】
前記第1の型に前記第2の型を取り付け、前記弾性を有するモールドの内部に形成されたキャビティに前記化粧料を充填し、固化後、前記第2の型を取り外し、露出した前記装填部を前記容器の中皿に対して相対的に装填し、装填後、前記化粧料の本体部を前記弾性を有するモールドから抜き出すことを特徴とする請求項14に記載の化粧料の成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−23113(P2008−23113A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199825(P2006−199825)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)