説明

化粧料容器の衝撃緩衝構造

【課題】コンパクト容器の、部品点数の減少、組み立て工程の減少を図り、製造コストの低減を図る。
【解決手段】少なくとも一つの収納凹所3を有する容器本体1と、該容器本体1を開閉する蓋体とからなり、収納凹所3に化粧料を固形化して収納した中皿5を交換自在に収納し、中皿5と収納凹所との間に衝撃緩衝機構を配置すると共に、中皿5の上端を容器本体に取り付けた中皿保持枠7で保持し、該中皿保持枠7の中皿5の上端に当接する部分を弾力性を有する資材で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーション、アイカラー、頬紅等の固形化した化粧料を収納する化粧料容器に関し、特に固形化したパウダリーファンデーションのような衝撃に対して破損しやすい固形化化粧料容器の衝撃緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形化したパウダリーファンデーションのような固形化化粧料は、運搬中や落下時の振動や衝撃により、割れ、剥がれ、破損が生じやすいため、有効な衝撃吸収構造が求められている。通常、固形化化粧料は、中皿と称せられる容器に粉状態で充填され、プレスにより固化されて中皿に収納保持され、コンパクト容器の収納凹所に中皿と共に装填され、外部から付加される衝撃は、中皿とコンパクト容器との間に施された衝撃緩衝機構により吸収する構造となっている。
【0003】
従来公知の衝撃緩衝機構としては、中皿とコンパクト容器の底面間に、ゲル素材等からなる面状の衝撃吸収材を介在させたものが一般的である(特許文献1)。かかる面状の衝撃吸収材は、面と直交する方向からの衝撃に対しては有効であるが、面と平行な方向、すなわちコンパクト容器の側面方向からの衝撃に対しては、充分な衝撃吸収効果を期待することができなかった。そこで、本出願人等は、中皿の4隅部に球状のシリコーンゲルを介在させて中皿をフローティング状態とする構造により、コンパクト容器の底面のみならず、側面からの衝撃も効果的に吸収可能とする衝撃緩衝構造を提案した(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これら従来公知の衝撃緩衝構造は、いずれも化粧料を収納した中皿とコンパクト容器の蓋との間には、衝撃緩衝機構が施されていないため、中皿の上面から付加される衝撃を直接吸収することはできず、中皿を介して底面の衝撃吸収材で間接的に吸収するか、あるいは、中皿とコンパクト容器の蓋との間に配置されるパフで吸収している。
【0005】
また、中皿を収納凹所内に安定に保持するために、中皿を面状の衝撃吸収材に接着させているが、接着力が強すぎると中皿の交換に支障が生ずるため、特許文献1では孔あきのシート材を中皿と衝撃吸収シートとの間に挟み込んで、孔の面積により接着力を調整する構造も提案されている。特許文献2のような中皿の四隅部に球状のシリコーンゲルを介在させたフローティング構造では、中皿の上面はパフで保持するか、中皿の側面の係止爪を収納凹所の係止溝に係入して中皿の脱出を阻止している。
【0006】
中皿と衝撃吸収材との接着や、係止爪と係止溝との係止は、中皿の自由な揺動を阻害するため、充分な衝撃緩衝機能の発揮を妨げる要因となっている。また、パフで保持する構造では、パフを入れ忘れると中皿が収納凹所から抜け出すため、かえって化粧料の損傷を大きくする危険性があった。
【0007】
【特許文献1】特開2007−167341号公報
【特許文献2】特開2007−29234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、中皿の上端をコンパクト容器に取り付けた保持枠で保持し、中皿の揺動を抑制し、収納凹所内への中皿の保持を確実に達成しつつ、保持枠の弾力性により中皿に付加される衝撃を吸収して、中皿の上面方向からの衝撃による化粧料の破損等の不具合を防止すると共に、保持枠を硬質樹脂と弾力性樹脂との二種類の樹脂の一体成形品とすることにより、部品点数の減少、組み立て工程の減少を図り、製造コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、少なくとも一つの収納凹所を有する容器本体と、該容器本体を開閉する蓋体とからなり、収納凹所に化粧料を固形化して収納した中皿を交換自在に収納し、中皿と収納凹所との間に衝撃緩衝機構を配置すると共に、中皿の上端を容器本体に取り付けた中皿保持枠で保持し、該中皿保持枠の中皿の上端に当接する部分を弾力性を有する資材で構成したことを特徴とする。
【0010】
前記中皿保持枠は、容器本体に取り付けられる取付部と、中皿の上端に弾力的に当接する弾性部との二つの部分からなり、取付部を硬質樹脂とし、弾性部を弾力性を有する樹脂とし、両部分を一体成形したことを特徴とする。
【0011】
収納凹所に向かって延び出す中皿保持枠の弾性部の先端は、中皿の内周面と一致する位置で終端させ、中皿内周面と中皿保持枠との間に段差が生じないようにしたことを特徴とする。
【0012】
中皿と収納凹所との間に、球状のシリコーンゲルを介在させて、中皿をフローティング構造で収納凹所内に保持するようにしたことを特徴とする。
【0013】
中皿に収納される固形化化粧料が、機能性粉末を10%以上配合した粉末化粧料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、中皿の上端に当接する保持枠の一部を弾力性のある資材で形成して、保持枠の弾力的な変形により中皿に付加される衝撃を吸収するようにしてあるので、中皿の下部に配置された衝撃吸収構造と相俟って、コンパクト容器の下方、側方及び上方の4方向いずれの方向からの衝撃に対しても、効果的に吸収することができる。したがって、衝撃に弱いパウダリーファンデーションのような固形化化粧料の衝撃緩衝機構としてきわめて優れた構造を提供することができる。また、保持枠は、硬質の樹脂と弾力性樹脂との二種類の樹脂の一体成形で形成され、単一の部品として取り扱うことができるので、部品の製造、管理並びに組立が簡便で容易となり、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明にかかるコンパクト容器の開蓋状態の外観斜視図
【図2】保持枠を開放した状態の外観斜視図
【図3】開放した保持枠と中皿とを拡大して示す平面図
【図4】保持枠を閉じて中皿を保持した状態の拡大平面図
【図5】図4A−A’線に沿った縦断面図
【図6】一変形例の図4A−A’線に沿った縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しつつ、この発明の好ましい実施形態を説明する。図1、2はこの発明にかかる緩衝機構を組み込んだコンパクト容器を示し、二つの収納凹所(3)(4)を備えた容器本体(1)と、該本体(1)に回動自在に枢着され、本体の開放された上面を開閉する蓋体(2)とからなる。本体(1)の第1収納凹所(3)には、固形化した状態でパウダリーファンデーション等の固形化化粧料を収納する中皿(5)が収納され、第2収納凹所(4)には、パフ、ブラシ等の塗布具が収納される。蓋体(2)の内面には、鏡(6)が定着される。なお、容器本体(1)は、二つの収納凹所(3)(4)を有する構造としたが、これに限られるものではなく、収納凹所は単一であっても良いことは勿論である。
【0017】
中皿(5)の底面と第1収納凹所(3)との間には、中皿(5)の4隅部に位置して球状のシリコーンゲル(10)を介在させて、フローティング構造の衝撃緩衝機構を設けている。なお、衝撃緩衝構造は、かかる球状のシリコーンゲルによるフローティング構造に限定されるものではなく、シート状の衝撃吸収材による衝撃緩衝構造であっても良いことは勿論であるが、この場合衝撃吸収シートと中皿は接着する必要はない。
【0018】
かかるフローティング構造は、前記特許文献2に開示の構造が好適である。すなわち、球状のシリコーンゲルは、シロキサン結合の特性から変形容易でしかもクリープ性が小さく、耐熱性が大きくて熱的に安定であり、化学的な安定性が高く、光透過率が90%以上の高い透明性を容易に得られ、屈折率の調整やその分布の調整が容易であり、若干のタック性により、中皿のずれを防ぐのに役立っている。
【0019】
シリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているものを適宜選択して用いることができる。加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができる。シリコーンゲルは、硬化後におけるJIS K2207−1980(50g荷重)の針入度が10〜120であることが好ましく、より好ましくは20〜100である。球状シリコーンゲルの直径は、3.0〜10.0mmが好ましく、より好ましくは5.0〜8.0mmである。
【0020】
図において(7)は、中皿保持枠であって、第1収納凹所(3)の周辺部の形状に倣った方形枠形状を有し、一側部が本体(1)に回動自在に枢着され、対向する他側部には、本体(1)の係止爪(9)に係止するラッチ(8)が設けられており、中皿(5)の上端に当接し、中皿を保持しつつ本体(1)に係着される。中皿保持枠(7)を中皿保持位置(図1の位置)から、外方に開放(図2の位置)するとき、中皿(5)の保持が解除され、中皿(5)を収納位置から取り出して、新しいレフィル用中皿と交換できる。中皿保持枠(7)は、確実な保持機能を発揮するための硬質の樹脂部分と中皿の上端を弾力的に保持し、あるいは蓋体の鏡との当接を弾力的に緩衝する弾力性を有する樹脂部分との2種類の樹脂部分を一体に成形した単一の部品として構成されている。
【0021】
図5を参照して、中皿保持枠(7)の取付部(7a)は、硬質樹脂、例えばABS樹脂で形成され、弾性部(7b)は、弾力性樹脂、例えばポリエステル系エラストマーで形成される。取付部(7a)と弾性部(7b)は、先ず取付部(7a)を成形した後、弾性部(7b)をインサート成形により取付部に一体化して、単一の部品として成形される。取付部(7a)は、中皿保持枠(7)を容器本体(1)の第1収納凹所(3)周辺に装着するための剛性部分であり、本体との軸支部(11)と係止用ラッチ(8)を備えている。弾性部(7b)は、第1収納凹所(3)の周辺から内方に張り出して、中皿(5)の上端に当接する弾性当接部(12)と、鏡との弾性当接を果たす弾性突起部(13)を有している。中皿(5)の上端に当接する弾性当接部(12)は、中皿(5)の内周面と一致する長さで終端しており、中皿(5)と弾性当接部との間に段差が生じないようにされ、中皿(5)の化粧料をパフで取るときに化粧料が弾性当接部の下面に残存しないように工夫されている。
【0022】
図5のリブ(14)は、中皿保持枠(7)を容器本体(1)に係着したとき、第1収納凹所(3)の内周に当接することによって、中皿保持枠(7)がコンパクト容器の側面方向にずれることを防止するためのものであるが、側面方向からの強い力によっては、リブが収容凹所(3)の内周を乗り越えてしまい、これにより中皿保持枠(7)が浮き上がり、中皿上端への圧力が不足して、中皿(5)の保持が不充分となる危険がある。
そこで、側面からの強い力に対しても、リブ(14)が第1収納凹所(3)の内周を乗り越えることが無いよう、リブ(14)を容器本体(1)の底面に向かって延長し、第1収納凹所(3)の内周に深く当接する形状とすることが望ましい。一方、軸支部(11)に近い部分のリブ(14)は、中皿保持枠(7)を容器本体(1)に係着する際、軸支部(11)を中心として回転しながら第1収納凹所(3)の内周に当接するため、延長したリブ(14)では、リブが容器本体(1)の上面と接触し、中皿保持枠(7)の容器本体(1)への係着が困難となる。また、中皿保持枠(7)は軸支によって固定されているため、軸支部(11)に近い部分では側面方向へずれる危険がないことから、この部分のリブ(14)は延長する必要性は少ない。このような観点から、図6は、リブ(14)の一変形例を示したものであり、図5のリブ(14)より、軸支部(11)に近い部分を除いた部分で、容器本体(1)の底面に向かって、約0.5mm延長し、軸支部(11)近傍においては、リブ(14)の延出量をテーパー(15)によって徐々に戻し、図5のリブ(14)と一致する延出量としたものである。これにより、中皿保持枠(7)の開閉操作に影響することなく、側面方向からの強い力による中皿保持枠(7)の浮き上がりを防止し、中皿(5)の保持を充分に達成することが出来る。また、図6のように、リブ(14)を容器本体(1)の底面に向かって延長することで、中皿保持枠(7)の剛性も向上することが出来る。
【0023】
中皿(5)に衝撃が付加され、中皿(5)が上下に揺動するとき、弾性当接部(12)の弾力的な変形と、球状のシリコーンゲル(10)の弾力的な変形とにより、中皿(5)の上下動が効果的に吸収、緩衝され、衝撃が化粧料に伝わるのを防止することができる。
【実施例】
【0024】
2箇所の収納凹所を有するコンパクト容器本体に、下記処方からなる固形化粉末化粧料を収納した中皿を装填し、取付部をABS樹脂で、弾性部をポリエステルエラストマーで一体成形した中皿保持枠と、球状のシリコーンゲルとで中皿を保持した化粧料容器を用意し、比較例として中皿保持枠に代わって、中皿の側面の係止爪を第1収納凹所の係止溝に係入して中皿の脱出を阻止する構造とし、その他の点を同じ構造とした化粧料容器を用意し、耐衝撃試験を行った。試験は、化粧料を倒立方向で繰り返し落下させ、中皿に充填した化粧料が割れて使用不能となるまでの落下回数をカウントする方法で行った。試験の結果、本発明の化粧料容器は14回であったのに対し、比較例の化粧料容器は7回であり、本発明の化粧料容器の衝撃緩衝構造の有効性を確認することができた。
【0025】
[処方例]

【0026】
上記処方の固形化粉末化粧料は、機能性粉末である調整粉末が10%以上配合されているので、衝撃により割れや破損等の損傷が発生しやすいが、この発明の衝撃緩衝機構により、かかる粉末化粧料の容器としてきわめて優れた効果を発揮しうるものであり、パウダリーファンデーションのような固形化化粧料の収納に好適な化粧料容器である。
【符号の説明】
【0027】
1 容器本体
2 蓋体
3 第1収納凹所
4 第2収納凹所
5 中皿
6 鏡
7 中皿保持枠
7a 取付部
7b 弾性部
8 ラッチ
9 係止爪
10 球状のシリコーンゲル
11 軸支部
12 弾性当接部
13 弾性突起部
14 リブ
15 テーパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの収納凹所を有する容器本体と、該容器本体を開閉する蓋体とからなり、収納凹所に化粧料を固形化して収納した中皿を交換自在に収納し、中皿と収納凹所との間に衝撃緩衝機構を配置すると共に、中皿の上端を容器本体に取り付けた中皿保持枠で保持し、該中皿保持枠の中皿の上端に当接する部分を弾力性を有する資材で構成したことを特徴とする化粧料容器の衝撃緩衝構造。
【請求項2】
中皿保持枠が、容器本体に取り付けられる取付部と、中皿の上端に弾力的に当接する弾性部との二つの部分からなり、取付部を硬質樹脂とし、弾性部を弾力性を有する樹脂とし、両部分を一体成形したことを特徴とする請求項1記載の化粧料容器の衝撃緩衝構造。
【請求項3】
収納凹所に向かって延び出す中皿保持枠の弾性部の先端を、中皿の内周面と一致する位置で終端させ、中皿内周面と中皿保持枠との間に段差が生じないようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料容器の衝撃緩衝構造。
【請求項4】
中皿と収納凹所との間に、球状のシリコーンゲルを介在させて、中皿をフローティング構造で収納凹所内に保持するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧料容器の衝撃緩衝構造。
【請求項5】
中皿に収納される固形化化粧料が、機能性粉末を10%以上配合した粉末化粧料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化粧料容器の衝撃緩衝構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−246890(P2010−246890A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249882(P2009−249882)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)