説明

化粧料容器

【課題】容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形してもなお、該係止片をスムーズに作動可能とするとともに蓋体の確実な開放を保障可能な化粧料容器を提案する。
【解決手段】化粧料容器1は、底壁7と周壁17とからなる容器本体3と、該容器本体3に合わさる蓋体5とを備える。周壁17は、蓋体5が連結される後側側壁9と後側側壁9に対向する前側側壁と後側側壁9および前側側壁11間をそれぞれつなぐ右側側壁13および左側側壁15とからなる。容器本体3の前側側壁11には、蓋体側係止片31と係合して蓋体5の閉姿勢を保持する容器本体側係止片35が一体に設けられている。前側側壁11と底壁7との間には、前側側壁11に沿って延び前側側壁11を底壁7から切り離すスリット37が設けられ、その両端部37a、37bはそれぞれ折り曲げられて右側側壁13と底壁7との間および左側側壁15と底壁7との間まで延設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファンデーションやアイシャドー等の化粧料を入れるのに適した化粧料容器に関し、とくには、蓋体に設けられた係止片と、容器本体に設けられ蓋体側の係止片と係止して蓋体の閉姿勢を保持する係止片とを有する化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部の収容空間にファンデーションやアイシャドー等の化粧料を入れるのに適した扁平な化粧料容器としては、従来、蓋体の係止片を容器本体の係止片に引っ掛ける(係止させる)ことで、蓋体の閉姿勢を保持するものが一般的であり、とくに、その係止構造としては、容器本体とは別体をなす操作部材に容器本体側の係止片を形成し、この操作部材を手前に揺動あるいは横にスライドさせることで、蓋体側の係止片との係止を解除するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64−6259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような操作部材を容器本体とは別体として設けたものにおいては、部品点数が増加するとともに、その組立作業も煩雑となるばかりか、操作部材の、枢支軸を起点とした破損も懸念され、さらに、見た目としてもすっきりしないものである。
【0005】
このような点に鑑み、容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形することも考えられるが、このようにした場合、該係止片の作動が硬くなり使用者に違和感を与えるばかりか、蓋体の確実な開放も保障されなくなるという問題がある。
【0006】
それゆえ、この発明は、このような問題を解決し、蓋体側の係止片に係止する容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形してもなお、該係止片をスムーズに作動可能とするとともに蓋体の確実な開放を保障することができる化粧料容器を提案することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の化粧料容器は、底壁と該底壁の周縁を取り囲む周壁とからなり内側に化粧料の収容空間を形成する容器本体と、前記容器本体に合わさって前記収容空間を閉塞する蓋体と、を備え、前記周壁が、前記蓋体が開閉可能に連結される後側側壁と該後側側壁に対向する前側側壁とこれらの後側側壁および前側側壁相互間をそれぞれつなぐ右側側壁および左側側壁とからなる化粧料容器であって、前記蓋体から前記容器本体の前記前側側壁に向けて蓋体側係止片を垂下するとともに、前記容器本体の前記前側側壁に、前記蓋体を前記容器本体に合わせた状態にて前記蓋体側係止片と係合して前記蓋体の閉姿勢を保持する容器本体側係止片を一体に設け、前記周壁の前記前側側壁と前記底壁との間に、該前側側壁に沿って延び前側側壁を前記底壁から切り離すスリット(隙間)を設けるとともに、該スリットの両端部をそれぞれ折り曲げて前記右側側壁と前記底壁との間および前記左側側壁と前記底壁との間まで延設したことを特徴とするものである。なお、ここでいう「後側」とは蓋体と容器本体とが連結される側を指し、「右側」とは前側側壁を正面として見たときの右側を指し、「左側」とは前側側壁を正面として見たときの左側を指すものとする。
【0008】
かかる化粧料容器にあっては、使用者が容器本体側係止片を一体に有する前側側壁を押し込むと、前側側壁と底壁との間に延びるスリットの両端部がそれぞれ右側側壁と底壁との間、および左側側壁と底壁との間まで延在することから、該前側側壁は、右側側壁および左側側壁の一端部を中央に向けて巻き込みながら弓なりに変形し、その結果、前側側壁は充分に撓んで、蓋体側係止片と容器本体側係止片との係合が解除される。
【0009】
したがって、この発明の化粧料容器によれば、蓋体側の係止片に係止する容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形してもなお、スリットを介した前側側壁の充分な撓み変形により容器本体側係止片をスムーズに作動可能とし、蓋体の確実な開放を保障することができる。また、前側側壁をスムーズに撓ませることができるので、前側側壁を押し込んだ際に前側側壁に作動ひずみ(クラッキング)が発生するのを防止することができる。
【0010】
なお、この発明の化粧料容器にあっては、前記蓋体から垂下する突片であって、該突片の下端に前記収容空間に向けて下がり勾配をなし、前記前側側壁を押し込んだ際に該前側側壁の上端と係合して前記蓋体を上方に押し上げる推力面を有する突片を設けることが好ましく、これによれば、前側側壁を押すと同時に蓋体を開くことができ、蓋体の開放操作をより簡単に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、蓋体側の係止片に係止する容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形してもなお、スリットを介した前側側壁の充分な撓み変形により容器本体側係止片をスムーズに作動可能とし、蓋体の確実な開放を保障することができる化粧料容器を提案することができる。また、前側側壁をスムーズに撓ませることができるので、前側側壁を押し込んだ際に前側側壁に作動ひずみ(クラッキング)が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明にしたがう一実施形態の化粧料容器の平面図である。
【図2】(a)は図1におけるA−A線に沿う断面を示す断面図であり、(b)は図1におけるB−B線に沿う断面を示す断面図である。
【図3】図1の化粧料容器において、蓋体を省略し容器本体を示す平面図である。
【図4】図1の化粧料容器の底面図である。
【図5】図1の化粧料容器において、容器本体の要部を示す斜視図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ、図1の化粧料容器において、蓋体の開放動作を示す、図2(b)と同様の断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1〜3に示すように、この実施形態の化粧料容器(コンパクト容器ともいう。)1は、ファンデーションやアイシャドー等の化粧料やパフ等の塗布具を収納する収容空間を形成する容器本体3と、容器本体3に合わさって容器を閉塞する蓋体5とを備え、これらの容器本体3および蓋体5は合成樹脂製であり、とくには適度な剛性を有しつつも曲げ疲労性に優れたABS樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
容器本体3は、とくに図2(a)、(b)に示すように、矩形の底壁7と該底壁7の周縁を取り囲むとともに底壁7と協働して内側に上記収容周壁を形成する周壁17とからなり、周壁は、蓋体5が開閉可能に連結される後側側壁9と、後側側壁9に対向する前側側壁11と、これらの後側側壁9および前側側壁11相互間をそれぞれつなぐ右側側壁13および左側側壁15とからなる矩形形状を有する。この実施形態では、とくに図3に示すように、周壁17の内側には、収容空間を二つの収納部R1、R2に分離、区画する中枠19が設けられ、一方の収納部R1には化粧料を充填、保持することができる中皿21を嵌め込むことができる。
【0016】
蓋体5は、天壁23と天壁23周縁から容器本体3の周壁17に向けて延びる垂壁25とを有し、容器本体3の後側側壁9に二つの枢軸(ピン)27、29を介して開閉可能に保持されている。垂壁25の、枢軸27、29の対向側に位置する長辺部25a中央には、長辺部25aの内面から容器内部に向けて突出する蓋体側係止片31が設けられている。蓋体5の裏面には、鏡33が設けられている。
【0017】
そして、とくに図4、5に示すように、容器本体3の前側側壁11には、蓋体5を容器本体3に合わせた状態にて蓋体5の蓋体側係止片31と係合して蓋体5の閉姿勢を保持する容器本体側係止片35が一体的に設けられている。すなわち、容器本体側係止片35は、例えば熱可塑性樹脂を用いた射出成形により容器本体3と一体に成形されるものである。容器本体側係止片35は、前側側壁11の上端から僅かに内側に形成され断面L字形状を有するとともに、先端に蓋体側係止片31と係合(係止)する係止爪35aが形成されている。前側側壁9の、容器本体側係止片35に対応する部分には、容器本体側係止片35を押し込んで蓋体5を開ける際の目印としての役割も果たす、外側に向けて僅かに膨らんだ膨出部36が形成されている。
【0018】
さらに、前側側壁11と底壁7との間には、前側側壁11に沿って延び該前側側壁11を底壁7から切り離すスリット(隙間)37が設けられている。このスリット37は、その両端部37a、37bがそれぞれ後側側壁9に向けて折り曲げられて右側側壁13と底壁7との間、および左側側壁15と底壁7との間にまで延設されている。
【0019】
また、この実施形態では、蓋体5には前側側壁11に向けて突片39、41が垂設され、該突片39、41の下端には、収容空間に向けて下がり勾配をなし、前側側壁11の膨出部36を押し込んだ際に該前側側壁11の上端と係合して蓋体5を上方に押し上げる推力面39a、41aが形成されている。
【0020】
このような構成を具える化粧料容器1にあっては、図6(a)に矢印Pにて示すように、使用者が容器本体側係止片35を一体に有する前側側壁11の膨出部36を押し込むと、前側側壁11と底壁7との間に延びるスリット37の両端部37a、37bがそれぞれ右側側壁13と底壁7との間、および左側側壁15と底壁7との間まで延在することから、前側側壁は、右側側壁13および左側側壁15の一端部を中央に向けて巻き込みながら弓なりに変形し(図1中の矢印M1、M2参照)、その結果、前側側壁11は充分に撓んで、蓋体側係止片31と容器本体側係止片35の係止爪35aとの係合が解除される。この際、図6(b)に示すように、蓋体5は、突片39、41の推力面39a、41aが前側側壁11に上端に押されることによって上方へ押し上げられる。
【0021】
したがって、この化粧料容器1によれば、蓋体側係止片31に係止する容器本体側係止片35を容器本体3と一体に成形してもなお、スリット37を介した前側側壁11の充分な撓み変形により容器本体側係止片35をスムーズに作動可能とし、蓋体5の確実な開放を保障することができる。
【0022】
また、この実施形態では、蓋体5から垂下する突片39、41であって、該突片39、41の下端に収容空間に向けて下がり勾配をなし、前側側壁11を押し込んだ際に該前側側壁11の上端と係合して蓋体5を上方に押し上げる推力面39a、41aを有する突片39、41を設けたことから、膨出部36を押すと同時に蓋体5を開くことができ、蓋体5の開放操作をより簡単に行うことが可能となる。
【0023】
以上、図示例に基づきこの発明を説明したが、この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で適宜に変更することができ、突片は一箇所でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
かくして、この発明によれば、蓋体側の係止片に係止する容器本体側の係止片を容器本体と一体に成形してもなお、該係止片をスムーズに作動可能とするとともに蓋体の確実な開放を保障することができる化粧料容器を提案することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 化粧料容器
3 容器本体
5 蓋体
7 底壁
9 後側側壁
11 前側側壁
13 右側側壁
15 左側側壁
17 周壁
31 蓋体側係止片
35 容器本体側係止片
35a 係止爪
37 スリット
37a、37b スリットの端部
39、41 突片
39a、41a 推力面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と該底壁の周縁を取り囲む周壁とからなり内側に化粧料の収容空間を形成する容器本体と、前記容器本体に合わさって前記収容空間を閉塞する蓋体と、を備え、前記周壁が、前記蓋体が開放可能に連結される後側側壁と該後側側壁に対向する前側側壁とこれらの後側側壁および前側側壁相互間をそれぞれつなぐ右側側壁および左側側壁とからなる化粧料容器であって、
前記蓋体から前記容器本体の前記前側側壁に向けて蓋体側係止片を垂下するとともに、前記容器本体の前記前側側壁に、前記蓋体を前記容器本体に合わせた状態にて前記蓋体側係止片と係合して前記蓋体の閉姿勢を保持する容器本体側係止片を一体に設け、
前記前側側壁と前記底壁との間に、該前側側壁に沿って延び前側側壁を前記底壁から切り離すスリットを設けるとともに、該スリットの両端部をそれぞれ折り曲げて前記右側側壁と前記底壁との間および前記左側側壁と前記底壁との間まで延設したことを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
前記蓋体から垂下する突片であって、該突片の下端に前記収容空間に向けて下がり勾配をなし、前記前側側壁を押し込んだ際に該前側側壁の上端と係合して前記蓋体を上方に押し上げる推力面を有する突片を設けてなる、請求項1に記載の化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115438(P2012−115438A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267388(P2010−267388)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)