説明

化粧料容器

【課題】構造の複雑化、使いづらさを伴うことなしに衝撃力を確実に吸収、緩和できる化粧料容器を提案する。
【解決手段】化粧料を装填した中皿を着脱可能に載置する区画凹所Mを備えたケース本体1と、このケース本体1に枢軸hを介して開閉可能に保持され、該ケース本体1の外周端縁に合わさってその内側を密封する蓋体とを備えた化粧料容器において、前記ケース本体1の前記区画凹所Mに、インサート成形により該ケース本体1と一体的に成形され前記中皿3を前記区画凹所M内で弾性支持する衝撃吸収層4を設ける。衝撃吸収層4としては、具体的に、前記中皿3の底部3aと前記区画凹所Mの底壁1aとの相互間に位置して縦方向の衝撃を吸収する複数の凸部4cと、これらの凸部4cをそれぞれ両側に挟む位置にて前記中皿3の外周壁部3bに当接して横方向の衝撃を吸収する複数の凸部4dと、前記中皿3の外周壁部3bの突端にかぶさって縦方向の衝撃を吸収するとともに該中皿3の区画凹所Mからの抜け出しを防止する複数の舌状片4eとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーションやアイシャドー等の化粧料を入れるのに適した化粧料容器に関するものであり、該化粧料容器の構造の複雑化、使いづらさを伴うことなしに落下時等によって加えられる不用意な衝撃を効果的に吸収、緩和して化粧料の割れや粉砕を確実に回避しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクトに代表される化粧料容器は、容器本体と蓋体とが枢軸を介して開閉可能に連結されており、蓋体に設けたフックを容器本体側のフックに連係させることによって容器本体を確実に密閉し、容器本体の側壁から露出するプッシュピースを押し込むことによりフックの相互における連係を解除して蓋体の開放を可能とした構造からなるものであり、化粧料を使い切った後においては中皿ごとそっくりと取り替えることによって、容器を再利用し資源の有効活用を図るようにしている。
【0003】
ところで、この種の化粧料容器は、中皿に装填された化粧料が固形物からなっているものにあっては、該化粧料容器を誤って落下させてしまった場合に衝撃力により化粧料が割れたり粉砕してしまうことがあり、かかる不具合を解消するために、容器の非使用時において皿枠をフローティング支持して外方からの衝撃から化粧料を保護するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)ところ、従来の化粧料容器では構造の複雑化が避けられないため容器の効率的な製造が行えないばかりか、使い勝手もよいとはいえないものになっていて、未だ多少の改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6―72508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、構造の複雑化を伴うことなし衝撃力を効果的に吸収、緩和できる化粧料容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化粧料を装填した中皿を着脱可能に載置する区画凹所を備えたケース本体と、このケース本体に枢軸を介して開閉可能に保持され、該ケース本体の外周端縁に合わさってその内側を密封する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
前記ケース本体の前記区画凹所に、インサート成形により該ケース本体と一体的に成形され前記中皿を前記区画凹所内で弾性支持する衝撃吸収層を設け、
前記衝撃吸収層が、前記中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置して縦方向の衝撃を吸収する複数の凸部と、これらの凸部をそれぞれ両側に挟む位置にて前記中皿の外周壁部に当接して横方向の衝撃を吸収する複数の凸部と、前記中皿の外周壁の突端にかぶさって縦方向の衝撃を吸収するとともに該中皿の区画凹所からの抜け出しを防止する複数の舌状片とを有する、ことを特徴とする化粧料容器である。
【0007】
上記の凸部のうち、中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置する凸部を、横向きのリブで構成し、中皿の外周壁部に当接する凸部を、縦向きのリブで構成するのが好ましい。
【0008】
また、中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置する凸部は、中皿が四角形である場合には少なくとも四隅に設けるのが望ましく、円形である場合には少なくとも三箇所に設けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
ケース本体の成形後に金型内で該ケース本体の底壁を通してその内側面に向けてエラストマーの如き弾性を有する樹脂を流し込む、いわゆるインサート成形により衝撃吸収層を形成したので、該衝撃吸収層を形成する部材をケース本体に組み付ける作業が不要であり構造も複雑になることがない。
【0010】
中皿は、衝撃吸収層の凸部及び舌状片によって取り囲まれた状態にあるため、衝撃力が付加されても該吸収層によって該衝撃力が効果的に吸収、緩和されることとなり、化粧料が割れたり粉砕するのが避けられる。また、衝撃吸収層の肉厚が厚くなる部分に凸部を少なくとも一つ設けて中皿を保持することによりクッション性が増し衝撃力がより吸収し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にしたがう化粧料容器の実施の形態を側面(断面表示)で示した図である。
【図2】図1に示した化粧料容器の平面(上面)を、蓋体を省略した状態で示した図である。
【図3】図2のA−A断面を示した図である。
【図4】衝撃吸収層を背面側からみた外観斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1〜4は、本発明にしたがう合成樹脂製の化粧料容器の実施の形態を示した図であり、図1は、化粧料容器の側面を断面で示した図であり、図2は、図1に示した化粧料容器の平面(上面)を蓋体を取除いた状態で示した図であり、図3は、図2のA−A断面を示した図であり、さらに図4は、衝撃吸収層の外観斜視図である。
【0013】
図1〜4における番号1は、化粧料容器の基本骨格を形成するケース本体である。このケース本体1は、化粧料を装填した中皿を着脱可能に載置する区画凹所M(角部にアール(R)を付与した平面形状で表示してある。)を有しており、底壁1aと、この底壁1aの縁部において立ち上がる周壁1bからなっていて、ケース本体1の前面側Fには、周壁1bの上端部においてスライド可能に保持されたプッシュピース1cと、係止片(フック)1dが設けられている。
【0014】
2は、ケース本体1の後面側Gにおいて枢軸hを介して開閉可能に保持され、ケース本体1の外周端縁に合わさって該ケース本体1を密封保持する蓋体である。この蓋体2の前面側F1の下端内側には、ケース本体1の係止片1dに連係する爪部(フック)2aが設けられており、蓋体2を閉じたときに爪部2aがケース本体1の係止片1dに連係して該蓋体2を閉姿勢に保持する一方、プッシュピース1cをケース本体1の後面側に向けて押し込むことで爪部2aを押し上げて係止片1dとの連係を解除して蓋体2の開放を可能とする。
【0015】
3は、ケース本体1の区画凹所Mに配置された中皿である。中皿3は、区画凹所Mと同等の平面形状を有する底部3aと、この底部3aの縁部に一体的につながる外周壁3bから構成されており、その内側には化粧料を装填する上部開放型の凹所が形成されている。
【0016】
4は、ケース本体1の区画凹所Mの外表面に設けられた衝撃吸収層である。この衝撃吸収層4はケース本体1の成形時に、金型内でケース本体1の内側面に樹脂を流し込む、インサート成形により形成されるものであり、底壁4aとこの底壁4aの縁部から立ち上がる周壁4bから構成されている。この衝撃吸収層4は、ケース本体1とは一体化された弾性を有するエラストマーの如き軟質部材からなり(ゴム等でもよい。)、アールが形成された四箇所の部位には、中皿3の底部3aと区画凹所Mの底壁1aとの相互間に位置して縦方向の衝撃を吸収する凸部4cと、この凸部4cをそれぞれ両側に挟む位置において中皿3の外周壁部3bに当接して横方向の衝撃を吸収する凸部4dと、中皿3の外周壁の突端にかぶさって縦方向の衝撃を吸収するとともに該中皿3の区画凹所Mからの抜け出しを防止する舌状片4eが形成されている。舌状片4eは、中皿3の組み付け、取り外しを容易にするため、少なくとも対角の二箇所に設けることができ、この舌状片4eとこの端面が接続する周壁4dとにより逆L字状断面を形成している。舌状片4eの先端縁部には、中皿3のアールよりも曲率半径が大きいアールが付与されている。
【0017】
5はケース本体1の底部1aの中央部に設けられた開口である。この開口5はインサート成形に際して衝撃吸収層4を形成するための樹脂を流し込む孔を形成するものである。さらに6は、ケース本体1の底部1aの後端寄りで該ケース本体1の底部1a、衝撃吸収層4の底部4aを貫くように設けられた開口(6a、6b)である。この開口6は、ケース本体1から中皿3を取り出す際に該中皿3に押圧力を加える冶具を通過させるのに使用されるものであり、形状は円形や矩形状のものが適用される。7は、蓋体2の裏面に設けられた鏡、8は、中皿3と鏡8との間に配置した例で示した塗布部材としてのパフ(仮想線で表示してある。)である。中皿3の上面には、化粧料とパフ8が直接接触するのを避けるために中蓋を設けることができる(図示せず。)。
【0018】
本発明にしたがう化粧料容器においては、中皿3が衝撃吸収層4の凸部4a、凸部4bのみで支えられ、その他の部位は空間部分になっているため、化粧料容器を落下させる等により衝撃力が加えられても該衝撃力が効果的に吸収、緩和されることとなり化粧料に割れや粉砕は回避される。
【0019】
衝撃吸収層4はインサート成形によりケース本体1と一体化されているため、部品点数が増えることもないし組み込み作業を必要としないため、構造の簡素化、効率的な製造が可能となる。とくに衝撃吸収層の肉厚が厚くなる部分に凸部を少なくとも一つ設けて中皿3を保持することによってクッション性を増すことが可能となるので衝撃力の吸収、緩和により有効になる。凸部の形状については区画凹所Mのサイズや形状に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
衝撃吸収層4の凸部4c、4dについては、横向きのリブ、縦向きのリブとして図示したが、該凸部4c、4dはドット状のものでもよい。また、設置箇所は、アール(湾曲)が形成された角部に設けた場合について示したが、中皿3をより有効に支持できるのであればアールが形成された角部以外の箇所に設けてもよく、この点については限定されない。
【0021】
中皿3を収納する区画凹所Mが円形状からなる化粧料容器を対象とする場合においては、衝撃吸収層4の凸部4c、4dは120°間隔で設ければよく、これにより中皿3の支持姿勢が安定化する。
【0022】
本発明にしたがう化粧料容器は、蓋体2の開閉をおこなっても中皿3が動くことがなく、中皿から化粧料をスムーズに取り出すことが可能であり、使い勝手がよい。
【0023】
中皿3は、通常、金属で構成してもよいし、合成樹脂で構成しても勿論よい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
簡単な構造のもとで衝撃力を効果的に吸収、緩和し得る化粧料容器が提供できる。
【符号の説明】
【0025】
1 ケース本体
1a 底壁
1b 周壁
1c プッシュピース
1d 係止片(フック)
2 蓋体
2a 爪部(フック)
3 中皿
3a 底部
3b 外周壁部
4 衝撃吸収層
4a 底壁
4b 周壁
4c 凸部
4d 凸部
4e 舌状片
5 開口
6 開口
7 鏡
8 パフ
M 区画凹所
h 枢軸
P 前面側
G 後面側
h 枢軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を装填した中皿を着脱可能に載置する区画凹所を備えたケース本体と、このケース本体に枢軸を介して開閉可能に保持され、該ケース本体の外周端縁に合わさってその内側を密封する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
前記ケース本体の前記区画凹所に、インサート成形により該ケース本体と一体的に成形され前記中皿を前記区画凹所内で弾性支持する衝撃吸収層を設け、
前記衝撃吸収層が、前記中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置して縦方向の衝撃を吸収する複数の凸部と、これらの凸部をそれぞれ両側に挟む位置にて前記中皿の外周壁部に当接して横方向の衝撃を吸収する複数の凸部と、前記中皿の外周壁の突端にかぶさって縦方向の衝撃を吸収するとともに該中皿の区画凹所からの抜け出しを防止する複数の舌状片とを有する、ことを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
前記凸部のうち、前記中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置する凸部は、横向きのリブからなり、前記中皿の外周壁部に当接する凸部が、縦向きのリブからなる、請求項1記載の化粧料容器。
【請求項3】
前記中皿の底部と前記区画凹所の底壁との相互間に位置する凸部は、前記中皿の少なくとも四隅に設けられたものである、請求項1または2記載の化粧料容器。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−29939(P2012−29939A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173063(P2010−173063)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)