化粧料用塗布具
【課題】化粧料塗布具において、ブリッスルが散けて広がるのを防止する。
【解決手段】円柱状の軸本体2aの先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部2dを有する軸部2と、長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、凹部2dの内部から軸本体2aの先端部の外周面を越えて突出する複数のブリッスル3aとを備える。
【解決手段】円柱状の軸本体2aの先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部2dを有する軸部2と、長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、凹部2dの内部から軸本体2aの先端部の外周面を越えて突出する複数のブリッスル3aとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用塗布具に関し、特にブリッスルコームの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ液を睫毛に塗布する際に使用する塗布具として、円柱状の軸の先端外周面に、睫毛にマスカラ液を塗布するための例えばブラシ状や溝状等で構成された塗布部を備え、さらにこの塗布部と軸を介して反対側の先端外周面に、塗布部によってマスカラ液が塗布された睫毛に対して、マスカラ液の固まりである、いわゆる「だま」を取ったり、互いにくっついてしまった睫毛を一本一本捌いたりするための複数のブリッスルを有するコーム部を備えたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
このような塗布具は、通常、容器本体に収容されたマスカラ液に軸の先端部が浸漬された状態で密閉されており、睫毛にマスカラ液を塗布する際には、容器本体からマスカラ液が付着した軸の先端部を引き抜くときに、容器本体に形成された扱き部材によってマスカラ液の付着量を調整してから使用している。
【特許文献1】特開2006−95091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら塗布具のコーム部は、睫毛を梳かすために比較的固めの硬度を有して形成され、各ブリッスルの間隙も荒めに形成されているので、容器本体から引き抜いたときにコーム部の周りにマスカラ液が付着したり、各ブリッスルの間隙にマスカラ液が入り込んでしまったりして、睫毛を上手に梳かすことが困難であった。
【0005】
そこで本願出願人は、コーム部に付着したマスカラ液を扱き落とすために、例えば図12(a)に示す如く、扱き部材6の扱き口6aを小さくして、扱きの力を増加させることを提案したが、これでは、図12(b)に示す如く、容器本体からY方向に引き抜く際に、ブリッスル3a’の根元が扱き口6aに当接して、図12(c)に示す如く、ブリッスル3a’が互い違いに根元から曲がってしまうことにより、ブリッスル3a’が散けて広がってしまう場合がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ブリッスルが散けて広がるのを防止することができる化粧料用塗布具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化粧料用塗布具は、円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、
前記長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、前記凹部の内部から前記外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
なお本発明の化粧料用塗布具は、前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5mm以上であることが好ましく、0.5〜2.0mmであることがさらに好ましい。
【0009】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記凹部が長手方向に沿って延びる溝であることが好ましい。
【0010】
本発明の化粧料用塗布具は、前記軸部が前記軸本体の先端部の前記凹部以外の外周面に、化粧料を塗布する塗布部を備えていることが好ましい。
【0011】
本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、該複数のブリッスルの基部を保持する基台部材に配設されていることが好ましい。
【0012】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.2±0.02mmであることがさらに好ましい。
【0013】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、前記外周面から2〜5mm突出していることが好ましい。
【0014】
本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、各ブリッスルの全長が3〜6mmであることが好ましい。
【0015】
なお本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、熱可塑性エラストマーを主成分として形成されていることが好ましく、前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマーであることがさらに好ましい。なお本発明において複数のブリッスルは、不可避不純物を含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧料用塗布具によれば、円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、凹部の内部から軸本体の外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えているので、各ブリッスルの基端が軸本体の外周面よりも低い所に位置することができて、容器本体から化粧料が付着した軸部の先端部を引き抜くときに容器本体に形成された扱き部材に各ブリッスルの基端が当接しないので、ブリッスルの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0017】
これにより容器本体から軸部を引き抜く際に、扱き部材によってブリッスルが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスルが散けて広がるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかる一実施形態の化粧料用塗布具について図面を参照して詳細に説明する。なお本実施形態では化粧料用塗布具としてマスカラ塗布具を例にして説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば眉毛に塗布するアイブロー塗布具等にも適用することができる。ここで図1に本実施形態のマスカラ塗布具1の側面図、図2に図1の分解図、図3に図1のA−A線断面斜視図、図4に図1のコーム部3の主要部拡大斜視図、図5にブリッスルの別の実施形態を表わす図、図6にマスカラ塗布具1の先端部を容器本体から引き抜く図を示す。なお図1〜図4において、便宜上ブリッスル3aの先端が位置する側つまり紙面上側を上側として以下説明する。
【0019】
本実施形態のマスカラ塗布具1は、図1に示す如く、軸部2と、コーム部3と、塗布部4とキャップ5とを備えている。
【0020】
軸部2は、図2に示す如く、略円柱状の軸本体2aを備えてなり、該軸本体2aの先端側には長手方向に沿って開口し後述の塗布部4が装着される開口部2bと、開口部2bと連通し、図3に示す如く、後述のコーム部3の基台部材3bが装着される装着部2cと有し、さらに装着部2cと連通し、軸本体2aの先端部の外周面に長手方向に沿って延びる溝2dを有している。
【0021】
溝2dの深さdは、[発明が解決しようとする課題]で説明した扱き部材6(図12参照)が形成された容器本体(図示せず)にマスカラ塗布具1の先端側を100回出し入れしたときの後述するブリッスル3aにおいて、dが0.2mmのときは若干散けが生じ、dが0.5mmのときは散けが生じなかったので、0.5mm以上であることが好ましく、軸本体2aの径が大きくなりすぎないように2mm以下であることが好ましい。従って溝2dの深さdは0.5〜2mmの範囲、本実施形態では0.5mmで形成されている。
【0022】
また軸本体2aの後端にはマスカラ液を収容した容器本体(図示せず)の開口部に開閉自在に装着されるキャップ5が連結されており、このキャップ5はユーザが把持する取っ手として使用可能に構成されている。なおこの容器本体に、上記扱き部材6(図12参照)が形成されている。
【0023】
そして軸部2は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)のいずれか1つを主成分として例えば射出成形等により形成されており、材質は化粧料の成分に応じて適宜選定される。
【0024】
コーム部3は、マスカラ液が塗布された睫毛に対して、マスカラ液の固まりである、いわゆる「だま」を取ったり、互いにくっついてしまった睫毛を一本一本捌いたりするためのものであり、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)を主成分として例えば射出成形等により形成されており、射出・押出・ブローなどの成形加工の容易性や耐疲労性、耐薬品性、ゴムとエンプラ両方の特性を有すること等から、具体的には東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280B及び/又はE−450Bを材料として使用している。なおコーム部3に使用する材料については後で詳細に説明する。
【0025】
そしてコーム部3は、図1〜図3に示す如く、長手方向に一列に配列された複数のブリッスル3aと、この複数のブリッスル3aが垂直に配列され、かつ複数のブリッスル3aの基部を保持する、直方体で構成された基台部材3bとで構成されている。
【0026】
複数のブリッスル3aは、図4に示す如く、各ブリッスル3aの断面が例えば直径A1=0.2mmの円状に形成され、全長Lが、長すぎると成形品の一部に樹脂が回らずに成形品の一部が欠ける現象いわゆるショートモールドとなるため、マスカラ塗布具1の径の制約から成形が困難であり、短すぎると睫毛に届かなくなり使用性が低下するため、3〜6mmで形成されている。
【0027】
そして、図4に示す如く、長手方向における各ブリッスル3aの間隙Dは、0.1〜2.0mmで形成され、好ましくは0.2±0.02mmで形成されている。こうすることにより、個人差はあるものの一般的に人の睫毛の太さが0.15mm程度であるため、コーム部3によって睫毛を捌くときに、ブリッスル3aの間隙Dに睫毛が1本のみしか入らないので、睫毛を一本一本捌くことができる。
【0028】
なお本実施形態のブリッスル3aは、上述のように断面が円状に形成されたものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、複数のブリッスル3aの配列方向と略直角方向すなわち塗布方向に幅を持たせてもよいし、図5(a)に示す如く、例えば前記幅A2が0.2mm、この幅と略直角方向の幅A3が0.3mm又は0.4mmの角丸形状の断面を有するブリッスルであっても、図5(b)に示す如く、例えば上記と同様の寸法の楕円形状の断面を有するブリッスルであってもよく、ひし形や三角形の断面を有するブリッスルであってもよい。
【0029】
また本実施形態のブリッスル3aは上端から下端まで断面形状が変わらないストレート形状としたが、本発明はこれに限られるものではなく、先鋭形状に形成されたテーパーを有するブリッスルであってもよい。
【0030】
塗布部4は、睫毛にマスカラ液を塗布するためのものであり、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)のいずれか1つを主成分として例えば射出成形等により形成されており、材質は化粧料の成分に応じて適宜選定される。
【0031】
そして塗布部4は、図3に示す如く、断面が略半円状であって、図1及び図2に示す如く、軸本体2の開口部2bに装着可能な長さで長手方向に延びて形成されている。そして塗布部4の下端には、図3に示す如く、長手方向と略直角方向に周面に沿って形成された塗布溝4aが、長手方向に沿って複数配列されている。また塗布部4の上端には、上面から突出した凸部4bが、長手方向に沿って1つ以上形成されている。
【0032】
次に上述の軸部2、コーム部3、塗布部4の組付方法について説明する。先ず、図3に示す如く、複数のブリッスル3aが軸本体2aの溝2dの内部から軸本体2aの外周面を越えて突出するように、軸本体2aの下側からコーム部3の基台部材3bを装着部2cに挿入し、各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置するようにする。このとき図3に示す如く、溝2dの深さdが0.5mmであり、基台部材3bの上面が装着部2cの上面に当接するので、各ブリッスル3aの基端から軸本体2aの外周面までの距離は0.5mmとなる。
【0033】
このように各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することにより、図6に示す如く、容器本体からマスカラ液が付着した軸部2の先端部を引き抜くときに扱き部材6の扱き口6aに各ブリッスル3aの基端が当接しないので、ブリッスル3aの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0034】
これにより容器本体から軸部2を引き抜く際に、扱き部材6によってブリッスル3aが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスル3aが散けて広がるのを防止することができる。
【0035】
次に塗布部4を、凸部4bを上側にして軸部2の下側から開口部2bに装着する。ことのき塗布部4と軸本体2aとは、例えば凹凸状にそれぞれ形成されて互いに係合する係合部(図示せず)により着脱可能に固定されている。なお塗布部4と軸本体2aとは、さらに超音波溶着や高周波溶着等によって溶着してもよい。そしてコーム部3は、図3に示す如く、基台部材3bの上面が装着部2cの上面に当接し、下面が凸部4bの上端に当接されて、軸本体2a及び塗布部4によって上下両側から把持される。本実施形態のマスカラ塗布具1は上述のようにして組み付けられる。
【0036】
上述のように構成された本実施形態のマスカラ塗布具1によれば、各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができて、容器本体からマスカラ液が付着した軸部2の先端部を引き抜くときに容器本体に形成された扱き部材6の扱き口6aに各ブリッスル3aの基端が当接しないので、ブリッスル3aの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0037】
これにより容器本体から軸部2を引き抜く際に、扱き部材6によってブリッスル3aが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスル3aが散けて広がるのを防止することができる。
【0038】
次にコーム部3に使用する材料を変えて上記のマスカラ塗布具1と従来のマスカラ塗布具1’とを比較した結果について説明する。
【0039】
図7に材料としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロン等のPA(ポリアミド系樹脂)、ポリエステル系熱可塑性エラストマーをそれぞれ使用して形成されたコーム部3を有するマスカラ塗布具1と、前記コーム部3を有し、図12に示す如く、ブリッスル3a’の基端が軸本体2a’の外周面から起立してなる従来のマスカラ塗布具1’とを、それぞれ扱き部材6が形成された容器本体に100回出し入れしたときのブリッスル3a、3a’の散けの結果を示す。
【0040】
なお具体的な材料として、PBTは三菱エンジニアリングプラスチツクス株式会社製ノバデュラン(登録商標)5010TRX5、PAは旭化成化学株式会社製レオナ(登録商標)ナイロン66繊維1300S、東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280Bを使用し、ブリッスル3a、3a’はそれぞれテーパーを有して形成されたものを使用した。また図7中のブリッスルは45°斜めから50倍率で撮影した。なお図7中、散けが多い順にバツ印、三角印、丸三角印、丸印で示した。
【0041】
図7の表に示す如く、軸部2に溝2dすなわち凹部を有さない従来のマスカラ塗布具1’のコーム部3では、PBT、PA、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのいずれの材料を使用した場合でもブリッスル3a’に散けが生じてしまった。
【0042】
それに対して本発明の溝2dすなわち凹部を有するマスカラ塗布具1のコーム部3では、PBT又はPAの材料を使用した場合にはブリッスル3aに散けが生じてしまったが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーすなわち東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280Bを使用した場合には散けは生じなかった。
【0043】
上記によりコーム部3に使用する材料としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0044】
またマスカラ塗布具1では、軸部2は比較的硬い材料で形成されることが好ましいが、コーム部3は、ブリッスル3aに付着したマスカラ液を扱き落とすために、しなり易い材料で形成されることが好ましい。そこでペルプレン(登録商標)のグレードを変えた材料でコーム部3を形成し、上記と同様に容器本体に100回出し入れを行って、材料毎に比較を行った。図8にこの比較結果を示す。なおグレードとしては硬度の低い順に、P−150B、P−280B、E−450Bを使用した。
【0045】
図8の表に示す如く、従来のマスカラ塗布具1’のコーム部3では、いずれのグレードのペルプレン(登録商標)を使用した場合でも、ブリッスル3a’に散けが生じてしまった。また本発明のマスカラ塗布具1のコーム部3では、上記グレード中の低硬度であり、ASTM D2240試験方法によって測定された表面硬度が57D、ASTM D790試験方法によって測定された曲げ弾性率が289MPaであるP−150Bの材料を使用した場合のみブリッスル3aに散けが生じてしまったが、中硬度であり、前記表面硬度が68D、前記曲げ弾性率が494MPaであるP−280Bの材料及び高硬度であり、前記表面硬度が78D、前記曲げ弾性率が1267MPaであるE−450Bの材料を使用した場合には散けが生じなかった。
【0046】
また図8の表に示す如く、P−150Bは、ブリッスル3a、3a’の腰が若干乏しいすなわちしなり易さが乏しく、さらに成形時に型を開くのが困難であったため、成形性やしなり易さの観点からP−280B及び/又はP−450Bの方が材料として好ましいと考える。
【0047】
上記によりコーム部3に使用する材料としては、前記表面硬度が60D以上であることが好ましく、前記曲げ弾性率は400MPa以上であることが好ましい。
【0048】
なお本実施形態のマスカラ塗布具1のコーム部3は、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーを使用して形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばポリアミド系の熱可塑性エラストマーを使用してもよい。具体的にはダイセル・テグサ株式会社製ダイアミドPAE(登録商標)又はアルケマ−東京材料株式会社製ベバックス(登録商標)等を使用することができる。
【0049】
次に本発明にかかる第二の実施形態のマスカラ塗布具1−2について、以下図面を参照して詳細に説明する。上記実施形態のマスカラ塗布具1は、コーム部3と塗布部4とが別部品で形成されたものであったが、本実施形態のマスカラ塗布具1−2は、塗布部4は軸本体2aと一体的に形成されたものである。ここで図9(a)に本実施形態のマスカラ塗布具1−2の主要部断面斜視図、(b)にマスカラ塗布具1−2の主要部側面断面図の一例、(c)にマスカラ塗布具1−2の主要部側面断面図の別の例、図10(a)に別の実施形態のコーム部の主要部斜視図、(b)に(a)の正面図を示す。なお図9において上記実施形態と同様の箇所は、同符号で示して説明を省略する。
【0050】
本実施形態のマスカラ塗布具1−2は、図9に示す如く、軸本体2aの溝2d以外の外周面である下端の外周面に塗布部としての塗布溝2eが形成されている。
【0051】
このように軸本体2aに塗布溝2eを形成したマスカラ塗布具1−2は、例えば、軸本体2aの先端に装着部2cと連通する開口を設け、該開口からコーム部3の基台部材3bを挿入し長手方向にスライドさせることにより、軸本体2aにコーム部3を組み付けても良い。この場合、図9(b)に示す如く、基台部材3bの挿入方向後端及び軸本体2aの先端に互いに係合する鈎部3c、2fをそれぞれ設けて固定してもよい。
【0052】
またコーム部3の両側面に、図10(a)、(b)に示す如く、下端が先鋭形状で外方に突出した突起部3dを長手方向にそって複数設け、軸本体2aの装着部2cに、上端から基台部材3bを挿入させて、突起部3dによって軸本体2aと基台部材3bとを固定してもよい。
【0053】
さらに本実施形態では、軸本体2aと基台部材3bとを、超音波溶着や高周波溶着等によって溶着してもよい。
【0054】
なお軸部2とコーム部3とで構成される上記のようなマスカラ塗布具1−2は、軸部2とコーム部3とをインサート成形することによって形成してもよい。
【0055】
次に本発明にかかる第三の実施形態のマスカラ塗布具1−3について、以下図面を参照して説明する。ここで図11に本実施形態のマスカラ塗布具1−3の主要部断面側面図を示す。
【0056】
本実施形態のマスカラ塗布具1−3は、上記実施形態のマスカラ塗布具1−2とは異なり、図11に示す如く、コーム部3に塗布部としての塗布溝3eを形成している。このように形成されたコーム部3は、軸部2と二色成形により一体的に形成され、例えば真空射出成形等によって形成することができる。なお軸部2とコーム部3とは、ポリエステル系又はポリアミド系の熱可塑性エラストマーを主成分として、例えば射出成形等によって一体的に形成してもよい。
【0057】
上述したような第二、第三の実施形態のマスカラ塗布具1−2、1−3においては、第一の実施形態のマスカラ塗布具1と同様に、溝2dの深さdは0.5〜2mmの範囲で形成される。
【0058】
なお上述の実施形態では軸本体2aに溝2dを形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができる凹部であればいずれの形状であってもよい。
【0059】
また上述の実施形態では軸本体2aに溝2dを1つ形成し、該溝2dに一列のブリッスル3aを配列したが、本発明はこれに限られるものではなく、ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができればよく、例えば溝2dの周方向の幅を広くして、溝2dに沿ってブリッスル3aを複数(例えば二列)配列してもよいし、溝2dを長手方向に沿って2つ以上形成し、それぞれの溝2dにブリッスル3aを一列配列してもよい。
【0060】
本発明の化粧料用塗布具は、上述した実施形態のマスカラ塗布具に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】マスカラ塗布具の主要部拡大図
【図2】図1のマスカラ塗布具の分解図
【図3】図1のマスカラ塗布具のA−A線断面斜視図
【図4】コーム部の主要部拡大斜視図
【図5】ブリッスルの別の実施形態を表わす図
【図6】マスカラ塗布具の先端部を容器本体から引き抜く図
【図7】本発明のマスカラ塗布具と従来のマスカラ塗布具における各材料毎のブリッスルの散けの結果を示す図
【図8】本発明のマスカラ塗布具と従来のマスカラ塗布具におけるペルプレン(登録商標)の各グレード毎のブリッスルの散けの結果表
【図9】第二の実施形態のマスカラ塗布具の断面斜視図及び断面側面図
【図10】コーム部の斜視図及び正面図の一例
【図11】第三の実施形態のマスカラ塗布具の断面側面図
【図12】従来のマスカラ塗布具における課題を説明する図
【符号の説明】
【0062】
1 マスカラ塗布具(化粧料塗布具)
2 軸部
2a 軸本体
2b 開口部
2c 装着部
2d 溝(凹部)
3 コーム部
3a ブリッスル
3b 基台部材
4 塗布部
4a 塗布溝
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用塗布具に関し、特にブリッスルコームの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ液を睫毛に塗布する際に使用する塗布具として、円柱状の軸の先端外周面に、睫毛にマスカラ液を塗布するための例えばブラシ状や溝状等で構成された塗布部を備え、さらにこの塗布部と軸を介して反対側の先端外周面に、塗布部によってマスカラ液が塗布された睫毛に対して、マスカラ液の固まりである、いわゆる「だま」を取ったり、互いにくっついてしまった睫毛を一本一本捌いたりするための複数のブリッスルを有するコーム部を備えたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
このような塗布具は、通常、容器本体に収容されたマスカラ液に軸の先端部が浸漬された状態で密閉されており、睫毛にマスカラ液を塗布する際には、容器本体からマスカラ液が付着した軸の先端部を引き抜くときに、容器本体に形成された扱き部材によってマスカラ液の付着量を調整してから使用している。
【特許文献1】特開2006−95091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら塗布具のコーム部は、睫毛を梳かすために比較的固めの硬度を有して形成され、各ブリッスルの間隙も荒めに形成されているので、容器本体から引き抜いたときにコーム部の周りにマスカラ液が付着したり、各ブリッスルの間隙にマスカラ液が入り込んでしまったりして、睫毛を上手に梳かすことが困難であった。
【0005】
そこで本願出願人は、コーム部に付着したマスカラ液を扱き落とすために、例えば図12(a)に示す如く、扱き部材6の扱き口6aを小さくして、扱きの力を増加させることを提案したが、これでは、図12(b)に示す如く、容器本体からY方向に引き抜く際に、ブリッスル3a’の根元が扱き口6aに当接して、図12(c)に示す如く、ブリッスル3a’が互い違いに根元から曲がってしまうことにより、ブリッスル3a’が散けて広がってしまう場合がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ブリッスルが散けて広がるのを防止することができる化粧料用塗布具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化粧料用塗布具は、円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、
前記長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、前記凹部の内部から前記外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
なお本発明の化粧料用塗布具は、前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5mm以上であることが好ましく、0.5〜2.0mmであることがさらに好ましい。
【0009】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記凹部が長手方向に沿って延びる溝であることが好ましい。
【0010】
本発明の化粧料用塗布具は、前記軸部が前記軸本体の先端部の前記凹部以外の外周面に、化粧料を塗布する塗布部を備えていることが好ましい。
【0011】
本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、該複数のブリッスルの基部を保持する基台部材に配設されていることが好ましい。
【0012】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.2±0.02mmであることがさらに好ましい。
【0013】
また本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、前記外周面から2〜5mm突出していることが好ましい。
【0014】
本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、各ブリッスルの全長が3〜6mmであることが好ましい。
【0015】
なお本発明の化粧料用塗布具は、前記複数のブリッスルが、熱可塑性エラストマーを主成分として形成されていることが好ましく、前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマーであることがさらに好ましい。なお本発明において複数のブリッスルは、不可避不純物を含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧料用塗布具によれば、円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、凹部の内部から軸本体の外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えているので、各ブリッスルの基端が軸本体の外周面よりも低い所に位置することができて、容器本体から化粧料が付着した軸部の先端部を引き抜くときに容器本体に形成された扱き部材に各ブリッスルの基端が当接しないので、ブリッスルの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0017】
これにより容器本体から軸部を引き抜く際に、扱き部材によってブリッスルが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスルが散けて広がるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかる一実施形態の化粧料用塗布具について図面を参照して詳細に説明する。なお本実施形態では化粧料用塗布具としてマスカラ塗布具を例にして説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば眉毛に塗布するアイブロー塗布具等にも適用することができる。ここで図1に本実施形態のマスカラ塗布具1の側面図、図2に図1の分解図、図3に図1のA−A線断面斜視図、図4に図1のコーム部3の主要部拡大斜視図、図5にブリッスルの別の実施形態を表わす図、図6にマスカラ塗布具1の先端部を容器本体から引き抜く図を示す。なお図1〜図4において、便宜上ブリッスル3aの先端が位置する側つまり紙面上側を上側として以下説明する。
【0019】
本実施形態のマスカラ塗布具1は、図1に示す如く、軸部2と、コーム部3と、塗布部4とキャップ5とを備えている。
【0020】
軸部2は、図2に示す如く、略円柱状の軸本体2aを備えてなり、該軸本体2aの先端側には長手方向に沿って開口し後述の塗布部4が装着される開口部2bと、開口部2bと連通し、図3に示す如く、後述のコーム部3の基台部材3bが装着される装着部2cと有し、さらに装着部2cと連通し、軸本体2aの先端部の外周面に長手方向に沿って延びる溝2dを有している。
【0021】
溝2dの深さdは、[発明が解決しようとする課題]で説明した扱き部材6(図12参照)が形成された容器本体(図示せず)にマスカラ塗布具1の先端側を100回出し入れしたときの後述するブリッスル3aにおいて、dが0.2mmのときは若干散けが生じ、dが0.5mmのときは散けが生じなかったので、0.5mm以上であることが好ましく、軸本体2aの径が大きくなりすぎないように2mm以下であることが好ましい。従って溝2dの深さdは0.5〜2mmの範囲、本実施形態では0.5mmで形成されている。
【0022】
また軸本体2aの後端にはマスカラ液を収容した容器本体(図示せず)の開口部に開閉自在に装着されるキャップ5が連結されており、このキャップ5はユーザが把持する取っ手として使用可能に構成されている。なおこの容器本体に、上記扱き部材6(図12参照)が形成されている。
【0023】
そして軸部2は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)のいずれか1つを主成分として例えば射出成形等により形成されており、材質は化粧料の成分に応じて適宜選定される。
【0024】
コーム部3は、マスカラ液が塗布された睫毛に対して、マスカラ液の固まりである、いわゆる「だま」を取ったり、互いにくっついてしまった睫毛を一本一本捌いたりするためのものであり、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)を主成分として例えば射出成形等により形成されており、射出・押出・ブローなどの成形加工の容易性や耐疲労性、耐薬品性、ゴムとエンプラ両方の特性を有すること等から、具体的には東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280B及び/又はE−450Bを材料として使用している。なおコーム部3に使用する材料については後で詳細に説明する。
【0025】
そしてコーム部3は、図1〜図3に示す如く、長手方向に一列に配列された複数のブリッスル3aと、この複数のブリッスル3aが垂直に配列され、かつ複数のブリッスル3aの基部を保持する、直方体で構成された基台部材3bとで構成されている。
【0026】
複数のブリッスル3aは、図4に示す如く、各ブリッスル3aの断面が例えば直径A1=0.2mmの円状に形成され、全長Lが、長すぎると成形品の一部に樹脂が回らずに成形品の一部が欠ける現象いわゆるショートモールドとなるため、マスカラ塗布具1の径の制約から成形が困難であり、短すぎると睫毛に届かなくなり使用性が低下するため、3〜6mmで形成されている。
【0027】
そして、図4に示す如く、長手方向における各ブリッスル3aの間隙Dは、0.1〜2.0mmで形成され、好ましくは0.2±0.02mmで形成されている。こうすることにより、個人差はあるものの一般的に人の睫毛の太さが0.15mm程度であるため、コーム部3によって睫毛を捌くときに、ブリッスル3aの間隙Dに睫毛が1本のみしか入らないので、睫毛を一本一本捌くことができる。
【0028】
なお本実施形態のブリッスル3aは、上述のように断面が円状に形成されたものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、複数のブリッスル3aの配列方向と略直角方向すなわち塗布方向に幅を持たせてもよいし、図5(a)に示す如く、例えば前記幅A2が0.2mm、この幅と略直角方向の幅A3が0.3mm又は0.4mmの角丸形状の断面を有するブリッスルであっても、図5(b)に示す如く、例えば上記と同様の寸法の楕円形状の断面を有するブリッスルであってもよく、ひし形や三角形の断面を有するブリッスルであってもよい。
【0029】
また本実施形態のブリッスル3aは上端から下端まで断面形状が変わらないストレート形状としたが、本発明はこれに限られるものではなく、先鋭形状に形成されたテーパーを有するブリッスルであってもよい。
【0030】
塗布部4は、睫毛にマスカラ液を塗布するためのものであり、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)のいずれか1つを主成分として例えば射出成形等により形成されており、材質は化粧料の成分に応じて適宜選定される。
【0031】
そして塗布部4は、図3に示す如く、断面が略半円状であって、図1及び図2に示す如く、軸本体2の開口部2bに装着可能な長さで長手方向に延びて形成されている。そして塗布部4の下端には、図3に示す如く、長手方向と略直角方向に周面に沿って形成された塗布溝4aが、長手方向に沿って複数配列されている。また塗布部4の上端には、上面から突出した凸部4bが、長手方向に沿って1つ以上形成されている。
【0032】
次に上述の軸部2、コーム部3、塗布部4の組付方法について説明する。先ず、図3に示す如く、複数のブリッスル3aが軸本体2aの溝2dの内部から軸本体2aの外周面を越えて突出するように、軸本体2aの下側からコーム部3の基台部材3bを装着部2cに挿入し、各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置するようにする。このとき図3に示す如く、溝2dの深さdが0.5mmであり、基台部材3bの上面が装着部2cの上面に当接するので、各ブリッスル3aの基端から軸本体2aの外周面までの距離は0.5mmとなる。
【0033】
このように各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することにより、図6に示す如く、容器本体からマスカラ液が付着した軸部2の先端部を引き抜くときに扱き部材6の扱き口6aに各ブリッスル3aの基端が当接しないので、ブリッスル3aの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0034】
これにより容器本体から軸部2を引き抜く際に、扱き部材6によってブリッスル3aが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスル3aが散けて広がるのを防止することができる。
【0035】
次に塗布部4を、凸部4bを上側にして軸部2の下側から開口部2bに装着する。ことのき塗布部4と軸本体2aとは、例えば凹凸状にそれぞれ形成されて互いに係合する係合部(図示せず)により着脱可能に固定されている。なお塗布部4と軸本体2aとは、さらに超音波溶着や高周波溶着等によって溶着してもよい。そしてコーム部3は、図3に示す如く、基台部材3bの上面が装着部2cの上面に当接し、下面が凸部4bの上端に当接されて、軸本体2a及び塗布部4によって上下両側から把持される。本実施形態のマスカラ塗布具1は上述のようにして組み付けられる。
【0036】
上述のように構成された本実施形態のマスカラ塗布具1によれば、各ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができて、容器本体からマスカラ液が付着した軸部2の先端部を引き抜くときに容器本体に形成された扱き部材6の扱き口6aに各ブリッスル3aの基端が当接しないので、ブリッスル3aの基端にかかる負荷を低減することができる。
【0037】
これにより容器本体から軸部2を引き抜く際に、扱き部材6によってブリッスル3aが互い違いに根元から曲がるのを防ぐことができるので、ブリッスル3aが散けて広がるのを防止することができる。
【0038】
次にコーム部3に使用する材料を変えて上記のマスカラ塗布具1と従来のマスカラ塗布具1’とを比較した結果について説明する。
【0039】
図7に材料としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロン等のPA(ポリアミド系樹脂)、ポリエステル系熱可塑性エラストマーをそれぞれ使用して形成されたコーム部3を有するマスカラ塗布具1と、前記コーム部3を有し、図12に示す如く、ブリッスル3a’の基端が軸本体2a’の外周面から起立してなる従来のマスカラ塗布具1’とを、それぞれ扱き部材6が形成された容器本体に100回出し入れしたときのブリッスル3a、3a’の散けの結果を示す。
【0040】
なお具体的な材料として、PBTは三菱エンジニアリングプラスチツクス株式会社製ノバデュラン(登録商標)5010TRX5、PAは旭化成化学株式会社製レオナ(登録商標)ナイロン66繊維1300S、東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280Bを使用し、ブリッスル3a、3a’はそれぞれテーパーを有して形成されたものを使用した。また図7中のブリッスルは45°斜めから50倍率で撮影した。なお図7中、散けが多い順にバツ印、三角印、丸三角印、丸印で示した。
【0041】
図7の表に示す如く、軸部2に溝2dすなわち凹部を有さない従来のマスカラ塗布具1’のコーム部3では、PBT、PA、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのいずれの材料を使用した場合でもブリッスル3a’に散けが生じてしまった。
【0042】
それに対して本発明の溝2dすなわち凹部を有するマスカラ塗布具1のコーム部3では、PBT又はPAの材料を使用した場合にはブリッスル3aに散けが生じてしまったが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーすなわち東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P−280Bを使用した場合には散けは生じなかった。
【0043】
上記によりコーム部3に使用する材料としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0044】
またマスカラ塗布具1では、軸部2は比較的硬い材料で形成されることが好ましいが、コーム部3は、ブリッスル3aに付着したマスカラ液を扱き落とすために、しなり易い材料で形成されることが好ましい。そこでペルプレン(登録商標)のグレードを変えた材料でコーム部3を形成し、上記と同様に容器本体に100回出し入れを行って、材料毎に比較を行った。図8にこの比較結果を示す。なおグレードとしては硬度の低い順に、P−150B、P−280B、E−450Bを使用した。
【0045】
図8の表に示す如く、従来のマスカラ塗布具1’のコーム部3では、いずれのグレードのペルプレン(登録商標)を使用した場合でも、ブリッスル3a’に散けが生じてしまった。また本発明のマスカラ塗布具1のコーム部3では、上記グレード中の低硬度であり、ASTM D2240試験方法によって測定された表面硬度が57D、ASTM D790試験方法によって測定された曲げ弾性率が289MPaであるP−150Bの材料を使用した場合のみブリッスル3aに散けが生じてしまったが、中硬度であり、前記表面硬度が68D、前記曲げ弾性率が494MPaであるP−280Bの材料及び高硬度であり、前記表面硬度が78D、前記曲げ弾性率が1267MPaであるE−450Bの材料を使用した場合には散けが生じなかった。
【0046】
また図8の表に示す如く、P−150Bは、ブリッスル3a、3a’の腰が若干乏しいすなわちしなり易さが乏しく、さらに成形時に型を開くのが困難であったため、成形性やしなり易さの観点からP−280B及び/又はP−450Bの方が材料として好ましいと考える。
【0047】
上記によりコーム部3に使用する材料としては、前記表面硬度が60D以上であることが好ましく、前記曲げ弾性率は400MPa以上であることが好ましい。
【0048】
なお本実施形態のマスカラ塗布具1のコーム部3は、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーを使用して形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばポリアミド系の熱可塑性エラストマーを使用してもよい。具体的にはダイセル・テグサ株式会社製ダイアミドPAE(登録商標)又はアルケマ−東京材料株式会社製ベバックス(登録商標)等を使用することができる。
【0049】
次に本発明にかかる第二の実施形態のマスカラ塗布具1−2について、以下図面を参照して詳細に説明する。上記実施形態のマスカラ塗布具1は、コーム部3と塗布部4とが別部品で形成されたものであったが、本実施形態のマスカラ塗布具1−2は、塗布部4は軸本体2aと一体的に形成されたものである。ここで図9(a)に本実施形態のマスカラ塗布具1−2の主要部断面斜視図、(b)にマスカラ塗布具1−2の主要部側面断面図の一例、(c)にマスカラ塗布具1−2の主要部側面断面図の別の例、図10(a)に別の実施形態のコーム部の主要部斜視図、(b)に(a)の正面図を示す。なお図9において上記実施形態と同様の箇所は、同符号で示して説明を省略する。
【0050】
本実施形態のマスカラ塗布具1−2は、図9に示す如く、軸本体2aの溝2d以外の外周面である下端の外周面に塗布部としての塗布溝2eが形成されている。
【0051】
このように軸本体2aに塗布溝2eを形成したマスカラ塗布具1−2は、例えば、軸本体2aの先端に装着部2cと連通する開口を設け、該開口からコーム部3の基台部材3bを挿入し長手方向にスライドさせることにより、軸本体2aにコーム部3を組み付けても良い。この場合、図9(b)に示す如く、基台部材3bの挿入方向後端及び軸本体2aの先端に互いに係合する鈎部3c、2fをそれぞれ設けて固定してもよい。
【0052】
またコーム部3の両側面に、図10(a)、(b)に示す如く、下端が先鋭形状で外方に突出した突起部3dを長手方向にそって複数設け、軸本体2aの装着部2cに、上端から基台部材3bを挿入させて、突起部3dによって軸本体2aと基台部材3bとを固定してもよい。
【0053】
さらに本実施形態では、軸本体2aと基台部材3bとを、超音波溶着や高周波溶着等によって溶着してもよい。
【0054】
なお軸部2とコーム部3とで構成される上記のようなマスカラ塗布具1−2は、軸部2とコーム部3とをインサート成形することによって形成してもよい。
【0055】
次に本発明にかかる第三の実施形態のマスカラ塗布具1−3について、以下図面を参照して説明する。ここで図11に本実施形態のマスカラ塗布具1−3の主要部断面側面図を示す。
【0056】
本実施形態のマスカラ塗布具1−3は、上記実施形態のマスカラ塗布具1−2とは異なり、図11に示す如く、コーム部3に塗布部としての塗布溝3eを形成している。このように形成されたコーム部3は、軸部2と二色成形により一体的に形成され、例えば真空射出成形等によって形成することができる。なお軸部2とコーム部3とは、ポリエステル系又はポリアミド系の熱可塑性エラストマーを主成分として、例えば射出成形等によって一体的に形成してもよい。
【0057】
上述したような第二、第三の実施形態のマスカラ塗布具1−2、1−3においては、第一の実施形態のマスカラ塗布具1と同様に、溝2dの深さdは0.5〜2mmの範囲で形成される。
【0058】
なお上述の実施形態では軸本体2aに溝2dを形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができる凹部であればいずれの形状であってもよい。
【0059】
また上述の実施形態では軸本体2aに溝2dを1つ形成し、該溝2dに一列のブリッスル3aを配列したが、本発明はこれに限られるものではなく、ブリッスル3aの基端が軸本体2aの外周面よりも低い所に位置することができればよく、例えば溝2dの周方向の幅を広くして、溝2dに沿ってブリッスル3aを複数(例えば二列)配列してもよいし、溝2dを長手方向に沿って2つ以上形成し、それぞれの溝2dにブリッスル3aを一列配列してもよい。
【0060】
本発明の化粧料用塗布具は、上述した実施形態のマスカラ塗布具に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】マスカラ塗布具の主要部拡大図
【図2】図1のマスカラ塗布具の分解図
【図3】図1のマスカラ塗布具のA−A線断面斜視図
【図4】コーム部の主要部拡大斜視図
【図5】ブリッスルの別の実施形態を表わす図
【図6】マスカラ塗布具の先端部を容器本体から引き抜く図
【図7】本発明のマスカラ塗布具と従来のマスカラ塗布具における各材料毎のブリッスルの散けの結果を示す図
【図8】本発明のマスカラ塗布具と従来のマスカラ塗布具におけるペルプレン(登録商標)の各グレード毎のブリッスルの散けの結果表
【図9】第二の実施形態のマスカラ塗布具の断面斜視図及び断面側面図
【図10】コーム部の斜視図及び正面図の一例
【図11】第三の実施形態のマスカラ塗布具の断面側面図
【図12】従来のマスカラ塗布具における課題を説明する図
【符号の説明】
【0062】
1 マスカラ塗布具(化粧料塗布具)
2 軸部
2a 軸本体
2b 開口部
2c 装着部
2d 溝(凹部)
3 コーム部
3a ブリッスル
3b 基台部材
4 塗布部
4a 塗布溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、
前記長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、前記凹部の内部から前記外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えてなることを特徴とする化粧料用塗布具。
【請求項2】
前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用塗布具。
【請求項3】
前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5〜2.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用塗布具。
【請求項4】
前記凹部が長手方向に沿って延びる溝であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項5】
前記軸部が前記軸本体の先端部の前記凹部以外の外周面に、化粧料を塗布する塗布部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記複数のブリッスルが、該複数のブリッスルの基部を保持する基台部材に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項7】
前記複数のブリッスルは、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.1〜2.0mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項8】
前記複数のブリッスルは、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.2±0.02mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項9】
前記複数のブリッスルが、前記外周面から2〜5mm突出していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項10】
前記複数のブリッスルは、各ブリッスルの全長が3〜6mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項11】
前記複数のブリッスルは、熱可塑性エラストマーを主成分として形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項12】
前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマーであることを特徴とする請求項11に記載の化粧料用塗布具。
【請求項1】
円柱状の軸本体の先端部の外周面に、長手方向に沿って形成された1つ以上の凹部を有する軸部と、
前記長手方向に沿って少なくとも一列に配列された、前記凹部の内部から前記外周面を越えて突出する複数のブリッスルとを備えてなることを特徴とする化粧料用塗布具。
【請求項2】
前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用塗布具。
【請求項3】
前記ブリッスルの基端から前記外周面までの距離が0.5〜2.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用塗布具。
【請求項4】
前記凹部が長手方向に沿って延びる溝であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項5】
前記軸部が前記軸本体の先端部の前記凹部以外の外周面に、化粧料を塗布する塗布部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記複数のブリッスルが、該複数のブリッスルの基部を保持する基台部材に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項7】
前記複数のブリッスルは、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.1〜2.0mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項8】
前記複数のブリッスルは、前記長手方向における各ブリッスルの間隙が0.2±0.02mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項9】
前記複数のブリッスルが、前記外周面から2〜5mm突出していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項10】
前記複数のブリッスルは、各ブリッスルの全長が3〜6mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項11】
前記複数のブリッスルは、熱可塑性エラストマーを主成分として形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の化粧料用塗布具。
【請求項12】
前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマーであることを特徴とする請求項11に記載の化粧料用塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2009−22323(P2009−22323A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185293(P2007−185293)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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